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明細書 :熱電変換材料の製造方法及びこれに用いる製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5828522号 (P5828522)
登録日 平成27年10月30日(2015.10.30)
発行日 平成27年12月9日(2015.12.9)
発明の名称または考案の名称 熱電変換材料の製造方法及びこれに用いる製造装置
国際特許分類 H01L  35/34        (2006.01)
H01L  35/22        (2006.01)
C01G  51/04        (2006.01)
FI H01L 35/34
H01L 35/22
C01G 51/04
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2012-522703 (P2012-522703)
出願日 平成23年6月30日(2011.6.30)
国際出願番号 PCT/JP2011/065096
国際公開番号 WO2012/002509
国際公開日 平成24年1月5日(2012.1.5)
優先権出願番号 2010152228
優先日 平成22年7月2日(2010.7.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年5月26日(2014.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】下▲崎▼ 敏唯
【氏名】西脇 秋史
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
審査官 【審査官】安田 雅彦
参考文献・文献 特開2000-211971(JP,A)
特開2008-124417(JP,A)
特開2005-093450(JP,A)
特開2008-270410(JP,A)
特開2003-034576(JP,A)
特開平09-321346(JP,A)
米国特許出願公開第2007/0039641(US,A1)
特開2008-105912(JP,A)
特開2002-184403(JP,A)
Y.SASAGO et al.,Large thermoelectric power in NaCo2O4 single crystals,Physical Review B - Condensed Matter and Materials Physics,1997年,Vol.6, No.20,pp.R12685-R12687
K.SUGIURA et al.,Thermoelectric properties of epitaxial films of layered cobalt oxides fabricated by topotactic ion-exchange methods,International Conference on Thermoelectrics, ICT, Proceedings,2006年,pp.99-102
Y.C.LIOU et al.,Synthesis of Ca3Co4O9 and CuAlO2 ceramics of the thermoelectric application using a reaction- Sintering process,Journal of the Australian Ceramic Society,2008年,Vol.4, No.1,pp.17-22
調査した分野 H01L 35/00-34
C01G 51/04
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属A、遷移金属M、及び酸素Oで構成され、各元素の原子価により決定される整数x、y、zを用いた一般式がAxMyOzで表される熱電変換材料の製造方法において、
前記熱電変換材料の固体原料である塊状金属酸化物と、固体、液体、又は気体のいずれか1の状態の塩とを用い、前記塊状金属酸化物と前記塩とを拡散反応させ、基板上に前記AxMyOzを形成するに際し、
前記基板は金属板であって、該金属板を構成する金属の酸化物の一部を絶縁膜とし、残部を前記塊状金属酸化物とし、前記絶縁膜を介して前記AxMyOzを形成することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
【請求項2】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属A、遷移金属M、及び酸素Oで構成され、各元素の原子価により決定される整数x、y、zを用いた一般式がAxMyOzで表される熱電変換材料の製造方法において、
