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明細書 :有機触媒によるポリエステル合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5858387号 (P5858387)
登録日 平成27年12月25日(2015.12.25)
発行日 平成28年2月10日(2016.2.10)
発明の名称または考案の名称 有機触媒によるポリエステル合成方法
国際特許分類 C08G  63/87        (2006.01)
C08G  63/60        (2006.01)
FI C08G 63/87
C08G 63/60
請求項の数または発明の数 12
全頁数 17
出願番号 特願2012-555708 (P2012-555708)
出願日 平成23年12月28日(2011.12.28)
国際出願番号 PCT/JP2011/080365
国際公開番号 WO2012/105149
国際公開日 平成24年8月9日(2012.8.9)
優先権出願番号 2011020592
優先日 平成23年2月2日(2011.2.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年9月10日(2014.9.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】高須 昭則
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査官 【審査官】藤井 勲
参考文献・文献 特開平10-045890(JP,A)
特開平10-330314(JP,A)
特開2000-302852(JP,A)
特許第3780581(JP,B2)
特表2006-515899(JP,A)
国際公開第2009/138589(WO,A1)
特表2010-519343(JP,A)
調査した分野 C08G 63/00 - 63/91
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式(I)で表される低級ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドを触媒として用いて、原料であるジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成する有機触媒によるポリエステル合成方法。
【化1】
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(一般式(I)中のRfは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(I)中のRfが、炭素数4~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項3】
ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを前記触媒として用いて、前記ポリエステルを合成するとともに、前記触媒を昇華させることによって、前記触媒を回収することを特徴とする請求項1または2に記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項4】
下記の一般式(II)で表される低級パーフルオロアルカンスルホン酸を触媒として用いて、原料であるジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成する有機触媒によるポリエステル合成方法。
【化2】
JP0005858387B2_000021t.gif

(一般式(II)中のRfは、炭素数~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項5】
塊状重合により前記ポリエステルを合成することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項6】
下記の一般式(II)で表される低級パーフルオロアルカンスルホン酸を触媒として用いて、原料であるジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成するとともに、塊状重合により前記ポリエステルを合成する有機触媒によるポリエステル合成方法。
【化2】
JP0005858387B2_000022t.gif

