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明細書 :セレン酸還元活性を示すタンパク質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6011980号 (P6011980)
登録日 平成28年9月30日(2016.9.30)
発行日 平成28年10月25日(2016.10.25)
発明の名称または考案の名称 セレン酸還元活性を示すタンパク質
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/02        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12P   3/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/02
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 3/00 Z
請求項の数または発明の数 22
全頁数 15
出願番号 特願2013-505767 (P2013-505767)
出願日 平成23年9月21日(2011.9.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成22年9月25日 「第62回 日本生物工学会大会講演要旨集 第107頁 2P-2004」にて発表
特許法第30条第1項適用 平成22年10月15日 「日本水処理生物学会誌 別巻 第30号 第15頁 A-05」にて発表
国際出願番号 PCT/JP2011/071442
国際公開番号 WO2012/127716
国際公開日 平成24年9月27日(2012.9.27)
優先権出願番号 2011065289
優先日 平成23年3月24日(2011.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年9月19日(2014.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】山下 光雄
【氏名】池 道彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】長谷川 茜
参考文献・文献 特開2010-142166(JP,A)
三輪恵美子他,日本水処理生物学会誌,2010年,別巻第30号,第15頁
Biochem. J.,2007年,Vol.408, No.1,pp.19-28
阪口利文,Journal or Japanese Society for Extremophiles,2010年,Vol.9, No.2,pp.116-128
Appl. Environ. Microbiol.,2003年,Vol.69, No.9,pp.5585-5592
Int. J. Syst. Bacteriol.,1993年,Vol.43, No.1,pp.135-142
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12N 9/02
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号2のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号2のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
【請求項2】
以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号4のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号4のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
【請求項3】
以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号6のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号6のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
【請求項4】
以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号8のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号8のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
【請求項5】
請求項1記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項6】
以下からなる群より選択される、請求項5記載の核酸。
(a)配列番号1の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号1のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
【請求項7】
請求項2記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項8】
以下からなる群より選択される、請求項7記載の核酸。
(a)配列番号3の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号3のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
【請求項9】
請求項3記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項10】
以下からなる群より選択される、請求項9記載の核酸。
(a)配列番号5の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
【請求項11】
請求項4記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項12】
以下からなる群より選択される、請求項11記載の核酸。
(a)配列番号7の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号7のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
【請求項13】
請求項5又は6に記載の核酸を含む組み換えベクター。
【請求項14】
請求項7又は8に記載の核酸を含む組み換えベクター。
【請求項15】
請求項9又は10に記載の核酸を含む組み換えベクター。
【請求項16】
請求項11又は12に記載の核酸を含む組み換えベクター。
【請求項17】
請求項5又は6に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
【請求項18】
請求項7又は8に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
【請求項19】
請求項9又は10に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
【請求項20】
請求項11又は12に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
【請求項21】
請求項1記載のタンパク質、請求項2記載のタンパク質、請求項3記載のタンパク質、及び請求項4記載のタンパク質を宿主細胞において発現させることを含む、セレン酸の還元方法。
【請求項22】
請求項5又は6記載の核酸、請求項7又は8記載の核酸、請求項9又は10記載の核酸、及び請求項11又は12記載の核酸を宿主細胞に導入することによって、請求項1記載のタンパク質、請求項2記載のタンパク質、請求項3記載のタンパク質、及び請求項4記載のタンパク質を宿主細胞において発現させる、請求項21に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セレン酸還元活性を示すタンパク質、それをコードする遺伝子、それらを使用するセレン酸の還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微量金属(レアメタル)の一種であるセレンは、生物にとって必須元素であるが、水溶性のセレン化合物(セレン酸、亜セレン酸など)は生物に対する毒性を有する。セレンは、コピー機、ガラスの着色など幅広い用途に使用されているので、その供給源の確保は重要である。また、廃水、廃棄物中のセレン化合物の人の健康および生態系への影響が問題となっている。セレン酸の無毒化および除去の方法としては、樹脂吸着、電気化学的方法などが従来より検討されているが、効率、コストなどの問題から実用には至っていなかった。また、このような方法によってセレンを回収して再利用することはできなかった。