前記熱電変換材料の固体原料である塊状金属酸化物と、固体、液体、又は気体のいずれか1の状態の塩とを用い、前記塊状金属酸化物と前記塩とを拡散反応させ、基板上に前記AxMyOzを形成するに際し、
前記基板はセラミックス板であって、蒸着又はメッキにより該セラミックス板上に金属膜を形成した後、該金属膜を酸化させて前記塊状金属酸化物とすることを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱電変換材料の製造方法において、前記塊状金属酸化物はコバルト酸化物、前記塩はナトリウム塩、前記金属Aはナトリウム、前記遷移金属Mはコバルト、前記AxMyOzはNaCoであることを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の熱電変換材料の製造方法において、前記塊状金属酸化物はマンガン酸化物、前記塩はカルシウム塩、前記金属Aはカルシウム、前記遷移金属Mはマンガン、前記AxMyOzはCaMnOであることを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の熱電変換材料の製造方法において、前記塊状金属酸化物はコバルト酸化物、前記塩はカルシウム塩、前記金属Aはカルシウム、前記遷移金属Mはコバルト、前記AxMyOzはCaCo又はCaCoあることを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱電変換材料の製造方法に用いる製造装置であって、前記塊状金属酸化物と前記塩を装入する反応容器と、該反応容器内の前記塊状金属酸化物と前記塩を加熱して拡散反応を進行させる加熱手段とを有することを特徴とする熱電変換材料の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱を利用して発電するための熱電変換材料の製造方法及びこれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換材料は、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用し、これにより、廃熱エネルギーを電気エネルギーに変換して、廃熱の有効利用を図るものである。
例えば、特許文献1に示すように、層状ペロブスカイト構造を有するNaCoなどの微小単結晶のa軸方向における熱電特性が、これまでの金属系熱電変換材料の代表的存在であるBiTe系の熱電特性に比較して、著しく良いことが発見された。そこで、例えば、特許文献2や非特許文献1のように、NaCoの大きな単結晶の作製が試みられているが、熱電発電に使用可能な単結晶の作製は、困難でコストもかかり実現できてない。
このため、多くの研究者が、多結晶体で高性能を示すNaCoの作製を目指しているが、単結晶の性能に比較して著しく低い性能しか得られていないのが現状である。これは、単結晶のc軸方向(a軸方向と直交するNaCoの積層方向)の性能がa軸方向の1/200程度であり、多結晶化すると、最大でも平均的な性能しか引き出せないことに由来している。このことは、多結晶で高性能化を実現するためには、全ての結晶を高性能な方向に配列させる必要があることを意味している。
【0003】
通常、多結晶のNaCoは、CoなどのCo酸化物とNaCOの粉末を混合し、880~950℃の温度範囲で加熱(焼結)することにより作製される。なお、粉末は、反応が均一に、しかも速く進行するように、微細化される傾向にある。
しかし、このような作製法では、反応によって発生するガスに起因した空洞、未反応物や異種相の存在、粒界の弱結合など、結晶方位の異方性とは異なる他の要因も加わり、NaCoの性能を劣化させることも問題となる。ここで、空洞などの他の要因に関しては、ホットプレス法やプラズマ焼結法などを用いて抑制する方法も検討されており、ある程度の成果は得られているが、配向化には何ら効果がない。
このため、多結晶の熱電変換材料の性能は単結晶の性能に比べて著しく劣っている。
【0004】
また、多結晶で配向化させる試みとして、水酸化コバルト又は酸化コバルトの板状粒子と、ナトリウム金属塩とを混合し、この混合物を、板状粒子が一方向に配向するように成形し、この成形体を焼成して緻密化させることにより、c軸方向が一方向に配向した焼結体を作製する方法がある。
この方法を利用した特許文献3や非特許文献2では、90%の割合で<001>方向に配向させることに成功し、配向化させない試料に対して性能が数倍向上することを示唆している。
また、薄膜で配向化を試みた研究として、例えば、非特許文献3や非特許文献4には、類似の物質であるCaCoやSrCoで配向化に成功している。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平9-321346号公報
【特許文献2】特開2004-35299号公報
【特許文献3】特開2000-211971号公報
【0006】