(一般式(II)中のRfは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項7】
前記ポリエステルとして脂肪族ポリエステルを合成することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項8】
前記ジオールとして化学式がHO-R-OH(Rは、直鎖、分岐鎖もしくは環状構造を有する脂肪族炭素骨格を示す。)で表されるものを用いるとともに、前記ジカルボン酸として、化学式がHOOC-R-COOH(Rは、直鎖、分岐鎖もしくは環状構造を有する脂肪族炭素骨格を示す。) またはその無水物で表されるものを用いることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシカルボン酸として乳酸を用いることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項10】
前記触媒の使用量を、前記原料に対して、0.0重量%超、2.6重量%以下とすることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載のポリエステル合成方法。
【請求項11】
35~85℃の温度で前記ポリエステルを合成することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
【請求項12】
数平均分子量が10000以上である前記ポリエステルを合成することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の有機触媒によるポリエステル合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機触媒を用いて、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを合成するポリエステル合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にポリエステルの合成にはジカルボン酸とジオールまたはヒドロキシカルボン酸の直接重合法が採用されているが、200~250℃等の非常に高温でエステル化をさせるのが一般的である。このため、環境低負荷が望まれ、低炭素化・省エネルギー化が課題とされる昨今の世界情勢から、反応の低温化が必要である。
【0003】
また、脂肪族ポリエステルにおいては、耐熱性に劣り、熱分解してしまうこともあることからも、200℃よりも低い低温での反応が必要となる。しかし、低温で反応させるためにはこの反応を効率よく触媒する触媒の検索が必須となるが、ほとんどのルイス酸触媒は、水をはじめとするプロトン性の化合物に対する安定性が非常に低く困難であった。
【0004】
近年、このような観点から触媒が開発され高分子量の脂肪族ポリエステルも製造されるにいたっている。たとえば、1,4-ブタンジオールとコハク酸等に触媒としてアセトアセトイル型亜鉛キレート化合物等を用いて脂肪族ポリエステルが合成され、市販されている(特許文献1、非特許文献1)。この例では、一旦分子量が15000程度のポリエステルを合成し、これをジイソシアネートを用いて結合して分子量が、35000程度のポリマーを得ているが、この高分子量の脂肪族ポリエステルを直接合成するに至っておらず、反応温度も200℃程度と高い。更に、最近ではジオールとジカルボン酸にスズジスタノキサン(非特許文献2)または、塩化ハフニウム・THF錯体(非特許文献3)を用いて分子量が、1-10万程度の脂肪族ポリエステルが合成されるに至っている。しかし、いずれも有機溶媒を用いる溶液重縮合法であった。最近では、深刻化する環境問題を背景に、有機溶媒やスズなどの重金属触媒の使用に対する法的な規制が大きくなってきている。
【0005】
本願発明者は、すでに、希土類トリフラートがカルボン酸とアルコールのエステル化を触媒することを見出しており、溶媒を用いない塊状重合により80℃の温度で高分子量と目される分子量1万のポリエステルを得ており、180℃では3万の分子量のポリエステルを合成している(特許文献2)。さらに、その触媒をポリスチレン樹脂に担持させることで、回収に分液操作を必要としない触媒の合成に成功している(特許文献3)。
【0006】
しかし、このとき用いた金属触媒が高価であるという欠点があった。このため、金属触媒よりも一般的に安価である非金属の有機触媒で、200℃よりも低温で高分子量のポリエステルを合成できることが望まれる。
【0007】
ちなみに、非金属の有機触媒を用いたポリエステル合成例として、p‐トルエンスルホン酸などのスルホン酸やリン酸などのリン化合物(非特許文献4)、またはスルホン酸・ホスフィン塩、スルホン酸・アミン塩(特許文献4)、窒素化合物(特許文献5)、さらに酵素を用いた例(非特許文献5)が挙げられる。これらのうち、含窒素有機化合物1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-メトキシイミダゾリジンを用いた場合では、250℃でポリエステル合成が可能であるが、従来の有機触媒を用いた場合よりも、反応のさらなる低温化が望まれ、さらに、ポリエステル合成に対する活性の向上が望まれる。
【0008】
また、スルホン酸に関しては、p-トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸を用いて120℃以上の温度でポリエステルを合成することが特許文献6の実施例に記載され、p-トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸を用いて100℃以上の温度でプレポリマーを合成した後、プレポリマーの固相重合によりポリエステルを得ることが特許文献7の実施例に記載されている。なお、特許文献6、7には、100℃よりも低温で高分子量のポリエステルを合成できたという事実は記載されていない。
【0009】
また、p-トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸を用いたエステル化反応が特許文献8の実施例に記載されている。
【0010】
一方で、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドが低分子エステル化合物の合成に高活性であることが報告されている(特許文献9)。しかし、これはポリエステル合成を目指したものではない。また、エステル化反応の繰り返しによりポリエステルは合成されるため、一般的に、低分子エステル化合物の合成で高活性な触媒が、ポリエステル合成でも高活性を示すとは限らない。
【0011】
なお、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドに関しては、その酸性度の強弱についての報告(非特許文献6)はあるが、ポリエステル合成の触媒として有効であることの報告はなされていない。
【0012】
同様に、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドに関しては、例えば、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドをアシル化反応の触媒として使用することが、特許文献10、11に記載されているが、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドがポリエステル合成の触媒として有効であることまでは記載されていない。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開平5-3952号公報
【特許文献2】特開2003-306535号公報
【特許文献3】特開2006-206653号公報
【特許文献4】国際公開第2007/145195号
【特許文献5】特開2007-169552号公報
【特許文献6】特開2002-53649号公報
【特許文献7】特許4392729号公報
【特許文献8】特表2009-501142号公報
【特許文献9】特開平10-330314号公報
【特許文献10】特許第3161689号公報
【特許文献11】特許第3780581号公報
【0014】

