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明細書 :金及びパラジウムを含む高分子保護ナノ粒子担持ハイドロタルサイト触媒、並びにその製造方法及び使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-111247 (P2014-111247A)
公開日 平成26年6月19日(2014.6.19)
発明の名称または考案の名称 金及びパラジウムを含む高分子保護ナノ粒子担持ハイドロタルサイト触媒、並びにその製造方法及び使用
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  33/00        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
C07C  49/78        (2006.01)
C07C  49/786       (2006.01)
C07C  49/403       (2006.01)
C07C  47/232       (2006.01)
C07C  47/54        (2006.01)
C07C  47/55        (2006.01)
C07C  47/575       (2006.01)
C07C  45/38        (2006.01)
C07C  45/39        (2006.01)
C07C  55/08        (2006.01)
C07C  59/01        (2006.01)
C07C  51/235       (2006.01)
C07C 229/22        (2006.01)
C07C 227/02        (2006.01)
B01J  31/28        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 35/02 H
B01J 33/00 C
B01J 37/16
C07C 49/78
C07C 49/786
C07C 49/403 A
C07C 47/232
C07C 47/54
C07C 47/55
C07C 47/575
C07C 45/38
C07C 45/39
C07C 55/08
C07C 59/01
C07C 51/235
C07C 229/22
C07C 227/02
B01J 31/28 Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 28
出願番号 特願2013-037206 (P2013-037206)
出願日 平成25年2月27日(2013.2.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り
優先権出願番号 2012055988
2012247151
優先日 平成24年3月13日(2012.3.13)
平成24年11月9日(2012.11.9)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】西村 俊
【氏名】海老谷 幸喜
【氏名】焼田 悠介
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100180862、【弁理士】、【氏名又は名称】花井 秀俊
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H006
4H039
Fターム 4G169AA03
4G169AA08
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB20A
4G169BB20B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB10
4G169CB19
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169EE01
4G169FA01
4G169FB43
4H006AA02
4H006AC44
4H006AC45
4H006AC46
4H006BA05
4H006BA25
4H006BA60
4H006BE30
4H006BS10
4H006BU32
4H039CA62
4H039CA65
4H039CC20
4H039CC30
要約 【課題】アルコール化合物又はアルデヒド化合物の酸化反応に再使用可能で且つ高い触媒活性を有する、微細な貴金属粒子を担持した固体触媒組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、金及びパラジウムを含む貴金属とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護ナノ粒子と、該高分子保護ナノ粒子を担持する、ハイドロタルサイトを含む担体とを含有する触媒組成物、並びにその製造方法に関する。また、本発明は、前記触媒組成物の存在下において、アルコール化合物の水酸基又はアルデヒド化合物のアルデヒド基を酸化してカルボニル基に変換する酸化工程を含む、カルボニル化合物の製造方法に関する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
金及びパラジウムを含む貴金属とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護ナノ粒子と、該高分子保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含む担体と、を含有する触媒組成物。
【請求項2】
請求項1の触媒組成物を製造する方法であって、
金のイオンとパラジウムのイオンとをポリビニルピロリドンの存在下で還元して、金及びパラジウムを含む貴金属とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護ナノ粒子を形成させる、高分子保護ナノ粒子形成工程;
前記高分子保護ナノ粒子とハイドロタルサイトを含む担体とを接触させて、該高分子保護ナノ粒子を該担体に担持させる、触媒組成物形成工程;
を含む、前記方法。
【請求項3】
請求項1の触媒組成物の存在下において、アルコール化合物の水酸基を酸化してカルボニル基に変換するアルコール酸化工程を含む、カルボニル化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1の触媒組成物の存在下において、アルデヒド化合物のアルデヒド基を酸化してカルボン酸基に変換するアルデヒド酸化工程を含む、カルボン酸化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金及びパラジウム粒子を高分子で保護したナノ粒子を担持したハイドロタルサイト触媒及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記触媒の存在下でアルコール化合物又はアルデヒド化合物を酸化して対応するアルデヒド化合物又はカルボン酸化合物のようなカルボニル化合物を形成させる、カルボニル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール化合物の水酸基を選択的に酸化する反応は、アルデヒド又はケトンのような有用なカルボニル化合物を製造するための工業的な有機合成プロセスである。現在、工業的に利用可能なアルコール化合物の酸化反応は、過マンガン酸カリウム又はクロム酸カリウム等の量論的酸化剤を用いる反応である。しかしながら、これらの量論的酸化剤を用いる場合、所望の生成物以外に大量の塩が形成される。このため、生成物を回収するために、塩からの分離精製が必要となる。上記の問題点に鑑み、近年では、酸素及び過酸化水素を含む酸化剤をアルコール化合物の選択的酸化反応に適用する試みが行われている。
【0003】
上記のような酸化剤を用いるプロセスの場合、反応後に残存する過剰の酸化剤を回収することが困難である。そこで、酸化反応を触媒する貴金属を担体に担持した固体触媒の使用が提案されている。固体触媒の場合、反応生成物及び未反応のアルコール化合物と触媒とを分離することが容易である。そのため、反応終了後に触媒を回収して、再使用することができる。アルコール化合物の選択的酸化反応を促進する固体触媒として、例えば、非特許文献1及び2は、金粒子をハイドロタルサイト(HT)に担持した触媒(Au/HT)を、特許文献1は、塩化ルテニウムをハイドロタルサイトに担持した触媒(Ru/HT)を、非特許文献3は、ルテニウム及びマンガンからなるヘテロメタリック種をハイドロタルサイトに担持した触媒(RuMn2/HT)を、特許文献2は、銅、銀又は金粒子のいずれかをハイドロタルサイトに担持した触媒(Cu/HT, Ag/HT, Au/HT)を、特許文献3は、塩化ロジウムをハイドロタルサイトに担持した触媒(Rh/HT)を、非特許文献4は、塩化ルテニウム錯体をハイドロキシアパタイト(HAP)に担持した触媒(Ru/HAP)を、非特許文献5は、パラジウム粒子をハイドロキシアパタイト(HAP)に担持した触媒(Pd/HAP)を、非特許文献6は、金粒子を酸化セリウムに担持した触媒(Au⊂CeO2)を、非特許文献7は、金をコア層に、パラジウムをシェル層に有する貴金属のコアシェル粒子を、ポリビニルアルコール(PVA)で保護し、酸化チタンに担持した触媒(Au@Pd-PVA/TiO2)を、それぞれ記載する。
【0004】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、金属ナノ粒子の保護配位子として知られており、重量平均分子量が8,000~40,000の範囲のPVPが慣用されている。非特許文献8は、アルコール化合物の選択的酸化反応を促進する触媒として、金及びパラジウムの粒子をポリビニルピロリドン(PVP)で保護したナノ粒子触媒(AuPd-PVP)を、非特許文献9は、金をコア層に、パラジウムをシェル層に有する貴金属のコアシェル粒子をポリビニルピロリドンで保護したナノ粒子触媒(Au@Pd-PVP)を、非特許文献10は、パラジウム及び金が結晶中に不規則に配置された貴金属粒子をポリビニルピロリドンで保護したナノ粒子触媒(AuPdランダム構造-PVP)を、非特許文献11は、パラジウムをコア層に、金をシェル層に、パラジウムを外部シェル層に有する貴金属のダブルコアシェル粒子をポリビニルピロリドンで保護したナノ粒子((Pd@Au)@Pd-PVP)を、それぞれ記載する。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-70723号公報
【特許文献2】特開2008-221080号公報
【特許文献3】特開2008-246400号公報
【0006】

