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明細書 :基材及び該基材の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-065805 (P2016-065805A)
公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発明の名称または考案の名称 基材及び該基材の製造方法
国際特許分類 G01N  27/416       (2006.01)
G01N  27/28        (2006.01)
G01N  15/10        (2006.01)
FI G01N 27/46 301Z
G01N 27/46 336M
G01N 27/28 P
G01N 15/10 A
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-195081 (P2014-195081)
出願日 平成26年9月25日(2014.9.25)
発明者または考案者 【氏名】馬場 嘉信
【氏名】加地 範匡
【氏名】安井 隆雄
【氏名】宮田 令子
【氏名】川合 知二
【氏名】谷口 正輝
【氏名】柳田 剛
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100167689、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 征二
審査請求 未請求
要約 【課題】物質を一分子単位の高感度で且つ短時間で検出することができ、更に、多種類の物質を識別できる分析装置に使用することができる基材を提供する。
【解決手段】基板2、及び一端が前記基板上に形成され他端が上方に開放している中空の筒体3を含み、前記中空の筒体3には、筒体の内側と外側を貫通する貫通孔31が少なくとも1以上形成され、前記基板2には、前記中空の筒体3の中空部32と前記基板の反対側を連通するための貫通孔21が形成されていることを特徴とする基材。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
基板、及び一端が前記基板上に形成され他端が上方に開放している中空の筒体を含み、
前記中空の筒体には、筒体の内側と外側を貫通する貫通孔が少なくとも1以上形成され、
前記基板には、前記中空の筒体の中空部と前記基板の反対側を連通するための貫通孔が形成されていることを特徴とする基材。
【請求項2】
基板、及び一端が前記基板上に形成され他端が上方に開放している中空の筒体を含み、
前記中空の筒体には、高さの異なる位置に、筒体の内側と外側を貫通する貫通孔が少なくとも2以上形成されていることを特徴とする基材。
【請求項3】
前記中空の筒体から離れた位置に、前記中空の筒体を覆うように外郭部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
前記中空の筒体と外郭部の高さが異なることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の基材。
【請求項5】
前記中空の筒体に蓋が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の基材。
【請求項6】
基板上に積層した中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成するための材料の中に充填材を閉じ込める工程、
前記材料の表面に、中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部に相当する部分にフォトレジストを形成する工程、
前記フォトレジストが形成されていない部分の前記材料を、前記基板までエッチングする工程、
前記材料の中に閉じ込まれた充填材、及び前記材料の表面のフォトレジストを除去する工程、
を含むことを特徴とする貫通孔を有する中空の筒体を基板上に形成した基材の製造方法。
【請求項7】
前記基板上に積層した中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成するための材料の中に充填材を閉じ込める工程が、
前記基板上に中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成する材料を積層する工程、
前記材料をエッチングして形成した孔に充填材を充填する工程、及び、
前記充填材を充填した後に、中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成する材料を積層する工程、
を少なくとも1回以上含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
基板上に、中空の筒体を形成するための材料を堆積して中空の筒体を形成する工程、
前記中空の筒体に貫通孔を形成する工程、
を含むことを特徴とする貫通孔を有する中空の筒体を基板上に形成した基材の製造方法。
【請求項9】
前記中空の筒体に貫通孔を形成する工程の後に、
前記中空の筒体から離れた位置に前記中空の筒体を覆うように外郭部を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
基板上に、中空の筒体を形成するための材料を堆積して中空の筒体を形成する工程、
前記中空の筒体から離れた位置に前記中空の筒体を覆うように外郭部を形成する工程、
前記中空の筒体に貫通孔を形成する工程、
を含むことを特徴とする貫通孔を有する中空の筒体を基板上に形成した基材の製造方法。
【請求項11】
前記基板に貫通孔を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項6~10の何れか一項に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基材及び該基材の製造方法に関し、特に、PM2.5、ウィルス、花粉、菌、毒素等の身の回りの有害・危険物質を短時間で測定することができ、且つ装置を小型化・モバイル化するための分析用チップの作製に用いることができる基材及び該基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中又は水中に浮遊するPM2.5、ウィルス、花粉、菌、毒素等の有害・危険物質は、ヒトなどの生体の健康状態に影響を与える可能性が指摘されている。そのため、ヒトが安全で快適な生活を送るために、大気中又は水中のこれら有害・危険物質を正確に分析する必要がある。
【0003】
PM2.5を分析する装置・方法としては、例えば、フィルタに捕集したPM2.5をX線蛍光分析法により測定する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、市販されている装置は、大きい、高額である、定性定量同時計測が困難である、という問題点がある。
【0004】
また、他の有害・危険物質についても、夫々の物質に応じた分析方法が知られており、分析装置も市販されている。しかしながら、市販されている各種装置は次のような問題がある。
