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明細書 :アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-078145 (P2015-078145A)
公開日 平成27年4月23日(2015.4.23)
発明の名称または考案の名称 アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/192       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
FI A61K 31/192
A61P 43/00 111
A61P 25/28
A61P 3/10
A61P 1/16
A61P 9/10
A61P 35/00
A61P 9/12
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-215382 (P2013-215382)
出願日 平成25年10月16日(2013.10.16)
発明者または考案者 【氏名】小澤 孝一郎
【氏名】細井 徹
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100106518、【弁理士】、【氏名又は名称】松谷 道子
【識別番号】100138911、【弁理士】、【氏名又は名称】櫻井 陽子
審査請求 未請求
テーマコード 4C206
Fターム 4C206AA01
4C206AA02
4C206DB22
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA16
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA75
4C206ZB26
4C206ZC35
4C206ZC41
要約 【課題】アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための、下記式(I)の化合物、またはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩を含む医薬組成物。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための、下記式(I)
【化1】
JP2015078145A_000007t.gif
[式中、
は、C1-6アルキルである、
、R、R、R、R、R、R、およびRは、HまたはC1-6アルキルである、
Xは、ハロゲンである、および
Yは、-COOHまたは-CHNである]
の化合物、またはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
、R、R、R、R、R、R、およびRがHである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
がCHである、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
XがFである、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
Yが-COOHである、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
化合物がフルルビプロフェンである、請求項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
アルデヒドの代謝を促進するための、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
アルツハイマー病、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、心筋梗塞、脳梗塞、腫瘍、または高血圧を治療または予防するための、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドは、二日酔いの原因となるだけでなく、様々な疾患の原因となることが知られている。また、生体内の脂質の酸化により生じるマロンジアルデヒド(MDA)や4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)などのアルデヒドは反応性が高く、細胞毒性が強いことか知られている。4-HNEは、糖尿病への関与も示唆されている。
【0003】
アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は、NAD依存的にアルデヒドをカルボン酸へと変化させる酵素である。例えば、アセトアルデヒドは、ALDHにより酢酸となり、その後、水とCOになって体外に排出される。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2010-523476号公報
【特許文献2】特開2008-208091号公報
【特許文献3】国際公開第2010/119674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための、下記式(I)
【化1】
JP2015078145A_000002t.gif
[式中、
は、C1-6アルキルである、
、R、R、R、R、R、R、およびRは、HまたはC1-6アルキルである、
Xは、ハロゲンである、および
Yは、-COOHまたは-CHNである]
の化合物、またはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩を含む医薬組成物を提供する。

【発明の効果】
【0007】
本発明により、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強するための医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】4’-ヒドロキシフルルビプロフェンを固定化したFG ビーズの説明図。
【図1B】マウス肝臓抽出液から塩溶出および加熱溶出により得られたサンプルの銀染色結果。
【図1C】ドラッグエリューションにより得られたサンプルの銀染色結果。Flu: フルルビプロフェン。
【図1D】フルルビプロフェンおよびその他のNSAIDs(最終濃度0.2 mM)による競合阻害後の加熱溶出サンプルの銀染色結果。Flu: フルルビプロフェン、Asp: アスピリン、Ibu: イブプロフェン、Mel: メロキシカム。
【図1E】各種組織におけるフルルビプロフェン結合タンパク質。C: 大脳皮質、Hy: 海馬、Hi: 視床下部、L: 肝臓、P: 膵臓、W: 白色脂肪。
【図1F】加熱溶出で得られたサンプルのウェスタンブロット。Flu immobilized: 4’-ヒドロキシフルルビプロフェンを固定化したFG ビーズ。Flu competition: フルルビプロフェンによる競合阻害。whole cell: マウス肝臓抽出液(対照)。
【図1G】ドラッグエリューションにより得られたサンプルのウェスタンブロット。
【図1H】フルルビプロフェンおよびその他のNSAIDs(最終濃度0.2 mM)による競合阻害後の加熱溶出サンプルのウェスタンブロット。
【図2】HEK293細胞におけるフルルビプロフェンとALDH2との結合。
【図3】フルルビプロフェンのアルデヒドデヒドロゲナーゼに対する作用。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「アルデヒドデヒドロゲナーゼ」(ALDH)は、NAD依存的に、アルデヒドを対応するカルボン酸へ変化させる酵素である。本明細書におけるALDHには様々な生物のALDHが含まれ、例えばヒト、マウス、ラットのALDHが挙げられるが、これらに限定されない。ALDHファミリータンパク質のうち、本発明におけるALDHは、好ましくは「ALDH2」または「ALDH1B1」であり、より好ましくは「ALDH2」である。ALDH2のアミノ酸配列は、GenBank受託番号AAH02967号およびNP_000681号(ヒト)、GenBank受託番号NP_033786号(マウス)、GenBank受託番号NP_115792号(ラット)に開示されている。また、本発明における「ALDH2」には、天然に存在するALDH2の変異体も含まれる。ALDH2変異体としては、例えば、ヒトALDH2のアミノ酸位置487で、グルタミン酸がリジンに置換された変異体が挙げられる。「ALDH1B1」のアミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_000683号(ヒト)、GenBank受託番号NP_082546号(マウス)、GenBank受託番号NP_001011975号(ラット)に開示されている。

