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明細書 :バインダーフリー電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004540号 (P6004540)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月12日(2016.10.12)
発明の名称または考案の名称 バインダーフリー電池
国際特許分類 H01M   4/136       (2010.01)
H01M   4/1397      (2010.01)
H01M   4/58        (2010.01)
H01M   4/66        (2006.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01M  10/0566      (2010.01)
H01M   2/02        (2006.01)
FI H01M 4/136
H01M 4/1397
H01M 4/58
H01M 4/66 A
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 2/02 J
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2013-505792 (P2013-505792)
出願日 平成24年3月1日(2012.3.1)
国際出願番号 PCT/JP2012/001393
国際公開番号 WO2012/127790
国際公開日 平成24年9月27日(2012.9.27)
優先権出願番号 2011060503
2011265920
優先日 平成23年3月18日(2011.3.18)
平成23年12月5日(2011.12.5)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年2月27日(2015.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】守友 浩
【氏名】松田 智行
【氏名】高地 雅光
【氏名】栗原 佑太朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100137752、【弁理士】、【氏名又は名称】亀井 岳行
審査官 【審査官】冨士 美香
参考文献・文献 特開昭63-019775(JP,A)
国際公開第2011/030790(WO,A1)
特開平01-219723(JP,A)
特開2001-048527(JP,A)
特開平10-021898(JP,A)
特開2012-046399(JP,A)
調査した分野 H01M 4/136
H01M 4/1397
H01M 4/58
H01M 4/66
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 2/02
特許請求の範囲 【請求項1】
導電部材の表面に、導電材およびバインダーが非混合且つ活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を含む薄膜が形成された正極部材と、
前記正極部材と対を成す負極部材と、
リチウム塩を含み前記正極部材及び負極部材に接触する電解質と、
を備えたことを特徴とするバインダーフリー電池。
【請求項2】
酸化インジウム錫により構成された前記導電部材と、前記導電部材の表面に電解析出された前記シアノ架橋金属錯体を含む薄膜と、を有する前記正極部材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバインダーフリー電池。
【請求項3】
透明材料により構成された前記導電部材と、
前記正極部材と前記負極部材との間に配置されて前記正極部材と前記負極部材とを隔離し且つ前記電解質を保持する白色のセパレータと、
前記正極部材、前記負極部材、前記セパレータを内部に収容すると共に、内部の正極部材を視認可能な透明な透明部を有するケースと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバインダーフリー電池。
【請求項4】
Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)・zHOで表される前記シアノ架橋金属錯体、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバインダーフリー電池。
【請求項5】
粒径が100nmオーダー以下の粒子から構成される前記薄膜、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバインダーフリー電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材やバインダーが混合されていないバインダーフリー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な二次電池として広く使用されているリチウムイオン二次電池では、正極は、LiCoO2やLiMn2O4等の活物質、アセチレンブラック等の導電材、ポリフッ化ビニリデン:PVDFやポリテトラフルオロエチレン:PTFE等のバインダーを混合し、金属電極に貼り付けられた構造が従来公知である。そして、正極内では、活物質/バインダー/導電材界面での酸化還元反応、バインダー内のイオン輸送等が発生し、様々な要因が電池特性(サイクル特性、充放電速度等)を支配している。
【0003】
