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明細書 :新規多孔質アモルファスシリカ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5975982号 (P5975982)
登録日 平成28年7月29日(2016.7.29)
発行日 平成28年8月23日(2016.8.23)
発明の名称または考案の名称 新規多孔質アモルファスシリカ及びその製造方法
国際特許分類 C01B  33/18        (2006.01)
B01J  37/36        (2006.01)
B01J  21/08        (2006.01)
C12P   3/00        (2006.01)
B01J  20/10        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
FI C01B 33/18 Z
B01J 37/36
B01J 21/08 Z
C12P 3/00 Z
B01J 20/10 A
B01J 20/30
B01J 20/28 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 24
出願番号 特願2013-504745 (P2013-504745)
出願日 平成24年3月13日(2012.3.13)
国際出願番号 PCT/JP2012/056452
国際公開番号 WO2012/124703
国際公開日 平成24年9月20日(2012.9.20)
優先権出願番号 2011056876
優先日 平成23年3月15日(2011.3.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年1月21日(2015.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】高田 潤
【氏名】橋本 英樹
【氏名】工藤 孝幸
【氏名】妹尾 昌治
【氏名】板谷 篤司
【氏名】黒田 泰重
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開平02-255518(JP,A)
国際公開第2010/110435(WO,A1)
特開2008-177061(JP,A)
特表2004-527445(JP,A)
特開昭62-083386(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamIII)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
強度が0.4 Band area/a.u.以上であって、比表面積が500 m2/g以上である、マイクロ孔を有する多孔質アモルファスシリカ。
【請求項2】
前記酸強度が0.5 Band area/a.u.以上である、請求項1に記載の多孔質アモルファスシリカ。
【請求項3】
前記酸強度が0.6 Band area/a.u.以上である、請求項1に記載の多孔質アモルファスシリカ。
【請求項4】
球状微粒子の集合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質アモルファスシリカ。
【請求項5】
微生物が生成した酸化鉄を酸で処理する工程を含む多孔質アモルファスシリカの製造方法。
【請求項6】
前記酸が塩酸又は硫酸である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質アモルファスシリカを含む固体酸触媒。
【請求項8】
フリーデルクラフツ反応触媒又はエポキシ開環反応触媒である、請求項に記載の固体酸触媒。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質アモルファスシリカを含む吸着剤。
【請求項10】
極性ガスの吸着に使用される、請求項に記載の吸着剤。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質アモルファスシリカを有機基で化学修飾した有機・無機複合材料。
【請求項12】
請求項11に記載の有機・無機複合材料に触媒を固定化した触媒・有機・無機3元系複合材料。
【請求項13】
触媒が、酵素、有機触媒及び金属錯体触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の触媒・有機・無機3元系複合材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は微生物が作る酸化鉄を出発原料とした新規多孔質アモルファスシリカ、及び該多孔質アモルファスシリカの製造方法に関する。更に、本発明は、上記多孔質アモルファスシリカを含む固体酸触媒、吸着剤、有機・無機複合材料、及び触媒・有機・無機3元系複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリカ(SiO2)は様々な分野で利用されており産業上極めて重要な材料である。その用途は多岐に渡り、ゴムの補強材、顔料、吸着材、触媒担体などとして我々の生活に欠かせない材料として浸透している。ナノオーダーの細孔を極めて精密に制御したメソポーラスシリカやナノテクに代表されるシリカナノチューブ、シリカナノワイヤーなどが開発され、その表面修飾性や吸着特性を生かし優れた性能を有する触媒固定担体や吸着材、ナノデバイスとしての応用を狙った研究が盛んになされている(非特許文献1-3)。
【0003】
そして、非特許文献4では、結晶性が良く、少量の表面ヒドロキシル基を有するシリカMCM-41サンプルを調製したこと、当該サンプルの表面結晶性は水による攻撃からのサンプルの保護、及び水やCOのような吸着物の吸着挙動において重要な役割を演じていることが報告されている。また、非特許文献5では、メソポーラスシリカ(MCM-41)は、アセタール化、異性化、脱ベンジル化のような種々の反応の典型的な酸触媒として機能すること、孔径が触媒活性に大きな影響を与えていること、及びMCM-41は種々のシリカゲルと比べて優れた触媒活性を有していたことが報告されている。
【0004】
一方で、天然物由来のシリカを利用することも盛んに行われている。最も有名な例は、珪藻と呼ばれる藻類の殻の化石からなる堆積物である珪藻土である(非特許文献6)。珪藻土は、その優れた吸着特性、耐火性、断熱性などの特性を生かして、触媒やクロマトグラフィー固定相の担体、建材や保温材などとして利用されている。また、籾殻のシリカ成分を抽出したシリカも注目されている(非特許文献7)。このようにして得られたシリカは、食料などと競合することのない未使用バイオマスである籾殻を利用していることから、その有効利用が環境面からも注目されている。これら珪藻由来や植物由来のシリカはバイオシリカと呼ばれている。
【0005】
その他にも、海綿動物の体内から、通信ネットワークで使用する光ファイバーとよく似たシリカファイバーが発見され、工業製品である光ファイバーよりも優れた特性を有することが報告されている(非特許文献8)。また、鉱物からシリカを抽出する例もある。例えば、クリソタイル(Mg6Si4O10(OH)8)と呼ばれる鉱物を出発物質として、これを酸処理することでアモルファスシリカナノファイバーを作製したという報告がなされている(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】T. Yanagisawa, T. Shimazu, K. Kuroda, and C. Kato, Bull. Chem. Soc. Jpn., 63 (1990) 988-992
【非特許文献2】H. Nakamura, and Y. Matsui, J. Am. Chem. Soc., 117 (1995) 2651-2652
【非特許文献3】M. Zhang, Y. Bando, K. Wada, and K. Kurashima, J. Mater. Sci. Lett., 18 (1999) 1911-1913
【非特許文献4】T. Mori, Y. Kuroda, Y. Yoshikawa, M. Nagao, and S. Kittaka, Langmuir, 18 (2002) 1595-1603
【非特許文献5】M. Iwamoto, Y. Tanaka, N. Sawamura, and S. Namba, J. Am. Chem. Soc., 125 (2003) 13032-13033
【非特許文献6】J. F. Lemonas Jr., Am. Ceramic Soc. Bull., 76 No.6 (1997) 92-95
【非特許文献7】C. Real, M. D. Alcala, and J. M. Criado, J. Am. Ceram. Soc., 79 No.8 (1996) 2012-2016
【非特許文献8】V.C. Sundar, A. D. Yablon, J. L. Grazul, M. Ilan, and J. Aizenberg, Nature, 424 (2003) 899-900