(1)細菌検出装置及びウィルス検出装置は、大型で装置の可搬性が低く、分析に20~80分程度時間がかかり迅速な分析ができない。また、分析には4×103個程度の細菌又はウィルスが必要で感度が低く、更に、装置の価格も高い。
(2)有害分子検出装置は、測定時間が10~20時間と長く、分析には10-12Mの分子が必要で感度が低い。
(3)花粉検出装置は、大型で装置の可搬性が低く、装置の価格も高い。また、定性定量同時計測が困難である。
【0005】
ところで、昆虫の触覚は一分子単位で物質を検出することができる。分析装置においても、昆虫のように物質を一分子単位の高感度で且つ短時間で検出することができ、更に、多種類の物質を識別できることが望まれている。しかしながら、現状では、そのような分析ができる分析装置は知られていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-261712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされた発明であり、鋭意研究を行ったところ、電子線リソグラフィ、フォトリソグラフィ、集束イオンビーム(Focused Ion Beam;FIB)等の微細加工技術を駆使することで、有害・危険物質を1分子単位で通過できる貫通孔を有した中空の筒体が基板上に形成された基材を作製できることを新たに見出した。そして、前記基材をベースとし、貫通孔の周囲に電極、中空の筒体の内部に金属蒸着層及び/又はナノワイヤ等を形成することで分析用チップを作製することができ、身の回りの有害・危険物質を捕捉、識別、検出できる可能性があることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、有害・危険物質を一分子単位の高感度で且つ短時間で検出することができ、更に、多種類の物質を識別するための有害・危険物質の分析用チップを作製するための、ベースとなる基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に示す、基材及び該基材の製造方法に関する。
【0010】
(1)基板、及び一端が前記基板上に形成され他端が上方に開放している中空の筒体を含み、
前記中空の筒体には、筒体の内側と外側を貫通する貫通孔が少なくとも1以上形成され、
前記基板には、前記中空の筒体の中空部と前記基板の反対側を連通するための貫通孔が形成されていることを特徴とする基材。
(2)基板、及び一端が前記基板上に形成され他端が上方に開放している中空の筒体を含み、
前記中空の筒体には、高さの異なる位置に、筒体の内側と外側を貫通する貫通孔が少なくとも2以上形成されていることを特徴とする基材。
(3)前記中空の筒体から離れた位置に、前記中空の筒体を覆うように外郭部が形成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の基材。
(4)前記中空の筒体と外郭部の高さが異なることを特徴とする上記(1)~(3)の何れか一に記載の基材。
(5)前記中空の筒体に蓋が形成されていることを特徴とする上記(1)~(4)の何れか一に記載の基材。
(6)基板上に積層した中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成するための材料の中に充填材を閉じ込める工程、
前記材料の表面に、中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部に相当する部分にフォトレジストを形成する工程、
前記フォトレジストが形成されていない部分の前記材料を、前記基板までエッチングする工程、
前記材料の中に閉じ込まれた充填材、及び前記材料の表面のフォトレジストを除去する工程、
を含むことを特徴とする貫通孔を有する中空の筒体を基板上に形成した基材の製造方法。
(7)前記基板上に積層した中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成するための材料の中に充填材を閉じ込める工程が、
前記基板上に中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成する材料を積層する工程、
前記材料をエッチングして形成した孔に充填材を充填する工程、及び、
前記充填材を充填した後に、中空の筒体又は中空の筒体及び外郭部を形成する材料を積層する工程、
を少なくとも1回以上含む、
ことを特徴とする上記(6)に記載の製造方法。
(8)基板上に、中空の筒体を形成するための材料を堆積して中空の筒体を形成する工程、
前記中空の筒体に貫通孔を形成する工程、
を含むことを特徴とする貫通孔を有する中空の筒体を基板上に形成した基材の製造方法。
(9)前記中空の筒体に貫通孔を形成する工程の後に、
前記中空の筒体から離れた位置に前記中空の筒体を覆うように外郭部を形成する工程、
を含むことを特徴とする上記(8)に記載の製造方法。
(10)基板上に、中空の筒体を形成するための材料を堆積して中空の筒体を形成する工程、
前記中空の筒体から離れた位置に前記中空の筒体を覆うように外郭部を形成する工程、
前記中空の筒体に貫通孔を形成する工程、
を含むことを特徴とする貫通孔を有する中空の筒体を基板上に形成した基材の製造方法。
(11)前記基板に貫通孔を形成する工程を更に含むことを特徴とする上記(6)~(10)の何れか一に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基材は、電子線リソグラフィ、フォトリソグラフィ、集束イオンビーム(Focused Ion Beam;FIB)等の微細加工技術を駆使することで、任意の大きさ、個数及び位置に貫通孔を有し、内径の大きさも任意である中空の筒体を基板上に形成することができる。そして、貫通孔を通過する有害・危険物質を測定することで有害・危険物質のサイズを測定し、中空の筒体の内側に形成した金属蒸着層やナノワイヤで有害・危険物質を濃縮・識別できる可能性がある。したがって、本発明の基材をベースとすることで、有害・危険物質を一分子単位の高感度で且つ短時間で検出することができ、更に、多種類の物質を識別できる分析用チップの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の基材1の第1実施形態を示す図である。
【図2】図2は、図1に示す基材1のA-A’断面図である。
【図3】図3は、本発明の基材1の第2実施形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の基材1の第3実施形態を示す図である。
【図5】図5は、基材1の製造工程の一例を示す図である。
【図6】図6は、図6は、筒体3及び外郭部6を作製する他の製造工程を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す製造工程を一部変更した例を示している。
【図8】図8は、図面代用写真で、(1)は実施例1で作製した基材1の電子顕微鏡写真で、(2)は(1)を拡大した写真である。
【図9】図9は、図面代用写真で、実施例2で作製した基材1の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の基材及び該基材の製造方法について詳しく説明する。