二次電池の正極として、プルシャンブルー類似体を使用した技術として、下記の非特許文献1~4記載の技術が従来公知である。
非特許文献1(N.Imanishi et al. / Journal of Power Sources,79(1999)215-219)には、216ページ左欄の中段部分に、シアン化鉄(Fe4[Fe(CN)6])のプルシャンブルー類似体の粉に、アセチレンブラックの導電材を20[wt%]、ポリテトラフルオロエチレンのバインダーを0.1[wt%]、を混合したものを負極として使用し、金属リチウムの薄膜を正極として使用し、ポリエチレンのセパレータを使用して、電解質としてLiClO4を使用したリチウムイオン二次電池が記載されている。
【0004】
非特許文献2(N.Imanishi et al. / Journal of Power Sources,81-82(1999)530-534)には、531ページ下から2行目から右欄に、プルシャンブルー類似体である鉄錯体の粉に、アセチレンブラックの導電材を20[wt%]、ポリテトラフルオロエチレンのバインダーを0.1[wt%]、を混合したものを負極として使用し、金属リチウムの薄膜を正極として使用し、ポリエチレンのセパレータを使用して、電解質としてLiClO4を使用したリチウムイオン二次電池が記載されている。なお、非特許文献2には、鉄錯体として、Mn-Fe錯体、Co-Fe錯体、Ni-Fe錯体、Cu-Fe錯体、V-Fe錯体を使用した電池が記載されている。
【0005】
非特許文献3(M.Okubo et al. /The Journal of Physical Chemistry Letters, 2010,1,2063-2071)には、2069ページの後段部分等に、粉末状のプルシャンブルー類似体(PBAs)をペーストにした試料には、アセチレンブラック(導電材)が20[wt%]混合されていることが記載されている。
【0006】
非特許文献4(朝倉大輔、他6名、日本物理学会、2010秋季大会、23pRG-4)には、プルシャンブルー類似体として、粉末状のMn-Mn系のシアノ錯体を正極材とするリチウムイオン電池に関する技術が記載されている。なお、非特許文献3,4のように、粉末状のプルシャンブルー類似体は、電極に直接つける方法はなく、バインダー等を混ぜて作成している。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】N.Imanishi、他6名,”リチウム二次電池の正極としてのシアン化鉄錯体におけるリチウムの層間での振る舞い(Lithium intercalation behavior into iron cyanide complex as positive electrode of lithium secondary battery)”,電源学会誌(Journal of Power Sources),1999年,79,p215-p219
【非特許文献2】N.Imanishi、他7名,”シアン化金属鉄錯体におけるリチウムの層間での振る舞い(Lithium intercalation behavior of iron cyanometallates)”,電源学会誌(Journal of Power Sources),1999年,81-82,p530-p534
【非特許文献3】M.Okubo、他6名,”プルシャンブルー類似体(AxMny[Fe(CN)6]/nH2O(A:K,Rb))の原子化互換異性による酸化還元活性部位の切替:可逆的リチウム貯蔵のための強固なフレームワーク(Switching redox-active sites by valence tautomerism in Prussian blue analogues AxMny[Fe(CN)6]/nH2O(A:K,Rb):robust frameworks for reversible Li storage)”,物理化学会誌(The Journal of Physical Chemistry Letters),2010年,1,p2063-p2071
【非特許文献4】朝倉大輔、他6名,”Kイオン脱離過程におけるプルシアンブルー類似体の電子状態変化”,日本物理学会,2010年,23pRG-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(従来技術の問題点)
前記非特許文献1~4記載の技術では、比較的大きな充放電容量(140mAh/g等)を示すことが記載されており、これは、実用化されている正極材料であるLiCoO2と同程度を実現している。しかしながら、非特許文献1~4記載の技術では、サイクル特性、すなわち、繰り返し充放電を行った場合に、充放電容量がどの程度低下するかの特性が数回程度であり、サイクル特性が極めて悪く、このままでは実用は困難である。
【0009】
本発明は、プルシャンブルー類似体を使用した正極部材のサイクル特性を向上させることを技術的課題とする。
また、本発明は、プルシャンブルー類似体を使用した電池の特性を向上させることを第2の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明のバインダーフリー電池は、
導電部材の表面に、導電材およびバインダーが非混合且つ活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を含む薄膜が形成された正極部材と、
前記正極部材と対を成す負極部材と、
リチウム塩を含み前記正極部材及び負極部材に接触する電解質と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバインダーフリー電池において、
