TOP > 国内特許検索 > 機械加工性を有するゼオライトバルク体、その水熱合成用反応溶液および製造方法、ならびにその用途 > 明細書

明細書 :機械加工性を有するゼオライトバルク体、その水熱合成用反応溶液および製造方法、ならびにその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5858492号 (P5858492)
登録日 平成27年12月25日(2015.12.25)
発行日 平成28年2月10日(2016.2.10)
発明の名称または考案の名称 機械加工性を有するゼオライトバルク体、その水熱合成用反応溶液および製造方法、ならびにその用途
国際特許分類 C01B  39/38        (2006.01)
C01B  39/26        (2006.01)
FI C01B 39/38
C01B 39/26
請求項の数または発明の数 8
全頁数 19
出願番号 特願2013-504754 (P2013-504754)
出願日 平成24年3月14日(2012.3.14)
国際出願番号 PCT/JP2012/056535
国際公開番号 WO2012/124727
国際公開日 平成24年9月20日(2012.9.20)
優先権出願番号 2011055816
優先日 平成23年3月14日(2011.3.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年1月21日(2015.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】三宅 通博
【氏名】亀島 欣一
【氏名】西本 俊介
【氏名】猪木 栄作
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査官 【審査官】佐藤 哲
参考文献・文献 特開2002-249312(JP,A)
特表2009-519205(JP,A)
特開平06-157025(JP,A)
特開2010-280532(JP,A)
調査した分野 C01B 33/20 - 39/54
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
50~100mass%のゼオライト成分(A)と、50~0mass%のα-SiOおよび/または非晶質SiOからなるシリカ成分(B)とから構成され、前記ゼオライト成分(A)は、Si/Al比が3以上の疎水性であり、引張強度が3MPa以上または曲げ強度が3MPa以上である機械加工性を有するゼオライトバルク体またはその機械加工品からなることを特徴とする、アルコール水溶液からアルコールを分離して濃縮するための分離材。
【請求項2】
前記ゼオライト成分(A)が60~100mass%であり、前記シリカ成分(B)が40~0mass%である、請求項1に記載の分離材。
【請求項3】
前記引張強度が4MPa以上または曲げ強度が4MPa以上である、請求項1または2に記載の分離材。
【請求項4】
体積が0.05cm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の分離材。
【請求項5】
前記アルコールがエタノールである、請求項1~4のいずれかに記載の分離材。
【請求項7】
シリカ源(a)と、それぞれ該シリカ源中のシリカ(SiO)1モルあたり、アルカリ金属原子換算量として0.1~0.8モルのアルカリ金属成分(b)と、アルミナ(Al)換算量として0~0.05モルのアルミナ源(c)と、0.02~0.15モルの有機テンプレート(d)と、10~45モルの水(e)とを含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の分離材に用いられるゼオライトバルク体を製造するための水熱合成用反応溶液。
【請求項9】
請求項7に記載の水熱合成用反応溶液を175~225℃の温度で水熱合成処理する工程を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の分離材に用いられるゼオライトバルク体の製造方法。
【請求項10】
前記水熱合成処理の時間が1~10日間である、請求項9に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工が可能なゼオライトバルク体およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、バインダー不使用で機械加工が可能な強度を有するゼオライトバルク体、および水熱加工処理を利用したその簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料および環境材料として有用なゼオライトは、水熱合成法により一般に粉末状固体として得られるが、機能をより高度に利用するため膜状ゼオライトやバルク状ゼオライトの作製に関する研究が盛んに行われている。
【0003】
ゼオライトをバルク体として利用する場合、焼結法によりゼオライト粉末をバルク体に成型することは困難であるので、従来、成型のために無機系バインダー(無機酸化物、粘土等)または有機系バインダー(セルロース誘導体等、増粘剤)が用いられていた。たとえば、特許文献1(特開2000-126602号公報)には、ゼオライト粉体をシリカ、アルミナ、チタニア等のバインダーを用いてペレット状に成型した後、このペレットにパラジウムを均一に高分散担持させるために、アンモニア水で前処理を行うことと、高温熱風の迅速乾燥で後処理を行うことを必須とする、パラジウム担持ゼオライト成型触媒の製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、そのようなバインダーを利用する方法により得られるバルク体は、ゼオライトの微細な構造がバインダーに埋もれ、本来の吸着やイオン交換能が機能しなくなり、性能が大きく損なわれる可能性がある上、ゼオライトの含有率も低下してしまう。また、有機系バインダーを用いた場合には高温で利用することができず、酸やアルカリにも弱い。
【0005】
それに対し、水熱処理を利用することにより、上記のような問題のあるバインダーを使用することなく、ゼオライトバルク体を製造する方法も提案されている。
【0006】
たとえば、特許文献2(特開平6-183725号公報)には、合成NaX型ゼオライト粉末とカオリン型粘土と水酸化ナトリウムとを混合し、成形し、得られた成形体を乾燥し、焼成し、水酸化ナトリウムと珪酸ナトリウムとの混合水溶液と接触させることによってバインダーレスX型ゼオライト成形体を製造するにあたり、該カオリン型粘土として平均粒子径1.5μm以上のものを用いることにより、X型ゼオライト含有量が98wt%以上のバインダーレスX型ゼオライト成形体を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、(X型またはA型の、粉末状の)ゼオライト100重量部に対し、カオリン系粘土20~35重量部と、水溶液がアルカリ性で高水溶性の無機系分散剤(縮合リン酸塩、アルミン酸塩等)4~10重量部又は/及びセルロース誘導体0.5~5重量部との混合物から転動造粒によって成形したゼオライトビーズ成形体を焼成した後、水酸化ナトリウム水溶液と接触させることによりバインダーレス化し、活性化することにより、ゼオライト含有率が95%以上であり、かつ、全粒子の内、粒径が1.7mm以上である粒子の耐圧強度の平均値が6kgf以上である、バインダーレスゼオライトビーズ成形体を製造する方法が開示されている。