【0014】
図1は、本発明の基材1の第1実施形態を示している。本発明の基材1は、基板2、基板2上に形成された中空の筒体(以下、「筒体」と記載することがある。)3を含んでいる。筒体3の一端は基板2上に形成され他端は上方に開放しており、筒体3には筒体の内側と外側を貫通する貫通孔31が少なくとも1以上形成されている。1枚の基板2上に形成する筒体3の数は特に制限はない。間隔を詰め過ぎると、分析用チップとする場合の回路配線が複雑となり、間隔をあけすぎると分析効率が低くなるので、分析目的に応じて適宜調整すればよい。

【0015】
本発明の基材1は、後述する微細加工技術を用いた製造工程で製造することから、基板2、筒体3は、半導体製造技術の分野で一般的に用いられている絶縁性の材料であれば特に制限は無い。基材2の材料としては、例えば、Si、Ge、Se、Te、GaAs、GaP、GaN、InSb、InP等が挙げられる。また、筒体3の材料としては、例えば、SiO2、Si34、BPSG、SiON等が挙げられる。

【0016】
図2は、図1に示す基材1のA-A’断面図であって、基板2と筒体3の構造、及び基材1をベースに分析用チップを作製した場合の使用形態を示している。基板2には、筒体3の内側の中空部32と基板2の反対側を連通するための貫通孔21が形成されている。そのため、中空部32に入ったサンプル液5を基材1の外部に排出することができ、中空部32内には、下流方向へのサンプル液5の流れができる。したがって、図2に示すように、上方からサンプル液5を投入すると、サンプル液5中の物質4を筒体3の外側から貫通孔31を通過させることができ、貫通孔31を流れるイオン電流を計測することで、物質4のサイズを識別することができる。なお、図2では、サンプル液5を上方から投入する例を示しているが、サンプル液5は、基板2上に堆積するよう投入してもよく、筒体3を形成する間隔により適宜調整すればよい。また、中空部32に直接侵入する物質4を少なくし、貫通孔31を通過する物質4を多くするため、必要に応じて、中空部32の上方の開口部分に蓋をしてもよい。当該蓋は、例えば、シリコン等で作製したシートを載せればよい。勿論、蓋は前記の例に限定されず、樹脂を充填する等、中空部32の開口部分に蓋をすることができれば特に制限は無い。なお、本発明において、「蓋」は、中空部32の開口部分を完全に塞いで密封状態にするのみでなく、開口部分の一部を塞ぐことも含む意味である。

