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明細書 :脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-030423 (P2014-030423A)
公開日 平成26年2月20日(2014.2.20)
発明の名称または考案の名称 脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法
国際特許分類 C12N   5/0775      (2010.01)
FI C12N 5/00 202H
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2013-144653 (P2013-144653)
出願日 平成25年7月10日(2013.7.10)
優先権出願番号 2012155584
優先日 平成24年7月11日(2012.7.11)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】森山 博由
【氏名】森山 麻里子
【氏名】早川 堯夫
【氏名】松山 晃文
出願人 【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100084146、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 宏
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
【識別番号】100140497、【弁理士】、【氏名又は名称】野中 信宏
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB02
4B065BB08
4B065BB19
4B065BB25
4B065BC03
4B065BC07
4B065CA44
要約 【課題】本発明は、高い分化能を保持した脂肪組織由来体性幹細胞を、再生医療に実用できる程度に多量に得ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法であって、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞を、固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞とに分離し、分離した剥離しやすい細胞を低酸素培養する工程を含むことを特徴とする、製造方法を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法であって、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞を、固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞とに分離し、分離した剥離しやすい細胞を低酸素培養する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
細胞内における低酸素誘導因子の発現量が所定の値を超えないことを指標として、低酸素培養の条件が設定される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞との分離が、脂肪組織由来の細胞が付着した固体相に細胞剥離剤を添加して、付着した細胞を部分的に剥離させ、剥離した細胞を取得することによって行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
細胞剥離剤が、EDTAを含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
固体相に付着した脂肪組織由来の細胞が、脂肪組織から赤血球を除く工程を含む方法によって得られたものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された脂肪由来体性幹細胞。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療に用いられる幹細胞として、体性幹細胞がある。体性幹細胞は、生体内から採取されるものであり、安全性が高いと考えられている。
【0003】
体性幹細胞は、生体内の様々な部位から採取され、脂肪組織から採取することができる。脂肪組織から採取された体性幹細胞は、脂肪組織由来体性幹細胞などと呼ばれる。脂肪組織由来体性幹細胞は、他の組織由来の体性幹細胞とは異なり、内胚葉、中胚葉、および外肺葉からなる三胚葉への分化能を備えているといわれ、高い汎用性が期待される。従来、脂肪組織由来体性幹細胞は、各種の方法で調製されてきた(特許文献1~7)。しかしながら、従来の方法では、脂肪組織由来体性幹細胞を培養しても、十分な量を得る前に老化が起こって増殖が停止し、高い分化能が維持されず、脂肪組織由来体性幹細胞の再生医療への実用化は困難であると考えられていた。
【0004】
細胞を人工的に培養する条件として、低酸素培養が知られている。低酸素培養は、生体内における生理的酸素条件を模倣したものといわれており(特許文献8)、低酸素培養によって幹細胞の分化能力や増殖能力が向上したことを開示する先行技術文献が存在する(特許文献8~12)。しかしながら、これらの先行技術において、分化能力または増殖能力に対する低酸素培養の影響は、数倍程度の増強であり、微弱であった。脂肪組織由来体性幹細胞の場合、従来の数倍程度の数の細胞が得られても、再生医療への実用化は難しい。
【0005】
特許文献13は、脂肪組織由来体性幹部細胞を低酸素培養する実験を開示している。しかしながら、この文献には、高い分化能を有する細胞が再生医療に実用できるほど多量に得られたとの記載はない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-172586号公報
【特許文献2】国際公開第2007/039986号
【特許文献3】国際公開第2008/153179号
【特許文献4】国際公開第2008/153180号
【特許文献5】特表2007-509601号公報
【特許文献6】特表2005-502352号公報
【特許文献7】国際公開第2000/53795号
【特許文献8】特表2002-530067号公報
【特許文献9】特開2003-125787号公報
【特許文献10】特開2011-15662号公報
【特許文献11】特表2011-529329号公報
【特許文献12】特表2002-530068号公報
【特許文献13】国際公開第2008/018450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、高い分化能を保持した脂肪組織由来体性幹細胞を、再生医療に実用できる程度に多量に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞のうち、固体相から剥離しやすい細胞からなる細胞集団が、低酸素条件下では、極めて長期間にわたって高い分化能を維持したまま老化せずに効率よく増殖を続けるため、このような増殖を製造工程に含めることによって、再生医療に実用できる程度の多量の細胞が得られることを見出した。固体相に付着した細胞を剥離しやすい細胞と剥離しにくい細胞とに分離せずに用いる従来の方法の場合には、低酸素条件で培養しても、このような顕著な結果は観察されなかったため、この知見は、全く意外である。低酸素条件は、剥離しやすい細胞に対して、特異的な影響を有することが推測される。
【0009】
すなわち、本発明は、脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法であって、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞を、固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞とに分離し、分離した剥離しやすい細胞を低酸素培養する工程を含むことを特徴とする、製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、細胞内における低酸素誘導因子の発現量が所定の値を超えないことを指標として、低酸素培養の条件が設定される、上記の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞との分離が、脂肪組織由来の細胞が付着した固体相に細胞剥離剤を添加して、付着した細胞を部分的に剥離させ、剥離した細胞を取得することによって行われる、上記の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、細胞剥離剤が、EDTAを含む、上記の製造方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞が、脂肪組織から赤血球を除く工程を含む方法によって得られたものである、上記の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記の製造方法によって製造された脂肪由来体性幹細胞を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い分化能を保持した脂肪組織由来体性幹細胞を、再生医療に実用できる程度に多量に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、低酸素培養を用いる本発明の製造方法によって製造される細胞の増殖曲線を、通常培養の場合と対比するグラフである。図1のPDLは、集団倍加レベル(Population Doubling Level)を示す。
【図2】図2は、低酸素培養を用いる本発明の製造方法によって製造された細胞集団に占めるS期の細胞の割合を、通常培養の場合と対比するグラフである。
【図3】図3は、本発明の製造方法によって製造された脂肪組織由来体性幹細胞に骨または脂肪への分化を誘導して得られた細胞の染色像を、通常培養の場合と対比する写真である。
【図4】図4は、本発明の製造方法によって製造された脂肪組織由来体性幹細胞の脂肪への分化効率を、通常培養の場合と対比するグラフである。
【図5】図5は、本発明の製造方法によって製造された脂肪組織由来体性幹細胞に神経細胞への分化を誘導して得られた細胞の染色像を示す写真である。
【図6】図6は、酸素濃度が異なる条件で増殖を行った場合における細胞の増殖曲線を示す。図1の縦軸は、集団倍加レベルを示す。
【図7】図7は、図6の各培養条件における測定の12日目の倍加時間を対比するグラフである。
【図8】図8は、図6の増殖における5日目の細胞内のHIF1αタンパク質の発現量を対比する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造方法においては、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞が用いられる。