【0008】
上記の特許文献2および3に記載の方法では、ゼオライト粉体とカオリン型粘土との混合物を焼成して焼結体とした後に、アルカリ水溶液中で水熱処理によりカオリン型粘土をゼオライトに転換することで、バインダーレスのゼオライト成形体を作製している。しかしながら、これらの方法は、原料の混合および成型工程、焼成工程、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた水熱処理工程などを含む複雑なものである。
【0009】
また、特許文献3には、当該文献に記載の方法により、乾燥脱水剤用途に要求される強い強度物性(耐圧強度)を有するゼオライトビーズ成型体が製造できることは記載されているが、このゼオライトビーズ成型体が脆性破壊を生じない機械加工が可能な物性を有するものであることは記載されていない。特に、[0035]段落には、6kgf以上の成型体強度を得るためには、1.7~2.4mmの範囲が90%以上のゼオライトビーズ成形体であることが好ましい旨が記載されており、これより大きなサイズのバルク体で機械加工が可能な強度を有するものやその製造方法は、当該文献には記載されていない。特許文献2には、当該文献に記載の方法により得られるゼオライト成型体の強度物性については、何ら具体的に記載されていない。
【0010】
特許文献4(特開2001-58817号公報)には、アルミニウム成分とアルカリ金属成分とテトラアルキルアンモニウム成分とを含む原料物質をシリカ成型体に担持することにより得られる、式Si1Alxy(SDA)z(ただし、式中、Mはアルカリ金属、SDAはテトラアルキルアンモニウムを表し、xは0.0001~0.5、yは0.0001~1、zは0.001~1の範囲を表す。)で表されるアルミノシリケート前駆体を、飽和水蒸気と接触させることにより、ZSM-5型結晶構造を有し、該結晶構造を構成するケイ素とアルミニウムとの組成比(原子比)が、ケイ素1に対して、アルミニウムが0.0001~0.5の範囲であり、前記結晶格子外のアルミニウムの含有量が前記成型体に含まれる全アルミニウムの3%以下である、バインダーレス結晶性アルミノシリケート成型体を製造する方法が開示されている。
【0011】
特許文献5(特開2009-190915号公報)には、アルカリ金属成分と4級アンモニウム塩とを含み、必要に応じてさらにアルミニウム成分を含む原料成分を担持させたシリカ成型体に水蒸気に接触させることによりバインダーレスゼオライト成型体を製造する際に、シリカ成型体として細孔容積が0.3~0.55cc/gであるものを使用し、更に4級アンモニウム塩の担持量がシリカ成型体に含まれるケイ素に対して0.001~0.02モルの範囲となるように調整することにより、機械強度が20N以上である、ZMS-5結晶構造を有するバインダーレスゼオライト成型体を製造する方法が開示されている。
【0012】
上記の特許文献4および5に記載の方法では、シリカ成型体をベースとして、これに他の原料成分を担持させたものを水熱合成処理して、バインダーレスゼオライト成形体を作製している。得られるゼオライト成型体の機械的強度は、原料として用いたシリカ成型体の機械的強度に依存するが(たとえば特許文献5[0023]段落参照)、製造工程を経ることで機械的強度が低下することは避けがたい。そして、ゼオライト成型体を触媒として反応器に充填したときに破壊などの問題が起きない一定の機械的強度を有するゼオライト成型体が得られることは記載されているが(たとえば特許文献5[0037]段落参照)、そのゼオライト成型体が脆性破壊を生じない機械加工が可能な物性を有するものであることは記載されていない。
【0013】
特許文献6(特開平7-89716号公報)には、シリカ源としてのコロイダルシリカ、アルミナ源、アルカリ金属源、結晶化剤としてのテトラプロピルアンモニウム塩および水からなる水性混合物を耐圧容器中に封入し、0.1~5℃/分の昇温速度で水熱合成温度迄昇温させ、160~200℃の水熱合成温度に保持することを特徴とする、合成されたゼオライトが膜状ZSM-5である膜状合成ゼオライトの製造法が開示されている。しかしながら、この文献に記載の方法により得られるゼオライトはあくまでも膜状のものであり、機械加工が可能な強度を有するゼオライトバルク体が得られること、あるいはそのようなゼオライトバルク体が得られる水熱合成用の反応溶液が調製可能であることは記載も示唆もされていない。なお、後記比較例として示す追試結果から分かるように、特許文献6の実施例11により得られる「膜状」のゼオライトおよび比較例2により得られる「塊状」のゼオライトは、いずれも機械加工性を有さない、本発明のゼオライトバルク体には該当しない物質である。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】特開2000-126602号公報
【特許文献2】特開平6-183725号公報
【特許文献3】特開2002-68732号公報
【特許文献4】特開2001-58817号公報(特許第3442348号公報)
【特許文献5】特開2009-190915号公報
【特許文献6】特開平7-89716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
脆性破壊を生じない機械加工が可能な強度を有するゼオライトバルク体が得られれば、ゼオライトの用途をより一層拡充させることが可能であるが、そのような物性を有し、かつバインダーを用いることなくゼオライト本来の機能を保持したままの比較的大型のバルク体はこれまでに得られていない。本発明は、機械加工が可能な強度を有する、バインダー不使用の(バインダーレス)ゼオライトバルク体、およびそのようなゼオライトバルク体の極力簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、水、シリカ源、アルミナ源、アルカリ金属成分、および構造規定剤としての有機テンプレートを所定の比率で含有する反応溶液を用いることにより、適切な反応温度および反応時間条件下における水熱合成処理を利用する簡明な製造方法でありながら、脆性破壊を生じることなく切削加工、ドリル加工、研磨加工等の機械加工ができる強度を有する、粉状や膜状ではなく比較的大型のバルク状のゼオライトを製造することができることを見いだした。さらに、上記の製造方法では、上記反応溶液中のアルミナ源を比較的少量とすることにより疎水性のゼオライトバルク体を製造することができるのみならず、上記反応溶液中に有機テンプレートを配合せず、アルミナ源を比較的多量とすることにより親水性のゼオライトバルク体を製造できることも明らかとなり、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
[1] 50~100mass%のゼオライト成分(A)と、50~0mass%のα-SiOおよび/または非晶質SiOからなるシリカ成分(B)とから構成され、引張強度が3MPa以上または曲げ強度が3MPa以上であることを特徴とする、機械加工性を有するゼオライトバルク体。
[2] 前記ゼオライト成分(A)が60~100mass%であり、前記シリカ成分(B)が40~0mass%である、[1]に記載のゼオライトバルク体。
[3] 前記引張強度が4MPa以上または曲げ強度が4MPa以上である、[1]または[2]に記載のゼオライトバルク体。