【非特許文献1】ミカミマサシ、外5名、「クリスタル グロース オブ サーモエレクトリック マテリアル NaXCoO2-δ バイ ア フラックス メソッド(Crystal Growth of Thermoelectric Material NaXCoO2-δ by a Flux Method)」、ザ ジャパン ソサイエティー オブ アプライド フィジクス(The Japan Society of Applied Physics)、Vol.41、2002年7月、p.L777-L779
【非特許文献2】タジマシン、外3名、「サーモエレクトリック プロパティーズ オブ ハイリー テクスチャード NaCo2O4 セラミックス プロセスド バイ ザ リアクティブ テンプレイティッド グレイン グロース(RTGG) メソッド(Thermoelectric properties of highly textured NaCo2O4 ceramics processed by the reactive templated grain growth(RTGG) method)」、マテリアルズ サイエンス アンド エンジニアリング(Materials Science and Engineering)、B86、2001年2月、p.20-25
【非特許文献3】酒井等、「アニソトロピック サーモエレクトリック プロパティーズ イン レイヤード コバルト AxCoO2(A=Sr アンド Ca) ティンフィルム(Anisotropic thermoelectric properties in layered cobalt AxCoO2(A=Sr and Ca) thinfilm)」、アプライド フィジクス レター(Appl. Phys. Lett.)、Vol.85、2004年、p.739
【非特許文献4】酒井章裕、外1名、「ナノブロック積層材料における結晶配向制御」、パナソニック テクニカル ジャーナル(Panasonic Technical Journal)、Vol.54 No.3、2008年10月、p.58-60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の方法には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献3や非特許文献2の方法は、例えば数μmの微細な扁平状Co結晶とNaCOとを反応させてNaCoなどを生成し、最終的には、扁平な微細粒子を焼結させてバルク化する工程を経る。このため、微細な粉末を焼結する際に生じる、空洞、未反応生成物、及び異種相の存在、あるいは結晶粒界の弱結合による弊害を解消できない。従って、NaCoの緻密化が図れず、熱電変換材料として利用する際の性能(電気伝導率)が低下する。
また、非特許文献3や非特許文献4の方法では、類似の物質であるCaCoやSrCoでは薄膜の配向化に成功しているものの、NaCoでは薄膜化もできていない。従って、配向化による高性能化も実現されていない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、単結晶に比較して低コストで容易に製造でき、しかも単結晶の性能に近づけることが可能な多結晶の熱電変換材料の製造方法及びこれに用いる製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱電変換材料の製造方法は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属A、遷移金属M、及び酸素Oで構成され、各元素の原子価により決定される整数x、y、zを用いた一般式がAxMyOzで表される熱電変換材料の製造方法において、
前記熱電変換材料の固体原料である塊状金属酸化物と、固体、液体、又は気体のいずれか1の状態の塩とを用い、前記塊状金属酸化物と前記塩とを拡散反応させ、基板上に前記AxMyOzを形成するに際し、
前記基板は金属板であって、該金属板を構成する金属の酸化物の一部を絶縁膜とし、残部を前記塊状金属酸化物とし、前記絶縁膜を介して前記AxMyOzを形成する。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る熱電変換材料の製造方法アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属A、遷移金属M、及び酸素Oで構成され、各元素の原子価により決定される整数x、y、zを用いた一般式がAxMyOzで表される熱電変換材料の製造方法において、
前記熱電変換材料の固体原料である塊状金属酸化物と、固体、液体、又は気体のいずれか1の状態の塩とを用い、前記塊状金属酸化物と前記塩とを拡散反応させ、基板上に前記AxMyOzを形成するに際し、
前記基板はセラミックス板であって、蒸着又はメッキにより該セラミックス板上に金属膜を形成した後、該金属膜を酸化させて前記塊状金属酸化物とする。