【0018】
固体相に付着した脂肪組織由来の細胞は、脂肪組織由来の細胞を固体相に加え、増殖させて、固体相に付着させて得てもよい。固体相に加える脂肪組織由来の細胞は、脂肪組織を液体中に分散させ、遠心分離を行い、ペレットを回収することによって得てもよい。脂肪組織を分散させる液体は、外来性のコラゲナーゼなどのタンパク質分解酵素を含んでもよい。脂肪組織は、ヒト、マウス等の哺乳類に由来するものであってよい。脂肪組織から脂肪組織由来の細胞を得る工程は、赤血球を除く工程を含んでいてもよい。赤血球を除く工程は、密度勾配遠心または比重法を用いてもよい。脂肪組織由来の細胞を付着させる固体相は、培養容器であってもよい。脂肪組織由来の細胞を固体相に加えた後の増殖は、低グルコース培地で二酸化炭素存在下、および通常酸素濃度条件下で行ってもよい。低グルコース培地中のグルコース濃度は、例えば、0.5~3g/Lである。増殖の際の二酸化炭素の濃度は、例えば、2~7%である。増殖の際の酸素濃度は、例えば、10~25%である。脂肪組織由来の細胞を固体相に付着させたのち、固体相の洗浄を行い、付着しなかった細胞を除去してもよい。

【0019】
本発明の製造方法においては、固体相に付着した脂肪組織由来の細胞を、固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞とに分離し、分離した剥離しやすい細胞が用いられる。

【0020】
固体相から剥離しやすい細胞と固体相から剥離しにくい細胞とを分離して、分離した剥離しやすい細胞を取得するためには、脂肪組織由来の細胞を付着させた固体相に細胞剥離剤を添加して、付着した細胞を部分的に剥離させ、剥離した細胞を取得してもよい。添加する細胞剥離剤は、培養細胞を容器から剥離させるための薬剤であり、EDTAを含む溶液であってもよい。EDTAを含む溶液は、溶質としてEDTAのみを含む溶液であってもよい。溶液中のEDTAの濃度は、例えば、0.05~1g/Lである。細胞剥離剤の添加後に剥離した細胞の取得は、細胞剥離剤の添加の後に、固体相から浮遊した細胞を取得することによって行ってもよい。

