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明細書 :グラフェンの製造方法、基板上に製造されたグラフェン、ならびに、基板上グラフェン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5152945号 (P5152945)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
発明の名称または考案の名称 グラフェンの製造方法、基板上に製造されたグラフェン、ならびに、基板上グラフェン
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
請求項の数または発明の数 16
全頁数 41
出願番号 特願2012-525791 (P2012-525791)
出願日 平成24年2月27日(2012.2.27)
国際出願番号 PCT/JP2012/054810
国際公開番号 WO2012/118023
国際公開日 平成24年9月7日(2012.9.7)
優先権出願番号 2011042781
優先日 平成23年2月28日(2011.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月30日(2012.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野田 優
【氏名】高野 宗一郎
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100110135、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 裕一郎
審査官 【審査官】若土 雅之
参考文献・文献 特開2009-143799(JP,A)
特開2010-089996(JP,A)
国際公開第2010/001686(WO,A1)
国際公開第2010/043716(WO,A2)
姜憲求, 野田優,金属誘起結晶化による炭素薄膜からのグラフェン作製,化学工学会関東支部大会研究発表講演要旨集,日本,化学工学会関東支部,2010年 7月19日,Vol. 2010,p. 79
調査した分野 C01B 31/00-31/36
H01L 29/786
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属に炭素が固溶した固溶体が形成可能な固溶温度への加熱を行って、当該固溶体からなる固溶体層を基板上に形成する形成工程、
前記固溶温度への加熱を維持したまま前記固溶体層から前記金属を除去する除去工程
を備えることを特徴とするグラフェンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記形成工程では、前記金属の酸化物を還元可能な還元剤を供給し、
前記除去工程では、エッチングガスを供給して、前記固溶体層に含まれる前記金属を除去する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法であって、前記形成工程では、
前記基板上に炭素を含む初期層を形成し、
前記形成された初期層上に前記金属を含む金属層を形成し、
前記形成された初期層と、前記形成された金属層と、を、前記固溶温度に加熱する
ことにより、前記固溶体層を形成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法であって、前記形成工程では、
前記基板上に前記金属を含む金属層を形成し、
前記形成された金属層上に炭素を含む初期層を形成し、
前記形成された初期層と、前記形成された金属層と、を、前記固溶温度に加熱する
ことにより、前記固溶体層を形成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の製造方法であって、前記形成工程では、
前記基板上に前記金属と炭素との混合体からなる初期層を形成し、
前記形成された初期層を前記固溶温度に加熱する
ことにより、前記固溶体層を形成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記形成工程において、前記初期層を所定のパターンで形成することにより、前記グラフェンを当該所定のパターンとする
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項3から5のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記形成工程において、前記初期層を、前記基板の表面の一部または全部を覆うように形成することにより、前記グラフェンを当該基板の表面の一部または全部を覆う均一な連続膜とする
ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記固溶体層における前記炭素の濃度分布のうち、前記基板の表面に平行な方向の濃度分布を不均一とすることにより、前記基板の表面に平行な方向に前記グラフェンを成長させる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項3または4に記載の製造方法であって、
前記形成される初期層もしくは前記形成される金属層のいずれか少なくとも一方の厚さを不均一とすることにより、前記固溶体層における前記炭素の濃度分布のうち、前記基板の表面に平行な方向の濃度分布を不均一として、前記基板の表面に平行な方向に前記グラフェンを成長させる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法であって、
前記形成される金属層の厚さに勾配を設けることにより、当該勾配の方向のうち前記基板の表面に平行な成分の方向に前記グラフェンを成長させる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法であって、
前記金属層は、前記基板の表面に平行に広がる第1領域と、前記基板の表面に平行に広がる第2領域と、が、くびれを介して接する形状であり、前記第1領域は、前記金属層の厚さが、前記第2領域に比べて薄く、前記第2領域は、前記くびれから遠ざかると前記金属層の厚さが厚くなるように、前記金属層の厚さに勾配が設けられる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項2に記載の製造方法であって、
前記供給されるエッチングガスの前記基板の表面に平行な方向の濃度分布を不均一とすることにより、前記基板の表面に平行な方向に前記グラフェンを成長させる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項2に記載の製造方法であって、
前記基板は、二酸化ケイ素基板、もしくは、二酸化ケイ素膜を表面に付したケイ素基板であり、
前記金属は鉄、ニッケル、コバルトもしくはこれらを含む合金であり、
前記エッチングガスは塩素である
ことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
基板の表面に平行な第1の方向に成長し、当該表面に直接接する線状グラフェンを、請求項8に記載の製造方法により製造し、
前記線状グラフェンから前記表面に平行な第2の方向に成長し、当該表面に直接接する面状グラフェンを、請求項8に記載の製造方法により製造する
ことを特徴とするグラフェンの製造方法。
【請求項15】
基板上グラフェンであって、
当該基板上グラフェンは、前記基板の表面に直接接し、
当該基板上グラフェンは、前記表面に平行な第1の方向に沿う結晶粒界を複数有し、
当該基板上グラフェンは、前記表面に平行な第2の方向に沿う結晶粒界を複数有し、
当該基板上グラフェンは、前記結晶粒界に囲まれる領域の内部のそれぞれにおいて単結晶であり、
前記第1の方向と、前記第2の方向と、は、直交し、
前記第1の方向に沿う結晶粒界の間隔は一定であり、
前記第2の方向に沿う結晶粒界の間隔は一定である
ことを特徴とする基板上グラフェン。
【請求項16】
請求項15に記載の基板上グラフェンであって、
前記基板は、単層もしくは多層であることを特徴とする基板上グラフェン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの製造方法、基板上に製造されたグラフェン、ならびに、基板上グラフェンに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、炭素原子がsp2結合で六角形状に並び、単層のシート状の結晶をなすもの、もしくはこのシートが複数積み重なったものをいい、優れた電気的特性、機械的強度を示すことから、各種デバイスへの応用が期待されている。
【0003】
たとえば、グラフェンが有する導電性を、電子素子、半導体素子、電子回路、電気回路、集積回路等に利用するための研究が進められている。
【0004】
すなわち、グラフェンを、液晶ディスプレイ、タッチスクリーン、太陽電池などの透明電極として利用したり、半導体集積回路やフレキシブル集積回路における配線、電極、端子として利用したり、電界効果トランジスタのソース、ドレイン間の電子や正孔の移動チャネルとして利用したり、などの応用が考えられる。
【0005】
このためには、グラフェンを各種の基板(二酸化ケイ素基板や、二酸化ケイ素膜が表面に付されたケイ素基板等のほか、絶縁体、半導体、導体の多層構造からなるものを含む。)上で成長させる必要がある。そこで、基板上グラフェンの製造技術が種々提案されている。
【0006】
たとえば、非特許文献1では、基板上に触媒としてニッケル薄膜を形成し、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;CVD)法により炭素をニッケル薄膜に固溶させた後、急冷してニッケル薄膜上にグラフェンを析出させた後、ニッケル薄膜をエッチングして、グラフェンを他の基板に転写することにより、パターン形状を有するグラフェンを基板上に形成して、透明電極とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Keun Soo Kim et al., Large-scale pattern growth of graphene films for stretchable transparent electrodes, Nature,Vol 457,pp.706-710, Macmillan Publishers Limited.,2009年2月5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一旦グラフェンが形成されてしまうと、触媒の金属はグラフェンと基板に挟まれることとなるため、金属の除去には、多大な手間を要し、完全な除去が難しいことも多い。
【0009】
また、グラフェンを転写する際に欠陥が生じてしまうため、微細なパターンの形成は難しい。
【0010】
したがって、基板の表面上に触媒金属を残さずに、直接基板の表面に接するグラフェンを製造する技術が強く求められている。
【0011】
また、従来の技術により製造されるグラフェンでは、触媒金属から結晶がランダムに成長するため、グラフェンは、ランダムに結晶粒界が生じた不均質な多結晶膜となってしまう。
【0012】
したがって、グラフェンの成長を制御することにより結晶粒界が生じる箇所を所望の箇所に限定し、できるだけ大きな単結晶のグラフェンを製造する技術が求められている。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、グラフェンの製造方法、基板上に製造されたグラフェン、ならびに、基板上グラフェンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点に係るグラフェンの製造方法は、金属に炭素が固溶した固溶体が形成可能な固溶温度への加熱を行って、当該固溶体からなる固溶体層を当該基板上に形成する形成工程、当該固溶温度への加熱を維持したまま当該固溶体層から当該金属を除去する除去工程を備えるように構成する。
【0015】
ここで、固溶体(solid solution)とは、複数の物質が溶け合って、全体が均一の固相となっているものをいう。一般に、固溶体の主成分をなす物質は、当該固溶体の溶媒(solvent)と呼ばれ、それ以外の物質は、当該固溶体の溶質(solute)と呼ばれる。
【0016】
