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明細書 :三次元造形装置及びワイヤ貫入機構ユニット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-016540 (P2016-016540A)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明の名称または考案の名称 三次元造形装置及びワイヤ貫入機構ユニット
国際特許分類 B29C  67/00        (2006.01)
FI B29C 67/00
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-139042 (P2014-139042)
出願日 平成26年7月4日(2014.7.4)
発明者または考案者 【氏名】山口 昌樹
出願人 【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100108833、【弁理士】、【氏名又は名称】早川 裕司
【識別番号】100162156、【弁理士】、【氏名又は名称】村雨 圭介
審査請求 未請求
テーマコード 4F213
Fターム 4F213AA44
4F213AC05
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL29
4F213WL53
4F213WL62
4F213WL67
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
要約 【課題】層間密着性を高めることによって機械強度の低下を抑えた立体造形物を成形することができる三次元造形装置を提供する。
【解決手段】三次元造形装置1は、材料吐出手段21から吐出された成形材料を硬化手段22で硬化させて成形材料層を形成することを繰り返すことによって、複数の成形材料層を積層して立体造形物を成形ステージ30上に造形する。三次元造形装置1は、成形ステージ30上でワイヤWを立体造形物Sの複数の成形材料層の積層方向に貫入させるワイヤ貫入機構31を備える。ワイヤ貫入機構31は、ワイヤWを相対する方向から挟持するように配置された第1ローラ部材312及び第2ローラ部材313と、少なくとも第1ローラ部材312を回転駆動するモータ311とを備え、モータ311が第1ローラ部材312を回転駆動することにより、ワイヤWが成形ステージ30に設けられた貫入孔301から送り出されるように構成されている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
材料吐出手段から吐出された成形材料を硬化手段で硬化させて成形材料層を形成することを繰り返すことによって、複数の成形材料層を積層して立体造形物を成形ステージ上に造形する三次元造形装置であって、
前記成形ステージ上でワイヤを前記立体造形物の前記複数の成形材料層の積層方向に貫入させるワイヤ貫入機構を備えることを特徴とする、三次元造形装置。
【請求項2】
前記ワイヤ貫入機構が、前記ワイヤを相対する方向から挟持するように配置された第1ローラ部材及び第2ローラ部材と、少なくとも第1ローラ部材を回転駆動するモータとを備え、
前記モータが前記第1ローラ部材を回転駆動することにより、前記ワイヤが前記成形ステージに設けられた貫入孔から送り出されるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記ワイヤ貫入機構が、前記モータによる前記第1ローラ部材の回転駆動量を制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段が、前記三次元造形装置によって成形材料層が一層積層される毎に当該一層の厚みに相当する長さだけ前記ワイヤが送り出されるように前記回転駆動量を制御することを特徴とする、請求項2に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
材料吐出手段から吐出された成形材料を硬化手段で硬化させて成形材料層を形成することを繰り返すことによって、複数の成形材料層を積層して立体造形物を造形する三次元造形装置に取り付けられるワイヤ貫入機構ユニットであって、
前記立体造形物を載置する成形ステージと、該成形ステージ上でワイヤを前記立体造形物の前記複数の成形材料層の積層方向に貫入させるワイヤ貫入機構とを備えることを特徴とする、ワイヤ貫入機構ユニット。
【請求項5】
前記ワイヤ貫入機構が、前記ワイヤを相対する方向から挟持するように配置された第1ローラ部材及び第2ローラ部材と、少なくとも第1ローラ部材を回転駆動するモータとを備え、
前記モータが前記第1ローラ部材を回転駆動することにより、前記ワイヤが前記成形ステージに設けられた貫入孔から送り出されるように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のワイヤ貫入機構ユニット。
【請求項6】
