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明細書 :AGE特異的アプタマーの腎疾患治療用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5873027号 (P5873027)
登録日 平成28年1月22日(2016.1.22)
発行日 平成28年3月1日(2016.3.1)
発明の名称または考案の名称 AGE特異的アプタマーの腎疾患治療用途
国際特許分類 A61K  31/711       (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P   3/06        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
C12N  15/115       (2010.01)
FI A61K 31/711 ZNA
A61P 13/12
A61P 3/10
A61P 3/06
A61P 9/12
C12N 15/00 H
請求項の数または発明の数 6
全頁数 24
出願番号 特願2012-545791 (P2012-545791)
出願日 平成23年11月24日(2011.11.24)
国際出願番号 PCT/JP2011/077062
国際公開番号 WO2012/070621
国際公開日 平成24年5月31日(2012.5.31)
優先権出願番号 2010262341
優先日 平成22年11月25日(2010.11.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年11月19日(2014.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
発明者または考案者 【氏名】深水 圭
【氏名】東元 祐一郎
【氏名】山岸 昌一
【氏名】奥田 誠也
【氏名】井上 浩義
個別代理人の代理人 【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100106518、【弁理士】、【氏名又は名称】松谷 道子
【識別番号】100138911、【弁理士】、【氏名又は名称】櫻井 陽子
審査官 【審査官】六笠 紀子
参考文献・文献 国際公開第2006/080262(WO,A1)
Annals of the New York Academy of Sciences,2005年,Vol. 1043,p. 767-776
Mizutani, K. et al.,Inhibitor for advanced glycation end products formation attenuates hypertension and oxidative damage,Journal of Hypertension,2002年,Vol.20, Issue 8,pp.1607-1614
調査した分野 A61K 31/33-33/44
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
AGE結合アプタマーを含む、糖尿病性腎症における脂質異常症の治療用または予防用組成物であって、
AGE結合アプタマーが、
(a)配列番号1の塩基配列からなる一本鎖DNA;
(b)配列番号1の塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA;および
(c)配列番号1の塩基配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA
からなる群から選択される、組成物
【請求項2】
AGE結合アプタマーを含む、糖尿病性腎症における血圧低下用組成物であって、
AGE結合アプタマーが、
(a)配列番号1の塩基配列からなる一本鎖DNA;
(b)配列番号1の塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA;および
(c)配列番号1の塩基配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA
からなる群から選択される、組成物。
【請求項3】
AGE結合アプタマーが、配列番号1の塩基配列からなる、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
AGE結合アプタマーを含む、糖尿病患者における脂質異常症の治療用または予防用組成物であって、
AGE結合アプタマーが、
(a)配列番号1の塩基配列からなる一本鎖DNA;
(b)配列番号1の塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA;および
(c)配列番号1の塩基配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA
からなる群から選択される、組成物
【請求項5】
AGE結合アプタマーを含む、糖尿病患者における血圧低下用組成物であって、
AGE結合アプタマーが、
(a)配列番号1の塩基配列からなる一本鎖DNA;
(b)配列番号1の塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA;および
(c)配列番号1の塩基配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された塩基配列からなり、AGE-2に結合する一本鎖DNA
からなる群から選択される、組成物
【請求項6】
AGE結合アプタマーが、配列番号1の塩基配列からなる、請求項4または5記載の組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、終末糖化産物(AGE)結合アプタマーを含む糖尿病性腎症の治療用または予防用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGE)は、グルコースなどの還元糖のカルボニル基と、タンパク質のアミノ基との非酵素的な反応(メイラード反応)により生じる高分子物質である。糖尿病などで慢性的に高血糖が続くと、循環血液中や組織でAGEの生成が促進される。糖尿病の合併症の発症および進展に、AGEの関与が示唆されている(非特許文献1および非特許文献2)。
【0003】
一方、近年、一本鎖DNAや一本鎖RNAが種々の立体構造をとり、低分子からタンパク質までの種々の化合物を認識して結合して、抗体のような機能を有し得ることが明らかになっている(非特許文献3および非特許文献4)。このような分子をアプタマーと称する。アプタマーは、ランダム配列の中からSELEXという選別方法によって調製することができる(非特許文献4)。
【0004】
アプタマーは、試験管内で大量に合成できること、抗体よりも結合力が強いものが得られる可能性があること、安定化できることなどの利点を有する。そのため、抗体と同様に、研究、検出、医療などに応用され得る。医療などへの応用が検討されている例としては、HIV-1逆転写酵素に対するRNAアプタマー(非特許文献5)等が報告されている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Yamagishi S.ら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 2002年, 290巻, 973-978頁
【非特許文献2】Okamoto T.ら, FASEB J., 2002年, 16巻, 1928-1930頁
【非特許文献3】Ellington A.D.およびSzostak J.W.,Nature,1990年,346巻,818-822頁
【非特許文献4】Tuerk C.およびGold L.,Science,1990年,249巻,505-510頁
【非特許文献5】Kensch O.ら,J. Biol. Chem.,2000年,275巻,18271-18278頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、糖尿病性腎症の治療または予防に有用な医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これまでに、AGEに結合するアプタマーを作成し、これらが網膜周皮細胞のアポトーシスを抑制することを報告している(国際公開2006/080262号公報;Microvascular Research 74 (2007) 65-69)。この度、本発明者らは、AGE結合アプタマーが2型糖尿病モデル動物において腎保護効果を発揮すること等を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、AGE結合アプタマーを含む、糖尿病性腎症の治療用または予防用組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、AGE結合アプタマーを含む、糖尿病患者における脂質異常症の治療用または予防用組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、AGE結合アプタマーを含む、糖尿病患者における血圧低下用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のAGE結合アプタマーを含む組成物は、糖尿病または糖尿病性腎症に対する医薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】グリセルアルデヒド由来のAGEであるAGE-2の生成経路を示す図である。
【図2】SELEX法の概要を示す工程図である。
【図3】種々の濃度のAGE-2(A)、ならびに100μg/mLのAGE-2に種々の濃度のAGE-2アプタマーを添加した場合(BおよびC)の蛍光スペクトル図である。消光波長を470nmで固定し、励起波長を300~450nmまでスキャンした。いずれも1ml中の質量またはモル数を示す。
【図4】アポトーシス阻害率の算出方法を説明する図である。
【図5】AGE-2アプタマーの糖尿病モデルマウスへの投与方法を説明する図である。
【図6】PCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。図中、各レーンの表示は以下のとおりである。M:マーカー;I:無投与C57BL/6jマウス血液由来のPCR産物;II:0.03μM AGE-2アプタマー投与3週間後のマウスの血液由来のPCR産物;III:0.3μM AGE-2アプタマー投与3週間後のマウスの血液由来のPCR産物;3μM AGE-2アプタマー投与2週間後のマウスの血液由来のPCR産物(AGE-2アプタマーの濃度はアプタマーが血中に順調に移行した場合の予想濃度である)。
【図7】尿中のアルブミン排泄量の経時変化を示す図(A)および尿中アルブミン/クレアチニン比率の経時変化を示す図(B)である。
【図8】PAS染色した糸球体の顕微鏡写真を示す。C+BL6jは、コントロールアプタマーを投与したC57BL/6jマウスの糸球体の写真を、A+BL6jは、AGE-2アプタマーを投与したC57BL/6jマウスの糸球体の写真を、C+KK/Ayは、コントロールアプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスの糸球体の写真を、A+KK/Ayは、AGE-2アプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスの糸球体の写真を示す。コントロールアプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスでは糸球体基底膜の肥厚(硬化)が認められる(図中矢印)。
【図9】Masson-Trichrome染色した糸球体の顕微鏡写真を示す。C+BL6jは、コントロールアプタマーを投与したC57BL/6jマウスの糸球体の写真を、A+BL6jは、AGE-2アプタマーを投与したC57BL/6jマウスの糸球体の写真を、C+KK/Ayは、コントロールアプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスの糸球体の写真を、A+KK/Ayは、AGE-2アプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスの糸球体の写真を示す。コントロールアプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスでは糸球体の線維化が認められる(図中矢印)。
【図10】糸球体の線維化の程度を示す図である。Masson-Trichrome染色した糸球体の顕微鏡写真を画像解析することにより、線維化の程度を定量した。
【図11】糸球体におけるAGE-2沈着を示す図である。Ctrl-aptamer+KK/Ay (diabetes) は、コントロールアプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスの糸球体の写真を、AGEs-aptamer+KK/Ay (diabetes)は、AGE-2アプタマーを投与したKK-Ay/Taマウスの糸球体の写真を示す。AGE-2アプタマーの投与により糸球体におけるAGE-2沈着が完全に抑制された。
【図12】尿中の8OHdGの量を示す図である。AGE-2アプタマーの投与により糖尿病モデルマウスにおける8OHdG産生が抑制された。
【図13】配列番号9で表される塩基配列からなる一本鎖DNAの推定される2次構造を示す図である。*は、ACC(C)または(C)CCAモチーフの存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、AGE結合アプタマーを含む糖尿病性腎症の治療用または予防用組成物を提供する。