【非特許文献9】K. Liu, Q. Feng, Y. Yang, G. Zhang, L. Ou, and Y. Lu, J. Non-Cryst. Solids, 353 (2007) 1534-1539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知のシリカ材料は人工合成物が主である。天然物由来のシリカ材料も作製されているが、微生物が作る酸化鉄を出発物質としている製法はこれまで報告例がない。
【0008】
そこで、本発明は、微生物が作る酸化鉄を出発物質とした多孔質アモルファスシリカ、及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記多孔質アモルファスシリカを含む固体酸触媒、吸着剤、有機・無機複合材料、及び触媒・有機・無機3元系複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、微生物が作る酸化鉄の鉄分を酸処理し、Fe成分を溶解除去することによってアモルファスシリカを得ることができ、上記目的を達成することができるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の多孔質アモルファスシリカ、多孔質アモルファスシリカの製造方法、固体酸触媒、吸着剤、有機・無機複合材料、及び触媒・有機・無機3元系複合材料を提供するものである。
【0010】
項1.酸強度が0.4 Band area/a.u.以上であって、マイクロ孔を有する多孔質アモルファスシリカ。
【0011】
項2.前記酸強度が0.5 Band area/a.u.以上である、項1に記載の多孔質アモルファスシリカ。
【0012】
項3.前記酸強度が0.6 Band area/a.u.以上である、項1に記載の多孔質アモルファスシリカ。
【0013】
項4.比表面積が300 m2/g以上である、項1~3のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。
【0014】
項5.比表面積が400 m2/g以上である、項1~3のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。
【0015】
項6.球状微粒子の集合体である、項1~5のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。
【0016】
項7.微生物が生成した酸化鉄を酸で処理する工程を含む方法により得られる、項1~6のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。
【0017】
項8.微生物が生成した酸化鉄を酸で処理する工程を含む多孔質アモルファスシリカの製造方法。
【0018】
項9.前記酸が塩酸又は硫酸である、項8に記載の方法。
【0019】
項10.項1~7のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカを含む固体酸触媒。
【0020】
項11.フリーデルクラフツ反応触媒又はエポキシ開環反応触媒である、項10に記載の固体酸触媒。
【0021】
項12.複素環式化合物のアルキル化反応に適用されるフリーデルクラフツ反応触媒である、項10に記載の固体酸触媒。
【0022】
項13.項1~7のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカを含む吸着剤。
【0023】
項14.極性ガスの吸着に使用される、項13に記載の吸着剤。
【0024】
項15.N2O、NOx、CO2、CO、オレフィン及びアルキンからなる群から選ばれた少なくとも1種の極性ガスの吸着に使用される、項13に記載の吸着剤。
【0025】
項16.項1~7いずれかに記載の多孔質アモルファスシリカを有機基で化学修飾した有機・無機複合材料。
【0026】
項17.前記有機基が、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、イミド基、シアノ基、イソシアノ基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、イミノ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、スルフィド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホキシド基、複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子及びリン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する基である、項16に記載の有機・無機複合材料。
【0027】
項18.前記多孔質アモルファスシリカに含まれるSi原子に結合した酸素原子が、前記有機基に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム又はリンのいずれかと結合している、項16又は17に記載の有機・無機複合材料。
【0028】
項19.前記有機基に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1種が、それぞれ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤及びリン系カップリング剤に由来する、項18に記載の有機・無機複合材料。
【0029】
項20.前記有機基による化学修飾が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤及びリンカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも1種と前記多孔質アモルファスシリカとの反応で形成される、項16~19のいずれかに記載の有機・無機複合体。
【0030】
項21.項16~20のいずれかに記載の有機・無機複合材料に触媒を固定化した触媒・有機・無機3元系複合材料。
【0031】
項22.触媒が、酵素、有機触媒及び金属錯体触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項21に記載の触媒・有機・無機3元系複合材料。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、微生物が作る酸化鉄を出発物質とした多孔質アモルファスシリカを提供することができる。本発明の多孔質アモルファスシリカは、固体酸触媒として作用する酸点を有し、人工的に合成したシリカ触媒と比較し優れた酸強度及び触媒活性を有しており、新規の固体酸触媒として様々な分野での応用が期待できる。更に、本発明の多孔質アモルファスシリカは、人工的に合成したシリカ触媒と比較して、優れた無機系ガス及び有機系ガスの吸着能を有しており、吸着剤としての応用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例のバイオジナス・シリカの製造方法のフローチャートを示す図である。
【図2】実施例のバイオジナス・シリカのXRDパターンを示すグラフである。
【図3】実施例のバイオジナス・シリカのSEM写真である。
【図4】実施例のバイオジナス・シリカのTEM写真である。
【図5】実施例のバイオジナス・シリカの細孔径分布を示すグラフである。左:メソ孔領域、右:マイクロ孔領域
【図6】実施例のバイオジナス・シリカ及びアエロジル200に吸着したピリジンのIRスペクトルを示すグラフである。300 K evac.:バイオジナス・シリカを室温(300 K)で2時間、真空排気処理し、その後、in situ、室温で測定したスペクトル、Py ads.:上記の前処理を施したバイオジナス・シリカに300 Kでピリジンガスを吸着させたときのスペクトル、300 K reevac.:ピリジン吸着後、バイオジナス・シリカを、再び、300 Kで30分真空排気処理したときのスペクトル、Aerosil200 Py ads.:アエロジル200を300 Kで2時間、真空排気処理し、その後、300 Kでピリジンガスを吸着させたときに測定したスペクトル
【図7】実施例のバイオジナス・シリカに吸着したピリジンの脱離過程におけるIRスペルクトルを示すグラフである。300 K evac:バイオジナス・シリカを300 Kで2時間、真空排気処理し、その後、in situ、室温で測定したスペクトル、Py ads.:上記の前処理を施したバイオジナス・シリカに300 Kでピリジンガスを吸着させたときのスペクトル、300 K reevac.:ピリジン吸着後、バイオジナス・シリカを、再び、300 Kで30分真空排気処理したときのスペクトル、373~873 K reevac.:バイオジナス・シリカを各温度で30分真空加熱処理したときのスペクトル
【図8】実施例のバイオジナス・シリカ、アエロジル200及びMCM-41の酸点の強度を示すグラフである。
【図9】室温で測定した無機系ガスについての吸着等温線を示すグラフである。左:バイオジナス・シリカ、右:アエロジル200
【図10】室温で測定した有機系ガスについての吸着等温線を示すグラフである。左:バイオジナス・シリカ、右:アエロジル200
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0035】
多孔質アモルファスシリカ
本発明の多孔質アモルファスシリカは、酸強度が0.4 Band area/a.u.以上であって、マイクロ孔を有することを特徴とする。