前記ワイヤ貫入機構が、前記モータによる前記第1ローラ部材の回転駆動量を制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段が、前記三次元造形装置によって成形材料層が一層積層される毎に当該一層の厚みに相当する長さだけ前記ワイヤが送り出されるように前記回転駆動量を制御することを特徴とする、請求項5に記載のワイヤ貫入機構ユニット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を積層して立体造形物を造形する三次元造形装置及び三次元造形装置に取り付けるワイヤ貫入機構ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置は、三次元CADデータから直接樹脂成形品や金属成形品を造形する装置である。この装置は、三次元CADデータに基づいて樹脂や金属を順次積層することによって立体造形を行うものであり、複雑な形状や可動部を有する成形品を一度に造形できる。そのため、金型による射出成形等の従来の造形方法よりも設計から製作までの時間を大幅に短くすることができるので、近年、製品開発時の試作品等の少量生産に利用されることが増えてきている。
【0003】
このように容易に立体造形物を造形可能な積層造形法の代表的な方法としては、光造形方式、熱溶解積層方式、粉末焼結方式、粉末積層方式等が知られている。例えば、光造形方式の一つであるインクジェット方式は、液化した樹脂材料を噴射した後、紫外線を照射して樹脂層を硬化させるものであり、高い形状寸法精度が得られることが特徴である。
【0004】
インクジェット光造形方式の三次元造形装置は、一般に、紫外線硬化樹脂用インクジェットヘッド、サポート材用インクジェットヘッド、紫外線を照射する紫外線(UV)ランプ及び樹脂層表面を平坦にするローラを備えた、x方向(平面視横方向)に駆動可能なプリンタヘッドと、z方向(樹脂層の積層方向)に駆動可能な成形ステージとから構成されている。通常は紫外線硬化樹脂用インクジェットヘッドとサポート材用インクジェットヘッドとがy方向(x方向と直交する平面視縦方向)にアレー状に配置されており、プリンタヘッドをy方向に駆動する必要がないようになっている。
【0005】
実際に三次元造形装置によって立体造形物を造形するときは、まず三次元CADデータに従ってプリンタヘッドが+x方向に駆動され、成形ステージに紫外線硬化樹脂又はサポート材を吐出して一層ずつ樹脂層を塗布する。プリンタヘッドが-x方向に駆動されるときにUVランプが樹脂層に対して紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂及びサポート材を硬化させる。平坦度が必要な成形においては、このときにローラが樹脂層の表面に押し当てられて表面を均していく。その後、成形ステージが成形された樹脂層の厚さの分だけz方向に降下する。この一連の動作が必要な回数繰り返されることによって樹脂層が積層されていき、最後にサポート材を取り除いて三次元CADデータに基づいて立体造形された樹脂成形品を得ることができる。このようなインクジェット方式の三次元造形装置は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2003-535712号公報
【特許文献2】特開2012-096428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット方式を用いた三次元造形装置は、インクジェットプリンタの原理を応用できることから高精細化が容易であるという利点があるが、その一方で、紫外線硬化樹脂を硬化させた樹脂層を積層していくものであるため、層間の密着性がどうしても低くなってしまい、最終的な樹脂成形品の機械強度が低くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、現在のところ使用できる樹脂材料が紫外線硬化性樹脂に限定されているため、材料を改良して樹脂成形品の機械強度を高めようとしても限界がある。さらに、樹脂成形品の形状寸法が温度や湿度等の環境条件によって経時的に変化してしまうという問題もある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、層間密着性を高めることによって機械強度の低下を抑えた立体造形物を造形することができる三次元造形装置を提供することを目的とする。また、本発明は、三次元造形装置において、層間密着性を高めることによって機械強度の低下を抑えた立体造形物を造形することができるように、三次元造形装置に取り付け可能なワイヤ貫入機構ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的のため、第一に本発明は、材料吐出手段から吐出された成形材料を硬化手段で硬化させて成形材料層を形成することを繰り返すことによって、複数の成形材料層を積層して立体造形物を成形ステージ上に造形する三次元造形装置であって、前記成形ステージ上でワイヤを前記立体造形物の前記複数の成形材料層の積層方向に貫入させるワイヤ貫入機構を備えることを特徴とする、三次元造形装置を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)によれば、積層された成形材料層を貫くように立体造形物内にワイヤを埋入することにより、立体造形物を構成する成形材料層の層間密着性を高めることができるため、機械強度の低下を抑えた立体造形物を造形することができる。また、立体造形物中にワイヤを埋入することができるということは、ワイヤを基材として成形材料層を積層していくことができるということになり、従来成形が困難であった断面積の小さい細かい形状や、箱の側壁のような厚みの薄い形状も容易に造形することができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記ワイヤ貫入機構が、前記ワイヤを相対する方向から挟持するように配置された第1ローラ部材及び第2ローラ部材と、少なくとも第1ローラ部材を回転駆動するモータとを備え、前記モータが前記第1ローラ部材を回転駆動することにより、前記ワイヤが前記成形ステージに設けられた貫入孔から送り出されるように構成されていることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明2)においては、前記ワイヤ貫入機構が、前記モータによる前記第1ローラ部材の回転駆動量を制御する制御手段を更に備え、前記制御手段が、前記三次元造形装置によって成形材料層が一層積層される毎に当該一層の厚みに相当する長さだけ前記ワイヤが送り出されるように前記回転駆動量を制御することが好ましい(発明3)。