【0011】
ここで、前記塊状金属酸化物はコバルト酸化物、前記塩はナトリウム塩、前記金属Aはナトリウム、前記遷移金属Mはコバルト、前記AxMyOzはNaCoであることが好ましい。
また、前記塊状金属酸化物はマンガン酸化物、前記塩はカルシウム塩、前記金属Aはカルシウム、前記遷移金属Mはマンガン、前記AxMyOzはCaMnOであってもよい。
そして、前記塊状金属酸化物はコバルト酸化物、前記塩はカルシウム塩、前記金属Aはカルシウム、前記遷移金属Mはコバルト、前記AxMyOzはCaCo又はCaCoであってもよい。
【0012】
第1、第2の発明に係る熱電変換材料の製造方法に用いる製造装置であって、前記塊状金属酸化物と前記塩を装入する反応容器と、該反応容器内の前記塊状金属酸化物と前記塩を加熱して拡散反応を進行させる加熱手段とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、熱電変換材料の固体原料である塊状金属酸化物と塩とを拡散反応させることにより、結晶方位の揃った熱電変換材料を生成させることができる。これは、結晶方位に異方性がある合金系では、一般に、拡散の速い(拡散のし易い)方位に結晶が成長し、柱状の結晶粒界をもった拡散層が形成されることによる。
これによって、従来の方法に比較し空洞や欠陥が極めて少なく緻密で且つ結晶方位の揃った熱電変換材料を生成させることができる。
また、塊状金属酸化物を使用し、拡散反応を用いるので、空洞、未反応生成物、及び異種相の発生を抑制、更には防止でき、拡散層を緻密な組織に形成できる。
従って、単結晶に比較して低コストで容易に製造でき、しかも単結晶の性能に近づけることが可能な多結晶の熱電変換材料を製造できる。
【0014】
ここで、基板を金属板で構成し基板上にAxMyOzを形成する場合、脆いAxMyOzを金属板で補強できると共に、金属板を構成する金属の酸化物である絶縁膜により、金属板とAxMyOzとの直接接触を防止(絶縁)できる。
また、基板をセラミックス板(例えば、アルミナ板)で構成し基板上にAxMyOzを形成する場合、蒸着又はメッキなどの方法を用いて、例えば、アルミナ板に金属膜を数μm~数mmの厚さで成膜させ、これを直接炭酸ナトリウム(塩)中に浸漬させて金属膜を酸化させることにより(塊状金属酸化物に相当)、AxMyOzを形成することもできる。あるいは、アルミナ板に成膜させた金属膜を予め酸化させ、これを炭酸ナトリウム(塩)と反応させて、AxMyOzを形成することもできる。
熱電発電素子は、熱電変換材料であるP型半導体とN型半導体とを組み合わせて作製される。この際、1つのPN接合対では、取り出せる電力が小さいため、数多くの対を直列に接続する必要がある。多くの場合、熱電変換材料は金属電極で接合されるが、例えば、NaCoやCoOは脆いため、接合時に容易に破損する恐れがある。
そこで、AxMyOzを、絶縁膜を介して金属板上に、又はセラミックス板上に形成することで、熱電変換材料の破損を抑制でき、その結果、単結晶に比較して低コストで容易に多結晶の熱電変換材料を製造できる。
【0015】
特に、AxMyOzがNaCoである場合、その熱電特性が、これまでの金属系熱電変換材料の代表的存在であるBiTe系の熱電特性に比較して著しく良いため、本発明の効果がより顕著になる。
【0016】
また、熱電変換材料の製造方法に用いる製造装置が、塊状金属酸化物と塩を装入する反応容器と、この反応容器内の塊状金属酸化物と塩を加熱して拡散反応を進行させる加熱手段とを有する場合、簡単な装置構成で熱電変換材料を製造できる。従って、単結晶に比較して低コストで容易に多結晶の熱電変換材料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る熱電変換材料の製造方法の説明図である。
【図2】(A)は同熱電変換材料の製造方法に用いる製造装置の説明図、(B)は(A)に適用した昇温パターンのグラフである。
【図3】コバルト板を焼成して形成した酸化膜のX線回折結果のグラフである。
【図4】製造した熱電変換材料の断面を表す金属組織の写真である。
【図5】同熱電変換材料のX線回折結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施例に係る熱電変換材料の製造方法は、ナトリウム(金属Aの一例)、コバルト(遷移金属Mの一例)、及び酸素Oで構成されたNaCo(AxMyOzの一例)で表される熱電変換材料(P型半導体)の製造方法であり、熱電変換材料の固体原料であるコバルト酸化物(塊状金属酸化物の一例)10と炭酸ナトリウム(ナトリウム塩の一例)11とを拡散反応させて、結晶方位の揃った熱電変換材料を生成させる方法である。なお、図1中の符号12は、熱電変換材料の生成過程で形成される中間体である。以下、詳しく説明する。

