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明細書 :配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法および該フィルム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5645173号 (P5645173)
登録日 平成26年11月14日(2014.11.14)
発行日 平成26年12月24日(2014.12.24)
発明の名称または考案の名称 配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法および該フィルム
国際特許分類 C08J   5/18        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
C08K   3/00        (2006.01)
FI C08J 5/18 CER
C08J 5/18 CEZ
C08L 101/00
C08K 3/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 21
出願番号 特願2012-533023 (P2012-533023)
出願日 平成23年9月8日(2011.9.8)
国際出願番号 PCT/JP2011/070506
国際公開番号 WO2012/033167
国際公開日 平成24年3月15日(2012.3.15)
優先権出願番号 2010290755
2010201186
優先日 平成22年12月27日(2010.12.27)
平成22年9月8日(2010.9.8)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成25年8月5日(2013.8.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】末廣 純也
【氏名】中野 道彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】大村 博一
参考文献・文献 特開2008-274178(JP,A)
特開2003-301048(JP,A)
特開2004-002119(JP,A)
調査した分野 C08J 5/00- 5/02;5/12- 5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム前駆体を、支持体を介して、断面が円形の電極線から成る櫛歯電極上に載置させる載置工程と、
前記フィルム前駆体が櫛歯電極上に載置されている状態で、該櫛歯電極に交流電圧を印加する加電圧工程と、
前記フィルム前駆体をフィルム化させるフィルム形成工程とを含むことを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項2】
加電圧工程が、櫛歯電極または支持体の少なくともいずれかを、櫛歯電極の長手方向に対して直交方向に揺動させる揺動工程を含むことを特徴とする請求項1の、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項3】
揺動工程が、櫛歯電極を構成する電極間の距離の0.2~1本分、櫛歯電極または支持体を移動させ、該移動方向を1~5分間隔で反転させることを特徴とする請求項2の、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項4】
載置工程が、櫛歯電極に向かって一定方向に順次移動させる支持体上に前記フィルム前駆体を滴下し、滴下された前記フィルム前駆体を引き延ばして櫛歯電極上に載置することから成り、
前記フィルム工程を経て形成されたナノチューブ含有フィルムを順次剥離する剥離工程とをさらに含むことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかの、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項5】
フィルム前駆体がポリマー前駆体またはゾルであり、フィルム形成工程が、重合法またはゾルゲル法を用いて該フィルム前駆体をフィルム化することを特徴とす る請求項1~請求項4のいずれかの、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項6】
櫛歯電極の電極線距離のcmあたり1kV~6kVの交流電圧を印加することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかの、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項7】
櫛歯電極の電極線距離のcmあたり4kVの交流電圧を印加することを特徴とする請求項6の、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項8】
周波数1kHz~28kHzで交流電圧を印加することを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかの、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
【請求項9】
周波数4kHzで交流電圧を印加することを特徴とする請求項8の、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーの分野に属し、詳細には、所謂ナノコンポジットフィルム、特にカーボンナノチューブに代表されるナノチューブまたはナノ粒子をフィルムの特定方向に沿って含有(配向)するフィルムを製造する新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルオーダーの物質は、その様々な機能が注目されており、新規な材料として開発が試みられている。例えば、カーボンナノチューブ(carbon nanotube;CNT)は、熱伝導性、電気伝導度、機械的強度等に関して優れた特性を有する。この優れた特性に着目し、CNTを配合することで、CNTの特性を活用した新規の機能性フィルムも活発に研究されている。このような機能性フィルムとしては、ナノコンポジットフィルムが挙げられる。
【0003】
CNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を含有するナノコンポジットフィルム、特にそのフィルム内でCNT が配向している場合には、CNTを含有することによるフィルム特性の変化が顕著であり、単に混合した場合に比べて、電気特性(導電率)、機械的特性(弾性率)、熱特性(熱伝導率)が大きくなることが知られている。ここで、「配向」とは、直径がナノメートルオーダーであり且つ長さがミリメートルオーダーであり、一次元物質に近似されるCNTに代表されるナノチューブが一方向に整列していることを指す。また、配向の状態としては、一方向に整列したナノチューブがそれぞれに接触(ネットワーク化)していることが望ましい。
【0004】
このような優れた特性から、配向されたCNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を含有するナノコンポジットフィルムの用途は、電磁シールド、放熱フィルム、透明電極、静電気防止膜のように多岐に渡っている。