【0003】
本発明者らは、セレン化合物の生物学的処理方法の開発を目指して、Pseudomonas stutzeri NT-I株を単離した(特許文献1)。Pseudomonas stutzeri NT-I株は、セレン酸を亜セレン酸に効率的に還元し、さらに亜セレン酸を元素態セレンへ還元する能力を有する。元素態セレンは水に不溶性であり、無毒であるので、Pseudomonas stutzeri NT-I株を使用すれば、比較的安価に、セレン化合物を含有する廃水などを無毒化し、そこからセレンを回収して再利用できる可能性がある。微生物を利用したセレン化合物の処理およびセレンの回収をより効率的に行うためには、処理条件の検討や設備の開発に加えて、セレン化合物の還元に関与する分子機構を明らかにする必要がある。しかし、Pseudomonas stutzeri NT-I株については、セレン化合物の還元に関与する分子機構は明らかになっていない。
【0004】
一方、特許文献2には、グラム陽性細菌Bacillus selenatarsenatis SF-1株に由来するセレン酸還元活性を増強する能力を有するタンパク質、それをコードする遺伝子、それらを使用するセレン酸の還元方法が記載されている。Pseudomonas stutzeri NT-I株では好気・嫌気両条件下でセレン酸を還元し、菌体外にセレンを生成し、亜セレン酸の還元能力が大きいのに対し、Bacillus selenatarsenatis SF-1株は嫌気条件下でセレン酸を還元し、菌体内にセレンが蓄積し、亜セレン酸の還元能力が小さいという、相違点がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-142166号公報
【特許文献2】国際公開WO2010/070968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、セレン酸還元活性を示すタンパク質、それをコードする遺伝子、それらを使用するセレン酸の還元方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、Pseudomonas stutzeri NT-I株からセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする遺伝子を同定することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の態様は以下に関する。
[1] 以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号2のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号2のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
[2] 以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号4のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号4のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
[3] 以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号6のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号6のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
[4] 以下からなる群より選択されるタンパク質:
(a)配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号8のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
(c)配列番号8のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質。
[5] [1]記載のタンパク質をコードする核酸。
[6] 以下からなる群より選択される、[5]記載の核酸。
(a)配列番号1の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号1のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
[7] [2]記載のタンパク質をコードする核酸。
[8] 以下からなる群より選択される、[7]記載の核酸。
(a)配列番号3の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号3のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
[9] [3]記載のタンパク質をコードする核酸。
[10] 以下からなる群より選択される、[9]記載の核酸。
(a)配列番号5の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
[11] [4]記載のタンパク質をコードする核酸。
[12] 以下からなる群より選択される、[11]記載の核酸。
(a)配列番号7の塩基配列からなる核酸;
(b)配列番号7のヌクレオチド配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸。
[13] [5]又は[6]に記載の核酸を含む組み換えベクター。
[14] [7]又は[8]に記載の核酸を含む組み換えベクター。
[15] [9]又は[10]に記載の核酸を含む組み換えベクター。
[16] [11]又は[12]に記載の核酸を含む組み換えベクター。
[17] [5]又は[6]に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
[18] [7]又は[8]に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
[19] [9]又は[10]に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
[20] [11]又は[12]に記載の核酸を宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
[21] [1]記載のタンパク質、[2]記載のタンパク質、[3]記載のタンパク質、及び[4]記載のタンパク質を宿主細胞において発現させることを含む、セレン酸の還元方法。
[22] [5]又は[6]記載の核酸、[7]又は[8]記載の核酸、[9]又は[10]記載の核酸、及び[11]又は[12]記載の核酸を宿主細胞に導入することによって、[1]記載のタンパク質、[2]記載のタンパク質、[3]記載のタンパク質、及び[4]記載のタンパク質を宿主細胞において発現させる、[13]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、セレン酸還元活性を示すタンパク質、それをコードする遺伝子、それらを使用するセレン酸の還元方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、トランスポゾン変異とinverse PCRを示す。
【図2】図2は、0.5mMのセレン酸を含むTSBプレート上での変異株によるセレン酸還元を示す。
【図3】図3は、1mMのセレン酸または亜セレン酸を含む液体培地におけるPseudomonas stutzeri NT-I株の野生株及び変異株を24時間培養したときのセレン酸還元を示す。
【図4】図4は、NT-IAM2及びNT-IAM4ゲノムにおけるmini-Tn5挿入部位の隣接領域を示す。
【図5】図5は、NT-IAM3ゲノムにおけるmini-Tn5挿入部位の隣接領域を示す。
【図6】図6は、SerABDCの組み立てと輸送の模式図を示す。
【図7】図7は、T. selenatis、P. stutzeri NT-I、B. selenatarsenatis SF-1のセレン酸還元酵素遺伝子オペロンの構成の比較を示す。
【図8】図8は、serABDC遺伝子を含むpGEM-Teasyベクター(左側)又はpGEM-Teasyベクターのみ(右側)を大腸菌Escherichia coli DH5α株に導入した形質転換体の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において使用する「セレン化合物」なる用語は、セレンを含有する化合物を指す。セレン化合物の例としてはセレン酸、亜セレン酸などが挙げられる。本明細書において使用する「元素態セレン」なる用語は、他の元素と化合物を形成していない元素の形態のセレンを指す。