【0014】
終末糖化産物(AGE)とは、グルコースなどの還元糖のカルボニル基と、タンパク質のアミノ基との非酵素的な反応(メイラード反応)により生じる高分子物質の総称である。本発明における「AGE結合アプタマー」は、AGEに結合するアプタマーを意味し、如何なるAGEに結合するアプタマーも包含する。本発明における好ましいAGEは、グリセルアルデヒドに由来する終末糖化産物であるAGE-2である。すなわち、本発明において、AGE結合アプタマーは、AGE-2に結合するアプタマー(以下、AGE-2アプタマーとも称す)であることが好ましい。

【0015】
本発明のアプタマーは、一本鎖DNAまたは一本鎖RNAのいずれであってもよいが、好ましくは一本鎖DNAである。本発明のAGE結合アプタマーは、少なくとも35塩基からなり、好ましくは35塩基~120塩基、より好ましくは50塩基~70塩基である。AGE-2アプタマーは、当該アプタマーを構成する塩基中に、シトシンまたはグアニンのいずれか一方を多く含むことが好ましい。シトシンを多く含む場合、シトシン含有率は、35%~60%、40%~60%、または50%~60%であってよい。グアニンを多く含む場合、グアニン含有率は、32%~50%、35%~50%、または40%~50%であってよい。

