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明細書 :身体情報測定装置および身体情報測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5526421号 (P5526421)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
発明の名称または考案の名称 身体情報測定装置および身体情報測定方法
国際特許分類 A61B   5/0245      (2006.01)
A61B   5/0205      (2006.01)
A61B   5/025       (2006.01)
FI A61B 5/02 320P
A61B 5/02 C
A61B 5/02 350
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2012-538683 (P2012-538683)
出願日 平成23年10月11日(2011.10.11)
国際出願番号 PCT/JP2011/073338
国際公開番号 WO2012/050088
国際公開日 平成24年4月19日(2012.4.19)
優先権出願番号 2010229873
優先日 平成22年10月12日(2010.10.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年6月7日(2013.6.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】田中 宏暁
【氏名】松田 拓朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
審査官 【審査官】南川 泰裕
調査した分野 A61B 5/00-5/03
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定者の心音を採取して心音データとして出力する心音採取手段と、
前記心音採取手段からの心音データに基づいて第1心音を検出する第1心音抽出手段と、
前記第1心音抽出手段により検出された第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する第1心音振幅測定手段と、
前記被測定者の心拍数を測定して心拍数データとして出力する心拍数計数手段と、
前記被測定者の安静時の心拍数データおよび前記被測定者の安静時の第1心音振幅データが格納される記憶手段と、
前記記憶手段からの安静時の心拍数データと前記心拍数計数手段からの運動時の心拍数データとの比率、および前記記憶手段からの安静時の第1心音振幅データと前記第1心音振幅測定手段からの運動時の第1心音振幅データとの比率の二重積を二重積データとして演算し、この二重積データの分布に近似する近似線の屈曲する運動強度を至適運動強度として検出する運動強度演算手段とを備えたことを特徴とする身体情報測定装置。
【請求項2】
前記運動強度演算手段は、二重積データの分布に基づいて屈曲点発現前の第1グループと屈曲点発現後の第2グループとに分割し、前記第1グループの回帰直線を第1近似直線として演算すると共に、前記第2グループの回帰直線を第2近似直線として演算し、前記第1近似直線と第2近似直線との組み合わせの中から、両近似直線の残差平方和の合計値が最小となる組合せを選出し、該両近似直線の交点を至適運動強度として検出する請求項1記載の身体情報測定装置。
【請求項3】
前記運動強度演算手段が検出した至適運動強度を、複数の被測定者を測定することにより得られた運動負荷時の最高酸素摂取量と至適運動強度とが示す相関関係から導いた関係式に代入して、被測定者の負荷運動時の最高酸素摂取量を検出する有酸素性作業能力検出手段とを備えた請求項1または2記載の身体情報測定装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記被測定者の安静時の中心血圧値が安静時中心血圧データとして格納され、
前記第1心音振幅測定手段からの安静時に測定して基準とした第1心音振幅データと検査時の第1心音振幅データとの比率に基づいて、前記記憶手段から読み出した安静時中心血圧データから検査時における中心血圧値を演算する中心血圧推定手段を備えた請求項1記載の身体情報測定装置。
【請求項5】
前記中心血圧推定手段は、安静時の中心血圧値および第1心音の振幅値と、運動時の中心血圧値および第1心音の振幅値とを測定して与えられる被測定者ごとの第1心音の振幅値と中心血圧値の関係式に基づいて検査時における中心血圧値を推定する請求項4記載の身体情報測定装置。
【請求項6】
前記第1心音抽出手段は、
前記被測定者の心電を採取して心電データとして出力する心電採取手段と、
前記心電採取手段からの心電データからR波を検出する基準タイミング検出手段と、
前記基準タイミング検出手段が検出したR波の発生タイミングから、該R波に対応する第1心音を含む所定期間を示すゲート信号を生成するゲート信号生成手段と、
前記心音採取手段からの心音データであって、前記ゲート信号生成手段によるゲート信号が出力されている間の心音データから第1心音を検出する第1心音検出手段とを備えている請求項1記載の身体情報測定装置。
【請求項7】
心音採取手段が、被測定者の心音を採取して心音データとして出力する心音採取ステップと、
第1心音抽出手段が、前記心音採取ステップにより採取された心音データに基づいて第1心音を検出する第1心音抽出ステップと、
第1心音振幅測定手段が、前記第1心音抽出ステップにより検出された第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する第1心音振幅測定ステップと、
心拍数係数手段が、前記被測定者の心拍数を測定して心拍数データとして出力する心拍数計数ステップと、
運動強度演算手段が、前記心拍数計数ステップによる安静時の心拍数データと運動時の心拍数データとの比率、および前記第1心音振幅測定ステップによる安静時の第1心音振幅データと運動時の第1心音振幅データとの比率の二重積を運動強度演算手段により二重積データとして演算し、この二重積データの分布に近似する近似線の屈曲する運動強度を至適運動強度として検出する運動強度演算ステップとを含むことを特徴とする身体情報測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓に関する情報や運動強度に関する情報などの各種の身体情報を測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康維持や、肥満、メタボリックシンドロームの者が状態改善のためにウォーキングをしたり、ジョギングをしたりしている。また、心筋梗塞や高血圧の患者などを対象とした運動療法では、リハビリのために負荷運動を行っている。
負荷運動は、負荷(強度)が不足するようであれば効果が得られ難いし、過度な負荷は反対に身体への悪影響が懸念される。従って、それぞれの被測定者に対して、最もよい至適運動強度を見極めるのが望ましい。
【0003】
