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明細書 :ハロゲン化触媒及びハロゲン化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5863676号 (P5863676)
登録日 平成28年1月8日(2016.1.8)
発行日 平成28年2月17日(2016.2.17)
発明の名称または考案の名称 ハロゲン化触媒及びハロゲン化合物の製造方法
国際特許分類 B01J  23/34        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  35/08        (2006.01)
C07C  17/10        (2006.01)
C07C  19/075       (2006.01)
C07C  23/10        (2006.01)
C07C  23/16        (2006.01)
C07C  17/14        (2006.01)
C07C  17/12        (2006.01)
C07C  22/04        (2006.01)
C07C  25/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C12P   3/00        (2006.01)
FI B01J 23/34 Z
B01J 37/00 A
B01J 35/10 301G
B01J 35/10 301J
B01J 35/08 A
C07C 17/10
C07C 19/075
C07C 23/10
C07C 23/16
C07C 17/14
C07C 17/12
C07C 22/04
C07C 25/02
C07B 61/00 300
C12P 3/00 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 16
出願番号 特願2012-553562 (P2012-553562)
出願日 平成23年10月27日(2011.10.27)
国際出願番号 PCT/JP2011/074795
国際公開番号 WO2012/098746
国際公開日 平成24年7月26日(2012.7.26)
優先権出願番号 2011008026
優先日 平成23年1月18日(2011.1.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年9月26日(2014.9.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】仁科 勇太
【氏名】橋本 英樹
【氏名】高田 潤
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】延平 修一
参考文献・文献 特開平06-277510(JP,A)
特開平08-208220(JP,A)
特開昭59-190933(JP,A)
SPIRO THOMAS G. ET AL.,Bacteriogenic Manganese Oxides,ACC CHEM RES,2010年 1月,vol. 43, no. 1,p. 2 - 9
MIYATA NAOYUKI ET AL.,Microbial Manganese Oxide Formation and Interaction with Toxic Metal Ions,J BIOSCI BIOENG,2007年,vol. 104, no. 1,p. 1 - 8
MIYATA NAOYUKI ET AL.,Procuciton of Biogenic Manganese Oxides by Repeated-Batch Cultures of Laboratory Microcosms,J BIOSCI BIOENG,2007年,vol. 103, no. 5,p. 432 - 439
森田惇也 ほか,酸化マンガン触媒を用いる炭化水素の官能基化,第106回触媒討論会 討論会A予稿集,2010年 9月15日,p. 284
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74

CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
微生物により生成されたマンガン酸化物の微結晶を含む多孔質マンガン酸化物を含有するハロゲン化触媒の存在下に、分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物とハロゲンとを反応させることを特徴とするハロゲン化合物の製造方法
【請求項2】
前記多孔質マンガン酸化物がマンガン酸化物の微結晶の集合体である、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記多孔質マンガン酸化物の比表面積が100 m2/g以上である、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
前記多孔質マンガン酸化物のMnの平均価数が3.05~3.7である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記多孔質マンガン酸化物が中空球形粒子の凝集体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
前記中空球形粒子がMnO6八面体ナノシートから形成されている、請求項5に記載の方法
【請求項7】
前記多孔質マンガン酸化物がマンガン以外の構成元素として、カルシウム、マグネシウム及びリンを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
光の照射下に反応を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
溶媒の不存在下で反応を行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
不活性溶媒の存在下で反応を行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が置換基を有していても良い炭化水素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素が、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、置換基を有していても良い、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する複素環式化合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、置換基を有していても良い、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミド及びポリカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の方法に比べて、臭素化合物などのハロゲン化合物を高収率で効率的に製造することができるハロゲン化触媒及び該ハロゲン化触媒を用いたハロゲン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機化学工業、石油化学工業、医薬工業又は農薬工業の分野において、有機ハロゲン化合物は重要な中間体となっており、その製造方法については多くの先行技術が知られている。
【0003】
たとえば、有機臭素化合物を製造する方法としては、アルコールにBr2又はHBrを反応させると臭化物が容易に合成できる。しかし、アルコールより安価なアルカンを直接臭素化することは難しい。アルカンの臭素化に関する従来技術としては以下に示すものが知られている。
【0004】
非特許文献1では、シクロヘキサンを酢酸中で臭素化する方法が報告されている(下式)。
【0005】
【化1】
JP0005863676B2_000002t.gif