酸化インジウム錫により構成された前記導電部材と、前記導電部材の表面に電解析出された前記シアノ架橋金属錯体を含む薄膜と、を有する前記正極部材、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のバインダーフリー電池において、
透明材料により構成された前記導電部材と、
前記正極部材と前記負極部材との間に配置されて前記正極部材と前記負極部材とを隔離し且つ前記電解質を保持する白色のセパレータと、
前記正極部材、前記負極部材、前記セパレータを内部に収容すると共に、内部の正極部材を視認可能な透明な透明部を有するケースと、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のバインダーフリー電池において、
Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表される前記シアノ架橋金属錯体、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のバインダーフリー電池において、
粒径が100nmオーダー以下の粒子から構成される前記薄膜、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、導電材およびバインダーが混合された従来の構成に比べて、プルシャンブルー類似体を使用した正極部材のサイクル特性を向上させることができ、電池の特性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、電解析出により導電材やバインダーが混合されていないプルシャンブルー類似体を作成することができる。
請求項3に記載の発明によれば、透明部を通じて、充放電に伴う正極部材の色の変化を観察することができる。
請求項4に記載の発明によれば、Mn-Fe系のシアノ架橋金属錯体を使用して、サイクル特性が高く、容量が大きな電池を作成できる。
請求項5に記載の発明によれば、薄膜を構成する粒子の粒径がミクロンオーダーの薄膜に比べて、充放電特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1のバインダーフリー電池の説明図であり、図1Aは斜視図、図1Bは図1AのIB-IB線断面図である。
【図2】図2は実施例1の正極板の要部説明図である。
【図3】図3は実施例1のバインダーフリー電池の透明部の説明図であり、図1AのIII-III線断面図である。
【図4】図4は実験例1および比較例1の実験結果の説明図であり、図4Aは実験例1の実験結果のグラフ、図4Bは比較例1の実験結果のグラフである。
【図5】図5は実験例2の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に金属リチウムに対する電位を取ったグラフである。
【図6】図6は実験例3の充放電特性の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
【図7】図7は実験例3のサイクル特性の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
【図8】図8は、実験例4の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
【図9】図9は、実験例5-1の実験結果の説明図であり、横軸にX線の回折角度(2θ)を取り、縦軸に強度を取ったグラフである。
【図10】図10は、実験例5-2の実験結果の説明図であり、横軸にX線の回折角度(2θ)を取り、縦軸に強度を取ったグラフである。
【図11】図11は格子定数とリチウムイオンとの関係の説明図であり、横軸にリチウムイオンの濃度を取り、縦軸に格子定数を取ったグラフである。
【図12】図12は従来の正極部材であるコバルト酸リチウムの結晶の層状岩塩構造の説明図である。
【図13】図13は実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の結晶構造の説明図であり、図13Aは充電された状態の説明図、図13Bは放電された状態の説明図である。
【図14】図14は、実験例6の説明図であり、図14Aは実験例6-1のSEM画像、図14Bは実験例6-2のSEM画像、図14Cは実験例6-3のSEM画像、図14Dは実験例6-4のSEM画像、図14Eは横軸に粒径を取り縦軸に頻度を取った実験例6の粒径分布のグラフである。
【図15】図15は実験例7の実験結果の説明図であり、横軸に繰り返し回数を取り縦軸に容量を取ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1のバインダーフリー電池の説明図であり、図1Aは斜視図、図1Bは図1AのIB-IB線断面図である。
なお、図1Bにおいて、構成の理解を容易にするために、全体の断面ではなく、一部を模式的に記載している。
図1において、本発明の実施例1のバインダーフリー電池1は、円筒状のケース2を有する。実施例1のケース2は、導電性の材料の一例としてのアルミニウムにより構成された負極部3と、負極部3の外表面を覆う絶縁材料製の絶縁チューブ4と、を有する。前記負極部3は、円筒状の筒部3aと、筒部3aの下端に支持された円板状の負極端子部3bと、筒部3aの上端に支持された円板状の上板部3cとを有する。上板部3cの中央部には、正極端子支持部の一例としての正極支持孔3dが形成されている。正極支持孔3dには、絶縁性のパッキング6を介して、正極端子部7が支持されている。
【実施例1】
【0020】