【0017】
筒体3の内部には、例えば、Pt、Au、Ag、Ag/AgCl等の金属蒸着層33を形成してイオン電流を検出することで物質4を検出することができる。また、ナノワイヤ34を形成することで、物質4を捕捉・濃縮することができ、物質4が生体細胞の場合は、破砕したりすることもできる。

【0018】
ナノワイヤは、金、プラチナ、アルミ、銅、鉄、コバルト、銀、錫、インジウム、亜鉛、ガリウム等の触媒を筒体3の内面に蒸着し、SiO2、Li2O、MgO、Al23、CaO、TiO2、Mn23、Fe23、CoO、NiO、CuO、ZnO、Ga23、SrO、In23、SnO2、Sm23、EuO等の材料を用い、パルスレーザーデポジション、VLS(Vapor-Liquid-Solid)法等の物理蒸着法でナノワイヤを形成すればよい。また、必要に応じて、SiO2、TiO2等を用い、スパッタリング、EB蒸着、PVD、ALD等の一般的な蒸着法により、形成したナノワイヤの周囲に被覆層を形成してもよい。

【0019】
また、基板2に形成した貫通孔21を挟むように電極を形成することで、物質4が通過する際のイオン電流やトンネル電流を計測することができ、分子サイズや分子構造を識別することができる。

【0020】
図2に示す実施形態の場合、物質4は上方から筒体3の中空部32に入り、基板2の貫通孔21から流出する。そのため、金属蒸着層33やナノワイヤ34等の分析手段を筒体3の内面に形成するためには、貫通孔31と貫通孔21の距離が長い方が好ましい。したがって、貫通孔31は、筒体3の中間部より上方(基板2と離れる方向)に形成することが好ましく、1/4より上方に形成することがより好ましく、破損しない強度を維持できる範囲内で筒体3の上方端部近傍に形成することが特に好ましい。なお、一つの筒体3に形成する貫通孔31は、一つでも複数であってもよい。複数形成する場合は、基板2からの距離が同じ位置に貫通孔31を形成してもよいし、基板2からの距離が異なる位置に貫通孔31を形成してもよい。また、貫通孔31の大きさは、同じであっても異なっていてもよい。更に、各々の筒体3に形成する貫通孔31の大きさ、個数及び位置は同じであってもよいし、異なっていてもよい。

【0021】
貫通孔31の大きさは、物質4が通過することで物質4のサイズの分析ができれば特に制限は無いが、イオン電流は物質4が通過する際の貫通孔31内の溶液の体積変化を測定することから、分析対象物質4が通過できる大きさで、可能な限り小さくすることが好ましい。例えば、空気中のPM2.5の直径は約2.5μmであるので、貫通孔31の直径は3μm程度の大きさであればよい。また、スギ花粉の直径は約20~40μm、ヒノキ花粉の直径は28μm~45μm程度と言われているので、貫通孔31の直径は約50μm程度であればよい。勿論、上記の数値は目安であって、物質4がさらに大きな場合は、貫通孔31の直径を100μ、150μm、200μm等、物質4のサイズに応じて大きくしてもよい。貫通孔31の直径は、後述する製造工程において、筒体3を形成する材料をエッチングする深さで調整することができる。一方、貫通孔31の直径の下限は、エッチングした箇所に充填する充填材の分子レベルの大きさまで小さくすることができるが、貫通孔31の直径が小さすぎると、高圧をかけないとサンプル溶液5が貫通孔31及び貫通孔21を通過せず、基材1が電気的に破壊される恐れがある。そのため、分析対象である物質4のサイズよりは大きく、且つ、100nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましく、1μm以上が特に好ましい。また、筒体3の厚さに関しても、厚さが薄いほど貫通孔31の体積が少なくなり、検出感度が向上することから、強度を考慮しながら可能な限り薄くすることが望ましい。