【0005】
CNTをフィルム内に配向させる従来の方法としては、一対の電極間に電界を生じさせてCNTを配向させる技術(例えば、特許文献1、2参照)や、一対の電極間に交流電圧を印加し、該電極間にCNTのみからなる薄膜を製造する技術がある(例えば、特許文献3参照)。また、複数の電極上に配向させたCNTを堆積させる技術(例えば、特許文献4参照)や、複数の電極間で成長させたCNTと該電極とから成るCNT発光素子(例えば、特許文献5参照)がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2004-323342号公報
【特許文献2】特開2010-027251号公報
【特許文献3】特開2010-091844号公報
【特許文献4】特開2006-156389号公報
【特許文献5】特開2009-283303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、CNTを配向させる従来の方法を用いて機能性フィルムを製造する場合には、一対の電極を用いる場合には、製造されるフィルムの面積をある程度以上、例えば、平方メートルオーダーまで広くすることは難しく、これまでのところ高々数cm 幅のコンポジットフィルムが作製されるに止まっている。その理由としては、CNTの配向し易さが電界強度(単純には、電圧/電極間距離)に依存するため、幅の広いフィルムを製造する場合には、大きな電圧、すなわち大規模な電源を必要とし、コスト的にも困難であるためである。例えば、電界強度1kV/cmでCNTを配向させる場合、幅が10cmであれば10kVの電源が必要であり、幅が1mになれば100kVの電源が必要となる。特に配向を効率よく行うためには、数kHzの電源が必要となるため、そのような高電圧電源を用意するには、多大なコストが必要になる。また、CNTに代表されるナノチューブの配向は、電界の強い方向で形成される性質があり、電極からの距離が離れるほど電界が弱くなることから、電極近傍でCNTの濃度が濃く、フィルムの中心付近で薄くなってしまい、CNTが不均一となり品質的にも低下する虞がある。
【0008】
また、従来のCNTを配向させる方法において、複数の電極を用いる場合には、CNTは電界の強い所に集積するために電極のエッジ付近にCNTが集まってしまい、CNTのネットワークが途切れてしまう虞がある。また、これらの従来技術はいずれもフィルムの特に面方向に沿って配向されたものではなく、またいずれもカーボンナノチューブは多量に含有される必要がある。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決するために提案されたものであり、電界を用いてCNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を確実に(特にフィルムの面方向に沿って)配向させ、電極の影響を抑えてナノチューブまたはナノ粒子を含む大面積のナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを、低コストで作製することが可能な新しいタイプの、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、断面が円形の電極線から成る櫛歯電極から発生する電界を用いてCNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を配向させることで、電極の影響を抑えてナノチューブまたはナノ粒子を、確実に(特にフィルムの面方向に沿って)配向できることを見出すとともに、このナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを、大面積かつ低コストで作製できる製造技術を新たに見出した。さらに、このナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造技術の一連の工程を連続化することでスケールアップを図り、CNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムをさらに低コストかつ大規模に作製できるナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム製造技術を新たに見出した。
【0011】
かくして、本発明に従えば、ナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを製造する方法であって、ナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム前駆体を、支持体を介して、断面が円形の電極線から成る櫛歯電極上に載置させる載置工程と、前記フィルム前駆体が櫛歯電極上に載置されている状態で、該櫛歯電極に交流電圧を印加する加電圧工程と、前記フィルム前駆体をフィルム化させるフィルム形成工程とを含むことを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法が提供される。
【0012】
本発明に従えば、フィルム前駆体に含有されているナノチューブまたはナノ粒子が加電圧工程によりフィルムの面方向に沿って配向され、さらに、重合工程によりフィルム前駆体がフィルム化して、これによって、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有する大面積のフィルムが得られる。
【0013】
加電圧工程が、櫛歯電極または支持体の少なくともいずれかを、櫛歯電極の長手方向に対して直交方向に揺動させる揺動工程を含むことを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法も提供される。この揺動によって電極系を往復平行移動させることとなり、ナノチューブまたはナノ粒子に作用する電界を空間的に平均化(電界平均化)させることで、ナノチューブまたはナノ粒子の配向性をさらに高めることができる。
【0014】
揺動工程が、櫛歯電極を構成する電極間の距離の0.2~1本分、櫛歯電極または支持体を移動させ、該移動方向を1~5分間隔で反転させることを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法も提供される。この揺動条件により、ナノチューブまたはナノ粒子の配向が促進されることとなり、ナノチューブまたはナノ粒子の配向性をさらに高めることができる。
【0015】
載置工程が、櫛歯電極に向かって一定方向に順次移動させる支持体上に前記フィルム前駆体を滴下し、滴下された前記フィルム前駆体を引き延ばして櫛歯電極上に載置することから成り、前記フィルム工程を経て形成されたナノチューブ含有フィルムを順次剥離する剥離工程とをさらに含むことを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造方法も提供される。この態様は、特に、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを大量に製造するのに適している。
【0016】