【0036】
本発明の多孔質アモルファスシリカは、固体酸触媒として作用する酸点を有し、人工的に合成したシリカ触媒と比較し優れた酸強度及び触媒活性を有している。更に、本発明の多孔質アモルファスシリカは、人工的に合成したシリカ触媒と比較して、優れた無機系ガス及び有機系ガスの吸着能を有している。

【0037】
本発明の多孔質アモルファスシリカの酸強度は、好ましくは0.5 Band area/a.u.以上、より好ましくは0.6 Band area/a.u.以上、特に好ましくは0.7 Band area/a.u.以上、最も好ましくは0.8 Band area/a.u.以上である。本発明における酸強度の値は、実施例に記載の方法により測定される。実施例では、Miyataら(Appl. Spectrosc. 1989, 43, 522.)によって開発されたプログラムを用いてバンド面積を求めているが、一般に市販されている波形解析ソフトでバンドの面積を求めても良い。当該酸強度で表される値は、ブレンステッド酸に類似した酸特性を有するサイト(酸性を有する水酸基)の量(或いは強さ)に直接相当すると考えることができる。

【0038】
本発明の多孔質アモルファスシリカは、細孔半径が5 nm以下、特に3 nm以下の細孔を有することが望ましく、細孔直径が0.4~0.7 nmと1~2 nmの範囲にあるマイクロ孔を有することが望ましい。また、本発明の多孔質アモルファスシリカの比表面積は、好ましくは300 m2/g以上、より好ましくは400 m2/g、更に好ましくは500 m2/g以上である。

【0039】
更に、本発明の多孔質アモルファスシリカの形状は、例えば、球状微粒子の凝集体であり、当該球状微粒子の直径は通常10~70 nm程度、特に20~50 nm程度である。

【0040】
本発明の多孔質アモルファスシリカには、微量の鉄原子、リン原子等が含まれていても良い。鉄原子及びリン原子を含んでいる場合の多孔質アモルファスシリカのケイ素、鉄、リンの元素比率は原子数%(at%)で、通常99~99.6 : 0.33~1.00 : 0.01~0.03程度である。

【0041】
本発明の多孔質アモルファスシリカは、以下の「多孔質アモルファスシリカの製造方法」の項目に記載の方法により製造することが出来る。

【0042】
多孔質アモルファスシリカの製造方法
本発明の多孔質アモルファスシリカの製造方法は、微生物が生成した酸化鉄を酸で処理する工程(以下、酸処理工程とも呼ぶ)を含むことを特徴とする。

【0043】
本発明の方法により、微生物が生成した酸化鉄を出発原料とした天然物由来のシリカ材料を製造することが可能となる。

【0044】
本発明の方法は、酸処理工程の前に、微生物が生成した酸化鉄を乾燥する工程(以下、乾燥工程とも呼ぶ)を有していても良く、酸処理工程の後に、酸処理工程で得られた多孔質アモルファスシリカを洗浄及び乾燥する工程(以下、洗浄乾燥工程とも呼ぶ)を有していても良い。

【0045】
本発明の方法の原料となる微生物が生成した酸化鉄とは、様々な微生物が菌体外に生産する酸化鉄であり、種々の形状のものが知られている。本明細書において、このような「微生物が生成した酸化鉄」をバイオジナス酸化鉄と称している。

【0046】
酸化鉄を菌体外に生成する微生物としては、例えば、鉄酸化細菌が挙げられる。鉄酸化細菌は、川、池、地下、水田等に生息し、鞘状、らせん状、棒状、粒状等の種々の形状の酸化鉄を生産する。

【0047】
本発明において、鉄酸化細菌としては、例えば、レプトスリックス属(Leptothrix)、ガリオネラ属(Gallionella)、スフェロチルス属(Sphaerotilus)、クロノスリックス属(Clonothrix)、トクソスリックス属(Toxothrix)、シデロモナス属(Sideromonas)、シデロカプサ属(Siderocapsa)、シデロコッカス属(Siderococcus)に属するバクテリアが挙げられる(例えば、「小島貞夫、須藤隆一、千原光雄編:“環境微生物図鑑”講談社 (1995)」)。

【0048】
例えば、代表的な鉄酸化細菌であるレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)は、鞘状の酸化鉄を生産することが知られている(例えば、「H. Hashimoto, S. Yokoyama, H. Asaoka, Y. Kusano, Y. Ikeda, M. Seno, J. Takada, T. Fujii, M. Nakanishi, R. Murakami, Characteristics of hollow microtubes consisting of amorphous ironoxide nanoparticles produced by ironoxidizing bacteria, Leptothrix ochracea. J. Magn. Magn. Mater., 310, 2405-2407 (2007)」)。

【0049】
レプトスリックス・オクラセアが生産する酸化鉄は、直径約1μm、長さ約200μmの鞘状物質であり、鉄、酸素以外に微量のケイ素、リンを含む酸化物である。更に、その鞘状構造は、直径3 nm程度のナノ粒子が凝集してできた直径100 nm以下の粒子で構成されている。尚、同一の微生物が作り出す酸化鉄であっても、酸化鉄に含まれる鉄、ケイ素、リン等の構成成分の種類や構成比は、微生物の存在する環境によって変化する。

【0050】
レプトスリックス・オクラセアが生産する鞘状酸化鉄は、例えば、浄水場の自然ろ過施設に溜まった堆積物中等に存在し、該堆積物に遠心分離、減圧乾燥等を施すことより、レプトスリックス・オクラセア由来の酸化鉄を精製することができる。

【0051】
鞘状の酸化鉄を形成するレプトスリックス・オクラセア以外にも、例えば、ガリオネラ属はらせん状、スフェロチルス属及びクロノスリックス属は枝分かれしたチューブ状又は糸状、トクソスリックス属は糸状(ハープのような形状、扇状)、シデロモナス属は短幹状、シデロカプサ属はカプセル状、シデロコッカス属は球状の酸化鉄を生産することが知られている(例えば、「小島貞夫、須藤隆一、千原光雄編:“環境微生物図鑑”講談社 (1995)」)。これらの酸化鉄も、レプトスリックス・オクラセアが生産する酸化鉄と同様の方法で単離精製、分析できる。

【0052】
本発明の方法における原料としては、好ましくは鉄酸化細菌、より好ましくはレプトスリックス属に属する微生物、特に好ましくはレプトスリックス・オクラセアが生成する酸化鉄である。

【0053】
「乾燥工程」では、バイオジナス酸化鉄を乾燥し粉末状にする。乾燥温度は、通常20~200℃であり、乾燥時間は通常1~48時間である。乾燥は減圧下で行っても良い。

【0054】
「酸処理工程」では、バイオジナス酸化鉄を酸処理することによりFe成分を溶解除去し、結果として多孔質アモルファスシリカが得られる。酸処理に使用する酸としては、例えば、塩酸及び硫酸が挙げられる。酸処理の時間は、通常1時間~6日、特に2~4日である。

【0055】
「洗浄乾燥工程」では、酸処理工程で得られた多孔質アモルファスシリカを水等で洗浄した後に乾燥させる。乾燥は好ましくは減圧下で行い、乾燥温度は、通常20~200℃であり、乾燥時間は通常1~48時間である。

【0056】
固体酸触媒
本発明の固体酸触媒は、上記多孔質アモルファスシリカを含むことを特徴とする。

【0057】
本発明の多孔質アモルファスシリカは、酸点を有するため固体酸触媒として使用することができ、人工的に合成したシリカ触媒と比較し優れた触媒活性を有している。

【0058】
本発明の固体酸触媒は、例えば、フリーデルクラフツ反応触媒(特に、複素環式化合物のアルキル化反応に適用されるフリーデルクラフツ反応触媒)、エポキシ開環反応触媒、アセタール化反応触媒、カルボニルエン反応触媒等として使用でき、特にフリーデルクラフツ反応触媒及びエポキシ開環反応触媒として好適に使用できる。