【0006】
しかし、この方法では、酢酸を溶媒量使用する必要があるにも関わらず収率が非常に低く、反応後の中和等に多量の塩基が必要であり、中和後に生成物の抽出作業が必要である。
【0007】
非特許文献2及び特許文献1では、酸化マンガンの存在下に、シクロヘキサンを臭素化する方法が報告されている(下式)。
【0008】
【化2】
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【0009】
しかし、この方法では、臭素に対して2倍(200 mol%)の酸化マンガン(MnO2)が必要である。これは、反応後に副生するHBrとMnO2が反応し、MnO(OH)Brという不活性種を生じるためである。
【0010】
非特許文献3では、ナトリウムブトキシドの存在下にシクロヘキサンを臭素化する方法が報告されている(下式)。
【0011】
【化3】
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【0012】
しかし、この方法には、化学量論量の強塩基(NaOBu-t)を加える必要があるとともに、反応時間が長いという問題がある。
【0013】
特許文献2では、プロパンを加熱下に臭素化する方法が報告されている(下図)。
【0014】
【化4】
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【0015】
しかし、この方法には、350℃という極めて高い温度が必要であり、生成物が複数生成するため分離が困難という問題がある。
【0016】
非特許文献4では、CBr4・2AlBr3の存在下にシクロヘキサン及びプロパンを臭素化する方法が報告されている。
【0017】
【化5】
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【0018】
【化6】
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【0019】
しかし、この方法では、反応性の高い超強酸であるCBr4・2AlBr3を用いるため、シクロヘキサンについては低温(-40℃)で反応を行う必要がある。
【0020】
非特許文献5では、CH2Br2・SbF5の存在下にプロパンを臭素化する方法が報告されている。
【0021】
【化7】
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【0022】
しかし、この方法では、反応性の高い超強酸であるCH2Br2・SbF5を用いるため、低温(-78℃)で反応を開始する必要がある。
【0023】
非特許文献6では、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)を用いる一般的な臭素化方法が記載されている(下式)。
【0024】
【化8】
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【0025】
しかし、この方法は、NBSを別途合成する必要がある点、及び反応後に廃棄物としてコハク酸イミドが副生する点が問題である。
【0026】
マンガン酸化物は、その物理化学特性や触媒等の幅広い応用のために非常に魅力的な材料である。しかし、人工的に特異な構造を有するマンガン酸化物を合成するためには、強力な酸化剤を用いるか過酷な反応条件が必要である。このようなマンガン酸化物の合成に関する従来技術としては以下に示すものが知られている。
【0027】
非特許文献7では、Mn(NO3)2水溶液を熱水処理することによりMnO2を調製する方法が報告されている(下式)。
【0028】
【化9】
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【0029】
しかし、この方法では、高次構造を有するマンガン酸化物が合成できるが(非特許文献7のFigure 2参照)、高い反応温度が必要である。
【0030】
非特許文献8では、MnSO4をKClO3とドデシル硫酸ナトリウムの存在下に熱水処理することによりMnO2を調製する方法が報告されている(下式)。
【0031】
【化10】
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【0032】
しかし、この方法では、高次構造を有するマンガン酸化物が合成できるが(特許文献8のFigure 3参照)、高い反応温度が必要である。また、酸化剤としてKClO3、補助剤としてドデシル硫酸ナトリウムを加える必要がある。
【0033】
特許文献3では、ニトリル水和反応に対して高活性でしかも安定性の高い二酸化マンガン触媒、及び当該触媒は、過マンガン酸塩と還元剤とを合流混合して反応させることにより製造できることが報告されている。
【先行技術文献】
【0034】

【特許文献1】中国特許出願公開第1477088号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0006246号明細書
【特許文献3】特開平10-128113号公報
【0035】