【0010】
本発明の医薬組成物は、下記式(I)
【化2】
JP2015078145A_000003t.gif
[式中、
は、C1-6アルキルである、
、R、R、R、R、R、R、およびRは、HまたはC1-6アルキルである、
Xは、ハロゲンである、および
Yは、-COOHまたは-CHNである]
の化合物、またはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩を含む。

【0011】
好まし態様において、RはCHである。

【0012】
好ましい態様において、R、R、R、R、R、R、R、およびRはHである。

【0013】
ハロゲンには、F、Br、I、Clが含まれる。好ましい態様において、XはFである。

【0014】
好ましい態様において、Yは-COOHである。

【0015】
好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、下記式で表されるフルルビプロフェンまたはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩を含む。
【化3】
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【0016】
「医薬上許容される塩」としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、およびアンモニウム塩;並びに、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。

【0017】
本発明の化合物は、当業界にて公知の方法により合成することができる。あるいは、本発明の化合物は、Sigma-Aldrich、CAYMAN CHEMICALなどから入手可能である。

【0018】
本発明の医薬組成物は、製薬分野における公知の方法によって製造することができる。本発明の医薬組成物の投与量は、製剤の形態、投与方法、使用目的、および当該医薬組成物の投与対象である患者の年齢、体重、症状等に基づき適宜決定される。例えば、本発明の医薬組成物がフルルビプロフェンを含む場合、成人(体重60kg)1日あたり、0.013~401mg/kg、好ましくは、0.13~40mg/kg、より好ましくは、0.44~12mg/kgで投与すればよい。

【0019】
本発明の医薬組成物は、式(I)の化合物の作用を阻害しない他の成分(例えば、医薬上許容されるキャリア等)をさらに含有してもよい。

【0020】
本明細書における「医薬上許容されるキャリア」とは、医薬または動物薬を製造するときに、処方を補助することを目的として用いられる物質であって、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。「医薬上許容されるキャリア」としては、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等;防腐剤;抗酸化剤;安定剤;矯味矯臭剤等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0021】
「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース等を挙げることができる。

【0022】
「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ワックス、タルク、コロイドシリカ等を挙げることができる。

【0023】
「結合剤」としては、例えば、α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。

【0024】
「崩壊剤」としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等を挙げることができる。

【0025】
「溶剤」としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、トリカプリリン等を挙げることができる。

【0026】
「溶解補助剤」としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等を挙げることができる。

【0027】
「懸濁剤」としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等を挙げることができる。

【0028】
「等張化剤」としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等を挙げることができる。

【0029】
「緩衝剤」としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等を挙げることができる。

【0030】
「無痛化剤」としては、例えば、ベンジルアルコール等を挙げることができる。

【0031】
「防腐剤」としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等を挙げることができる。

【0032】
「抗酸化剤」としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等を挙げることができる。

【0033】
安定剤、矯味矯臭剤としては、製薬分野において通常用いられるものを用いることができる。

【0034】
本発明の医薬組成物は、経口的に投与しても、非経口的に(例えば、静脈内、直腸内、腹腔内、筋肉内、または皮下に)投与してもよく、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与することができる。中でも、投与が容易であるとの理由から、本発明にかかる医薬組成物は、経口的に投与されることが好ましい。