[4] 体積が0.05cm以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライトバルク体。
[5] 前記ゼオライト成分(A)が、Si/Al比が3以上の疎水性である、[1]~[4]のいずれかに記載のゼオライトバルク体。
[6] 前記ゼオライト成分(A)が、Si/Al比が1以上3未満の親水性である、[1]~[4]のいずれかに記載のゼオライトバルク体。
[7] シリカ源(a)と、それぞれ該シリカ源中のシリカ(SiO)1モルあたり、アルカリ金属原子換算量として0.1~0.8モルのアルカリ金属成分(b)と、アルミナ(Al)換算量として0~0.05モルのアルミナ源(c)と、0.02~0.15モルの有機テンプレート(d)と、10~45モルの水(e)とを含有することを特徴とする、[5]に記載のゼオライトバルク体を製造するための水熱合成用反応溶液。
[8] シリカ源(a)と、それぞれ該シリカ源中のシリカ(SiO)1モルあたり、アルカリ金属原子換算量として0.3~3.0モルのアルカリ金属成分(b)と、アルミナ(Al)換算量として0.05~0.7モルのアルミナ源(c)と、0~0.1モルの有機テンプレート(d)と、5~50モルの水(e)とを含有することを特徴とする、[6]に記載のゼオライトバルク体を製造するための水熱合成用反応溶液。
[9] [7]に記載の水熱合成用反応溶液を175~225℃の温度で水熱合成処理する工程を含むことを特徴とする、[5]に記載のゼオライトバルク体の製造方法。
[10] 前記水熱合成処理の時間が1~10日間である、[9]に記載の製造方法。
[11] [8]に記載の水熱合成用反応溶液を80~200℃の温度で水熱合成処理する工程を含むことを特徴とする、[6]に記載のゼオライトバルク体の製造方法。
[12] 前記水熱合成処理の時間が6時間~5日間である、[11]に記載の製造方法。
[13] [1]~[6]のいずれかに記載のゼオライトバルク体の機械加工品。
[14] [1]~[6]のいずれかに記載のゼオライトバルク体または[13]に記載のその機械加工品からなる吸着分離剤。
[15] [1]~[6]のいずれかに記載のゼオライトバルク体または[13]に記載のその機械加工品からなる触媒。
【0018】
なお、本発明の反応溶液が「シリカ源中のシリカ1モルあたり、アルミナ換算量として0モルのアルミナ源(c)を含有する」または「シリカ源中のシリカ1モルあたり、0モルの有機テンプレート(d)を含有する」ことは、それぞれの反応溶液が実質的にアルミナ源(c)または有機テンプレート(d)を含有しないことを意味する。すなわち、アルミナ源(c)の含有量の下限値として「0」が規定されている疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液において、アルミナ源(c)は必須成分ではなく任意成分であり、また有機テンプレート(d)の含有量の下限値として「0」が規定されている親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液において、有機テンプレート(d)は必須成分ではなく任意成分である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、機械加工により任意の形態に加工することができる比較的大型のゼオライトバルク体を、水熱処理加工を利用した簡便な方法で効率的に製造することができるようになる。得られるゼオライトバルク体には、有機バインダーのようなゼオライトの多孔質性を損なう物質は全く用いられていないので、ゼオライトの多孔質性等の特性を利用する各種の用途における高い性能が期待される。
【0020】
このようなゼオライトバルク体は、必要に応じて機械加工により適切な形状に成形した上で、たとえば膜の支持体や触媒担体等として利用することができる。一例として、膜状ゼオライトの優れた支持体として利用することが可能である。ゼオライトの有する吸着、分子ふるい、イオン交換、触媒等の機能をより高度に利用するために、その膜化が注目されている。ゼオライトを膜化する場合、膜自体では強度が十分でないので、従来、アルミナ、ジルコニア、ステンレスなどの多孔質体である支持体上に形成させる場合が多い。しかし、それらの支持体とゼオライト膜との熱膨張などの性質の違いから割れなどが発生しやすいため、ゼオライト膜を高温下では使用することができない。また、それらの支持体はゼオライトとは異なる物質であるため膜との密着性が悪く、耐久性にも不安がある。支持体の成分が膜作製時に溶け出し、触媒作用、分子ふるい、吸着などゼオライトが持つ本来の機能に悪影響を及ぼすおそれもある。これに対し、本発明のゼオライトバルク体から形成された支持体は、熱膨張などの性質が膜と等しいので、膨張の違いによる割れを防ぐことができる。その上、支持体と膜の成分が同じであるので、支持体上に膜を合成する際に支持体から溶け出した成分がゼオライト膜の性能を悪化させることが無く、支持体と一体化した耐熱性のゼオライト膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施例1で製造されたゼオライトバルク体(左)およびその機械加工品(右)の写真である。
【図2】図2は、実施例1で製造されたゼオライトバルク体のXRDパターンである。
【図3】図3は、実施例1で製造されたゼオライトバルク体の切断面のSEM像である。
【図4】図4は、実施例2で製造されたゼオライトバルク体の写真である。
【図5】図5は、実施例2で製造されたゼオライトバルク体のXRDパターンである。
【図6】図6は、参考例2により得られた生成物の写真である。
【図7】図7は、参考例2の熱処理後の生成物のXRDパターンである。
【図8】図8は、参考例2の熱処理後の生成物のSEM像である。
【図9】図9は、実施例1で作製したバルク体の機械加工品を用いた、蒸気透過法によるエタノール水溶液の分離濃縮装置の概略図である。
【図10】図10は、実施例4で製造されたゼオライトバルク体のXRDパターンである。
【図11】図11は、実施例5で製造されたゼオライトバルク体(左)およびその機械加工品(右)の写真である。
【図12】図12は、実施例5で製造されたゼオライトバルク体のXRDパターンである。
【図13】図13は、比較例1で得られた粉末状ゼオライト(上部)および膜状ゼオライト(下部)の写真である。
【図14】図14は、比較例2で得られたゼオライト粉末のもろい集合体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
-水熱合成用反応溶液-
本発明の水熱合成用反応溶液は、シリカ源、アルカリ金属成分、水、必要に応じてアルミナ源および構造規定剤としての有機テンプレートを所定の割合で含有する。ゼオライトバルク体に含まれるゼオライト成分(A)を疎水性のものとするか親水性のものとするかに応じて、上記各成分の配合割合を適切に調整することができる。このような疎水性ゼオライトバルク体用および親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を、それぞれに適した合成温度、合成時間で水熱合成をすることにより、疎水性および親水性のゼオライトバルク体を製造することができる。以下に、水熱合成用反応溶液に添加する(a)シリカ源、(b)アルカリ金属成分、(c)アルミナ源、(d)有機テンプレートとして用いる物質およびその添加量などについて詳細に述べる。