【非特許文献1】Tetrahedron Letters, 46(33), 5587-5590; 2005.
【非特許文献2】Tetrahedron Letters, 46(3), 487-489; 2005.
【非特許文献3】Synthesis, (9), 1473-1478; 2005.
【非特許文献4】Tetrahedron Letters, 36(51), 9365-8; 1995.
【非特許文献5】Journal of Organic Chemistry, 54(6), 1463-5; 1989.
【非特許文献6】Journal of Organic Chemistry, 48(16), 2743-7; 1983.
【非特許文献7】Inorganic Chemistry, 45, 2038-2044; 2006.
【非特許文献8】Crystal Growth & Design, 7, 159-162; 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
臭化物は100年以上も前から有機合成における重要な中間体として利用され続けており(例えばクロスカップリング反応(2010年ノーベル化学賞受賞)やグリニャール反応(1912年ノーベル化学賞)等)、臭化物の利用方法に関しては広く展開されている(医薬品合成、機能性材料合成等)。しかしながら、臭化物自体の合成に関しては効率のよい方法は開発されていない。
【0037】
従来の臭素化反応には、上記のように、(a)酢酸を溶媒に用いる必要がある、(b)過剰量の酸化マンガンを使用する必要がある、(c)化学量論量の強塩基を使用する必要がある、(d)無触媒の場合、超高温で反応させる必要がある、(e)超強酸を用い、極低温で反応させる必要がある、(f)NBSのような臭素化剤を用いる必要がある等の問題があった。
【0038】
また、従来のマンガン酸化物の調製法には、高温条件や酸化剤及び補助剤を添加する必要がある等の問題があった。
【0039】
そこで、本発明は、上記のような問題が無く、ハロゲン化合物を高収率で効率的に製造することができるハロゲン化触媒及びハロゲン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明者らは、微生物が作るマンガン酸化物(以下、BMOと呼ぶこともある)をハロゲン化触媒として使用することによって上記目的を達成することができるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のハロゲン化触媒及びハロゲン化合物の製造方法を提供するものである。
【0041】
(1)ハロゲン化触媒
(1-1) 微生物により生成されたマンガン酸化物の微結晶を含む多孔質マンガン酸化物を含有するハロゲン化触媒。
(1-2) 前記多孔質マンガン酸化物がマンガン酸化物の微結晶の集合体である、(1-1)に記載のハロゲン化触媒。
(1-3) 前記多孔質マンガン酸化物の比表面積が100 m2/g以上である、(1-1)又は(1-2)に記載のハロゲン化触媒。
(1-4) 前記多孔質マンガン酸化物のMnの平均価数が3.05~3.7である、(1-1)~(1-3)のいずれかに記載のハロゲン化触媒。
(1-5) 前記多孔質マンガン酸化物が中空球形粒子の凝集体である、(1-1)~(1-4)のいずれかに記載のハロゲン化触媒。
(1-6) 前記中空球形粒子がMnO6八面体ナノシートから形成されている、(1-5)に記載のハロゲン化触媒。
(1-7) 前記多孔質マンガン酸化物がマンガン以外の構成元素として、カルシウム、マグネシウム及びリンを含有する、(1-1)~(1-6)のいずれかに記載のハロゲン化触媒。
(1-8) 前記多孔質マンガン酸化物が、更にアルミニウム、ケイ素、硫黄、塩素及びカリウムを含有する、(1-7)に記載のハロゲン化触媒。
【0042】
(2)ハロゲン化触媒の製造方法
(2-1) (1-1)~(1-8)のいずれかに記載のハロゲン化触媒の存在下に、分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物とハロゲンとを反応させることを特徴とするハロゲン化合物の製造方法。
(2-2) 前記化合物に対するハロゲン化触媒の量が0.1~30モル%となる条件で反応を行う、(2-1)に記載の方法。
(2-3) 前記化合物に対するハロゲンのモル比が0.025~1.0となる条件で反応を行う、(2-1)又は(2-2)に記載の方法。
(2-4) 0~150℃の温度で反応を行う、(2-1)~(2-3)のいずれかに記載の方法。
(2-5) 光の照射下に反応を行う、(2-1)~(2-4)のいずれかに記載の方法。
(2-6) 溶媒の不存在下で反応を行う、(2-1)~(2-5)のいずれかに記載の方法。
(2-7) 不活性溶媒の存在下で反応を行う、(2-1)~(2-5)のいずれかに記載の方法。
(2-8) 反応終了後に、分離回収した前記ハロゲン化触媒をリサイクルする、(2-1)~(2-7)のいずれかに記載の方法。
(2-9) 前記化合物が置換基を有していても良い炭化水素である、(2-1)~(2-8)のいずれかに記載の方法。
(2-10) 前記炭化水素が、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(2-9)に記載の方法。
(2-11) 前記化合物が、置換基を有していても良い、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する複素環式化合物である、(2-1)~(2-8)のいずれかに記載の方法。
(2-12) 前記化合物が、置換基を有していても良い、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミド及びポリカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である、(2-1)~(2-8)のいずれかに記載の方法。
(2-13) 前記ハロゲンが臭素である、(2-1)~(2-12)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明のハロゲン化触媒によれば、安価で入手容易な炭化水素を原料に用い、無溶媒条件で直接臭素化を達成できる。また、温度制御が容易な室温~100℃でハロゲン化反応が進行し、強塩基、強酸性の触媒及び臭素化剤を使用する必要がない。更に、ハロゲン化合物を高収率で製造することができる。
【0044】
本発明のハロゲン化触媒は、微生物が温和な条件(常温・常圧)で産出したものであり、使用量も触媒量(臭素に対して1 mol%)で良い。
【0045】
医薬・農薬中間体、及び感光材中間体として知られるsec-ブチルブロミドやi-プロピルブロミドは、本発明の方法を用いれば安価なブタンやプロパンから合成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】BMOの顕微鏡写真である。a:BMOの光学顕微鏡写真、b~d:BMOのSEM写真、e:BMOのTEM写真、f:BMOの超薄切片のHAADF-STEM写真、g:BMOナノシートのTEM写真
【図2】BMOの超薄切片のSTEMによる元素マッピング像である。
【図3】BMO及び標準試料のMn K吸収端のXANESスペクトルを示すグラフである。
【図4】左:BMO及び標準試料のXRDパターンを示すグラフ、右:BMOナノシートのTEM像と電子回折像(挿入図)である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0048】
ハロゲン化触媒
本発明のハロゲン化触媒は、微生物により生成されたマンガン酸化物の微結晶を含む多孔質マンガン酸化物を含有することを特徴とする。