【0016】
本発明における好ましいAGE結合アプタマーは、配列番号1~41のいずれかの塩基配列を含む一本鎖DNAである。より好ましくは、AGE結合アプタマーは、配列番号1~41のいずれかの塩基配列からなる一本鎖DNAである。配列番号1~24のいずれかの塩基配列からなる一本鎖DNAは、54~58塩基からなり、塩基中のシトシン含有率は35%~60%である。配列番号25~41のいずれかの塩基配列からなる一本鎖DNAは、61~66塩基からなり、塩基中のグアニン含有率は32%~50%である。

【0017】
本発明のAGE結合アプタマーは、アプタマーを得るための一般的な方法であるSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法によって調製することができる。一本鎖DNAをライブラリー源とするSELEX法の概要を以下に説明する。まず、任意の2つのプライマー配列で挟まれた適当な長さのランダム配列を含むテンプレートDNAを合成する。本発明においては、ランダム配列の長さは、35塩基~120塩基が適切である。このテンプレートDNAをPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)で増幅して、ランダムDNAアプタマープールを得る。次いで、このランダムDNAアプタマープールを標的物質と会合させ、結合しなかったDNAを除去し、そして結合したDNAアプタマーを抽出する。得られたDNAアプタマーを、上記プライマー配列を用いるPCRによって増幅する。このとき、5~8mMのMg2+存在下でPCRを行って、複製の正確性を低下させて変異を導入しやすくすることにより、標的物質との会合前のDNAアプタマープールに存在しない新たなDNAアプタマーを含むDNAアプタマープールが得られる。新たなDNAアプタマーは、結合力がより強い可能性があり、すなわち、DNAアプタマーが進化する可能性が生じる。この進化したDNAアプタマープールについて、上記の一連の操作を5~15ラウンド繰り返すことによって、標的物質に結合するDNAアプタマーが得られる。最終ラウンドの後、得られたDNAアプタマープールは、当業者が通常行う操作によってクローニングされ、次いで配列決定される。このSELEX法における、テンプレートDNAの合成、PCRなどの操作、ならびにクローニングおよび配列決定は、当業者が通常用いる方法によって行われる。本発明のAGE結合アプタマーは、このようにして決定された配列に基づいて、当業者が通常用いる方法によって化学合成することができる。

【0018】
本発明におけるAGE結合アプタマーは、AGE-2を標的物質として調製されたものであることが好ましい。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)のアミノ基とグリセルアルデヒドのアルデヒド基が非酵素的に反応(メイラード反応)して生じた結合体(以下、AGE-2-HSAとも称す)を標的物質とすることができる。AGE-2-HSAは、例えば、培養法、化学合成法などの任意の方法によって調製することができる。培養法で調製する場合、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)を、D-グリセルアルデヒドと数日間インキュベートする。化学合成法によって調製する場合、例えば、Tessierらの方法(Tessier et al., Biochem. J., 2003, 369, 705-719)に従って、アセチル-リジンとグリセルアルデヒドとをリン酸緩衝液(pH7.4)中で混合し、さらにジエチレントリアミンペンタ酢酸および25%(v/v)メタノールを加えて、37℃で数日間反応させることによって調製することができる。得られたAGE-2は、SELEX法において用いる場合は、適切な固相(例えば、ビーズなど)に固定化されていることが好ましい。

【0019】
得られたアプタマーのAGEとの結合親和性は、AGEが蛍光を発することを利用して、AGEにアプタマーを添加したときのAGEの蛍光強度の減弱によって測定できる。このようにして、SELEX法によって調製したアプタマーのうち、親和性の強いアプタマーを選択することができる。

【0020】
本発明におけるAGE結合アプタマーは、その安定性を増加させるため、修飾ヌクレオチドにより構成されていてもよい。例えば、AGE結合アプタマーは、ヌクレオチド間の結合部位にあるリン酸基の酸素原子が硫黄原子に置換されたホスホロチオエート(S化)オリゴヌクレオチドであってよい。

【0021】
配列番号1~15で表される塩基配列からなる一本鎖DNAは、全て、ACC(C)または(C)CCAなる配列モチーフ(ここで(C)は、Cが存在しても存在しなくてもよいことを示す)を有する。また、配列番号1~15で表される塩基配列からなる一本鎖DNAは、全て、その二次構造中にACC(C)または(C)CCAなる配列モチーフが1または2個存在するループを有する。例えば、配列番号9で表される塩基配列からなる一本鎖DNAは、図13のような二次構造を有する。よって、さらなるAGE結合アプタマーの非限定的な例としては、(a)二次構造中にACC(C)または(C)CCAなる配列モチーフが1または2個存在するループを有し;(b)54~58塩基からなり;(c)塩基中のシトシン含有率が35%~60%であり;かつ(d)AGE-2に結合する、一本鎖DNA、または、(a’)塩基配列中にACC(C)または(C)CCAなる配列モチーフが少なくとも1個存在し;(b)54~58塩基からなり;(c)塩基中のシトシン含有率が35%~60%であり;かつ(d)AGE-2に結合する、一本鎖DNAが挙げられる。なお、上記(a)および(a’)において、ACC(C)と(C)CCAのモチーフが重複する場合は、1個と数える。例えば、ACCCAという配列は、ACCCとCCCAの2つのモチーフが連続することにより重複する配列であるが、この場合のモチーフの数は1個と数える。配列番号1~15で表される塩基配列からなる一本鎖DNAは、上記(a)、(b)、(c)、および(d)を満たす例として挙げられる。