本発明では、金属を溶媒とし、炭素を溶質とする固溶体を形成するが、このような固溶体が形成可能な温度には範囲がある。そこで、この範囲の温度を固溶温度という。固溶温度は、材料の組み合わせや溶媒の組成によって固溶温度の下限や上限が決まる。
【0017】
ここで、固溶体を加熱したまま金属を除去することにより、固溶体に固溶できなくなった炭素が高いモビリティを保ったまま析出(precipitate)して、基板上にグラフェンが成長(grow)することとなる。この際に、金属除去によって最初に核発生(nucleate)したグラフェンに、高いモビリティを有する炭素が移動して取り込まれるので、新たなグラフェンの核発生は抑制され、グラフェンの結晶粒径が大きくなる。
【0018】
なお、本発明において固溶体の溶媒として用いられる金属は、単一の金属元素からなる純金属、複数の金属元素からなる合金のほか、金属元素と非金属元素からなる合金を利用することも可能である。すなわち、固溶体の溶質としての炭素が溶け込むような溶媒であって、その主成分として金属を含むものを、固溶体の溶媒として利用することが可能である。
【0019】
また、本発明の製造方法において、当該形成工程では、当該金属の酸化物を還元可能な還元剤を供給し、当該除去工程では、エッチングガスを供給して、当該固溶体層に含まれる当該金属を除去するように構成することができる。本製造方法によって固溶体層に含まれている金属がすべて除去されるまで、十分な時間エッチングを施すと、グラフェンは、間に金属を介さずに、基板に接することとなる。なお、種々の原因により、金属の酸化物が固溶体層に生じてしまうことがありうるが、本製造方法では、還元剤を供給することにより、金属の酸化物が基板上に残留してしまうことを防止することで、良好なグラフェンが得られる。
【0020】
また、本発明の製造方法において、当該形成工程では、当該基板上に炭素を含む初期層を形成し、当該形成された初期層上に当該金属を含む金属層を形成し、当該形成された初期層と、当該形成された金属層と、を、当該固溶温度に加熱することにより、当該固溶体層を形成するように構成することができる。すなわち、本製造方法では、初期層は、炭素のみ、もしくは、炭素を含む素材(たとえば、炭素と金属の混合体等)からなり、金属層は、金属のみ、もしくは、金属を含む素材(たとえば、金属の合金や、金属と非金属の合金等)からなる。まず初期層が形成され、次に金属層が形成される。
【0021】
また、本発明の製造方法において、当該形成工程では、当該基板上に当該金属を含む金属層を形成し、当該形成された金属層上に炭素を含む初期層を形成し、当該形成された初期層と、当該形成された金属層と、を、当該固溶温度に加熱することにより、当該固溶体層を形成するように構成することができる。すなわち、本製造方法では、上記態様と同様に、初期層は、炭素のみ、もしくは、炭素を含む素材(たとえば、炭素と金属の混合体等)からなり、金属層は、金属のみ、もしくは、金属を含む素材(たとえば、金属の合金や、金属と非金属の合金等)からなる。ただし、本製造方法では、まず金属層が形成され、次に初期層が形成される。
【0022】
また、本発明の製造方法において、当該形成工程では、当該基板上に当該金属と炭素との混合体からなる初期層を形成し、当該形成された初期層を当該固溶温度に加熱することにより、当該固溶体層を形成するように構成することができる。すなわち、本製造方法では、上記態様とは異なり、初期層として、炭素と金属の混合体を用いる。すなわち、炭素と金属の混合体を加熱することによって、金属に炭素が溶け込んだ固溶体層を形成するのである。本製造方法では、単独の金属層の形成は不要である。
【0023】
また、本発明の製造方法において、当該形成工程において、当該初期層を所定のパターンで形成することにより、当該グラフェンを当該所定のパターンとするように構成することができる。
【0024】
また、本発明の製造方法において、当該形成工程において、当該初期層を、当該基板の表面の一部または全部を覆うように形成することにより、当該グラフェンを当該基板の表面の一部または全部を覆う均一な連続膜とするように構成することができる。
【0025】
また、本発明の製造方法において、当該固溶体層における当該炭素の濃度分布のうち、当該基板の表面に平行な方向の濃度分布を不均一とすることにより、当該基板の表面に平行な方向に当該グラフェンを成長させるように構成することができる。なお、当該基板の表面に平行でない方向の濃度分布については、均一でも良いし不均一でも良い。
【0026】
また、本発明の製造方法において、当該形成される初期層もしくは当該形成される金属層のいずれか少なくとも一方の厚さを不均一とすることにより、当該固溶体層における当該炭素の濃度分布のうち、当該基板の表面に平行な方向の濃度分布を不均一として、当該基板の表面に平行な方向に当該グラフェンを成長させるように構成することができる。本発明においては、加熱によって初期層中の炭素が金属層の金属に固溶して、初期層と金属層から固溶体層が形成される。この際に、固溶体層の形成の際の炭素は、サブマイクロメーターの距離を移動して基板と垂直方向に混合するものの、数マイクロメーター以上に移動して基板平行方向に混合することがないように、加熱条件を調整することが望ましい。このような調整を行うことで、たとえば、初期層の厚さを一定とし金属層の厚さを不均一とした場合には、金属層が厚かった場所では固溶体層の炭素濃度は低くなり、金属層が薄かった場所では固溶体層の炭素濃度は高くなる。このほか、初期層の厚さを不均一とし金属層の厚さを一定とした場合には、初期層が厚かった場所では固溶体層の炭素濃度は高くなり、初期層が薄かった場所では固溶体層の炭素濃度は低くなる。金属が除去されると、グラフェンは、炭素濃度が高い箇所から低い箇所に向かって成長する。なお、当該基板の表面に平行でない方向の濃度分布については、均一でも良いし不均一でも良い。
【0027】
また、本発明の製造方法において、当該形成される金属層の厚さに勾配を設けることにより、当該勾配の方向のうち当該基板の表面に平行な成分の方向に当該グラフェンを成長させるように構成することができる。本発明は、上記発明の好適実施形態に係るものであり、金属層の厚さに勾配を設けるという工法によって、製造コストの低減等を実現するものである。
【0028】
また、本発明の製造方法において、前記金属層は、前記基板の表面に平行に広がる第1領域と、前記基板の表面に平行に広がる第2領域と、が、くびれを介して接する形状であり、前記第1領域は、前記金属層の厚さが、前記第2領域に比べて薄く、前記第2領域は、前記くびれから遠ざかると前記金属層の厚さが厚くなるように、前記金属層の厚さに勾配が設けられるように構成することができる。
【0029】
また、本発明の製造方法において、当該供給されるエッチングガスの当該基板の表面に平行な方向の濃度分布を不均一とすることにより、当該基板の表面に平行な方向に当該グラフェンを成長させるように構成することができる。なお、当該基板の表面に平行でない方向の濃度分布については、均一でも良いし不均一でも良い。
【0030】
また、本発明の製造方法において、当該基板は、単層もしくは多層であるように構成することができる。
【0031】
また、本発明の製造方法において、当該基板は、二酸化ケイ素基板、もしくは、二酸化ケイ素膜を表面に付したケイ素基板であり、当該金属は鉄、ニッケル、コバルトもしくはこれらを含む合金であり、当該エッチングガスは塩素であるように構成することができる。
【0032】
本発明の第2の観点に係るグラフェンの製造方法は、基板の表面に平行な第1の方向に成長し、当該表面に直接接する線状グラフェンを、上記の製造方法により製造し、当該線状グラフェンから当該表面に平行な第2の方向に成長し、当該表面に直接接する面状グラフェンを、上記の製造方法により製造するように構成する。
【0033】
本発明の第3の観点に係るグラフェンは、上記の製造方法により基板上に製造されるように構成する。
【0034】
本発明の第4の観点に係る基板上グラフェンにおいて、当該基板上グラフェンは、当該基板の表面に直接接し、当該基板上グラフェンの当該表面に平行な第1の方向における結晶粒径は、当該基板上グラフェンの当該表面に平行な他のいずれの方向における結晶粒径よりも大きく、当該基板上グラフェンの当該第1の方向における結晶粒径は、当該グラフェンの当該表面に垂直な方向における結晶粒径よりも大きいように構成する。
【0035】
本発明の第5の観点に係る基板上グラフェンにおいて、当該基板上グラフェンは、当該基板の表面に直接接し、当該基板上グラフェンは、当該表面に平行な第1の方向に沿う結晶粒界を複数有し、当該基板上グラフェンは、当該表面に平行な第2の方向に沿う結晶粒界を複数有し、当該基板上グラフェンは、当該結晶粒界に囲まれる領域の内部のそれぞれにおいて単結晶であるように構成する。
【0036】
また、本発明の基板上グラフェンにおいて、当該第1の方向と、当該第2の方向と、は、直交し、当該第1の方向に沿う結晶粒界の間隔は一定であり、当該第2の方向に沿う結晶粒界の間隔は一定であるように構成することができる。
【0037】
また、本発明の基板上グラフェンにおいて、当該基板は、単層もしくは多層であるように構成することができる。
【0038】
また、本発明の基板上グラフェンにおいて、当該基板上グラフェンの厚さは300ナノメートル以下であり、当該基板上グラフェンの当該第1の方向における結晶粒径は、30マイクロメートル以上であるように構成することができる。
【0039】
また、本発明の基板上グラフェンにおいて、当該基板上グラフェンは、所定のパターン形状を有し、当該パターン形状のライン幅は、10マイクロメートル以下であるように構成することができる。
【0040】
また、本発明の基板上グラフェンにおいて、当該所定のパターン形状は、電流の経路もしくは電圧の印加のための配線、電極、端子、または、電子もしくは正孔の移動のためのチャネルを形成するように構成することができる。
【0041】
このほか、上記の基板上グラフェンと、当該基板上グラフェンが直接接する当該基板と、を備えるグラフェンデバイスを構成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、グラフェンの製造方法、基板上に製造されたグラフェン、ならびに、基板上グラフェンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】本実施形態に係る基板上グラフェンの第1の例を示す平面図である。
【図1B】本実施形態に係る基板上グラフェンの第1の例を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る基板上グラフェンの第2の例を示す平面図である。
【図3】本実施形態に係る基板上グラフェンの第3の例を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る基板上グラフェンを利用した電界効果トランジスタの断面を表す説明図である。
【図5A】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5B】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5C】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5D】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5E】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5F】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5G】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5H】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5I】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5J】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5K】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5L】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5M】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5N】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図5O】グラフェンデバイスが製造される過程を説明するための断面図である。