【0035】
経口投与用の製剤としては、例えば、粉剤、顆粒剤、錠剤、リポソーム、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤等の固形製剤や、シロップ剤等の液状製剤を挙げることができる。

【0036】
「液状製剤」は、医薬上許容されるキャリアとして、例えば、水;グリセロール、グリコール、ポリエチレングリコール等の有機溶媒;またはこれらの有機溶媒と水との混合物等を用いて、製薬分野において通常用いられる方法で製造することができる。また、上記液状製剤は、さらに、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、安定剤等を含んでいてもよい。

【0037】
「固形製剤」は、医薬上許容されるキャリアとして、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤等を用いて、製薬分野において通常用いられる方法で製造することができる。

【0038】
経口投与用の製剤を調製する際には、目的に応じて、潤滑剤、流動性促進剤、着色剤、香料等をさらに配合してもよい。

【0039】
非経口投与用の製剤としては、例えば、注射剤、坐剤、ペレット、点滴剤等が挙げられる。かかる非経口投与用の製剤は、製薬分野において公知の方法に従って、本発明の医薬組成物を、希釈剤(例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)に溶解または懸濁させ、目的に応じて、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等をさらに加えることにより調製することができる。

【0040】
本発明の医薬組成物は、製薬分野において通常用いられる技術により、徐放性製剤とすることもできる。

【0041】
本発明の医薬組成物は、単独で投与してもよいし、他の薬剤と併用して投与してもよい。本発明の医薬組成物を他の薬剤と併用する場合、他の薬剤との混合物として同時に投与してもよいし、他の薬剤とは別の薬剤として同時にもしくは並行して投与してもよいし、あるいは経時的に投与してもよい。

【0042】
本発明の医薬組成物の1日あたりの投与回数は特に限定されない。1日あたり1回の投与であってもよいし、複数回に分けて投与を行ってもよい。

【0043】
本発明の医薬組成物は、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、およびサル等)に対しても適用可能である。

【0044】
本発明の医薬組成物のアルデヒドデヒドロゲナーゼに対する作用は、当業界にて周知の方法により確認することができる。アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性の測定方法は、例えば、Sheikh他((1997)J.Biol.Chem.272:18817~18822);VallariおよびPietruszko(1984)J.Biol.Chem.259:4922;ならびにFarres他((1994)J.Biol.Chem.269:13854~13860)などに記載されている。

【0045】
例えば、ALDHを、NAD(例えば、0.8mM、1mM、2mM、または5mMのNAD)およびアルデヒド基質(例えば、14μMのプロピオンアルデヒド)とともに、25℃で、50mMのピロリン酸ナトリウムHCl緩衝液(pH9.0)、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、または50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中でインキュベートし、NADの還元を、分光光度計を用いて340nmで、または蛍光微小光度計を用いた蛍光増加によって監視する。酵素活性は、標準の分光光度方法を用いて、例えば、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、NADからNADHへの還元反応を340nmで測定することによって、調べることができる。あるいは、2.4mMのNAD、10mMのアセトアルデヒド、0.1のNaPPi緩衝液(pH9.5)を用いて、25℃で実施してもよい。さらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性は、NADHの生成を、NADHを消費し、検出可能なシグナルを提供する別の酵素反応と連結することによっても測定することができる。そのような酵素反応としては、US2005/0171043およびWO2005/057213に記載のように、リザズリンをその酸化型である蛍光化合物レゾルフィンへと還元するジアフォラーゼに基づいた反応が挙げられる。生成された蛍光レゾルフィンを590nmで検出することにより、ALDHの酵素活性を測定することができる。

【0046】
また、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性は、市販の測定キットを用いて測定することもできる。そのようなキットとしては、Aldehyde Dehydrogenase Activity Colorimetric Assay Kit(BioVision、# K731-100)が挙げられる。

【0047】
ALDHはアルデヒドの代謝に関与する酵素であることから、本発明の医薬組成物は、アルデヒドの代謝を促進するため、およびアルデヒドの関連する疾患を治療または予防するために用いることができる。アルデヒドの関連する疾患としては、例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患、糖尿病および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの代謝性疾患、心筋梗塞および脳梗塞などの虚血性疾患、腫瘍、および高血圧などが挙げられる。