【0014】
成形材料層の積層数が増していくにつれて、立体造形物の下側寄りの成形材料層にかかる荷重が増していく。成形材料層への荷重が増せば、ワイヤを貫入させるために成形材料層に形成された小孔が潰れ、ワイヤと小孔との間に生じる摩擦も大きくなる。上記発明(発明3)によれば、成形材料層の積層過程において、一層積層される毎にその層厚相当分だけワイヤを送り出していくことにより、成形材料層に形成された小孔が荷重により潰れる前に立体造形物に対してワイヤを貫入させていくことができ、途中でワイヤを立体造形物に貫入させることができなくなるおそれがなくなる。
【0015】
第二に本発明は、材料吐出手段から吐出された成形材料を硬化手段で硬化させて成形材料層を形成することを繰り返すことによって、複数の成形材料層を積層して立体造形物を造形する三次元造形装置に取り付けられるワイヤ貫入機構ユニットであって、前記立体造形物を載置する成形ステージと、該成形ステージ上でワイヤを前記立体造形物の前記複数の成形材料層の積層方向に貫入させるワイヤ貫入機構とを備えることを特徴とする、ワイヤ貫入機構ユニットを提供する(発明4)。
【0016】
上記発明(発明4)によれば、積層された成形材料層を貫くように立体造形物内にワイヤを埋入することにより、立体造形物を構成する成形材料層の層間密着性を高めることができるため、機械強度の低下を抑えた立体造形物を造形することができる。また、立体造形物中にワイヤを埋入することができるということは、ワイヤを基材として成形材料層を積層していくことができるということになり、従来成形が困難であった断面積の小さい細かい形状や、箱の側壁のような厚みの薄い形状も容易に造形することができる。
【0017】
上記発明(発明4)においては、前記ワイヤ貫入機構が、前記ワイヤを相対する方向から挟持するように配置された第1ローラ部材及び第2ローラ部材と、少なくとも第1ローラ部材を回転駆動するモータとを備え、前記モータが前記第1ローラ部材を回転駆動することにより、前記ワイヤが前記成形ステージに設けられた貫入孔から送り出されるように構成されていることが好ましい(発明5)。
【0018】
上記発明(発明5)においては、前記ワイヤ貫入機構が、前記モータによる前記第1ローラ部材の回転駆動量を制御する制御手段を更に備え、前記制御手段が、前記三次元造形装置によって成形材料層が一層積層される毎に当該一層の厚みに相当する長さだけ前記ワイヤが送り出されるように前記回転駆動量を制御することが好ましい(発明6)。
【0019】
成形材料層の積層数が増していくにつれて、立体造形物の下側寄りの成形材料層にかかる荷重が増していく。成形材料層への荷重が増せば、ワイヤを貫入させるために成形材料層に形成された小孔が潰れ、ワイヤと小孔との間に生じる摩擦も大きくなる。上記発明(発明6)によれば、成形材料層の積層過程において、一層積層される毎にその層厚相当分だけワイヤを送り出していくことにより、成形材料層に形成された小孔が荷重により潰れる前に立体造形物に対してワイヤを貫入させていくことができ、途中でワイヤを立体造形物に貫入させることができなくなるおそれがなくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る三次元造形装置によれば、層間密着性を高めることによって機械強度の低下を抑えた立体造形物を成形することができる。また、本発明に係るワイヤ貫入機構ユニットによれば、当該ワイヤ貫入機構ユニットを三次元造形装置に取り付けることによって、当該三次元造形装置において層間密着性を高めることによって機械強度の低下を抑えた立体造形物を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る一実施形態に三次元造形システムを概略的に示す説明図である。
【図2】同実施形態においてワイヤを貫入する動作を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例におけるワイヤ入り試験片を示す説明図である。
【図4】同実施例における曲げ強さ試験によって得られた応力-ひずみ特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る三次元造形システム9は、ヘッド部2と、ステージ部3と、制御部4と、データ作成端末5とからなる。ヘッド部2、ステージ部3及び制御部4は一つの三次元造形装置1を構成しており(図1において点線で囲まれた部分)、三次元造形装置1はデータ作成端末5にて作成された三次元CADデータに基づいて立体造形物Sを造形する。本実施形態における三次元造形装置1は、いわゆるインクジェット光造形方式を採用した装置である。

