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明細書 :強度および摩擦摩耗特性に優れた金属基自己潤滑複合材料およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-102235 (P2016-102235A)
公開日 平成28年6月2日(2016.6.2)
発明の名称または考案の名称 強度および摩擦摩耗特性に優れた金属基自己潤滑複合材料およびその製造方法
国際特許分類 C22C   1/10        (2006.01)
B22D  19/00        (2006.01)
B22D  13/02        (2006.01)
C22C   9/00        (2006.01)
B22D  13/04        (2006.01)
FI C22C 1/10 G
B22D 19/00 M
B22D 19/00 W
B22D 13/02 503J
C22C 1/10 E
C22C 9/00
B22D 13/04
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-240928 (P2014-240928)
出願日 平成26年11月28日(2014.11.28)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 尚
【氏名】茅野 智昭
【氏名】山田 素子
【氏名】渡辺 義見
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4K020
Fターム 4K020AA23
4K020AA24
4K020AB01
4K020AC04
4K020BA08
4K020BB26
4K020BC02
要約 【課題】強度が高く、かつ摺動特性など摩擦摩耗特性に優れた金属基複合材料を提供する。
【解決手段】金属母材が時効硬化型合金であり、金属母材に対する固体潤滑粒子が母材体積比で1%~10%である金属基複合材料。金属基複合材料は、溶媒金属母材粉末、溶質金属母材粉末および固体潤滑粒子からなる混合粉末に母材溶湯を流し込み、遠心力を利用した混合粉末法にて製造される。さらに、作製された金属基複合材料に時効処理あるいは溶体化処理後の時効処理を施すことで、金属基複合材料の強度が向上する。
【選択図】 図9
特許請求の範囲 【請求項1】
純金属中に添加元素を添加した金属合金を母相とし、該金属母相中に固体潤滑粒子が体積比で1vol%~10vol%であることを特徴とする金属基複合材料。
【請求項2】
前記金属基複合材料において溶質元素と固体潤滑粒子との間に化合物層を形成するような金属合金を該金属基複合材料の金属母相とし、該金属母相中に固体潤滑粒子が体積比で1vol%~10vol%であることを特徴とする金属基複合材料。
【請求項3】
時効硬化型合金を母相としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の金属基複合材料。
【請求項4】
遠心力混合粉末法にて作製したことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属基複合材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の金属基複合材料に時効処理あるいは溶体化処理と時効処理を施したことを特徴とする金属基複合材料。
【請求項6】
母相がCu—Ti合金であり、固体潤滑粒子がグラファイトであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の金属基複合材料。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、強度および摩擦摩耗特性に優れた金属基自己潤滑複合材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摩擦摩耗特性に優れた金属材料として、金属母相中にグラファイトや二硫化モリブデンなど固体潤滑物質を複合化した金属基自己潤滑複合材料が提案されている。この固体潤滑粒子であるグラファイトや二硫化モリブデンは六方晶型の層状結晶構造を有しているため、高い潤滑性を持つ。それゆえ、これら固体潤滑粒子を金属母相に複合化した金属基自己潤滑複合材料は、相手材料との摩擦係数が低く、かつ摩擦摩耗時における耐摩耗性が高い。