至適運動強度に関する技術として特許文献1,2に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載の至適運動強度の決定方法は、段階的な負荷運動を行い、各負荷段階毎の左右房室弁が閉じる際に発生する第1心音(S1音)振幅を被測定者胸部に取り付けた心音マイクロフォンを通して心音図に記録し、これより心音振幅が急激に上昇する変化点(HSBP)が認められた負荷運動段階での運動強度をもって当該被測定者の至適運動強度とするというものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の至適運動強度の判定方法は、運動負荷強度の変化に対する第1心音の振幅の変化を調べ、運動負荷強度の変化に対する一心周期に対する心拡張時間の割合の変化を調べ、第1心音の振幅の変化の屈曲点において、一心周期に対する心拡張時間の割合の変化が第1の基準値以上である場合は、この屈曲点を至適運動強度と判定するというものである。
【0005】
これらの特許文献1,2は、第1心音の振幅値だけで至適運動強度を判定する方法であるが、至適運動強度を判定するための指標としては第1心音の振幅値のみで判定するのは正確性に欠ける。それは、心臓疾患を持つ患者が被測定者である場合、第1心音の振幅値のみで測定した至適運動強度では、既に過度な運動負荷となっているおそれがあり、身体への悪影響が懸念される。
【0006】
心筋の酸素消費量が運動負荷の度合いを示す指標として、相関があることが知られている。心筋の酸素消費量は、心拍数×心室内圧の二重積で算出できるが、心室内圧は測定が困難なため、上腕で測定可能な収縮期血圧で代用される。しかし、心臓の酸素消費量をこの二重積で評価することは、第1心音の振幅値だけで評価するより好ましいが、更に正確性を向上させるためには、心筋の酸素消費量として、心拍数×心筋の収縮性×心室の壁の張力の三重積が用いられるのが望ましい。そして、心筋の収縮性は第1心音の振幅値で代用でき、心室の壁の張力は第2の心音の振幅値で代用できることが知られている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-116161号公報
【特許文献2】特開2007-14777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、第2心音は第1心音と比べて振幅が小さく、運動中では雑音に埋もれてしまうおそれもあり、正確に測定しにくい面がある。従って、正確に心筋の酸素消費量を評価することができれば、至適運動強度が測定でき、被測定者に対する最適な運動療法を施術したり、被測定者の状態改善を行ったり、被測定者の運動力の向上を図ったりすることができる。
【0009】
そこで本発明は、被測定者の至適運動強度を容易に、かつ正確に測定することができる身体情報測定装置および身体情報測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、多数の被測定者に対して実験を行い、収縮期血圧と第1心音の振幅との間に相関関係があることを見出し、本発明をするに至った。
本発明の身体情報測定装置は、被測定者の心音を採取して心音データとして出力する心音採取手段と、前記心音採取手段からの心音データに基づいて第1心音を検出する第1心音抽出手段と、前記第1心音抽出手段により検出された第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する第1心音振幅測定手段と、前記被測定者の心拍数を測定して心拍数データとして出力する心拍数計数手段と、前記被測定者の安静時の心拍数データおよび前記被測定者の安静時の第1心音振幅データが格納される記憶手段と、前記記憶手段からの安静時の心拍数データと前記心拍数計数手段からの運動時の心拍数データとの比率、および前記記憶手段からの安静時の第1心音振幅データと前記第1心音振幅測定手段からの運動時の第1心音振幅データとの比率の二重積を二重積データとして演算し、この二重積データの分布に近似する近似線の屈曲する運動強度を至適運動強度として検出する運動強度演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の身体情報測定方法は、心音採取手段が、被測定者の心音を採取して心音データとして出力する心音採取ステップと、第1心音抽出手段が、前記心音採取ステップにより採取された心音データに基づいて第1心音を検出する第1心音抽出ステップと、第1心音振幅測定手段が、前記第1心音抽出ステップにより検出された第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する第1心音振幅測定ステップと、心拍数係数手段が、前記被測定者の心拍数を測定して心拍数データとして出力する心拍数計数ステップと、運動強度演算手段が、前記心拍数計数ステップによる安静時の心拍数データと運動時の心拍数データとの比率、および前記第1心音振幅測定ステップによる安静時の第1心音振幅データと運動時の第1心音振幅データとの比率の二重積を運動強度演算手段により二重積データとして演算し、この二重積データの分布に近似する近似線の屈曲する運動強度を至適運動強度として検出する運動強度演算ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、まず、心音採取手段が被測定者の心音を採取して心音データとして出力し、この心音データに基づいて第1心音抽出手段が第1心音を検出すると、第1心音振幅測定手段が第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する。次に、心拍数計数手段が被測定者の心拍数を測定して心拍数データとして出力する。そして、運動強度演算手段が、心拍数データと第1心音振幅データとの二重積を二重積データとして演算し、この二重積データの分布に近似する近似線の屈曲する運動強度を至適運動強度として検出する。心筋の酸素消費量を表す第1心音の振幅値と心拍数の二重積は、第1心音の振幅値のみを指標とするより、心臓負荷の状態を正確に反映する指標として有効なので、心臓疾患を持つ被測定者であっても、心臓に対する負荷の度合いを正確に測定することができる。
【0013】
前記運動強度演算手段が、二重積データの分布に基づいて屈曲点発現前の第1グループと屈曲点発現後の第2グループとに分割し、前記第1グループの回帰直線を第1近似直線として演算すると共に、前記第2グループの回帰直線を第2近似直線として演算し、前記第1近似直線と第2近似直線との組み合わせの中から、両近似直線の残差平方和の合計値が最小となる組合せを選出し、該両近似直線の交点を至適運動強度として検出することで、精度が高い至適運動強度を得ることができる。
【0014】
前記運動強度演算手段が検出した至適運動強度を、複数の被測定者を測定することにより得られた運動負荷時の最高酸素摂取量と至適運動強度とが示す相関関係から導いた関係式に代入して、被測定者の負荷運動時の最高酸素摂取量を検出する有酸素性作業能力検出手段とを備えるのが望ましい。
有酸素性作業能力検出手段により、運動強度演算手段により検出した至適運動強度と、運動負荷時の最高酸素摂取量と至適運動強度とが示す相関関係から導いた関係式とから、被測定者の最大運動負荷時の最高酸素摂取量を検出することができるので、被測定者の有酸素性作業能力を演算により得ることができる。つまり、第1心音の振幅値と心拍数との二重積から至適運動強度が求まり、至適運動強度が求まれば、最高酸素摂取量が求まるので、この最高酸素摂取量から被測定者の有酸素性作業能力を計ることができる。
【0015】
また、本発明者らは、多数の被測定者に対して実験を行い、中心血圧と第1心音の振幅との間に相関関係があることを見出し、本発明をするに至った。