【0059】
上記エポキシ開環反応としては、エポキシ環を有する化合物のエポキシ環を開環させる反応であれば特に限定されない。当該エポキシ環を有する化合物としては、スチレンオキシド等が挙げられる。

【0060】
上記複素環式化合物のアルキル化反応に適用されるフリーデルクラフツ反応としては、複素環式化合物にアルキル側鎖又はアルキル誘導体側鎖を導入する反応であれば特に限定されない。当該複素環式化合物とは、1又は2個のヘテロ原子を有する5又は6員の複素環を含む化合物を意味し、例えば、インドール、ピロール等が挙げられる。

【0061】
本発明の固体酸触媒を使用した反応における温度、圧力、時間、溶媒の種類、反応系の雰囲気等の反応条件、生成物の単離方法等は、反応の種類や原料等を考慮し適宜設定される。

【0062】
本発明の固体酸触媒は、反応が終了した後の反応混合物から回収し、そのまま又は適切な処理を施した後に、同じ又は異なる反応にリサイクルすることができる。

【0063】
吸着剤
本発明の吸着剤は、上記多孔質アモルファスシリカを含むことを特徴とする。

【0064】
本発明の吸着剤は、上記多孔質アモルファスシリカが優れた酸強度を有することにより、人工的に合成したシリカ触媒と比較して、優れた無機系ガス及び有機系ガスの吸着能を有している。

【0065】
本発明の吸着剤は、好ましくは極性ガス、より好ましくはN2O、NOx、CO2、CO、オレフィン及びアルキン、特に好ましくはN2O、CO2、C2H4及びC2H2の吸着に使用される。

【0066】
オレフィンは、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでも良く、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン及び3-ヘキセンが挙げられ、好ましくはエチレンである。

【0067】
アルキンは、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでも良く、例えば、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン及び3-ヘキシンが挙げられ、好ましくはアセチレンである。

【0068】
有機・無機複合材料
本発明の有機・無機複合材料は、上記多孔質アモルファスシリカを有機基で化学修飾したものであることを特徴とする。

【0069】
本発明の有機・無機複合材料は、このような多孔質アモルファスシリカの表面に存在するSi原子に結合した酸素原子(例えばOH基由来のもの)と、分子内に有機基を有する化合物とを反応させることにより得られる。その結果、多孔質アモルファスシリカに含まれるSi原子に結合した酸素原子が、有機基に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム、リン等と結合した有機・無機複合材料が形成される。

【0070】
このような有機・無機複合材料に含まれる有機基としては、例えば、下記の官能基を有するものが挙げられる。カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、イミド基、シアノ基、イソシアノ基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、イミノ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルコシキ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、スルフィド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホキシド基、複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子、チタン原子及びリン原子。

【0071】
このような官能基を有する有機基が導入された多孔質アモルファスシリカには、後述のように、該有機基に触媒等を固定化でき、触媒・有機・無機3元系複合材料を得ることができる。

【0072】
多孔質アモルファスシリカに含まれるSi原子に結合した酸素原子が、有機基に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム、又はリンのいずれかと結合した有機・無機複合材料は、例えば、多孔質アモルファスシリカと、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、リン系カップリング剤等とを反応させることにより得ることができる。すなわち、多孔質アモルファスシリカをシラン系カップリング剤等で表面処理することにより、多孔質アモルファスシリカの表面とシラン系カップリング剤等とが反応し、シラン系カップリング剤等が有する有機基を多孔質アモルファスシリカに導入することができる。

【0073】
シラン系カップリング剤の作用の一つとして、有機-無機界面の接着改良が知られている。これは、シランカップリング剤が加水分解されてシラノールとなり、部分的に縮合してオリゴマー状態となり、続いて無機質表面に水素結合的に吸着し、これを乾燥することにより、水酸基が脱水縮合反応して化学結合となり、無機材料と有機材料とを強固に接着するものである。

【0074】
シラン系カップリング剤が有する有機基、及び官能基の種類は非常に多くのものが知られており、多孔質アモルファスシリカに有機基を導入する試薬として特に優れている。本発明において、シラン系カップリング剤は、従来公知のものが使用でき、市販品が容易に入手可能である。

【0075】
シラン系カップリング剤としては次の化合物があげられる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のビニル系官能基を有するシラン系カップリング剤;
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のメタクリロキシ系官能基を有するシラン系カップリング剤;
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアクリロキシ系官能基を有するシラン系カップリング剤;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルジエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’-ジメチル-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N,N’-ジメチル-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、N,N’-ジメチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N’-ジメチル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(N-メチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(N-メチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(N-メチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(N-メチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(N,N’-ジメチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N’-ジメチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N’-ジメチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(N,N’-ジメチル-2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、2-アミノエチル-メチルジメトキシシラン、2-アミノエチル-メチルジエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノブチル-メチルジメトキシシラン、4-アミノブチル-メチルジエトキシシラン、6-アミノヘキシルトリメトキシシラン、6-アミノヘキシルトリエトキシシラン、6-アミノヘキシル-メチルジメトキシシラン、6-アミノヘキシル-メチルジエトキシシラン、8-アミノオクチルトリメトキシシラン、8-アミノオクチルトリエトキシシラン、8-アミノオクチル-メチルジメトキシシラン、8-アミノオクチル-メチルジエトキシシラン、4-アミノフェニルトリメトキシシラン、4-アミノフェニルトリエトキシシラン、4-アミノフェニル-メチルジメトキシシラン、4-アミノフェニル-メチルジエトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルメチルジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等のアミノ系官能基を有するシラン系カップリング剤;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジエトキシシラン等のハロゲン原子で置換されたアルキル基がケイ素原子に結合したシラン系カップリング剤;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトエチル-メチルジメトキシシラン、3-メルカプトエチル-メチルジメトキシシラン等のメルカプト系官能基を有するシラン系カップリング剤;
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シラン系カップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン等のイソシアネート系官能基を有するシラン系カップリング剤、
その他、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、臭化3-(トリエトキシシリル)プロピルトリフェニルホスホニウム、臭化3-(トリエトキシシリル)プロピルアンモニウム等。

【0076】
後述のように、本発明の有機・無機複合材料に更に化学修飾を施す場合、これらの中でも、アミノ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、エポキシ基又はハロゲン原子を有するシラン系カップリング剤が好ましい。

【0077】
例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリメトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン等が好ましい。

【0078】
本発明において、シラン系カップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。

【0079】
上記チタネート系カップリング剤は、従来公知のものが使用できる。チタネート系カップリング剤に含まれる有機基の種類も多くのものが知られており、多孔質アモルファスシリカに有機基を導入する試薬として好適に使用できる。

【0080】
チタネート系カップリング剤の具体的化合物としては次のものが挙げられる。
3-アミノプロピルトリエトキシチタン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシチタン、3-メルカプトプロピルトリメトキシチタン、3-クロロプロピルトリエトキシチタン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン、n-オクタデシルトリエトキシチタン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート等。