【0003】
このような金属基自己潤滑複合材料の製造方法として、特許文献1および特許文献2で示されている焼結法があげられる。特許文献1で提案している金属基自己潤滑複合材料は、質量分率でNiが20~40%、Pが0.1~0.9%、Cが1~8%を含有し、かつ5~25%の気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金である。一方、特許文献2では、金属母相中に質量分率で0.01%~40%の固体潤滑粒子を含む自己潤滑焼結合金を提案している。しかし、この焼結法は、大きな部材の製造が困難であることや材料内部における空孔の存在により強度が低いという欠点を有する。
【0004】
金属母相中に微細な固相粒子を複合化させる方法の一つとして、特許文献3に示す遠心力混合粉末法がある。この技術は、まず母材金属粉末と複合化させたい固相粒子を混合して混合粉末1を作製する(図1参照)。そして、該混合粉末1を円筒形状金型2に投入した後、前記円筒形状金型2を回転させることによって該混合粉末1に遠心力を印加し、湯道3を通じて溶解炉で溶解された母材金属溶湯4を流し込む(図2参照)。凝固後、微細な固相粒子が金属母相に強固に固定され、金属母相中に微細な固相粒子5が均一あるいは傾斜分散した鋳造材を得ることできる(図3参照)。本技術による製品の大きさは鋳型のサイズに依存するため、大きな部材を容易に製造することができる。また、材料内部の空孔の低減が可能であることから、該技術を応用することで前記問題点の解決を期待することができる。
【0005】
特許文献4では、前記遠心力混合粉末法によって作製した、金属母相中に固体潤滑粒子および硬質粒子を複合化した金属基自己潤滑複合材料が提案されている。この金属基自己潤滑複合材料は遠心力混合粉末法にて作製されるため、製品の寸法制限が小さい。さらに、この金属基自己潤滑複合材料は、金属母材中にSiCやダイヤモンドなど比較的大きな硬質粒子が分散しているため、純金属を母材とする金属基自己潤滑複合材料に比べて高い強度を有する(図4参照)。しかしながら、この技術を用いた場合、金属母相中の硬質粒子分布を制御ためには、厳密な鋳造条件の設定が必要である。また、固体潤滑粒子と金属母相との濡れ性が悪い場合は、固体潤滑粒子と母相との結合力が弱く、使用中に固体潤滑粒子が母相から脱落する問題を有している。特に、Cuと固体潤滑粒子であるグラファイトは濡れ性が悪いため、Cuを母相とする場合、Cu母相とグラファイトの濡れ性を改善する必要がある。
【0006】
しかしながら、金属基自己潤滑複合材料において、強度、摩擦摩耗特性および固体潤滑粒子と母材の結合力のすべてを改善する方法は、まだ見出されていない。高い耐久性および良好な摩擦摩耗特性を有する金属基自己潤滑複合材料を得るためにも、強度、摩擦摩耗特性および母相と固体潤滑粒子の結合力を、すべて改善するような材料設計および手段が必要とされている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2002-180162
【特許文献2】特開平11-241129
【特許文献3】特開2008-284589
【特許文献4】特開2014-129593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記点に鑑みて、金属母相の強度が高く、かつ母相と固体潤滑粒子との結合力に優れた金属基自己潤滑複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、金属基自己潤滑複合材料の金属母相として、微細な第二相粒子が分散し、かつ固体潤滑粒子と母相の間に化合物層を形成するような合金を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の金属基自己潤滑複合材料およびその製造方法が提供される。
【0010】
[1]純金属中に添加元素を添加した金属合金を母相とし、該金属母相中に固体潤滑粒子が体積比で1vol%~10vol%であることを特徴とする。
【0011】
[2]前記金属基複合材料において溶質元素と固体潤滑粒子との間に化合物層を形成するような金属合金を該金属基複合材料の金属母相とし、該金属母相中に固体潤滑粒子が体積比で1vol%~10vol%であることを特徴とする。