【非特許文献1】Adv. Synth. Catal. 2009年, 第351巻, p. 1890
【非特許文献2】Green Chem. 2009年, 第11巻, p. 793
【非特許文献3】Angew. Chem. 2005年, 第117巻, p. 3489
【非特許文献4】J. Am. Chem. Soc. 2000年, 第122巻, p. 7144
【非特許文献5】J. Am. Chem. Soc. 2004年, 第126巻, p. 10657
【非特許文献6】Angew. Chem. Int. Ed. 2005年, 第44巻, p. 4066
【非特許文献7】Science 2006年, 第311巻, p. 362
【非特許文献8】J. Catal. 2008年, 第253巻, p. 22
【非特許文献9】ACS Catal. 2011年, 第1巻, p. 425
【非特許文献10】J. Phys. Chem. 1992年, 第96巻, p. 9927
【非特許文献11】Nano Lett. 2007年, 第7巻, p. 1701
【非特許文献12】11 AlChE Annual Meeting Conference Proceedings, ID=228567, 2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、触媒を再使用するためには、不均一系触媒である固体触媒を用いることが有利である。しかしながら、固体触媒の場合、触媒活性が低いという問題点が存在した。例えば、アルコール化合物の酸化反応のモデル基質である1-フェニルエタノールの酸化反応におけるターンオーバー数(TON)を比較すると、最も触媒活性が高いものでもTON = 236,000(非特許文献5)である。
【0008】
貴金属担持触媒において、触媒活性の向上には、触媒粒子の微細化及び複数貴金属の使用が知られている(非特許文献7~10)。しかしながら、PVP等を保護配位子に用いた貴金属保護ナノ粒子触媒の場合、触媒粒子の微細化は達成できるものの、担体に担持されていないため、反応混合物からの分離回収が困難であるという問題点が存在した(非特許文献8~10)。また、金及びパラジウムを含有するAuPdバイメタル触媒のように、複数貴金属の粒子を触媒の活性サイトに用いる場合、貴金属間の還元性の相違により、粒径を制御して均質な微細粒子を調製することが困難であるという問題点が存在した。
【0009】
上記の問題点に鑑み、本発明者らは、グリセロールの選択的酸化反応を促進する触媒として、金及び白金を含む貴金属の粒子をデンプン(starch)で保護し、これとハイドロタルサイト担体とを含有する触媒組成物(AuPt-starch/HT)を開発した(非特許文献12)。しかしながら、当該触媒組成物に含有される貴金属粒子の粒径等の構造制御は不十分であり、その触媒活性又は反応選択性、及び基質適用性も満足できるものではない。
【0010】
それ故、本発明は、アルコール化合物又はアルデヒド化合物の酸化反応に再使用可能で且つ高い触媒活性及び選択性を有する、微細な貴金属粒子を担持した固体触媒組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、ポリビニルピロリドンを保護配位子に、ハイドロタルサイトを担体に用いることにより、金及びパラジウムを含む貴金属の粒子の構造制御が可能となり、高い触媒活性を有する触媒組成物を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 金及びパラジウムを含む貴金属とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護ナノ粒子と、該高分子保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含む担体と、を含有する触媒組成物。
【0013】
(2) 前記(1)の触媒組成物を製造する方法であって、
金のイオンとパラジウムのイオンとをポリビニルピロリドンの存在下で還元して、金及びパラジウムを含む貴金属とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護ナノ粒子を形成させる、高分子保護ナノ粒子形成工程;
前記高分子保護ナノ粒子とハイドロタルサイトを含む担体とを接触させて、該高分子保護ナノ粒子を該担体に担持させる、触媒組成物形成工程;
を含む、前記方法。
【0014】
(3) 前記(1)の触媒組成物の存在下において、アルコール化合物の水酸基を酸化してカルボニル基に変換するアルコール酸化工程を含む、カルボニル化合物の製造方法。
【0015】
(4) 前記(1)の触媒組成物の存在下において、アルデヒド化合物のアルデヒド基を酸化してカルボン酸基に変換するアルデヒド酸化工程を含む、カルボン酸化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、アルコール化合物又はアルデヒド化合物の酸化反応に再使用可能で且つ高い触媒活性及び選択性を有する、微細な貴金属粒子を担持した固体触媒組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の触媒組成物の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明のカルボニル化合物の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図3】本発明のカルボン酸化合物の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図4】合成例2において、各触媒組成物の粒子の形態を示す図である。A:各触媒組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図;B:触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布。
【図5】合成例3において、各AuxPdy-PVP保護ナノ粒子のAu 4f軌道の電子状態を示す図である。A:各AuxPdy-PVP保護ナノ粒子のXPSスペクトルを示す図;B: 各AuxPdy-PVP保護ナノ粒子の4f7/2の結合エネルギーをPd含有量に対してプロットした図。
【図6】合成例4において、各触媒組成物の粒子のAu 5d軌道の電子状態を示す図である。A:各触媒組成物のAu L3-edge XANESスペクトルを示す図;B: 各触媒組成物のXANESスペクトルのホワイトライン近傍の面積をPd含有量に対してプロットした図。
【図7】合成例5において、各触媒組成物の粒子の形態を示す図である。A:各触媒組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図;B:触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布。
【図8】合成例7において、合成例1及び合成例5で調製したそれぞれのAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の形態を示す図である。A:それぞれのAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の走査透過電子顕微鏡像の高角散乱環状暗視野測定(STEM-HAADF)画像を示す図;B:Au60Pd40-PVP保護ナノ粒子の走査透過電子顕微鏡像のエネルギー分散形X線分光測定(STEM-EDS)によるライン分析を行った粒子のSTEM-HAADF像;C:Au60Pd40-PVP保護ナノ粒子の走査透過電子顕微鏡像のエネルギー分散形X線分光測定(STEM-EDS)によるライン分析の結果。
【図9】使用例3において、1回目使用、2回目使用及び3回目使用の各反応における1-フェニルエタノールの変換率及びアセトフェノンの収率を示す図である。
【図10】使用例3において、1回目使用後(初期)、2回目使用後(1回再使用)及び3回目使用後(2回再使用)の触媒組成物の粒子の形態を示す図である。A:各触媒組成物のTEM画像;B:各触媒組成物に含有されるAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の粒径分布。
【図11】使用例3において、1回目使用後(初期)及び3回目使用後(2回再使用)の触媒組成物のX線回折(XRD)スペクトルを示す図である。
【図12】使用例5において、1回目使用、2回目使用及び3回目使用の各反応におけるベンジルアルコールの変換率、ベンズアルデヒドの収率、及びベンズアルデヒドの選択率を示す図である。
【図13】合成例8において、触媒組成物の粒子の形態を示す図である。A:触媒組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図;B:触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布。
【図14】実施例9の触媒組成物の存在下における、1,3-プロパンジオールの酸化反応の3-ヒドロキシプロピオン酸の収率の経時変化を示す図である。
【図15】使用例8において、1回目使用、2回目使用、3回目使用及び4回目使用の各反応における1,3-プロパンジオールの変換率及び3-ヒドロキシプロピオン酸の収率を示す図である。
【図16】実施例9又は参考例5若しくは6の触媒組成物の存在下における、N-アセチルグルコサミンの酸化反応によって生成するN-アセチルグルコサミン酸の収率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<1. 触媒組成物>
本発明は、貴金属を含む高分子保護ナノ粒子と、該高分子保護ナノ粒子を担持する担体とを含有する触媒組成物に関する。

【0019】
本発明の触媒組成物において、貴金属は、金及びパラジウムを含む。本発明の触媒組成物に含有される金とパラジウムとのモル比は、99:1~1:99の範囲であることが好ましく、90:10~10:90の範囲であることがより好ましく、80:20~20:80の範囲であることが特に好ましく、60:40であることがとりわけ好ましい。上記のモル比で金及びパラジウムを含むことにより、本発明の触媒組成物は、アルコール化合物の酸化反応において高い触媒活性を発現することが可能となる。

【0020】
なお、触媒組成物に含有される金及びパラジウムのモル比は、限定するものではないが、例えば、触媒組成物を酸で処理して金及びパラジウムを溶出させ、該溶出液中の金及びパラジウムイオンを高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量することにより、決定することができる。

【0021】
本発明の触媒組成物において、前記貴金属を含む高分子保護ナノ粒子は、ポリビニルピロリドンを含む。ポリビニルピロリドンは、触媒組成物に含有される貴金属を保護する保護配位子として作用する。本発明の触媒組成物に含有されるポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、3,500~1,300,000の範囲であることが好ましく、8,000~360,000の範囲であることがより好ましく、8,000~58,000の範囲であることがより好ましく、58,000であることがとりわけ好ましい。上記の特徴を有するポリビニルピロリドンを含有することにより、貴金属粒子を担持する微細な保護ナノ粒子を形成することが可能となる。

【0022】
なお、触媒組成物に含有されるポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、限定するものではないが、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、決定することができる。

【0023】
本発明の触媒組成物において、前記高分子保護ナノ粒子を担持する担体は、ハイドロタルサイトを含む。本明細書において、「ハイドロタルサイト」は、一般式:
[(M2+)1-x(M3+)x(OH)2]x+[(An-)x/n・mH2O]x-
〔式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオンを表し、xは、0<x≦0.33の範囲であり、mは正の整数である。〕
【0024】
本発明の触媒組成物に含有されるハイドロタルサイトは、上記一般式中、
M2+が、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+又はZn2+等であることが好ましく、
M3+が、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+又はIn3+等であることが好ましく、
An-が、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3-、CO32-、SO42-、Fe(CN)63-、CH3COO-、シュウ酸イオン又はサリチル酸イオン等であることが好ましく、CO32-又はOH-であることがより好ましい。