【0021】
本発明の製造方法においては、分離した剥離しやすい細胞が低酸素培養される。

【0022】
分離した細胞の低酸素培養は、分離した細胞を、培地を含む容器中で5000~20000細胞/cmの細胞密度で、低酸素培養することによって行ってもよい。培養に用いられる容器は、フィブロネクチン等の糖タンパク質が被覆されていてもよい。フィブロネクチンは、細胞接着分子であり、細胞外マトリクスを形成する生体物質である。培養に用いられる培地は、ペプチドホルモンを含む細胞増殖促進剤、合成副腎皮質ホルモン、酸化防止剤、成長因子、血清等を含んでもよい。低酸素培養における酸素の濃度は、例えば、3%~7%、好ましくは、3.5%~6.5%、より好ましくは、4%~6%、さらにより好ましくは、4.5%~5.5%である。細胞の低酸素培養は、二酸化炭素存在下で行ってもよい。二酸化炭素の濃度は、例えば、4~10%である。低酸素培養における培養温度は、例えば、32~39℃である。

【0023】
低酸素誘導因子の発現量は、低酸素条件下で増大する傾向にあることが知られている。しかしながら、後述の実施例に示すように、本発明の製造方法は、細胞内における低酸素誘導因子の発現量が増大しない程度の低酸素条件において、より高い増殖度を実現することが明らかになった。したがって、本発明の製造方法における低酸素培養の条件は、細胞内における低酸素誘導因子の発現量が所定の値を超えないことを指標として設定することが好ましい。これにより、より確実に多量の細胞を得ることができる。設定する培養条件は、たとえば、培養時間や培養時の酸素濃度である。

【0024】
低酸素誘導因子は、HIF(Hypoxia Inducible Factor)とも呼ばれる。低酸素誘導因子としては、たとえば、HIFα、HIF1βなどが挙げられる。HIFαとしては、たとえば、HIF1α、HIF2α、HIF3αなどが挙げられる。

【0025】
細胞内における低酸素誘導因子の発現量は、たとえば、低酸素培養中の細胞の一部を分離して、分離した細胞についてウェスタンブロッティング法などを用いて低酸素誘導因子を検出することによって測定することができる。測定する低酸素誘導因子は、好ましくは、低酸素誘導因子のタンパク質である。発現量の測定は、低酸素誘導因子に付した標識をもとにして行ってもよい。

【0026】
低酸素培養条件を設定するための指標である所定の値は、発現量を測定する実験系や、細胞を取得する目的などに応じて適宜設定すればよい。たとえば、当該所定の値は、通常酸素条件(たとえば、20%)における発現量や、1%以下の低酸素培養条件における発現量などを参照して設定される。