【0049】
本発明のハロゲン化触媒を用いた臭素化反応には、従来の臭素化反応のような問題が無く、ハロゲン化合物を高収率で効率的に製造することができる。また、本発明のハロゲン化触媒の製造には強力な酸化剤や過酷な反応条件が必要でなく、微生物が温和な条件(常温・常圧)で産出できる。

【0050】
本発明におけるハロゲン化触媒のハロゲン化とは、塩素化、臭素化及びフッ素化を意味するが、本発明のハロゲン化触媒は、好ましくは塩素化及び臭素化、より好ましくは臭素化に使用される。

【0051】
本発明で使用する多孔質マンガン酸化物は、微生物により生成され、且つハロゲン化触媒として機能するマンガン酸化物であれば、特に限定されない。微生物が生成する多孔質マンガン酸化物は、ナノシート構造やMn2+, Mn3+, Mn4+の混合原子価を有するため、触媒として使用する場合に有利である。ここで、多孔質とは多数の細孔を有する性質のことであり、細孔の形状及び大きさは特に限定されないが、例えば半径50 nm以下のメソ孔が挙げられる。多孔質マンガン酸化物の形状としては、球形、中空球形、チューブ状等が挙げられ、多孔質マンガン酸化物の大きさは、その形状によって様々であるが、球形及び中空球形では0.1~20.0μm程度、チューブ状では5.0~200μm程度である。

【0052】
多孔質マンガン酸化物を生成する微生物としては、例として、バクテリアではSiderocapsa属、Hyphomicribium属、Pseudomonas属、Arthrobacter属、Leptothrix属、Metallogenium属、Aeromonas属、Citrobacter属、Flavobacterium属、Hyphomicrobium属、Pseudomonas属、Oceanospirillum属、Marine属、Streptomyces属、Bacillus属等に属するものが挙げられ(H.L. Ehrlich, D.K. Newman, Geomicrobiology, fifth ed., CRC Press Taylor & Francis Group, 2009, p.349)、菌類ではAcremonium属、Coniothyrium属、Cladosporium属、Penicillium属、Phoma属、Verticillium属(非特許文献:N. Miyata, et al., Appl. Environ. Microbiol., 72(10), 6467-6473 (2006))、Trametes属、Stropharia属、Phanerochaete属(非特許文献:N. Miyata, et al., FEMS Microbiol. Ecol., 47, 101-109(2004))等に属するものが挙げられる。多孔質マンガン酸化物の製造にはこれらの微生物を含む混合培養系も使用できる。

【0053】
多孔質マンガン酸化物は、例えば、多孔質マンガン酸化物を生成する微生物(群)を実施例に記載の方法(N. Miyata et al. J. Biosci. Bioeng. 103(5), 432-439(2007)を参照)に従い培養することで製造することができる。

【0054】
マンガン酸化物の微結晶とは、通常、幅1.0~10.0 nm、特に2.0~5.0 nm程度、厚さ0.4~5.0 nm、特に1.0~2.0 nm程度の大きさの結晶粒子であり、当該結晶粒子はMnO6八面体シートを基本単位とした層状構造を有していることが望ましい。また、当該結晶粒子が基本単位となり、それらが二次元的にランダムに繋がってBMOナノシートを構成することができる。

【0055】
多孔質マンガン酸化物は、マンガン酸化物の微結晶の集合体であって、マンガン酸化物の微結晶により構成されていることが好ましい。

【0056】
多孔質マンガン酸化物の比表面積は、好ましくは100 m2/g以上、より好ましくは120~200 m2/gである。

【0057】
多孔質マンガン酸化物のMnの平均価数は、好ましくは3.05~3.7、より好ましくは3.2~3.5である。

【0058】
また、多孔質マンガン酸化物は、中空球形粒子の凝集体であることが望ましく、当該中空球形粒子は口穴が(好ましくは2つ)開いたものであっても良い。当該中空球形粒子の直径は、1.0~20.0μm、特に5.0~10.0μm程度が望ましく、口穴の直径は、0.1~5.0μm、特に1.0~2.0μm程度が望ましい。中空球形粒子の基本単位は、例えばBMOナノシートであり、BMOナノシートの厚さは、通常0.4~5.0 nm、特に1.0~2.0 nm程度である。

【0059】
多孔質マンガン酸化物は構成元素として、マンガンに加えて、カルシウム、マグネシウム及びリンを含有することが好ましく、これらに加えて更にアルミニウム、ケイ素、硫黄、塩素及びカリウムを含有することがより好ましい。これらの(酸素を除いた)元素の相対組成は、通常、原子数%で、Mn : Ca : Mg : P : Al : Si : S : Cl : K = 75.4~88.9 : 3.9~7.3 : 0.7~5.0 : 1.2~5.7 : 0.2~3.3 : 0.2~3.5 : 0.2~3.6 : 1.3~4.9 : 0.2~1.4である。また、多孔質マンガン酸化物には、通常C、N、Hも含まれており、これらの含有量は、それぞれ12.0~17.0 wt%、1.0~5.0 wt%、1.0~5.0 wt%程度である。