【0025】
具体的には、上記一般式中、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An-がCO32-であって、Mg/Alが2~5の範囲であるハイドロタルサイトが好ましく、Mg/Alが5であるハイドロタルサイトがより好ましい。例えば、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO3)0.125・0.5H2O(式中、Mg/Al=3)で表される天然ハイドロタルサイト、又はMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3(式中、Mg/Al=2.25)等で表される合成ハイドロタルサイト等を使用することができる。

【0026】
本発明者らは、金及びパラジウムを含む貴金属を保護した、ポリビニルピロリドンを含む高分子保護ナノ粒子を、ハイドロタルサイトを含む担体に担持させた触媒組成物の存在下においてアルコール化合物の選択的酸化反応を行うと、他の活性金属種又は高分子保護材若しくは担体を用いる従来技術の触媒と比較して、酸化反応の触媒活性が向上することを見いだした。これは、ハイドロタルサイトの塩基性部分がアルコール性プロトンの脱プロトン化を促進することにより、貴金属による酸化反応の触媒活性を向上させるためと考えられる。それ故、上記のハイドロタルサイトを担体として含有することにより、アルコール化合物の選択的酸化反応における触媒活性を向上させることが可能となる。

【0027】
また、本発明者らは、金及びパラジウムを含む貴金属を保護した、ポリビニルピロリドンを含む高分子保護ナノ粒子を担体に担持させた触媒組成物の存在下においてアルコール化合物の選択的酸化反応を行うと、他の保護配位子を用いる従来技術の触媒と比較して、酸化反応の触媒活性が向上することを見いだした。これは、ポリビニルピロリドンを含む高分子保護ナノ粒子に担持された貴金属は、緻密で且つ均質な粒子構造を形成するため、他の保護配位子を用いた場合と比較して活性サイトが増加して触媒活性を向上させることによると考えられる。具体的には、本発明の触媒組成物に含有される、貴金属を担持する高分子保護ナノ粒子の平均粒径は、通常1~10 nmの範囲であり、典型的には1~8 nmの範囲であり、好ましくは1~5 nmの範囲である。前記貴金属を保護する高分子保護ナノ粒子が上記の平均粒径で且つ均質な粒径分布を有することにより、活性サイトを増加させて、アルコール化合物の選択的酸化反応における触媒活性を向上させることが可能となる。さらに、本発明の触媒組成物に含有される、貴金属を担持する高分子保護ナノ粒子は、均質な粒径分布を有することにより、金とパラジウムとの間の接触面積の増加に伴って、生成されたアニオニックな金が触媒活性の向上に関連していても良い。金の電子状態は、例えばX線光電子分光分析(XPS)の結合エネルギーで表記すると、金の4f7/2由来の結合エネルギーが81.5~83.9 eVの範囲であり、好ましくは82.9~83.9 eVの範囲である。この時、XPSの結合エネルギーは、C 1s由来のピーク位置を284.6 eVとして補正した時のものであり、バルク構造体の金では、金の4f7/2が84.0 eVを示す。

【0028】
なお、貴金属を担持する高分子保護ナノ粒子の平均粒径は、限定するものではないが、例えば、触媒組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、それぞれの触媒組成物に含有される高分子保護ナノ粒子から約500個の粒子を任意に選択して粒径を測定し、その平均を算出することにより、決定することができる。また、電子状態は、限定するものではないが、例えば、該当の高分子保護粒子をX線光電子分光分析(XPS)やX線吸収スペクトル(XAFS)を用いたエックス線吸収端近傍構造(XANES)分析で、評価することができる。

【0029】
本発明の触媒組成物において、前記貴金属を保護した高分子保護ナノ粒子中の金及びパラジウムの結晶構造は、例えば、金及びパラジウムが不規則に配置された合金構造、又はパラジウムをコア層に、金をシェル層に有するコアシェル構造等であり得る。いずれの結晶構造も本発明の触媒組成物に包含されるものとする。

【0030】
本発明の触媒組成物の形状及び寸法は、特に限定されない。前記触媒組成物の形状としては、限定するものではないが、例えば細粒状及び粉末状等の形状を挙げることができ、いずれの形状の触媒組成物も使用することができる。粉末状の形状であることが特に好ましい。

【0031】
本発明の触媒組成物において担体として含有されるハイドロタルサイトは、塩基性の固体触媒である。それ故、本発明の触媒組成物は、反応系から容易に分離及び洗浄し、再利用することが可能となる。

【0032】
<2. 触媒組成物の製造方法>
本発明はまた、上記で説明した触媒組成物を製造する方法に関する。
図1は、本発明の触媒組成物を製造する方法の一実施形態を示す工程図である。以下、図1に基づき、本発明の方法の好ましい実施形態について詳細に説明する。

【0033】
[2-1. 貴金属を含む高分子保護ナノ粒子形成工程]
本発明の方法は、金のイオンとパラジウムのイオンとをポリビニルピロリドンの存在下で還元して、金及びパラジウムを含む貴金属とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護ナノ粒子を形成させる、高分子保護ナノ粒子形成工程(工程S11)を含む。

【0034】
本工程において使用されるポリビニルピロリドンは、上記で説明した特徴を有するものであることが好ましい。

【0035】
本工程において使用される金のイオンは、塩化金酸が好ましい。また、パラジウムのイオンは、塩化パラジウムが好ましい。

【0036】
本工程において、金のイオンとパラジウムのイオンとをポリビニルピロリドンの存在下で還元する手段は、アルコール還元法による還元反応であることが好ましい。前記還元剤として用いるアルコールは、エタノール、プロパノール、エチレングリコール又はグリセロールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。前記還元反応の具体的な条件は、使用される還元剤に基づき当業者が適宜設定することができる。例えば、上記の還元反応混合物を実質的に分散又は溶解させる溶媒の存在下で加熱還流することが好ましい。この場合、溶媒は、水であることが好ましい。また、加熱還流の時間は、1~5時間の範囲であることが好ましい。上記の還元反応混合物は、所望により無機塩等のさらなる成分を含有してもよい。上記の条件で金のイオン及びパラジウムのイオンを還元することにより、金及びパラジウムを含む貴金属をポリビニルピロリドンに保護させることが可能となる。

【0037】
本工程において、金のイオンとパラジウムのイオンとを還元する順序は特に限定されない。例えば、金のイオン及びパラジウムのイオンを同時に還元してもよく、金のイオン及びパラジウムのイオンを別々に、すなわち金のイオン及びパラジウムのイオンのいずれかを還元し、次いで他方のイオンを連続的に還元してもよい。通常、前者の場合は金及びパラジウムが不規則に配置された合金構造を、後者の場合は金とパラジウムとから成るコアシェル構造の貴金属粒子を形成し得る。いずれの場合も本工程に包含されるものとする。

【0038】
上記の条件で本工程を実施することにより、金及びパラジウムを含む貴金属を微細且つ均質な粒径でポリビニルピロリドンに保護させることが可能となる。

【0039】
[2-2. 触媒組成物形成工程]
本発明の方法は、前記貴金属が保護された高分子保護ナノ粒子とハイドロタルサイトを含む担体とを接触させて、該高分子保護ナノ粒子を該担体に担持させる、触媒組成物形成工程(工程S12)を含む。

【0040】
本工程において使用されるハイドロタルサイトは、上記で説明した特徴を有するものであることが好ましい。

【0041】
本明細書において、「接触させる」とは、例えば、ある成分に別の成分を加えることを意味するが、これに限定されない。例えば、貴金属が保護された高分子保護ナノ粒子を含有する溶液中にハイドロタルサイトを含む担体を加えてもよく、ハイドロタルサイトを含む担体を含有する溶液中に貴金属が保護された高分子保護ナノ粒子を加えてもよい。この場合、各成分を接触させる順序及び速度は、使用される成分の化学的性質等に基づき適宜設定することができる。

【0042】
本工程は、前記貴金属が保護された高分子保護ナノ粒子とハイドロタルサイトを含む担体とを実質的に分散させる溶媒存在下で実施することが好ましい。本工程で使用される溶媒は、水であることが好ましい。

【0043】
本工程は、前記貴金属が保護された高分子保護ナノ粒子とハイドロタルサイトを含む担体とを加温条件下で接触させて混合物を得ることにより、該高分子保護ナノ粒子を該担体に担持させることが好ましい。或いは、前記貴金属が保護された高分子保護ナノ粒子とハイドロタルサイトを含む担体とを混合後、加温しても良い。前記混合物を加温する温度は、70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、還流温度であることが特に好ましい。また、前記混合物を加温する時間は、0.5~3時間であることが好ましく、0.5~2時間であることがより好ましく、1時間であることが特に好ましい。上記の処理により得られた触媒組成物は、吸引濾過等の慣用の手段によって分離することができる。

