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明細書 :光学特性測定装置及び光学特性測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5721195号 (P5721195)
登録日 平成27年4月3日(2015.4.3)
発行日 平成27年5月20日(2015.5.20)
発明の名称または考案の名称 光学特性測定装置及び光学特性測定方法
国際特許分類 G01N  21/23        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
FI G01N 21/23
G01N 21/27 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 21
出願番号 特願2013-502369 (P2013-502369)
出願日 平成24年2月28日(2012.2.28)
国際出願番号 PCT/JP2012/054940
国際公開番号 WO2012/118079
国際公開日 平成24年9月7日(2012.9.7)
優先権出願番号 2011043170
優先日 平成23年2月28日(2011.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月17日(2013.10.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】石丸 伊知郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】比嘉 翔一
参考文献・文献 浦木智央,外,ワンショット実時間フーリエ分光イメージング方式の提案,OPTICS & PHOTONICS JAPAN講演予稿集,2010年11月 8日,P.84-85
大谷幸利,偏光解析と干渉計測,Optronics,2010年 8月 9日,P.111-116
若山俊隆,外,分光干渉による2次元複屈折分散計測,レーザ顕微鏡研究会講演会論文集,2002年,P.77-81
小林宏明,外,偏光計測技術を用いた石材の品質評価手法,知能メカトロニクスワークショップ講演論文集,2011年 1月12日,P.ロンブンNO.H3
調査した分野 G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01J 4/00- 4/04
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
a)直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を第1偏光板及び第2偏光板に導く分割光学系と、
b)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分の合成成分のうち、所定の偏光方向の光を透過させる検光子と、
c)前記検光子を透過した光を同一点に導き干渉像を形成する結像光学系と、
d)前記干渉像の光強度を検出する検出部と、
e)前記第1偏光板及び第2偏光板から前記検光子に向かう第1偏光成分及び第2偏光成分の光路長の差を変化させることにより当該第1偏光成分と第2偏光成分の間の位相差を変化させる位相差付与手段と、
f)前記位相差の変化に伴い前記検出部で検出される光強度の変化のデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する処理部と
を備え
前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、前記第1偏光板及び前記第2偏光板が配置されていることを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項2】
a)直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を第1偏光板及び第2偏光板に導く分割光学系と、
b)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分の合成成分のうち所定の偏光方向の光を透過させる検光子と、
c)前記検光子を透過した光を、前記第1偏光成分及び第2偏光成分の光軸と異なる向きに延びる同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成する結像光学系と、
d)前記第1偏光板及び第2偏光板から前記検光子に向かう第1偏光成分及び第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を与えることにより当該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な位相変化を与える位相変化付与手段と、
e)前記線状の干渉像の該干渉像の延びる方向に沿った光強度分布を検出する検出部と、
f)前記検出部で検出される前記干渉像の光強度分布を示すデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する処理部と
を備え
前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、前記第1偏光板及び前記第2偏光板が配置されていることを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項3】
a)直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を第1偏光板及び第2偏光板に導く分割光学系と、
b)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分の合成成分のうち、所定の偏光方向の光を透過させる検光子と、
c)前記検光子を透過した光を、前記第1偏光成分及び第2偏光成分の光軸と異なる向きに延びる同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成する結像光学系と、
d)前記第1偏光板及び第2偏光板から前記検光子に向かう第1偏光成分及び第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を与えることにより当該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な位相変化を与える位相変化付与手段と、
e)前記線状の干渉像を波長分解して分光スペクトルを形成する分光光学系と、
f)前記分光スペクトルの光強度分布を検出する検出部と、
g)前記検出部で検出される光強度分布から前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する処理部と