【0048】
ある態様において、本発明は、上記式(I)の化合物、またはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩を対象に投与することを含む、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強する方法に関する。別の態様において、本発明は、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強する医薬の製造のための、上記式(I)の化合物、またはその異性体もしくはそれらの医薬上許容される塩の使用に関する。さらに別の態様において、本発明は、インビトロで上記式(I)の化合物をアルデヒドデヒドロゲナーゼと接触させることを含む、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を増強する方法に関する。本発明の方法および使用は、本発明の医薬組成物に関する説明に準じて実施可能である。

【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
1.方法
(1)使用動物
8 週齢のC57BL/ 6 Cr Slc 雄マウスを用いた。
【実施例】
【0051】
(2)飼育方法
広島大学自然科学研究支援開発センター生命科学実験部・動物実験部、霞動物実験施設で用意された餌と水を自由に摂取させた。飼育は、明暗サイクル(明期:12時間、暗期12時間)が維持された22-24℃の室内にて、摂食、飲水は自由に行える環境下で行った。すべての実験は広島大学において使用許可を得、実験動物における配慮と使用におけるNational Institute of Health (NIH) ガイドに従って行った。
【実施例】
【0052】
(3)使用細胞
ヒト胎児腎細胞 (HEK 293T 細胞)を用いた。
【実施例】
【0053】
(4)細胞の培養方法
HEK 293 細胞:10 % FCS (ウシ胎児血清) と1 % Antibiotics を含むDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium) 培地を用い、37℃、5 % CO2/95 % air 下で行った。細胞は48 時間以内に新しい培地に交換し維持した。
【実施例】
【0054】
(5)使用薬物
フルルビプロフェン(CAYMAN CHEMICAL)は滅菌水に溶かし、約pH 8.2 になるまで1N NaOHを添加した後、粉末が完全に溶けきるまで室温で撹拌した。
【実施例】
【0055】
(6)FG ビーズによるアフィニティー精製に用いるサンプル調製
in vitro:細胞を10 cmディッシュに播種し、コンフルエントとなった時点でフルルビプロフェンで刺激し、37℃、5 % CO2/ 95 % air 下で4 時間インキュベートした。各ディッシュを1× PBS で洗浄後、溶解バッファーを適量加え、氷上で20分間静置した。セルスクレーパーで細胞を剥離させ回収し、4 ℃、15,000 rpm、20 分間遠心分離して上清画分を回収した。上清の一部を用いてタンパク定量を行い(タンパク定量参照)、タンパク質濃度を求めた後、各サンプルが6 mg/mL となるように溶解バッファーにて希釈した。
in vivo : マウスを解剖し、摘出した脳・末梢の各組織を液体窒素にて急速冷凍し、その後 -80 ℃で保存した。保存しておいた各組織に溶解バッファーを適量加え、氷冷しながら100 回転ずつホモジナイズ(手動回転)した。これを4 ℃, 15,000 rpm, 45 分間遠心分離し、上清画分を回収した。上清の一部を用いてタンパク定量を行い(タンパク定量参照)、タンパク質濃度を求めた後、各サンプルが6 mg/ mL になるように溶解バッファーで希釈した。

溶解バッファーの組成(最終濃度)
10 mM HEPES-NaOH (pH 7.5)
0.9% NaCl
1 mM EDTA
1 mM Na3VO4
10 mM NaF
1% NP-40
10 ng/μL アプロチニン
10 ng/μL ロイペプチン
1 mM PMSF
【実施例】
【0056】
(7)タンパク定量
各サンプルのタンパク質濃度をBradford 法により定量した。このプロテインアッセイの原理は、Bradford 色素結合法に基づいており、タンパク質がCBB (Coomassie Brilliant Blue) G-250 と結合すると、最大吸収波長が465 nm から595 nm に移動することを利用している。タンパク質の定量範囲が50~500 μg/ mL であるため、その範囲に入るように各サンプルを希釈した。5 倍希釈したBio-Rad Protein Assay 200 μL を96 穴平底プレートに加え、標準物質であるBSA 溶液および各サンプルを添加、混合し、15 分後にマイクロプレートリーダーで波長595 nm の吸光度を測定した。得られた標準BSA溶液の吸光度から検量線を作成し、各サンプルのタンパク質濃度を求めた。
【実施例】
【0057】
(8)FG ビーズへのリガンドの固定化
フルルビプロフェンのタンパク質との結合にはプロピオン酸の部位が重要であると予想したため、4’-ヒドロキシフルルビプロフェンのヒドロキシル基をFG ビーズと結合させることにした。以下に概要を記す。