すなわち、本発明の身体情報測定装置は、被測定者の心音を採取して心音データとして出力する心音採取手段と、前記心音採取手段からの心音データに基づいて第1心音を検出する第1心音抽出手段と、前記第1心音抽出手段により検出された第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する第1心音振幅測定手段と、前記被測定者の安静時の中心血圧値が安静時中心血圧データとして格納される記憶手段と、前記第1心音振幅測定手段からの安静時に測定して基準とした第1心音振幅データと検査時の第1心音振幅データとの比率に基づいて、前記記憶手段から読み出した安静時中心血圧データから検査時における中心血圧値を演算する中心血圧推定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の身体情報測定方法は、被測定者の心音を心音採取手段により採取して心音データとして出力する心音採取ステップと、前記心音採取ステップにより採取された心音データに基づいて第1心音抽出手段により第1心音を検出する第1心音抽出ステップと、前記第1心音抽出ステップにより検出された第1心音から第1心音振幅測定手段により振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する第1心音振幅測定ステップと、前記第1心音振幅測定ステップによる安静時に測定して基準とした第1心音振幅データと検査時の第1心音振幅データとの比率に基づいて、前記記憶手段から読み出した安静時中心血圧データから検査時における中心血圧値を演算する中心血圧推定ステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、まず、心音採取ステップにより心音採取手段が被測定者の心音を採取して心音データとする。次に、第1心音抽出ステップにより第1心音抽出手段が心音データに基づいて第1心音を検出する。次に、第1心音振幅測定ステップにより第1心音振幅測定手段が検出された第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとする。そして、中心血圧演算ステップにより、第1心音振幅測定手段からの安静時に測定して基準とした第1心音振幅データと検査時の第1心音振幅データとの比率に基づいて、記憶手段から読み出した安静時中心血圧データから検査時における中心血圧値を演算する。そうすることで、検査時の中心血圧値を推定することができる。ここで、安静時とは、被測定者が横たわる、または椅子に座るなどして落ち着いている状態のときを示す。また、検査時とは、検査するときを示し、被測定者の状態は安静状態から身体を動かしている運動状態であってもよい。
【0018】
前記中心血圧推定手段は、安静時の中心血圧値および第1心音の振幅値と、運動時の中心血圧値および第1心音の振幅値とを測定して与えられる被測定者ごとの第1心音の振幅値と中心血圧値の関係式に基づいて検査時における中心血圧値を演算する推定することにより、それぞれの被測定者に応じた関係式で中心血圧値を算出することができるので、精度よく中心血圧値を求めることができる。ここで、運動時とは、身体を動かしている運動状態のときを示す。
【0019】
前記第1心音抽出手段は、前記被測定者の心電を採取して心電データとして出力する心電採取手段と、前記心電採取手段からの心電データからR波を検出する基準タイミング検出手段と、前記基準タイミング検出手段が検出したR波の発生タイミングから、該R波に対応する第1心音を含む所定期間を示すゲート信号を生成するゲート信号生成手段と、前記心音採取手段からの心音データであって、前記ゲート信号生成手段によるゲート信号が出力されている間の心音データから第1心音を検出する第1心音検出手段とを備えているのが望ましい。
心電データを心電採取手段により採取し、基準タイミング検出手段によりR波を検出する。ゲート信号生成手段が検出されたR波の発生タイミングからこのR波に対応する第1心音を含む所定期間を示すゲート信号を生成することで、第1心音検出手段はこのゲート信号に含まれる第1心音を検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1心音の振幅値と心拍数とを測定するだけで、第1心音の振幅値だけから検出するより正確な至適運動強度を容易に検出することができる。また、本発明によれば、心筋の酸素消費量として、心拍数×心筋の収縮性×心室の壁の張力の三重積を用いるまでもなく、第1心音の振幅値と心拍数とによる二重積とすることにより簡単に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る身体情報測定装置により心臓ストレスを測定する被測定者を示す図である。
【図2】図1に示す身体情報測定装置を示すブロック図である。
【図3】(A)は心音採取手段の一例を示すブロック図、(B)は心電採取手段の一例を示すブロック図である。
【図4】(A)は心音および心電を測定するときの位置を示す図、(B)はセンサ装置を説明するための斜視図である。
【図5】心電図と心音図との一例を示す図である。
【図6】(A)~(D)は、4人の被測定者の第1心音の振幅値と中心血圧値の関係を示すグラフである。
【図7】運動強度と二重積との関係を示すグラフである。
【図8】運動強度と二重積およびアドレナリンの分泌量との関係を示すグラフである。
【図9】二重積と三重積との関係を示すグラフである。
【図10】至適運動強度と最高酸素摂取量との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態2に係る身体情報測定装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
1,10x 心臓負荷測定装置
2 心電採取手段
21 測定電極
22 増幅手段
23 AD変換手段
3 心音採取手段
31 加速度センサ
32 増幅手段
33 AD変換手段
4 心拍採取手段
5,5x 制御手段
501 心電入力手段
502 心音入力手段
503 基準タイミング検出手段
504 ゲート信号生成手段
505 第1心音検出手段
506 第1心音振幅測定手段
507 中心血圧推定手段
508 心拍入力手段
509,509x 心拍数計数手段
510 運動強度演算手段
511 過負荷検出手段
511 運動負荷入力手段
512 抑止手段
513 報知手段
514 表示制御手段
515 印刷制御手段
516 有酸素性作業能力検出手段
517 記憶手段
51 第1心音抽出手段
6 表示手段
7 印刷手段
8 センサ装置
9 ケーブル
BP 胸骨柄
S1 第1心音
S2 第2心音
G ゲート信号
V1 振幅値
P1,P2 間隔
P 屈曲点
A 運動負荷器具
L11~L14 近似線
L21、L22 近似直線
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る身体情報測定装置を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、身体情報測定装置1は、被測定者の安静時の状態や、運動負荷器具Aを用いて負荷運動したときの状態を測定して、身体に関する様々な情報を得るためのものである。
身体情報測定装置1は、図2に示すように、心電採取手段2と、心音採取手段3と、心拍採取手段4と、制御手段5と、表示手段6と、印刷手段7とを備えている。