さらに、上記の製造方法によって、フィルム内に含有されたナノチューブまたはナノ粒子が、フィルムの面方向に沿って配向されていることを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムも提供される。ナノチューブまたはナノ粒子が、フィルムの面方向(特に電界のかかった方向)に沿って配向されることにより、ナノチューブまたはナノ粒子の持つ機能、例えば、導電性や熱伝導性を有意に高めることができる。
【0017】
さらに、本発明の製造方法によって、一般に、フィルム内に含有されたナノチューブが、空間濃度レベル依存法(SGLDM)によるテクスチャ解析で、配向方向と垂直方向の局所一様性(local homogeneity)の差が0.2以上となる配向性を有することを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムも提供される。このように、高配向性のナノチューブまたはナノ粒子をフィルムが有することから、従来よりも少量のナノチューブまたはナノ粒子によって目的とする機能を実現することができ、製造コストを抑制することができる。フィルム製造に際しては、従来よりも少量のナノチューブまたはナノ粒子で十分であることから、フィルムの透明性(透過度)も高めることができる。
【0018】
さらに、本発明の製造方法によって、一般に、ナノチューブまたはナノ粒子を含有するナノコンポジットフィルムの電気抵抗率が5.0×10~1.0×1010(Ωm)であることを特徴とする、フィルムの面方向に沿ってナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムも提供される。このように、本発明で得られるフィルムは電気抵抗率が従来よりも低いことから、導電性フィルムとして有用なフィルムを提供することができる。
【0019】
さらに、本発明に従えば、上記のナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造装置であって、絶縁体から成る平板状の絶縁板と、絶縁板上に櫛歯状に配設され、交互に陽極と陰極を構成する複数の円形断面の電極線から成る櫛歯電極と、絶縁板の上面に櫛歯電極に接して載置され、ナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム前駆体を載置する支持体と、前記フィルム前駆体が櫛歯電極に接する支持体上に載置されている状態で、櫛歯電極に交流電圧を印加する交流電源と、前記フィルム前駆体をフィルム化させてナノチューブまたはナノ粒子含有フィルムを形成するフィルム形成手段とを備えることを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造装置も提供される。
【0020】
また、本発明のフィルム製造装置においては、必要に応じて、絶縁板または支持体の少なくともいずれかを、櫛歯電極の長手方向に対して垂直方向に揺動させる揺動手段を備えることを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造装置も提供される。この揺動手段により、ナノチューブまたはナノ粒子の配向性をさらに高めることができる。
【0021】
また、本発明のフィルム製造装置においては、必要に応じて、支持体が櫛歯電極に接するベルト状であり、該支持体を櫛歯電極に向かって一定方向に順次移動させる搬送手段と、前記フィルム前駆体を支持体に滴下させる滴下手段と、滴下された前記フィルム前駆体を引き延ばす引延手段と、前記重合手段により形成されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを支持体から順次剥離する剥離手段とを備え、引き延ばされた前記フィルム前駆体が搬送手段により櫛歯電極上に移動された場合に、交流電源が櫛歯電極に交流電圧を印加することを特徴とする、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの製造装置も提供される。この態様は、特に、フィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを大量に製造するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムの製造方法で用いることができる装置の概略図およびフローチャートを例示する。
【図2】本発明に係るナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルム製造方法で用いることができる装置の揺動動作を示す説明図を示す。
【図3】ベルト状の支持体を用いた本発明に係る配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムの製造方法で用いることができる装置の概略図およびフローチャートを例示する。
【図4】本発明の製造方法によって製造された、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムに関する実験結果を示す。
【図5】交流周波数を変化させて、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムを製造した実験結果を示す。
【図6】交流電圧を変化させて、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムを製造した実験結果を示す。
【図7】本発明の製造方法に従って、揺動動作の有無の各場合における、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムを製造した実験結果、および得られたCNTの濃度ごとの配向されたCNTナノコンポジットフィルムの光学顕微鏡微視像を示す。
【図8】本発明の製造方法によって製造された、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムの濃度に応じた抵抗率および局所一様性を示す実験結果を示す。
【図9】本発明の製造方法によって製造された、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムを、揺動速度を変化させて製造した実験結果を示す。
【図10】本発明の製造方法によって製造されたナノチューブおよびナノ粒子の熱伝導率測定結果を示す。
【図11】本発明の製造方法によって製造された、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムをビデオマイクロスコープで観察した結果を示す。

【0023】
本発明のCNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムとしてのポリマーフィルム(例えば、CNTナノコンポジットフィルム)は、櫛歯電極の上部に置かれたナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム前駆体としてのポリマー前駆体に対して、櫛歯電極に交流電圧を印加した後、該ポリマー前駆体を重合させることにより製造される。得られるナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムは、光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡等による観察などにより確認することができる(後述の実施例参照)。