【非特許文献1】高分子42巻3月号251(1993)
【非特許文献2】Biomacromolecules 2001, 2, 1267-1270
【非特許文献3】Science 2000, 290, 1140-1142
【非特許文献4】Bull Chem Soc Jpn1995 68 2125
【非特許文献5】Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 1993 31 1221-1232
【非特許文献6】Journal of the American Chemical Society 1994 116 3047-3057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記点に鑑み、有機触媒によるポリエステル合成方法において、100℃よりも低温で高分子量のポリエステルを合成できるポリエステル合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、p-トルエンスルホン酸がポリエステル合成に有用であることから、酸性度の大きなプロトン酸であるビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドまたはパーフルオルアルカンスルホン酸に着眼し、これらを用いることでポリエステルの合成を行った。まず、この触媒を1.0mol%で等モル量の3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオールとアジピン酸の60℃での重縮合を試みたところ、12時間で数平均分子量15000を超えるポリエステルが得られ、さらに高分子量生成中に触媒の昇華が見られた。この発見をもとに触媒量、重合温度の最適化、昇華による触媒の回収および精製を行い、本発明を完成させた。
【0017】
即ち、本発明の第1の特徴は、下記の一般式(I)で表される低級ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドを触媒として用いて、原料であるジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成することにある。
【0018】
【化1】
JP0005858387B2_000002t.gif

【0019】
般式(I)中のRfは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基を示す
また、本発明の第2の特徴は、下記の一般式(II)で表される低級パーフルオロアルカンスルホン酸を触媒として用いて、原料であるジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成することにある(請求項4)この第2の特徴では、一般式(II)中のRfは、炭素数4~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基を示す。
また、本発明の第3の特徴は、下記の一般式(II)で表される低級パーフルオロアルカンスルホン酸を触媒として用いて、原料であるジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成するとともに、塊状重合によりポリエステルを合成することにある(請求項6)。この第3の特徴では、一般式(II)中のRfは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル基を示す。
【0020】
【化2】
JP0005858387B2_000003t.gif

【0021】
こで、一般式(I)、(II)中のRf基については、ポリエステル合成に対する活性の向上の観点では、炭素数が多いもの、すなわち、フッ素含有率が高く、酸性度が高いものであることが好ましいが、炭素数の増加に伴って有機触媒が高価となるため、炭素数を1~10としている(第2の特徴では、炭素数を4~10としている)
【0022】
本発明の第の特徴は、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを触媒として用いた場合、ジカルボン酸とジオールの重縮合やヒドロキシカルボン酸の重縮合に有効となる酸触媒の回収に、昇華を利用できるところにある(請求項3)。従来の酸触媒では分液操作が必要であり、かつ分液により得られた触媒は純粋なものではない可能性があるが、これによると、昇華操作により容易かつ純粋な触媒の除去・回収が可能である。

【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを合成する場合に、100℃よりも低温において高分子量のポリエステルを合成できる。上記の通り、p-トルエンスルホン酸がポリエステル合成に有用であることは周知であるが、本発明の触媒は、汎用酸触媒のp-トルエンスルホン酸と比べ、ポリエステル合成において高い活性を示した(後述の実施例1~11と比較例1を参照)。
【0024】
本発明によれば、後述の実施例で明らかにするが、一例として、60℃の塊状重合で高分子量と目される10000以上の分子量のポリエステルを得ることができた。このような低温での合成が可能であり、環境低負荷が望まれ、低炭素化・省エネルギー化が課題とされる中で、本発明ではそれらが大きく改善できた。
【0025】
ビス(ノナフルオロブタンスルホンニル)イミドについては、昇華により回収または精製可能なため、分液操作の必要がなく容易に回収または精製・再利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1で合成したポリエステルのプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1の合成により得られると想定するポリエステルの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明で用いる上記一般式(I)、(II)で表される触媒において、一般式(I)、(II)中のRfは、炭素数1~10の直鎖または分岐鎖を有する低級パーフルオロアルキル基を示し、具体的には、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、iso-ヘプタフルオロプロピル基、n-ノナフルオロブチル基、iso-ノナフルオロブチル基、sec-ノナフルオロブチル基、tert-ノナフルオロブチル基、n-ウンデカフルオロペンチル基、n-トリデカフルオロヘキシル基、n-ペンタデカフルオロヘプチル基、n-ヘプタデカフルオロオクチル基、n-ノナデカフルオロノニル基、n-ヘンイコサフルオロデシル基などを挙げることができる。