【0022】
また、本発明のAGE結合アプタマーは、配列番号1~41のいずれかで表される塩基配列を改変して得られたものであってもよい。すなわち、AGE結合アプタマーは、配列番号1~41のいずれかの塩基配列において、1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された塩基配列を含み、AGEに結合する一本鎖DNA;配列番号1~41のいずれかの塩基配列において、1、2または3個の塩基が欠失、置換、または付加された塩基配列からなり、AGEに結合する一本鎖DNA;配列番号1~41のいずれかの塩基配列と95、90、85、80、75または70%の配列同一性を有する塩基配列を含み、AGEに結合する一本鎖DNA;または配列番号1~41のいずれかの塩基配列と95、90、85、80、75または70%の配列同一性を有する塩基配列からなり、AGEに結合する一本鎖DNA、であってもよい。

【0023】
本発明において、塩基配列の「配列同一性」とは、2つのオリゴヌクレオチド間の配列の類似の程度を意味し、比較対象の塩基配列の領域にわたって最適な状態(配列の一致が最大となる状態)にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。配列同一性の数値(%)は両方の配列に存在する同一の塩基を決定して、適合部位の数を決定し、次いでこの適合部位の数を比較対象の配列領域内の塩基の総数で割り、得られた数値に100をかけることにより算出される。最適なアラインメントおよび配列同一性を得るためのアルゴリズムとしては、当業者が通常利用可能な種々のアルゴリズム(例えば、BLASTアルゴリズム、FASTAアルゴリズムなど)が挙げられる。塩基配列の配列同一性は、例えばBLAST、FASTAなどの配列解析ソフトウェアを用いて決定される。

【0024】
アプタマーのAGEに対する結合性は、上記の説明にしたがい、または以下の実施例に記載の方法により、調べることができる。

【0025】
糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症の1つであり、糖尿病によって腎臓の糸球体が細小血管障害のため硬化して数を減じていく病気ある。本発明における糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、遺伝子の異常、肝臓や膵臓の病気、感染症、免疫の異常などの他の病気および薬剤が原因となって惹起される糖尿病、および妊娠糖尿病が含まれる。

【0026】
糖尿病性腎症に関する日本糖尿病学会・日本腎臓学会合同委員会の病期分類では、糖尿病性腎症の臨床経過は、1~5期(ステージ)に分類される(日腎会誌2002;44(1):i)(表1参照)。さらに、第3期は、GFR(糸球体濾過量)およびクレアチニン・クリアランスがほぼ正常である前期と、GFR(糸球体濾過量)およびクレアチニン・クリアランスの低下が認められる後期に分けられる。
【表1】
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1型糖尿病における腎症は、微量アルブミン尿の出現により発症し、発症早期にGFRの顕著な増加、糸球体過剰濾過を呈する。そして、年間10~20%尿アルブミンが増加し、通常10~15年後に慢性腎症期(第3期に相当)に移行する。慢性腎症期以降(第3~5期に相当)では、GFR(糸球体濾過量)が低下し、半数以上の症例で10年以内に末期腎不全に至る。生活習慣の欧米化とともに増加しつつある2型糖尿病では、糖尿病発症時期が不明瞭であることや、1型糖尿病に比較して腎症発症前よりすでに高血圧症を合併していることが多い。腎症を発症すれば、その臨床経過は1型糖尿病による腎症に類似するものと考えられる。

【0027】
本発明において、疾患または症状の「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。また、疾患または症状の「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。

【0028】
本発明の糖尿病性腎症の治療用または予防用組成物は、投与により糖尿病性腎症の進展を抑制しうるものである。よって、本発明の組成物は、糖尿病性腎症の進展抑制用組成物でありうる。

【0029】
腎症の進展の抑制の非限定的な例としては、第1期から第2期、第3期(第3期前期または後期であり得る)、第4期、または第5期への進展の抑制、第2期から第3期(第3期前期または後期であり得る)、第4期、または第5期への進展の抑制が挙げられる。

【0030】
本発明の糖尿病性腎症の治療用または予防用組成物は、投与により患者の腎機能の悪化を抑制しうるものである。よって、本発明の組成物は、腎機能悪化抑制用組成物でありうる。

【0031】
腎機能の指標の非限定的な例としては、尿中アルブミン排出量、尿中アルブミン/クレアチニン比、血中のクレアチニン・クリアランス、血中尿素窒素量、血中クレアチニン量が挙げられる。本発明の腎機能悪化抑制用組成物は、上記糖尿病性腎症の進展に伴い悪化する指標のうち、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または5つ全ての指標の悪化を抑制しうる。これにより腎機能の保護効果が認められるので、本発明の組成物は、腎機能保護用組成物でもありうる。