【0044】
上記の条件で本工程を実施することにより、本発明の触媒組成物を得ることが可能となる。

【0045】
<3.カルボニル化合物の製造方法>
本発明はまた、上記で説明した触媒組成物を用いるカルボニル化合物の製造方法に関する。
図2は、本発明のカルボニル化合物の製造方法の一実施形態を示す工程図である。以下、図2に基づき、本発明の方法の好ましい実施形態について詳細に説明する。

【0046】
[3-1. アルコール酸化工程]
本発明の方法は、本発明の触媒組成物の存在下において、アルコール化合物を酸化してカルボニル化合物に変換する、アルコール酸化工程(工程S21)を含む。より具体的には、本発明の方法は、本発明の触媒組成物の存在下において、アルコール化合物の少なくとも1個の水酸基を酸化してカルボニル基に変換する、アルコール酸化工程(工程S21)を含む。

【0047】
本工程において使用されるアルコール化合物は、特に限定されない。脂肪族、脂環式及び芳香族アルコールのいずれであってもよく、1級又は2級アルコールのいずれであってもよい。或いは、前記アルコール化合物は、アルドース又はケトースのような糖であってもよい。前記アルコール化合物の骨格部分は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個以上のヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、アミノ基又はN-アシル基のような1個以上の置換基を有してもよい。所望のカルボニル化合物に応じて、アルコール化合物を適宜選択することができる。前記アルコール化合物は、例えば、1,3-プロパンジオール、1-フェニルエタノール、ジフェニルメタノール、1-フェニル-1-プロペン-3-オール、ベンジルアルコール、4-メトキシベンジルアルコール、4-クロロベンジルアルコール又はシクロヘキサノールであることが好ましい。或いは、前記アルコール化合物は、アルドース又はそれらのN-アシル誘導体であることが好ましく、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体であることがより好ましい。前記N-アシル誘導体としては、N-アセチル誘導体が好ましい。ここで、前記アルドース又はそれらのN-アシル誘導体は、該化合物自体だけでなく、前記アルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩も包含する。

【0048】
本工程において得られる「カルボニル化合物」は、前記アルコール化合物の少なくとも1個の水酸基がカルボニル基に変換された化合物を意味する。例えば、本工程において使用されるアルコール化合物が1級アルコールの場合、対応するカルボニル化合物はアルデヒド又はカルボン酸であり、アルコール化合物が2級アルコールの場合、対応するカルボニル化合物はケトンである。例えば、本工程において使用されるアルコール化合物が1,3-プロパンジオールの場合、一方の水酸基のみがカルボン酸に酸化された、3-ヒドロキシプロピオン酸を選択的に合成することができる。或いは、本工程において使用されるアルコール化合物が糖の場合、環状ヘミアセタール部分に含まれる水酸基も反応し得る。この場合、対応するカルボニル化合物はカルボン酸である。例えば、本工程において使用されるアルデヒド化合物がD-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体の場合、D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択される対応するアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体を選択的に合成することができる。アルコール化合物を適宜選択することにより、所望のカルボニル化合物を得ることが可能となる。

【0049】
本工程は、前記アルコール化合物及びカルボニル化合物を実質的に分散又は溶解させる溶媒存在下で実施することが好ましい。本工程において使用される溶媒は、前記アルコール化合物の酸化反応を阻害するものでなければ特に制限されず、当該技術分野で慣用される溶媒を使用することができる。当該溶媒は、限定するものではないが、例えば、水、トルエン、キシレン及びトリメチルベンゼンを挙げることができる。水又はトルエンであることが好ましい。上記の溶媒存在下で本工程を実施することにより、アルコール化合物の酸化反応を阻害することなく所望のカルボニル化合物を得ることが可能となる。

【0050】
本工程は、酸素を含有する気体雰囲気下で実施することが好ましく、酸素又は空気気流下で実施することがより好ましい。前記気体の圧力は、1~2 atmの範囲であることが好ましく、1 atmであることがより好ましい。酸素又は空気気流下で実施する場合、その流量は、10~50 ml/分の範囲であることが好ましく、20~30 ml/分の範囲であることがより好ましい。上記の条件で本工程を実施することにより、アルコール化合物の酸化反応を促進することが可能となる。

【0051】
本工程において、アルコール化合物の酸化反応は、本発明の触媒組成物によって促進されるため、高温で反応させる必要がない。また、本工程において使用されるアルコール化合物が1級アルコールの場合、酸化反応の進行によってアルデヒド又はカルボン酸のいずれかのカルボニル化合物が得られる。それ故、反応温度及び/又は時間を適宜設定することにより、有用なアルデヒドを主生成物として得ることができる。具体的には、本工程の反応温度は、通常は、10~80℃の範囲であり、10~50℃の範囲であることが好ましく、10~40℃の範囲であることがより好ましい。また、反応時間は、0.5~24時間の範囲であることが好ましく、1~8時間の範囲であることがより好ましい。上記の条件で本工程を実施することにより、所望のカルボニル化合物を高収率で得ることが可能となる。

【0052】
[3-2. 触媒組成物分離工程及び再使用工程]
本発明の方法は、前記アルコール酸化工程を実施した後に、前記触媒組成物を反応系から分離する触媒組成物分離工程(工程S22)を含んでもよい。

【0053】
前記触媒組成物は、実質的に溶媒に不溶性の不均一系触媒である。それ故、容易に反応系から分離することができる。前記触媒組成物を反応系から分離する手段は特に制限されず、デカンテーション、遠心分離又は濾過のような、当該技術分野で慣用される通常の分離手段を使用すればよい。

【0054】
反応系から分離された使用済みの前記触媒組成物は、アセトン等の水混和性有機溶媒及び炭酸ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液から選択される1種類以上の溶媒と接触させることにより夾雑物を除去及び洗浄した後、本発明の方法に再使用することができる。それ故、本発明の方法は、触媒組成物分離工程で得られた使用済の前記触媒組成物を、さらなるアルコール酸化工程に再使用する、再使用工程(工程S23)を含んでもよい。

【0055】
<4.カルボン酸化合物の製造方法>
本発明はまた、上記で説明した触媒組成物を用いるカルボン酸化合物の製造方法に関する。
図3は、本発明のカルボン酸化合物の製造方法の一実施形態を示す工程図である。以下、図3に基づき、本発明の方法の好ましい実施形態について詳細に説明する。

【0056】
[4-1. アルデヒド酸化工程]
本発明の方法は、本発明の触媒組成物の存在下において、アルデヒド化合物を酸化してカルボン酸化合物に変換する、アルデヒド酸化工程(工程S31)を含む。より具体的には、本発明の方法は、本発明の触媒組成物の存在下において、アルデヒド化合物の少なくとも1個のアルデヒド基を酸化してカルボン酸基に変換する、アルデヒド酸化工程(工程S31)を含む。

【0057】
本工程において使用されるアルデヒド化合物は、特に限定されない。脂肪族、脂環式及び芳香族アルデヒドのいずれであってもよい。また、前記アルデヒド化合物の骨格部分は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個以上のヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、水酸基、アミノ基又はN-アシル基のような1個以上の置換基を有してもよい。所望のカルボン酸化合物に応じて、アルデヒド化合物を適宜選択することができる。前記アルデヒド化合物は、例えば、アルドース又はそれらのN-アシル誘導体であることが好ましく、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体であることがより好ましい。前記N-アシル誘導体としては、N-アセチル誘導体が好ましい。ここで、前記アルドース又はそれらのN-アシル誘導体は、該化合物自体だけでなく、前記アルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩も包含する。

【0058】
本工程において得られる「カルボン酸化合物」は、前記アルデヒド化合物の少なくとも1個のアルデヒド基がカルボン酸基に変換された化合物を意味する。例えば、本工程において使用されるアルデヒド化合物がアルドース又はそれらのN-アシル誘導体の場合、水酸基は酸化されず、1-位のアルデヒド基のみがカルボン酸に酸化された、アルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体を選択的に合成することができる。例えば、本工程において使用されるアルデヒド化合物がD-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体の場合、D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択される対応するアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体を選択的に合成することができる。アルデヒド化合物を適宜選択することにより、所望のカルボン酸化合物を得ることが可能となる。

【0059】
本工程は、前記アルデヒド化合物及びカルボン酸化合物を実質的に分散又は溶解させる溶媒存在下で実施することが好ましい。本工程において使用される溶媒は、前記アルデヒド化合物の酸化反応を阻害するものでなければ特に制限されず、カルボニル化合物の製造方法に関して言及した、当該技術分野で慣用される溶媒を使用することができる。上記の溶媒存在下で本工程を実施することにより、アルデヒド化合物の酸化反応を阻害することなく所望のカルボン酸化合物を得ることが可能となる。

【0060】
本工程は、酸素を含有する気体雰囲気下で実施することが好ましく、酸素又は空気気流下で実施することがより好ましい。前記気体の圧力は、カルボニル化合物の製造方法に関して言及した範囲であることが好ましい。上記の条件で本工程を実施することにより、アルデヒド化合物の酸化反応を促進することが可能となる。