【0081】
これらの中でも、3-アミノプロピルトリエトキシチタン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシチタン、3-メルカプトプロピルトリメトキシチタン、3-クロロプロピルトリエトキシチタン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン、n-オクタデシルトリエトキシチタンが好ましい。

【0082】
本発明において、チタネート系カップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。

【0083】
上記アルミネート系カップリング剤としては、従来公知のものが使用できる。アルミネート系カップリング剤に含まれる有機基の種類も多くのものが知られており、多孔質アモルファスシリカに有機基を導入する試薬として好適に使用できる。例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。

【0084】
本発明において、アルミネート系カップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。

【0085】
また、上記リン系カップリング剤は、従来公知のものが使用できる。リン系カップリング剤に含まれる有機基の種類も多くのものが知られており、多孔質アモルファスシリカに有機基を導入する試薬として好適に使用できる。例えば、アクリロイルオキシエチルフタルオキシエチルジエチルホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルフタルオキシエチル)ジエチルピロホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルフタルオキシエチル)メチルホスファイト、ジ(メタクリロイルオキシエチルフタルオキシエチル)ホスフェート、ジ(アクリロイルオキシエチルフタルオキシエチル)ピロホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルフタルオキシエチル)ホスファイト、メタクリロイルオキシエチルマレオキシエチルジエチルホスフェート、ジ(アクリロイルオキシエチルマレオキシエチル)ジエチルピロホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルマレオキシエチル)エチルホスファイト、ジ(アクリロイルオキシエチルマレオキシエチル)ホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルマレオキシエチル)ピロホスフェート、ジ(アクリロイルオキシエチルマレオキシエチル)ホスファイト、メタクリロイルオキシエチルスクシンオキシエチルジエチルホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルスクシンオキシエチル)ジメチルピロホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルスクシンオキシエチル)エチルホスファイト、ジ(メタクリロイルオキシエチルスクシンオキシエチル)ホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルスクシンオキシエチル)ピロホスフェート、ジ(メタクリロイルオキシエチルスクシンオキシエチル)ホスファイト、ジ(N-アクリルアミノメチル)ホスファイト、ジ(N-アクリルアミノメチル)ピロホスフェート、ジ(N-アクリルアミノメチル)ホスフェート等を挙げることができる。

【0086】
本発明において、リン系カップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。

【0087】
本発明の有機・無機複合材料は、前記多孔質アモルファスシリカと前記有機基を有する化合物とを反応させることにより得られる。例えば、有機基を有する化合物として、前記種々のカップリング剤を使用する場合、多孔質アモルファスシリカと該カップリング剤とを適当な溶媒中で混合することにより、本発明の有機・無機複合材料が得られる。

【0088】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン等が用いられる。溶媒の使用量は、特に限定されず、適宜選択すれば良い。

【0089】
また、反応温度は-30℃~200℃程度、反応時間は30分間~200時間程度の範囲で適宜選択すればよい。反応生成物である化学修飾された有機・無機複合材料は、通常の分離手段、例えば、ろ過や遠心分離等で単離することができる。

【0090】
本発明の有機・無機複合材料の有機基の担持率は、使用する多孔質アモルファスシリカ、シランカップリング剤等の有機基を含む化合物の種類、反応条件等によって異なるが、有機・無機複合材料中、通常1~30重量%程度、好ましくは5~20重量%とすることができる。なお、本発明における担持率は、元素分析を用いて測定した値である。

【0091】
本発明においては、上記カップリング剤等を用いて多孔質アモルファスシリカに有機基を導入した後に、該有機基に含まれる官能基を利用して、前記有機・無機複合材料に更に化学修飾を施しても良い。例えば、カルボン酸とアミンの縮合によるアミド化反応、カルボン酸とアルコールの縮合によるエステル化反応、エポキシドに対するアミン、アルコール等の求核付加反応、有機ハロゲン化合物に対するアミン、アルコール、チオール等の求核置換反応、α,β-不飽和カルボニル基に対するアミン、チオール等のマイケル付加反応、アルデヒド基とアミノ基の脱水縮合によるイミン形成反応、グリニアール反応やウィティッヒ反応に代表される有機金属反応剤を用いる炭素-炭素結合形成反応、鈴木-宮浦カップリングやオレフィンメタセシスに代表される金属錯体触媒炭素-炭素結合形成反応等によってさらに化学修飾することができる。このような反応により更に化学修飾を施すことによって、シランカップリング剤等に含まれていた官能基を所望の官能基に変換することもできる。

【0092】
触媒・有機・無機3元系複合材料
本発明の触媒・有機・無機3元系複合材料は、上記有機・無機複合材料に触媒を固定化したものである。本発明の有機・無機複合材料の有機基に含まれる官能基、又は上記のように更に化学修飾をすることによって導入された官能基を利用して、有機・無機複合材料に触媒を固定化することができる。尚、本発明において、上記有機・無機複合材料に触媒を固定して得られる材料を、触媒・有機・無機複合材料ということがある。

【0093】
本発明の有機・無機複合材料に固定化できる触媒としては、例えば、酵素、有機触媒、金属錯体触媒等が挙げられる。これらの触媒は、1種単独で固定化しても良いし、2種以上を混合して固定化しても良い。

【0094】
酵素としては、従来公知の酵素が使用できる。本発明において好ましい酵素としては、例えば、加水分解酵素(Hydrolase)、酸化還元酵素(Oxidoreductase)、転移酵素(Transferase)、脱離酵素(Lyase)、異性化酵素(Isomerase)、合成酵素(Ligase)等が挙げられる。

【0095】
加水分解酵素としては、例えば、エステルを加水分解するエステラーゼ、リパーゼ、ペプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼ、サーモライシン、カテプシン、ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、パパイン、キモパパイン、ブロメリン、プロテアーゼ、ヒドロキシニトリルリアーゼ、プロティナーゼ、ジペプチダーゼ等のようなペプチド結合を加水分解するタンパク質分解酵素;α及びβ-グルコシダーゼ、α及びβ-グルカナーゼ、α及びβ-ガラクトシダーゼ、α及びβ-アミラーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ等のような糖のグルコシド結合を加水分解するグルコシダーゼ;ホスホモノエステラーゼ、ホスホジエステラーゼ、ピロホスファターゼ等のようなリン酸結合を加水分解するホスファターゼ;アルギナーゼ、ウレアーゼ、グルタミナーゼ等のようなアミド基を加水分解するアミダーゼ;その他ヌクレアーゼ、ラクトナーゼ、コラゲナーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ヒドロキシニトリルリアーゼ等が挙げられる。

【0096】
また、酸化還元酵素としては、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸シンターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、フェレドキシンヒドロゲナーゼ、スーパーオキサイドジスムターゼ、チトクロームP450等が挙げられる。