【図6A】線状グラフェンならびにその成長方向を説明する平面図である。
【図6B】面状グラフェンならびにその成長方向を説明する平面図である。
【図7A】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図7B】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図7C】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図7D】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図7E】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図7F】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8A】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8B】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8C】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8D】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8E】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8F】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8G】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図8H】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9A】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9B】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9C】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9D】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9E】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9F】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9G】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9H】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図9I】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図10A】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図10B】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図10C】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図10D】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図10E】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11A】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11B】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11C】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11D】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11E】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11F】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図11G】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図12A】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図12B】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図12C】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図12D】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図12E】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図12F】グラフェンデバイスの製造方法の過程を説明する説明図である。
【図13A】固溶体層を形成した後エッチングを行わずに急冷した場合のラマンスペクトルを表すグラフである。
【図13B】本実施形態の製造方法を用いた場合のラマンスペクトルを表すグラフである。
【図14】種々の厚さの金属層を採用した場合の、アニール、3分エッチング、30分エッチングした上で冷却した後のラマンスペクトルの様子を示すグラフである。
【図15A】諸元Aで製造したパターンを有するグラフェンの原子間力顕微鏡像を示す説明図である。
【図15B】諸元Bで製造したパターンを有するグラフェンの原子間力顕微鏡像を示す説明図である。
【図16A】諸元Bで製造したパターンを有するグラフェンの原子間力顕微鏡像を示す拡大図である。
【図16B】諸元Bで製造したパターンを有するグラフェンの電流マップを示す説明図である。
【図17】本実施形態に係るグラフェンデバイスの製造方向の過程を説明する説明図である。
【図18】金属層の上に炭素層を形成した場合の、アニールならびに3分エッチングをした上で冷却した後のラマンスペクトルの様子を示すグラフである。
【図19】加熱温度に応じたラマンスペクトルの様子を示すグラフである。
【図20】固溶体層形成時に酸化金属の還元を行う態様で作製した試料のラマンスペクトルの様子を示すグラフである。
【図21】水素分圧1トルを採用した場合の最終的なグラフェンの結晶の様子を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図22】水素分圧20トルを採用した場合の最終的なグラフェンの結晶の様子を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。

【0045】
なお、本願の各図においては、理解を容易にするため、寸法や形状を適宜誇張して表現している。
【実施例1】
【0046】
図1Aは、本実施形態に係る基板上グラフェンの第1の例を示す平面図であり、図1Bは、当該本実施形態に係る基板上グラフェンの第1の例を示す断面図である。以下、これらの図を参照して説明する。
【実施例1】
【0047】
これらの図に示すように、グラフェン102は、基板103の表面に直接接する層をなしている。従来の手法では製造可能なグラフェン102の厚さは、30ナノメートル程度が上限となっていたが、本実施形態に係るグラフェン102の厚さは、300ナノメートル以下で所望の厚さとすることが可能である。
【実施例1】
【0048】
基板103は、二酸化ケイ素基板や二酸化ケイ素膜を表面に付したケイ素基板とすることができるほか、多層構造とすることもできる。多層構造にした場合には、たとえば、各層に導体や半導体や絶縁体を適宜配置し、半導体回路、電子回路、電気回路などを形成することが可能である。
【実施例1】
【0049】
このように、基板103の表面にグラフェン102が直接接することにより、全体として、グラフェンデバイス101(グラフェン素子)を形成する。ここで、本願では、「素子」とは、1つの機能を果たす部品を、「デバイス」とは、1つもしくは複数の素子から構成される部品を、それぞれ意味するものとする。
【実施例1】
【0050】
第1の例に係るグラフェン102は、結晶粒界104(本図では、太い点線で描かれている)に囲まれる範囲で、単結晶となっている。結晶粒界104で囲まれた領域は、互いに異なる形状とはなっているが、これは、基板103の表面でグラフェン102がランダムに成長したからである。各領域の略中央が、グラフェン102の析出が始まった点に相当する。
【実施例1】
【0051】
なお、本図においてはグラフェン102を斜線で図示しているが、当該斜線はグラフェン102の結晶の形成方向を意味するものではない。上記のように、基板103の表面に沿った方向では、グラフェン102に結晶粒界104が生じるが、基板103の表面に対する垂直方向では、ほとんどの場所でグラフェン102の結晶構造が揃う。
【実施例1】
【0052】
なお、結晶粒界104は、グラフェン102の表面から基板103の表面に至るが、図1Bならびに後に参照する図においては、理解を容易にするため、適宜記載を省略している。
【実施例1】
【0053】
図2は、本実施形態に係る基板上グラフェンの第2の例を示す平面図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例1】
【0054】
本図に示すグラフェンデバイス101においては、グラフェン102の結晶粒界104は、本図の上下方法(第1の方向)と左右方法(第2の方向)に、一定の間隔で、規則的な桝目状に形成されている。すなわち、正方形の単結晶からなるグラフェン102が、基板103を覆っている。
【実施例1】
【0055】
後述するように、本発明においては、グラフェン102の基板103上における成長の開始点や方向などを制御することが可能であるため、結晶粒界104を正方形や長方形など、各種の形状とすることができる。さらに、単結晶のグラフェン102の面積を、従来よりも格段に大きくすることができる。具体的には、単結晶のグラフェン102の結晶粒径は、30マイクロメートル以上とすることが可能である。
【実施例1】
【0056】
また、結晶粒界104が伸びる第1の方向と第2の方向とは、上記のように直交するのが典型的であるが、一定の角度で斜めにすれば、グラフェン102の単結晶の形状は、平行四辺形となる。さらに、結晶粒界104同士の間隔は、必ずしも一定としなくとも良い。
【実施例1】
【0057】
また、本発明の製造方法を利用することにより、従来よりもグラフェン102の成長を安定させることができる。
【実施例1】
【0058】
なお、グラフェン102の結晶粒径は、グラフェンデバイス101を製造する際のグラフェン102の成長方向で最大となる。
【実施例1】
【0059】
このように、本実施形態のグラフェンデバイス101は、基板103の表面を、大きな単結晶のグラフェン102が覆ったもので、グラフェン102の結晶粒界104が少なく決められた場所に存在し、結晶粒径が大きいことを特徴の一つとする。
【実施例1】
【0060】
なお、基板103の大きさを小さくしたり、グラフェンデバイス101を製造する環境を適切に設定したり、グラフェン102の成長に長時間をかければ、基板103の表面全体を、1つの単結晶のグラフェン102が覆うように構成することも不可能ではない。
【実施例1】
【0061】
このような基板103の表面全体をグラフェン102が覆うグラフェンデバイス101は、グラフェン102の導電性や機械的強度等から、後述するように、パターン等として利用したり、半導体集積回路やMEMS等種々のデバイスに加工される基板製品、太陽電池や面発光照明、フラットパネルディスプレイ、タッチスクリーン等の透明電極等として用いることができる。
【実施例1】
【0062】
図3は、本実施形態に係る基板上グラフェンの第3の例を示す平面図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例1】
【0063】