【0032】
本発明の糖尿病性腎症の治療用または予防用組成物は、投与により患者の腎組織を保護しうるものである。よって、本発明の組成物は、腎組織保護用組成物でありうる。

【0033】
糖尿病性腎症の進展に伴い、メサンギウム基質の増加、糸球体基底膜の肥厚(硬化)、糸球体の線維化、および/または腎肥大(腎臓/体重比の増加)が認められる。本発明の腎組織保護用組成物は、上記のうち、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てを抑制しうる。

【0034】
本発明の組成物は、糖尿病性腎症を発症しているヒトにも、発症していないヒトにも投与されうる。糖尿病性腎症を発症していないヒトの非限定的な例としては、糖尿病を発症していないものの発症する危険性が高いヒト、糖尿病を発症しているものの糖尿病性腎症を発症していないヒト、過去に糖尿病腎症を発症したものの治癒または寛解し現在腎症の症状を呈しないヒトが挙げられる。糖尿病を発症していないものの発症する危険性が高いヒトの非限定的な例としては、メタボリックシンドロームを呈するヒトが挙げられる。糖尿病性腎症を発症しているヒトの非限定的な例には、糖尿病性腎症の第1期(腎症前期)、第2期(早期腎症)、第3期(顕性腎症)、または第4期(腎不全期)を呈するヒトが挙げられる。

【0035】
別の態様において、本発明は、AGE結合アプタマーを含む、糖尿病患者における脂質異常症の治療用または予防用組成物を提供する。AGE結合アプタマーおよび糖尿病については、上記と同様である。脂質異常症の症状としては、血中の総コレステロール量の増加、血中の中性脂肪量の増加および血中の遊離脂肪酸量の増加が挙げられる。脂質異常症の治療および予防には、糖尿病の進展に伴う血中の総コレステロール量、中性脂肪量および/または遊離脂肪酸量の増加の抑制が含まれる。

【0036】
本発明の脂質異常症の治療用または予防用組成物は、脂質異常症を呈する糖尿病患者にも、脂質異常症を呈さない糖尿病患者にも投与されうる。また、糖尿病患者には、糖尿病性腎症を発症している患者(すなわち、糖尿病性腎症の患者)も、発症していない患者も含まれる。本発明の脂質異常症の治療用または予防用組成物の投与対象の非限定的な例としては、糖尿病を発症しており脂質異常症を呈するヒト、糖尿病を発症しており脂質異常症を呈する危険性が高いヒト、糖尿病性腎症を発症しており脂質異常症を呈するヒト、糖尿病性腎症を発症しており脂質異常症を呈する危険性が高いヒトが挙げられる。

【0037】
別の態様において、本発明は、AGE結合アプタマーを含む、糖尿病患者における血圧低下用組成物を提供する。AGE結合アプタマーおよび糖尿病については、上記と同様である。糖尿病患者には、糖尿病性腎症を発症している患者(すなわち、糖尿病性腎症の患者)も、発症していない患者も含まれる。本発明の血圧低下用組成物の投与対象の非限定的な例としては、糖尿病を発症しており高血圧であるヒト、糖尿病を発症しており高血圧となる危険性が高いヒト、糖尿病性腎症を発症しており高血圧であるヒト、糖尿病性腎症を発症しており高血圧となる危険性が高いヒトが挙げられる。

【0038】
本発明の組成物は、AGE結合アプタマーを医薬として許容される担体と配合し、固形製剤(例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤など)、または液状製剤(例えば、シロップ剤、注射剤など)として製造することができる。医薬として許容される担体としては、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、溶剤(例えば、水、食塩水、大豆油等)、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル等)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。

【0039】
本発明の組成物の投与方法は、投与対象の年齢、体重、健康状態等によって適宜選択される。例えば、本発明の組成物は、経口投与、静脈内投与、または皮下投与により投与することができるが、静脈内投与によることが好ましい。本発明の組成物の投与量もまた、投与方法、投与対象の年齢、体重、健康状態等によって適宜選択される。例えば、成人1日当たり、AGE結合アプタマーの量として1mg~100gを投与することができるが、これに限定されない。

【0040】
別の態様において、本発明は、AGE結合アプタマーを含む組成物を投与することにより、糖尿病性腎症を治療または予防する方法、糖尿病患者における脂質異常症を治療または予防する方法、および糖尿病患者において血圧を低下する方法を提供する。

【0041】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の治療または予防に有用なAGE結合アプタマーをスクリーニングする方法を提供する:
(i)SELEX法を用いてAGE結合アプタマーを得る工程;
(ii)得られたAGE結合アプタマーを糖尿病モデル動物に投与する工程;および
(iii)前記AGE結合アプタマーを投与された糖尿病モデル動物において、尿中のアルブミン排泄量、腎重量、血中尿素窒素濃度、血中クレアチニン濃度、血中総コレステロール濃度、血中中性脂肪濃度、血中遊離脂肪酸濃度、および血圧からなる群から選択される少なくとも1つを測定する工程。
糖尿病モデル動物は、好ましくは2型糖尿病モデル動物である。2型糖尿病モデル動物の非限定的な例としては、KK-Ay/Taマウスが挙げられる。