【0097】
転移酵素としては、例えば、トランスホスホリダーゼ、トランスグルコシダーゼ、トランスペプチダーゼ、トランスアミダーゼ、トランスグルタミナーゼ、トランスアルドラーゼ、トランスケトラーゼ、ホスホリラーゼ、クレアチンキナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコサミントランスアセチラーゼ、アミノアシルトランスフェラーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、6-ホスホフルクトキナーゼ等が挙げられる。

【0098】
脱離酵素としては、例えば、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ヒスチジンデカルボキシラーゼ、アルドラーゼ、クエン酸(si)-シンターゼ、ATPクエン酸(pro-3S)リアーゼ、トリプトファナーゼ、フマル酸ヒドラターゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、エノラーゼ、エノイル-CoAヒドラターゼ、アスパラギ酸アンモニア-リアーゼ等が挙げられる。

【0099】
異性化酵素としては、例えば、リブロースリン酸3-エピメラーゼ、UDPグルコース4-エピメラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、ホスホグリセリン酸ホスホムターゼ等が挙げられる。

【0100】
合成酵素としては、例えば、チロシル-tRNAシンテターゼ、アシル-CoAシンテターゼ、アミドシンテターゼ、ペプチドシンテターゼ、シクロリガーゼ、アセチル-CoAカルボキシラーゼ等が挙げられる。

【0101】
その他、アルドラーゼ、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、カルボニル還元酵素等が挙げられる。

【0102】
これらの酵素の中でも、本発明においては、リパーゼ、カルボニル還元酵素等が好ましい。

【0103】
これら酵素は、動物由来、植物由来、又は微生物由来のいずれであっても良く、また、精製品が好ましいが、粗精製物であっても良い。

【0104】
本発明の有機・無機複合材料への酵素の担持は、通常の固定化方法を採用すれば良く、例えば、有機・無機複合材料と酵素をリン酸緩衝液等の溶媒中で混合することにより容易に行うことができる。

【0105】
本発明の触媒・有機・無機複合材料において、触媒が酵素である場合は、有機・無機複合材料の有機基中に存在する官能基と酵素とが水素結合等の非共有結合(分子間相互作用)、吸着等により固定化される。また、ゾル-ゲル法やアルギン酸カルシウムを用いて、酵素を物理的に内包させて固定化してもよい。

【0106】
本発明の酵素・有機・無機複合材料を含む固定化酵素触媒における酵素量は、使用する酵素及び有機・無機複合材料によって大きく異なるが、酵素・有機・無機複合材料中、通常1~10重量%程度、好ましくは3~5重量%程度とすることができる。尚、本発明において、酵素量は、Bradford法により測定した値である。

【0107】
上記有機触媒は、金属元素を含まず、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の元素からなる触媒作用を有する化合物である。本発明においては、上記有機・無機複合材料の有機基に存在する官能基を利用して、有機触媒を導入することができる。また、シラン系カップリング剤の一部であるトリアルコキシシリル基を有機触媒に結合した後、多孔質アモルファスシリカと反応させて調製することもできる。有機触媒としては従来公知のものが使用できる。このような有機触媒としては、例えば、不斉有機触媒等が挙げられる。