【0061】
本工程において、アルデヒド化合物の酸化反応は、カルボニル化合物の製造方法に関して言及した反応温度及び時間で実施することが好ましい。上記の条件で本工程を実施することにより、所望のアルデヒド化合物を高収率で得ることが可能となる。

【0062】
[4-2. 触媒組成物分離工程及び再使用工程]
本発明の方法は、前記アルデヒド酸化工程を実施した後に、前記触媒組成物を反応系から分離する触媒組成物分離工程(工程S32)、及び触媒組成物分離工程で得られた使用済の前記触媒組成物を、さらなるアルデヒド酸化工程に再使用する、再使用工程(工程S33)を含んでもよい。前記工程は、カルボニル化合物の製造方法に関して言及した条件と同様の条件で実施することができる。

【0063】
以上のように、本発明の触媒組成物をアルコール化合物又はアルデヒド化合物の酸化反応に用いることにより、カルボニル化合物を高収率で得ることが可能となる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
<合成例1:触媒組成物の製造>
所定量の塩化金酸(x mmol)及び塩化パラジウム(y mmol)(ここで、x + y = 0.1 mmol, y > 0)と、0.1 gの塩化カリウムと、0.580 gのポリビニルピロリドン(PVP;分子量58,000、ACROS社製)とを50 mlの純水に溶解した。この水溶液に、50 mlのエチレングリコール(0.9 mol)を添加して混合した。得られた混合物を2時間加熱還流して金及びパラジウムのイオンを還元し、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を含有する分散液を得た。
【実施例】
【0066】
100 mlの前記AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を含有する分散液に、1 gのハイドロタルサイトを添加して混合した。得られた混合物を1時間加熱還流して、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含有する触媒組成物を形成させた。その後、反応混合物を吸引濾過して触媒組成物を濾液から分離し、純水で洗浄した。得られた濾過物を一晩減圧乾燥させて、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含有する触媒組成物(約0.9 g)を得た。
【実施例】
【0067】
<合成例2:合成例1の方法で調製した触媒組成物の粒径解析>
合成例1の方法で調製した触媒組成物を、透過型電子顕微鏡(TEM; Hitachi H-7650(100kV), 京都先端ナノテク支援ネットワーク; No. 2011-JAIST-9及び2011-JAIST-33)で観察し、それぞれの触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子から500個の粒子を任意に選択して粒径を測定し、平均粒径を算出した。実施例及び比較例の触媒組成物の組成式、及び触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の平均粒径を表1に示す。また、各触媒組成物のTEM画像を図4Aに、触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布を図4Bに、それぞれ示す。
【実施例】
【0068】
【表1】
JP2014111247A_000002t.gif
【実施例】
【0069】
図4Aに示すように、貴金属として金のみを含む比較例1の触媒組成物の場合、Au100-PVP保護ナノ粒子が凝集して粗大な凝集体を形成した。これに対し、金及びパラジウムを含む実施例1~4の触媒組成物、及びパラジウムのみを含む比較例2の触媒組成物の場合、微細な保護ナノ粒子を形成した。これらの触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布を測定したところ、いずれも均質な粒径分布を示した(図4B)。実施例1~4の触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の平均粒径は、2.6~3.1 nmであった。さらに、担体と混合前のAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子を含有する分散液中に存在する粒子500個を任意に選択して同様に平均粒径を算出した場合、比較例3に示すように平均粒径が2.7 nmであり、実施例2のAu60Pd40-PVP/HT触媒組成物に含有されるAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の平均粒径2.6 nmと大きく変わらなかった。
【実施例】
【0070】
<合成例3:合成例1の方法で調製した保護ナノ粒子の電子状態(1)>
合成例1の方法で調製したAuxPdy-PVP保護ナノ粒子について、それぞれX線光電子分光分析(XPS; SHIMADZU・Kratos, AXIS-ULTRA DLD)で観察し、Au 4f7/2由来の結合エネルギーの変化から、各AuxPdy-PVP保護ナノ粒子のAu 4f7/2軌道の電子状態を評価した。実施例1~4の保護ナノ粒子の組成式、及び保護ナノ粒子ごとのAu 4f7/2由来の結合エネルギーを表2に示す。また、各AuxPdy-PVP保護ナノ粒子のXPSスペクトルを図5Aに、各AuxPdy-PVP保護ナノ粒子のAu 4f7/2由来の結合エネルギーとPd含有量との関係を図5Bに、それぞれ示す。
【実施例】
【0071】
【表2】
JP2014111247A_000003t.gif
【実施例】
【0072】
図5Aに示すように、金及びパラジウムを含む実施例1~4の高分子保護ナノ粒子の場合、金のバルク構造体のAu 4f5/2(88 eV)及び4f7/2(84 eV)由来の結合エネルギーよりもいずれも低エネルギー側にシフトしていた。またパラジウムの導入量が多いほど、その傾向が強かった(図5B)。このことから、Pdの含有量により、AuバルクよりもAu 4f軌道の電子が増加し、より電子リッチ(アニオニック)な金が生成していることが分かった。実施例1~4のAuxPdy-PVP保護ナノ粒子のXPSスペクトルのAu 4f7/2由来の結合エネルギーは、82.04~83.33 eVであった。ここで、図5B横軸のPd含有量は、実施例1~4のAuxPdy-PVP保護ナノ粒子を調製した際のパラジウムの仕込み量(mol%)である。
【実施例】
【0073】
<合成例4:合成例1の方法で調製した触媒組成物の電子状態(2)>
合成例1の方法で調製したAuxPdy-PVP/HT触媒組成物について、それぞれAu-L3端のX線吸収スペクトルによるX線吸収微細構造(XANES; SPring-8 BL01B1, Proposal No. 2011A1607)を測定し、Au 5d軌道の電子状態を観察した。図6AにAuxPdy-PVP/HT触媒組成物のAu L3-edge XANESスペクトルを示す。測定は、すべてイオンチェンバーを用いた透過法を使用した。図6Bに、それぞれのAuxPdy-PVP/HT触媒組成物のXANESスペクトルのホワイトライン近傍の面積(吸収端近傍の変曲点(E0;11921.74 eV)に対し、-10 eV < E0 < 13 eVの範囲のXANESスペクトル下の面積)をPd含有量に対してプロットした図を示す。この面積は、Au原子の2p軌道から5d軌道への電子遷移に由来し、この面積が少ないほど5d軌道が電子リッチな状態であることを意味する。図6Bに示すように、AuxPdy-PVP/HT触媒組成物の中でも、Pd含有量によりAu 5d軌道の電子密度に違いがあり、この場合は23.01~ 23.55 keV・cm-1の範囲であった。ここで、図6B横軸のPd含有量は、AuxPdy-PVP/HT触媒組成物を調製した際のパラジウムの仕込み量(mol%)である。
【実施例】
【0074】
<合成例5:AuxPdy-PVP保護ナノ粒子の還元手順が異なる触媒組成物の製造>
合成例1(金のイオン及びパラジウムのイオンの同時還元)とは異なる還元手順として、合成例5としてパラジウムのイオンを先に還元し、次いで金のイオンを連続的に還元する合成法(金のイオン及びパラジウムのイオンを別々に還元する)を例示する。ただし、本発明の技術的範囲はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
所定量の塩化パラジウム(y mmol)と0.1 gの塩化カリウムを、25 mlの純水に溶解した。この水溶液に、0.290 gのポリビニルピロリドン(PVP;分子量58,000、ACROS社製)と25 mlのエチレングリコール(0.45 mol)を添加して混合した。得られた混合物を、1時間加熱還流してパラジウムのイオンの還元を進行させた。加熱還流後、得られた混合溶液に、所定量の塩化金酸(x mmol)と0.290 gのポリビニルピロリドン(PVP;分子量58,000、ACROS社製)と25 mlのエチレングリコール(0.45 mol)とを25 mlの純水に溶解した混合物を添加した。次いで、得られた混合物を1時間加熱還流して、残存パラジウムのイオンおよび金のイオンの還元を進行させ、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を含有する分散液を得た。ここで、x + y = 0.1 mmol(y > 0)である。
【実施例】
【0076】
100 mlの前記AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を含有する分散液に、1 gのハイドロタルサイトを添加して混合した。得られた混合物を1時間加熱還流して、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含有する触媒組成物を形成させた。その後、反応混合物を吸引濾過して触媒組成物を濾液から分離し、純水で洗浄した。得られた濾過物を一晩減圧乾燥させて、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含有する触媒組成物(約0.9 g)を得た。
【実施例】
【0077】