【0012】
本明細書において使用する「セレン酸還元活性」なる用語は、セレン酸を亜セレン酸に還元する活性を指す。本明細書において使用する「セレン酸還元酵素」なる用語は、セレンの亜セレン酸への還元を触媒するタンパク質を指す。本明細書において使用する「亜セレン酸還元活性」なる用語は、亜セレン酸を元素態セレンに還元する活性を指す。本明細書において使用する「亜セレン酸還元酵素」なる用語は、亜セレン酸の元素態セレンへの還元を触媒するタンパク質を指す。

【0013】
Pseudomonas stutzeri NT-I株は、セレン酸還元活性、および亜セレン酸還元活性を有することが知られている(特許文献1)。セレン酸還元活性は、セレン酸から生成される亜セレン酸を定量することによって測定することができる。亜セレン酸還元活性は、亜セレン酸から生成される元素態セレンを定量することによって測定することができる。核酸にコードされるタンパク質が有するセレン酸還元活性は、例えば、この遺伝子を、亜セレン酸還元活性を有することが知られているEscherichia coli(Bebien, M. et al., Microbiology, 148:3865-3872 (2002))に導入した際に元素態セレンが生成することを、セレン酸含有培地上でのコロニーによる赤色の呈色を観察することによって確認することができる。

【0014】
本発明のタンパク質は、NT-I株由来のSerA、SerB、SerD、及びSerCであるが、serAの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号1及び2に示し、serBの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号3及び4に示し、serDの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号5及び6に示し、serCの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号7及び8に示す。

【0015】
NT-I株のserABDCはORFの連続性からオペロンであることが推測される。Blastx解析により、SerAはモリブデンを含むcatalytic subunit、SerBは鉄-硫黄クラスターを含むfour cluster protein subunit、SerDはモリブデン酵素の組み立てに関与するシャペロンたんぱく質、SerCはヘムを含む水溶性タンパク質であることが示唆された。この構成はThauera selenatisのセレン酸還元酵素遺伝子serABDCと酷似している。一方で、Bacillus selenatarsenatisのセレン酸還元酵素遺伝子srdBCAは、srdBが鉄-硫黄クラスターを含むfour Cluster protein subunit、srdCが膜貫通領域を持つmembrane anchor protein subunit、srdAがモリブデンを含むcatalytic subunitをそれぞれコードしており、serABDCオペロンとはORFの順序が異なり、また、srdBCAオペロンにはシャペロンたんぱく質をコードするORFがない点が異なっている(図7)。