【0023】
ヘッド部2は、プリンタヘッド20とヘッド駆動機構24とからなり、プリンタヘッド20は、紫外線硬化性樹脂(成形材料)を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出する樹脂吐出ノズル21と、吐出された紫外線硬化性樹脂を硬化させるために紫外線を照射する紫外線ランプ22と、吐出された成形材料層の表面を平滑化するためのならしローラ23とを備えている。プリンタヘッド20は、樹脂吐出ノズル21から成形材料を適切な位置に吐出させるために、ヘッド駆動機構24によって図1における左右方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向、ステージ部3に対するプリンタヘッド20の相対位置を変化させる鉛直方向であるZ方向に移動させることができる。

【0024】
ステージ部3は、立体造形物Sを造形するために成形材料層が積層される成形ステージ30と、立体造形物SにワイヤWを貫入させていくためのワイヤ貫入機構31と、成形ステージ30及びワイヤ貫入機構31が上面に設けられる基台33と、基台33を鉛直方向(Z方向)に昇降させるステージ駆動機構34とを備えている。

【0025】
成形ステージ30には、下側から立体造形物Sへ貫入させていくワイヤWを送り出すための貫入孔301が穿設されている。なお、本実施形態においては、図1に示すように、成形ステージ30に貫入孔301が一つのみ設けられているが、これに限られるものではなく、ワイヤWを立体造形物Sに貫入させていく位置を柔軟に変更できるよう、複数の貫入孔を成形ステージ30に穿設しておいてもよい。

【0026】
ワイヤ貫入機構31は成形ステージ30の下側に設けられており、モータ311、第1ローラ部材312、第2ローラ部材313及びモータ制御回路314を備えている。第1ローラ部材312と第2ローラ部材313とは鉛直方向に並べて配置され、間にワイヤWを挟み込めるように構成されており、第1ローラ部材312がモータ311によって回転駆動されることにより、成形ステージ30に穿設された貫入孔301を通して立体造形物Sへと貫入させるために、ワイヤWが送り出される。また、モータ制御回路314は、モータ311による第1ローラ部材312の回転駆動量を制御する。

【0027】
なお、本実施形態においては、ワイヤWとしてナイロンやポリエチレン、フロロカーボンといった合成繊維ワイヤを採用しているが、これに限られるものではなく、硬質樹脂、軟質樹脂、鉄、非鉄金属、カーボン素材、あるいはこれらの複合材料など、立体造形物に貫入させることができるワイヤであればその素材は限定されない。また、強度が必要な立体造形物Sであれば金属ワイヤを用いる、軽さが求められる立体造形物Sであれば樹脂ワイヤを用いるなど、立体造形物Sの用途や形状などによって適切な素材のワイヤを選択することが可能である。さらに、ワイヤWを複数本同時に貫入することや、複数本を撚線として貫入することも許容される。

【0028】
制御部4は、プリンタヘッド20、ヘッド駆動機構24及びステージ駆動機構34に接続され、三次元CADデータに基づいて、プリンタヘッド20による立体造形物Sを造形するための動作や、ヘッド駆動機構24及びステージ駆動機構34による駆動動作を制御する。また、制御部4は、三次元造形装置1の外部に設けられたデータ作成端末5と通信可能に接続されており、データ作成端末5にて作成された三次元CADデータを受け取ることができる。さらに、制御部4は、モータ制御回路314に接続されており、モータ制御回路314がモータ311の回転動作を制御するために必要な制御信号を取得することができるようになっている。

【0029】
本実施形態の三次元造形装置1では、三次元CADデータに基づいて、プリントヘッド20がヘッド駆動機構24によって移動されながら、樹脂吐出ノズル21から吐出された液状の紫外線硬化性樹脂が成形ステージ30上に塗布される。続いて、塗布された紫外線硬化性樹脂の樹脂層の表面をならしローラ23で平坦に均しつつ、紫外線ランプ22から紫外線を照射することによって樹脂層を硬化し、成形材料層が成形ステージ30上に形成される。成形材料層が一層形成されると、その一層の厚みに相当する距離だけ成形ステージ30がステージ駆動機構34によって降下させられる。この一連の動作を繰り返すことによって複数の成形材料層が成形ステージ上に順に積層されていき、立体造形物Sが造形される。