を備え
前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、前記第1偏光板及び前記第2偏光板が配置されていることを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項4】
前記分割光学系が、前記被測定物から発せられた光を平行光線化して第1偏光板及び第2偏光板に導く対物レンズを備え、
前記処理部は、前記被測定物のうち前記対物レンズの合焦点から発せられた光の波長毎の振幅と複屈折位相差を求めることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項5】
前記被測定物に対する前記対物レンズの合焦位置を相対的に変更する合焦位置変更手段を備えることを特徴とする請求項に記載の光学特性測定装置。
【請求項6】
a)直線偏光を被測定物に入射させ、
b)前記直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を分割光学系によって第1偏光板及び第2偏光板にそれぞれ導き、
c)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分を、該第1偏光成分と該第2偏光成分の光路長の差を変化させつつ検光子を介して結像光学系に導くと共に、該結像光学系によって同一点に集光させて干渉像を形成させ、
d)前記干渉像の光強度の変化を示すデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する方法であって、
前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、前記第1偏光板及び前記第2偏光板が配置されていることを特徴とする光学特性測定方法。
【請求項7】
a)直線偏光を被測定物に入射させ、
b)前記直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を分割光学系によって第1偏光板と第2偏光板にそれぞれ導き、
c)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分を、該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を付与しつつ検光子を介して結像光学系に導くと共に、該結像光学系によって同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成させ、
d)前記線状の干渉像の該干渉像が延びる方向に沿った光強度分布を示すデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する方法であって、
前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、前記第1偏光板及び前記第2偏光板が配置されていることを特徴とする光学特性測定方法。
【請求項8】
a)直線偏光を被測定物に入射させ、
b)前記直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を分割光学系によって第1偏光板と第2偏光板にそれぞれ導き、
c)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分を、該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を付与しつつ検光子を介して結像光学系に導くと共に、該結像光学系によって同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成させ、
d)前記線状の干渉像を分光光学系によって波長分解することにより分光スペクトルを取得し、
e)前記分光スペクトルの光強度分布に基づき前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する方法であって、
前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して前記第1偏光成分と前記第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、前記第1偏光板及び前記第2偏光板が配置されていることを特徴とする光学特性測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の分光特性及び偏光特性の両方を測定可能な光学特性測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物質の光学特性を測定することにより当該物質中の未知の成分を推定する方法が知られている。例えば特許文献1には、測定対象となる物質に光を透過させたときの透過光強度から複屈折位相差(リタデーション)を求め、該複屈折位相差から物質固有の複屈折率を算出することにより未知の成分を推定する方法が開示されている。複屈折とは、異方性媒体に光が入射するときに二つの屈折光が現れる現象をいう。複屈折位相差は複屈折率と透過光路長の積で表されるため、複屈折位相差が同じであっても光の透過光路長が異なれば複屈折率も異なることになる。従って、正確な複屈折率は、測定された複屈折位相差に対して正確に定まった透過光路長を用いて求めることができる。
【0003】
しかしながら、測定対象において容易に透過光路長を求めることができない場合、例えば測定対象の形状が複雑な場合には正確な複屈折率を求めることが困難になる。また、測定対象が眼の網膜といった生体膜の場合は測定対象を人体から切り出すことができないため、その厚み、即ち透過光路長を測定することができない。
【0004】
また、複屈折性以外の光学特性であるフーリエ分光特性から物質中の未知の成分を推定する方法がある。上述したように、複屈折性は物質が異方性媒体であるときに観察される光学特性であるため、未知の物質の成分を推定する場合には複屈折性とフーリエ分光特性の両方を測定することが有効である。ところが、従来の装置ではフーリエ分光特性と複屈折性の両方を同時に測定することができなかった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2001-141602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、様々な形状や性質の物質のフーリエ分光特性と複屈折性を同時に測定することができる光学特性測定装置および光学特性測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る光学特性測定装置は、
a)直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を第1偏光板及び第2偏光板に導く分割光学系と、