4’-ヒドロキシフルルビプロフェン
【化4】
JP2015078145A_000005t.gif

1. 1 サンプルあたり2.5 mg (100 μL)のFG ビーズを室温で15,000 rpm、5 分間遠心分離し、上清を廃棄した。
2. ビーズにDMF 500 μL を加えてビーズを分散させ、室温で15,000 rpm、5 分間遠心した後に上清を廃棄した。これを更に2 回繰り返し、計3 回ビーズを洗浄した。
3. 洗浄後ビーズにDMF に溶解した4’-ヒドロキシフルルビプロフェン溶液 (2 mM) 500 μL とK2CO3 1.4 mg を添加し、ローテーターを使用して25 rpm、60 ℃、24 時間反応させた。
4. 室温で15,000 rpm,5 分間遠心分離した後に上清を廃棄し、50 % DMF 500 μLで2 回洗浄した。
5. 超純水 500 μL で1 回、50 % MeOH 500 μL で3 回洗浄して50 % MeOH 100 μL中にビーズを分散させた。

【実施例】
【0058】
(9)標的タンパク質のアフィニティー精製
以下、手袋を着用し氷上で操作を行った。
1. 各タンパク質 (6mg/ mL) を100 mM KCl バッファーで3 mg/ mL に希釈し (全250μL/ サンプル)、4 ℃で15,000 rpm、30 分間遠心分離した後に上清を回収した。
2. 3. の遠心分離中にリガンド固定化ビーズを1 サンプルあたり20 μL (0.5 mg) ずつ分注し、100 mM KCl バッファーを加えてビーズを分散した。スピンダウン後磁気分離スタンド(Invitrogen, # 123.21D) を用いて磁気分離した。これを2 回繰り返し、計3回洗浄を行った。
3. 洗浄後のビーズに1.の遠心分離後のタンパク質溶液を200 μL ずつ加え、ローテーターを使用し、4 ℃で4 時間撹拌した。その後、100 mM KCl バッファーで3 回洗浄(磁気分離後に上清を廃棄)を行った。
4. 上清を廃棄したビーズへ1 M KCl バッファーを30 μL 加え、氷上で5 分間静置して結合タンパク質を溶出させ、スピンダウン後遠心分離を行った。上清を回収し、これに4× Laemmli を10 μL ずつ加え、混合した後に98 ℃で5 分間加熱して塩溶出サンプルを作成した。
5. 上清回収後のビーズに1× Laemmli 溶液を40 μL 加え、98 ℃で5 分間加熱した。その後スピンダウンし、室温で磁気分離を行った。上清を回収しこれを加熱溶出サンプルとした。
6. 塩溶出、加熱溶出サンプルをそれぞれ10 μL ずつ電気泳動した。
7. 泳動後のゲルを銀染色し、結た。

100 mM KCl バッファー
20 mM HEPES-NaOH (pH 7.9)
100 mM KCl
1 mM MgCl2
0.2 M CaCl2
0.2 M EDTA
10 % (v/ v) グリセロール
0.1% NP-40
1 mM DTT
0.2 mM PMSF

4× Laemmli
250 mM Tris-HCl (pH 6.8)
20% 2-メルカプトエタノール
40% グリセロール
8% SDS
0.05% Bromo Phenol Blue