【0060】
微生物をコバルト、ニッケル等の遷移金属元素やネオジウム等の希土類元素等が存在する環境下で培養することにより、多孔質マンガン酸化物にこれらの元素を含ませることもできる。

【0061】
ハロゲン化合物の製造方法
本発明のハロゲン化合物の製造方法は、上記ハロゲン化触媒の存在下に、分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物とハロゲンとを反応させることを特徴とする。

【0062】
本発明のハロゲン化合物の製造方法では、従来の臭素化反応のような問題が無く、ハロゲン化合物を高収率で効率的に製造することができる。

【0063】
本発明において使用されるハロゲンとしては、塩素、臭素及びフッ素が挙げられるが、特に臭素が好ましい。

【0064】
本発明において使用される分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物は、ハロゲン置換可能なC-H結合を有する化合物であれば特に限定されず、種々の骨格(鎖状構造、芳香環、複素環等)を有し得、これらは置換基を有しても良く、低分子化合物だけでなく重合体(オリゴマー、ポリマー)を含む。

【0065】
分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物としては、これらに限定されるものではないが、炭化水素、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれた少なくとも1種のヘテロ原子を含有する複素環式化合物、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミド及びポリカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体等を例示することができ、これらの化合物は置換基を有していても良い。

【0066】
上記炭化水素としては、これらに限定されるものではないが、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これら炭化水素はハロゲン化反応に不活性な置換基を有していても良く、ハロゲン化反応に不活性な置換基としては、塩素、臭素などのハロゲン、カルボニル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、ジメチルアミノ基、スルホニル基等を例示することができる。

【0067】
複素環式化合物とは、1又は2個のヘテロ原子を有する5又は6員の複素環を含む化合物を意味し、これらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、フラン、ベンゾフラン、クロマン、クロメンなどの酸素原子を含有する複素環式化合物、テトラヒドロピロール、ピロール、キノリン、アクリジンなどの窒素原子を含有する複素環式化合物、テトラヒドロチオフェン、チオフェン、ベンゾチオフェンなどの硫黄原子を含有する複素環式化合物などを例示することができる。これら複素環式化合物はハロゲン化反応に不活性な置換基を有していても良く、ハロゲン化反応に不活性な置換基としては、塩素、臭素などのハロゲン、カルボニル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、ジメチルアミノ基、スルホニル基、アルコキシ基などを例示することができる。

【0068】
上記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、合成ゴムなどが、上記芳香族ビニル重合体としては、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレンなどが、上記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレートなどが、上記ポリアミドとしては、6-ナイロン、66-ナイロンなどが挙げられる。上記ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミド及びポリカーボネートはハロゲン化反応に不活性な置換基を有していても良く、ハロゲン化反応に不活性な置換基としては、塩素、臭素などのハロゲン、カルボニル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、ジメチルアミノ基、スルホニル基、アルコキシ基などを例示することができる。

【0069】
本発明においてハロゲン化合物とは、上記分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物がハロゲン化反応により、少なくとも1個のC-H結合において水素がハロゲンで置換された化合物のことを意味する。

【0070】
本発明において、反応開示時における分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物に対するハロゲン化触媒の割合は、通常0.1~30モル%、好ましくは0.5~5.0モル%である。本発明において、反応開示時における分子内に少なくとも1個のC-H結合を有する化合物に対するハロゲンのモル比は、好ましくは0.001~1.0、より好ましくは0.02~0.08である。

【0071】
本発明における反応の温度は通常0~150℃、好ましくは25~100℃である。ハロゲン化反応を高収率で且つ効率よく進めるにはこの温度範囲で反応を行うことが好ましい。本発明における反応の時間は、反応の原料等に応じて適宜設定されるが、通常5~3000分、好ましくは10~1800分である。

【0072】
本発明の反応は、光の非照射下に行うこともできるし、光の照射下に行うこともできる。本発明の反応を光照射下に行うと、副生するハロゲン化水素に起因するハロゲンが反応に利用されるので、ハロゲン化合物が高収率で得られるので好適である。

【0073】
本発明の反応は、溶媒の不存在下に行うこともできるし、溶媒の存在下に行うこともできる。溶媒としては、ハロゲン化反応に不活性な溶媒が使用され、具体的には、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルム、ジブロモメタン、ブロモホルムなどを例示することができる。

【0074】
本発明の反応を終了した後の反応混合物の処理法としては、公知の処理法を適用することができる。例えば、最初に触媒を回収した後、ハロゲン化合物を蒸留、結晶化などにより分離する等である。