【0028】
ただし、ポリエステル合成においてより高い活性を得るためには、一般式(I)、(II)中のRfが炭素数4~10の直鎖または分岐鎖を有する低級パーフルオロアルキル基であることが好ましい。

【0029】
本発明において合成されるポリエステルに特に制限はなく、合成されたポリマーまたは化合物に主結合として、本発明の触媒の作用により生成されたエステル結合が含まれておればよく、エステル結合以外の結合が含まれることを除外するものではない。このポリエステルは、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸により生成すれば、芳香族、脂肪族またはこれらの混合のいずれでもよい。このポリエステルの数平均分子量(Mn)は、実用的には7000以上、特に10000以上であることが望ましい。

【0030】
このポリエステルに用いるジオール、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸については特に制限がないが、脂肪族ポリエステルの合成において、ジオールとジカルボン酸を原料として用いるときでは、ジオールとして、化学式がHO-R-OH(Rは、直鎖、分岐鎖もしくは環状構造を有する脂肪族炭素骨格を示す。)で表されるもの、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール等を用い、ジカルボン酸として、化学式がHOOC-R-COOH(Rは、直鎖、分岐鎖もしくは環状構造を有する脂肪族炭素骨格を示す。)またはその無水物で表されるもの、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、などやこれらの無水物、例えば、無水コハク酸、無水アジピン酸等を用いることができる。また、複数種のこれらを用いてもよい。

【0031】
脂肪族ポリエステルの合成において、ヒドロキシカルボン酸を原料として用いるときでは、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸などを用いることができる。また、複数種のこれらを用いてもよい。

【0032】
触媒の使用量は、原料、すなわち、投入するジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸に対して、0重量%超、2.6重量%以下、もしくは、0mol%超、1.0mol%以下とすることができる。

【0033】
また、ジオールとジカルボン酸の投入量は、ほぼ化学量論比とすることが好ましい。重合においては、上記の成分以外に溶媒、酸化防止剤、紫外吸収剤、結晶核剤を適宜使用してもよい。

【0034】
ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸の直接重合法によりポリエステルを合成するのであれば、重合形式はいかなるものであってもいいが、一般式(I)、(II)で表される触媒には溶媒を用いない塊状重合が適している。反応圧は、重合反応形式により当該分野で適切な圧を用いればよいが、塊状重合の場合には、脱水を促進するため0.3-3.0mmHgが好ましい。

【0035】
反応温度は、脱水可能な温度および触媒の活性が適切となる温度で行うことが好ましい。具体的には、脱水可能な温度は35℃以上であることや、後述の実施例での反応温度からわかるように、例えば、反応温度を35℃~85℃とすることが可能である。特に、本発明では、反応温度を80℃以下としたり、60℃以下としたりすることも可能である。

【0036】
一般式(I)、(II)で表される触媒によれば、塊状重合により低温(60℃)でポリエステル反応を触媒作用し、分子量が10000以上のポリエステルを合成できる。また、後述の実施例で用いた触媒の価格は、2011年2月現在で126~3660円/gであり、特許文献2に記載の金属触媒の価格は、2011年2月現在で10000円/g以上であることから、本発明によれば、金属触媒に比べて安価な有機触媒を用いることができる。

【0037】
加えて、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドに関しては、触媒が加熱・減圧操作により昇華されるため、分液操作が必要なく触媒除去が簡便である。さらに、昇華しやすい性質を持つため、触媒の精製に利用できる。