【0024】
心電採取手段2は、例えば、図3(A)に示すように、測定電極21と、増幅手段22と、AD変換手段23とで形成することができる。測定電極21は、被測定者の心臓が脈動する際に身体上に発生する電位を心電信号として採取するための2つの端子である。増幅手段22は、心電信号を増幅するアンプである。AD変換手段23は、増幅された心電信号をデジタルデータである心電データに変換して制御手段5へ出力する機能を備えている。
心音採取手段3は、例えば、図3(B)に示すように、加速度センサ31と、増幅手段32と、AD変換手段33とで形成することができる。本実施の形態では、測定電極21と加速度センサ31とを一緒に筐体に収納したセンサ装置8(図4参照)としている。

【0025】
加速度センサ31は、それぞれの移動方向に対する加速度を測定するセンサであり、被測定者の心臓の脈動に基づく心音を加速度として採取して心音信号として出力する機能を備えている。この加速度センサ31は、図4(B)に示すように、取付面に設けられた両面テープなどの貼着手段によって、被測定者に取り付けられている。加速度センサ31は、いずれの方向の加速度が測定できれば、さまざまタイプのものが使用できる。

【0026】
例えば、加速度センサ31は、MEMS型であれば、センサ素子の可動部と固定部との間の容量変化を検出することで加速度を測定する静電容量検出方式、センサ素子可動部と固定部とを接続するバネ部分に配置したピエゾ抵抗素子により、加速度によって生じるバネ部の歪みを検出することで加速度を測定するピエゾ抵抗方式、ヒータにより発生させた熱気流の対流の変化を熱抵抗等で検出することで加速度を測定する熱検知方式などとすることができる。加速度センサ31は、いずれの方式の場合でも、被測定者に貼り付けたときに、運動の邪魔にならない小型のものが望ましい。増幅手段32は、心音信号を増幅するアンプである。AD変換手段33は、増幅された心音信号をデジタルデータである心音データに変換して制御手段5へ出力する機能を備えている。

【0027】
心電採取手段2と制御手段5との間と、心音採取手段3と制御手段5との間は、図1に示すように、センサ装置8から制御手段5までの1本にまとめた長尺のケーブル9によって接続されている。そうすることで、運動の度にケーブル9によって引っ張られ、負荷運動の邪魔にならないようにしている。
心拍採取手段4は、被測定者の心拍を心拍データとして出力するものである。心拍採取手段4は、例えば、耳たぶや手首、胴回り、心臓付近に装着するものが使用できるが、本実施の形態では、耳たぶを挟み込むこむクリップ式を採用している。

【0028】
図2に示すように、制御手段5は、中心血圧値の測定やアドレナリンの分泌量の測定、心臓負荷量の測定を演算により行うもので、身体情報測定プログラムを実行するパーソナルコンピュータとすることができる。
制御手段5は、心電入力手段501と、心音入力手段502と、基準タイミング検出手段503と、ゲート信号生成手段504と、第1心音検出手段505と、第1心音振幅測定手段506と、中心血圧推定手段507と、心拍入力手段508と、心拍数計数手段509と、運動強度演算手段510と、運動負荷入力手段511と、抑止手段512と、報知手段513と、表示制御手段514と、印刷制御手段515と、有酸素性作業能力検出手段516と、記憶手段517とを備えている。

【0029】
心電入力手段501は、心電採取手段2からの心電データを制御手段5に入力して記憶手段517に格納するインタフェースである。心音入力手段502は、心音採取手段3からの心音データを制御手段5に入力して記憶手段517に格納するインタフェースである。