本図に示すグラフェンデバイス101においては、グラフェン102は、基板103の表面全体を覆うのではなく、パターンをなしている。グラフェン102は導電性があるため、パターンは、各種の配線、端子、電極などに利用できる。また、パターンの形状は、本図に示すものに限られず、任意のものとすることができる。
【実施例1】
【0064】
予めグラフェンのパターンを作製してから転写を行う従来の手法では、マイクロメータースケールの小さいパターンを作ろうとしても、転写の際に損傷が生じてしまう。一方、後述する本願に係る製造方法によれば、10マイクロメートル以下のライン幅のパターンを基板上に形成することができる。また、グラフェンを基板の広い領域に転写してからエッチングによってパターニングを行う従来の手法では、グラフェンのエッチングの際に基板にダメージを与えるので、特に多層基板への適用の際に問題となる。一方、後述する本願に係る製造方法では、グラフェンのエッチングは行わない簡略な製造工程を採用するため、このような問題は生じない。
【実施例1】
【0065】
したがって、このパターンによって、銅やアルミニウムによる微細配線を代替できるのはもちろん、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxcide;ITO)による透明電極を代替することも可能である。
【実施例1】
【0066】
たとえば、液晶ディスプレイの場合には、ガラスを基板103として、ガラスの表面に直接グラフェン102からなる透明電極をパターン状に形成する等の応用が可能である。
【実施例1】
【0067】
また、基板103は、単層に限られるものではなく、多層構造として各層の内部に配線、導電の対象を配置することができる。
【実施例1】
【0068】
すなわち、基板103を、半導体集積回路における半導体、配線、絶縁膜からなる多層構造とし、グラフェン102を多層構造内の各素子を接続するための微細配線として利用することができる。
【実施例1】
【0069】
このほか、基板103の裏面に配線、導電の対象を配置する場合には、基板103を貫通する配線を設けて、この配線をグラフェン102で接続すれば良い。
【実施例1】
【0070】
さらに、グラフェン102は、電界効果トランジスタにおけるソースとドレインの間のチャネル等、電子や正孔の移動経路に利用することができる。
【実施例1】
【0071】
図4は、本実施形態に係る基板上グラフェンを利用した電界効果トランジスタの断面を表す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例1】
【0072】
本図に示すように、基板103上のグラフェン102は、ソース電極401からドレイン電極402までの電子・正孔の移動チャネルを形成している。グラフェン102と絶縁体403を挟んでゲート電極404が配置されており、ゲート電極404に印加される電圧を制御することによって、グラフェン102を移動する電子・正孔の流量を制御する。このように、本態様のグラフェンデバイス101は、電界効果トランジスタとして機能する。
【実施例2】
【0073】
従来の製造方法では、剥離したグラフェン102を基板103上に転写したり、基板103上の金属触媒の上にグラフェン102を析出させた後に、金属触媒をエッチングしていた。
【実施例2】
【0074】
一方、本発明では、実施例1に開示するような、結晶粒径が大きなグラフェン102を基板103の表面上に直接形成することができる。以下、まず、本製造方法の原理について説明する。
【実施例2】
【0075】
本実施形態では、まず、鉄やコバルト、ニッケル等の金属に炭素が固溶した固溶体層を基板103の表面上に形成するため、これらを固溶温度に加熱する。
【実施例2】
【0076】
そして、加熱を継続したまま、固溶体層に含まれる金属を、塩素等のエッチングガスにより除去する。
【実施例2】
【0077】
すると、固溶体層の表面に、炭素がグラフェン102として析出する。これは、金属が減少したために、炭素が固溶できなくなるためである。
【実施例2】
【0078】
このままエッチングを継続すれば、析出したグラフェン102がさらに成長する。固溶温度を維持したままエッチングを行うので、未だに析出していない炭素は、金属内でモビリティを有する。このため、金属をエッチングすることによって固溶できなくなった炭素は、すでに析出済みのグラフェンと結晶構造をなすように析出する。
【実施例2】
【0079】
最終的には金属がすべて除去され、グラフェン102が、基板103の表面に直接接することになる。
【実施例2】
【0080】
このようにして、従来の金属触媒を用いた熱CVD法とは異なり、金属を含まない状態でグラフェン102を基板103上に直接形成することができる。また、固溶体層の形状を適切に設定することで、従来の熱CVD法で作製したグラフェンの転写による手法よりも、グラフェン102のパターンを精細に形成することができるのである。
【実施例2】
【0081】
なお、固溶体層を形成する際に、金属の酸化物を還元可能な還元剤、たとえば、水素とアルゴンの混合ガス等を供給しながら加熱を行うこととすれば、酸化物が基板上に残留してしまうことを防止できる。
【実施例2】
【0082】
ただし、固溶体層を形成する際に、金属の酸化が生じないような雰囲気(たとえば、酸化剤の分圧や濃度が十分に低い雰囲気)あるいは真空を維持することができる場合には、還元剤の供給は不要である。
【実施例2】
【0083】
さて、一定の濃度のエッチングガスが固溶体層表面に接し、金属が一様にエッチングされるとした場合を考える。
【実施例2】
【0084】
この場合、固溶体層における炭素の濃度分布が均一であれば、グラフェン102の固溶体層表面における析出の開始点はランダムになる。
【実施例2】
【0085】
一方、固溶体層における炭素の濃度分布が不均一であれば、グラフェン102の析出は、炭素濃度が高いところから始まり、炭素濃度が低いところへ向かって成長することになる。
【実施例2】
【0086】
したがって、炭素の濃度分布を適切に設定することによって、グラフェン102の結晶が成長を開始する位置ならびに成長する方向を制御することができる。
【実施例2】
【0087】
このほか、エッチングガスの濃度分布を不均一に設定することができれば、エッチングガスの濃度が高いところほど金属の除去が早いことになる。したがって、固溶体層における炭素の濃度分布が均一であっても、グラフェン102の析出は、エッチングガスの濃度が高いところから始まり、エッチングガスの濃度が低いところへ向かって成長することになる。
【実施例2】
【0088】
このように、エッチングガスの濃度分布を適切に設定することによっても、グラフェン102の結晶が成長を開始する位置ならびに成長する方向を制御することができる。
【実施例2】
【0089】
このようにして、グラフェンの成長の開始点と方向を制御すると、グラフェンの結晶粒界は成長開始点およびグラフェン同士が繋がる成長終了点のみに形成されるため、結晶粒界を所定の位置に制御することができ、またグラフェンの成長開始点を減らすことで極めて大きな結晶粒径を実現することができる。
【実施例2】
【0090】
また、上記のような固溶体層における炭素の濃度分布の設定と、エッチングガスの濃度分布の設定を、適宜組み合わせて、グラフェン102の結晶が成長を開始する位置ならびに成長する方向を制御しても良い。
【実施例2】
【0091】
上記の説明では、また、金属として鉄等を採用し、エッチングガスとして塩素を利用している。しかしながら、炭素を固溶することができる任意の金属と、当該金属に対するエッチングガスを利用することもできる。すなわち、基板103上で当該金属と炭素を固溶温度に加熱して炭素を当該金属に固溶させ、固溶体層を形成し、当該加熱を維持したまま、当該金属に対するエッチングガスを供給して固溶体層から当該金属を除去し、グラフェン102を析出、成長させることにより、グラフェン102が基板103の表面上に直接接するグラフェンデバイス101を製造することも可能である。
【実施例2】
【0092】
上記のように、固溶体の溶媒となる金属には、1つの金属元素からなる純金属や複数の金属元素からなる合金を利用することができる。ただし、炭素が溶媒として固溶し、エッチング等によって除去が可能であれば、金属元素と半金属元素からなる合金や、金属元素と非金属元素からなる合金等を、固溶体の溶媒として利用しても良い。
【実施例2】
【0093】
ここで、グラフェン102の基板103に沿った成長方向の結晶粒径(の平均値)は、それ以外のすべての方向(たとえば、基板103に垂直な方向や、基板103に沿いつつも成長方向と交差する方向。)における結晶粒径(の平均値)よりも大きくなる。
【実施例2】
【0094】
このほか、「加熱を維持」の態様であるが、固溶体層を形成する際の温度と、エッチングを行う際の温度とは、必ずしも一致していなくとも良い。たとえば、一旦固溶体層が形成され、エッチングによる金属の除去が開始されたら、温度を少しずつ下げ、エッチングが完了する時点で、ちょうど、固溶体がまったく形成できなくなる温度(あるいはこれより少々高い温度)に至るようにしても良い。
【実施例2】
【0095】
以下では、本製造方法の詳細について、図5A乃至図5Oを参照して説明する。これらの図は、グラフェンデバイス101が製造される過程を説明するための断面図である。なお、以下で掲げる諸元は、理解を容易にするための一例であり、これらの諸元を適宜置換した実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【実施例2】
【0096】
まず、図5Aに示すように用意されたグラフェンデバイス101を形成するための基礎となる基板103を用意する。本例では、基板103として、二酸化ケイ素基板を採用しているが、前述の通り、多層の基板、内部に各種の素子が埋め込まれた基板、背面に各種の素子が配置されることとなる基板等を採用することもできる。
【実施例2】
【0097】
ついで、図5Bに示すように、基板103の表面に、第1マスク501を形成する。第1マスク501は、最終的に形成されるグラフェン102のパターン形状を定めるものである。
【実施例2】
【0098】
可視光や紫外線等のフォトリソグラフィ技術を適用した場合には、レジストを基板103に塗布し、第1マスクの形状をレジスト表面に露光し、現像ならびにレジストの溶解を行うことにより、第1マスク501が形成される。このほか、電子ビームリソグラフィ技術や、金属膜にスリットや穴を設けたマスクを密着させる手法を採用することも可能である。
【実施例2】
【0099】
この第1マスク501は、最終的に製造されるグラフェンデバイス101におけるグラフェン102のパターン形状を定めるものである。すなわち、第1マスク501によってマスクされずに、基板103の表面が露出している領域に、グラフェン102が形成されることになる。
【実施例2】
【0100】
さらに、スパッタリング、真空蒸着、CVD等により炭素を供給して、図5Cに示すように、第1マスク501の表面ならびに第1マスク501の開口部を介して露出している基板103の表面に炭素層502を形成する。炭素層502は、非晶質でも結晶であっても良い。
【実施例2】
【0101】
本図では、炭素の供給を一様に行うこととしているため、均一な厚さの炭素層502が形成されているが、第1マスク501の開口部の近傍にのみ炭素を供給する等して、不要な炭素層502の形成を抑制しても良い。
【実施例2】
【0102】
ついで、レジストの溶解を行うことにより、図5Dに示すように、第1マスク501ならびにその表面に形成された炭素層502を除去して、所望のパターンと同じ形状を有する炭素層502が、初期層(最終的なグラフェン102のパターン形状を定める初期形状を有する層)として得られる。
【実施例2】
【0103】
すなわち、初期層という呼称は、「最初に形成される層」の意味ではなく、「グラフェン102の原料となる炭素が最初に含まれている層」の意味である。
【実施例2】
【0104】
さらに、図5Eに示すように、基板103の表面に、第1マスク501と同様の技術を利用して第2マスク503を形成する。本例では、第2マスク503の開口部は、第1マスク501の開口部をすべて含む形状、すなわち、第1マスク501の開口部と同じか、これよりも大きい形状をしている。これにより、第2マスク503の開口部に炭素層502が位置することになる。
【実施例2】
【0105】
そして、スパッタリング、真空蒸着、CVD等により金属を供給して、図5Fに示すように、第2マスク503の表面、第2マスク503の開口部を介して露出している炭素層502ならびに基板103の表面に、金属層504を形成する。