【0012】
[3]時効硬化型合金を母相としたことを特徴とする。
【0013】
[4]遠心力混合粉末法にて作製したことを特徴とする。
【0014】
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の金属基複合材料に時効処理あるいは溶体化処理と時効処理を施したことを特徴とする。
【0015】
[6]母相がCu—Ti合金であり、固体潤滑粒子がグラファイトであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】遠心力混合粉末法における母材金属粉末と固相粒子粉末の混合粉末を回転中の円筒形状金型に投入する方法を模式的に描いた図である。
【図2】遠心力混合粉末法における母材金属溶湯を回転中の円筒形状金型に流し込む方法を模式的に描いた図である。
【図3】遠心力混合粉末法にて作製した円筒形状複合材料を模式的に描いた図である。
【図4】摺動面近傍に固体潤滑粒子がより多く傾斜分散した金属基自己潤滑複合材料を模式的に描いた図である。
【図5】遠心力混合粉末法にて金属基自己潤滑複合材料を作製する際に用いた真空遠心鋳造装置を模式的に描いた図である。
【図6】Cu-Ti基自己潤滑複合材料の断面組織を示した走査型電子顕微鏡による二次電子像である。
【図7】Cu-Ti基自己潤滑複合材料の断面組織を示した走査型電子顕微鏡による反射電子組成像である。
【図8】Cu-Ti基自己潤滑複合材料の断面組織に対するエネルギー分散型X線分光装置にて得られたTi分布およびC分布である。
【図9】Cu—Ti基自己潤滑複合材料、Cu基自己潤滑複合材料および純Cu鋳造材の平均摩擦係数と摩耗痕断面積である。
【図10】Cu—Ti基自己潤滑複合材料、Cu基自己潤滑複合材料および純Cu鋳造材の降伏応力である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0018】
本発明の金属基複合材料において、金属母相に対する固体潤滑粒子が体積比で1%~15%であることが好ましく、1%~10vol%がより好ましい。前記金属母相は時効硬化型合金であり、その中でもCu-Ti合金が好ましい。前記Cu-Ti合金のTi濃度は、質量分率でCuに対して1%~8%であることが好ましい。前記固体潤滑粒子はグラファイトあるいは二硫化モリブデンであることが好ましく、グラファイトがより好ましい。本発明の金属基複合材料は、母材金属粉末および固体潤滑粒子からなる混合粉末に母材溶湯を流し込み、遠心力を利用した混合粉末法にて作製されることが好ましい。さらに、本発明の金属基複合材料は、該混合粉末法にて作製した該金属基複合材料に対し、時効処理あるいは溶体化処理と時効処理を施すことが好ましい。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
Cu—Ti母相中にグラファイト粒子が複合化されたCu—Ti基自己潤滑複合材料を製造する。
【実施例1】
【0021】
母材金属粉末である純Cu粉末に対して、Ti粉末を質量比(純Ti粉末/純Cu粉末)で1.87%添加し、平均粒子径50ミクロン(μm)のグラファイト粉末を体積比(グラファイト粉末/Cu—Ti粉末)で25%添加した混合粉末を作製し、該混合粉末10.2gを図5に示す真空遠心鋳造装置の鋳造用鋳型10に投入した。
【実施例1】
【0022】
また、母材金属11である純Cuインゴット105gを該真空遠心鋳造装置の坩堝に装填し、真空中にて該純Cuインゴットを溶解温度1260℃に加熱することにより母材溶融純Cuとした。
【実施例1】
【0023】
そして、該鋳造用鋳型および母材溶融純Cuを回転させて重力倍数62G(重力倍数1Gが重力場に相当)の遠心力を印加して、該母材溶融純Cuを該鋳造用鋳型10に流し込んだ。
【実施例1】
【0024】
この製造工程により、遠心力方向にグラファイト粒子が傾斜分散したCu—Ti基自己潤滑複合材料を得た。
【実施例1】
【0025】
その結果、該Cu—Ti基自己潤滑複合材料における遠心力方向の先端部には、グラファイト粒子が体積比で10%分散して複合化された。
【実施例1】
【0026】
さらに、比較材として純Cu母相中にグラファイト粒子が複合化されたCu基自己潤滑複合材料も作製した。
【実施例1】