前記ケース2の内部には、正極部材の一例としての複数の正極板11と、負極部材の一例としての複数の負極板12と、正極板11と負極板12との間に配置されたセパレータ13と、が配置されている。実施例1では、前記各正極板11および各負極板12は、同心円筒状に交互に配置されており、各正極板11と負極板12との間に同心円筒状のセパレータ13が配置されている。また、各正極板11は、タブ16により正極端子部7に電気的に接続されており、各負極板12は負極部3にタブ17により電気的に接続されている。また、各セパレータ13は、下端が円板状の板部13aにより接続されている。
実施例1の負極板12は、金属リチウムの板により構成されているが、カーボン系の材料等の従来公知の材料を使用可能である。
【実施例1】
【0021】
実施例1のセパレータ13は、正極板11と負極板12とを隔離すると共に、電解質を保持してリチウムイオンを透過させることが可能な従来公知の材料を使用可能であり、例えば、従来公知のポリオレフィン系の材料を使用可能である。なお、実施例1では、表面が白色のセパレータ13を使用している。
また、実施例1では、セパレータ13に保持される電解質として、EC(炭酸エチレン)とDEC(炭酸ジエチル)を体積比1:1で混合した溶液に1[mol/l]となるように過塩素酸リチウム(LiClO4)を溶かしたものを使用しているが、これに限定されず、従来公知の電池用の電解質を使用可能である。
【実施例1】
【0022】
図2は実施例1の正極板の要部説明図である。
図2において、実施例1の正極板11は、導電部材の一例としての基層部21と、基層部21の表裏両面に形成された薄膜部22とを有する。
実施例1の基層部21は、ITO(酸化インジウム錫、Indium Tin Oxide)の透明電極により構成されている。
実施例1の薄膜部22は、アセチレンブラック等の導電材およびPTFE等のバインダーが非混合、且つ、活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体(プルシャンブルー類似体)を含む薄膜により構成されている。特に、実施例1では、プルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の一例としての、Mn[Fe(CN)]イオンを含む錯体、いわゆる、Mn-Fe系錯体が使用されている。すなわち、Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表されるシアノ架橋金属錯体を使用している。
【実施例1】
【0023】
実施例1では、薄膜部22は、電解析出法により、基層部21であるITO基板の表面に製膜する。具体的には、シアノ錯体イオンの一例としての[Fe(CN)6]3-を含む1.0[mmol/l]のK3[Fe(CN)6]の溶液と、遷移金属イオンの一例としてのMn2+を含む1.5[mmol/l]のMnCl2の溶液と、アルカリ金属イオンの一例であるNa+を含む1.0[mol/l]のNaNO3の溶液と、を混合した溶液に、対して、ITO基板を浸漬し、ITO基板が作用極となるように、3端子型のポテンショスタットに接続して、ITO基板の表面に薄膜部22を電解析出した。なお、ポテンショスタットは、従来公知で市販されている任意のものを採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
このようにして電解析出法で製膜された実施例1の薄膜部22は、Na1.32Mn[Fe(CN)6]0.83・3.6H2Oであった。なお、以下、本願明細書において、このシアノ架橋金属錯体をNaの「N」、Mnの「M」、Feの「F」、0.83の「83」を使用して、「NMF83」と略記し、異なる組成のシアノ架橋金属錯体の説明をする場合も同様の表記法を使用して説明する。
【実施例1】
【0024】
実施例1では、前記薄膜部22を基層部21の表面に対して、電解析出法により成膜したが、これに限定されず、スピンコート法やプリンター技術等の任意の方法を採用可能である。なお、電解析出を行う場合に、本件出願人の先の出願である特願2010-076810号に記載されているように、結晶方位の揃った状態でシアノ架橋金属錯体を析出させるエピタキシャル積層技術を採用して成膜することも可能である。
【実施例1】
【0025】
図3は実施例1のバインダーフリー電池の透明部の説明図であり、図1AのIII-III線断面図である。
図1A、図3において、実施例1のケース2には、透明部の一例として残量表示窓26が形成されている。前記残量表示窓26は、絶縁チューブ4、負極部3の筒部3a、最外周のセパレータ13を貫通して形成されており、貫通部分には、それぞれ、透明材料の一例としてのPET:ポリエチレンテレフタレート製のフィルムが支持されている。したがって、前記透明窓26を介して、最外周の正極板11が外部から視認可能に構成されている。なお、実施例1の正極板11は、充電時(残量が100%)は茶色であり、放電時(残量0%)は透明であった。
【実施例1】
【0026】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のバインダーフリー電池1では、導電材やバインダーが非混合のシアノ架橋金属錯体により構成された正極板11と、負極板12との間における、リチウムイオンや電子の移動に伴って、充電・放電が行われる。
充電時の正極、負極における化学反応は、以下となる。
(正極)Li2MnII[FeII(CN)6] → LiMnII[FeIII(CN)6]+Li++e-
→ MnIII[FeIII(CN)6]+2Li++2e-
(負極)Li+ +e- → Li
【実施例1】
【0027】