【実施例2】
【0106】
本図では、金属の供給を一様に行うのではなく、不均一に行うことにより、金属層504の厚さが、厚くなっては元の厚さに戻ることを繰り返す鋸の刃のような形状としている。マスク蒸着法を採用すれば、このように金属層504の厚さを変化させることが可能である。
【実施例2】
【0107】
ここで、マスク蒸着法とは、具体的には以下のような手法である。すなわち、金属箔などに複数のスリットを設け、自立マスクを形成する。そして、自立マスクを基板103から一定の距離だけ離間させて配置し、金属をスパッタリングにより供給し、自立マスクを経由して基板103に至るようにする。すると、自立マスクのスリットに対向する箇所では金属層504が厚くなり、そこから離れるにしたがって、金属層504が薄くなる。
【実施例2】
【0108】
また、複数のワイヤを基板103表面に接して配置することにより、上記の自立マスクのかわりに用いるとすることも可能である。この場合には、ワイヤがスパッタリングに対する障害物となるので、ワイヤの近傍では金属層504が薄くなり、ワイヤから離れるにしたがって金属層504が厚くなる。
【実施例2】
【0109】
このほか、金属をスパッタリングにより供給する際に、1つないし複数の可動式のシャッターを設けて、シャッターを徐々に閉じていくことによる手法もある。この手法では、シャッターの最初に閉じられた部分の近傍の金属層504は薄く、シャッターの最後に閉じられた部分の近傍の金属層504は厚くなる。
【実施例2】
【0110】
なお、本例では、基板103に対して斜めの方向をスパッタリング方向としているため、金属層504の鋸形状の頂上から裾までが非対称となっているが、後述する実施例7で説明するように、スパッタリング方向を基板103表面に対して垂直方向とすれば、頂上から裾までを対称とすることも可能である。
【実施例2】
【0111】
この後、レジストの溶解を行うことにより、図5Gに示すように、第2マスク503ならびにその表面に形成された金属層504を除去する。これにより、基板103の表面上で、炭素層502を金属層504が覆うことになる。
【実施例2】
【0112】
そして、金属に炭素が固溶する固溶温度まで加熱を行うと、炭素層502が金属層504に固溶し、図5Hに示すように、固溶体層505が形成される。
【実施例2】
【0113】
固溶体層505の厚さは、金属層504の厚さと連動しており、一定の傾きで厚くなっては元の厚さに戻ることを繰り返す形状となっている。
【実施例2】
【0114】
上記のように、炭素層502は一様であったから、固溶体層505の厚さが厚いところは炭素の濃度が低く、固溶体層505の厚さが薄いところは炭素の濃度が高い。本図では、グラデーションにより、炭素濃度を図示している。
【実施例2】
【0115】
そして、固溶温度を維持したまま、エッチングガスを供給すると、固溶体層505内の金属が次第に除去されていく。エッチングの速度は固溶体層505の組成で変化することがあるが、一般的な傾向としては、エッチングガスを一様に供給した場合には、固溶体層505は、厚さが厚いところも薄いところもある程度類似した速度で金属が除去されていく。
【実施例2】
【0116】
加熱しながらエッチングガスを供給し続けると、金属の除去によって、固溶体層505に炭素が固溶できなくなる箇所が生じる。固溶体層505においては、厚さが薄いところが炭素の濃度が高い。
【実施例2】
【0117】
したがって、図5Iに示すように、厚さが薄いところから、固溶できなくなった炭素が、グラフェン102として固溶体層505表面に析出する。すなわち、厚さが薄いところ、炭素濃度が高いところが、グラフェン102の成長の開始位置となる。
【実施例2】
【0118】
グラフェン102として炭素が析出した後も、固溶温度への加熱とエッチングガスの供給を継続すると、図5J、図5K、図5L、図5M、図5Nに示すように、結晶構造が維持されたまま、グラフェン102が成長していく。グラフェン102の成長の方向は、固溶体層505における炭素濃度が高い箇所から低い箇所へ向かう方向、すなわち、濃度勾配に沿う方向である。本例では、固溶体層505の厚さが薄いところから厚いところへ、すなわち、金属層504の厚さが薄いところから厚いところへ向かって、本図右から左へ、グラフェン102が成長することとなる。
【実施例2】
【0119】
なお、エッチングガスの分圧を調整すれば、グラフェン102の析出の速度を制御することができる。固溶体層505の金属が鉄などの場合には、エッチングガスとして塩素を採用することができ、エッチングガスの分圧は、塩素を所望の濃度に希釈すれば調整が可能である。
【実施例2】
【0120】
このようにして、固溶体層505からすべての金属を除去すると、図5Oに示すように、グラフェン102が基板103に直接接することとなる。このようにして、グラフェンデバイス101が完成する。
【実施例2】
【0121】
なお、固溶体層505の厚さが厚かった箇所は、右から成長してきたグラフェン102が左隣のグラフェン102と衝突する箇所となるため、グラフェン102の表面から基板103の表面に至る結晶粒界104が生じる。
【実施例2】
【0122】
このほか、結晶粒界104が生じうる箇所としては、グラフェン102の成長の開始位置が考えられるが、後述する実施例において、詳細な説明を行う。
【実施例2】
【0123】
以下では、グラフェンデバイス101の製造方法の様々なバリエーションについて簡単に説明する。なお、これらのバリエーションについては、後述する実施例において、さらに詳細に説明する。
【実施例2】
【0124】
まず、第2マスク503の形成は、必ずしも必要ではない。たとえば、炭素層502を形成した後、第1マスク501を除去せずに金属層504を形成しても良い。このほか、第1マスク501を除去した後、基板103と炭素層502の表面を覆うように、ただちに金属層504を形成しても良い。
【実施例2】
【0125】
また、基板103の表面全体にグラフェン102を形成させる場合には、第1マスク501や第2マスク503の形成は不要であり、炭素層502を基板103の表面全体に形成した後、その上にさらに金属層504を形成すれば良い。
【実施例2】
【0126】
このほか、上記態様では、炭素層502と金属層504を異なる段階で形成しているが、第1マスク501の形成の後に炭素と金属の混合体を供給することとしても良い。この場合には、第1マスク501を除去すれば、所望のパターンと同じ形状の混合体層が、初期層として得られる。
【実施例2】
【0127】
このような混合体層の形成には、金属と炭素の共蒸着という手法を採用することができる。たとえば、金属からなるターゲットと炭素からなるターゲットの2つを、同時にスパッタリングすれば良い。このほか、1つのターゲットをスパッタリングする場合には、ターゲットとして炭素と鉄の混合物を利用しても良いし、鉄からなるターゲットに、炭素チップを貼付して、スパッタリングを行っても良いし、炭素からなるターゲットに、鉄チップを貼付して、スパッタリングを行っても良い。チップの貼付による態様では、貼付するチップの数を調整すれば、初期層となる混合体層における炭素濃度を容易に調整することができる。
【実施例2】
【0128】
また、炭素層502と金属層504の形成の順序は入れ換えても良い。すなわち、基板103上に金属層504を形成した後に、金属層504の上に炭素層502を形成する、という手法である。この場合は、炭素層502が初期層に相当する。
【実施例2】
【0129】
このほか、第1マスク501や第2マスク503を利用せずに初期層のパターン形状を形成する手法として、以下のようなものがある。すなわち、基板103の表面を覆うように
(a)炭素層502と金属層504を形成した後、もしくは、
(b)炭素と金属の混合体層を形成した後
に、金属と炭素のエッチングを行うことにより、初期層のパターン形状を作製する手法である。
【実施例2】
【0130】
この手法では、上記(a)(b)の形成の後に、第3マスクを形成する。この第3マスクは、上記の第1マスク501のマスク部分が開口部、第1マスク501の開口部がマスク部分となるもので、第1マスク501と第3マスクは、いわばネガポジの関係にある。
【実施例2】
【0131】
そして、第3マスクを介してエッチングを行うことで、第3マスクの開口部の金属や炭素を除去し、初期層のパターン形状を形成する。最後に、第3マスクをエッチングにより除去する。これにより、金属や炭素を所望のパターン形状に形成する。
【実施例2】
【0132】
なお、所望の初期層の形状を得るためには、上記の手法に限らず、種々のパターン形成技術を適用できる。したがって、炭素や炭素と金属の混合体などを初期層の材料とすることができる。また、リソグラフィの現像液、レジストの素材や溶解液、エッチング剤などには、種々のものを利用することができる。
【実施例2】
【0133】
さらに、グラフェン102の結晶がランダムに生じるのでも良い場合には、金属層504の厚さを変化させる必要はなく、一様に設定すれば良い。
【実施例2】
【0134】
このほか、グラフェン102の結晶を大きくして一様な連続膜とするには、どの位置でも炭素の濃度勾配ができるだけ同じ方向を向くように設定すれば良い。さらに大きな単結晶のグラフェン102を得る手法については、以下の実施例において説明する。
【実施例2】
【0135】
また、上記態様では、炭素層502の厚さは一様とする一方で、金属の供給量を位置によって不均一とすることによって金属層504の厚さを変化させることにより、固溶体層505中における炭素の濃度に勾配が生じるようにしているが、たとえば、炭素の供給量を位置によって不均一としたり、金属と炭素の供給量を位置によって変化させることによって、炭素の濃度勾配を生じさせ、グラフェン102の成長方向を定めることとしても良い。
【実施例2】
【0136】
このほか、上記態様では、エッチングガスの濃度分布を一様とすることで、固溶体層505のどの位置でも一定の速度で金属の除去を行うこととしているが、エッチングガスの濃度分布を不均一とすれば、金属除去の速度を位置によって異なるものとすることができる。したがって、エッチングガスの濃度が高いところ低いところへ向かってグラフェン102が析出するように設定することも可能である。
【実施例3】
【0137】
本実施形態は、上記実施形態を多段階に利用することによって、グラフェン102の単結晶の大きさを調整し、結晶粒界の位置を限定するものであり、たとえば図2に示すようなグラフェンデバイス101を製造するのに好適である。
【実施例3】
【0138】
本実施形態に係る製造方法では、まず、実施例2のグラフェンの製造方法を用いて、基板103上で線状グラフェンを、第1の方向に成長させる。
【実施例3】
【0139】
図6Aは、線状グラフェンならびにその成長方向を説明する平面図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例3】
【0140】
本図に示す例では、結晶粒界104で区切られた多数の線状グラフェン601が、基板103の表面の各格子点から当該格子点の上側隣の格子点に向かって、成長している。
【実施例3】
【0141】
このように線状グラフェン601を形成するためには、炭素層502に対する第1マスク501として、上下方向の直線が等間隔に並ぶ開口部を有するものを利用する。そして、金属層504の厚さは、下から上に向って、厚さが次第に増加しては急激に元に戻ることを繰り返す形状を採用する。
【実施例3】
【0142】
ついで、実施例2のグラフェンの製造方法を用いて、基板103の表面のうち、線状グラフェン601が形成されていない領域にも炭素層502と金属層504を形成し、今度は、第2の方向に向かって、面状グラフェンを成長させる。
【実施例3】
【0143】
図6Bは、面状グラフェンならびにその成長方向を説明する平面図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例3】
【0144】
本図では、各線状グラフェン601を開始線として、右から左に向かって、面状グラフェン602が成長している過程を示している。
【実施例3】
【0145】
本態様のような面状グラフェン602を成長させるためには、炭素層502に対する第1マスク501および金属層504に対する第2マスク503は、線状グラフェン601が形成されていない領域を開口とするものを利用することができるほか、第1マスク501や第2マスク503の利用を省略しても良い。