<合成例6:合成例5の方法で調製した触媒組成物の粒径解析>
合成例5の方法で調製した触媒組成物を、透過型電子顕微鏡(TEM; Hitachi H-7650(100kV), 京都先端ナノテク支援ネットワーク; No. 2011-JAIST-9および2011-JAIST-33)で観察し、それぞれの触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子からおよそ500個の粒子を任意に選択して粒径を測定し、平均粒径を算出した。実施例の触媒組成物の組成式、及び触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の平均粒径を表3に示す。また、各触媒組成物のTEM画像を図7Aに、触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布を図7Bに、それぞれ示す。
【実施例】
【0078】
【表3】
JP2014111247A_000004t.gif
【実施例】
【0079】
図7Aに示すように、金及びパラジウムを含む実施例5~8の触媒組成物の場合、微細な保護ナノ粒子を形成した。これらの触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布を測定したところ、いずれも均質な粒径分布を示した(図7B)。実施例5~8の触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の平均粒径は、2.9~5.8 nmであった。
【実施例】
【0080】
<合成例7:合成例1および合成例5で調製したAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の構造解析>
走査透過電子顕微鏡(STEM; 日本電子JEM-ARM200F (200kV)、京都先端ナノテク支援ネットワーク; No. 2011-JAIST-9及び2011-JAIST-33))を用いて、合成例1及び合成例5で調製したAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の走査透過電子顕微鏡像の高角散乱環状暗視野測定(STEM-HAADF)及び走査透過電子顕微鏡像のエネルギー分散形X線分光測定(STEM-EDS)を行った。図8AにSTEM-HAADF像、図8B及び図8CにSTEM-EDSのライン分析を行った粒子のSTEM-HAADF像とその結果をそれぞれ示す。
【実施例】
【0081】
STEM-HAADF像の特徴として、元素番号(Z)が大きい元素(重い)ほど、より明るい像を作る。STEM-HAADF像(図8A)の場合、合成例1で合成されたAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子について、鮮明な原子配列が確認でき、明暗の違いは観察されなかった。従って、金とパラジウムが1粒子中に広く混在した粒子形態であることを示す。一方、合成例5で合成されたAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子では、明暗が異なるドーナツ状の粒子が観察された。金がZ=79、パラジウムがZ=46であるから、より明るい外側に金が多く、より暗い中心部にパラジウムが多いことを示す。
【実施例】
【0082】
STEM-EDSのライン分析(図8B及び8C)の場合、合成例1で合成されたAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子については、1粒子中の金とパラジウムの分散状態にほとんど偏りはなかった。一方、合成例5で合成されたAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子では、内側ほどパラジウムが多く、外側ほど金が多かった。従って、合成例1の工程では金及びパラジウムが不規則に配置された合金構造を、合成例5の工程では、金とパラジウムとから成るコアシェル構造を、それぞれ有するAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子を形成し得る。
【実施例】
【0083】
<使用例1:カルボニル化合物の製造(1):1-フェニルエタノールの酸化反応>
アルコールの酸化反応のモデル基質である1-フェニルエタノールを使用して、アルコールの酸化反応に対する比較例及び実施例の触媒組成物の触媒活性を測定した。
【実施例】
【0084】
2 mmolの1-フェニルエタノール及び0.2 gの触媒組成物(Au + Pd = 0.02 mmol)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた5 mlのトルエンに加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(20 ml/分、1 atm)、40℃で1時間反応させた。アルコールと金及びパラジウムとのモル比は100とした。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー(GC)分析して、内部標準法により未反応の1-フェニルエタノール及び生成したアセトフェノンを定量した。また、触媒組成物は、酸で処理して金及びパラジウムを溶出させ、該溶出液中の金及びパラジウムイオンを高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量した。GC分析及びICP発光分析の条件は以下の通りである。
【実施例】
【0085】
GC分析
装置 :Shimadzu GC-2014
カラム :DB-FFAP(内径0.32 mm×カラム長300 mm;Agilent社製)
キャリアーガス:He
流速 :2.68 ml/分
温度 :100→250℃、昇温温度10℃/分
検出 :FID
ICP発光分析
装置 :Shimadzu ICPS-7000 Ver.2
測定波長:Au(242.795 nm)、Pd(340.458 nm)
【実施例】
【0086】
比較例及び実施例の触媒組成物の存在下における、1-フェニルエタノールの酸化反応の結果、及び触媒組成物に含有される金及びパラジウムの担持量を表4に示す。
【実施例】
【0087】
【表4】
JP2014111247A_000005t.gif
【実施例】
【0088】
上記表中、変換率は、使用した1-フェニルエタノールの総モル数から反応後の反応混合物に含まれる1-フェニルエタノールのモル数を減じた値を、反応により変換された1-フェニルエタノールのモル数と仮定して、使用した1-フェニルエタノールの総モル数に対する反応により変換された1-フェニルエタノールのモル数の百分率を示した値である。
【実施例】
【0089】
上記表中、収率は、使用した1-フェニルエタノールの総モル数に対する反応後の反応混合物に含まれるアセトフェノンのモル数の百分率を示した値である。
【実施例】
【0090】
上記表中、反応2a及び3aは、上記の手順において、1-フェニルエタノールの使用量を4 mmolに変更した他は上記と同様に反応を行った試験区である。反応3bは、上記の手順において、反応温度及び時間を27℃で3時間に変更した他は上記と同様に反応を行った試験区である。また、反応3cは、上記の手順において、反応雰囲気及び時間を空気気流下で12時間に変更した他は上記と同様に反応を行った試験区である。
【実施例】
【0091】
表4に示すように、比較例1及び2の触媒組成物の存在下では酸化反応は殆ど進行しなかった。これに対し、実施例1~4の触媒組成物の存在下では、1-フェニルエタノールの水酸基が酸化されてアセトフェノンが形成された。このうち、実施例2(Au:Pd=60:40)の触媒組成物は最も触媒活性が高く、基質量を2倍に増加させた場合(反応3a)、反応温度を27℃に低下させた場合(反応3b)及び反応雰囲気を空気気流下に変更した場合(反応3c)であっても同程度の触媒活性を示した。実施例1(Au:Pd=80:20)の触媒組成物は、酸素気流下(20 ml/分)、40℃で1時間反応させた場合(反応2)には、実施例2の触媒組成物と実質的に略同程度の触媒活性を示したが、基質量を2倍に増加させた場合(反応2a)には、触媒活性はやや低下した。
【実施例】
【0092】
<使用例2:1-フェニルエタノールの酸化反応における触媒活性の評価>
実施例2の触媒組成物(Au60Pd40-PVP/HT)を用いて、1-フェニルエタノールの酸化反応におけるターンオーバー数(TON)及びターンオーバー頻度(TOF)を算出した。ここで、TONは、反応に使用した触媒組成物上に担持された金とパラジウムの原子数に対する、生成したアセトフェノンの分子数であり、TOFは、反応に使用した触媒組成物上に担持された金とパラジウムの原子数に対する、生成されるアセトフェノンの分子数の初速度(h-1)である。なお、反応に使用した触媒組成物上に担持された金とパラジウムの原子数とは、ICP測定により算出された貴金属の総モル数(Au + Pd)である。結果を表5に示す。
【実施例】
【0093】
【表5】
JP2014111247A_000006t.gif
【実施例】
【0094】
参考例1~4は、非特許文献5、1、6及び7に記載の触媒組成物にそれぞれ対応する。参考例1~3の触媒組成物は、金又はパラジウムのいずれかが担体に担持された構造を有しており、参考例4の触媒組成物は、金をコア層に、パラジウムをシェル層に有するコアシェル粒子が担体に担持された構造を有している。
【実施例】
【0095】
上記表中、反応条件aは、250 mmolの1-フェニルエタノールを150℃で反応させる条件であり、反応条件bは、40 mmolの1-フェニルエタノールを150℃で反応させる条件であり、反応条件cは、250 mmolの1-フェニルエタノールを160℃で反応させる条件であり、反応条件dは、30 mmolの1-フェニルエタノールを反応させる条件であり(反応温度は不明)、反応条件eは、327 mmol(40 ml)の1-フェニルエタノールを160℃で反応させる条件である。
【実施例】
【0096】
表5に示すように、実施例2の触媒組成物は、参考例1~3の触媒組成物と比較して高いTON及びTOFを示した。
【実施例】
【0097】
<使用例3:1-フェニルエタノールの酸化反応における触媒組成物の再使用試験>