b)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分の合成成分のうち、所定の偏光方向の光を透過させる検光子と、
c)前記検光子を透過した光を同一点に導き干渉像を形成する結像光学系と、
d)前記干渉像の光強度を検出する検出部と、
e)前記第1偏光板及び第2偏光板から前記検光子に向かう第1偏光成分及び第2偏光成分の光路長の差を変化させることにより当該第1偏光成分と第2偏光成分の間の位相差を変化させる位相差付与手段と、
f)前記位相差の変化に伴い前記検出部で検出される光強度の変化のデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する処理部と
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光学特性測定装置は、
a)直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を第1偏光板及び第2偏光板に導く分割光学系と、
b)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分の合成成分のうち所定の偏光方向の光を透過させる検光子と、
c)前記検光子を透過した光を、前記第1偏光成分及び第2偏光成分の光軸と異なる向きに延びる同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成する結像光学系と、
d)前記第1偏光板及び第2偏光板から前記検光子に向かう第1偏光成分及び第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を与えることにより当該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な位相変化を与える位相変化付与手段と、
e)前記線状の干渉像の該干渉像の延びる方向に沿った光強度分布を検出する検出部と、
f)前記検出部で検出される前記干渉像の光強度分布を示すデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する処理部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る光学特性測定装置は、
a)直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を第1偏光板及び第2偏光板に導く分割光学系と、
b)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分の合成成分のうち、所定の偏光方向の光を透過させる検光子と、
c)前記検光子を透過した光を、前記第1偏光成分及び第2偏光成分の光軸と異なる向きに延びる同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成する結像光学系と、
d)前記第1偏光板及び第2偏光板から前記検光子に向かう第1偏光成分及び第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を与えることにより当該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な位相変化を与える位相変化付与手段と、
e)前記線状の干渉像を波長分解して分光スペクトルを形成する分光光学系と、
f)前記分光スペクトルの光強度分布を検出する検出部と、
g)前記検出部で検出される光強度分布から前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得する処理部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記した本発明に係る光学特性測定装置においては、第1偏光成分と第2偏光成分の偏光方向が直交し、且つ前記被測定物に入射する直線偏光の電界成分に対して第1偏光成分と第2偏光成分の偏光方向が45°傾くように、第1偏光板及び第2偏光板が配置されていることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明に係る光学特性測定装置においては、
前記分割光学系が、前記被測定物から発せられた光を平行光線化して第1偏光板及び第2偏光板に導く対物レンズを備え、
前記処理部は、前記被測定物のうち前記対物レンズの合焦点から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差(位相差量)を求めるようにすると良い。
【0012】
この場合、前記被測定物に対する前記対物レンズの合焦位置を相対的に変更する合焦位置変更手段を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る光学特性測定方法は、
a)直線偏光を被測定物に入射させ、
b)前記直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を分割光学系によって第1偏光板及び第2偏光板にそれぞれ導き、
c)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分を、該第1偏光成分と該第2偏光成分の光路長の差を変化させつつ検光子を介して結像光学系に導くと共に、該結像光学系によって同一点に集光させて干渉像を形成させ、
d)前記干渉像の光強度の変化を示すデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る光学特性測定方法は、
a)直線偏光を被測定物に入射させ、
b)前記直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を分割光学系によって第1偏光板と第2偏光板にそれぞれ導き、
c)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分を、該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を付与しつつ検光子を介して結像光学系に導くと共に、該結像光学系によって同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成させ、
d)前記線状の干渉像の該干渉像が延びる方向に沿った光強度分布を示すデータをフーリエ変換することにより前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得することを特徴とする。
【0015】
さらにまた、本発明に係る光学特性測定方法は、
a)直線偏光を被測定物に入射させ、
b)前記直線偏光が入射された被測定物から発せられる光を分割光学系によって第1偏光板と第2偏光板にそれぞれ導き、