【0075】
本発明のハロゲン化反応を終了した後の反応混合物から回収されたハロゲン化触媒は、そのまま又は適切な処理を施した後に、同じ又は異なる反応にリサイクルすることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
[Mn酸化微生物の培養とBMOの合成]
本実施例で用いた微生物群は静岡県菊川水系から採取された河川床生物膜より調製されたマンガン酸化混合培養系であり、培養は宮田等の方法に即して行った(N. Miyata et al. J. Biosci. Bioeng. 103(5), 432-439 (2007))。35 Lのプラスチック製バケツに水道水20 L、NaCOOH・3H2O (ナカライテスク:純度99%)を1000 mg、ソイペプトン(ナカライテスク)を400 mg、KH2PO4 (ナカライテスク:純度99%)を100 mg加えたものを基礎培地として用いた。基礎培地にMnSO4水溶液(MnSO4・5H2O, ナカライテスク:純度99%)を添加し、培地中のMn濃度を5 ppmに調整した後に、上記の論文において培養されたバイオマット(培地及びマンガン酸化物)を1 L植菌した。酸素の供給にはエアーポンプ(4 L/min)を用いた。Mn2+のパックテストを用いてMn濃度をモニタリングし、0 ppmとなったところで再びMn濃度が5 ppmになるようにMnSO4水溶液を添加した。3ヶ月培養した後に、生成した黒色沈殿物を回収し、20倍量の蒸留水で洗浄し、乾燥した。得られた粉末を今後BMO粉末と呼ぶ。以下では当該BMOを使用し、実験を行った。
【実施例】
【0078】
[炭化水素の触媒的臭素化反応]
空気雰囲気下(1 atm)、バイオジナスマンガン酸化物(BMO、1 mg)、ヘキサン(1、1mL)、臭素(0.5 mmol)を試験管に加え、ねじ式のキャップを取り付けた。100℃で10分間加熱撹拌した後、未反応の臭素をチオ硫酸ナトリウム水溶液で処理し、ヘキサンで有機物を抽出した。蒸留により2-ブロモヘキサン(1′)及び3-ブロモヘキサン(1′′)を収率98%で得た(式(1))。
【実施例】
【0079】
【化11】
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【実施例】
【0080】
表1に示すように、本触媒は人工的に合成された市販の酸化マンガン(MnO2及びMn2O3)(和光純薬、99.5%)に比べて活性が高かった。
【実施例】
【0081】
【表1】
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【実施例】
【0082】
表2に示されているように基質の適用範囲を調査した結果、シクロヘキサン(2)を原料に用いると、ブロモシクロヘキサン(2′)が91%で得られた。シクロオクタン(3)を原料に用いるとブロモシクロオクタン(3′)が定量的に得られた。トルエン(4)のベンジル位は容易に臭素化された。これらの結果から、本反応はラジカル的に進行していると考えられる。そのため、ベンゼン(5)の臭素化には長時間が必要であった。また、末端C-H結合は変換されにくく、tert-ブチルベンゼン(6)は、ベンゼン環のp-位のみが選択的に臭素化された。
【実施例】
【0083】
【表2】
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【実施例】
【0084】
[BMOのキャラクタリゼーション]
BMOの形状観察を光学顕微鏡(OLYPUS BX-51)、走査型電子顕微鏡(Hitachi S-4300)及び透過型電子顕微鏡(JEOL JEM-2100F with CEOS Cs Corrector for STEM)、結晶構造解析をX線回折測定(Rigaku RINT-2000)及び電子回折測定(JEOL JEM-2100F)、組成分析をエネルギー分散型X線分析(JEOL JED-2300T)、化学状態をX線吸収分光法(PF BL9C)、比表面積を窒素吸着法(日本ベル(株)、BELSORP-mini II)により評価した。
【実施例】
【0085】
図1aにBMOの光学顕微鏡写真を示す。茶色味を帯びた直径10μm程度の中空球形粒子が多数凝集している様子が確認され(図1a)、SEM画像からこの中空球形粒子には小さな口穴が空いていることも明らかとなった(図1b)。更に詳細にSEM観察を行ったところ、中空球形粒子の口穴は粒子一つ当たり2つ存在することが明らかとなった(図1c)。また、外側の表面形状は凹凸の多い鱗片状(図1c)である一方、内側の表面は比較的スムースであった(図1d)。観察された中空球形の構造物はSiderocapsa属の細菌が作ったMn酸化物に類似していることから、本実施例の培養系ではSiderocapsa属が優先種であると考えられる。中空球形粒子は細菌の周りにMn酸化物が形成された結果できた構造物であり、口穴は細菌が外に出るためにできた穴であると考えられるが、真偽の程は定かではない。BMO球形粒子及び口穴の直径は7.09±0.56μm (N = 57)、1.5±0.2μm (N = 57)であり、ばらつきの少ない数値であった。