【0023】
(a)シリカ源
シリカ源は、市販されているコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、無定形シリカ、アモルファスシリカなど、公知のゼオライトの合成法と同様の一般的なものを用いることができる。上記各シリカ源は、アルコキシド法により調製されたものであっても、水ガラス(珪酸ナトリウム)から調製されたものであってもよい。シリカの濃度、粒子径、pHなどの性状は特に限定されるものではない。

【0024】
(b)アルカリ金属成分
疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中のアルカリ金属成分の量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、アルカリ金属原子換算量として、通常0.1~0.8モル、好ましくは0.15~0.65モル、より好ましくは0.2~0.65モルの範囲で調整される。

【0025】
親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中のアルカリ金属成分の量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、アルカリ金属原子換算量として、通常0.3~3.0モル、好ましくは0.4~2.8モル、より好ましくは0.5~2.5モルの範囲で調整される。

【0026】
なお、前記アルミニウム成分としてアルミン酸のアルカリ金属塩(アルミン酸ナトリウム等)を用いる場合は、それに含まれるアルカリ金属の量を上記所定の量から差し引いた残りの量のアルカリ金属成分を原料として添加すればよい。

【0027】
アルカリ金属成分の原料としては、公知のゼオライトの合成法と同様に、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の、水酸化物、ハロゲン化物等を用いることができるが、水酸化ナトリウムが好ましい。

【0028】
(c)アルミナ源
疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中のアルミナ源の量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、アルミナ(Al)換算量として、通常0~0.05モル、好ましくは0~0.45モル、より好ましくは0~0.04モルの範囲で調整される。

【0029】
親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中のアルミナ源の量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、アルミナ(Al)換算量として、通常0.05~0.7モル、好ましくは0.07~0.6モル、より好ましくは0.1~0.5モルの範囲で調整される。

【0030】
アルミニウム成分の量が上記範囲よりも多いと、バルク体は得られても、緻密でなく脆く、機械加工に不適切なものとなる傾向にある。

【0031】
アルミナ源としては、公知のゼオライトの合成法と同様に、アルミン酸塩またはアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、水酸化物などを用いることができるが、アルミン酸塩が好ましい。たとえば、アルミン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、アルミン酸第四級アンモニウム、アルミン酸グアニジンなどの有機アミン塩が挙げられるが、中でもアルミン酸ナトリウム(NaAlO)が特に好ましい。また、アルミニウム粉末または水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物をアルカリ水溶液(たとえばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などの第四級アンモニウム水溶液、グアニジン、トリメチルアミンなどの有機アミンを含む水溶液)に溶解させて調製したアルミン酸塩水溶液を原料として用いてもよい。