c)前記第1偏光板を透過した第1偏光成分と前記第2偏光板を透過した第2偏光成分を、該第1偏光成分と第2偏光成分の間に連続的な光路長差分布を付与しつつ検光子を介して結像光学系に導くと共に、該結像光学系によって同一直線上に集光させて線状の干渉像を形成させ、
d)前記線状の干渉像を分光光学系によって波長分解することにより分光スペクトルを取得し、
e)前記分光スペクトルの光強度分布に基づき前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と複屈折位相差を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光学特性測定装置及び方法によれば、直線偏光が入射された被測定物から発せられる光は、分割光学系によって第1偏光板及び第2偏光板に導かれ、該第1偏光板及び第2偏光板を透過した後、第1偏光成分及び第2偏光成分となって検光子に入射する。検光子を透過した光は、結像光学系によって同一点又は同一直線上に導かれて干渉像を形成する。このとき、第1偏光成分と第2偏光成分の間の位相差が時間的あるいは空間的に変化されるため、検出部で検出される干渉光の強度が変化し、インターフェログラムに似た合成波形が取得される。処理部によってこの合成波形をフーリエ変換すると、前記被測定物から発せられる光の波長毎の振幅と波長毎の複屈折位相差が得られるため、被測定物のフーリエ分光特性と複屈折性を同時に求めることができる。
なお、2つの光が同一の「点」に導かれて干渉する場合は、厳密には「干渉像」ではなく「干渉光」であるが、ここでは、2つの光が干渉することにより形成されるものを全て「干渉像」と呼ぶこととする。
【0017】
また、本発明によれば、直線偏光が入射された被測定物から発せられる光が透過光及び反射光のいずれであっても、当該光を使って被測定物のフーリエ分光特性と複屈折率性を同時に求めることができる。従って、光学素子、高分子フィルムといった比較的形状が単純な製品はもちろん、形状が複雑な物質、及び眼の網膜といった生体膜も被測定物となりうるため、幅広い分野で利用できる。
【0018】
ところで、従来のフーリエ変換型赤外分光法(FTIR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)では、マイケルソン干渉計を用いて被測定物から発せられた光を2つに分離し、これら2つに分離された光を共通の光路に導いて干渉させ、その干渉光を検出器で検出する。2つに分離された光は共通光路上で干渉するため、検出器の受光面には、被測定物の様々な位置(深度)から発せられた光の干渉光が混在することになる。
これに対して本発明では、被測定物から発せられた光を分割光学系によって第1偏光成分と第2偏光成分に分割し、これら偏光成分を別々の光路で結像光学系に向かわせた後、該結像光学系によって同一点に導いて干渉させる。合焦面から発せられた光のみが、結像光学系の結像面上で干渉するため、本発明では、結像光学系の結像面上に検出部の受光面を位置させることにより、被測定物のうち合焦面に相当する部分、つまり、被測定物内の特定の深度から発せられた光の干渉光のみを検出部で検出することができ、雑音の少ない明瞭な干渉像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る光学特性測定装置の全体構成及び光学素子の配置を示す概略図。
【図2】光学特性測定装置の概略的な全体構成を示す図。
【図3】偏光子、第1偏光板及び第2偏光板、検光子の偏光方向を説明するための図。
【図4】実施例1に係る光学特性測定装置の測定原理を説明するための図であって、直線偏光成分とそれをx方向とy方向の直交成分にベクトル分解した電界成分を示す図(a)及びこれら直線偏光成分、x、y方向の電界成分を光の進行方向から見た図(b)。
【図5】x方向とy方向の電界成分の間にλ/4の位相差があるときの合成ベクトルを示す図(a)及び、これらx、y方向の電界成分と合成ベクトルを光の進行方向から見た図(b)。
【図6】x方向とy方向の電界成分の間にλ/2の位相差があるときの合成ベクトルを示す図(a)及び、これらx、y方向の電界成分と合成ベクトルを光の進行方向から見た図(b)。
【図7】x方向とy方向の電界成分の間に測定対象により与えられた未知の複屈折位相差(リタデーション)を打ち消す位相差を与えたときの合成ベクトルを示す図(a)及び、これらx、y方向の電界成分と合成ベクトルを光の進行方向から見た図(b)。
【図8】位相シフト量と結像強度の関係を示す図。
【図9】多波長光を照射したときの位相シフト量と結強度との関係を示す図。
【図10】多波長光の結強度の合成波形図(a)とそれをフーリエ変換して得られたスペクトルの波形図(b)及びリタデーション(複屈折位相差)を示す図(c)
【図11】石材の斜方照明型干渉計の観察画像。
【図12】石材のスペクトルを表すグラフ。
【図13】石材のリタデーション量と波長との関係を示すグラフ。
【図14】特定の波長範囲における石材の強度分布と位相分布を表す図。
【図15】本発明の実施例2に係る光学特性測定装置の概略的な全体構成を示す図。
【図16】実施例2に係る光学特性測定装置のうち測定対象から結像面までの光学素子の配置を示す図。
【図17】実施例2において結像レンズにより測定光が受光面に集光される様子を示す側面図。
【図18】実施例2において結像レンズにより測定光が受光面に集光される様子を示す上面図。
【図19】本発明の実施例3に係る光学特性測定装置の概略的な全体構成を示す図。
【図20】実施例3における結像レンズの斜視図。
【図21】実施例3における基準光束と傾斜光束の干渉像を示す図。
【図22】本発明の実施例4に係る光学特性測定装置の概略的な全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のいくつかの具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1及び図2は実施例1に係る光学特性測定装置を示す。これらの図に示すように、実施例1に係る光学特性測定装置1は、光源3、偏光子5、対物レンズ7、第1偏光板9及び第2偏光板11、位相シフター13、検光子15、結像レンズ17、検出器19を備えている。本実施例では、対物レンズ7、第1偏光板9、及び第2偏光板11が分割光学系を構成し、結像レンズ17が結像光学系を構成する。また、位相シフター13が位相差付与手段として機能する。
【実施例1】
【0022】
前記対物レンズ7は、レンズ駆動機構21によって光軸方向に移動可能に構成されている。レンズ駆動機構21は、対物レンズ7の合焦位置を走査するためのものであり合焦位置変更手段に相当する。前記レンズ駆動機構21は、例えばピエゾ素子により構成することができる。
【実施例1】
【0023】