【0024】
本発明で用いられるナノチューブまたはナノ粒子のサイズは、一般に用いられているナノサイズの概念に含まれる大きさであれば特に限定されない。一般に、そのいずれかの1次元方向の長さが、ナノメートルオーダー、好ましくは1000nm以下、特に好ましくは1~100nmの物質である。形状についても、特に限定されず、例えば円筒形状か球状以外の形状であってもよい。
【0025】
本発明で用いられるナノチューブまたはナノ粒子としては、上記のサイズに含まれる各種のタイプのナノチューブまたはナノ粒子を使用することができる。
例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)の少なくとも1つから成る貴金属ナノチューブまたはナノ粒子、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、炭窒化ホウ素(BCN)、セレン化亜鉛(ZnSe)、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)の少なくとも1つから成る硫化物系ナノチューブまたはナノ粒子、五酸化バナジウム(V)、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)の少なくとも1つから成る酸化物系ナノチューブまたはナノ粒子、炭素原子(C)から成るカーボンナノチューブまたはナノ粒子、酸化亜鉛(ZnO)、すず(Sn)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)などの棒状物質である金属ナノワイヤまたはナノ粒子から選ぶことができる。
【0026】
このうち、本発明では、熱伝導性、電気伝導度、機械的強度等に関して優れた特性を有するカーボンナノチューブを用いることが好ましい。よく知られているように、CNTには、単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotube;SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon Nanotube;MWCNT)があるが、本発明はいずれのCNTにも適用することができる。すなわち、CNTには、原子間結合の幾何学的特徴に応じて、アームチェアー(armchair)型、ジグザグ(zigzag)型、カイラル(chiral)型といった構造があり、さらに、CNTの直径とカイラル角に応じて、金属相と半導体相が入れ替わることで金属性(導電性)を呈するCNTや半導体性を呈するCNTがあるが、本発明は、それらのCNTのいずれにも同様に適用することができる。さらに、このようなCNTのうち、特に好ましいのは、導電性や熱伝導性が得られ易い点から、多層カーボンナノチューブである。これらのCNTは、いずれも各種の構造のものが市販されているので、本発明では、目的に応じて、それらを使用することができる。
【0027】
本発明で用いられるナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルム前駆体には、ポリマー前駆体またはゾルを用いることができ、それぞれポリマーまたはゲルから成るフィルムが得られ、該フィルム内にナノチューブまたはナノ粒子が含有される。
【0028】
ポリマー前駆体としては、通常には、ポリマー前駆体(すなわち、当該ポリマーのモノマーまたはオリゴマー)に加えて、重合に必要な重合開始剤、各種添加剤等を適当な溶媒に溶解させたものである。該ポリマー前駆体が重合して成るポリマーフィルムとしては、例えば、紫外線硬化性樹脂、可視光硬化性樹脂などの光硬化性樹脂;フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂 (MF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、エポキシ樹脂(EP)、ジアリルフタレート樹脂(PDAPまたはDAP)などの熱硬化性樹脂がある。このうち、該ポリマーフィルムは、好ましくは、光硬化性樹脂であり、このうち特に好ましくは、紫外線硬化性樹脂である。
【0029】
紫外線硬化樹脂は、紫外線領域の光を照射してはじめて重合が開始するため、重合前の保存安定性があり、取扱い易い。さらに、重合開始剤もそれ自体に含まれ、別途追加することが不要なため、利便性が高いという利点がある。本発明では、超音波分散器などを用いて、CNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子をこのようなポリマー前駆体と攪拌して混ぜ合わせ、室温に戻しておいたものを使用する。上記のポリマーは、後述するように導電性ポリマーであってもよいし、絶縁性ポリマーであってもよい。
【0030】
上記のゾルが乾燥して成るゲルとしては、例えば、フィルム状ガラスがある。このうち、該ゾルは、好ましくは、金属アルコキシドを加水分解して縮重合したものであり、このうち特に好ましくは、テトラエトキシシランを加水分解して縮重合したものである。
【0031】
本発明で用いられる櫛歯電極は、断面が円形である電極線を使用し、その材質は特に限定されない。例えば、タングステンやプラチナを用いることができる。本発明によれば、該櫛歯電極に交流電圧を印加するが、この交流電圧は、電極線距離のcmあたり1kV~6kVであることが好ましく、特に好ましくは、4kVである。また、該印加する交流電圧は、周波数1kHz~28kHzであることが好ましく、特に好ましくは、周波数4kHzである。この周波数以下ではポリマーフィルムの抵抗値が高くなり、これ以上ではポリマーフィルムの抵抗値が高くなると共に高周波出力するための電源に多大なコストが必要
となるためである。
【0032】
上記の方法から理解されるように、本発明により製造されるナノチューブ(特にCNT)またはナノ粒子を含有するフィルムは、円形断面の電極線から成る櫛歯電極の上面に生じる電界によりフィルムの面方向に沿って配向されたナノチューブ(特にCNT)またはナノ粒子を含有していることが特徴である。
【0033】
さらに、従来のような一対または複数対の平行平板電極を用いてその電極間に配向されたナノチューブ(特にCNT)またはナノ粒子を含有するフィルムの場合では、電極近傍に強い電界が偏ってしまうことからナノチューブ(特にCNT)またはナノ粒子の配向に粗密を生じたり、フィルムとの境界に位置する電極近傍でナノチューブ(特にCNT)またはナノ粒子の配向性が低下したりしていたが、本発明では、円形断面の電極線から成る櫛歯電極の上面に生じる電界によって、CNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を配向することから、電極からの距離に影響を抑えて均一に配向され、フィルムの面方向に沿って確実に配向されたCNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子を含有する新規のフィルムが得られる。
【0034】