このとき、実施例1のバインダーフリー電池1には、残量表示窓26が形成されており、白色のセパレータ13の手前に配置された正極板11が外部から視認可能となっている。そして、実施例1の正極板11では、NMF83が、充電完了時に茶色となり、放電時に透明になるため、電池の残量がある場合には、残量表示窓26を介して、茶色が視認される。そして、電池の残量が無くなると、薄膜部22のNMF83が透明になり且つ基層部21のITOも透明であるため、奥側のセパレータ13の白色が視認されるようになる。
従来技術では、アセチレンブラック等の導電材やバインダーが混合されていると、正極板11の色が、アセチレンブラックの黒色等となり、色変化がほとんど確認できず、残量を表示しようとすると、別個に残量表示計を設ける必要があった。残量表示計を設けると、電池1から電力を供給する必要があり、電力消費が発生してしまう問題があった。
これに対して、実施例1のバインダーフリー電池1では、導電材やバインダーが混合されていないシアノ架橋金属錯体自体の色変化を残量表示窓26で確認するだけで、残量の有無が視認でき、消費電力を無くしつつ、容易に残量の有無が確認できる。
【実施例1】
【0028】
(実験例)
次に、実施例1の効果を確認するための実験を行った。
(実験例1)
実験は、実施例1の電解析出法でITO基板の表面にNMF83を製膜したものを、過塩素酸リチウムを1「mol/l」溶かしたEC:DEC電解質に浸漬して、充放電を10回繰り返し行った。1回の充放電時間は、充電、放電共に約2時間(0.5C)とした。
(比較例1)
比較例1は、実験例1で得られたNMF83の薄膜を剥がして粉末状とし、従来の電極と同様に、導電材としてのカーボンブラックおよびバインダーとしてのPTFEを混合したものをステンレスメッシュに塗布して正極を作成し、後は実験例1と同様にして実験を行った。
図4に実験結果を示す。
【実施例1】
【0029】
図4は実験例1および比較例1の実験結果の説明図であり、図4Aは実験例1の実験結果のグラフ、図4Bは比較例1の実験結果のグラフである。
なお、図4のグラフでは、横軸に容量をとり、縦軸に電圧を取った。
図4Aにおいて、実験例1では、1回目から2回目の充電時には、容量が低下するが、その後は、10回充電、放電共に容量がほとんど低下しないことが確認された。
一方、図4Bにおいて、比較例1では、充放電を繰り返すと、徐々に容量が低下していくことが確認された。
【実施例1】
【0030】
したがって、実施例1のバインダーフリー電池1では、従来のように導電材やバインダー等を添加しない場合に比べて、充放電時の電池の特性である容量が低下しにくく、実用可能な二次電池を作成することが可能となる。特に、粉末状のシアノ架橋金属錯体を使用する従来技術に比べて、薄膜状のシアノ架橋金属錯体を使用する実施例1のバインダーフリー電池1では、繰り返しの充放電特性を大きく改善することができる。また、実施例1のバインダーフリー電池1では、希少な元素であるLiやCoを使用する従来の正極に比べて、低コストなシアノ架橋金属錯体で実現可能であり、コストを大幅に低下することが可能である。
【実施例1】
【0031】
(実験例2)
実験例2では、実施例1と同様にして、電解析出法でITO基板の表面にプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の薄膜を作成した。作成された薄膜をICP-AES分析およびCNH有機分析(試料を燃焼してガスにしてC,N,Hの重量比を決定する分析)をすると、Na1.24Mn[Fe(CN)6]0.81・3.0H2O(NMF81)であった。得られた薄膜は無色透明であり、膜厚は、1[μm]であった。次に、過塩素酸リチウムを1「mol/l」溶かしたEC:DEC電解質に浸漬して、充放電を行い、ナトリウムイオンをリチウムイオンに置換した。このようにしてリチウム化合物の薄膜(Li1.24Mn[Fe(CN)6]0.81・3.0H2O(LMF81))が得られた。
このようにして作成したリチウム化合物の薄膜を、過塩素酸リチウムを1「mol/l」溶かしたEC:DEC電解質に浸漬して、Li金属を負極として、充放電特性を測定した。実験結果を図5に示す。
【実施例1】
【0032】
図5は実験例2の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に金属リチウムに対する電位を取ったグラフである。
実験例2では、充放電速度は、0.5Cであり、電圧の上限と下限は、4.2[V]と2[V]であった。また、薄膜電極の容量は、110[mAh/g]であり、理論上の容量である115[mAh/g]とほぼ同一の容量を示すと共に、高いサイクル特性も示した。なお、充放電レート0.5Cで100回の耐久テストを行ったところ、蓄電量は、初期値の87%という高い値を示した。
充電曲線は、3.4[V]と3.9[V]に2つのプラトー(停滞状態)を示す。これらプラトーは、それぞれ、[Fe(CN)64-の酸化およびMn2+の酸化に対応する。他方、放電曲線は、3.9[V]、3.6[V]、3.4[V]に3つのプラトーを示す。第1、第2のプラトーは、Mn3+の還元、第3のプラトーは、[Fe(CN)63-の還元に対応すると考えられる。このように、実施例1の正電極は、リチウム金属(陰極)に対して、3.5[V]~3.9[V]の起電力を示す。
【実施例1】
【0033】
(実験例3)
実験例3では、実験例2と同様のLMF81を使用して、充放電特性(Cレート)と、容量、起電力との関係する実験を行った。実験は、実験例2と同様のLMF81の薄膜を正極とし、リチウム金属を負極とし、放電レートを1C、10C、30C、100Cとして実験を行って充放電特性を評価した。また、放電レートが100Cの場合については、サイクル特性についても実験を行った。実験結果を図6、図7に示す。