実施例2の触媒組成物(Au60Pd40-PVP/HT)を用いて、1-フェニルエタノールの酸化反応における触媒組成物の再使用能力を評価した。
【実施例】
【0098】
2 mmolの1-フェニルエタノール及び0.2 gの実施例2の触媒組成物(Au + Pd = 0.02 mmol)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた5 mlのトルエンに加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(20 ml/分)、40℃で1時間反応させた(1回目使用)。アルコールと金及びパラジウムとのモル比は100とした。
【実施例】
【0099】
得られた反応混合物を遠心分離して、触媒組成物を含有する触媒画分(沈殿)と、基質及び生成物を含有する上清画分とに分離した。得られた触媒画分を10 mlのアセトンで1回洗浄し、次いで10 mlの10質量%炭酸ナトリウム水溶液で3回洗浄し、最後に10 mlのアセトンで1回洗浄した。各洗浄操作の後は遠心分離により触媒画分を分離した。最終洗浄後の触媒組成物を、室温で一晩減圧乾燥させた。この洗浄済触媒組成物を、再使用工程(1回)の触媒組成物として、上記と同様の手順で再度酸化反応に使用した(2回目使用)。反応終了後、上記と同様の手順で触媒組成物を分離及び洗浄し、再使用工程(2回)の触媒として、同様の条件で再度反応に使用した(3回目使用)。1回目使用、2回目使用及び3回目使用の各反応における1-フェニルエタノールの変換率及びアセトフェノンの収率を図9に、1回目使用後(初期)、2回目使用後(1回再使用)及び3回目使用後(2回再使用)の触媒組成物のTEM画像を図10Aに、触媒組成物に含有されるAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子の粒径分布を図10Bに、1回目使用後(初期)及び3回目使用後(2回再使用)の触媒組成物のX線回折(XRD)スペクトルを図11に、それぞれ示す。
【実施例】
【0100】
図9に示すように、2回目及び3回目使用時の1-フェニルエタノールの変換率及びアセトフェノンの収率は、1回目使用時の変換率及び収率と実質的に同等であった。1回目、2回目及び3回目使用時のアセトフェノンの収率は、それぞれ>99%、94%及び99%であった。また、図10に示すように、2回目及び3回目使用後の触媒組成物に含有されるAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子は、1回目使用後の触媒組成物に含有されるAu60Pd40-PVP保護ナノ粒子と実質的に同様の粒径分布を示した。さらに、図11に示すように、3回目使用後の触媒組成物に含有されるHT担体は、1回目使用後の触媒組成物に含有されるHT担体と実質的に同様の結晶構造を示した。これらの結果から、本発明の触媒組成物は、2級アルコールの酸化反応において複数回の再使用が可能であることが明らかとなった。
【実施例】
【0101】
<使用例4:カルボニル化合物の製造(2):ベンジルアルコールの酸化反応>
1級アルコールであるベンジルアルコールを使用して、アルコールの酸化反応に対する比較例及び実施例の触媒組成物の触媒活性を測定した。
【実施例】
【0102】
2 mmolの1-フェニルエタノール及び0.2 gの触媒組成物(Au + Pd = 0.02 mmol)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた5 mlのトルエンに加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(20 ml/分)、50℃で1時間反応させた。アルコールと金及びパラジウムとのモル比は100とした。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー(GC)分析して、内部標準法により未反応のベンジルアルコール及び生成したベンズアルデヒドを定量した。GC分析の条件は以下の通りである。
【実施例】
【0103】
GC分析
装置 :Shimadzu GC-2014
カラム :DB-FFAP(内径0.32 mm×カラム長300 mm;Agilent社製)
キャリアーガス:He
流速 :2.68 ml/分
温度 :100→250℃、昇温温度10℃/分
検出 :FID
【実施例】
【0104】
比較例及び実施例の触媒組成物の存在下における、ベンジルアルコールの酸化反応の結果を表6に示す。
【実施例】
【0105】
【表6】
JP2014111247A_000007t.gif
【実施例】
【0106】
上記表中、変換率は、使用したベンジルアルコールの総モル数から反応後の反応混合物に含まれるベンジルアルコールのモル数を減じた値を、反応により変換されたベンジルアルコールのモル数と仮定して、使用したベンジルアルコールの総モル数に対する反応により変換されたベンジルアルコールのモル数の百分率を示した値である。
【実施例】
【0107】
上記表中、収率は、使用したベンジルアルコールの総モル数に対する反応後の反応混合物に含まれるベンズアルデヒドのモル数の百分率を示した値である。
【実施例】
【0108】
表6に示すように、比較例1及び2の触媒組成物の存在下では酸化反応は殆ど進行しなかった。これに対し、実施例1~4の触媒組成物の存在下では、ベンジルアルコールの水酸基が酸化されてベンズアルデヒドが形成された。このうち、実施例2(Au:Pd=60:40)の触媒組成物は最も高い触媒活性を示した。
【実施例】
【0109】
<使用例5:ベンジルアルコールの酸化反応における触媒組成物の再使用試験>
実施例2の触媒組成物(Au60Pd40-PVP/HT)を用いて、ベンジルアルコールの酸化反応における触媒組成物の再使用能力を評価した。
【実施例】
【0110】
2 mmolのベンジルアルコール及び0.2 gの実施例2の触媒組成物(Au + Pd = 0.02 mmol)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた5 mlのトルエンに加えて、酸素気流下(20 ml/分)、50℃で2時間反応させた(1回目使用)。アルコールと金及びパラジウムとのモル比は100とした。
【実施例】
【0111】
得られた反応混合物を遠心分離して、触媒組成物を含有する触媒画分(沈殿)と、基質及び生成物を含有する上清画分とに分離した。得られた触媒画分を10 mlの10質量%炭酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した。各洗浄操作の後は遠心分離により触媒画分を分離した。最終洗浄後の触媒組成物を、室温で一晩減圧乾燥させた。この洗浄済触媒組成物を、再使用工程(1回)の触媒組成物として、上記と同様の手順で再度酸化反応に使用した(2回目使用)。反応終了後、上記と同様の手順で触媒組成物を分離及び洗浄し、再使用工程(2回)の触媒として、同様の条件で再度反応に使用した(3回目使用)。1回目使用、2回目使用及び3回目使用の各反応におけるベンジルアルコールの変換率、ベンズアルデヒドの収率、及びベンズアルデヒドの選択率を図12に示す。なお、図中、ベンズアルデヒドの選択率は、反応により変換されたベンジルアルコールの総モル数に対する反応後の濾液に含まれるベンズアルデヒドのモル数の百分率(ベンジルアルコールの変換率に対するベンズアルデヒドの収率の百分率)を示した値である。
【実施例】
【0112】
図12に示すように、2回目及び3回目使用時のベンジルアルコールの変換率、ベンズアルデヒドの収率、及びベンズアルデヒドの選択率は、いずれも1回目使用時の変換率、収率及び選択率と実質的に同等であった。1回目、2回目及び3回目使用時のベンズアルデヒドの収率は、それぞれ87%、82%及び90%であった。これらの結果から、本発明の触媒組成物は、1級アルコールの酸化反応においても複数回の再使用が可能であることが明らかとなった。
【実施例】
【0113】
<使用例6:カルボニル化合物の製造(3):種々のアルコールの酸化反応>
種々の1級及び2級アルコールの酸化反応に対する実施例2の触媒組成物の触媒活性を測定した。
【実施例】
【0114】
2 mmolのアルコール及び0.2 gの実施例2の触媒組成物(Au + Pd = 0.02 mmol)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた5 mlのトルエンに加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(20 ml/分)、所定の温度及び時間で反応させた。アルコールと金及びパラジウムとのモル比は100とした。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー(GC)分析して、内部標準法により未反応のアルコール及び生成したカルボニル化合物を定量した。GC分析の条件は以下の通りである。
【実施例】
【0115】
GC分析
装置 :Shimadzu GC-2014
カラム :DB-FFAP(内径0.32 mm×カラム長300 mm;Agilent社製)
キャリアーガス:He
流速 :2.68 ml/分
温度 :100→250℃、昇温温度10℃/分
検出 :FID
【実施例】
【0116】
実施例2の触媒組成物の存在下における、各種アルコールの酸化反応の結果を表7に示す。
【実施例】
【0117】
【表7】
JP2014111247A_000008t.gif
【実施例】
【0118】
表7に示すように、本発明の触媒組成物の存在下において、種々の1級又は2級アルコールを酸化することにより、対応するアルデヒド又はケトンを高収率で得ることができた。
【実施例】
【0119】
<合成例8:触媒組成物の製造>
合成例1において、塩化金酸の使用量x=0.0406 mmol、塩化パラジウムの使用量y=0.0188 mmol(ここで、x + y = 0.0594 mmol)に変更した他は、合成例1と同様の手順に従って、AuxPdy-PVP保護ナノ粒子を担持するハイドロタルサイトを含有する実施例9の触媒組成物(約0.9 g)を得た。
【実施例】
【0120】
<合成例9:合成例8の方法で調製した触媒組成物の粒径解析>