1M KCl バッファー: 上記の100 mM KCl バッファー25 mL に2.5 M KCl 18mL と超純水7m L を加えて撹拌した。

【実施例】
【0059】
(10)標的タンパク質のアフィニティー精製(競合阻害)
上記(9)3 のビーズとタンパク質溶液のインキュベーション前に、タンパク質溶液に競合阻害用のリガンド溶液(0, 2, 10 mM, 最終濃度 0, 0.2 , 1 mM)をDMSO 濃度が1 %となるように添加し4℃で2 時間プレインキュベーションした。
【実施例】
【0060】
(11)標的タンパク質のアフィニティー精製(ドラッグエリューション)
上記(9)3 の肝臓抽出液と反応後のビーズに、ドラックエリューション用溶出液 (0、100、500 mM、最終濃度0、1、5 mM、100 mM KCl バッファーへDMSO 濃度が1 %となるように希釈した)を30μL 加え、ビーズを分散して氷上で1 時間静置した。磁気分離により上清を回収し、これに4× Laemmli を10μL ずつ加え、混合した後に98 ℃で5 分間加熱してドラッグエリューション溶出サンプルを作成した。
【実施例】
【0061】
(12)銀染色
Wako の銀染色MS キット(和光純薬工業, # 299-58901)を用い、製品プロトコルの手順で行った。
一部、ナカライの銀染色キット(Nacalai tesque, # 306-42)も使用した。nano LC-MS/ MSによる解析を行ったサンプルについては全てWako のキットを使用した。
【実施例】
【0062】
(13)ウェスタンブロット解析に用いるサンプル調製
各ディッシュを1× PBS で洗浄後、溶解バッファーを加え、氷上で20 分間静置した。セルスクレーパーで細胞を剥離させ回収し、4 ℃、15,000 rpm、20 分間遠心分離して上清を回収した。上清に対して4×Laemmli バッファーを3: 1 の割合で加え、95 ℃で3 分間加熱処理した後に氷上で静置したものをサンプルとした。保存は-60 ℃にて行った。
【実施例】
【0063】
(14)ウェスタンブロット解析
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE) により細胞内タンパク質を分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。その膜をスキムミルクまたはウシ血清アルブミン(BSA) により室温で1 時間ブロッキングした後に、特異的な一次抗体と共に4 ℃で一晩インキュベーションした。さらに西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP) 標識二次抗体と共に室温で1 時間インキュベーションした。 (目的タンパク質に対する条件は表1参照)。その後、ECLTM detection kit を用いてX 線フィルムに露光して検出した。また、バンドはImage J 1.45s を用いて測定した。
【表1】
JP2015078145A_000006t.gif
【実施例】
【0064】
(15)アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性の測定
BioVisionのAldehyde Dehydrogenase Activity Colorimetric Assay Kit(BioVision、# K731-100)を用い、製品プロトコルの手順で行った。この方法では、NAD依存的酵素であるALDHによりアルデヒドが酸化されNADHが産生され、NADHが無色のプローブを還元して450 nmでの強力な吸光度を示す有色のプローブを生成させる。氷上で、HEK293 Ob-Rb細胞(レプチン受容体のOb-Rbアイソフォームを恒常的に発現するHEK293細胞)(1 x 106 細胞)を氷冷したALDH Assay Buffer(200μl)で10分間ホモジェナイズし、その後12,000 rpmで5分間遠心分離して核および不溶性物質を除去した。回収した上清1μlを96穴プレートに添加し、フルルビプロフェン添加群にはフルルビプロフェンを最終濃度が100μMとなるように加え、ALDH Assay Bufferで最終量を50μlに調整した。製品プロトコルにしたがいReaction Mixを調製し、50μlのReaction Mixを、スタンダード、サンプル、およびバックグラウンドコントロールを含むウェルにそれぞれ添加し、混合した。その後、45分の時点で450 nmで吸光度を測定し、ALDH活性を算出した。
【実施例】
【0065】
(16)統計処理
各群間における有意差検定は、Student t-testにて行った。
【実施例】
【0066】
2.結果
(1)フルルビプロフェン結合タンパク質の同定