さらに、櫛歯電極または支持体の少なくともいずれかを、櫛歯電極の長手方向に対して直交方向に揺動させることにより、ナノチューブまたはナノ粒子がフィルムの面方向(電界のかかる方向)に沿って確実かつ均一に配向されたフィルムを得ることができる。
【0035】
さらに、上記の方法から理解されるように、CNTに代表されるナノチューブまたはナノ粒子が電極位置に影響されず配向され、ナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムの面積に依らず印加電圧が一定である円形断面の電極線から成る櫛歯電極を用いることから、従来に無い大面積の新規のナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムが低コストで得られる。
【0036】
以上のように本発明の製造方法によって得られるナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムは、例えば、電磁シールドや静電気防止膜として使用することができる。このような電磁シールドや静電気防止膜は、従来よりも大面積でナノチューブ(特にCNT)またはナノ粒子が確実に配向されるため、広い範囲を1枚の膜でカバーすることができる伝導性に優れた新規材料としての使用が可能である。
【0037】
上記に従い製造されたポリマーフィルムは、ポリマーの種類およびナノチューブもしくはナノ粒子の混合量を調整することで、各種の用途に応じた機能を発揮することができる。
【0038】
ナノチューブまたはナノ粒子の混合量を調整することで、導電性の高い高分子材料(例えば、導電性ポリマーフィルム)を作製することができる。導電性ポリマーフィルムとしては、例えば、アクリル(PMMA)またはシリコン系樹脂をポリマー前駆体に用いることにより形成することができる。さらに、該導電性ポリマーフィルムは、本来他の高分子材料に比べて抵抗率の低いポリアセチレンまたはポリアニリンまたはポリチオフェンなどの導電性高分子をポリマー前駆体に用いることにより形成することもできる。本発明に従ってこれらのポリマー前駆体にCNTまたはナノ粒子を含有させて製造されるポリマーフィルムは、高配向性が得られることから、従来よりも電気抵抗率の低い素材を得ることができる。本発明によって製造される導電性ポリマーフィルムは、例えば、従来よりも大面積で消費電力を抑えたタッチパネルとして利用することが可能である。
【0039】
また、ナノチューブまたはナノ粒子の混合量を調整することで、絶縁性を保ったまま、放熱性能の高い高分子材料(例えば、絶縁ポリマーフィルム)を作製することができる。絶縁ポリマーフィルムは、ポリスチレン、シリコン系樹脂、ポリイミドをポリマー前駆体に用いることにより形成することができる。特に本発明に従ってナノチューブまたはナノ粒子を含有させることで高配向性が得られ、従来よりも熱伝導率の高い素材を得ることができる。送電機器や高電圧機器に備えられた従来の放熱フィルムは、熱交換が不十分であったために、高電圧・高電流により該機器が溶解するという問題があったが、本発明の絶縁ポリマーは、熱耐久性が高いことから、該溶解の問題を抑えることができる。また、本発明の絶縁ポリマーは、高い放熱性を示すことから、超小型化しているコンピュータおよび電気自動車の放熱材料にも利用することができる。
【0040】
上記の方法に従い、ナノチューブまたはナノ粒子を含有するフィルムを製造する製造装置の構成を、図1~図3を用いて以下説明する。これらの図は、本発明の特に好ましい態様として、フィルムがポリマー(重合体)として構成され、ナノチューブまたはナノ粒子がCNTである場合に沿って説明したものである。図1は、本発明に係る配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムの製造方法で用いることができる装置の概略図およびフローチャートを例示し、図2は、本発明に係るナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルム製造方法で用いることができる装置の揺動動作を示す説明図を示し、図3は、ベルト状の支持体を用いた本発明に係る配向されたナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムの製造方法で用いることができる装置の概略図およびフローチャートを例示する。
【0041】
本発明に係るナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルム製造装置は、図1(a)および(b)に示すように、絶縁体から成る平板状の絶縁板1と、絶縁板上に櫛歯状に配設され、交互に陽極と陰極を構成する複数の円形断面の電極線から成る櫛歯電極2と、絶縁板の上面に櫛歯電極に接して載置され、ナノチューブを含有するCNT含有ポリマー前駆体Pを載置する支持体3と、CNT含有ポリマー前駆体Pが櫛歯電極に接する支持体上に載置されている状態で、櫛歯電極に交流電圧を印加する交流電源4と、CNT含有ポリマー前駆体Pを重合させてナノチューブを含有するポリマーフィルムを形成する重合手段5とを備える。
【0042】
絶縁板1は、絶縁性の平板であれば特に材質は制限されず、例えば、アクリル板を使用することができる。櫛歯電極2は、断面が円形である電極線を使用し、その材質は導電性物質であれば特に限定されないが、例えば、タングステンやプラチナを用いることができる。支持体3は、膜状であれば特に材質は限定されないが、好ましくは、比誘電率が4以下であり、より好ましくは、絶縁膜であり、ポリマーフィルムの剥離性が高い方が望ましく、例えば、パラフィルムを用いることができる。交流電源4は、交流電圧を印加する電源である。重合手段5は、ナノチューブを含有するポリマー前駆体を重合させるものであり、例えば、ポリマーフィルムが紫外線硬化性樹脂から成る場合には紫外線照射装置であり、熱硬化性樹脂から成る場合には加熱装置である。
【0043】
上記構成による本発明のナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルム製造方法を図1(c)に従い、以下説明する。 まず、CNTとポリマー前駆体が混合されたCNT含有ポリマー前駆体Pを櫛歯電極2に接する支持体3上に載置する(S1)。ここで、櫛歯電極2の電極線の断面が円形であることから、支持体3は、櫛歯電極2に接した状態で設置することができる。次に、交流電源4から櫛歯電極2に交流電圧を印加する(S2)。その周波数は、好ましくは、1kHz~28kHzである。また、交流電源4は、好ましくは、櫛歯電極2で電極線距離のcmあたり1kV~6kVの交流電圧を印加し、より好ましくは、4kVの交流電圧を印加する。この印加により、図1(a)に示すように、CNT含有ポリマー前駆体Pに含まれるカーボンナノチューブZが配向される。次に、交流電圧印加後、CNT含有ポリマー前駆体Pを重合する(S3)。この重合により、上記の配向されたカーボンナノチューブZを含有するポリマーフィルムが得られる。なお、フィルム前駆体としてゲルを用いる場合には、この工程でゲルが乾燥され、その結果、上記の配向されたカーボンナノチューブZを含有するゲルフィルムが得られる。
【0044】