【0030】
基準タイミング検出手段503は、記憶手段517に格納された心電データに基づいてR波を検出する機能を備えている。ゲート信号生成手段504は、基準タイミング検出手段503が検出したR波から、このR波に対応する第1心音を含む所定期間、つまり第2心音の前までの期間を示すゲート信号を出力する機能を備えている。第1心音検出手段505は、ゲート信号が出力されている間の心音データからピーク波形を検出して、これを第1心音として検出する機能を備えている。第1心音振幅測定手段506は、第1心音検出手段505が検出した第1心音から振幅値を測定して第1心音振幅データとして出力する機能を備えている。

【0031】
中心血圧推定手段507は、第1心音振幅測定手段506からの検査時の第1心音振幅データと、記憶手段517に格納された安静時に測定された第1心音データ(安静時振幅データ)と、安静時の中心血圧値を示す中心血圧データ(安静時中心血圧データ)とに基づいて演算し、検査時の中心血圧値(心収縮期の血圧値)を推定して、中心血圧データとして出力する機能を備えている。

【0032】
心拍入力手段508は、心拍採取手段4からの心拍データを制御手段5に入力して記憶手段517に格納するインタフェースである。心拍数計数手段509は、心拍データに基づいて心拍数を計数する機能を備えている。

【0033】
運動強度演算手段510は、第1心音振幅測定手段506からの第1心音振幅データと、心拍数計数手段509からの心拍数データとを乗じて二重積を演算して、二重積データ(心臓負荷データ)とし、この二重積データに基づいて、運動強度に対する勾配の屈曲点を検出する機能を備えている。

【0034】
運動負荷入力手段511は、運動負荷器具Aからの運動強度データを制御手段5に入力して記憶手段517に格納するインタフェースである。
抑止手段512は、運動強度演算手段510により検出された至適運動強度に基づいて、被測定者による負荷運動が至適運動強度を超える運動とならないように、運動負荷器具Aに対して抑止信号を出力する機能を備えている。
報知手段513は、運動強度演算手段510が勾配の屈曲点を検出したときに、またはこの屈曲点から所定強度を超えたときに、警告する旨の通知をする機能を備えている。このときの所定強度は、至適運動強度を超えているが、心臓への過度な負担とならない程度の運動負荷が好ましく、被測定者に応じて決定することができる。この報知手段513は、連続音または断続音や、音声メッセージなどの音により報知したり、図示しないランプでの点灯または点滅や、表示制御手段514を介して表示手段6によるメッセージ表示などにより報知したりするものとすることができる。

【0035】
表示制御手段514は、表示手段6に対する表示を制御する機能を備えている。印刷制御手段515は、印刷手段7に対する印刷を制御する機能を備えている。
有酸素性作業能力検出手段516は、運動負荷時の最高酸素摂取量と至適運動強度とが示す相関関係から導いた関係式(以下、この関係式を有酸素性作業能力算出式と称す。)と、運動強度演算手段により検出した至適運動強度とから、被測定者の最大運動負荷時の最高酸素摂取量を検出する機能を備えている。この有酸素性作業能力算出式は、複数の被測定者を測定することで得られた運動負荷時の最高酸素摂取量と至適運動強度との分布の傾向を表す回帰直線を表現した一次関数である。

【0036】
記憶手段517は、各データが読み書き可能な不揮発性メモリである。記憶手段517としては、大容量で高速アクセスが可能なハードディスク装置を採用することができる。この記憶手段517には、心音データ、心電データ、心拍データが測定時に格納される。また、記憶手段517には、安静時に測定された被測定者の、第1心音の振幅値と、中心血圧値と、心拍数と、第1心音の振幅値および心拍数を乗じた二重積とが、それぞれ、安静時振幅データ、安静時血圧データ、安静時心拍数データ、安静時二重積データとして格納されている。

【0037】
本実施の形態では、心音入力手段502と、基準タイミング検出手段503と、ゲート信号生成手段504と、第1心音検出手段505とにより第1心音抽出手段51が形成されている。

【0038】
表示手段6は、CRT、LCD、有機ELディスプレイとすることができる。印刷手段7は、紙媒体に印刷することができるインクジェットプリンタ、レーザプリンタ、ドットインパクトプリンタ、熱転写プリンタとすることができる。

【0039】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る身体情報測定装置の動作状態と測定方法について、図面に基づいて説明する。
被測定者が負荷運動を行うに当たり、まず、被測定者にセンサ装置8とした加速度センサ31と測定電極21とを装着する。加速度センサ31は、被測定者の胸部に装着するが、胸部でも図4(A)に示すように胸骨上に配置するのが望ましい。また、配置位置は胸骨上でも胸骨柄BPとするが更に望ましい。心拍採取手段4は、耳たぶや手首、胴回り、心臓付近に装着する。

【0040】
次に、被測定者により負荷運動を開始する、負荷運動は、被測定者がセンサ装置8を装着した状態で、運動負荷器具Aである自転車エルゴメーターに乗車して、ペダルを連続的に踏む。
加速度センサ31からの心音信号は、増幅手段32により増幅され、AD変換手段33により所定時間ごとに増幅された心音信号がサンプリングされてデジタルデータである心音データに変換される(心音採取ステップ)。また、測定電極21からの心電信号は、増幅手段22により増幅され、AD変換手段23により所定時間ごとに増幅された心電信号がサンプリングされてデジタルデータである心電データに変換される(心電採取ステップ)。