【実施例1】
【0034】
図6は実験例3の充放電特性の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
図7は実験例3のサイクル特性の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
図6において、実験結果から分かるように放電レートが高くなるにつれて、容量や起電力が低下していくが、100Cの高レートにおいても容量は1Cの70%程度は確保でき且つ3V級の起電力が確保できることが確認された。また、図7において、100Cの高レートでも、充放電を10サイクル(10回繰り返し)行っても、1サイクルの場合とほぼ同様の充放電特性が得られており、繰り返し充放電を行っても劣化が少なく、高いサイクル特性が得られたことが確認された。
【実施例1】
【0035】
(実験例4)
実験例4では、プルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の膜厚の厚みと、放電速度との関係に関する実験を行った。実験例3では、電解析出法で薄膜を作成する際に、電解析出の時間を調整することで、膜厚を調整した正極板を作成し、充放電レートを変えながら、実験例2、3と同様に容量と電圧との関係を測定した。
(実験例4-1)
実験例4-1では、膜厚が16.0[μm]のLMF81の薄膜を使用した。充放電レートは、0.1C、1C、4C、20C、60Cで実験を行った。
(実験例4-2)
実験例4-2では、膜厚が3.9[μm]のLMF81の薄膜を使用した。充放電レートは、0.1C、4C、15C、63C、189Cで実験を行った。
(実験例4-3)
実験例4-3では、膜厚が0.05[μm]=50[nm]のLMF81の薄膜を使用した。充放電レートは、2C、71C、740Cで実験を行った。
実験結果を図8に示す。
【実施例1】
【0036】
図8は、実験例4の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
図8において、実験例4-1~4-3から分かるように、膜厚が薄くなるほど、充放電レートが高くても容量や起電力を確保しやすくなることが確認された。特に、実験例4-3のような、0.01μmオーダー(10nmオーダー)の膜厚にすることで、10μmオーダーの実験例4-1や、1μmオーダーの実験例4-2に比べて、充放電特性(Cレート)が、2オーダー高まり、膜厚が薄くなるほど、Cレートが飛躍的に高まることが確認された。よって、1000Cを超える高速充放電(高パワー密度)が可能、且つ、容量が多い(エネルギー密度が高い)電池の実現も期待され、電気自動車等でも使用可能な電池の実現も期待される。
【実施例1】
【0037】
(実験例5)
実験例5では、リチウム電池セルで充放電を行った場合における、薄膜の構造相転移が発生しているか否かの確認する実験を行った。実験では、リチウムイオンの進入、脱離(リチウムの増減)に対して構造相転移を示すかどうかについて行った。実験は、リチウム金属の陰極とを有するリチウム電池セルで充放電を行い、グローブボックス内で電池を解体し、粉末をキャピラリーに封入して放射光X線(波長:0.4990[Å])を用いて粉末回折実験を行った。
【実施例1】
【0038】
(実験例5-1)
実験例5-1では、実験例1と同様のNMF83を実験例2と同様にして、ナトリウムイオンをリチウムイオンに置換したLMF83(LiMn[Fe(CN)6]0.83・3.5H2O)を正極板として使用した。また、リチウムイオンの個数xは、x=1.3,0.9,0.7,0.4,0.1の場合において測定を行った。
(実験例5-2)
実験例5-2では、実験例2と同様のLMF81を(LiMn[Fe(CN)6]0.81・3.0H2O)を正極板として使用した。また、リチウムイオンの個数(濃度)xは、x=1.24,0.52の場合において測定を行った。
実験結果である回折パターンを図9、図10に示す。
【実施例1】
【0039】
図9は、実験例5-1の実験結果の説明図であり、横軸にX線の回折角度(2θ)を取り、縦軸に強度を取ったグラフである。
図10は、実験例5-2の実験結果の説明図であり、横軸にX線の回折角度(2θ)を取り、縦軸に強度を取ったグラフである。
図9、図10において、リチウムの進入、脱離が発生しても、同様の回折パターンが得られること、すなわち、プルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体は、充放電があっても構造相転移を起こさないことが確認された。また、得られた回折パターンをリートベルト解析したところ、面心立方格子モデルであった。
また、得られた結果から、格子定数をリチウムイオンの関数としてプロットしたグラフを図11に示す。
【実施例1】
【0040】
図11は格子定数とリチウムイオンとの関係の説明図であり、横軸にリチウムイオンの濃度を取り、縦軸に格子定数を取ったグラフである。
図11において、xが0付近では格子定数が小さくなるが、それ以外のリチウムイオン濃度領域では、格子定数がほぼ一定である。
【実施例1】
【0041】
図12は従来の正極部材であるコバルト酸リチウムの結晶の層状岩塩構造の説明図である。
従来のリチウムイオン電池の正極材として広く使用されているコバルト酸リチウム(LiCoO2)は、図12に示すような、コバルトイオン01と酸素02どうしが結合されたCoO2の格子が層状に配置された構造をしており、強く共有結合したCoO2の層間にリチウムイオン03が位置した状態となっている。したがって、従来のコバルト酸リチウムの正極材では、充電に伴って、リチウムイオンの引き抜きが発生すると、非常に複雑且つ激しい構造相転移を示し、最終的に、CdI2型のCoO2が生成され、電池の特性(サイクル特性や充放電特性)に悪影響を及ぼす問題があった。