【0032】
(d)有機テンプレート
疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中の有機テンプレートの量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、通常0.02~0.15モル、好ましくは0.03~0.13モル、より好ましくは0.04~0.12モルの範囲で調整される。

【0033】
親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中の有機テンプレートの量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、通常0~0.1モル、好ましくは0~0.07モル、より好ましくは0~0.05モルの範囲で調整される。

【0034】
有機テンプレートには4級アンモニウム塩やクラウンエーテル、アルコールなど、公知のゼオライトの合成法と同様のものを用いることができるが、その中でも4級アンモニウム塩が好ましい。さらに、4級アンモニウム塩の中でもテトラアルキルアンモニウム塩がより好ましい。たとえば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、テトラ-n-ペンチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリエチル-n-プロピルアンモニウム、トリ-n-プロピルメチルアンモニウム、トリ-n-ブチルメチルアンモニウム等のハロゲン化物(たとえば臭化物)、水酸化物が挙げられるが、中でもテトラ-n-プロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)が疎水性のゼオライト等を効率よく合成できる点で特に好ましい。

【0035】
(e)水
疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中の水の量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、通常10~45モル、好ましくは10~40モル、より好ましくは10~35モルの範囲で調整される。

【0036】
親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を調製する場合、反応溶液中の水の量は、シリカ源中のシリカ1モルあたり、通常5~50モル、好ましくは5~47モル、より好ましくは5~45モルの範囲で調整される。

【0037】
ゼオライト成分(A)に含まれるゼオライトの構造によらず全般的に、水の量が上記範囲よりも多いまたは少ないとバルク体に空隙ができやすくなり、特に多いとバルク体が得られにくくなる。

【0038】
反応溶液中の各成分の配合比によってゼオライトバルク体の生成のしやすさは変動しうるが、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく、ゼオライトバルク体が得られる反応溶液を調製することが可能である。たとえば、水の量を上記範囲内で少なめに調節することによりゼオライトバルク体が生成しやすくなる場合がある。なお、本発明のゼオライトバルク体の製造方法に用いる水の量は、従来の手法によりゼオライト粉末を合成する場合よりも大幅に少ない(約1/4~1/10)。

【0039】
-製造方法-
本発明によるゼオライトバルク体の製造方法は、上記特定の成分を含有する疎水性ゼオライトバルク体用または親水性ゼオライト用の水熱合成用反応溶液を用いた、それぞれに適した条件に基づく水熱合成工程を含むことを特徴とし、必要に応じて、さらに任意の工程を含んでいてもよい。後述するような水熱合成反応の時間および温度の適切な条件は、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく調節することが可能である。

【0040】
水熱合成用反応溶液は、水熱合成工程の前にあらかじめ調製しておく。前述した所定の配合組成となるよう、原料を適切な容器に投入し、適切な時間撹拌して混合すればよい。通常、水熱合成用反応溶液は、各原料が均一に懸濁した溶液(懸濁液)として調製される。

【0041】
水熱合成工程は、公知のゼオライトの製造方法における水熱合成工程と同様、反応溶液を耐圧容器(一般的には、内容器がテフロン(登録商標)製のオートクレーブ)に入れ、加熱装置内で所定の時間、所定の温度で加熱することにより行われる。加熱装置内は、あらかじめ水熱合成処理のための温度にまで昇温しておけばよい。上記耐圧容器としては、所望のサイズを有するものを用いることができ、その耐圧容器のサイズに応じた(たとえば、底面の直径が1cm以上の円錐台状の)ゼオライトバルク体が得られる。ゼオライトバルク体は通常、耐圧容器の底部に生成する。

【0042】
疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を用いる場合、水熱合成工程の処理時間は、1~10日間が好ましく、3~8日間がより好ましい。親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を用いる場合、水熱合成工程の処理時間は、6時間~5日間が好ましく、12時間~4日間がより好ましい。上記範囲より処理時間が短いとゼオライトバルク体は得られにくく(粉末もしくは非晶質のバルク体となり)、必要に応じてこの工程の後に行われる熱処理によっても非晶質内部の有機テンプレート(d)が除去されず炭化する場合がある。逆に処理時間が長いと、目的とするゼオライト(例えばZSM-5:構造コードMFIやモルデナイト:構造コードMOR)よりもそれ以外の構造のゼオライト(例えばアナルサイム:構造コードANA)を多く含むバルク体となる場合がある。

【0043】
疎水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を用いる場合、水熱合成工程の処理温度は、好ましくは175~225℃、より好ましくは190~210℃の範囲で調整される。親水性ゼオライトバルク体用の反応溶液を用いる場合、水熱合成工程の処理温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは80~180℃の範囲で調整される。上記範囲より処理温度が低いとバルク体は得られにくく、逆に処理温度が高いと目的とするゼオライト以外の構造のゼオライトを多く含むバルク体となる場合がある。

【0044】
水熱合成工程の後、必要に応じてさらに、アルカリ分を除去するための水洗工程や、有機テンプレートを除去するための熱処理工程が行われる。これらの工程は、公知のゼオライトの製造方法における工程と同様にして行えばよい。

【0045】
-ゼオライトバルク体-
本発明のゼオライトバルク体は、機械加工性を有するものであって、典型的には、上述した本発明のゼオライトバルク体の製造方法により得られる。