また、このS2で交流電圧を印加する際に、絶縁板1または支持体3の少なくともいずれかを、櫛歯電極2の長手方向に対して垂直方向に揺動させることもできる。この揺動は、図2(a)および(b)に示す揺動方向Mに沿って、絶縁板1または支持体3の少なくともいずれかを往復移動させる揺動手段を用いることで、実施することができる。
【0045】
この揺動手段は、同図(c)に示すように、一定時間間隔で絶縁板1または支持体3の少なくともいずれかを揺動させることで、櫛歯電極2からの交流電圧がCNT含有ポリマー前駆体P全体にムラなく印加されることとなり、ナノチューブまたはナノ粒子の配向性をさらに高めることができる。
【0046】
また、この揺動手段は、櫛歯電極を構成する電極間の距離の0.2~1本分、絶縁板1または支持体3を移動させ、該移動方向を1~5分間隔で反転させることが好ましい。この揺動条件に従う揺動により、ナノチューブまたはナノ粒子の配向が促進されることとなり、ナノチューブまたはナノ粒子の配向性をさらに高めることができる。
【0047】
ポリマーフィルム製造装置の揺動手段について、図2(d)に上面図を示し、同図(e)に側面図を示す。揺動手段は、回転運動を行うクランク・ディスク10と、クランク・ディスク10の回転運動を往復運動に変換する連接棒10aと、連接棒10aの動きを絶縁板1に伝えるスライダ10bと、連接棒10aの動きを支持する支持部10cと、クランク・ディスク10に回転動作を伝えるモーター10dと、モーター10dを支持するモーターベース10eと、モーター10dの動力源となる直流電源10fとを備える。また、絶縁板支持部1aは、絶縁板1を支持する。
【0048】
このように、モーター10dの動力によりクランク・ディスク10が回転運動をし、この回転運動を連接棒10aが往復運動に変換することで、絶縁板1が往復運動を行うことができる。
【0049】
本発明では、断面が円形の電極線から成る櫛歯電極2とCNT含有ポリマー前駆体Pが、櫛歯電極2と接して置かれた支持体3を介することで直接接触しないこととなり、櫛歯電極2上のCNT含有ポリマー前駆体PにCNTが集積せず、櫛歯電極2の洗浄が必要なく、さらに平らなポリマーフィルムを容易に作製することができる。
【0050】
さらに、本発明のナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルム製造装置は、上記の変形例として、ベルトコンベアを使用した装置とすることも可能である。その製造装置の構成を上記構成との差異を基に図3(a)に従い以下に示す。なお、上記構成と同一の構成要素には同一の番号を付けている。
【0051】
本発明に係るナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルム製造装置は、支持体3が櫛歯電極2に接するベルト状であり、該支持体3を櫛歯電極2に向かって一定方向に順次移動させる搬送手段6と、CNT含有ポリマー前駆体Pを支持体3に滴下させる滴下手段7と、滴下されたCNTポリマー含有前駆体Pを引き延ばす引延手段8と、重合手段5により形成されたナノチューブを含有するポリマーフィルムを支持体3から順次剥離する剥離手段9とを備える。
【0052】
搬送手段6は、ベルト状の支持体3を巻きつけてエンドレスに移動させるものであり、例えば、ベルトコンベア装置とすることができる。滴下手段7は、予め攪拌等によりCNTとポリマー前駆体を混ぜ合わせたCNT含有ポリマー前駆体Pを支持体3上に滴下させる。引延手段8は、滴下されたCNT含有ポリマー前駆体を物理的な圧力で引き延ばす圧力ローターとすることができる。また、剥離手段9は、重合手段5により形成されたナノチューブを含有するポリマーフィルムを支持体3から順次剥離する。
【0053】
上記構成による本発明のナノチューブを含有するポリマーフィルム製造方法を図3(b)に従い、以下説明する。まず、櫛歯電極2に向かって一定方向に順次移動させる支持体3上にCNT含有ポリマー前駆体Pを滴下する(S11)。次に、滴下されたCNT含有ポリマー前駆体Pを引き延ばして櫛歯電極2上に載置する(S12)。この後、上記と同様に前記S2およびS3を行い、フィルムの面方向に沿って配向されたCNTを含有するポリマー前駆体Pを重合してCNTナノコンポジットフィルムを作製する。この重合されたCNTナノコンポジットフィルムを剥離手段9が順次剥離する(S4)。
【0054】
このように、支持体3をベルト構造としてベルトコンベアとして自動化させることによりスケールアップされ、効率よくナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムを製造することができる。また、本発明では、櫛歯電極の電極構成から、大面積化した場合にも、櫛歯電極が印加すべき交流電圧は一定となるため、本構造のベルトコンベア装置を用いることで、さらに低コストでCNTナノコンポジットフィルムを作製することができる。
【0055】
なお、上記では、ナノチューブまたはナノ粒子がCNTの場合について説明したが、本発明は、このCNTまたはナノ粒子に限定されることはなく、他の無機ナノチューブまたはナノ粒子においても同様にナノチューブまたはナノ粒子を含有するポリマーフィルムを製造することができる。
【0056】
本発明の特徴を更に具体的に示すため以下に図4~図11に従い実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0057】
(実施例1)
アクリル板(5cm角)に電極線(タングステン、0.06mmφ)を1cm間隔で配置し、電極板を作製した。ポリマーフィルムは紫外線硬化性樹脂(A-1669、テスク)を使用した。電極線は一本おきに電源と接地に接続した。電極線の上部をパラフィルム(登録商標、ペシニー・プラスチック・パッケージング社製)で覆った。電極板の上部にCNT(多層カーボンナノチューブ)(シグマアルドリッチ社製)を混合したポリマーとして、0.05wt%のCNTを含む紫外線硬化性樹脂を展開した。紫外線硬化性樹脂は、超音波分散器(SMT社製)を用いて6時間攪拌してCNTと混合した。電圧を印加して、同時にポリマーの重合を開始した。電圧印加は20分間行い、該電圧印加の開始から10分後に紫外線照射を30分間実施した。電源には、20/20C(トレック社)および一次電圧に50Hzの単巻変圧器であるスライダック(登録商標)を接続したネオンインバータトランス(レシップ社)を使用し、電圧は電極線距離のcmあたり4kV、周波数は28kHzを印加した。図4(a)および(b)に、得られたCNTナノコンポジットフィルムの光学顕微鏡微視像を示す。
【0058】
図4(b)および(c)に示すように、位置に応じた抵抗率を確認した(両図の項番は一致している)。これらの結果から、櫛歯電極近傍でCNT配向の度合いが変わることなく、CNTが均一かつ確実にフィルムの面方向に沿って配向されたCNTナノコンポジットフィルムが作製されたことがわかった。本発明に従い作製されたCNTナノコンポジットフィルムは、CNT配向の写真および抵抗率の測定結果から、効率的なCNTネットワークが形成されているものと考えられる。
【0059】
(実施例2)
印加電圧の周波数を変化させた測定