偏光子5は、光源3から出射される光の光路上に配置されており、当該光から特定の方向の直線偏光成分のみを抽出して被測定物である試料Sに照射する。試料Sに光が照射されることによって、当該試料Sを透過してきた光(以下、「測定光」ともいう)は、対物レンズ7に入射し、平行光束へ変換される。
なお、図1及び図2には、試料Sを透過した光を測定する透過型の光学特性測定装置1を示したが、試料Sの内部から反射してきた光を測定する反射型の光学特性測定装置でもよい。試料を透過してきた光、及び、試料の内部で反射してきた光は、いずれも試料中の成分の複屈折性と吸光特性を有するからである。
【実施例1】
【0024】
また、対物レンズ7を透過した後の光束は完全な平行光束である必要はない。後述するように、測定光を2分割あるいはそれ以上に分割できる程度に広げることができればよい。ただし、平行光束でない場合は、後述の位相シフト量に応じて生じる位相差量に誤差を生じ易い。従って、より高い測定精度を得るためにはできるだけ平行光束とすることが望ましい。
【実施例1】
【0025】
第1偏光板9及び第2偏光板11はいずれも対物レンズ7を透過してきた平行光束の光路上に例えば上下に並んで配置されている。対物レンズ7を透過してきた平行光束は第1偏光板9及び第2偏光板11を経て位相シフター13に到達する。
図3に示すように、第1偏光板9及び第2偏光板11は、その偏光方向が偏光子5を透過してきた直線偏光成分の電界ベクトルの振動方向に対して45°傾くように、且つ、第1偏光板9の偏光方向と第2偏光板11の偏光方向が互いに直交するように設置される。以下の説明では、第1偏光板9の偏光方向をx方向、第2偏光板11の偏光方向をy方向ともいう。また、第1偏光板9を透過した光を第1偏光、第2偏光板11を透過した光を第2偏光という。
【実施例1】
【0026】
位相シフター13は、矩形板状の可動ミラー部131、その下部に配置された矩形板状の固定ミラー部132、可動ミラー部131及び固定ミラー部132を保持する保持部133及び134、可動ミラー部131の保持部133を移動する駆動ステージ135を備えて構成されている。第1偏光板9を透過した第1偏光は可動ミラー部131に入射し、第2偏光板11を透過した第2偏光は固定ミラー部132に入射する。可動ミラー部131及び固定ミラー部132の表面(反射面)は光学的に平坦で且つ本装置1が測定対象とする光の波長帯域を反射可能な光学鏡面となっている。また、可動ミラー部131及び固定ミラー部132の反射面はほぼ同じ大きさを有している。
【実施例1】
【0027】
なお、以下の説明では、第1偏光板9から可動ミラー部131の反射面に到達して反射され検光子15に至る光束を可動光束、第2偏光板11から固定ミラー部132の反射面に到達して反射され検光子15に至る光束を固定光束ともいう。
【実施例1】
【0028】
駆動ステージ135は、例えば静電容量センサーを具備する圧電素子から構成されており、制御部25からの制御信号を受けて保持部133を矢印A方向に移動させる。これにより、可動ミラー部131は光の波長に応じた精度で矢印A方向に移動する。この結果、可動光束と固定光束の間に光路長差が生じ、これら2光束間に相対的な位相変化が与えられる。従って、本実施例では、位相シフター13が光路長差伸縮手段に相当し、可動ミラー部131及び固定ミラー部132がそれぞれ第1反射部及び第2反射部に相当する。分光測定能力にもよるが、例えば可視光領域では10nm程度の高精度な位置制御が必要となる。
【実施例1】
【0029】
また、位相シフター13は、対物レンズ7からの平行光束の光軸に対して可動ミラー部131及び固定ミラー部132の反射面が45°傾くように配置されている。駆動ステージ135は、可動ミラー部131の反射面の光軸に対する傾きを45°に維持した状態で当該可動ミラー部131を移動する。このような構成により、可動ミラー部131の光軸方向の移動量は、駆動ステージ135の移動量の√2となる。また、固定光束と可動光束の2光束間の相対的な位相変化を与える光路長差は、可動ミラー部131の光軸方向の移動量の2倍となる。
【実施例1】
【0030】
このように可動ミラー部131及び固定ミラー部132を斜めに配置すれば、光線を分岐するためのビームスプリッタが不要となるため、物体光の利用効率を高くすることができる。
【実施例1】
【0031】
検光子15は、偏光子5と同じ方向の直線偏光成分を透過する、いわゆるオープンニコルの状態で設置されている。従って、試料Sが複屈折性を有しない場合は、位相シフト動作を行わなければ光源3から偏光子5を経て測定対象を透過した直線偏光成分はそのまま結像レンズ17に到達する。結像レンズ17の結像面となる位置に検出器19の受光面が位置しており、結像レンズ17に到達した直線偏光成分は検出器19の受光面の同一点上に集光する。なお、検光子15は偏光子5に対する偏光抽出角が45°となるように設置されていても良い。この場合、検光子15の偏光抽出角の向きはどちらでも良い。検光子15をこのように設置した場合、試料Sが複屈折性を有しない場合には偏光子5を経て測定対象を透過した直線偏光成分は検光子15を通過しないが、試料Sの複屈折性によって45°回転された直線偏光成分は検光子15を通過する。
検出器19は例えば二次元CCDカメラから構成されており、その検出信号は処理部23に入力されて処理される。また、処理部23、レンズ駆動機構21、駆動ステージ135等は制御部25によって制御される。
【実施例1】
【0032】
ここで、本実施例に係る光学特性測定装置1の測定原理について図4~図10を用いて説明する。図4(a)、(b)中、x軸は第1偏光板9の偏光方向を、y軸は第2偏光板11の偏光方向を示す。また、z軸は、x軸及びy軸に直交しており光の進行方向を示す。図4(a)、(b)中、実線Lで示す斜め方向の振動が、観察される直線偏光、つまり、偏光子5を経て試料Sに照射される直線偏光成分の電界ベクトルの振動である。進行方向から眺めると、斜め45°の方向に電界成分が直線的に振動することから直線偏光と呼ばれる。これを、x方向とy方向の直交成分にベクトル分解して考える。つまり、二点鎖線Lxで示す電界成分と一点鎖線Lyで示す電界成分が同期して振動しており、その合成ベクトルとして、実線Lの直線偏光が観察されると考える。
【実施例1】
【0033】
物質の複屈折性により、例えばx方向とy方向の電界振動の位相差がλ/4であるとする。この場合、図5(a)に示すように、T1の時点では、y方向ベクトル(一点鎖線Ly)は節であることから、その合成ベクトルはx方向成分(二点鎖線Lx)のみで決定される。T2の時点では、逆にx方向成分(二点鎖線Lx)が節となるため、y方向成分(一点鎖線Ly)のみにより合成ベクトルが決まる。このように、直交分解したベクトル成分のリタデーションがλ/4の場合、合成ベクトル(実線L1~L4)は、進行方向からみて回転する、いわゆる円偏光になる(図5(b)参照)。