【0022】
筒体3の高さは、上記の金属蒸着層33、ナノワイヤ34等の分析手段を、貫通孔31と基板2の間に形成できる長さがあれば特に制限は無いが、長すぎると破損し易くなることから、分析手段を形成できる範囲内で可能な限り短くすることが好ましい。

【0023】
基板2に形成する貫通孔21の直径は、筒体3の貫通孔31と同じでよい。また、基板2の厚さも、筒体3の厚さと同様に薄い方が好ましいことから、製造が可能で強度が維持できる範囲内の厚さとすればよい。

【0024】
中空部32の直径は、貫通孔31を通過した物質4が通過することから、少なくとも、貫通孔31の直径以上である必要がある。一方、貫通孔31の直径に対する中空部32の直径が大きくなり過ぎると、サンプル液5を上方から投入する場合、貫通孔31を通過せず直接直中空部32に入る物質4が多くなることから、中空部32の直径は、貫通孔31の10倍程度が好ましく、5倍程度がより好ましく、2倍程度が特に好ましい。

【0025】
なお、上記のとおり、サンプル液5を基板2から堆積するように投入する場合は、貫通孔31は中空部32の先端より基板2側に形成されているので、貫通孔31を通って中空部32に入る物質4が多くなる。その場合、中空部32の直径は、貫通孔31の直径とは関係なく設定すればよく、上記の貫通孔31の10倍より更に大きくてもよい。また、中空部32の開口部分に蓋をする場合も、同様に、中空部32の直径は貫通孔31の10倍より更に大きくてもよい。

【0026】
貫通孔31及び貫通孔21に形成する電極は、基材1を作製後、フォトリソグラフィ等の手段により形成すればよい。または、プリンター等により形成してもよい。

【0027】
図3は、本発明の基材1の第2実施形態を示す図である。図3に示す第2実施形態では、基板2に貫通孔を形成せず、筒体3の基板2に近い部分にサンプル液5の排出用の貫通孔35を形成している。サンプル液5を上方から投入する場合、サンプル液5を中空部32中で下流方向に流すことができればよいことから、基板2の貫通孔21に代え、筒体3の基板2に近い部分に貫通孔35を形成することで、同等の機能を達成することができる。貫通孔31と貫通孔35の間に、金属の蒸着層33やナノワイヤ34等の分析手段を形成することから、貫通孔35と貫通孔31は可能な限り、離して形成することが望ましい。第2実施形態の場合は、貫通孔35は後述する製造工程中の充填材の塗布の位置を調整することで簡単に作製することができ、貫通孔21を別途作製する手順が不要である。第2実施形態は、貫通孔21に代え貫通孔35を形成した以外は、第1実施形態と同様でよい。

【0028】
図4は、本発明の基材1の第3実施形態を示す図である。図4に示す第3実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態の基材1の筒体3から離れた位置に、筒体3を覆うように外郭部6が形成されている。外郭部6は後述する製造工程で、フォトレジストの形状を変え、筒体3の周りをエッチングすることで中空部32と同時に形成することができる。外郭部6を形成することで、分析手段が形成されている筒体3を保護することができる。また、フォトレジストの形状を変え、エッチングの手順を変えることで、筒体3の高さと比較して、外郭部6の高さを低くすることも、高くすることもできる。筒体3の外側と外郭部6の内側の距離は、物質4が入る大きさ以上であれば特に制限は無い。

【0029】
図5は、基材1の製造工程の一例を示す図であって、筒体3の基板2に近い部分に貫通孔35を2か所、上端に近い部分に貫通孔31を2か所、及び外郭部6を形成する例を示している。
(1)基板2の上に、筒体3及び外郭部6を形成する材料7を化学蒸着で塗布する。
(2)ポジ型フォトレジスト8をスピンコータで塗布する。
(3)貫通孔35を形成する個所に光が照射するように、フォトマスクを用いて露光・現像処理し、貫通孔35を形成する部分のポジ型フォトレジスト8を除去する。
(4)貫通孔35の直径に相当する深さとなるようにエッチングする。
(5)エッチングした箇所に充填材81を充填する。
(6)材料7を化学蒸着で塗布して、貫通孔35を形成する部分の充填材81を材料7中に閉じ込める。
(7)上記(2)~(6)の手順を繰り返し、貫通孔を形成したい箇所に充填材81を閉じ込める。次いで、材料7の表面にポジ型フォトレジスト8を塗布し、露光・現像処理により、筒体3及び外郭部6に相当する部分はポジ型フォトレジスト8を残し、それ以外のポジ型フォトレジスト8を除去する。
(8)ポジ型フォトレジスト8が形成されていない部分を基板2に到達するまでエッチングする。
(9)ポジ型フォトレジスト8及び充填材81を除去することで貫通孔31及び貫通孔35を形成した筒体3及び外郭部6を形成する。