【0019】
製造する熱電変換材料はNaCoであるが、本発明が対象とする熱電変換材料は、このNaCoに限定されるものではなく、例えば、カルシウム(金属Aの一例)、コバルト(遷移金属Mの一例)、及び酸素Oで構成されたCaCoやCaCoがある。また、カルシウム(金属Aの一例)、マンガン(遷移金属Mの一例)、及び酸素Oで構成されたCaMnOで表される熱電変換材料(N型半導体)もある。
更に、以下に示すアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属A、遷移金属M、及び酸素Oで構成され、各元素の原子価により決定される整数x、y、zを用いた一般式がAxMyOzで表されるものもある。

【0020】
ここで、金属Aであるアルカリ金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、又はセシウム(Cs)があり、またアルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、又はバリウム(Ba)がある。
そして、遷移金属(遷移元素)Mとしては、例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、又はタングステン(W)がある。

【0021】
前記したNaCoを製造するに際しては、まず、コバルト酸化物(酸化コバルト:CoOもしくはCo等)10を準備する。
このコバルト酸化物は粉状のものではなく、例えば、厚みが0.1~5mm程度の板状のもの(板材)を使用できるが、使用目的に応じて、厚みや形状を変更することは勿論可能である(例えば、厚みが数μm~数mm程度の膜でもよい)。また、コバルト酸化物は、コバルト板を加熱し酸化させることで得られるが、これに限定されるものではなく、予め作製したコバルト酸化物の薄板を準備してもよい。なお、CaMnOを製造するに際しては、マンガン酸化物(酸化マンガン:MnO)を準備する。
そして、このコバルト酸化物10に、ナトリウムをカチオンとした炭酸塩(酸素酸塩の一例)である炭酸ナトリウム(NaCO)11を接触させる。

【0022】
コバルト酸化物に接触させる塩としては、ナトリウムをカチオンとした水酸化物、他の酸素酸塩、又はハロゲン化物のうちのいずれか1種又は2種以上を使用してもよい。なお、他の酸素酸塩には、例えば、硝酸塩(硝酸ナトリウム:NaNO)、亜硝酸塩、硫酸塩、又はリン酸塩があり、また、ハロゲン化物には、例えば、塩化物(塩化ナトリウム:NaCl)、フッ化物、臭化物、又はヨウ化物がある。
なお、使用する塩は、熱電変換材料を構成する金属Aの種類に応じて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属をカチオンとする水酸化物、酸素酸塩、又はハロゲン化物のうちのいずれか1種又は2種以上を使用することもできる。例えば、CaCoやCaCo、またCaMnOの場合は、炭酸カルシウム(CaCO)、塩化カルシウム(CaCl)、又は硝酸カルシウム(Ca(NO)等のカルシウム塩を使用できる。

【0023】
ここで、コバルト酸化物10と炭酸ナトリウム11との接触は、図2(A)に示す熱電変換材料の製造装置(以下、単に製造装置ともいう)13により行う。
この製造装置13は、コバルト酸化物10と炭酸ナトリウム11を装入する反応容器14と、この反応容器14内のコバルト酸化物10と炭酸ナトリウム11を加熱する加熱手段(図示しない)とを有する。なお、反応容器としては、例えば、蓋付きのるつぼ(アルミナ製)等を使用できるが、コバルト酸化物と炭酸ナトリウムを装入できれば、これに限定されるものではない。また、加熱手段としては、例えば、電気炉等を使用できるが、反応容器内のコバルト酸化物と炭酸ナトリウムを加熱して拡散反応を進行させることができれば、これに限定されるものではない。

【0024】
ここで、反応容器に装入するコバルト酸化物と炭酸ナトリウムの質量比は、炭酸ナトリウムの質量を、コバルト酸化物の質量の例えば、0.5倍以上10倍以下(好ましくは、下限を1倍)とするのがよい。
コバルト酸化物の質量に対する炭酸ナトリウムの質量が0.5倍未満の場合、コバルト酸化物に対する炭酸ナトリウムの量が少な過ぎて、NaCoの成長に必要なNaの供給が絶たれ、NaCoの成長が止まり、十分に成長させることができない。一方、炭酸ナトリウムの質量が10倍を超える場合、コバルト酸化物に対する炭酸ナトリウムの量が多過ぎて、NaCoが生成し成長するまでに時間を要する。

【0025】
このように、反応容器14内に装入したコバルト酸化物10と炭酸ナトリウム11を、加熱手段により加熱することで、炭酸ナトリウム11を液体の状態(溶融塩)にする。なお、液体にした炭酸ナトリウムの中に、コバルト酸化物を入れてもよい。
ここで、加熱温度は、NaCoが安定に存在し得る温度範囲であり、かつ、炭酸ナトリウムの融点(851℃)よりも高い温度であることが望ましい。具体的には、860~950℃の範囲(図2(B)中の斜線領域)内に設定する。なお、加熱温度は、NaCoが安定に存在し得る温度範囲であれば、使用する塩の種類に応じて変更でき、NaCoが安定に存在し得る温度範囲であり、かつNaCoが成長できる条件下であれば、一般的に高温ほど成長速度が速くなる傾向にある。
これにより、図1に示すように、コバルト酸化物10の表面に炭酸ナトリウム11を接触させ、コバルト酸化物10と炭酸ナトリウム11との反応によって、NaCoの単相を、コバルト酸化物の炭酸ナトリウムとの接触面側に生成できる。