【0041】
制御手段5の心音入力手段502は心音採取手段3からの心音データを入力し、心電入力手段501は心電採取手段2からの心電データを入力し、運動負荷器具Aからの運動強度データと共に、記憶手段517へ格納する。心拍入力手段508は心拍採取手段4からの心拍データを入力して、記憶手段517へ格納する(心拍採取ステップ)。心拍数計数手段509は、記憶手段517から心拍データを読み出し、心拍数を計数して心拍数データとして記憶手段517に格納する(心拍数計数ステップ)。

【0042】
基準タイミング検出手段503は、記憶手段517に格納された心電データに基づいてR波を検出する。ここでR波について、図5に基づいて説明する。
R波は心臓の拡張末期時点において観測される波なので、R波を、心臓が鼓動する際に、房室弁(僧帽弁・三尖弁)の閉鎖によって発生する第1心音S1と、動脈弁(大動脈弁・肺動脈弁)の閉鎖によって発生する第2心音S2などを検出するための基準とすることができる。
R波は、P波、Q波、S波、そしてT波と比較してピークが大きく、かつ急峻に立ち上がる。従って、基準タイミング検出手段503は、最も高いピークの心電データを検出することで、比較的容易にR波を検出することが可能である。

【0043】
R波を検出した基準タイミング検出手段503は、検出した旨の通知をゲート信号生成手段504へ出力する(基準タイミング検出ステップ)。
R波を検出した旨の通知を入力したゲート信号生成手段504は、このR波のタイミングに基づいて、このR波に対応する第1心音S1を含む所定期間を示すゲート信号Gを生成する。この所定期間は、R波の発生タイミングから第2心音S2の前までの期間とすることができる。このR波から第2心音S2の前までの期間は、個人差があり、負荷運動の運動量によっても異なるものである。またR波から第1心音S1までの期間も被測定者の条件によって異なる。従って、ゲート信号Gが短すぎれば第1心音S1が含まれない期間となり、長すぎれば第2心音S2までが含まれてしまう。そこで、本実施の形態では、若年者から高齢者までを統計的に測定することで決定した所定値を用いている。

【0044】
第1心音検出手段505は、ゲート信号Gが出力されている間の心音データからピーク波形(第1心音S1)を抽出する(第1心音検出ステップ)。
ゲート信号が出力されている間の心音には、必ず第1心音S1が含まれる。つまり、ゲート信号Gにより心音データの中から第1心音S1に対応するデータを抽出する範囲を制限することで、第2心音S2やノイズを除外することができる。負荷運動の開始直後では第1心音S1より第2心音S2の方が大きい場合があり、振幅の大きさだけは第1心音と第2心音との区別が付かない場合がある。つまり、心音データだけからでは、第1心音を特定することは困難である。従って、本発明の実施の形態に係る身体情報測定装置1では、R波から基準となるゲート信号を生成して、その期間内でのピーク波形を第1心音S1として検出することで、確実に第1心音S1のデータを抽出することができる。
第1心音振幅測定手段506は、ピーク波形の振幅値V1を測定して第1心音振幅データとして記憶手段517へ格納する(第1心音振幅測定ステップ)。

【0045】
このとき、第1心音振幅測定手段506は、記憶手段517に格納された10回分の第1心音振幅データを読み出して平均値を演算して、1回分の第1心音平均値データとして記憶手段517に格納することができる。所定回数の第1心音振幅データを平均することで、第1心音S1の振幅にばらつきがあっても、全体に対する影響を抑えることができる。この平均化は、本実施の形態のように10回ごとの第1心音振幅データを単に平均する以外に、他の統計的な手法を用いて平均化することが可能である(第1心音平均化ステップ)。

【0046】
次に、中心血圧推定手段507は、第1心音振幅測定手段506からの検査時に測定された第1心音振幅データを、第1心音振幅測定手段506から記憶手段517へ格納された安静時に測定して基準とした第1心音振幅データ(安静時振幅データ)で割って比率を算出し、この比率に基づいて、記憶手段517から読み出した安静時中心血圧データから検査時における中心血圧値を演算して中心血圧データとして出力する(中心血圧推定ステップ)。この演算は、第1心音の振幅値と中心血圧値との関係式に基づいて行われる。ここで、第1心音の振幅と中心血圧値との関係式について、図6に基づいて説明する。

【0047】
図6(A)~同図(D)に示すグラフは、4人の被測定者の第1心音の振幅値と中心血圧値(収縮期血圧)を、安静時から高負荷が掛かった状態まで、負荷運動強度の度合いを徐々に増加させて測定したものである。この測定における中心血圧値は、従来の測定方法、すなわちカテーテルを手首から体内に挿入して心臓付近まで到達させて測定した。4人の被測定者は、健康状態が良好な20代の男性である。そして、第1心音の安静時に測定した振幅値と検査時の振幅値の比率を横軸(x軸)とし、中心血圧(心収縮期)の安静時に測定した血圧値と検査時の血圧値の比率を縦軸(y軸)としてグラフにプロットした。
その結果、図6(A)~同図(D)に示すグラフのように、第1心音の振幅値と、中心血圧値には相関関係があることがわかった。その相関は、近似線L11~L14で表すことができる。