【実施例3】
【0146】
また、金属層504の厚さは、各線状グラフェン601から左隣りの線状グラフェン601に向って、厚さが次第に増加する繰り返す形状を採用する。
【実施例3】
【0147】
すると、すでに形成されている線状グラフェン601が面状グラフェン602の結晶形成の種(本図では、2点破線で、以前に線状グラフェン601が配置されていた境界線を示している。)となる。
【実施例3】
【0148】
このような設定を行うことにより、面状グラフェン602の成長の方向が右から左になる。
【実施例3】
【0149】
なお、本図は、面状グラフェン602が成長している途中を示すものであり、最終的には、面状グラフェン602の先端が隣の面状グラフェン602(かつて線状グラフェン601が配置されていた部分。)に達するまで成長する。
【実施例3】
【0150】
このようにしてグラフェン102を形成すると、図2に例示したような、隣り合う格子点を結ぶ線分が結晶粒界となり、単結晶が格子状に配置されるグラフェンデバイス101を製造することができる。
【実施例3】
【0151】
ここで、桝目の大きさを小さくすればするほど、グラフェン102の結晶の大きさは小さくなるが、基板103を覆うための製造時間は短くなる。したがって、桝目の大きさや数は、用途や製造コストに応じて適宜選択すれば良い。
【実施例3】
【0152】
なお、線状グラフェン601を基板103の端の下から上に1本だけ設け、線状グラフェン601から、線状グラフェン601に対向する基板103の端へ、面状グラフェン602を成長させた場合には、基板103全体を覆う単結晶のグラフェン102を形成することも可能である。
【実施例3】
【0153】
以下では、上記実施例2において説明した製造方法のバリエーションについて、順に説明する。なお、以下の説明では、理解を容易にするため、上記実施態様と同様の要素については、適宜説明を省略する。
【実施例4】
【0154】
本実施形態は、基板103の上にグラフェン102を全面形成したグラフェンデバイス101の製造方法である。
【実施例4】
【0155】
本実施形態によれば、図1A、図1Bに示すようなグラフェンデバイス101を製することが可能である。図7A乃至図7Fは、本実施形態に係るグラフェンデバイス101の製造方法の過程を説明する説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例4】
【0156】
本製造方法では、まず、基板103を用意する(図7A)。
【実施例4】
【0157】
そして、基板103の表面上に炭素層502を形成し(図7B)、さらに、金属層504を形成する(図7C)。なお、上述の通り、炭素層502と金属層504の形成の順序は逆としても良いし、炭素と金属の混合体をスパッタリング、蒸着、CVD等することによって混合体層を形成することとしても良い。
【実施例4】
【0158】
この後、固溶温度への加熱を行い、金属に炭素が固溶した固溶体層505を形成する(図7D)。
【実施例4】
【0159】
さらに、加熱を維持したまま、エッチングガスを供給して固溶体層505から金属をエッチングすると、固溶体層505の表面にグラフェン102が析出し、成長を開始する(図7E)。
【実施例4】
【0160】
金属をすべてエッチングすると、基板103の表面上にグラフェン102が直接接したグラフェンデバイス101が完成する(図7F)。
【実施例5】
【0161】
本実施形態は、第2マスク503を利用しないグラフェンデバイス101の製造方法である。本手法によれば、たとえば図3に示すようなパターンを有するグラフェンデバイス101を製造することができる。
【実施例5】
【0162】
図8A乃至図8Hは、本実施形態に係るグラフェンデバイス101の製造方法の過程を説明する説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例5】
【0163】
本製造方法では、まず、基板103を用意する(図8A)。
【実施例5】
【0164】
ついで、基板103の表面上に第1マスク501を形成する(図8B)。この後、炭素層502を形成し(図8C)、さらに、金属層504を形成する(図8D)。
【実施例5】
【0165】
この後、第1マスク501を溶解することにより、第1マスク501上の炭素層502と金属層504を除去する(図8E)。
【実施例5】
【0166】
なお、炭素層502を形成した後に第1マスク501と炭素層502の除去を行ってから、金属層504を形成して、以下の処理に進むこととしても良い。
【実施例5】
【0167】
さて、除去によって炭素層502を所望のパターン形状と同じ形状にした後は、固溶温度への加熱を行い、金属に炭素が固溶した固溶体層505を形成する(図8F)。
【実施例5】
【0168】
さらに、固溶温度を維持したまま、エッチングガスを供給して固溶体層505から金属をエッチングすると、固溶体層505の表面にグラフェン102が析出し、成長を開始する(図8G)。
【実施例5】
【0169】
金属をすべてエッチングすると、基板103の表面上にグラフェン102が直接接したグラフェンデバイス101が完成する(図8H)。
【実施例6】
【0170】
本実施形態は、第1マスク501、第2マスク503を利用しないグラフェンデバイス101の製造方法である。本手法によれば、たとえば図3に示すようなパターンを有するグラフェンデバイス101を製造することができる。
【実施例6】
【0171】
図9A乃至図9Iは、本実施形態に係るグラフェンデバイス101の製造方法の過程を説明する説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例6】
【0172】
本製造方法では、まず、基板103を用意する(図9A)。
【実施例6】
【0173】
ついで、基板103の表面上に炭素層502を形成し(図9B)、さらに、金属層504を形成する(図9C)。
【実施例6】
【0174】
この後、第3マスク801を金属層504の上に形成する(図9D)。第3マスク801は、第1マスク501とネガポジの関係にあるマスクである。
【実施例6】
【0175】
この後、第3マスク801の開口部(金属層504が露出している部分)から、金属層504と炭素層502の不要な部分を除去する(図9E)。金属層504の除去には、ハロゲンを含むガスを用いたプラズマエッチング等が利用できる。炭素層502の除去には、酸素を含むガスを用いたプラズマアッシング等が利用できる。
【実施例6】
【0176】
さらに、第3マスク801を除去する(図9F)。
【実施例6】
【0177】
この後は、上記実施形態と同様に、固溶温度への加熱を行い、金属に炭素が固溶した固溶体層505を形成する(図9G)。
【実施例6】
【0178】
さらに、加熱を維持したまま、エッチングガスを供給して固溶体層505から金属をエッチングすると、固溶体層505の表面にグラフェン102が析出し、成長を開始する(図9H)。
【実施例6】
【0179】
金属をすべてエッチングすると、基板103の表面上にグラフェン102が直接接したグラフェンデバイス101が完成する(図9I)。
【実施例7】
【0180】
本実施例は、上記実施例4、5、6等において形成された固溶体層505からグラフェン102を所望の位置から所望の方向に成長させたグラフェンデバイス101の製造方法である。
【実施例7】
【0181】
図10A乃至図10Eは、本実施形態に係るグラフェンデバイス101の製造方法の過程を説明する説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例7】
【0182】
本製造方法では、図7C、図8E、図9Fのように、炭素層502と金属層504が形成された基板103を2枚用意して、向かい合わせに配置する(図10A)。
【実施例7】
【0183】
そして、固溶温度に加熱すると、向かい合わせの基板103の上に、図7D、図8F、図9Gと同様に、互いに対向する固溶体層505が形成される(図10B)。
【実施例7】
【0184】
この後、基板103の両端からエッチングガスを供給する。すると、固溶体層505の端部は、固溶体層505の中央部に比べて速く金属の除去が進む。すなわち、両基板103の端部からグラフェン102が析出して、中央部に向かってグラフェン102が成長する(図10C、図10D)。
【実施例7】
【0185】
金属をすべてエッチングすると、基板103の表面上にグラフェン102が直接接したグラフェンデバイス101が完成する(図10E)。このグラフェン102においては、中央部に結晶粒界104が生じる。
【実施例7】
【0186】
なお、エッチングガスの供給を一端から行うこととしても良い。この場合には、基板103の端部から、エッチングガスが供給される方向(エッチングガスが流れる方向や拡散する方向)に向かって、グラフェン102が成長することになる。
【実施例8】
【0187】
本実施例は、上記実施例4、5、6等において炭素層502を形成した後に、金属層504の厚さを不均一に形成することにより、グラフェン102を所望の位置から所望の方向に成長させたグラフェンデバイス101の製造方法である。
【実施例8】
【0188】
本実施形態では、炭素層502が形成された基板103を用意する(図11A)。
【実施例8】
【0189】
そして、基板103ならびに炭素層502から一定の距離だけ離間して、自立マスク901(たとえば、金属箔等にスリット902を設けたもの。)を配置し、スリットを経由して金属を蒸着、スパッタリング、CVD等により供給する(図11B)。
【実施例8】
【0190】
すると、スリット902の近傍では金属層504は厚く形成され、スリット902から離れると、金属層504の厚さは薄くなる。
【実施例8】
【0191】
実施例2においては、金属を供給する際のスパッタの方向を制御することで、断面が鋸の刃のような形状になるように金属層504を形成したが、本図では、金属を上から下へ供給しているため、金属層504の形状は左右対称になっている。
【実施例8】
【0192】
実施例4に本技術を適用した場合には、炭素層502(ならびに金属層504)は、この段階で所望の形状となっている。
【実施例8】
【0193】
実施例5に本技術を適用した場合には、金属層504が形成された後に、第1マスク501の剥離を行って、炭素層502(ならびに金属層504)を所望のパターン形状とする。
【実施例8】
【0194】
実施例6に本技術を適用した場合には、この後に第3マスク801を形成し、炭素層502と金属層504の不要な部分を剥離して、第3マスク801を溶解することにより、炭素層502(ならびに金属層504)を所望のパターン形状とする。
【実施例8】
【0195】
なお、上述の通り、炭素層502を所望のパターン形状とした後に、本技術により金属層504を設けた場合には、金属層504を当該パターン形状にする必要はない。
【実施例8】
【0196】
この後、基板103を固溶温度に加熱して固溶体層505を形成し(図11C)、加熱を維持したままエッチングガスを供給して固溶体層505から金属を除去すると、金属層504が薄かった箇所からグラフェン102が析出する。そして、グラフェン102は、金属層504が厚かった箇所へ向かって(すなわち、本図では左右に)、成長する(図11D、E、F)。
【実施例8】
【0197】
金属をすべてエッチングすると、基板103の表面上にグラフェン102が直接接したグラフェンデバイス101が完成する(図11G)。本図に示す例では、成長方向が衝突する中央部にグラフェン102の結晶粒界104が生じる。なお、グラフェン102の結晶粒界104は、成長の開始点にも生じることがある。
【実施例9】
【0198】
本実施例は、実施例8を2回繰り返す際に、炭素層502のパターン形状を変化させるとともに、自立マスク901の向きを90度回転させることで、図2に示すような桝目状の結晶粒界104を有するグラフェンデバイス101を製造する製造方法である。
【実施例9】
【0199】
図12A乃至図12Fは、本実施形態に係る炭素層502、自立マスク901等の位置関係を示す平面図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例9】
【0200】
本製造方法では、まず、基板103の表面に、平行線を描くように、炭素層502のパターンを形成する(図12A)。本図では、炭素層502のパターンは上下方法に伸びている。
【実施例9】
【0201】