【0038】
また、一般式(I)、(II)で表される触媒は非金属触媒であるため、合成されたポリエステルが生命体やマイクロ電子デバイスに与える影響はない。それらの理由から工業的応用範囲がより広がると考えられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1~11および比較例1では、ジカルボン酸として、下記式(III)で表されるアジピン酸(ナカライテスク製「ADA」と略す。)を用い、ジオールとして、下記式(IV)で表される3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール(和光純薬製「MPD」と略す。)を用いた。
【実施例】
【0041】
【化3】
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【実施例】
【0042】
【化4】
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【実施例】
【0043】
触媒としては、実施例1、2では下記式(V)で表されるビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成製「Nf2NH」と略す。)を用い、実施例3、4、5では下記式(VI)で表されるノナフルオロブタンスルホン酸(ALDRICH製「NfOH」と略す。)を用い、実施例6、7、8では下記式(VII)で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(ALDRICH製「Tf2NH」略す。)を用い、実施例9、10、11では下記式(VIII)で表されるトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業製「TfOH」と略す。)を用いた。
【実施例】
【0044】
なお、「Nf2NH」、「Tf2NH」は、それぞれ、一般式(I)中のRf基の炭素数が4、1のものであり、「NfOH」、「TfOH」は、それぞれ、一般式(II)中のRf基の炭素数が4、1のものである。
【実施例】
【0045】
【化5】
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【実施例】
【0046】
【化6】
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【実施例】
【0047】
【化7】
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【実施例】
【0048】
【化8】
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【実施例】
【0049】
また、比較例1、2では、触媒として、p-トルエンスルホン酸(ナカライテスク製「PTSA」と略す。)を用いた。
【実施例】
【0050】
また、実施例12~16では、触媒として式(V)で表されるNf2NHを用いた。
【実施例】
【0051】
実施例12では、ジカルボン酸として、下記式(IX)で表されるドデカン二酸(東京化成工業製)を用い、ジオールとして、下記式(X)で表される1,12-ドデカンジオール(東京化成工業製)を用いた。
【実施例】
【0052】
実施例13では、ジカルボン酸として、式(III)で表されるADAを用い、ジオールとして、下記式(XI)で表されるジエチレングリコール(和光純薬製)を用いた。
【実施例】
【0053】
実施例14では、ジカルボン酸として、式(III)で表されるADAを用い、ジオールとして、下記式(XII)で表されるトリエチレングリコール(和光純薬製)を用いた。
【実施例】
【0054】
実施例15および比較例2では、ジカルボン酸として、下記式(XIII)で表されるマレイン酸(ナカライテスク製)を用い、ジオールとして、下記式(XIV)で表される4,4-イソプロピリデン(2-フェノキシエタノール)(和光純薬製)を用いた。
【実施例】
【0055】
実施例16では、ジカルボン酸として、下記式(XV)で表されるフタル酸(ナカライテスク製)を用い、ジオールとして、式(IV)で表されるMPDを用いた。
【実施例】
【0056】
【化9】
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【実施例】
【0057】
【化10】
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【実施例】
【0058】
【化11】
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【実施例】
【0059】
【化12】
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【実施例】
【0060】
【化13】
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【実施例】
【0061】
【化14】
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【実施例】
【0062】
【化15】
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【実施例】
【0063】
(実施例1~11および比較例1)
攪拌機を備えた容積が10mLのナスフラスコに、表1に示すジオール、ジカルボン酸および触媒を入れた。このとき、ジオールおよびジカルボン酸の使用量は7.0ミリモルずつであり、触媒の使用量(原料に対する濃度)は、表1に示す通りであり、0.1~1.0wt%の範囲内もしくは0.10~0.88mol%の範囲内である。
【実施例】
【0064】
そして、80℃で系の均一化を行った後、系を60℃にして、徐々に減圧していき、ジオールとジカルボン酸との直接重縮合を行い、最終的には系を1mmHg以下で減圧しつつ生成する水分を除去した。具体的には、0.3mmHgの減圧下、60℃で18時間加熱した。その結果、赤褐色ワックス状の重合体が得られた。