【実施例1】
【0034】
一方、図6(a)に示すように、x方向とy方向の電界振動の位相差がλ/2の場合、その合成ベクトルは、もとの直線偏光と直交する方向の直線偏光(図6(b)の点線)になる。このとき、偏光子5に対して検光子15がオープンニコルの状態で設置されている場合、合成ベクトルは検光子15を透過することができない。
【実施例1】
【0035】
図7に示すように、試料Sの有する複屈折性により未知のリタデーションが直交する2方向の電界ベクトル成分Lx、Lyに付加されたとする。このような2方向の電界成分に対して試料Sにより与えられたリタデーションを打ち消す位相差を与える。図7では試料Sによりリタデーションが与えられた電界ベクトル成分をLx、Lyとし、当該リタデーションを打ち消す位相差が与えられた電界ベクトル成分をLx、Ly'とする。すると、リタデーションを打ち消す位相差を与えられた電界ベクトル成分LxとLy'の合成ベクトルLは、試料Sに照射された直線偏光と同様の直線偏光に戻る。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、位相シフター13により、第1偏光板9を透過した第1偏光と第2偏光板11を透過した第2偏光の間に任意の位相差を与えることができる。そこで、可動ミラー部131を徐々に移動させて第1偏光と第2偏光の間の光路長の差を連続的に且つ時間的に変化させ、両者の間の位相差を変化させると、光源3からの光が単色光の場合、偏光子5に対してオープンニコルで配置された検光子15を透過する結像強度は、図8に示すようにリタデーションを打ち消す位相差量を与えた時点で最も強くなる。その位相差量に更に位相差量λ/2を与えると、偏光子5から試料Sに照射される直線偏光の方向と直交する方向の直線偏光になるため検光子15を透過できなくなり、結像強度は最も小さくなる。更に位相差量λ/2を与えて位相差が1波長(λ)になると、再び偏光子5から試料Sに照射される直線偏光と同じ方向の直線偏光になるため、結像強度が最も強くなる。このように、第1偏光と第2偏光の間の位相差量が1波長となるごとに明暗が繰り返される正弦波状の結像強度変化を示すことになる。多波長の光を照射すると、波長毎のリタデーション量の違いと、波長の違いが図9のように重なり合う。
【実施例1】
【0037】
この結果、図10(a)に示すように、フーリエ分光のインターフェログラムと似た、合成波形を観察することができる。一般的なフーリエ分光のインターフェログラムは、複屈折性が反映されないことから、位相差量が0の位置において全ての波長の光が強め合う波形になる。一方、本実施例の場合、波長毎にリタデーションが異なれば、図10(a)に示すように、明確なピーク位置を観察できない合成波形になる。しかし、この合成波形は多様な周波数の正弦波形の重なりにより形成されている波形であることから、処理部23にて数学的にフーリエ変換することにより、波長毎の振幅と位相差量を同時に解析的に得ることができる。フーリエ変換により求められる振幅項から相対強度を算出すれば、フーリエ分光と同様に、波長毎の相対強度である分光特性を取得することができる。また、フーリエ変換により算出される位相差項からは波長毎のリタデーションを取得することができる。つまり、分光特性と複屈折性を同時に測定することができる。
【実施例1】
【0038】
本実施例では、光学系が結像光学系であるため、分光特性及び複屈折性の2次元測定が可能となる。また、レンズ駆動機構21によって対物レンズ7の合焦位置を深さ方向に走査することにより、任意の深さから反射してくる物体光のリタデーションを求めることができる。リタデーションは、複屈折率に物体光の経路の長さを積算した値であることから、物体光が反射してくる深さが分かれば、リタデーションから複屈折率を算出することができる。
【実施例1】
【0039】
図1に示した光学特性測定装置1の光学系を斜方照明光学系に代えて、花崗岩からなる石材の分光特性を測定した結果を図11~図14に示す。垂直落射照明光学系に比べると斜方照明光学系を用いて撮影される光量は著しく減退するが、図11に示すように、部分的に明るい箇所(記号P1~P3で示す)が確認された。観察に用いた石材は表面が鏡面状に研磨されていることから、これらの明るい箇所P1~P3が、石材の内部からの拡散反射成分が観察された箇所であると思われる。
【実施例1】
【0040】
そこで、図11に示した3箇所P1~P3の分光データと位相データを求めた。その結果を図12及び図13に示す。図12は横軸を波長(nm)、縦軸を強度とするスペクトルを示し、図13は横軸を波長(nm)、縦軸を位相差(deg.)とするグラフで、レターデーション量をプロットしたものである。図12に示すように、P1~P3の3箇所における発光強度には大きな差があるが、どの箇所でも光源の輝線スペクトルを確認できた。
一方、図13に示すように、レターデーション量は、光源スペクトルのピーク波長以外では大きく変化し、ピーク波長(540~560nm)付近では、比較的安定していた。ピーク波長以外でリタデーション量が大きく変化している理由は、発光強度が非常に低いときの位相計測が安定しないためと考えられる。なお、P2及びP3の箇所では、波長700nm近辺に特徴的な反射強度が観察された。
【実施例1】
【0041】
次に、スペクトルに特徴のある波長範囲540~560nm、570~590nm、670~720nmの強度分布と位相分布を図14に示す。図14から、波長範囲540~560nmにおいて特徴的な位相分布が測定され、波長範囲670~720nmにおいて特徴的な強度分布が測定された。これにより、斜方照明法を用いた分光特性測定装置1においても、石材の内部反射成分の分光特性と複屈折特性の両方を同時に測定可能であることが確認された。
【実施例2】
【0042】
図15~図18は実施例2に係る光学特性測定装置1を示している。実施例2に係る光学特性測定装置1は、位相シフター及び結像光学系の構成が実施例1と大きく異なっている。尚、図16では、便宜上、結像光学系を構成する結像レンズ35の前段に配置される検光子15の図示を省略している。
実施例2では、光源3から出射され、偏光子5を透過した直線偏光成分は、試料Sの線状の測定領域S1に照射される。試料Sの測定領域S1に照射され、該測定領域S1を透過した光線は対物レンズ7に入射し、平行光束に変換された後、第1偏光板9及び第2偏光板11を経て位相シフター31に到達する。

【実施例2】
【0043】
位相シフター31は、基準ミラー部32、傾斜ミラー部33、これらミラー部32,33を保持する保持部(図示せず)等を備えて構成されている。基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の表面(反射面)は光学的に平坦で且つ本装置1が測定対象とする光の波長帯域を反射可能な矩形状の光学鏡面となっている。また、基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の反射面はほぼ同じ大きさを有している。