合成例8の方法で調製した実施例9の触媒組成物を、透過型電子顕微鏡(TEM; Hitachi H-7100(100kV))で観察し、それぞれの触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子から269個の粒子を任意に選択して粒径を測定し、平均粒径を算出した。実施例9の触媒組成物のTEM画像を図13Aに、該触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の粒径分布を図13Bに、それぞれ示す。
【実施例】
【0121】
図13に示すように、実施例9の触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の平均粒径は、2.5 nmであった。前記の結果から、合成例8の方法であっても、合成例1の方法で調製した実施例1~4の触媒組成物と同程度の平均粒径を有するAuxPdy-PVP保護ナノ粒子を調製できることが明らかとなった。
【実施例】
【0122】
<合成例10:合成例8の方法で調製した触媒組成物の金属担持量解析>
合成例8の方法で調製した実施例9の触媒組成物を、酸で処理して金及びパラジウムを溶出させた。得られた溶出液中の金及びパラジウムイオンを高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量した。ICP発光分析の条件は以下の通りである。
【実施例】
【0123】
ICP発光分析
装置 :Shimadzu ICPS-7000 Ver.2
測定波長:Au(242.795 nm)、Pd(340.458 nm)
ICP発光分析の結果、実施例9の触媒組成物の金属担持量は、Auが0.0369 mmol/gであり、Pdが0.0216 mmol/gであった。前記の結果より、実施例9の触媒組成物に含有されるAuxPdy-PVP保護ナノ粒子の組成式は、Au60Pd40-PVP/HTと決定された。
【実施例】
【0124】
<使用例7:カルボニル化合物の製造(4):1,3-プロパンジオールの酸化反応>
1,3-プロパンジオールの酸化反応に対する実施例9の触媒組成物の触媒活性を測定した。
【実施例】
【0125】
1 mmolの1,3-プロパンジオール及び0.1 gの実施例9の触媒組成物(AuxPdy-PVP/HT)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた7.5 mlの蒸留水に加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(10 ml/分)、70℃で12時間反応させた。得られた反応混合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析して、内部標準法により未反応の1,3-プロパンジオール、並びに生成した3-ヒドロキシプロピオン酸及びマロン酸を定量した。HPLC分析の条件は以下の通りである。
【実施例】
【0126】
HPLC分析
装置 :Waters 515 HPLC Pump
カラム :Rspak KC-811(内径8 mm×カラム長300 mm;Shodex社製)
移動相 :0.1%リン酸水溶液
流速 :1.0 ml/分
温度 :50℃
検出 :RI
【実施例】
【0127】
実施例9の触媒組成物の存在下における、1,3-プロパンジオールの酸化反応の結果を表8に、前記反応の3-ヒドロキシプロピオン酸の収率の経時変化を図14に、それぞれ示す。
【実施例】
【0128】
【表8】
JP2014111247A_000009t.gif
【実施例】
【0129】
<使用例8:1,3-プロパンジオールの酸化反応における触媒組成物の再使用試験>
合成例8の方法で調製した実施例9の触媒組成物(AuxPdy-PVP/HT)を用いて、1,3-プロパンジオールの酸化反応における触媒組成物の再使用能力を評価した。
【実施例】
【0130】
1 mmolの1,3-プロパンジオール及び0.1 gの実施例9の触媒組成物(AuxPdy-PVP/HT)を、20 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた7.5 mlの蒸留水に加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(10 ml/分)、70℃で12時間反応させた(1回目使用)。
【実施例】
【0131】
得られた反応混合物を遠心分離して、触媒組成物を含有する触媒画分(沈殿)と、基質及び生成物を含有する上清画分とに分離した。得られた触媒画分を10 mlの蒸留水で1回洗浄し、次いで15 mlの10質量%炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄した。その後、洗浄された触媒画分を10 mlの蒸留水でさらに2回洗浄した。各洗浄操作の後は遠心分離により触媒画分を分離した。最終洗浄後の触媒組成物を、室温で一晩減圧乾燥させた。この洗浄済触媒組成物を、再使用工程(1回)の触媒組成物として、上記と同様の手順で再度酸化反応に使用した(2回目使用)。反応終了後、上記と同様の手順で触媒組成物を分離及び洗浄し、再使用工程(2回)の触媒として、同様の条件で再度反応に使用した(3回目使用)。反応終了後、上記と同様の手順で触媒組成物を分離及び洗浄し、再使用工程(3回)の触媒として、同様の条件で再度反応に使用した(4回目使用)。1回目使用、2回目使用、3回目使用及び4回目使用の各反応における1,3-プロパンジオールの変換率及び3-ヒドロキシプロピオン酸の収率を図15に示す。
【実施例】
【0132】
図15に示すように、2回目、3回目及び4回目使用時の1,3-プロパンジオールの変換率及び3-ヒドロキシプロピオン酸の収率は、1回目使用時の変換率及び収率と実質的に同等であった。1回目、2回目、3回目及び4回目使用時の3-ヒドロキシプロピオン酸の収率は、それぞれ42%、39%、39%及び38%であった。従って、本発明の触媒組成物は、1級ジオールの酸化反応において、複数回の再使用が可能であることが明らかとなった。
【実施例】
【0133】
<使用例9:カルボニル化合物の製造(4):N-アセチルグルコサミンの酸化反応>
合成例8の方法で調製した実施例9の触媒組成物を用いて、アルドースのN-アシル誘導体であるN-アセチルグルコサミンの酸化反応に対する触媒組成物の触媒活性を測定した。
【実施例】
【0134】
参考例5及び6として、金のみが担体に担持された(すなわちパラジウムを含まない)触媒組成物を以下の手順で調製した。80 mlの水中にz mmolの塩化金酸を含む溶液中に、2.0 gの担体と0.8 mlの25%アンモニア水溶液を添加して、500 rpmで6時間、室温で撹拌した。得られた混合物を、100℃で30分間加熱還流した。反応混合物を濾過し、固形分を1000 mlの水で洗浄した。洗浄後、固形分を加熱乾燥(200℃,4時間)し、1日真空条件で乾燥させて、金担持担体(Au/担体)を得た。なお、参考例5の担体はハイドロタルサイト(HT; Mg/Al=5のもの)を、参考例6の担体は酸化マグネシウム(MgO)を、それぞれ使用した。触媒組成物調製時に用いた塩化金酸の量(z)は、HTの場合には0.06 mmolであり、MgOの場合には0.1 mmolであった。
【実施例】
【0135】
実施例9、並びに参考例5及び6の触媒組成物における、担体あたりの貴金属担持量(mmol/g)を、使用例1と同様の方法により高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量した。実施例9(Au60Pd40-PVP/HT)の触媒組成物の金属担持量は、前記の通りAuが0.0369 mmol/gであり、Pdが0.0216 mmol/gであった。参考例5(Au/HT)及び参考例6(Au/MgO)の触媒組成物の金担持量は、いずれも0.03 mmol/gであった。
【実施例】
【0136】
0.1 mmolのN-アセチルグルコサミン及び20 mgの触媒組成物を、60 ml容量のホウケイ酸ガラス製フラスコに入れた4 mlの水に加えて、磁気攪拌機を用いて撹拌しながら、酸素気流下(10 ml/分)、20℃で6時間反応させた。得られた反応混合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析して、内部標準法により未反応のN-アセチルグルコサミン及び生成したカルボニル化合物であるN-アセチルグルコサミン酸を定量した。HPLC分析の条件は以下の通りである。
【実施例】
【0137】
HPLC分析
装置 :JASCO PU-980 HPLC Pump
カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E
(内径4.6 mm×カラム長250 mm;Shodex社製)
移動相 :水
流速 :1.0 ml/分
温度 :30℃
検出 :RI
【実施例】
【0138】
実施例9又は参考例5若しくは6の触媒組成物の存在下における、N-アセチルグルコサミンの酸化反応によって生成するN-アセチルグルコサミン酸の収率の経時変化を図16に示す。
【実施例】
【0139】
図16に示すように、実施例9の触媒組成物(Au60Pd40-PVP/HT)を用いた場合、反応開始後6時間で、N-アセチルグルコサミン酸の収率は63%となった。これに対し、参考例5(Au/HT)又は参考例6(Au/MgO)の触媒組成物を用いた場合、反応開始後6時間で、N-アセチルグルコサミン酸の収率は、それぞれ34%又は41%となった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明により、アルコール化合物又はアルデヒド化合物の酸化反応に対する高い触媒活性を有する触媒組成物を提供することが可能となる。前記触媒組成物を使用することにより、有用なカルボニル化合物を低コストで製造することが可能となる。また、本発明の触媒組成物は不均一系触媒として使用し得るため、使用後の触媒組成物を洗浄することにより、本発明のカルボニル化合物の製造方法に再使用することが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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