ついで、実施例8の技術に基づいて、スリット902が炭素層502のパターンと交差するように自立マスク901を設置する(図12B)。なお、本図では、理解を容易にするため、自立マスク901を基板103や炭素層502よりも小さく描いているが、実際には、これらよりも大きく、スリット902も繰り返し規則的に配置されている。
【実施例9】
【0202】
そして、金属を供給して金属層504を形成する。すると、金属層504の厚さは、本図上下方向に沿って変化するようになる。
【実施例9】
【0203】
これらを加熱して固溶体層505を形成し、エッチングにより金属を除去する。すると、グラフェン102が、自立マスク901のスリット902の長手方向とは直交する方向、すなわち、本図の上下方向に成長する。
【実施例9】
【0204】
金属がすべて除去されると、線状グラフェン601が形成されることになる(図12C)。
【実施例9】
【0205】
この後、基板103の線状グラフェン601以外の箇所に炭素層502のパターンを形成する(図12D)。
【実施例9】
【0206】
そして、実施例8の技術に基づいて、スリット902が線状グラフェン601の長手方向と平行になり、ちょうど線状グラフェン601同士の中間にスリット902が配置されるように、自立マスク901を設置する(図12E)。
【実施例9】
【0207】
なお、本図では、理解を容易にするため、自立マスク901を基板103や炭素層502よりも小さく描いているが、実際には、これらよりも大きく、スリット902も繰り返し規則的に配置されている。
【実施例9】
【0208】
そして、金属を供給して金属層504を形成する。すると、金属層504の厚さは、本図左右方向に沿って変化するようになる。
【実施例9】
【0209】
なお、線状グラフェン601の上に金属層504が形成されないようするため、適宜マスク等を利用することとしても良い。また、供給する金属の量や自立マスク901のスリット902の大きさ、基板103との距離を調整することで、線状グラフェン601の一部は金属層504に固溶せず、残留するように構成しても良い。
【実施例9】
【0210】
この後、これらを加熱して固溶体層505を形成し、エッチングにより金属を除去する。
【実施例9】
【0211】
すると、固溶体層505に固溶せずに残留している線状グラフェン601を開始位置として、面状グラフェン602が、自立マスク901のスリット902の長手方向とは直交する方向、すなわち、線状グラフェン601の長手方向とは垂直な、本図の左右方向に成長する。
【実施例9】
【0212】
金属がすべて除去されると、桝目状の結晶粒界104に区切られた面状グラフェン602が形成される(図12F)。
【実施例10】
【0213】
以下では、上記の各態様に対する種々の諸元の実験例と、当該諸元によって得られるグラフェンデバイスの特性の実験結果について説明する。
【実施例10】
【0214】
(実験1)
実験1では、実施例4の手法の具体的な諸元について調べた。
【実施例10】
【0215】
まず、基板103として、厚さが1000ナノメートルの熱酸化膜付きケイ素基板を採用した。
【実施例10】
【0216】
本諸元では、スパッタリングにより、厚さ40ナノメートルの非晶質の炭素層502を形成した。その上に、スパッタリングにより、厚さ83ナノメートルの鉄の金属層504を形成した。
【実施例10】
【0217】
そして、これらを反応器内に配置して真空排気を行ってから、水素・アルゴンの混合気体(水素の比率は40容積パーセント)を全圧5トル(Torr)で流しながら、反応器を固溶温度帯(摂氏600度乃至1000度、典型的な固溶温度は摂氏800度)まで加熱し、この温度を10分間維持して、固溶体層505を形成するアニールを行った。
【実施例10】
【0218】
この後、固溶温度への加熱を維持したまま、供給するガスを、塩素・アルゴンの混合気体(塩素の比率は0.01容積パーセント)に切り替え、全圧5トルで30分間流して、金属のエッチングを行った。
【実施例10】
【0219】
金属の除去が完了した後、加熱を停止して反応器を冷却し、基板103の表面に形成されたグラフェン102の分析を行った。
【実施例10】
【0220】
この諸元では、固溶体層505の平均膜厚は時間経過に対して一定の速度で減少し、エッチングレートは毎分21ナノメートルであった。
【実施例10】
【0221】
なお、金属層504単独で同様の条件でエッチングを行った場合は、固溶体層505とほぼ等しいエッチングレートとなるが、炭素層502単独で同様の条件でエッチングを行っても、炭素層502の厚さは変化しない。
【実施例10】
【0222】
すなわち、固溶温度への加熱を維持したままエッチングガスを供給すれば、固溶体層505から優先的に金属を除去することができる。
【実施例10】
【0223】
さて、ラマン散乱分光分析では、結晶構造由来のG-band、非晶質構造由来のD-band、グラフェン由来のG'-bandならびにこれらの間の強度によって、どの程度、非晶質の炭素が結晶質のグラフェン102に変化したか、グラフェン102の層数はどの程度か、がわかる。
【実施例10】
【0224】
図13Aは、固溶体層505を形成した後エッチングを行わずに急冷した場合のラマンスペクトルを表すグラフであり、図13Bは、本実施形態の上記諸元の製造方法を用いた場合のラマンスペクトルを表すグラフである。以下、これらの図を参照して説明する。
【実施例10】
【0225】
これらの図に示すグラフの横軸は、1000cm-1乃至3000cm-1のラマンシフト(Raman Shift)を表し、縦軸は、スペクトルの強度を表す。
【実施例10】
【0226】
従来技術に相当する図13Aでは、G-band、D-bandのほか、両者の間で、アモルファスカーボンのピークが広い範囲で出現している。
【実施例10】
【0227】
一方、本発明に係る図13Bでは、結晶構造由来のG-bandが鋭く高くなり、欠陥由来のD-bandが小さくなっている。また両者の間のアモルファスカーボンのピークも大幅に減少している。
【実施例10】
【0228】
このほか、グラフェン102のうち、グラフェンに由来するG'-bandも鋭く高くなっている。
【実施例10】
【0229】
さらに、蛍光X線分析によれば、金属は検出限界以下である一方、グラフェン102の厚さは19ナノメートルであることがわかった。
【実施例10】
【0230】
一方で、図13Aに対応する従来技術では、結晶性の低いグラフェンの下に厚さ83ナノメートル相当の鉄が多量に残ってしまう。
【実施例10】
【0231】
したがって、従来の手法に比べて、本発明に係る手法では、結晶性が高く、触媒金属を含まない高純度なグラフェン102が、熱酸化膜付きケイ素基板103の上に直接接する形で得られていることがわかる。
【実施例10】
【0232】
(実験2)
実験2では、実験1に引き続いて、具体的な諸元についてさらに調べた。
【実施例10】
【0233】
すなわち、炭素を鉄に固溶させる固溶体層505を形成するため、まず、厚さを113ナノメートルの炭素層502を形成し、その上に金属層504を形成した後に、加熱する態様において、金属層504の厚さに対してグラフェン102の性質がどのように変化するかを調べた。ここでは、金属層504の厚さとして、83ナノメートル、132ナノメートル、233ナノメートル、393ナノメートルの4通りを採用した。
【実施例10】
【0234】
図14は、種々の厚さの金属層を採用した場合の、アニール、3分エッチング、30分エッチングした上で冷却した後のラマンスペクトルの様子を示すグラフである。以下、本図を参照して説明する。
【実施例10】
【0235】
なお、本図における各グラフの横軸は、図13A、13Bと同様に、1000cm-1から3000cm-1の範囲のラマンシフトを表し、縦軸は、スペクトルの強度を表す。
【実施例10】
【0236】
本図に示すように、金属層504厚393ナノメートルでは、アニールしただけでは炭素が表面に析出せず、グラフェン由来のピークはほとんどないが、エッチングの経過に伴いグラフェンの析出が進んでいる。
【実施例10】
【0237】
金属層504厚233ナノメートル、132ナノメートル、83ナノメートルの条件では、アニール後に、既に多層グラフェン層が析出している。
【実施例10】
【0238】
金属層504厚233ナノメートルでは、エッチングを行った後、3分後に最も良好なスペクトルが得られている。
【実施例10】
【0239】
一方、金属層504厚132ナノメートル、83ナノメートルでは、エッチングを進めてもスペクトルの変化はほとんどない。これは、金属層504厚が薄いと、固溶できる炭素が少ないため、エッチングによって析出する程度も少ないからと考えられる。
【実施例10】
【0240】
これらのサンプル表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金属層504の厚さがいずれであっても、アニール後から3分エッチング後にかけては、表面の平坦さならびにボイドの数には大きな変化はなかったが、30分エッチング後になると、表面のラフネス及びボイドの数が増加した。
【実施例10】
【0241】
また、金属層504厚393ナノメートルの場合には、30分エッチング完了後にグラフェン102の膜が不連続になってしまい、ボイドの数が少なく結晶のサイズが最も大きいのは、金属層504厚233ナノメートルの場合であった。
【実施例10】
【0242】
これらの実験から、鉄による金属層504の厚さは、摂氏800度でエッチングを行う場合によっては、炭素層502と同程度乃至2.5倍程度が好適であると予想される。
【実施例10】
【0243】
なお、固溶温度には下限から上限までの広がりがあり、更に金属中の炭素の濃度や金属の種類によっても変化する。このため、エッチングを行う際の加熱の温度を変えることも可能である。エッチングの際の温度を高くする場合には、好適な金属層504の厚さは薄くなり、エッチングの際の温度を低くする場合には、好適な金属層504の厚さは厚くなると考えられる。
【実施例10】
【0244】
(実験3)
実験3では、実施例5、6の具体的な諸元について調べた。
【実施例10】
【0245】
基板103として酸化膜付ケイ素基板を採用して、紫外線リソグラフィにより第1マスク501を形成し、その上に炭素層502と金属層504をスパッタで成膜して、第1マスク501のレジストを除去することにより、ライン幅2マイクロメートルの初期層パターンを作製した。
【実施例10】
【0246】
炭素層502厚は、33ナノメートルとし、金属層504厚は、68ナノメートル(諸元A)、39ナノメートル(諸元B)の二種類を用意した。
【実施例10】
【0247】
その他については、上記実験と同様にして、グラフェン102を基板103上に形成した。
【実施例10】
【0248】
図15Aは、諸元Aで製造したパターンを有するグラフェン102の原子間力顕微鏡像を示す説明図である。図15Bは、諸元Bで製造したパターンを有するグラフェン102の原子間力顕微鏡像を示す説明図である。以下、これらの図を参照して説明する。
【実施例10】
【0249】
これらの図からも明らかな通り、諸元Aは、諸元Bに比べて、ラフネスが大きい。また、中心部抵抗率は、諸元Aは、4×10-3Ωcm、諸元Bは、6×10-3Ωcmであった。
【実施例10】
【0250】
すなわち、諸元Aは、金属層504が厚いため、結晶性が良く抵抗は低いものの、ラフネスが大きい。
【実施例10】
【0251】
一方、諸元Bは、抵抗はやや高いもののの平滑である。そこで、諸元Bについて、さらに構造と導電性の様子を調べた。
【実施例10】
【0252】
図16Aは、諸元Bで製造したパターンを有するグラフェン102の原子間力顕微鏡像を示す拡大図であり、図16Bは、諸元Bで製造したパターンを有するグラフェン102の電流マップを示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例10】
【0253】
これらの図から、ラインが平坦な部分ほど導電性が良く、隆起部や陥没部は導電性が低いことがわかる。本製造方法によるグラフェンは基板面直方向にc軸配向で形成されているので、隆起部にプローブを当てると、抵抗の大きいc軸方向のパスを経由してから平坦部に電流が流れるためと考えられる。
【実施例11】
【0254】
上記実施例3においては、グラフェンをある方向に線状に成長させた後、その線に直角な方向に、線の幅が広がるような方向に成長させることで、面状グラフェンを形成していた。
【実施例11】
【0255】
本実施形態では、面状グラフェンを有するグラフェンデバイスを、より簡易な手法で形成する。