【0027】
低酸素培養の条件は、細胞の増殖過程において経時的に測定する低酸素誘導因子の発現量に基づき、経時的に調整してもよい。この場合、より繊細に条件を設定することができ、これにより、一層多量の細胞を得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1 ヒト脂肪組織由来体性幹細胞の製造:
ヒト腹部より吸引法にて脂肪組織を摘出した。脂肪組織は細かく刻んだ後、0.075%コラゲナーゼタイプI(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を含む、ハンクス緩衝溶液(HBSS,GIBCO Invitrogen,Grand Island,NY)中で37℃1時間インキュベートし、細胞を分散させた。分散させた細胞はセルストレーナー(BD Bioscience,San Jose,CA)を用いてフィルターにかけ、800g、10分間遠心し、細胞を得た。細胞に含まれる赤血球は、Gymphoprep(d=1.077;Nycomed,Oslo,Norway)を用いて密度勾配遠心をして取り除いた。残りの細胞を、10%ウシ血清(FBS,GIBCO Invitrogen)含有ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM)(GIBO Invitrogen))でCOインキュベータ中37℃、24時間培養した。24時間後、接着した細胞を0.2g/Lのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(ナカライテスク、京都、日本)で処理し、浮遊してきた細胞を1×インシュリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS,GIBCO Invitrogen)、1nMデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、100μMアスコルビン酸-2-リン酸塩(Sigma-Aldrich)、10ng/mL上皮成長因子(EGF,Peprotech,Rocky Hill,NJ)、および5%胎児ウシ血清(Gibco Invitrogen)を含有するStem Cell Medium(ニプロ、大阪、日本)に懸濁し、ヒトフィブロネクチンコートディッシュ(AGC、東京、日本)上に10,000細胞/cmの密度で播種し、培養を行った。培養はチャンバー内をProOx110(協同インターナショナル、東京、日本)を用いて5%二酸化炭素、5%酸素濃度に設定し、37℃で行った(低酸素培養)。培地は2日おきに交換し、セミコンフルエント(細胞密度が80~90%程度)な状態で継代を行った。酸素濃度を5%の代わりに20%とした他は同様のものを比較対照として用いた(通常培養)。
【実施例】
【0030】
細胞数を経時的に測定した結果を、増殖曲線として図1に示す。図1に示すように、80日目には、通常培養の場合には増殖を停止したが、低酸素培養の場合には、増殖を続けていた。80日目には、低酸素培養の場合には、通常培養の場合の約130倍の数の細胞が得られた。このことから、低酸素培養によって、ヒト脂肪組織由来体性幹細胞の増殖能力および生存能力が顕著に亢進し、多量にヒト脂肪由来体性幹細胞を製造できることが明らかになった。
【実施例】
【0031】
実施例2 ヒト脂肪組織由来体性幹細胞の増殖および生存能力:
Click-iT EdU Proliferation Flow Cytometry Kit(Invitrogen)を用いて、実施例1で製造された5日目の細胞集団のうち、S期にある細胞の割合を調べた。
結果をグラフとして図2に示す。図2に示されるように、低酸素培養の場合には、S期にある細胞の比率が高く、DNA複製能が亢進していることがわかる。
【実施例】
【0032】
実施例3 ヒト脂肪組織由来体性幹細胞の脂肪組織への分化能:
実施例1で製造された継代培養8回後の細胞集団について、1.7μM インスリン、2.5μM デキサメタゾン、0.5mM IBMX(Isobutylmethylxanthine)を含有する脂肪分化誘導培地の添加によって脂肪組織への分化を誘導し、オイルレッドO染色を行った。また、脂肪組織への分化誘導率を比色定量法によって計測した。
染色後の細胞集団の代表的な写真を、図3の左図に示し、脂肪組織への分化誘導率を、グラフとして図4に示す。図3の左図および図4に示されるように、低酸素培養の場合には、染色された細胞の割合が高く、通常培養の場合に比して、油滴形成能を持つ脂肪組織への分化効率が高いことがわかる。
【実施例】
【0033】
実施例4 ヒト脂肪組織由来体性幹細胞の骨組織への分化能:
実施例1で製造された継代培養8回後の細胞集団について、0.1μM デキサメタゾン、50mg/mL L-アスコルビン酸、10mM βグリセロリン酸を含有する骨分化培地の添加によって骨組織への分化を誘導し、アリザリンレッド染色を行った。
染色後の細胞集団の代表的な写真を、図3の右図に示す。図3の右図に示すように、低酸素培養の場合には、染色された細胞の割合が高く、通常培養の場合に比して、骨組織への分化効率が高いことがわかる。
【実施例】
【0034】
実施例5 ヒト脂肪組織由来体性幹細胞の神経細胞への分化能:
実施例1で製造された12日目の細胞集団について、Neural Differentiation Medium(Hyclone Fisher Scientific, MA, USA)によって神経組織への分化を誘導し、βIIIチューブリン、NF200、およびDAPIを用いて染色を行った。
染色した細胞の代表的な写真を、図5に示す。図5に示すように、低酸素培養条件下で製造された実施例1の細胞集団は、神経細胞への分化能を有していることがわかる。
【実施例】
【0035】
実施例6 低酸素誘導因子の発現量とヒト脂肪由来体性幹細胞の増殖との関係:
酸素濃度を代えたほかは実施例1と同様の実験を行い、ヒト脂肪由来体性幹細胞を増殖させた。増殖曲線を図6に示す。図6の増殖曲線における12日目の倍加時間を図7に示す。また、5日目の細胞におけるHIF1αタンパク質の発現量を、抗ヒトHIF1αマウスモノクローナル抗体(BD Bioscience)を用いてウェスタンブロッティング法によって調べた。発現量の結果を図8に示す。
図7に示すように、5%から2%に酸素濃度が低下するにつれて、倍加時間が長くなっている。また、図8に示すように、5%から2%に酸素濃度が低下するにつれて、HIF1αタンパク質の発現量が増大している。そして、HIF1αタンパク質の発現量の増大傾向と、倍加時間の増大傾向は、類似している。
このように、増殖度の高さは、HIF1αタンパク質の発現量の低さと相関関係があった。このことから、細胞内における低酸素誘導因子の発現量が所定の値を超えないことを指標として酸素濃度を設定することによって、細胞の増殖度が高い培養条件に設定することができることが分かる。
図面
【図5】
0
【図6】
1
【図8】
2
【図1】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図4】
6
【図7】
7