【0046】
ゼオライトバルク体は、ゼオライト成分(A)を主体とする。ゼオライトバルク体中のゼオライト成分(A)の量(当該成分が複数の構造のゼオライトを含む場合はそれらの合計量)は、通常50~100mass%であり、好ましくは60~100mass%、より好ましくは75~100mass%である。

【0047】
また、ゼオライトバルク体は、上記ゼオライト成分(A)の他に、α-SiO(水晶)および/または非晶質SiOからなるシリカ成分(B)を含んでもよい。ゼオライトバルク体中のシリカ成分(B)の量(当該成分がα-SiOおよび非晶質SiOの両方を含む場合はそれらの合計量)は通常50~0mass%、好ましくは40~0mass%、より好ましくは25~0mass%である。

【0048】
ゼオライトバルク体またはその機械加工品の用途において実際上問題のない範囲であれば、前述した原料に由来する上記成分(A)および(B)以外の成分がゼオライトバルク体中に多少残存していることも許容される。

【0049】
ゼオライトバルク体は、脆性破壊を引き起こすことなく機械加工が可能な強度を有する。たとえば、JIS M 0303:2000(岩石の引張強さ試験方法)に準拠して測定される「引張強度」を指標とすれば、ゼオライトバルク体の引張強度は、通常3MPa以上、好ましくは4MPa以上である。また、JIS R 1601:2008(ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)に準拠して測定される「曲げ強度」を指標とすれば、ゼオライトバルク体の曲げ強度は、通常3MPa以上、好ましくは4MPa以上である。

【0050】
ゼオライトバルク体は、少なくとも微細な粉末状や薄い膜状の形態をとる従来のゼオライトと区別しうる限り、そのサイズは特に限定されるものではない。ゼオライトバルク体のサイズは、一般的には上述した本発明のゼオライトバルク体の製造方法に用いる容器のサイズによって変動しうるが、好ましくは0.05cm以上、より好ましくは0.1cm以上、さらに好ましくは0.5cm以上である。

【0051】
なお、反応溶液および製造方法の各条件により、得られたゼオライトバルク体が中実ではなく、内部に多少の空隙が形成されることがあるが、用途に応じて必要な強度や性能が確保できる範囲であれば許容される。

【0052】
ゼオライトバルク体は、ゼオライト成分(A)に含まれるゼオライトの結晶構造によって、疎水性ともなり得るし、親水性ともなり得る。疎水性および親水性という用語は相対的な表現であるが、本発明においては、ゼオライトバルク体が「疎水性」であるとは、ゼオライト成分(A)のSi/Al比が3以上である場合を指し、ゼオライトバルク体が「親水性」であるとは、ゼオライト成分(A)のSi/Al比が1以上3未満である場合を指す(通常、ゼオライトのSi/Al比が1未満となることはない)。得られたゼオライトバルク体のSi/Al比は一般的な手法(蛍光X線分析、ICP発光分析など)により求めることができる。

【0053】
表1に代表的なゼオライトを示す。疎水性のゼオライトの代表例としては、MFI(ZSM-5)、MOR(モルデナイト)などが挙げられ、一方親水性のゼオライトの代表例としては、LTA(A型)、FAU(X型またはY型)、CAN(カンクリナイト)などが挙げられるが、本発明のゼオライトバルク体が含有する結晶構造は疎水性、親水性ともにこれらに限定されるものではない。ゼオライトの結晶構造は、いずれか1種のみで占められていてもよいし、2種以上で占められていてもよい。

【0054】
【表1】
JP0005858492B2_000002t.gif

【0055】
ゼオライトバルク体の結晶構造は、前述した製造方法における水熱合成工程の処理時間および処理温度により調整することができる。

【0056】
ゼオライトバルク体中のゼオライト成分(A)およびシリカ成分(B)の含有量は、常法に従って、ゼオライトバルク体の結晶構造のX線回折(XRD)パターンから定量することができる。

【0057】
-用途-
本発明のゼオライトバルク体は、従来の粉状または膜状のゼオライトや、それらにバインダーを添加して製造される成型体と同様に、分子ふるい能、吸着能、イオン交換能、固体酸性などのゼオライトの特性を活かした各種の用途に利用することができる。

【0058】
ゼオライトバルク体の用途は特に限定されるものではないが、代表的な用途の一つとして、ゼオライトを構成する原子やゼオライト孔のサイズ等の性質に応じて、様々な分子が混合している液体または気体中から特定の分子を分離ないし吸着する分離・吸着材としての用途が挙げられる。

【0059】
たとえば、疎水性ゼオライトは、アルコール等の有機物の分離材として利用することができる。一般的なバイオエタノールは濃度5~10mass%程度のエタノール水溶液として回収されるが、疎水性ゼオライトを用いて、水の分子をゼオライト孔に近づけないようにしつつ、エタノールにゼオライト孔を通過させることにより、上記エタノール水溶液を濃縮することができる。2~3回程度濃縮操作を繰り返すことにより、蒸溜等の公知の手法に比べて遙かに効率的に(低エネルギーで)、バイオエタノール燃料として利用可能な99mass%程度にまでエタノールの濃度を高めることができる。

【0060】
一方、親水性ゼオライトは、液体または気体中に混合している水をゼオライト孔に吸着させることができるので、脱水・乾燥材として利用することができる。

【0061】
また、ゼオライトは各種の反応の触媒として利用することができる。たとえば、ガソリンのオクタン価を向上させる目的で、長鎖のアルカンを短鎖にしたり(接触分解)、直鎖状のアルカンを分岐状にしたり(接触改質)する反応が広く行われているが、それらの反応用の触媒としてゼオライト系触媒(たとえばPtを担持したゼオライト)などを用いることができる。また、p-キシレンを他の異性体(エチルベンゼンやm-キシレンなど)から変換して得る、キシレンの異性化のためにも、ゼオライト系触媒を用いることができる。ゼオライトの中でも特にZSM-5は、細孔径が目的物のp-キシレンに丁度よい大きさのため、不均化を抑制しつつ選択的にp-キシレンを生成させることができる。