【0030】
なお、図4に示す第3実施形態の基材1を製造する場合は、貫通孔35に相当する充填材81を材料7に閉じ込める工程を省略し、上記工程(9)の後に、基板2の反対側から貫通孔21を形成すればよい。貫通孔21は、以下に示すウエットエッチングで形成することができる。
(i)基板2の裏面に、貫通孔21の大きさに応じた開口部を持ったメタルマスクを用いて、クロム蒸着を行う。
(ii)RIE-10NR-NPを用いて、裏面の酸化膜をエッチングする。
(iii)裏面のみをKOH溶液に漬けて、ウエットエッチングを行う。

【0031】
基材1の微細な貫通孔21、35や中空部32等にサンプル液5が流れやすくするために、作製した基材1は親水化処理をしてもよい。親水化処理方法としては、プラズマ処理、界面活性剤処理、PVP(ポリビニルピロリドン)処理、光触媒等が挙げられ、例えば、基材1の表面を10~30秒間プラズマ処理することで、表面に水酸基を導入することができる。

【0032】
また、材料7、ポジ型フォトレジスト8の塗布・積層方法も上記の例に限定されず、半導体製造分野で一般的に用いられている方法であれば特に制限は無い。また、充填材81としては、最終的に閉じ込めた場所から溶剤等を用いて除去できるものであれば特に制限は無い。例えば、樹脂や金属等が挙げられるが、充填材81としてポジ型フォトレジスト8を用いると、工程(9)で表面に残留しているポジ型フォトレジスト8の除去と同じ工程で充填材81を除去できるので、製造工程の簡略化の観点から望ましい。

【0033】
ポジ型フォトレジスト8としては、TSMR V50、PMER等、半導体製造分野で一般的に使用されているものであれば特に制限はない。また、ポジ型に代え、ネガティブ型のフォトレジストを用いてもよく、SU-8、KMPR等、半導体製造分野で一般的に使用されているものであれば特に制限はない。フォトレジストの除去液は、ジメチルホルムアミドとアセトン等、半導体分野で一般的な除去液であれば特に制限はない。

【0034】
図5に示した基材1の製造工程は、微細加工技術を利用してエッチング及び塗布を繰り返し、基板2上に多数の筒体3、外郭部6を同時に形成する方法であるが、基板2上に筒体3、外郭部6を堆積し、筒体3の任意の箇所に貫通孔を形成することで基材を製造することもできる。

【0035】
図6は、筒体3及び外郭部6を作製する他の製造工程を示す図である。図6に示す製造工程では、
(1)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、タングステン、カーボン、白金等の材料を、ガスインジェクション装置、液体金属イオン源等9を用いて基板2上に堆積して筒体3を形成する。
(2)ヘリウムイオン顕微鏡、ガリウムイオン等の集束イオンビーム(Focused Ion Beam;FIB)10を用いて、筒体3の任意の箇所に貫通孔31を形成する。
(3)前記(1)と同様の材料及び手順で外郭部6を堆積する。なお、筒体3には既に貫通孔31が形成されているので、外郭部6の高さは筒体3より高くしてもよい。

【0036】
図7は、図6に示す製造工程を一部変更した例を示している。図7に示す製造工程では、図6の工程の(2)と(3)の順番を変えている。なお、図7に示す製造工程の場合、工程(3)で筒体3に貫通孔31を形成するため、工程(2)において、外郭部6は筒体3より低くすることが好ましい。