【0026】
なお、上記した加熱温度の保持時間、即ち拡散に要する時間は、例えば、10~200時間程度としているが、これに限定されるものではなく、形成するNaCoの厚みに応じて種々変更できる。
また、コバルト酸化物に接触させる溶融状態の炭酸ナトリウムには、予め酸化コバルト(CoO)を溶解(飽和も含む)させたものを使用することもできる。このように、溶融状態の炭酸ナトリウムに酸化コバルトを予め溶解させることで、コバルト酸化物に接触させた際に、一度生成したNaCoが炭酸ナトリウムに再溶解することを抑制、更には防止できる。従って、この場合、炭酸ナトリウムの質量を、前記した上限値(即ち、10倍)よりも多く、例えば、炭酸ナトリウムの質量をコバルト酸化物の質量の100倍程度まで多くすることもできる。
これにより、NaCoの生成時間を更に短縮できる。なお、酸化コバルトを一定量溶解させた炭酸ナトリウムは、例えば、アルミナ製のるつぼ内に、炭酸ナトリウムと酸化コバルトの粉末(粒でもよい)を所定量装填し、860~950℃で加熱する方法により製造できる。

【0027】
また、炭酸ナトリウムは、気体の状態(蒸気)にして、コバルト酸化物に接触させることもできる。
例えば、コバルト酸化物側を860~950℃に加熱し、炭酸ナトリウム側を900~1100℃に加熱することで、炭酸ナトリウムあるいは酸化ナトリウムの蒸気がコバルト酸化物側に飛散し、コバルト酸化物との反応によって、NaCoの単相を生成できる。
なお、塩としては、炭酸ナトリウム以外の塩も使用できるが、この場合、塩の加熱温度は、使用する塩の種類に応じて種々変更できる。

【0028】
更に、炭酸ナトリウムは、固体の状態のままで、コバルト酸化物に接触させることもできる。
この場合、コバルト酸化物と炭酸ナトリウムとを、共に溶融しない温度範囲(例えば、800~850℃程度)で加熱し、コバルト酸化物と炭酸ナトリウムとの反応によって、NaCoの単相を生成できる。
なお、加熱温度は、使用する塊状金属酸化物と塩の種類に応じて種々変更でき、例えば、塊状金属酸化物と塩のうちのいずれか低い融点より5~150℃(好ましくは、下限を10℃、上限を100℃)低い温度範囲内に設定する。

【0029】
また、上記したNaCoは脆いため、金属板(基板の一例)であるコバルト板上に、酸化コバルト(CoO:金属板を構成する金属の酸化物の一例)の絶縁膜を介して形成し、補強することもできる。
この方法としては、まず、コバルト板を準備し、コバルトが残存するように加熱して酸化コバルトを形成し、この酸化コバルトの一部を残してNaCoを形成するのがよい。なお、初期のコバルト板厚みと初期の酸化コバルトの膜厚は、コバルト板の残存厚み、酸化コバルトの残存膜厚、及び生成したNaCo厚みを最適とするため、コバルト板を酸化させるときの酸化コバルト、及び酸化コバルトと炭酸ナトリウムを反応させるときのNaCoの生成及び生長過程を、種々の加熱温度や時間で調査することにより(過去の実績データに基づいて)、選択できる。

【0030】
ここで、NaCo形成後のコバルト板の残存厚みは、例えば、0.5~1mm程度、また、NaCo形成後の酸化コバルトの残存膜厚は、例えば、0.01~0.5mm程度である。そして、形成するNaCoの厚みは、例えば、50μm~2mm程度である。
なお、上記した各厚みは、使用用途に応じて種々変更できる。
また、上記したNaCoは、金属板の代わりにセラミックス板等の上に形成することもできる。この場合、蒸着又はメッキによりセラミックス板上にCo膜(金属膜の一例)を形成した後、このCo膜を酸化させて前記したコバルト酸化物(塊状金属酸化物)とし、前記した方法でNaCoを形成する。このコバルト酸化物は、全てNaCoを作製するために使用できるが、例えば、その一部を絶縁膜として残存させてもよい。