【実施例11】
【0256】
図17は、本実施形態に係るグラフェンデバイスの製造方向の過程を説明する説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【実施例11】
【0257】
本図には、基板103上に一様な厚さの炭素層502(本図では隠れている)が形成され、その上に金属層504が形成されている段階が示されている。
【実施例11】
【0258】
本図における金属層504は、網かけにより図示されており、網かけが濃い場所ほど金属層504は薄く、網かけが薄い場所ほど金属層504は厚い。
【実施例11】
【0259】
本実施形態における金属層504は、桝目状に形成されている。各桝目は、ごく小さい正方形からなる第1領域が、大きな正方形からなる第2領域の左下の頂点に連結された形状をしている。
【実施例11】
【0260】
金属層504の厚さは、第1領域は第2領域よりも薄く、第2領域内では、左下の頂点から他の3つの頂点に向かって厚くなるように勾配が設けられている。
【実施例11】
【0261】
このような構成で、上記実施形態と同様に、加熱を施して炭素層502を金属層504に固溶させる。すると、本図における網かけの濃い箇所は、炭素濃度が高く、薄い箇所は、炭素濃度が低いことになる。
【実施例11】
【0262】
したがって、加熱を施したまま金属の除去を行うと、最初に第1領域、すなわち、桝目の左下の頂点付近にグラフェンが析出する。ここで析出するグラフェンは、一般には多結晶である。
【実施例11】
【0263】
このまま加熱および金属の除去を継続すると、桝目の左下の頂点付近のくびれ(ネック)によって多結晶の中からいずれかが結晶核として絞り込まれる。このため、くびれの幅は、このような工法によって析出する多結晶の粒径の典型的な大きさよりも、十分に小さくする。すると、第2領域のくびれに接する部分に析出するグラフェンは、単結晶になる。
【実施例11】
【0264】
本発明では、この単結晶を核として、第2領域内の他の3つの頂点に向かって、すなわち、右上方向に広がるように炭素が成長する。
【実施例11】
【0265】
ここで成長する炭素の結晶核は、くびれによって絞り込まれているから、最終的に得られる桝目状の面状グラフェンは、いずれも単結晶となるのである。
【実施例11】
【0266】
なお、第1領域ならびに第2領域の形状は、必ずしも正方形に限られず、任意の形状とすることが可能である。たとえば、第2領域は、長方形や正六角形などの平面を充填可能な形状とすれば、同一形状の大きな面状グラフェンを多数同時に形成することができる。一方、第1領域は、くびれが形成できるような任意の形状であれば十分であり、正方形の他、円形などの形状を採用しても良い。
【実施例12】
【0267】
本実施例は、グラフェンの成長方向の積極的な制御を行わないもので、上記実施例を簡素にしたものに相当する。以下、炭素層502の厚さや金属層504の厚さをそれぞれ一定とする態様、ならびに、炭素と金属が一様に混合した混合体層を形成してこれを初期層とし、金属層504の形成を省略した態様の実験結果について、説明する。
【実施例12】
【0268】
(実験4)
本実験では、初期層となる炭素層502と金属層504の形成の順序を入れ換えて、種々の条件でグラフェン102の形成を比較した。なお、本実験では、金属層504の厚さは一定としている。
【実施例12】
【0269】
本実験では、
(a)炭素層502の厚さを、113nm、
(b)鉄からなる金属層504の厚さを、83nm、132nm、233nm、393nmとし、
(c)アニール(anneal)のみ、ならびに、3分間エッチングのそれぞれについて、
ラマンスペクトルの様子を調べた。
【実施例12】
【0270】
図18は、金属層504の上に炭素層502を形成した場合の、アニールならびに3分エッチングをした上で冷却した後のラマンスペクトルの様子を示すグラフである。以下、本図を参照して説明する。本図の各グラフの横軸も、図13A、13B、14と同様に、1000cm-1乃至3000cm-1のラマンシフトを表し、縦軸は、スペクトルの強度を表す。
【実施例12】
【0271】
本図に示すように、金属層504が393nmと厚い場合には、アニール直後は、ノイズ由来のピークしか見られず、グラフェン102は形成されていないが、3分エッチングを施すことで、結晶性の良好なグラフェン102が得られていることがわかる。
【実施例12】
【0272】
しかしながら、その他の条件では、アニール直後から結晶性が悪いことを示すピーク(3つのピークのうち、最も左側のピーク)が出現している。エッチングを進めると、結晶性は改善される。
【実施例12】
【0273】
図14と比較すれば、炭素層502と金属層504の形成の順序や、形成する厚さ、エッチングの時間等の諸条件によって、得られるグラフェンの結晶性は変化する。
【実施例12】
【0274】
したがって、製造に要する時間や原材料コストを勘案して、最も良好な組み合わせを、実験的に選択することで、結晶性の高いグラフェンを得ることができる。
【実施例12】
【0275】
なお、本実験では、固溶体層505における炭素濃度もほぼ一様であるため、グラフェンの成長方向の積極的な制御は行っていない。
【実施例12】
【0276】
したがって、上記実施例に開示するように、金属層504の厚さに勾配を設ける等して、グラフェンの成長方向を制御すれば、より一層結晶性を向上させることも可能である。
【実施例12】
【0277】
(実験5)
本実験では、炭素と鉄を共蒸着、同時成膜することで、炭素と鉄の混合体層を形成し、これを初期層とした。また、金属層504は形成せずに、加熱を施して固溶体層505を形成し、エッチングにより金属を除去した。実験の諸元は以下の通りである。
【実施例12】
【0278】
スパッタリングにより、鉄と炭素の混合体層を厚さ25nm乃至35nmで酸化ケイ素/ケイ素基板上に堆積させた。
【実施例12】
【0279】
この後、石英ガラス管内において、摂氏500度、600度、700度に加熱を施し、その温度を維持したまま、塩素・アルゴン混合ガス(腐食剤である塩素は、0.01乃至0.05容量パーセント)を流通して、減圧下でエッチングした。
【実施例12】
【0280】
図19は、加熱温度に応じたラマンスペクトルの様子を示すグラフである。以下、本図を参照して説明する。
【実施例12】
【0281】
本図に示すように、各グラフにはピークが3つある。これらのピークを比較すると、摂氏600度では、グラファイト構造に由来する中央ピークが高く、グラフェン生成の指標となる右側ピークも形成されており、欠陥を表す左側ピークは低い。そこで、加熱温度を摂氏600度に設定することとした。
【実施例12】
【0282】
さらに、電子顕微鏡写真から、グラフェン102の表面に粒子状の酸化鉄が生じていることが判明した。
【実施例12】
【0283】
そこで、混合体層を摂氏600度に加熱して固溶体層505を形成する際に、水素/アルゴン混合ガス(水素は25容量パーセント)を100トルで流通させ、酸化鉄の還元を試みた後、エッチングを行った。
【実施例12】
【0284】
図20は、固溶体層形成時に酸化金属の還元を行う態様で作製した試料のラマンスペクトルの様子を示すグラフである。以下、本図を参照して説明する。
【実施例12】
【0285】
本図に示すように、この諸元では、グラフェン生成の指標となる右側ピークが大きくなっており、結晶性の良いグラフェンが得られていることがわかる。
【実施例12】
【0286】
なお、本実験では、固溶体層505における炭素濃度はほぼ一様であるため、グラフェンの成長方向の積極的な制御は行っていないが、結晶性が良好な結果が得られている。
【実施例12】
【0287】
したがって、上記実施例に開示するように、厚さに勾配を設けた金属層504を形成する等して、グラフェンの成長方向を制御すれば、より一層結晶性を向上させることが可能となる。
【実施例12】
【0288】
なお、上記実施例のいずれにおいても、金属層504の形成を省略して、グラフェンの成長方向の意図的な制御はしないようにすることが可能である。
【実施例12】
【0289】
以下には、鉄と炭素の共蒸着膜(厚さ35nm)に対して加熱を行って固溶体層505を形成した後、塩素でエッチングをする処理につき、加熱の際の水素分圧を異ならせた場合の様子を説明する。ここで、水素は還元剤として働く。
【実施例12】
【0290】
図21は、水素分圧1トルを採用した場合の最終的なグラフェンの結晶の様子を示す走査型電子顕微鏡写真である。図22は、水素分圧20トルを採用した場合の最終的なグラフェンの結晶の様子を示す走査型電子顕微鏡写真である。以下、これらの図を参照して説明する。
【実施例12】
【0291】
図21においては、
(a)右上側に黒と白の二重の縁で囲まれた大きな領域、
(b)右中の黒縁で囲まれた白い輝点
(c)右やや下の黒縁で囲まれた白い輝点
のほか、その他にも小さい白い輝点が撮影されている。これらは、酸化鉄の粒子を示す。
【実施例12】
【0292】
図22においては、このような輝点はまったく見られず、このことから、グラフェンの結晶形状が、図21に示す例に比べて良好であることがわかる。
【実施例12】
【0293】
このように、これらの図には、固溶体層505の形成の際に、加熱しながら還元を行うことの有効性が示されている。
【実施例12】
【0294】
金属のエッチングにともない固溶体層505中の炭素濃度がほぼ一様に上昇するため、ランダムな位置でグラフェンが核発生する。加熱を保ったままエッチングを行うため、炭素は高いモビリティを保ったまま長距離の拡散が可能である。したがって、このような態様であっても、最初に核発生したグラフェンに炭素が取り込まれるので、新たなグラフェンの核発生は抑制され、結晶粒径が比較的大きなグラフェン102が得られる。また、上記実施例のいずれにおいても、基板103として熱酸化膜付きケイ素基板を採用することができ、基板103上に金属を残留させずに、直接グラフェン102を形成することができる。
【実施例12】
【0295】
本願については、2011年2月28日に日本国に出願した特願2011-042781号を基礎とする優先権を主張するものとし、指定国の法令が許す限り、当該基礎出願の内容をすべて本願に取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0296】
本発明によれば、グラフェンの製造方法、基板上に製造されたグラフェン、ならびに、基板上グラフェンを提供することができる。
【符号の説明】
【0297】
101 グラフェンデバイス
102 グラフェン
103 基板
104 結晶粒界
401 ソース電極
402 ドレイン電極
403 絶縁体
404 ゲート電極
501 第1マスク
502 炭素層
503 第2マスク
504 金属層
505 固溶体層
601 線状グラフェン
602 面状グラフェン
801 第3マスク
901 自立マスク
902 スリット
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5A】
5
【図5B】
6
【図5C】
7
【図5D】
8
【図5E】
9
【図5F】
10
【図5G】
11
【図5H】
12
【図5I】
13
【図5J】
14
【図5K】
15
【図5L】
16
【図5M】
17
【図5N】
18
【図5O】
19
【図6A】
20
【図6B】
21
【図7A】
22
【図7B】
23
【図7C】
24
【図7D】
25
【図7E】
26
【図7F】
27
【図8A】
28
【図8B】
29
【図8C】
30
【図8D】
31
【図8E】
32
【図8F】
33
【図8G】
34
【図8H】
35
【図9A】
36
【図9B】
37
【図9C】
38
【図9D】
39
【図9E】
40
【図9F】
41
【図9G】
42
【図9H】
43
【図9I】
44
【図10A】
45
【図10B】
46
【図10C】
47
【図10D】
48
【図10E】
49
【図11A】
50
【図11B】
51
【図11C】
52
【図11D】
53
【図11E】
54
【図11F】
55
【図11G】
56
【図12A】
57
【図12B】
58
【図12C】
59
【図12D】
60
【図12E】
61
【図12F】
62
【図13A】
63
【図13B】
64
【図14】
65
【図15A】
66
【図15B】
67
【図16A】
68
【図16B】
69
【図17】
70
【図18】
71
【図19】
72
【図20】
73
【図21】
74
【図22】
75