【0037】
図5に示す製造工程では、貫通孔31(35)を形成する位置及び大きさが同じである筒体3を一度に大量に製造する場合に有用である。一方、図6及び7に示す製造方法は、貫通孔31(35)の位置及び大きさを、筒体3毎に任意の場所に形成することができる。したがって、一つの基板2上の筒体3毎に異なる微粒子を検出する場合に有用である。

【0038】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
以下の手順により、基材1を作製した。
先ず、基板2の前処理として、厚さ300μmのBear-Siを、UV-1(Samco社製)を用い、オゾン洗浄(300℃、15分)を行った。
(1)次に、PD-200STP(Samco社製)を用い、TEOS 12sccm、O 400sccm、150W、40Pa、200℃の条件で、SiO2を約2.4μm積層した。
(2)ポジ型フォトレジスト8(ZEP-520A:A7=1:1)を、スピンコータ(5000rpm、90秒)により塗布した。塗布後は、ホットプレートで180℃、3分、ベークした。
(3)ELT-100T(Elionixs社製)を用い、貫通孔31を形成する個所に光が照射するように、フォトマスクを用いて露光した。露光後は、ZED-N50を用いて室温で90秒現像した。次いで、SVC-700LRF(サンユー電子製)を用い、50W、0.2Pa、Ar 8sccmの条件でCrの金属マスクを行い、DMFを用いてリフトオフを行った。
(4)RIE-10NR-NPを用いて、CF 15sccm、200W,10Paの条件で、深さが約2μmとなるようにSiO2をエッチングした。
(5)エッチングした部分に、スピンコータ—(3000rpm、60秒)を用いて、TSMR-V50ELを充填した。充填後、ホットプレートで、110℃、3分、ベークした。次いで、反応性イオンエッチング装置(RIE-10NR-NP)を用いて、O2 16sccm、20Pa、50W、3分の条件で、材料表面のTSMR-V50ELを除去した。
(6)上記(1)と同様の手順で、SiO2を約2.4μm塗布した。
(7)上記(2)~(6)の手順を2回以上繰り返した。次いで、ポジ型フォトレジストとしてZEP-520原液を用いた以外は、上記(2)と同様の手順でレジストの塗布を行った。次いで、上記(3)と同様の手順で、筒体3及び外郭部6以外の部分のレジストを除去した。
(8)上記(4)と同様の手順で、基板2に到達するまでSiO2のエッチングを行った。
(9)アセトンを用いて、SiO2表面及びSiO2中のポジ型フォトレジストを除去し、純水で洗浄した。
【実施例】
【0040】
図8(1)は実施例1で作製した基材1の電子顕微鏡写真で、図6(2)は図6(1)を拡大した写真である。作製した基材1の筒体3の外径は約5μm、内径は2.5μmであった。外郭部6の外径は10μm、内径は約7.5μmであった。また、隣接する筒体3の中心間距離は、約40μmであった。筒体3及び外郭部6の高さは約50μmであった。なお、写真からは明らかではないが、貫通孔31の直径は約2.4μmであった。
【実施例】
【0041】
<実施例2>
実施例1とは異なる以下の手順で基材1を作製した。
(1)TEOSを、ガスインジェクション装置(Oxford Instruments,Inc.;ネオンガスを使用)を用い基板2上に塗布することで、基板2上にSiO2で作製された筒体3及び外郭部6を形成した。なお、外郭部6の高さは、筒体3より低くなるように形成した。
(2)ヘリウムイオン顕微鏡(ORION NanoFab;Carl ZeissMicroscopy,Inc.)を用い、上記(1)で作製した筒体3に貫通孔31を形成した。
【実施例】
【0042】
図9は実施例2で作製した基材1の電子顕微鏡写真で、貫通孔31の直径は約13nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の基材1は、任意の大きさ、個数及び位置に貫通孔を形成し、内径の大きさも任意である中空の筒体を、基板上に複数形成することができる。そして、貫通孔を通過する微粒子を測定することで微粒子のサイズを測定し、中空の筒体の内側に形成した金属蒸着層やナノワイヤで微粒子を濃縮・識別できる可能性がある。したがって、本発明の基材1を用いて有害・危険物質を分析するチップを作製することで、身の回りの有害・危険物質をスマホ等の身近な機器に組み込める可能性があるので、安全・安心社会を実現するための機器の開発に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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