【実施例2】
【0044】
物体のテクスチャーがある一方向に偏っている場合は、物体を光学的に構成する各輝点から生じる光(物体光)は特定の方向にのみ向かう。このため、位相シフター31に到達する平行光束の光量分布に偏りが生じ、結像面である検出器19の受光面19a上に一様な光量分布が得られないおそれがある。一方、物体のテクスチャーが比較的ランダムな場合は、位相シフター31に一様な光量分布で物体光が到達する。そこで、以下の説明では、試料Sのテクスチャーが比較的ランダムであることとし、位相シフター31には一様な光量分布で光束が到達し、基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の反射面にはそれぞれ同量の光束が照射されることとする。
【実施例2】
【0045】
本実施例では、対物レンズ7、第1偏光板9及び第2偏光板11が分割光学系に相当し、位相シフター31が位相変化付与手段に相当する。
なお、以下の説明では、第1偏光板9から位相シフター31の基準ミラー部32の反射面に到達して反射され、検光子15に至る光束を基準光束、第2偏光板11から位相シフター31の傾斜ミラー部33の反射面に到達して反射され、検光子15に至る光束を傾斜光束ともいう。
【実施例2】
【0046】
前記基準ミラー部32は、対物レンズ7からの平行光束の光軸に対して反射面が例えば45°傾くように配置されている。また、傾斜ミラー部33は、対物レンズ7からの平行光束の光軸に対して反射面が(45+Δθ)°傾くように配置されている。このように基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33を対物レンズ7からの平行光束に対して斜めに配置すれば、光束を分岐するためのビームスプリッタが不要となる。本実施例では対物レンズ7を用いているが、反射光学系でこの機能を構成することもできる。このようにすれば、分散の影響が全く無くなることから、広帯域の分光特性を計測できる。
【実施例2】
【0047】
また、基準ミラー部32に対する傾斜ミラー部33の傾斜角度、つまりΔθは結像光学系の倍率、測定波長範囲、波数分解能等の光学条件に基づき設定される。例えば、測定波長を可視領域から近赤外領域(400nm~1000nm)とした場合、波長分解能:λ2/Δλ=5nmを得るためには、中心波長λ=700nmであることから、位相シフト量Δλ=100μmになる。検出器19(受光素子)としてCCDカメラを用いた場合、およそ1ラインの画素数は500画素程度である。このことから、1ラインあたりの位相シフト量が100μmの場合、1画素毎の位相差量は200nmになり、サンプリング定理から波長400nmまで測定可能となる。上述したように、測定波長は可視域から近赤外領域(400nm~1000nm)であるから、1画素毎の位相差量が200nmであれば、短波長側のサンプリング定理を満たす。
【実施例2】
【0048】
また、一般的なCCDカメラの1ラインあたりの位相シフト量が100μmであることから、その半分の50μm(100μm÷2)を基準ミラー部32と傾斜ミラー部33の最大幅とすればよく、例えば各ミラー部32,33の、光路方向(各ミラー部の傾斜方向)に沿う長さが約3mmのとき、傾斜角度は約1deg.となる。
また、特に、中赤外光などの長波長領域においては、インターフェログラムの干渉強度変化だけでなく、干渉強度変化の包絡線を長ストロークの位相シフト領域において取得しなくてはならない。これは、フーリエ分光の原理として、波数分解能を高くするためには位相シフト量を長くしなくてはならないことからも知られている。このように、長ストロークに渡ってインターフェログラムの包絡線を検出するためには、傾斜ミラー部33に大きな傾斜角を設けなくてはならない。この場合、インターフェログラムの干渉強度変化を検出するためと、包絡線を検出するための2段階程度の傾き切り替え機構を設ければよい。中赤外領域で包絡線を計測する場合、位相シフト量が例えば50mm程度が必要になることから、光路方向に沿う長さを例えば100mmに長くして2.9deg.の傾きにすればよい。
【実施例2】
【0049】
位相シフター31に到達し、基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の反射面で反射された基準光束及び傾斜光束は、それぞれ検光子15を透過した後、結像レンズ35に入射する。本実施例では、結像レンズ35はシリンドリカルレンズから成り、その凸面部が位相シフター31側を向き、平面部が検出器19の受光面19a側を向くように配置されている。検出器19の受光面19aは結像レンズ35の結像面に位置するため、測定領域S1の一輝点から発せられ、基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の反射面で反射された後、結像レンズ35に入射した基準光束及び傾斜光束は、該結像レンズ35により一方向にのみ収束され、検出器19の受光面19a上の同一直線上に集光することにより結像する。なお、本実施例では、結像レンズ35は、その凸面部の曲率を有する方向(図16に矢印Bで示す方向)が測定領域S1の方向と平行になるように配置されているものとする。このような配置により、結像レンズ35に入射した基準光束及び傾斜光束は、受光面19a上であって測定領域S1と直交する直線上に集光する。
基準ミラー部32の反射面と傾斜ミラー部33の反射面は、検出器19(二次元CCDカメラ)の受光面19a(結像面)で2つの光束の集光位置がずれない程度の精度で、相対的に平行な面となるように構成されている。

【実施例2】
【0050】
本実施例の測定原理について説明する。ここでは、基準光束が結像レンズ35によって検出器19の受光面19aで位相が揃った波として一直線上に集光する光学モデルに基づいて説明する。このとき、傾斜光束はその位相が基準光束の位相と徐々にずれた波として受光面19aに一直線上に集光する。
【実施例2】
【0051】
前述したように、試料Sの測定領域S1を透過した光束は、対物レンズ7、第1偏光板9及び第2偏光板11を経て位相シフター31の基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の表面に到達する。このとき、基準ミラー部32の表面及び傾斜ミラー部33の表面に光束が上下に二分割されて到達する。なお、基準ミラー部32の表面に到達した光束即ち基準光束と、傾斜ミラー部33の表面に到達した光束、即ち傾斜光束の光量がほぼ等しくなるように、両ミラー部32,33の表面の面積は設定されているが、基準光束及び傾斜光束の一方或いは両方の光路に減光フィルタを設置して相対的な光量差を調整し、光量の均等化を行うことも可能である。