フルルビプロフェンの作用機序を明らかにするため、フルルビプロフェンと結合するタンパク質の同定を試みた。4’-ヒドロキシフルルビプロフェンを固定化したFG ビーズ(図1A)とマウスの肝臓抽出液との反応で得られた塩溶出および加熱溶出サンプルを用いてSDS-PAGE でタンパク質を分離後、銀染色を行ったところ、50 kDa 付近に複数のバンドが認められた(図1B)。主なバンドは加熱溶出サンプルにおいて認められており、加熱溶出により得られたタンパク質のほうがフルルビプロフェンと強固に結合していることから、その後の解析は加熱溶出サンプルを用いて行った。
【実施例】
【0067】
50 kDa 付近のバンドの中でフルルビプロフェンと特異的に結合するものを明らかにするため、肝臓抽出液と反応後のビーズにフルルビプロフェンを加えてドラッグエリューションを行ったところ、50 kDa 付近のバンドが増加していた(図1C)。さらに、ビーズと反応させる前の肝臓抽出液にフルルビプロフェンを加えて競合阻害実験を行った。その結果、フルルビプロフェンの濃度依存的に減少しているバンドがいくつか認められた(図1D)。従って、これらのバンドはフルルビプロフェンと特異的に結合しているタンパク質であることが示唆された。
【実施例】
【0068】
さらに、これらのタンパク質がフルルビプロフェン以外のNSAIDsとも結合しているのかを調べるために、アスピリン、イブプロフェン、メロキシカムを用いて競合阻害を行った。その結果、フルルビプロフェンとのプレインキュベートにより、50 kDa 付近のバンドが減少していたが、その他のNSAIDsとの反応ではバンドが減少しておらず(図1D)、これらのタンパク質はNSAIDsと結合していないことが示唆された。
【実施例】
【0069】
また、肝臓と同様に、大脳皮質、海馬、視床下部、膵臓、白色脂肪においても、50 kDa付近のこのバンドが検出された(図1E)。
【実施例】
【0070】
これらのタンパク質は、nano LC-MS/ MS 解析によりミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ (ALDH2, 56 kDa) とミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼX (ALDH1B1, 57 kDa) であると同定された。FG ビーズの加熱溶出サンプルを用いてウェスタンブロットを行い、これらのタンパク質がALDH2およびALDH1B1であることを確認した(図1F)。また、ビーズと反応させる前の肝臓抽出液にフルルビプロフェンを加えて競合阻害実験を行ったところ、これらタンパク質の収率が低下した(図1F)。さらに、ドラッグエリューションで得られたサンプル、および競合阻害により得られた加熱溶出サンプルを、ALDH2の特異的な抗体を用いてウェスタンブロットにより解析した。その結果、フルルビプロフェンはALDH2と確かに結合していることが認められた(図1G、H)。一方、その他のNSAIDsにおいてはALDH2とほとんど結合していないことが示唆された(図1H)。
【実施例】
【0071】
(2)培養細胞内におけるフルルビプロフェンとALDH2との結合
フルルビプロフェンはALDH2およびALDH1B1 と結合していることを図1で示した。しかし、これは組織のライセート中、4℃における結合である。そこで次に、ALDHは培養細胞内の生理的条件下においてもフルルビプロフェンと結合しているか否かについて検討を行った。HEK293 細胞をフルルビプロフェン(100 μM)で4 時間処理し、回収した後に、フルルビプロフェンを固定化したFG ビーズと反応させた。FG ビーズと結合した加熱溶出サンプルをウェスタンブロットによりALDH2抗体を用いて解析した。その結果、マウスの肝臓抽出液を用いたin vitro での検討と同様に、フルルビプロフェンと相互作用するALDH2の発現が認められた。また、フルルビプロフェン処理した細胞では、未処理の細胞と比較してフルルビプロフェンと結合するALDH2の発現が減少していた(図2)。この結果は、細胞内でフルルビプロフェンとALDH2が結合することで、フルルビプロフェンを固定化したFG ビーズと結合できるALDH2が減少したためと考えられる。従って、培養細胞内においてもALDH2がフルルビプロフェンと結合していることが示唆された。
【実施例】
【0072】
(3)フルルビプロフェンのALDH2に対する作用
フルルビプロフェンのALDH2に対する作用を、Aldehyde Dehydrogenase Activity Colorimetric Assay Kit(BioVision、# K731-100)を用いて、HEK293 Ob-Rb細胞において独立に4回測定した。その結果、フルルビプロフェンはALDH2の酵素活性を増強することが確認された(図3)。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図1E】
4
【図1F】
5
【図1G】
6
【図1H】
7
【図2】
8
【図3】
9