【0030】
本実施形態におけるワイヤ貫入機構31による、立体造形物中にワイヤを埋入していく動作は次のように行われる。まず、図2(a)に示すように、第1ローラ部材312及び第2ローラ部材313の間に挟み込まれたワイヤWの端部を貫入孔301に挿し込み、成形ステージ30上に形成されていく立体造形物Sへの貫入していく準備を行う。

【0031】
続いて、図2(b)に示すように、制御部4によってプリンタヘッド20が駆動され、上記の積層動作を行って第1層目の成形材料層を形成する。成形材料層が形成されると、形成された層の厚みに相当する距離だけ成形ステージ30がステージ駆動機構34によって降下させられるが、このとき、図2(c)に示すように、モータ311が第1ローラ部材312を回転駆動することにより、ワイヤWを1層分の厚みに相当する距離だけ立体造形物Sの内部へと送り込む。

【0032】
ワイヤWを1層分送り込む動作は、成形ステージ30の1層分下降する動作に同期して行われる。すなわち、制御部4は、成形ステージ30を形成された層の厚みに相当する距離だけ降下させるために、ステージ駆動機構34に対して駆動信号DSを送っている。この駆動信号DSをモータ制御回路314が取得し、モータ制御回路314がモータ311に対して同期信号SSを送る。駆動信号DSの取得は、例えばクランプ電流型センサなどを用いて非接触で読み取ることができる。モータ311は同期信号SSを受け取ると、ワイヤWを1層分の厚みに相当する距離だけ立体造形物Sの内部へと送り込む。ここで、同期とは、全く同時であるということを意味しているのではなく、プリンタヘッド20によって次の成形材料層が形成される前に、成形ステージ30の降下動作及びワイヤWの貫入動作が同じようなタイミングで行われるということに過ぎない。

【0033】
なお、成形材料層には、ワイヤWが挿入されるだけの穴が形成されているが、この穴の径はワイヤWの径よりも少し大きくなっている。これにより、ワイヤWが摩擦によって成形材料層へと送り込むことができなくなることを防止している。成形材料層が積層されていく過程においては、ならしローラ23で上から荷重がかけられるとともに、積層された上側の層の重みによる下側の層に対する荷重もあるため、穴とワイヤWとの間の隙間は徐々に潰されていき、成形材料層とワイヤWとが一体化された立体造形物Sが形成されていくことにつながる。なお、成形材料層に形成する穴の径を0.5mmから1.0mmまで0.1mm刻みで変化させた6種類のサンプル(積層方向の厚み:5mm)を作成し、レーザー顕微鏡で穴径の変化を測定したところ、樹脂成形品の上面側では穴径は設計値から平均27μmの成形誤差を有するのみであったが、樹脂成形品の下面側では穴径は設計値から300μmほど小さくなることが確認された。また、厚みを1mmから10mmまで1mm刻みで変化させたサンプル(穴径:1.0mm)を作成し、同様に穴径の変化を測定したが、厚みの変化による穴径への影響は見られなかった。したがって、積層方向の厚みにかかわらず、穴の径をワイヤWの径よりも300μmほど大きく形成することが好ましい。

【0034】
成形ステージ30が1層分の厚みに相当する距離だけ降下し、ワイヤWが1層分の厚みに相当する距離だけ立体造形物Sの内部へと送り込まれると、図2(d)に示すように、制御部4によってプリンタヘッド20が駆動され、再び上記の積層動作を行って第2層目の成形材料層を形成する。その後は、図2(e)に示すように、下降動作、貫入動作、積層動作を繰り返すことにより、ワイヤWを埋入した立体造形物Sを完成させる。

【0035】
立体造形物Sが完成したら、成形ステージ30の上面と立体造形物Sの下面との間でワイヤWをカットする。ワイヤWのカットは三次元造形装置1の操作者がハサミやカッターを用いて行ってもよいし、三次元造形装置1にワイヤ切断機構を設けておいてもよい。

【0036】
<変形例>
なお、本実施形態では、三次元造形装置1にあらかじめワイヤ貫入機構31が組み込まれたものとして説明しているが、ワイヤ貫入機構を別ユニットとして製造・販売することも可能である。例えば、ワイヤ貫入機能を有さない既存の三次元造形装置に後付けすることを前提にして、ステージ部3のうち基台33よりも上の部分をワイヤ貫入機構ユニットとすることができる。この場合、既存の三次元造形装置の成形ステージ上に当該ワイヤ張設機構ユニットを取り付けることにより、本実施形態に係る三次元造形装置1と同様の機能を有する三次元造形装置を得ることができる。