【0062】
ゼオライトバルク体は、用途に応じて、切削加工、ドリル加工、研磨加工等の機械加工により任意の形状に加工することが可能である。たとえば、混合溶液の分離やガス分離などの用途のために、両端または一端に開口を有するチューブ状に機械加工することができる。また、膜状ゼオライトの支持体などの用途のために、円盤状に機械加工することもできる。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
コロイダルシリカ(式量60.09、純度40%、残部は水、日産化学工業)、水酸化ナトリウム(式量40.00、純度96%、ナカライテスク)、アルミン酸ナトリウム(式量81.97、純度69.5%、関東化学)、TPAOH(式量203.36、1M in HO、ALDRICH)および超純水を、SiO2:0.3NaOH:0.016Al2O3:0.066TPAOH:22.5H2Oの組成比にて混合し、スターラーにて24時間撹拌して、反応溶液とした。この反応溶液を容積30mlのテフロン容器に20ml入れ、この容器をあらかじめ200℃に加熱しておいた加熱装置に投入し、合成温度200℃で5日間水熱合成を施した。その後、アルカリ分を除去するため純水にて2時間超音波処理により洗浄し、有機物を除去するため600℃、5時間熱処理をした。得られたバルク体の質量は1.98g、密度は2.1g/cmであった。また、バルク体中のZSM-5、α-SiO2、非晶質のSiO2量は、市販のZSM-5粉末とα-SiO2、Siを用いて、XRDにより検量線を作成し、定量された。その結果、ZSM-5:78mass%、α-SiO2:12mass%、非晶質SiO:10mass%であった。また、XRDと蛍光X線により、Si/Al比は約25と見積もられた。なお、XRDには、リガクRINT2100/PC(CuKα線,θ-2θ,定時測定法)を、蛍光X線にはリガクZSX Primus II-R1を用いた。図1(左)に得られたバルク体の写真を示す。
【実施例】
【0064】
さらに、上記実施例で得られたバルク体を円盤状(径13mm、厚さ7mm)に削った後、炭素鋼鉄工ドリル(径8mm)を付けた電動ドリル(リョービ製)で穿孔して中心部に穴を空けた。図1(右)にこの機械加工品の写真を示す。
【実施例】
【0065】
このバルク体はXRDより疎水性のゼオライトであるZSM-5(構造コード:MFI)に同定された。図2にバルク体のXRDパターンを、図3にバルク体のSEM像をそれぞれ示す。
【実施例】
【0066】
また、JIS M 0303(岩石の引張強さ試験方法)に準拠して、バルク体の引張強度を測定した。測定には「オートグラフDCS-R-10TS」(島津製作所)を用い、クロスヘッドスピードは0.5mm/minで実施した。その結果、引張強度は4MPaであった。
【実施例】
【0067】
次に、JIS R 1601(ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)に準拠して、バルク体の曲げ強度を測定した。測定には「オートグラフ EZ-Test」(島津製作所)を用い、クロスヘッドスピードは0.5mm/minで実施した。その結果、曲げ強度は5MPaであった。
【実施例】
【0068】
[実施例2]
実施例1と同じ反応溶液を、容積350mlのテフロン容器に200ml投入し、240℃で1時間水熱合成後、200℃で5日間水熱合成を施した。図4に得られたバルク体の写真を、図5にXRDパターンを示す。得られたバルク体の組成は、XRDによる定量分析から、ZSM-5:83mass%、α-SiO2:7mass%、非晶質SiO:10mass%であった。
【実施例】
【0069】
[参考例1]
実施例1について、反応溶液におけるHOの組成比を22.5から100,50,10に変更したところ、100の場合はバルク体は生成せず、50の場合はバルク体は生成したものの大きな空孔があり、10の場合はバルク体は生成したものの多数の空隙があった。
【実施例】
【0070】
[参考例2]
実施例1について、水熱合成の温度を190℃、時間を1時間、3時間、12時間、24時間、3日間、7日間および9日間のいずれかに変更した以外は同様の処理を行った。
【実施例】
【0071】
図6に、それぞれの処理により得られた(水熱合成後および熱処理後の)生成物の写真を示す。図7に、それぞれの熱処理後の生成物のXRDを示す。図8に、それぞれの熱処理後の生成物のSEM像を示す。
【実施例】
【0072】
水熱合成の時間が1時間の場合、バルク状のゼオライトは得られなかった。3時間および12時間の場合、水熱合成後の生成物は非晶質の半透明バルク体であり、熱処理によって非晶質内部の有機物は十分に除去されずに炭化し、その結果、黒くなり破壊された。24時間および3日間以降の場合、白いバルク体が形成されていた。XRDパターンよりZSM-5以外のピークは観察できかった。7日間の場合、α-SiOを含んだゼオライトバルク体が得られ、結晶がさらに大きく成長していた。9日間の場合、得られたバルク体にはアナルサイム、ZSM-5およびα-SiOが含まれていた。
【実施例】
【0073】
[実施例3]