【0027】
母材金属粉末である純Cu粉末に対して、平均粒子径50μmのグラファイト粉末を体積比(グラファイト粉末/Cu粉末)で25%添加した混合粉末を作製し、該混合粉末10.2gを図5に示す真空遠心鋳造装置の鋳造用鋳型10に投入した。
【実施例1】
【0028】
また、母材金属11である純Cuインゴット103.2gを該真空遠心鋳造装置の坩堝に装填し、真空中にて該純Cuインゴットを溶解温度1160℃に加熱することにより母材溶融純Cuとした。
【実施例1】
【0029】
そして、該鋳造用鋳型および母材溶融純Cuを回転させて重力倍数62Gの遠心力を印加して、該母材溶融純Cuを該鋳造用鋳型10に流し込んだ。
【実施例1】
【0030】
この製造工程により、遠心力方向にグラファイト粒子が傾斜分散したCu基自己潤滑複合材料を得た。
【実施例1】
【0031】
図6は、該Cu-Ti基自己潤滑複合材料における断面の走査型電子顕微鏡の二次電子像であり、グラファイト粒子がCu—Ti母相に複合化されている様子が確認できる。
【実施例1】
【0032】
また、図7は、該Cu—Ti基自己潤滑複合材料における断面の走査型電子顕微鏡の反射電子組成像であり、この写真からCu—Ti母相にグラファイト粒子および微細粒子が分散している様子が分かる。この微細粒子は、TiC、CuTiあるいはCuTiであった。
【実施例1】
【0033】
図8は該Cu—Ti基自己潤滑複合材料の断面に対し、エネルギー分散型X線分光装置にて得られたTi分布およびC分布である。この図からグラファイト粒子周りには、TiC層が生成していることが分かる。それゆえ、Cu-Ti母相とグラファイト粒子は強固に結合していることがいえる。
【実施例1】
【0034】
前記Cu—Ti基自己潤滑複合材料とCu基自己潤滑複合材料、同じ真空遠心鋳造装置にて純Cuインゴットを溶解して得られた純Cu鋳造材に対して、ボール・オン・ディスク式摩擦摩耗試験機にて摩擦摩耗試験を行った。
【実施例1】
【0035】
該摩擦摩耗試験にて用いた相手材は球状の軸受鋼(JIS:SUJ2)であり、荷重は7.85Nとした。また、耐摩耗性は、該Cu—Ti基自己潤滑複合材料、該Cu基自己潤滑複合材料および該純Cu鋳造材に生じた摩耗痕の断面積を測定することで評価した。
【実施例1】
【0036】
図9は、各試料の平均摩擦係数および摩耗痕断面積を示したグラフである。該Cu—Ti基自己潤滑複合材料および該Cu基自己潤滑複合材料における平均摩擦係数は両者とも同じ大きさであり、かつ純Cu鋳造材の平均摩擦係数に比べて小さい。
【実施例1】
【0037】
さらに、摩擦摩耗試験によって生じた摩耗痕の断面積は該Cu-Ti基自己潤滑複合材料が最も小さい。
【実施例1】
【0038】
すなわち、該Cu-Ti基自己潤滑複合材料が最も耐摩耗性に優れている。これは、母相中あるいは母相/グラファイト粒子界面における微細なCuTi粒子、CuTi粒子およびTiC粒子によるものだといえる。
【実施例1】
【0039】
次に、前記Cu—Ti基自己潤滑複合材料、Cu基自己潤滑複合材料および純Cu鋳造材に対して降伏応力を測定した。
【実施例1】
【0040】
その結果を、図10に示す。該Cu基自己潤滑複合材料の降伏応力は、該Cu基自己潤滑複合材料および該純Cu鋳造材に比べて最も小さい。
【実施例1】
【0041】
一方、該Cu—Ti基自己潤滑複合材料の降伏応力は、これらの試料の中で、最も高い。
【実施例1】
【0042】
これも、母相中あるいは母相/グラファイト粒子界面における微細なCuTi粒子、CuTi粒子およびTiC粒子の存在によるものである。
【実施例1】
【0043】
Cu-Ti合金は時効硬化型合金である。そのため、前記Cu—Ti基自己潤滑複合材料は、時効処理あるいは溶体化処理後の時効処理によって、より高い強度および摩擦摩耗特性を期待できる。
【実施例1】
【0044】
前記Cu—Ti基自己潤滑複合材料および前記Cu基自己潤滑複合材料は、球状黒鉛鋳鉄と同様に、母相中に黒鉛が分散しているため、より高い制振特性を期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、すべての軸受、スライダー、エンジン部品およびその他の摺動部品として利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9