実施例1と同一の装置構成で電源に20/20C(トレック社)を用いて、印加電圧の周波数を50Hz、100Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、5kHzと変化させてCNTナノコンポジットフィルムを作製した。印加電圧の大きさは、50Hzから4kHzまでは電極線間のcmあたり4kV、5kHzでは3.8kVとした。図5は、交流周波数を変化させて配向されたCNTナノコンポジットフィルムを製造した実験結果を示す。得られたCNTナノコンポジットフィルムから、図5(a)に示すように、電極線間で1cm四方の抵抗測定用切片Aを、また、電極線をまたぐように1.5cm四方の抵抗測定用切片Bを切り出した。切り出した切片AおよびBについて、印加した電界と平行な方向の抵抗率を測定した。図5(b)に得られた結果を示す。図5(b)には、実施例1で得られた結果(28kHz)も併せて記載している。
【0060】
図5(b)から明らかなように、電極線間上の切片Aおよび電極横断上の切片Bは、いずれも1kHz近傍で急激に抵抗率が減少し、1kHzから28kHzまでの範囲で抵抗率が有意に減少した。また、電極線間上の切片Aと電極横断上の切片Bにおける抵抗率は、周波数が1kHzから4kHzまで増加するにつれてその差が縮小し、4kHz近傍でほぼ同値となり、周波数が4kHzから28kHzに増加するにつれて再びその差が拡大した。この結果から、周波数が4kHzの場合には、低い抵抗率が得られるとともに、電極線からの位置によらず均一なCNT配向が得られる最適な周波数条件であることが分かった。
【0061】
なお、交流電源で28kHzを超える高周波を印加する場合には、ポリマーフィルムの抵抗値が高くなると共に高周波出力するための電源に多大なコストが必要となることから、交流電圧の印加は、1kV~28kVの範囲で行うことが好ましい。
【0062】
(実施例3)
印加電圧を変化させた測定
実施例2と同一の装置構成で、印加電圧を電極線間のcmあたり1kV、2kV、3kV、4kVと変化させてCNTナノコンポジットフィルムを作製した。印加電圧の周波数は、4kHzとした。実施例2と同様に、得られたCNTナノコンポジットフィルムから図5(a)にあるように電極線間上の切片Aと電極横断上の切片Bを切り出し、電界に平行方向の抵抗率を測定した。図6は、交流電圧を変化させて配向されたCNTナノコンポジットフィルムを製造した実験結果を示す。
【0063】
図6に示すように、1kV~4kVの範囲において、印加電圧が大きくなるにつれて抵抗率が有意に減少し、特に4kV近傍で抵抗率が急激に低下した。さらに、電極間と電極横断の切片Aおよび切片Bにおける抵抗率は、印加する交流電圧が1kVから4kVまで増加するにつれてその差が縮小し、4kV近傍でほぼ同値となった。この結果から、印加する交流電圧が4kVの場合には、低い抵抗率が得られるとともに、電極線からの位置によらず均一なCNT配向が得られる最適な印加電圧条件であることが分かった。なお、交流電圧として6kVを超える高電圧を印加する場合には、絶縁破壊が生じる可能性が高まるため、安全性の観点からも、交流電圧の印加は、1kV~6kVの範囲で行うことが好ましい。
【0064】
(実施例4)
実施例1と同一の装置構成で、印加電圧の大きさを電極線間のcmあたり6kVとした。その結果、得られたフィルム中のCNTの配向が4kVの場合よりも小さくなった。このことから、6kVを越えない範囲で交流電圧を印加することが好適となることがわかった。
【0065】
以下の実施例では、上記までの実施例に上述の揺動手段を追加して実施した。揺動手段としては、図2(d)および(e)に示したクランク・ディスク10の回転動作を用いて上述の絶縁板1と支持体3を周期的に往復動作させることで実施した。
【0066】
(実施例5)
揺動の有無の比較
実施例1に、図2(d)および(e)に示した揺動手段として、クランク・ディスク、連接棒、マブチモーター,直流電源(ケンウッド製)、前記支持体3としての0.7mm厚で15cm角のテンパックス(登録商標)ガラス板を追加した装置構成で実施した。印加電圧の大きさを電極線間のcmあたり5kVとし、周波数は4kHzとした。絶縁膜移動距離を0.5cm、該移動の繰り返し時間を30秒とした。図7(a)に得られた結果を示す。図7(a)に示すように、揺動させることにより、最大10オーダーで抵抗率が減少した。
【0067】
(実施例6)
ナノチューブ濃度を変化させた測定
実施例1に、図2(d)および(e)に示した揺動手段として、クランク・ディスク、連接棒、マブチモーター,直流電源(ケンウッド製)、前記支持体3としての0.7mm厚で15cm角のテンパックス(登録商標)ガラス板を追加した装置構成で実施した。印加電圧の大きさを電極線間のcmあたり5kVとし、周波数は4kHzとした。絶縁膜移動距離を0.5cm、該移動の繰り返し時間を30秒とした。CNTの濃度が0.01wt%、0.025wt%、0.05wt%および0.1wt%の各場合について、図7(b)および図8(a)に、得られた光学顕微鏡微視像およびCNT濃度に応じた抵抗率を示す。
【0068】
また、図8(b)に、空間濃度レベル依存法(SGLDM)に基づく局所一様性(local homogeneity)を示す。空間濃度レベル依存法(SGLDM)は、同時生起行列を用いて画像のテクスチャ解析を行い、テクスチャーの特徴量として、エネルギー、エントロピー、相関、局所一様性、慣性を算出する広く知られた手法である。局所一様性0は、配向方向に対する局所一様性を示し、局所一様性90は、配向方向の垂直方向に対する局所一様性を示す。この2つの局所一様性の差が大きいほど、配向度合いが大きいことが示される。
【0069】
図8(a)および(b)から、本実施形態のCNTナノコンポジットフィルムは、フィルム内のナノチューブまたはナノ粒子含有率が0.05wt%以下という低濃度で、局所一様性の差が0.2以上という高い配向性が得られることが示された。
【0070】
図7(c)および(d)に示すフィルム内のナノチューブまたはナノ粒子含有率が0.05wt%でのCNTナノコンポジットフィルムについて、さらに抵抗率を確認した。特に図中の領域Aにおいて、同図(e)に示すように、5.8×10(Ω・m)という低い抵抗率の数値を検出した。
【0071】
(実施例7)
揺動速度を変化させた測定
実施例1に、図2(d)および(e)に示した揺動手段として、クランク・ディスク、連接棒、マブチモーター,直流電源(ケンウッド製)、前記支持体3としての0.7mm厚で15cm角のテンパックス(登録商標)ガラス板を追加した装置構成で実施した。電圧は電極線距離のcmあたり5kV、周波数は4kHzを印加した。揺動速度として、1分間の往復回数を1、4および13回(rpm)の各場合に対してCNTナノコンポジットフィルムを製造した。実験結果を図9に示す。同図(a)~(c)に示すように、揺動速度が速くなるとともに、CNTナノコンポジットフィルム内のCNTが均質化した。しかしながら、同図(d)に示すように、30rpmまで達すると、分散性が明らかに低下した。カーボンナノチューブの分散の均一性および抵抗率の観点から、4rpmで揺動動作を行うことが好ましい。
【0072】
(実施例8)
異なるポリマーを使用した測定
上記までの実施例では、ポリマーフィルムに紫外線硬化性樹脂を使用したが、本発明に係る実施形態では、紫外線硬化性樹脂に限定されないことから、熱硬化性樹脂を使用して実施した。
【0073】