実施例1で作製したバルク体を直径10mm、厚さ3mmに加工し、それを用いて蒸気透過法によるエタノール水溶液の濃縮実験を行った(図9参照)。5mass%、50mass%、70mass%、90mass%のエタノール水溶液200mlを40℃に加温し、真空ポンプで30分間吸引した。透過した溶液をコールドトラップにより凝集させ、FIDを備えたガスクロマトグラフ(島津製作所、GC14A)で凝集体中のエタノール濃度を測定した。表2に結果を示す。5mass%のエタノール水溶液では、濃度約70mass%のエタノール水溶液2.7gが透過した。50mass%のエタノール水溶液では、濃度約89mass%のエタノール水溶液5.7gが透過した。70mass%のエタノール水溶液では、濃度約93mass%のエタノール水溶液7.1gが透過した。90mass%のエタノール水溶液では、濃度99mass%以上のエタノール水溶液8.2gが透過した。
【実施例】
【0074】
【表2】
JP0005858492B2_000003t.gif
【実施例】
【0075】
[実施例4]
水酸化ナトリウム(式量40.00、純度96%、ナカライテスク)、アルミン酸ナトリウム(式量81.97、純度69.5%、関東化学)、TPAOH(式量203.36、1M in HO、ALDRICH)および超純水を、SiO2:0.55NaOH:0.025Al2O3:0.09TPAOH:27.3H2Oの組成比にて混合し、スターラーにて24時間撹拌して、反応溶液とした後、容積30mlのテフロン容器に20ml入れ、合成温度200℃で5日間水熱合成を施した。その後、アルカリ分を除去するため純水にて2時間超音波処理により洗浄し、有機物を除去するため600℃、5時間熱処理をした。
【実施例】
【0076】
得られたバルク体はXRDより疎水性ゼオライトであるモルデナイト(Si/Al=5、構造コード:MOR)に同定された。図10にバルク体のXRDパターンを示す。
【実施例】
【0077】
[実施例5]
コロイダルシリカ(式量60.09、純度40%、残部は水、日産化学工業)、水酸化ナトリウム(式量40.00、純度96%、ナカライテスク)、アルミン酸ナトリウム(式量81.97、純度69.5%、関東化学)、および超純水を、SiO2:1.3NaOH:0.2Al2O3:7.8H2Oの組成比にて混合し、スターラーにて24時間撹拌して、反応溶液とした後、容積30mlのテフロン容器に20ml入れ、合成温度185℃で2日間水熱合成を施した。その後、アルカリ分を除去するため純水にて2時間超音波処理により洗浄した。その結果、テフロン容器いっぱいにバルク体が出来、切断面を見ても、目立った空隙は無かった。図11(左)に得られたバルク体の写真を示す。
【実施例】
【0078】
さらに、上記実施例で得られたバルク体を円筒状(径18mm、厚さ13mm)に削った後、炭素鋼鉄工ドリル(径8mm)を付けた電動ドリル(リョービ製)で穿孔して中心部に穴を空けた。図11(右)にこの機械加工品の写真を示す。
【実施例】
【0079】
得られたバルク体はXRDより親水性のゼオライトであるカンクリナイト(Si/Al=1、構造コード:CAN)に同定された。得られたバルク体の組成は、XRDによる定量分析から、カンクリナイト:85mass%、α-SiO2:0mass%、非晶質SiO:15mass%であった。図12にバルク体のXRDパターンを示す。また、JIS R 1601(ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)に準拠した曲げ強度を、実施例1と同じ条件で測定した。その結果、曲げ強度は4MPaであった。
【実施例】
【0080】
[比較例1]
特許文献6(特開平7-89716)の実施例11の追実験を行った。すなわち、SiO2/Al2O3=20.0、結晶化剤/SiO2=0.08(結晶化剤=テトラプロピルアンモニウムブロマイド)、Na2O/SiO2=0.296、H2O/SiO2=20.0の組成の合成母液を調製し、これを用いた水熱合成において、2℃/分の一定昇温速度で180℃まで昇温させ、その温度で36時間保持した。その結果、得られたゼオライトはモルデナイトとNa-Pゼオライトとの混合物と同定され、ZSM-5ではなかった。しかも機械加工が可能なゼオライトバルク体は得られず、テフロン製の反応容器内に粉末状のゼオライト(図13の上部)とゼオライト粒子が薄く集まった膜状のもの(図13の下部)が得られた。得られたゼオライト膜は緻密膜とはほど遠く、表面に多数の穴が開いた脆いものであった。追実験を2回行なったが、2回とも同じ結果であった。
【実施例】
【0081】
[比較例2]
特許文献6(特開平7-89716)の比較例2の追実験を行った。すなわち、SiO2/Al2O3=10.0、結晶化剤/SiO2=0.20(結晶化剤=テトラプロピルアンモニウムブロマイド)、Na2O/SiO2=0.373、H2O/SiO2=20.0の組成の合成母液を調製し、これを用いた水熱合成において、2℃/分の一定昇温速度で180℃まで昇温させ、その温度で36時間保持した。その結果、テフロン製の反応容器の底に塊状のゼオライトが得られたが、これはアナルサイムと同定され、ZSM-5ではなかった。しかし、それを取り出したところ、図14のように簡単に崩れた。すなわち、この塊は雪を手で軽く固めたような粉末の脆い集合体であった。追実験を2回行なったが、2回とも同じ結果であった。
図面
【図2】
0
【図5】
1
【図7】
2
【図9】
3
【図10】
4
【図12】
5
【図1】
6
【図3】
7
【図4】
8
【図6】
9
【図8】
10
【図11】
11
【図13】
12
【図14】
13