【実施例】
【0086】
図1eのTEM像から、中空球形粒子はきわめて薄いシート(BMOナノシート)からなっており、表面の燐片形状はBMOナノシートのエッジ部分及びBMOナノシートにできた皺(Alホイルに皺ができるようなイメージ)によるものであることが明らかとなった。図1fの超薄切片の観察から、SEM観察では密に詰まっているように見えた中空球形粒子の壁面は粗であり、BMOナノシートの厚さは約1.6 nmであることが明らかとなった。また、平滑に見えたナノシートの表面には5 nm程度の多数の凸凹が存在することも明らかとなった(図1g)。このような微細構造を有するBMOは大きな表面積を有すると予想される。そこで、窒素吸着法により、BMO粉末の細孔に関する情報を調査した。その結果、比表面積は120~160 m2/gである(一般的なMn酸化物の比表面積は10~120 m2/g)とともに半径50 nm以下のメソ孔が多数確認された。メソ孔はナノシートの絡まり合いの結果形成されたものや、ナノシート表面の凸凹に起因するものと考えられる。
【実施例】
【0087】
次に、BMOの組成を調べるためにSEMに付属のEDXによりBMOの組成分析を行った。その結果、主成分はMnとOであり、微量のCa、Mg、Pを含み、更に微量のAl、Si、S、Cl、Kを含むことが明らかとなった。これらの元素(酸素を除いた)の相対組成(at %)は、Mn:Ca:Mg:P:Al:Si:S:Cl:K = 84.9:5.5:2.3:3.0:0.8:0.8:1.1:0.6:0.9であった。STEM-EDXで分析した超薄切片の元素マッピング像を図2に示す。Mn、O、Ca、MgはBMOナノシート中に極めて均一に分布していることが明らかとなった。測定時の電子線の径は0.3 nmでマッピング像の空間分解能は1.2 nmであることから、これらの元素がnmスケールで均一に分布していることが明らかとなった。燃焼法によってC、N、H量を調べたところそれぞれ14.0、2.7、2.8wt%であり、BMOには微生物由来の有機物成分が多量に含まれていることも明らかとなった。
【実施例】
【0088】
BMOのMnの価数及びMn周りの局所構造解析を行うためにXAFS測定を行った。図3にBMO、標準試料であるMnO、Mn2O3、MnO2のXANESスペクトルを示す。BMOの吸収端エネルギーはMnO2とMn2O3の間であった。標準試料でMnの価数と吸収端エネルギーの検量線を引き、BMOのMnの価数を見積もったところ、平均価数は3.3であることが明らかとなった。この値は、一般的なマンガン酸化バクテリアであるLeptothrix discophora SP-6が作るBMOの値(3.8)よりも低価数であった。XAFSスペクトルからEXAFS振動を抽出してフーリエ変換により得られた動径構造関数は、MnO6八面体を基本ユニットとするBirnessite (層状構造)やTodorokite (3×3トンネル構造)と類似しており、BMOの構造もMnO6八面体が基本ユニットであることが明らかとなった。
【実施例】
【0089】
次に、BMOの結晶構造解析を粉末XRD測定及びTEMのED測定により行った。図4にBMOのXRDパターンを示す。一般的にBMOの結晶構造は、MnO6八面体が辺を共有して二次元的につながったシート(MnO6八面体シート)が層状に連なったMn酸化物やトンネル状を形作ったMn酸化物に類似していることが知られている。そこで、結晶構造の比較のために、層状構造を有するBirnessite及びトンネル状構造を有するTodorokiteを作製し、BMOのXRDパターンと比較した。
【実施例】
【0090】
BirnessiteはQ. Feng等の方法に即して作製した(Birnessite : Q. feng, et al., Ceram. Soc. Jpn., 105, 564 (1997))。即ち、0.3 mol/LのMn(NO3)2水溶液100 mLを激しく撹拌しつつ、そこに3%のH2O2と0.6 mol/LのNaOHの混合溶液200 mLをできるだけ素早く加えた。10 min撹拌後、母液と共に60℃で1日間熟成させ、その後、濾過、水洗、乾燥させた。
【実施例】
【0091】
TodorokiteはX. J. Yang等の方法に即して作製した(X. J. Yang, et al., Chem. Lett., 2000, 1192)。即ち、上記の方法で作成したBirnessiteを0.5 mol/LのMgCl2水溶液に加え、1日間撹拌した。沈殿物を濾過し、再度MgCl2水溶液に加え、150℃で2日間水熱処理を行った。その後、沈殿物を濾過、水洗、乾燥させた。
【実施例】
【0092】
Birnessite及びTodorokiteとBMOのXRDパターンと比較すると、本実施例のBMOはd = 9.6, 4.8Åに回折線が確認された。これは、層状やトンネル状構造の(001)及び(002)面に対応している。また、d = 2.5, 1.4Åの回折線はMnO6八面体シートの面内の回折線である(20l), (11l)面及び(02l), (31l)面を示していることから、BMOは確かにMnO6八面体のシート構造を有することが明らかとなった。しかし、層間やトンネル間に入るイオン種やその量によって(001)面及び(002)面の回折線の位置はシフトするため、XRDではMnO6八面体シートが層状に連なっているかトンネル状を形作っているかは判断できなかった。