【0048】
例えば、被測定者Aの近似線L11を示す関係式は、以下の式(1)にて表すことができる。
y=-0.0138x2+0.1683x+0.8535・・・(1)
この関係式(1)は、ピアソンの相関係数により評価した結果、寄与率R2が0.9256であったため、高い相関性があり、ほとんどのケースで合致することがわかった。
従って、x1を安静時の第1心音の振幅値を示す第1心音測振幅データ、x2を検査時の第1心音の振幅値を示す第1心音測振幅データ、y1を安静時の中心血圧値を示す中心血圧データ、y2を検査時の中心血圧値を示す中心血圧値とすると、検査時の中心血圧値を示す中心血圧値y2は、以下の演算式(2)にて求めることができる。
y2=(-0.0138(x2/x1)2+0.1683(x2/x1)+0.8535)×y1・・・(2)

【0049】
中心血圧推定手段507は、この演算式(2)に基づいて検査時の中心血圧値を算出することにより検査時(運動時)の中心血圧値を精度よく求めることができる。
同様にして、被測定者B~Dについての近似線L12~L14を示す関係式を式(3)~式(5)に示す。
y=-0.0451x2+0.3727x+0.6989・・・(3)
y=-0.0058x2+0.1388x+0.8871・・・(4)
y=-0.0242x2+0.2697x+0.6874・・・(5)

【0050】
測定者B~Dについても、寄与率R2が、測定者BはR2=0.9082、測定者CはR2=0.972、測定者DはR2=0.9258と高い相関性がある。従って、測定者B~測定者Dについても、これら関係式(3)~関係式(5)に基づく演算式により、中心血圧値を演算により推定することができる。

【0051】
ここで、中心血圧推定手段507が推定の際に用いる演算式を、被測定者ごとに設定するのが望ましい。つまり、被測定者ごとに、従来の方法により、第1心音の振幅値と中心血圧値(収縮期血圧)を、安静時から高負荷が掛かった状態まで、負荷運動強度の度合いを徐々に増加させて測定して、中心血圧値と第1心音の振幅値との関係式を導出し、この関係式から検査時における中心血圧を求める演算式に変換し、この演算式を被測定者を識別する識別データ(例えば名前やID)に関連付けて記憶手段517に格納しておく。そして、被測定者が運動するときに、中心血圧推定手段507が記憶手段517から被測定者に対応する演算式を読み出して、検査時の中心血圧値を算出することで、より精度の高い測定を、運動中であっても行うことができる。

【0052】
このように、従来、中心血圧値を正確に測定するときには、カテーテルを手首から体内に挿入して心臓付近まで到達させて測定していたため、運動時の測定が不可能であったが、本実施の形態に係る身体情報測定装置によれば、第1心音の振幅値を測定し、その第1心音の振幅値から運動時の中心血圧値を演算により推定することで、身体の状態が安静中や運動中でも、中心血圧を正確に、かつ容易に測定することができる。従って、健康維持を目的とした運動や運動療法を安全に、かつ効率よく、安価な装置で測定することができる。
なお、被測定者ごとに演算式が求められていなくても、他の測定者の演算式を代用しても、中心血圧値は第1心音の振幅値との間には相関関係にあるので、正確性は劣るが所定の評価値を得ることができる。

【0053】
次に、運動強度演算手段510が二重積を求める場合を説明する。二重積を求めることが図示しない入力手段により入力され、記憶手段517に設定されていれば、運動強度演算手段510は、記憶手段517に蓄積された心拍数データと、記憶手段517に蓄積された第1心音振幅データとから二重積を演算して二重積データ(心臓負荷データ)として出力する。
本実施の形態1では、二重積データを、安静時と検査時(運動時)の心拍数の比率と、安静時と検査時の第1心音の振幅値の比率とを乗じた二重積としている。
図7に示すグラフは、健康状態が良好な20代の男性であり、図6(B)での被測定者の運動強度(運動強度データ)と二重積(心臓負荷データ)とをプロットしたものである。この図7に示すグラフでは、縦軸(Y軸)をこの二重積とし、横軸(X軸)を運動強度とした。このグラフのデータは、運動強度演算手段510が、記憶手段517から安静時振幅データと安静時心拍数データとを読み出し、運動時の第1心音振幅データと運動時の心拍数データとから、それぞれ比率を算出し、その比率同士を乗じて二重積データを算出することで求めている。
このグラフから、近似線Lの勾配が急激に増加する屈曲点Pが至適運動強度となる。

【0054】
ここで、運動強度演算手段510による屈曲点Pの求め方について、詳細に説明する。
まず、xを運動強度、yを二重積とした場合に、n個のデータ(x1,y1),(x2,y2),,,(xn,yn)が得られたとする。回帰直線として最も適合する直線をy=ax+bで表すと、aおよびbは、下記の式(6),(7)により求めることができる。
【数1】
JP0005526421B2_000002t.gif
【数2】
JP0005526421B2_000003t.gif

【0055】
運動強度演算手段510による至適運動強度の判定は、運動負荷の漸増に伴う二重積のグラフが指数関数的な変化を示す特徴から、まず、屈曲点Pの発現前後においてデータを2つ(屈曲点発現前の第1グループ、屈曲点発現後の第2グループ)のグループに分割する。
次に、運動強度演算手段510は、分割された第1,2グループの各データに基づいて上記式(1)、式(2)から回帰直線を第1近似直線および第2近似直線として求める。次に、運動強度演算手段510は、多数存在する第1近似直線および第2近似直線の組合せの中から、両近似直線の残差平方和の合計値が最小となる組合せを選出する。そして、運動強度演算手段510は、選出された第1近似直線L21および第2近似直線L22の交点(屈曲点P)のx値を至適運動強度と判定する。