また、リチウムイオン電池の正極材として使用されているスピネル構造のLiMn2O4では、MnO6の八面体をリチウムイオンが三次元的に連結する役割を担うように位置している。しかしながら、リチウムイオンの引き抜きに伴ってリチウムイオン濃度が低いところでは、γ-MnO2が生成され、構造相転移が誘起されてしまい、電池特性に悪影響が及ぶ問題があった。
【実施例1】
【0042】
さらに、リチウムイオン電池の正極材として使用されているオリビン構造のLiFePO4では、PO4四面体とFeO6八面体が作り出す一次元的な隙間に位置している。しかしながら、リチウムイオンの引き抜きが発生すると、PO4四面体とFeO6八面体の八面体の骨格を維持し、FePO4が生成する。そのため、充放電に伴って、「LiFePO4」と「FePO4」の二相共存状態で反応が進行し、電池特性に悪影響が及ぶ問題があった。また、この材料系では、極在電子系のため電子伝導性が極めて低いと共に、二相共存系であるため、高レートでの充放電は困難であると考えられている。LiFePO4の表面を炭素系の電子導電材でコートすることでレートを向上させることが行われているが、二相共存系という問題は解決されておらず、コーティングという余分な手間が必要になっていた。
【実施例1】
【0043】
図13は実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の結晶構造の説明図であり、図13Aは充電された状態の説明図、図13Bは放電された状態の説明図である。
図13において、実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体では、鉄31とマンガン32の2つの遷移金属がシアノ基33に架橋され、三次元的なポリマー構造を形成している。このポリマー構造は隙間の多い構造であり、リチウムイオン34は空隙を占有することができる。したがって、リチウムイオンは、空隙を通じて、前後左右上下の6方向に3次元的に通過、伝導して、移動することができる。
したがって、実施例1の正極板11では、リチウムイオンの引き抜き時に構造相転移が発生したり二相共存状態となる従来の材料と異なり、リチウムイオンの引き抜きに対して、Mn[Fe(CN)6]の結晶構造が堅固であり、構造相転移や二相共存状態が発生しにくく、構造的に電池特性への悪影響が少ないことが期待でき、実験の結果からも考察できる。特に、イオンの電動経路が1次元のLiFePO4や2次元のLiCoO2に比べ、リチウムイオンが3次元的に移動できる実施例1では、高速でリチウムが移動可能、すなわち、充放電レートの向上が期待できる。
【実施例1】
【0044】
特に、実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体は、ITO基板上に成膜されており、粉状の錯体をバインダー等で固めた従来の構成に比べて、基板に対する電気的な接触が向上している。したがって、非特許文献1~4に記載された構成に比べて、容量が理論値近くまで向上し、充放電レートも向上している。
【実施例1】
【0045】
(実験例6)
実験例6では、薄膜を構成する粒子の粒径に関する実験を行った。実験例6では、実験例4で使用した薄膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して表面を観察して、表面のイメージ画像から粒径の分布を測定し、平均粒径を演算した。すなわち、実験例6-1,6-2,6-3では、それぞれ、実験例4-1,4-2,4-3で使用した薄膜について平均粒径の測定を行った。また、実験例6-4では、膜厚が0.55[μm]のLMF81の薄膜についても平均粒径の測定を行った。
実験結果を図14に示す。
【実施例1】
【0046】
図14は、実験例6の説明図であり、図14Aは実験例6-1のSEM画像、図14Bは実験例6-2のSEM画像、図14Cは実験例6-3のSEM画像、図14Dは実験例6-4のSEM画像、図14Eは横軸に粒径を取り縦軸に頻度を取った実験例6の粒径分布のグラフである。
図14において、実験例6-1では、平均粒径が7[μm]であり、誤差が±2[μm]であった。また、実験例6-2では、平均粒径が1.1±4[μm]、実験例6-3では、0.3±1[μm]、実験例6-4では0.7±2[μm]であった。
したがって、実験例4から、薄膜をナノオーダーまで薄くすることで、ミクロンオーダーの場合に比べて、充放電レートを、2オーダー以上向上させることが可能であることが確認された。これは、薄膜がミクロンオーダーまで厚いと、結晶粒が大きくリチウムは長い距離を移動する必要があるが、ナノオーダーまで薄くすると、実験例6の結果から分かるように、結晶粒が小さくなりリチウムの移動距離が短くなり、充放電レートが向上したものと考えられる。そして、実験例4,6の結果から、粒径が小さくなるほど、充放電レートが向上し、特に、実験例4-3,6-3の結果から、結晶粒の粒径が100nmオーダー以下になると、充放電レートが著しく向上することが確認された。したがって、実験例4,6の結果から、厚い膜でも、結晶粒を小さくすることにより、レートを向上させることが可能である。
【実施例1】
【0047】
(実験例7)
実験例7では、繰り返し特性に関する実験を行った。実験では、実験例1と同様のNMF83を使用し、56[mA/g]の一定の電流密度で充放電を行った場合の容量を測定した。測定は充放電を1~100回繰り返して行い、その際の容量の変化を観察した。実験結果を図15に示す。