【実施例】
【0093】
BMOのナノシート部分の拡大像とEDパターンを図4右側の挿入図に示す。EDパターンにはd = 2.5, 1.4Åの回折線のみが確認された。これらは、面内を示す(20l), (11l)面及び(02l), (31l)面の回折線を示しており、(001)や(002)回折線は確認されなかった。これは、BMOナノシートはMnO6八面体シートに対応しており、面内がab面であり面直方向にMnO6八面体シートが層として連なっていることを示している。もし、BMOがトンネル状構造であれば、電子回折パターンにはトンネル構造に起因する(h00)面が現れるが、それが現れていないということは大部分のMnO6八面体シートが電子線の入射方向に沿って層状に連なっていることを意味している。つまり、本実施例のBMOは大部分がBirnessite様の層状構造を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0094】
しかしながら、XRDで確認された(001), (002)の回折線は非常にブロードであるため、実際にはトンネル状構造も混ざっていると考えられる。また、BMOナノシート上に確認された格子縞から、結晶のドメインサイズを計測したところ、3.8±1.5 nm (N = 40)であった。これはMnO6八面体シートのab面内の結晶子のサイズを反映しており、前述したBMOナノシートの厚さ(1.6 nm)はc軸方向の結晶の厚さを反映していると考えられる。
【実施例】
【0095】
以上の結果から、本実施例で得られたBMOは以下の特徴を有することが明らかとなった。
(I) BMOは、直径1.5μm程度の口穴が2つ開いた直径7.09μm程度の中空球形粒子が多数凝集したものである。
(II) 球形粒子の基本単位は厚さ1.6 nmのBMOナノシートであり、皺の入ったシートが複数枚複雑に絡みあっている。
(III) BMOナノシートは、幅3.8 nm程度、厚さ1.6 nm程度の結晶粒子が基本単位となり、それらが二次元的にランダムに繋がって構成されている。
(IV) 結晶粒子はMnO6八面体シートを基本単位とした層状構造を有し、MnO6八面体シートのab面がBMOナノシートの面内に対応し、面直方向に沿ってMnO6八面体シートが積層した構造をとっている。
【実施例】
【0096】
比較例1(特開平10-128113号公報の実施例1の1/1000のスケール)
過マンガン酸カリウム2.486 mmolを水2.4 mlに溶解し、過マンガン酸カリウム水溶液を調製した。一方、硫酸マンガン1.657 mmolと硫酸5.427 mmolを水1.04 mlに溶解し、硫酸マンガン水溶液を調製した。55℃に加熱した前記過マンガン酸カリウム水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、温水浴に浸して55℃に加熱したT字管(合流混合器)の左右の開口部から、それぞれ5分30秒かけて連続的に供給し、反応混合液(反応生成スラリー)を残りの開口部から流出させた。
【実施例】
【0097】
流出した反応生成スラリーを20 mLのビーカーに入れ、撹拌しながら90℃で1時間熟成した。熟成後、濾過、洗浄し、ケーキを得た。ケーキを110℃で20時間乾燥して二酸化マンガン触媒を得た。
【実施例】
【0098】
この合成によって得られた前記酸化マンガン(比表面積75 m2 /g)を使用し、全く同じ条件で前記表2のシクロヘキサンの臭素化反応を行った。ブロモシクロヘキサンの収率は27%であった。
【実施例】
【0099】
比較例2(特開平10-128113号公報の比較例1の1/1000のスケール)
過マンガン酸カリウム2.2 mmolを水2.2 mlに溶解して、過マンガン酸カリウム水溶液を調製し、55℃に加熱した。一方、硫酸マンガン3.3 mmolと硫酸3.3 mmolを水1.3 mlに溶解して、硫酸マンガン水溶液を調製し、55℃に加熱した。前記過マンガン酸カリウム水溶液中に、撹拌しながら、前記硫酸マンガン水溶液を速やかに注加した。なお、硫酸マンガン水溶液注加時に発熱が見られた。得られた反応生成スラリーを、撹拌しながら90℃で熟成した。1時間熟成後、濾過、洗浄し、ケーキを得た。ケーキを110℃で20時間乾燥して二酸化マンガン触媒を得た。
【実施例】
【0100】
この合成によって得られた前記酸化マンガン(比表面積115 m2 /g)を使用し、全く同じ条件で前記表2のシクロヘキサンの臭素化反応を行った。ブロモシクロヘキサンの収率は27%であった。
【実施例】
【0101】
これらの比較実験の結果から、本発明の多孔質マンガン酸化物は従来公知の合成酸化マンガンに比べて顕著に臭素化反応活性が高いことがわかる。また、比表面積は反応に大きな影響を与えないことがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3