【0031】
なお、金属膜の成膜は、セラミックス板上に金属膜を形成できれば、蒸着やメッキに限定されるものではない。
また、上記したNaCoを補強するための基板は、金属板やセラミックス板に限定されるものではなく、NaCoを補強できれば、他の材質の基板を使用することもできる。
このように、拡散反応を用いることで、生成するNaCoの結晶方位を、c軸方向(拡散方向)の一方向に揃えることができる。ここで、一方向に揃えるとは、全ての結晶方位が完全に同じ方向に揃っている必要はなく、例えば、生成するNaCoのうち、面積比で70%(好ましくは、80%、更には90%)以上の結晶方位が、c軸方向に対して±45度(好ましくは、±30度)の範囲内で傾斜しているものも含まれる。

【0032】
以上のことから、拡散反応を用いることで、単結晶に比較して、低コストで、しかも作製法が容易な多結晶NaCoの性能を、単結晶に匹敵する性能に近づけることが可能となる。
従って、このNaCoをP型半導体とし、例えば、ZnOやCaMnOをN型半導体とすることで、PN接合が可能となり、これを熱電発電素子として利用できる。特に、CaMnOを、上記した本発明の方法を用いて作製すれば、P型のNaCoと同時に作製することも可能であり、製造プロセスが著しく簡素化される。

【0033】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験例について説明する。
まず、純度が99.5質量%のCo板を1100℃で72時間加熱して、酸化させた。コバルト酸化物は、室温ではCoが安定であるが、図3に示すX線回折の結果から、CoOになっていることを確認できた。
次に、作製したCoO板(0.6g)をアルミナ製角板の上に置き、このCoO板の上をNaCO(0.5g)で覆い、860℃において24時間、大気中で加熱した。この温度では、NaCOは融解して液体となっている。

【0034】
この結果、CoO板とNaCOの反応によって、図4に示すように、NaCoが単相として拡散生成した。この生成したNaCoは、CoOとNaCO(図4中では樹脂)との間に生成し、CoOとの接合面に対して垂直方向に結晶粒界が形成され、柱状晶のNaCoが生成されていることが観察された。なお、図4において、NaCOの代わりに樹脂があるのは、試料を水で洗い流していることによる。
また、図4は、本発明方法で作成されたNaCo2O4の顕微鏡組織写真を示すが、下部のCoOと上部の樹脂の間に観察されるNaCo2O4の結晶粒界が拡散方向とほぼ平行になっていると共に、空洞や介在物などの欠陥が観察されていない。結晶粒界が拡散方向とほぼ平行になっていることは結晶方位が特定の方向に揃っていることを示唆しているが、その結晶方位は下記のX線回折の結果からc軸方向に揃っていることが示される。

【0035】
次に、拡散生成層が存在する表面をX線回折した結果について、図5を参照しながら説明する。図5に示すように、NaCoの回折ピークが得られ、特に<001>方向の回折ピーク強度が強いことが分かった。このことは、NaCoの<001>方位が、拡散方向(c軸方向)に向けて一方向に揃っていることを示している。この点に着目して、図4をみると、NaCoの結晶粒界が拡散方向に平行(CoO面に垂直)に整列していることが分かる。この図5は本方法で作成された熱電変換材料の結晶方位が揃っていることを示しており、図5の太い実線で示すNaCo2O4粉末の回折ピークは例えば<102>、<104>のピークが観察されているのに対して細い実線で示した本方法で作成された試験片では、これらのピークは観察されず、<002>、<004>のc軸方向に結晶方位が揃っていることが分かる。
以上のことから、本発明の熱電変換材料の製造方法を使用することで、単結晶に比較して低コストで容易に製造でき、しかも単結晶の性能に近づけることが可能な多結晶の熱電変換材料を製造できることが分かった。

【0036】
以上、本発明を、実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施例や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の熱電変換材料の製造方法及びこれに用いる製造装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
10:コバルト酸化物(塊状金属酸化物)、11:炭酸ナトリウム(塩)、12:中間体、13:熱電変換材料の製造装置、14:反応容器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4