【実施例1】
【0048】
図15は実験例7の実験結果の説明図であり、横軸に繰り返し回数を取り縦軸に容量を取ったグラフである。
図15において、NMF83の薄膜を使用した電極では、100回の繰り返しを行っても電気容量は減少せず、100回の繰り返し時でも、容量の初期値に対して87%の容量を有することが確認された。よって、繰り返し特性も十分に高いことが確認された。
【実施例1】
【0049】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H08)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、バインダーフリー電池の形状として、円筒型の構成を例示したが、これに限定されず、ボタン型や角形等の任意の形状とすることが可能である。したがって、同心円筒状の電極板の形状に限定されず、電池の形状に合わせて円板状や四角の平板状とすることも可能である。また、負極板や正極板、セパレータの枚数、すなわち、積層枚数は、実施例に例示した枚数に限定されず、容量等に応じて、任意の枚数とすることが可能である。
【実施例1】
【0050】
(H02)前記実施例において、シアノ架橋金属錯体は、実験例で例示した構成に限定されず、製法や用途等に応じて、Aをアルカリ金属の少なくとも一種、M、M′を遷移金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AM[M′(CN)Oで表されるシアノ架橋金属錯体を使用可能である。なお、前記Aのアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。また、前記Mの遷移金属としては、Fe、Mn、Ni、Co、Cr、V、Cu、Znが挙げられる。また、M′の遷移金属としては、Fe、Cr、V、Mn、Tiが挙げられる。また、x、y、zは、それぞれ、遷移金属Mの1モルに対するアルカリ金属A、M′(CN)、結晶水HOの割合(モル)を示し、シアノ架橋金属錯体では、製法や構造により、xが0~2、yが0~1、zが0~14の値を取りうる。なお、本願明細書および特許請求の範囲において、「異なる組成の錯体」とは、アルカリ金属A、遷移金属M,M′および数x、yの少なくとも1つが異なるものを指している。
したがって、実験例で示したように最も安価で容量が大きなMn-Fe系のシアノ架橋金属錯体に限定されず、その他のシアノ架橋金属錯体、例えば、容量が大きなCu-Fe系やMn-Mn系、あるいは、電池として要求される容量等に応じて、Ni-Fe系、Co-Fe系等のシアノ架橋金属錯体も使用可能である。
【実施例1】
【0051】
(H03)前記実施例において、透明のITO基板にシアノ架橋金属錯体を製膜する構成を例示したが、これに限定されず、不透明の基板、例えば、白金、金、アルミニウム等の導電体の表面に製膜することが可能である。
(H04)前記実施例において、残量表示窓26は、ケース2の一部に形成する構成を例示したが、これに限定されず、ケース2全体を透明にする等の構成とすることも可能である。
【実施例1】
【0052】
(H05)前記実施例において、残量の表示は、色変化に基づいて行う構成を例示したが、これに限定されず、プリント技術等で、シアノ架橋金属錯体を配列して文字を表示することも可能である。例えば、充電時に発色して放電時に透明になるシアノ架橋金属錯体を使用して充電時に「残量あり」と表示して、放電時に表示が消える(透明になる)ようにしたり、充電時に透明になって放電時に着色されるシアノ架橋金属錯体を使用して充電時に表示が消えて、放電時に「充電してください」と表示されるようにすることも可能である。また、これらを組み合わせることも可能である。さらに、3原色を配列して、充電、放電の状態に応じて色が変化するカラー表示としたり、文字をカラー表示することも可能である。
【実施例1】
【0053】
(H06)前記実施例において、いわゆる太陽電池等の発電素子と組み合わせて、発電された電気をバインダーフリー電池1で充電したり、電子機器に給電する等の組み合わせに使用することも可能である。
(H07)前記実施例において、薄膜部22を基層部21の両面に形成する構成を例示したが、これに限定されず、片面のみに形成する構成とすることも可能である。
(H08)前記実施例において、充放電レートを向上させるために結晶粒が小さいナノオーダーの薄膜とすることが望ましいが、これに限定されず、結晶粒を小さくしつつ厚膜化が可能であれば、充放電レートを向上させつつ容量を向上させることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
前述の本発明のシアノ架橋金属錯体を使用する電池は、シアノ架橋金属錯体が薄くすることが可能であるため、例えば、ICカード等に埋め込まれるカード埋め込み型の薄膜電池や電化製品(例えば、電動歯ブラシや携帯電話、ノートパソコン等)等に好適に適用することが可能である。
また、本発明の正極部材と負極部材等を多層化して、大容量化し、電気自動車等のバッテリーに適用することも期待できる。
【符号の説明】
【0055】
1…バインダーフリー電池、
2…ケース、
11…正極部材、
12…負極部材、
13…セパレータ、
21…導電部材、
22…薄膜、
26…透明部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図6】
9
【図8】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14