【0108】
また、上記金属錯体触媒も従来公知のものが使用できる。本発明においては、金属錯体触媒(種々の有機金属触媒、金属酸化物等も含む)は、有機・無機複合材料の有機基中に存在する官能基と非共有結合(分子間相互作用)、共有結合、吸着、配位結合等により固定化される。たとえば、3-[2-(2-アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン等のキレート性シランカップリング剤を作用させて調製した多孔質アモルファスシリカには、Pt、Pd、Co、Hg等の遷移金属を配位させることができる。また、リン系配位子に官能基を導入しておき、有機・無機複合材料の有機基に存在する官能基と結合させた後に、Pt、Pd、Ru、Rh等の遷移金属を配位させることもできる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0110】
[バイオジナス・シリカの製造]
(1)乾燥し粉末状になったレプトスリックス・オクラセアが生成したチューブ状バイオジナス酸化鉄を35% HCl水溶液に浸漬し、攪拌しながら3日間放置した。
(2)吸引ろ過で沈殿物を回収し、蒸留水で数回洗浄した後に室温減圧下で乾燥した。
【実施例】
【0111】
図1にバイオジナス・シリカの製造方法のフローチャートを示す。
【実施例】
【0112】
[バイオジナス・シリカのキャラクタリゼーション]
(1)-(2)の手順で得られた生成物のキャラクタリゼーションをXRD、SEM/EDX、TEM、TG/DTA、N2吸着法を用いて行った。
【実施例】
【0113】
図2に生成物のXRDパターンを示す。2θ = 23°(d = 3.9Å)付近に極めてブロードなピークを示すことから、生成物がアモルファスシリカであることがわかった(Quartzは初期混入不純物)。そのため、バイオジナス酸化鉄を強酸処理することでアモルファスシリカを得ることに成功した。本実施例では、珪藻や植物由来のバイオシリカと区別するために、バクテリア由来のこのサンプルを“バイオジナス・シリカ”と命名した。
【実施例】
【0114】
図3にバイオジナス・シリカのSEM写真、図4にTEM写真を示す。バイオジナス・シリカはチューブ形状を維持しておらず、球状微粒子の凝集体となっていることがわかった。また、その粒子径はSEMで確認する限り、直径20-50 nm程度であることがわかった。さらにTEMにより一次粒子径を観察したところ、バイオジナス酸化鉄の一次粒子(3 nm)よりも大きく、SEMの結果と同様に20-50 nm程度であることが確認された。
【実施例】
【0115】
N2吸着法により比表面積を算出した。バイオジナス・シリカの比表面積は540 m2/gであり、バイオジナス酸化鉄の比表面積280 m2/gの約2倍の大きさを有することがわかった。図5にバイオジナス・シリカの細孔径分布を示す。図5左に示すようにメソ孔領域には細孔半径3 nm以下にバイオジナス酸化鉄よりも多数の細孔が存在することが明らかとなった。また、バイオジナス酸化鉄には存在しないマイクロ孔が、細孔直径0.6 nm及び1.4 nm付近に多数存在していることを見出した(図5右)。
【実施例】
【0116】
バイオジナス・シリカの熱重量変化をTG-DTAにより測定し、その重量減からバイオジナス・シリカの化学組成を推定した。昇温速度10 K/minで1000℃まで大気中で昇温し、2 h保持した。重量減が全てH2Oの脱離によるものとし、重量減が飽和に至ったところでバイオジナス・シリカはSiO2の組成であると仮定し、バイオジナス・シリカの化学組成を計算により評価した。その結果、化学吸着水を含んだバイオジナス・シリカの化学組成はSiO2・0.4H2Oであることがわかった。ICPで残留Fe量及びP量を調べたところSiに対してFeは0.66at%、Pは0.02at%しか存在せず、バイオジナス・シリカはほぼ純粋なシリカであることが明らかとなった。
【実施例】
【0117】
[固体触媒としての酸点の評価]
赤外線吸収(IR)法は、固体表面上の水酸基の真の状態を直接観測するのに有用な手段であり、さらに、プローブ分子を用いることにより表面水酸基の性質を明らかにすることが可能である。そこで、本実施例では、塩基プローブであるピリジンガスを用いて、バイオジナス・シリカの表面水酸基の性質を評価した。
【実施例】
【0118】
室温で真空排気処理したバイオジナス・シリカについて、室温でピリジンガスに曝し、その後、室温で真空排気処理したときに測定したIRスペクトルを、また、比較試料として用いたシリカ物質(ここでは、アエロジル200(日本アエロジル(株)社製))について同様に測定したものを図6に示す。ピリジンに暴露したバイオジナス・シリカについて、ブレンステッド酸特性を示す酸点(ブリッジング水酸基)に吸着したピリジンに帰属できる特徴的なバンドが1640及び1548 cm-1に出現した。これらのバンドは、アエロジル200についてはほとんど観測されない。したがって、バイオジナス・シリカ上には通常のシリカ物質とは大きく異なり、ブレンステッド酸に類似した酸としての性質を示す種が存在していることがわかった。また、バイオジナス・シリカ上の酸点に吸着したピリジンを完全に脱離させるためには673 K以上という高温での真空熱処理が必要であることがわかった(図7)。このことからも、バイオジナス・シリカ上には強い酸点が存在しているといえる。
【実施例】
【0119】
室温で前処理したバイオジナス・シリカ、アエロジル200及びMCM-41について(試料量:約8 mg)、室温で一定圧力のピリジンガス(導入圧力:約28 Pa)に曝し、その後、室温で真空排気したときのスペクトルを測定した。ピリジン吸着後室温で真空排気したときに得られたスペクトルからピリジン吸着前に室温で真空排気処理した試料について得られたスペクトルを差し引くことによって差スペクトルを得た。ここで、差スペクトルで見られる1548及び1640 cm-1付近のバンドについて、カーブフィッティング法により、それぞれのバンドを一成分からなるバンドでフィットさせることによりフィッティングスペクトルを得た。カーブフィッティングにはGaussian関数を用いた。このような方法を用いることにより、それぞれの成分バンドの吸収位置やバンドの面積を求めることができる。そして、Miyataら(Appl. Spectrosc. 1989, 43, 522.)によって開発されたプログラムを用いて1548及び1640 cm-1付近のバンドについて、それぞれのバンドの面積を求めた(図8)。これらのバンドは、ブレンステッド酸に類似した酸特性を有するサイト上に吸着したピリジンに帰属できる。したがって、各試料中のブレンステッド酸に類似した酸特性を有するサイト上に吸着したピリジンの量は、直接、1548及び1640 cm-1バンドの面積に反映するため、これらのバンド面積値は、ブレンステッド酸に類似した酸特性を有するサイトの量(或いは強さ)に、直接、相当すると考えることができる。図8は、バイオジナス・シリカの酸強度がアエロジル200や酸特性を有することで知られているMCM-41のそれに比べ著しく高いことをはっきりと示している(バイオジナス・シリカの酸強度: 0.4 Band area / a. u. 以上; アエロジル200の酸強度: 0.02 Band area / a. u.;MCM-41の酸強度: 約0.31 Band area / a. u.)。
【実施例】
【0120】
[バイオジナス・シリカを固体酸触媒として用いた有機合成反応]
試験例1
次式に従い、酸触媒下で進行するエポキシドのアルコールによる開環反応を行った。
【実施例】
【0121】
【化1】
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【実施例】
【0122】
スチレンオキシド(0.12 mL, 1.05 mmol)をメタノール(2 mL)に溶解し、撹拌下、バイオジナス・シリカ 50 mgを室温で加えた。この懸濁液を室温下、33時間撹拌反応を行った。反応終了後、溶媒であるメタノールをロータリーエバポレーターで減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。生成物を回収し、プロトンNMRにより目的生成物が得られていることを確認した。目的生成物収量124 mg、収率78%であった。
【実施例】
【0123】
比較のため、人工的に合成したシリカ触媒であるアエロジル200 (日本アエロジル(株)社製)を用いて同じ反応を行った。アエロジル200は48時間反応を行ったが、生成物は痕跡量しか得られず、ほとんど反応は進行しなかった。この結果から本発明のバイオジナス・シリカが既存シリカゲルよりも優れた触媒活性を持つことが明らかとなった。
【実施例】
【0124】
試験例2
次式に従い、酸触媒下で進行するアセタール化反応を行った。
【実施例】
【0125】
【化2】
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【実施例】
【0126】
グリセリン(525 mg, 5.71 mmol)とアセトン(10 mL)の混合物にバイオジナス・シリカ50 mgを加え、室温下で3日間撹拌し、反応を行った。反応終了後、アセトンをロータリーエバポレーターで減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を回収し、プロトンNMRにより目的生成物が得られていることを確認した。目的生成物収量463 mg、収率61%であった。
【実施例】
【0127】
試験例3
次式に従い、酸触媒下で進行するフリーデルクラフツ(Friedel-Crafts)反応を行った。
【実施例】
【0128】
【化3】
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【実施例】
【0129】
インドール(50 mg, 0.427 mmol)をジクロロメタン 2 mLに溶解し、メチルビニルケトン(0.10 mL, 1.23 mmol)を加え、その後、バイオジナス・シリカ25 mg を加えた。室温下で5日間撹拌し、反応を行った。反応終了後、反応溶液をそのままシリカゲルクロマトグラフィーにのせ、精製した。目的生成物を分離、回収し、プロトンNMRにより目的生成物が得られていることを確認した。目的生成物収量67 mg、収率84%であった。
【実施例】
【0130】
比較のため、人工的に合成したシリカ触媒であるアエロジル200(日本アエロジル(株)社製)を用いて同じ反応を行った。目的生成物収量は5%であった。この結果から本発明のバイオジナス・シリカが既存シリカゲルよりも優れた触媒活性を持つことが明らかとなった。
【実施例】
【0131】
以上の試験例により、バイオジナス・シリカが有機合成において汎用性の高い固体酸触媒となることが明らかとなった。