【0056】
このようにして、運動強度演算手段510は、心臓の心収縮力を示す第1心音の振幅値と、心拍数とを乗算した二重積の数値データである心臓負荷データから、近似線Lの折れ線を求め、屈曲する強度を基に至適運動強度を検出することができる。

【0057】
また、第1心音の振幅値と心拍数との二重積と、アドレナリンの分泌量との間には高い相関関係がある。これは、第1心音の振幅値と心拍数との二重積は、心臓の酸素消費において高い相関関係があり、アドレナリンの分泌を誘発する神経伝達物質を増加させることを反映しているものと思われる。

【0058】
例えば、図8は、安静時から高負荷が掛かった状態まで、被測定者が負荷運動を行って運動強度の度合いを徐々に増加させ、縦軸(Y軸)を二重積およびアドレナリンの分泌量(血中濃度)とし、横軸(X軸)を運動強度とした測定したグラフである。この測定におけるアドレナリンの分泌量は、従来の測定方法、すなわち運動中の被測定者から血液を採取して測定した。図8に示すグラフから第1心音の振幅値と心拍数との二重積は、アドレナリンの分泌量とは、相関関係があることがわかる。そして、近似線L5により、近似線Lの勾配が急激に増加する変化点Pが至適運動強度であることがわかると共に、この変化点Pがアドレナリンの分泌量が急増し始める強度閾値であることがわかる。

【0059】
従って、従来は検査時の度に血液を採取してアドレナリンの分泌量を測定していため、運動時の測定は困難であったが、第1心音の振幅値と心拍数を測定して二重積とすることで、至適運動強度が検出できるだけなく、アドレナリンの分泌量が急増し始める強度閾値を、容易に、かつ正確に測定することができる。

【0060】
本実施の形態1に係る身体情報測定装置1では、二重積により至適運動強度を測定している。至適運動強度の測定においては、第1心音の振幅値と心拍数と第2心音との三重積とすることができるが、図9に示すように二重積と三重積との間には、ほぼ1に近い相関関係があることがわかった。従って、身体情報測定装置1では、三重積を演算するまでもなく、運動強度演算手段510による至適運動強度の検出を二重積により行っている。

【0061】
運動強度演算手段510は、至適運動強度を検出すると、予め設定された被測定者を特定する識別データ(例えば名前やID)に関連付けて記憶手段517に格納する。このように識別データと関連付けて至適運動強度を記憶手段517に格納することで、心臓負荷測定装置1は被測定者ごとの至適運動強度の登録を行うことができる。

【0062】
運動強度演算手段510が至適運動強度を検出する過程で、図7に示すグラフが作図できるので、このグラフを表示制御手段514を介して表示手段6へ表示させたり、印刷制御手段515を介して印刷手段7にて紙媒体に印刷したりすることができる。

【0063】
このように至適運動強度が検出できれば、負荷運動が至適運動強度以上、または至適運動強度を超えて所定運動強度以上となったときに、報知手段513より警告が報知されるので、危険な負荷運動を回避することができる。
また、至適運動強度を測定して登録した被測定者であれば、この被測定者を特定する識別データと関連付けられた至適運動強度を報知手段513が記憶手段517から読み出し、運動負荷器具Aからの運動強度データと比較して、警告を報知することで、再び負荷運度を行うときに、あらためて至適運動強度を測定することなく、最適な負荷運動を行うことができる。

【0064】
次に、有酸素性作業能力検出手段516による被測定者の最高酸素摂取量の検出について説明する。
図10に示すグラフは、複数の被測定者の至適運動強度(二重積の屈曲点)をxとし、最高酸素摂取量をyとして、その関係をプロットしたものである。
図10に示すグラフからわかるように、至適運動強度と最高酸素摂取量との関係を示す近似直線(回帰直線)は、以下の関係式(8)にて表すことができる。
y=11.4x+806・・・(8)
この式(8)は、ピアソンの相関係数により評価した結果、相関係数Rが0.760(有意水準P<0.01)であったため、高い相関性があることがわかる。
有酸素性作業能力検出手段516は、運動強度演算手段510により検出された至適運動強度を、式(8)で示される有酸素性作業能力算出式に代入することで、被測定者の最高酸素摂取量を算出することができる。
このように、運動強度演算手段510により、被測定者の二重積データが得られれば、至適運動強度が得ることができ、至適運動強度が得られれば、有酸素性作業能力検出手段516により、被測定者の有酸素性作業能力を演算により得るので、この最高酸素摂取量から被測定者の有酸素性作業能力を計ることができる。

【0065】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る身体情報測定装置10xは、心拍数をR波または第1心音から求めることを特徴とするものである。なお、図11においては、図2と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図11に示す身体情報測定装置10xの制御手段5xに設けられた心拍数計数手段509xは、基準タイミング検出手段503により検出されたR波と次のR波との間隔P1(図5参照)を測定することで心拍数を計数する。
また、心拍数計数手段509xは、第1心音検出手段505により検出された第1心音S1に基づいて、その間隔P1から心拍数を計数することが可能である。

【0066】
このように、運動強度を測定する過程で測定されるR波や第1心音に基づいて、R波の間隔、第1心音の間隔から心拍数を計数することにより、実施の形態1の身体情報測定装置1のように、特別に心拍数を採取する手段(心拍採取手段4)を設けることなく測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、大動脈起始部の血圧である中心血圧の測定や、心臓に対するストレスの測定に好適であり、特に、至適運動強度の測定に最適である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10