【0042】
前記の治療または予防方法およびスクリーニング方法は、本発明の組成物に関する記載を考慮することで、当業者が適宜実施することができる。

【0043】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1 AGE結合アプタマーの作成(1)
(1)一本鎖ランダムオリゴDNAの作成
34、56、または72残基のランダム領域およびその両側にプライマー部位(配列番号42および配列番号43)を含む一本鎖ランダムオリゴDNAを以下のように合成した。
【実施例】
【0045】
まず、3’末端のヌクレオチドが3’水酸基を介して結合されたCPG(controlled pore glass)担体をカラムに充填した。次いで、リボースの5’位の保護基であるジメトキシトリチル基をトリクロロ酢酸によって除去して、脱トリチル化を行った。リボースの3’位の水酸基がリン酸シアノエチルアミダイド誘導体である2番目のヌクレオチドを、脱トリチル化された1番目のヌクレオチドの5’水酸基に、塩基触媒(テトラゾール)を用いてカップリングさせ、未反応の5’水酸基を無水酢酸によってアセチル化した。2つのヌクレオチド間の結合を、ヨードを用いて酸化して、3価のリンから5価のリン酸エステルへ変換した。上記の脱トリル化からリン酸エステルへの変換までの操作を目的の鎖長になるまで繰り返した。ランダム部分の配列は、カップリング反応の際に、4種のヌクレオチドアミダイド混合物を使用して行った。反応後、カラムからアンモニア処理によってオリゴDNAを切り出し、逆相カートリッジカラムによって精製した。凍結乾燥後、適量の水に溶解し、SELEXライブラリーのテンプレートDNAとした。
【実施例】
【0046】
(2)AGE-2の合成
ヒト血清アルブミン(HSA)(Sigma社製)を無菌状態で、D-グリセルアルデヒドと38℃にて7日間インキュベートした。未反応の糖を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の透析によって除去した。使用する前に、Endospecy ES-20Sシステム(生化学工業)を用いて、エンドトキシンがないことを確認した。
【実施例】
【0047】
(3)AGE-2のビーズへの結合
上記(2)で得たAGE-2をPIERCE社のSulfoLink(登録商標)カップリングゲル(カタログ番号20401)を使用して製品の指示書に従って、以下のようにビーズに固定化した。
【実施例】
【0048】
まず、カップリングゲルをカラムにとり、カップリング緩衝液(50mM Tris-HCl, 5mM EDTA, pH8.5)で平衡化した。AGE-2をカップリング緩衝液に溶解し、カップリングゲルと混合して、室温で1時間インキュベートした。反応終了後、カップリング緩衝液でカラムを数回洗浄した。L-システインをカップリング緩衝液に溶解し、カップリングゲルと混合して、室温で30分間インキュベートした。反応終了後、カップリング緩衝液およびPBSでカラムを数回洗浄した。なお、反応前および反応後の吸光度を測定することによって、AGE-2の固定化量を算出した。固定化後のゲル(ビーズ)を小分けし、使用するまで冷暗所に保存した。
【実施例】
【0049】
(4)HSAのビーズへの結合
HSAを、PIERCE社のSulfoLink(登録商標)カップリングゲル(カタログ番号20401)およびUltraLink(登録商標)EDC/DADPA固定化キット(カタログ番号53154)を使用して、ビーズに固定化した。
【実施例】
【0050】
(5)SELEX法
上記(1)で合成したランダムオリゴDNAを鋳型にして、forwardプライマー(配列番号42)とrevereseプライマー(配列番号43)によるPCR(1サイクル:94℃、15秒;55℃、15秒;72℃、15秒X12サイクル)を行った。増幅後、forwardプライマーのみを用いた非対称PCRによりプラス鎖を増幅した(1サイクル:94℃、15秒;55℃、15秒;72℃、15秒X45サイクル)。増幅したプラス鎖をアガロースゲル電気泳動によって精製し、SELEX用DNAライブラリーとした。このSELEX用DNAライブラリーをPBSに溶かし、95℃で5分加熱し、室温に戻した。次いで、SELEX用DNAライブラリーと上記(3)で調製したAGE-2を固定化させたビーズとを混合し、室温で30分間インキュベートした。インキュベート後、PBSでビーズを数回洗浄した。適量の水をビーズに加えて混合し、100℃で5分間加熱し、AGE-2ビーズに結合したDNAを解離させて回収した。回収したDNAと上記(4)で調製したHSAを固定化させたビーズとを混合し、室温で10分間インキュベートした。素通りした(HSAに結合しなかった)DNAを回収して、エタノール沈殿法によって濃縮した。濃縮したDNAを鋳型にして、上記の操作を5~15ラウンド繰り返した。この時、5~8mMのMg存在下でPCRを行って、変異を導入させた。
【実施例】
【0051】
(6)クローニング
5~15ラウンド後に得られたDNAを、forwardプライマー(配列番号42)とrevereseプライマー(配列番号43)を用いるPCRによって増幅し、アガロースゲル電気泳動によって精製し、そしてAGE-2特異的DNAを得た。このDNAをクローニングベクター(Invitrogen社: Zero Blunt(登録商標)TOPO(登録商標)PCR Cloning Kit for Sequencing(カタログ番号K2875J10))へ導入し、以下のようにして配列を決定した。
【実施例】
【0052】