【実施例】
【0132】
製造例1(シラン系カップリング剤を用いたバイオジナス・シリカの化学修飾)
バイオジナス・シリカ(99 mg)を反応器に入れて窒素置換し、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(50μL)、及び乾燥トルエン(2 mL)を入れて90℃で20時間加熱した。反応混合物をエバポレータで濃縮後、真空乾燥して修飾バイオジナス・シリカを得た。
【実施例】
【0133】
【化4】
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【実施例】
【0134】
製造例2(Burkholderia cepacia由来リパーゼ(BCL)の修飾バイオジナス・シリカへの固定化)
バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)由来リパーゼ(BCL)(6.8 mg)を含む10 mMリン酸緩衝液(14 mL)と修飾バイオジナス・シリカ(108 mg)を遠心管に入れ、25℃で22時間振とう(125 rpm)した。遠心分離(15,000 rpm, 10分)により得られた沈殿物を真空乾燥すると、修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素BCLが得られた。
【実施例】
【0135】
上記の遠心分離において回収した上清と固定化に用いた酵素水溶液中のタンパク量をBradford法により定量することにより、リパーゼの担持率を算出したところ、担持された酵素量は5.2%(w/w)であった。
【実施例】
【0136】
試験例4(修飾バイオジナス・シリカ固定化リパーゼを用いたラセミ体アルコールの速度論的光学分割)
修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素を用いたキラルアルコールの速度論的光学分割(1)
【実施例】
【0137】
【化5】
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【実施例】
【0138】
1-フェニルエタノール1a(60.2 mg, 0.49 mmol)、修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素BCL(3.8 mg)、及び乾燥ジイソプロピルエーテル(5 mL)を試験管に入れ、30℃で30分間撹拌した。酢酸ビニル(95μL, 1.0 mmol)を加えて反応を開始した。30℃で1時間撹拌した後、反応溶液をセライトでろ過し、溶媒を留去して粗生成物を得た。キラルカラムを取り付けたガスクロマトグラフィー(CP-cyclodextrin-β-2,3,6-M-19, Inj. 250℃, Col. 95℃, Det. 220℃)により光学純度を決定した。
【実施例】
【0139】
(S)-1a:光学純度 >99% ee
(R)-2a:光学純度 >99% ee
修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素を用いたキラルアルコールの速度論的光学分割(2)
【実施例】
【0140】
【化6】
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【実施例】
【0141】
1-(2-ナフチル)エタノール1b(86.2 mg, 0.50 mmol)、修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素BCL(3.8 mg)、及び乾燥ジイソプロピルエーテル(5 mL)を試験管に入れ、30℃で30分間撹拌した。酢酸ビニル(92.5μL, 1.00 mmol)を加えて反応を開始した。30℃で1時間撹拌した後、反応溶液をセライトろ過し、溶媒を留去して粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(5:1))により、エステル体とアルコール体を単離した。キラルカラムを取り付けたHPLCにより光学純度を決定した。
【実施例】
【0142】
(S)-1b:
単離収率51%; 光学純度 81% ee
[α]19D= -40.6 (c 1.02, CHCl3)
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) 1.59 (d, J = 6.0 Hz, 3H), 1.88 (s, 1H), 5.08 (q, J = 6.0 Hz, 1H), 7.45-7.53 (m, 3H), 7.82-7.85 (m, 4H)
HPLC: Chiralcel OD-H, hexane/i-PrOH (98:2), 流速 0.5 mL/分, 検出波長 254 nm, (S)-1b 95.8分, (R)-1b 100.8分。
【実施例】
【0143】
(R)-2b:
単離収率38%; 光学純度 >99% ee
[α]19D= +119.7 (c 1.00, CHCl3)
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) 1.63 (d, J = 8.3 Hz, 3H), 2.10 (s, 3H), 6.05 (q, J = 8.3 Hz, 1H), 7.48-7.49 (m, 3H), 7.81-7.85 (m, 4H)
HPLC: Chiralcel OD-H, hexane/i-PrOH (30:1), 流速 0.5 mL/分, 検出波長 254 nm, (R)-2b 11.5分, (S)-2b 13.2分。
【実施例】
【0144】
修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素を用いたキラルアルコールの速度論的光学分割(3)
【実施例】
【0145】
【化7】
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【実施例】
【0146】
1-(2-ナフチル)プロパノール1c(93.2 mg, 0.50 mmol)、修飾バイオジナス・シリカ固定化酵素BCL(3.8 mg)、及び乾燥ジイソプロピルエーテル(5 mL)を試験管に入れ、30℃で30分間撹拌した。酢酸ビニル(92.5μL, 1.00 mmol)を加えて反応を開始した。30℃で5時間撹拌した後、反応溶液をセライトろ過し、溶媒を留去して粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(5:1))により、エステル体とアルコール体を単離した。キラルカラムを取り付けたHPLCにより光学純度を決定した。
【実施例】
【0147】
(S)-1c:
単離収率59%; 光学純度 53% ee
[α]22D= -31.9 (c 1.05, CHCl3)
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) 0.95 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.83-1.95 (m, 3H), 4.78 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 7.45-7.49 (m, 3H), 7.79-7.85 (m, 4H)
HPLC: Chiralcel OD-H, hexane/i-PrOH (9:1), 流速 0.5 mL/分, 検出波長 254 nm, (S)-1c 20.9分, (R)-1c 23.4分。
【実施例】
【0148】
(R)-2c:
単離収率28%; 光学純度 >99% ee
[α]19D= +102.0 (c 1.05, CHCl3)
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) 0.91 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.91-2.03 (m, 2H), 2.10 (s, 3H), 5.83 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 7.45-7.48 (m, 3H), 7.78-7.84 (m, 4H)
HPLC: Chiralcel OD-H, hexane/i-PrOH (200:1), 流速 0.5 mL/分, 検出波長 254 nm, (S)-2c 24.4分, (R)-2c 26.5分。
【実施例】
【0149】
製造例5
バイオジナス・シリカの場合と同じ実験操作でToyonite 200 (東洋電化)、バイオジナス酸化鉄、人工酸化鉄(戸田工業)の化学修飾を行い、リパーゼを固定化して固定化酵素を調製した。それらを用いて、1-(2-ナフチル)エタノール1bの速度論的光学分割を行うことにより下表の結果を得た。単位時間あたりの変換率(TTN/h)は酵素活性を示す指標であるが、バイオジナス・シリカ固定化リパーゼが最も高い値を示した。
【実施例】
【0150】
【化8】
JP0005975982B2_000009t.gif
【実施例】
【0151】
【表1】
JP0005975982B2_000010t.gif
【実施例】
【0152】
試験例6
試料の前処理は573 Kで2時間、1.3 mPaの下、真空加熱処理することにより行い、細孔中に存在する物理吸着水を予め除去した。前処理後の試料について、室温で種々のガスの吸着等温線を容量法により測定した。
【実施例】
【0153】
様々なガスに対するバイオジナス・シリカの吸着量測定の結果を図9(無機系ガス)に示す。この図から明らかなように、バイオジナス・シリカは亜酸化窒素(N2O)や二酸化炭素(CO2)などの地球温暖化を誘起するガスに対して優れた吸着能を有しており、シリカ物質であるアエロジル200のそれらと比較しても吸着量で顕著な差がみられる。更に、図10は、有機系ガスに対する吸着量測定の結果を示している。メタン(CH4) < エチレン(C2H4) < アセチレン(C2H2)の順で吸着能は高くなる。無機系ガスと同様に有機系のガスに対してもバイオジナス・シリカはアエロジル200と比べ吸着量で優位な差がみられる。これらのガスに対するバイオジナス・シリカの優れた吸着能は、いずれも強い酸サイト(これが吸着サイトとなる)の存在による。N2OガスやC2H2ガスについて、それぞれ医療分野や化学工業分野において高い吸着選択性を有する材料開発の模索が行われている。バイオジナス・シリカは天然由来の安全な物質であるという利点があり、本結果は、少なくとも上記ガスに対する吸着剤としての応用の可能性を示唆している。


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9