【実施例2】
【0052】
基準ミラー部32及び傾斜ミラー部33の表面で反射された光束は、それぞれ基準光束及び傾斜光束として結像レンズ35に入射し、検出器19の受光面19aにおいて同一直線上に集光し、干渉像を形成する。このとき、基準光束は結像レンズ35を経て結像面である受光面19a上で位相が揃った波として集光するように構成されているため、図17に示すように、基準光束の波面は検出器19の受光面19aと平行な状態となる。一方、傾斜光束は、その光軸が基準光束の光軸に対して2×Δθ°傾いた状態で結像レンズ35に入射するため、傾斜光束は、その波面が受光面19aに対してやや傾いた状態となる。

【実施例2】
【0053】
このとき、基準光束の波面に対して傾斜光束の波面が傾斜していることから、基準光束の光と傾斜光束の光の干渉領域では、両光束の間の光路長差が徐々に変化する(図17では、右側から左側に向かって徐々に大きくなる)ことになる。つまり、実施例1では可動ミラー部131を徐々に移動させることで第1偏光と第2偏光との間に連続的に変化する位相差を与えているが、本実施例では、基準ミラー部32に対して傾斜ミラー部33が傾斜した状態で両ミラー部32,33を配置することで第1偏光と第2偏光との間に連続的な位相差変化を与えている。しかも、実施例1では時間的に位相差が変化するが、実施例2では空間的に位相差が変化することになる。
測定領域S1から発せられる光束には様々な波長の光が含まれる(且つ各波長の光の初期位相が必ずしも揃っていない)ことから、干渉領域の基準光束と傾斜光束の間の光路長差が連続的に変化することにより、また、波長毎のリタデーションの違いから、図10(a)に示すようなインターフェログラムと似た合成波形を観察することができる。

【実施例2】
【0054】
例えば、図16に示すように、測定領域S1の輝点(測定点)a1から発せられた光束は、受光面19a(結像面)上の一直線上に集光することで線状の干渉像b1が得られ、輝点(測定点)a2から発せられた光束は、受光面19a上の一直線上に集光することで線状の干渉像b2が得られる。各干渉像b1、b2の合成波形は、それぞれ干渉像に沿って並ぶ複数の画素の受光強度から得られる。従って、実施例2では、図10(a)において、横軸は線状の干渉像に沿って並ぶ検出器19の画素番号を、縦軸は結像強度(各画素の受光強度)を示すことになる。この画素番号を、画素ごとの位相シフト量により換算することにより、横軸が位相シフト量である合成波形が得られる。
【実施例2】
【0055】
処理部23は、この合成波形をフーリエ変換することにより、測定領域S1の各輝点から発せられた光の波長毎の相対強度である分光特性及び波長毎のリタデーションを取得することができる。検出器19の全ての画素を用いて分光特性を得ることができれば、測定領域S1の1次元分光計測が可能となる。また、直線偏光が照射される測定領域S1を走査すれば、被測定物Sの2次元分光計測が可能となる。さらに、測定領域S1を走査すると共に、対物レンズ7を移動させて合焦面(合焦位置を含む面)を走査することにより3次元分光計測が可能となる。
【実施例3】
【0056】
図19~図21は本発明の実施例3を示している。図19及び図20に示すように、本実施例の分光特性測定装置1では、結像レンズ35が、基準ミラー部32で反射された基準光束が入射する基準レンズ部35aと傾斜ミラー部33で反射された傾斜光束が入射する傾斜レンズ部35bとに分割されている。基準レンズ部35aと傾斜レンズ部35bは、実施例2の結像レンズ35を2分割した形状を有しており、基準光束及び傾斜光束の一方の光軸に対する他方の光軸の傾きを維持したまま、検出器19の受光面19a(結像面)上に形成される線状の干渉像に沿って他方の光軸がずれるようにそれぞれ配置されている。つまり、これら基準レンズ部35a及び傾斜レンズ部35bは結像光学系及び光軸位置変更手段として機能する。
このような構成により、図21に示すように、受光面19a上において基準光束の光と傾斜光束の光が重複する領域、つまり干渉領域を大きくすることができる。
【実施例4】
【0057】
図22は本発明の実施例4を示している。この実施例4では、実施例2の結像面の位置に光強度を単色光に変換する、例えば蛍光板などの単色光変換手段41を設置し、これを物体面とした位置にシリンドリカルレンズ43を配置している。そして、前記シリンドリカルレンズ43の光学的フーリエ変換面に検出器19の受光面19aが位置するように該検出器19を配置している。シリンドリカルレンズ43はその曲率を有しない方向が、線状の干渉像が延びる方向と直交するように配置されている。
【実施例4】
【0058】
この実施例4では、結像レンズ35を透過した基準光束と傾斜光束の干渉像が、単色光変換手段41により空間的な明るさ強度分布に変換される。そして、シリンドリカルレンズ43によって光学的にフーリエ変換され、結像面上に分光スペクトルがリアルタイムに形成される。検出器19の受光面19aがシリンドリカルレンズ43のフーリエ変換面上にあるため、前記分光スペクトルの光強度分布を光学的に求めることにより、実施例2で得られた合成波形を数学的にフーリエ変換した場合と同じ分光特性及び複屈折性が得られる。すなわち、本実施例ではフーリエ変換処理をしなくても直接的に分光特性及び複屈折性が得られるので、より短時間に分光特性を得ることができる。なお、この実施例4では、単色光変換手段41、シリンドリカルレンズ43が分光光学系を構成する。
【実施例4】
【0059】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、実施例1において結像レンズ17の前に配置した検光子15を当該結像レンズ17の後に配置しても良い。ただし、結像レンズ17の後に検光子15を配置すると結像特性が劣化するため、実施例1のように結像レンズの前に配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1…光学特性測定装置
3…光源
5…偏光子
7…対物レンズ
9…第1偏光板
11…第2偏光板
13、31…位相シフター
15…検光子
17…結像レンズ
19…検出器
19a…受光面
21…レンズ駆動機構
23…処理部
25…制御部
32…基準ミラー部
33…傾斜ミラー部
35…結像レンズ
35a…基準レンズ部
35b…傾斜レンズ部
41…単色光変換手段
43…シリンドリカルレンズ
131…可動ミラー部
132…固定ミラー部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図15】
12
【図16】
13
【図17】
14
【図18】
15
【図19】
16
【図20】
17
【図21】
18
【図22】
19
【図11】
20
【図14】
21