まず、AGE-2特異的DNA(PCR産物)とクローニングベクター(TOPOベクター)とを混合し、室温で5分間インキュベートした。反応終了後、反応液の一部をコンピテントセルに加え、氷冷下で30分間インキュベートした。42℃にて30秒間ヒートショックした後、氷上で2分間冷却した。冷却した反応液に、キット中に含まれているSOC培地を加えて37℃にて1時間培養した。適量を寒天プレート(50μg/mLアンピシリンを含むLB培地)に播種し、37℃にて一晩培養した。無作為に数十個のクローンを選び、アルカリ法によってプラスミドDNAを調製した。
【実施例】
【0053】
(7)配列決定
上記(6)で得られたプラスミドDNA中のAGE-2特異的DNAの配列を、Applied Biosystem社のABI377を用いてBigDye Terminator Cycle sequence法によって決定した。その結果、34塩基の一本鎖DNAからは、AGE-2に結合するものが得られなかった。56塩基の一本鎖DNAからは、配列番号1~24に示す54~58塩基の一本鎖DNA、すなわちAGE-2アプタマーが得られた(表2)。なお、72塩基の一本鎖DNAについてもAGE-2に結合するものが得られたが、配列決定は行っていない。
【実施例】
【0054】
【表2】
JP0005873027B2_000003t.gif
【実施例】
【0055】
表2に示すように、得られたAGE-2アプタマーはいずれも、当該アプタマーを構成する塩基中のシトシン含有率が35%以上であった。
【実施例】
【0056】
実施例2 AGE結合アプタマーの作成(2)
64残基のランダム領域およびその両側にプライマー部位(配列番号42および配列番号43)を含む一本鎖ランダムオリゴDNAを鋳型に用いたこと以外は、実施例と同様にしてAGE-2アプタマーを作成した。その結果、配列番号25~41に示す61~66塩基の一本鎖DNA、すなわちAGE-2アプタマーが得られた(表3)。
【実施例】
【0057】
【表3】
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【実施例】
【0058】
表3に示すように、得られたAGE-2アプタマーはいずれも、当該アプタマーを構成する塩基中のグアニジン含有率が32%以上であった。
【実施例】
【0059】
得られたAGE-2アプタマーの配列に基づいて、上記実施例1(1)と同様にホスホアミダイド法により、各AGE-2アプタマーを化学合成した。
【実施例】
【0060】
実施例3 AGE-2アプタマーによるAGE-2蛍光阻害実験
AGE-2の蛍光特性を測定するために、蛍光分光光度計(FP-777;日本分光)を用いて、励起波長および消光波長を決定した。その結果、励起は380nmおよび消光は470nmで最大蛍光を示した。そこで、25~100μg/mLのAGE-2を用いて、励起波長380nmでの蛍光強度を測定して検量線を作成した(図3A)。
次いで、100μg/mLのAGE-2に対して、最終濃度25~100nMとなるように各アプタマー(配列番号1~15)を添加し、蛍光強度を測定した(図3Bおよび図3C)。アプタマーを25nM添加したときのAGE-2の蛍光強度の減弱に基づいて、アプタマー単位モル数(nmol)あたりに結合するAGE-2の質量(ng)を算出した。結果を表4に示す。
【実施例】
【0061】
【表4】
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【実施例】
【0062】
実施例4 ウシ周皮細胞を用いたアポトーシス実験
ウシ周皮細胞を、屠殺後のウシから調製し、ダルベッコ改変イーグル培地(Gibco BRL, Rockville, MD)に20%ウシ胎児血清(ICN Biomedicals Inc., Aurora, OH)を添加した培地中で継代培養した。培養したウシ周皮細胞を、20μg/mLのAGE-2および100μg/mLのアプタマー(配列番号1~22)とともに37℃にて2日間インキュベートした。コントロールではアプタマーの代わりにHSAを添加して、ならびに陽性コントロールではAGE-2を添加して、上記と同様にインキュベートした。2日後、細胞をトリプシンで剥離し、[H]-チミジンの取込実験を行って、生存細胞の数をカウントした。生存細胞数から、図4に示すようにして、アポトーシス阻害率を算出した。結果を表5に示す。
【実施例】
【0063】
【表5】
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【実施例】
【0064】
表5に示すように、AGE-2のみの添加によって誘発されるアポトーシスが、AGE-2アプタマーを加えることによって阻害されたことがわかる。このことから、AGE-2アプタマーがAGE-2に結合して、その機能を阻害し得ることがわかった。
【実施例】
【0065】
実施例4 AGE-2アプタマーの投与量の決定
(1)方法
2型糖尿病モデルマウスKK-Ay/Taマウス(日本クレア、雄性、6週齢)の腹腔内に浸透圧ポンプ(ALZET社)を埋め込んだ。投与後の血中濃度が0.03、0.3、3μMとなるように薬液を浸透圧ポンプに充填し、AGE-2アプタマー(配列番号1)を腹腔内持続投与した(2週間または3週間)。AGE-2アプタマー(配列番号1)の合成はOperon社に依頼し、その配列は下記のとおりである。
AGE-2アプタマー
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【実施例】
【0066】
投与後、マウスより血液を採取し、採取した血液を下記プライマーおよび酵素(KOD FX(登録商標)(東洋紡績社))を含むPCR反応混合物に添加し(全血の添加量は反応液量25μLのうち0.5μL)、PerkinElmer社GeneAmp PCR System 2400にてPCRを行った。下記プライマーの合成はGenosys社に依頼した。反応終了後、アガロースゲル電気泳動を行い、増幅断片を検出した。