【実施例】
【0065】
表1に、得られた重合体の分子量Mnと、分子量分布(Mw/Mn)とを示す。分子量、分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定した結果である。また、図1に、実施例1で合成したポリエステルのプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示し、図2に、想定するポリエステルの構造を示す。図1、2中のa-fはNMRの帰属を示している。
【実施例】
【0066】
【表1】
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【実施例】
【0067】
表1に示されるように、実施例1~11では、分子量10000以上のポリエステルを合成することができ、特に、実施例1、4、10では、分子量20000程度のポリエステルを合成することができた。
【実施例】
【0068】
これに対して、比較例1で得られたポリエステルの分子量は、6000程度であった。よって、実施例1~11と比較例1とから、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドまたはパーフルオロアルカンスルホン酸は、0.1mol%といった低触媒濃度において、汎用酸触媒であるPTSAと比べて、高分子量体のポリエステル合成が可能であることがわかる。
【実施例】
【0069】
また、実施例1と6とを比較することにより、一般式(I)の触媒において、フッ素含有率が大きなものほど、活性が高いことが分かる。同様に、実施例3と9とを比較することにより、一般式(II)の触媒において、フッ素含有率が大きなものほど、活性が高いことが分かる。
【実施例】
【0070】
なお、従来の有機触媒を用いたポリエステル合成においては、本実施例のように、有機触媒としてフッ素含有イミド化合物を用いた例はなく、さらにノナフルオロブタンスルホン酸のようにフッ素含有量を上昇させることにより、ポリエステル合成に対する活性の向上を目指した例はない。また、実施例1および2において、ポリエステル合成中に触媒の昇華がみられ、触媒を回収することができた。
【実施例】
【0071】
なお、本実施例では、原料としてジカルボン酸とジオールとを用いたが、原料としてヒドロキシカルボン酸を用いた場合においても、本実施例と同様に、低温で高分子量のポリエステルの合成が期待できる。一般的に、原料としてジカルボン酸とジオールとを用いたポリエステル合成に対して高活性な触媒は、原料としてヒドロキシカルボン酸を用いたポリエステル合成においても高活性を示すからである。
(実施例12~14)
攪拌機を備えた容積が10mLのナスフラスコに、表2に示すジオール、ジカルボン酸および触媒を入れた。このとき、ジオールおよびジカルボン酸の使用量は7.0mmolずつであり、触媒の使用量(原料に対する濃度)は、表2に示す通り、0.1mol%もしくは0.5mol%である。
【実施例】
【0072】
そして、実施例12は90℃、実施例13、14は80℃で系の均一化を行った後、系を実施例12は85℃、実施例13、14は60℃にして、徐々に減圧していき、ジオールとジカルボン酸との直接重縮合を行い、最終的には系を1mmHg以下で減圧しつつ生成する水分を除去した。具体的には、0.3mmHgの減圧下、各温度で表2に示す時間加熱した。その結果、各重合体が得られた。
【実施例】
【0073】
表2に、得られた重合体の分子量Mnと、分子量分布(Mw/Mn)とを示す。分子量、分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定した結果である。
【実施例】
【0074】
【表2】
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【実施例】
【0075】
表2に示されるように、Nf2NHはADAとMPDの組み合わせ以外のモノマーを用いたポリエステル合成においても60℃または85℃といった低温で10000程度またはそれ以上の高分子量体のポリエステルを合成できた。
【実施例】
【0076】
(実施例15、16および比較例2)
攪拌機を備えた容積が10mLのナスフラスコに、表3に示すジオール、ジカルボン酸および触媒を入れた。このとき、ジオールおよびジカルボン酸の使用量は5.0mmolずつであり、触媒の使用量(原料に対する濃度)は、表3に示す通り、0.5mol%もしくは1.0mol%である。
【実施例】
【0077】
そして、実施例15、比較例2は100℃で、実施例16は110℃で系の均一化を行った後、系を80℃にして、徐々に減圧していき、ジオールとジカルボン酸との直接重縮合を行い、最終的には系を1mmHg以下で減圧しつつ生成する水分を除去した。具体的には、0.3mmHgの減圧下、80℃で表3に示した時間加熱した。その結果、各重合体が得られた。
【実施例】
【0078】
表3に、得られた重合体の分子量Mnと、分子量分布(Mw/Mn)とを示す。分子量、分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定した結果である。
【実施例】
【0079】
【表3】
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【実施例】
【0080】
表3に示されるように、Nf2NHを用いて芳香族ポリエステルの合成ができた。実施例15、16では、80℃といった低温で分子量7000以上のポリエステルを合成することができた。
【実施例】
【0081】
これに対して、比較例2で得られたポリエステルの分子量は、2000程度であった。よって、実施例15と比較例2とから、脂肪族ポリエステル合成の場合と同様に、汎用酸触媒であるPTSAと比べて、高分子量体の芳香族ポリエステル合成が可能であることがわかる。
図面
【図1】
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【図2】
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