【0037】
以上、本実施形態に係る三次元造形システム9について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変更実施が可能である。例えば、本実施形態では、インクジェット光造形方式を採用した三次元造形装置についてワイヤ貫入機構を導入しているが、成形材料層を積層して立体造形物を造形するのであれば、他の三次元造形方式を採用した三次元造形装置についても実施可能である。

【0038】
また、本実施形態では、三次元造形装置1はワイヤ貫入機構31を1セットのみ備えていたが、これに限られるものではなく、例えば、複数セットのワイヤ貫入機構を備えることによって、複数本のワイヤを同時に、かつ異なる場所において、成形材料層の積層方向に貫入させることもできる。
【実施例】
【0039】
本実施形態に係る三次元造形装置1を用いて製造したワイヤ入りプラスチック試験片について、JIS K7171に則って曲げ強さ試験を行った。
【実施例】
【0040】
<試験片の作成>
市販の3Dプリンタ(Objet24、ストラタシス社製)にワイヤ貫入機構ユニットを取り付けた装置を用いて、ワイヤ入り試験片を5個試作した。試験片の成形材料は紫外線硬化性樹脂であり、ワイヤはポリエステル製(直径:0.470mm、サンライン社製エステルパワータイプ)である。図3に示すように、試験片の形状寸法は長さ25mm、幅25mm、厚さ2.5mmであり、厚み方向に成形材料層を積層されたものである。また、そのほぼ中央にワイヤWが埋入されている。
【実施例】
【0041】
一方、比較対象として、ワイヤの入っていない標準試験片も5個試作した。ワイヤWが埋入されていないこと以外は、ワイヤ入り試験片と同じスペックである。得られたワイヤ入り試験片及び標準試験片の形状寸法(5個の平均)を表1に示す。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP2016016540A_000003t.gif
【実施例】
【0043】
<試験方法>
精密万能試験機(オートグラフAG-Xplus、島津製作所製)を用い、試験片の両端を支えて中央に荷重を加え、JIS K7171に則った曲げ強さ試験(三点曲げ試験、圧子先端半径:5mm、支持台コーナーの半径:2mm、下部支点間距離:40mm、試験速度:2mm/分)を行った。
【実施例】
【0044】
上記試験に基づき、曲げ応力σを式1に基づいて算出した。
(式1)σ=3FL/2bh
ここで、Fは試験力[N]、Lは支点間距離[mm]、bは試験片の幅[mm]、hは試験片の厚さ[mm]である。
【実施例】
【0045】
このとき、たわみs[mm]における曲げひずみεは式2で求められる。
(式2)ε=6sh/L
【実施例】
【0046】
曲げ弾性率を求めるために、曲げひずみεf1=0.05%及びεf2=0.25%に相当するたわみs[mm]及びs[mm]を式3に基づいて算出した。
(式3)s=εfi/6h (i=1,2)
【実施例】
【0047】
得られた曲げひずみεf1及びεf2に基づいて、曲げ弾性率E[MPa]を式4によって算出した。
(式4)E=σf2-σf1/εf2-εf1
ここで、σf1はたわみsで測定した曲げ応力、σf2はたわみsで測定した曲げ応力である。
【実施例】
【0048】
ワイヤ入り試験片5個及び標準試験片5個から得られた試験結果(5個の平均)を表2に示す。また、ワイヤ入り試験片と標準試験片との応力-ひずみ特性(5個の平均)を比較したものを図4に示す。
【実施例】
【0049】
【表2】
JP2016016540A_000004t.gif
【実施例】
【0050】
以上の結果から、ワイヤ入り試験片では標準試験片に比べて最大応力と曲げ弾性率が約20%、破断時ひずみが約7%増加していることがわかる。これにより、ワイヤを樹脂成形品の内部に埋入した際に、ワイヤと樹脂との間で十分な密着力を生じ、ワイヤが引張応力に耐える構造になっていると考えられ、本発明に係る三次元造形装置が立体造形物の機械強度を向上させることができることがわかる。
【符号の説明】
【0051】
W ワイヤ
S 立体造形物
1 三次元造形装置
2 ヘッド部
20 プリンタヘッド
21 樹脂吐出ノズル
22 紫外線ランプ
23 ならしローラ
24 ヘッド駆動機構
3 ステージ部
30 成形ステージ
301 貫入孔
31 ワイヤ貫入機構
311 モータ
312 第1ローラ部材
313 第2ローラ部材
314 モータ制御回路
33 基台
34 ステージ駆動機構
4 制御部
5 データ作成端末
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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