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【実施例】
【0067】
(2)結果
投与後の血中濃度が0.03、0.3、3μMとなるように設計された薬液の持続投与により、AGE-2アプタマー(配列番号1)の血中移行が確認された(図6)。
【実施例】
【0068】
実施例5 AGE-2アプタマーの糖尿病モデルマウスを用いた薬効評価(1)
(1)方法
2型糖尿病モデルマウスKK-Ay/Taマウス(日本クレア、雄性、6週齢)およびC57BL/6jマウス(日本クレア、雄性、6週齢)の腹腔内に浸透圧ポンプ(ALZET社)を埋め込んだ。AGE-2アプタマー(配列番号1)および下記配列を有するコントロールアプタマー(配列番号48)を、投与後の血中濃度が3.334μMとなるように薬液を浸透圧ポンプに充填し(0.1mg/20g体重)、腹腔内に持続投与した。
コントロールアプタマー
JP0005873027B2_000009t.gif コントロールアプタマーは、Operon社に合成を依頼し、入手した。アプタマーの投与は、KK-Ay/Taマウスにおいて糖尿病合併症の発症が認められる8週齢から、腎障害(結節性病変)、尿中アルブミンが認められる16週齢まで実施した。
【実施例】
【0069】
経時的に体重、血圧を測定した。また、経時的に尿を採取し、尿量、尿中のアルブミン量およびクレアチニン量を測定した。16週齢において、血糖値、血中のHbA1c、総コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸、尿素窒素、およびクレアチニンの量、並びに腎重量を測定した。HbA1cは、グリコヘモグロビンのうち、ヘモグロビンのβ鎖のN末端にグルコースが結合した糖化蛋白質であり、AGEの1種である。また、腎臓組織からパラフィン切片を作成し、PAS(periodic acid Schiff)染色およびMasson-Trichrome染色を行った。糸球体の線維化を定量化するために、Masson-Trichrome染色した組織切片の画像をコンピューターに取込み、染色された面積を測定した。
【実施例】
【0070】
(2)結果
AGE-2アプタマー(配列番号1)投与により、KK-Ay/Taマウスにおいて尿中のアルブミン排泄量の増加が顕著に抑制された(図7(A))。尿中のアルブミン/クレアチニン比率は、AGE-2アプタマー投与(配列番号1)により12週齢に比べ16週齢では改善傾向が認められた(図7(B))。また、AGE-2アプタマー(配列番号1)投与KK-Ay/Taマウスの腎臓組織においては、メサンギウム基質の増加、糸球体基底膜の肥厚(硬化)、および糸球体の線維化は認められず、コントロールマウスと変わらぬ正常な組織構造が認められた(図8、9、および10)。さらに、AGE-2アプタマー(配列番号1)投与により、コントロールアプタマー(配列番号48)投与に比較し、KK-Ay/Taマウスにおいて、腎肥大の抑制、尿素窒素およびクレアチニンの血中濃度の増加抑制、総コレステロール、中性脂肪、および遊離脂肪酸の血中濃度の増加抑制、および血圧の低下(表6)が認められた。一方、血糖値およびHbA1cについては、AGE-2アプタマー(配列番号1)投与による増加抑制は認められなかった(表7)。
【実施例】
【0071】
尿素窒素およびクレアチニンの測定結果から、AGE-2アプタマー(配列番号1)を投与したKK-Ay/Taマウスの腎機能は正常であり、AGE-2アプタマー(配列番号1)投与により腎機能の悪化が抑制されたことが明らかとなった。また、総コレステロール、中性脂肪、および遊離脂肪酸の測定結果から、AGE-2アプタマー(配列番号1)投与により糖尿病モデルマウスにおける脂質異常が抑制されたことが明らかとなった。
【表6】
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【表7】
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【実施例】
【0072】
実施例6 AGE-2アプタマーの糖尿病モデルマウスを用いた薬効評価(2)
実施例5と同様にして、AGE-2アプタマー(配列番号1)の薬効評価を行った。結果を表8に示す。また、糸球体におけるAGE-2沈着を検討するため、腎臓切片をポリクローナル抗AGE-2抗体(Molecular Medicine 6(2): 114-125, 2000に記載の方法により作製)(1:1000)で染色した。その結果、AGE-2アプタマー(配列番号1)を投与したKK-Ay/Taマウスでは、糸球体におけるAEG-2沈着が観察されなかった(図11)。さらに、尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の量を測定したところ、AGE-2アプタマー(配列番号1)の投与により8-OHdG産生の抑制が認められ、酸化ストレスの亢進が抑制されたことが示された(図12)。

【表8】
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* vs Ctrl+C-apt p<0.05【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明で提供されるAGE結合アプタマーを含む組成物は、糖尿病性腎症治療等に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12