実施例1に上述のクランク・ディスクを追加した装置構成で実施した。ポリマーフィルムは熱硬化性樹脂PDMS(ポリジメチルシロキサン)を使用した。電極線は一本おきに電源と接地に接続した。電極線の上部をパラフィルムで覆った。電極板の上部にCNTを混合したポリマーとして、熱硬化性樹脂PDMS(Sylgard184、ダウ・コーニング社製)をPDMS:ヘキサン比3:1で0.05wt%のCNTを展開した。電圧を印加するとともに、重合促進のため70度に加温してポリマーの重合を開始した。印加時間を20分、加熱時間を60分とした。電圧は電極線距離のcmあたり5kV、周波数は4kHzを印加した。絶縁膜移動距離を0.5cm、該移動の繰り返し時間を30秒とした。空間濃度レベル依存法(SGLDM)に基づくテクスチャ解析を行ったところ、電圧印加により配向性が約10倍向上した。
【0074】
(実施例9)
熱伝導率の測定
上述の実施例7に記載した装置および方法に従って、以下条件で各ナノチューブまたはナノ粒子の熱伝導率を測定した。
【0075】
(1)測定条件
熱伝導率測定:迅速熱伝導率計(京都電子工業、QTM-500)
母材:紫外線硬化性樹脂(TESK社、A-1669)
【0076】
(2)測定対象
-1)多層カーボンナノチューブ(Sigma-Aldrich社、636517)
実験条件:印加電界:5kV/cm、4kHz、カーボンナノチューブ濃度:0.05wt%
粒子サイズ:O.D.×I.D.×L=10-30nm×3-10nm×1-10μm
-2)窒化ホウ素粒子(Sigma-Aldrich社、255475)
実験条件:印加電界:4kV/cm、4kHz、添加濃度:0.05wt%
粒子サイズ:~1μm
-3)酸化アルミニウム(Sigma-Aldrich社、551643)
実験条件:印加電界:3.6kV/cm、4kHz、添加濃度:0.5wt%
粒子サイズ:2-4nm×200-400nm
-4)酸化アルミニウム(Sigma-Aldrich社、544833)
実験条件:印加電界:3.6kV/cm、4kHz、添加濃度:0.5wt%
粒子サイズ:<50nm
-5)二酸化ケイ素(Sigma-Aldrich社、S5505)
実験条件:印加電界:4kV/cm、4kHz、添加濃度:0.5wt%
粒子サイズ:14 nm
-6)二酸化ケイ素(Sigma-Aldrich社、637238)
実験条件:印加電界:4kV/cm、4kHz、添加濃度:0.5wt%
粒子サイズ:10-20nm
【0077】
(3)測定結果
熱伝導率λ[W/mK]と、紫外線硬化性エポキシ樹脂に対する熱伝導率比(λ/λepoxy)に関する結果を以下に示す。このうち熱導電率比(λ/λepoxy)の結果を図10(a)に棒グラフで示す。これらの結果から、多層カーボンナノチューブやナノ粒子の場合について高い熱伝導率を有するフィルムが得られたことが分かった。
【0078】
【表1】
JP0005645173B2_000002t.gif

【0079】
なお、上記のフィルムのうち、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いて得られたCNTナノコンポジットフィルムをビデオマイクロスコープ(VH-5500、キーエンス)を用いて、内部の配向の様子を観察した結果を図11に示す。当該コンポジットフィルムは、上述した15cm角のテンパックス(登録商標)ガラス板を用いて作製しており、15cm×15cmという従来に無い大面積のコンポジットフィルムを得た。
【0080】
図11(a)は、上記方法で得られた15cm×15cmのCNTナノコンポジットフィルムをビデオマイクロスコープで観察した写真である。従来の平行平板電極を用いる手法では、高々数cm幅のコンポジットフィルムしか作製できなかったが、本発明の製造方法を用いることによって、そのサイズを飛躍的に増大させるとともに、ムラ無く均一なフィルムが作製できた。図11(b)は、作製したCNTナノコンポジットフィルムの顕微鏡像であり、多層カーボンナノチューブの繊維束が電界の方向に並んでいる様子が観察された。この多層カーボンナノチューブ繊維束は、電界中でCNTが電界の方向に配向するとともにCNT 同士が引きつけ合い繊維状に凝集しているためと推察される。図11(c)は、15cm角のテンパックス(登録商標)ガラス板を揺動させなかったときのCNTナノコンポジットフィルムの様子を示す。この場合には、CNTナノコンポジットフィルム上で電極線の位置に相当する部分が白くなった。図11(d)および(e)は、図11(c)の拡大図である。電極線の間を観察した図11(d)では均一に配向しているが、電極線周辺を拡大した図11(e)では配向が均一でないことがはっきりと分かる。これは、電極線近傍では電界の傾きが大きくなるために、その傾きに沿ってCNT が移動したためであると推察される。これらの結果から、上記揺動動作によって、フィルムの面方向に沿った配向性を有意に高められることが示された。
【0081】
(実施例10)
熱伝導率の測定
上述の実施例9ではカーボンナノチューブとして多層カーボンナノチューブを使用し、各添加材料(ナノチューブまたはナノ粒子)の添加量は0.5wt%以下で実施したが、本発明はこれらの条件に限定されるものではない。そこで、本実施例では、上述の実施例9に記載した装置および方法に従って、カーボンナノチューブのうち単層カーボンナノチューブの場合や、添加量をさらに増量させたナノ粒子の場合について熱伝導率を測定した。
【0082】
(1)測定条件
熱伝導率測定:迅速熱伝導率計(京都電子工業、QTM-500)
母材:紫外線硬化性樹脂(TESK社、A-1669)
【0083】
(2)測定対象
-1)単層カーボンナノチューブ(Sigma-Aldrich社、704113)
実験条件:印加電界:3.6kV/cm、4kHz、カーボンナノチューブ濃度:0.05wt%
粒子サイズ:O.D.×I.D.×L=10-30nm×3-10nm×1-10μm
-2)酸化アルミニウム(Sigma-Aldrich社、551643)
実験条件:印加電界:3.6kV/cm、4kHz、添加濃度:5wt%
粒子サイズ:2-4nm×200-400nm
-3)二酸化ケイ素(Sigma-Aldrich社、637238)
実験条件:印加電界:4kV/cm、4kHz、添加濃度:5wt%
粒子サイズ:10-20nm
【0084】
(3)測定結果
熱伝導率λ[W/mK]と、紫外線硬化性エポキシ樹脂に対する熱伝導率比(λ/λepoxy)に関する結果を以下に示す。このうち熱導電率比(λ/λepoxy)の結果を図10(b)に棒グラフで示す。これらの結果から、単層カーボンナノチューブの場合や、添加量をさらに増量させたナノ粒子の場合についても高い熱伝導率を有するフィルムが得られたことが分かった。
【0085】
【表2】
JP0005645173B2_000003t.gif
【符号の説明】
【0086】
1 絶縁板
1a 絶縁板支持部
2 櫛歯電極
3 支持体
4 交流電源
5 重合手段
6 搬送手段
7 滴下手段
8 引延手段
9 剥離手段
10 クランク・ディスク
10a 連接棒
10b スライダ
10c 支持部
10d モーター
10e モーターベース
10f 直流電源
P ポリマー前駆体
Z ナノチューブ
M 振動方向
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10