【0016】
SerAは推定分子量103 kDaで、モリブデンを含むcatalytic subunitであると推測される。このサブユニットは細菌のモリブデン酵素に広く見出されるもので、セレン酸のような電子受容体に電子を与え、還元する反応を直接的に触媒していると考えられている。このサブユニットは、一般的にモリブデンの他に鉄-硫黄クラスターの一種である[4Fe-4S]クラスターを持っていることが知られている。NT-I株のSerAについても、そのアミノ酸配列上に[4Fe-4S]クラスター結合モチーフを構成すると推測されるCys77、Cys81、Cys115、Cys122、の4つのシステイン残基が見出されたことから、セレン酸還元を触媒するcatalytic subunitとして機能していると推測される。

【0017】
SerBは推定分子量37 kDaで、鉄-硫黄クラスターを含むfour cluster protein subunitであると推測される。このサブユニットは細菌のモリブデン酵素に広く見出されるもので、電子供与体から受け取った電子をcatalytic subunitに受け渡す役割を持つと考えられている。このサブユニットは一般的に4つの鉄-硫黄クラスター(FS1 - FS4)を含むことが知られている。NT-I株のSerBについても、そのアミノ酸配列上に鉄-硫黄クラスター結合モチーフを構成すると推測されるFS1 : CLGCHTCTMACK(アミノ酸15 - 26)、FS2 : CNHCSNPACLAACP(アミノ酸134 - 147)、FS3 : CKGYRYCVKACP(アミノ酸167 - 178)、FS4 : CIGCYPRVEKGEAPACVKQCS(アミノ酸194 - 214)の4つのモチーフが見出されたことから、4つの鉄-硫黄クラスターを持つと推測される。また、FS1、FS2、FS4は4つのシステイン残基を含んでいるが、FS3は3つのシステイン残基を含むことから、4つの鉄-硫黄クラスターのうち3つは[4Fe-4S]クラスター、残る1つは[3Fe-4S]クラスターであることが推測される。これは、B. selenatarsenatis SF-1のSrdBが4つの[4Fe-4S]クラスターを含んでいることと異なっている。

【0018】
SerDは推定分子量22 kDaで、モリブデン酵素の組み立てに関わるシャペロンたんぱく質であると推測される。このようなたんぱく質は最終的なモリブデン酵素の複合体には加わらないが、catalytic subunitの持つtwin arginine translocation signal peptideに会合することにより未成熟のcatalytic subunitが細胞質から細胞膜外に防ぎ、モリブデン補因子が正常にcatalytic subunitに挿入されるとともに脱会合することによりcatalytic subunitの細胞膜外への輸送を許可するという働きを持つ。B. selenatarsenatis SF-1においてはこのような働きを持つたんぱく質は見出されていない。

【0019】
SerCは推定分子量26 kDaで、ヘムを含む水溶性タンパク質であると推測される。モリブデン酵素は膜貫通領域を含むサブユニットによって細胞膜に結合されているものが多く、B. selenatarsenatis SF-1のSrdBCAもこのタイプであると推定されるが、SerCは水溶性タンパク質であることから、NT-I株のSerABCはペリプラズム領域に存在する水溶性酵素であることが推測される。

【0020】
以下の実施例の表3に示す通り、NT-I株のserABDC構造遺伝子、及び推測されるアミノ酸配列はThauera selenatisのものと83~95%の高い相同性を示す(表3)。なお、アミノ酸配列の同一性の算出にはBLAST program(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)を使用した。

【0021】
本発明によれば、
配列番号2のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;
配列番号4のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;
配列番号6のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;および
配列番号8のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質:
も有用である。

【0022】
上記における「1もしくは数個のアミノ酸」とは、例えば1から10個のアミノ酸、好ましくは1から8個のアミノ酸、より好ましくは1から5個のアミノ酸、さらに好ましくは1から3個のアミノ酸を意味する。

【0023】
さらに本発明によれば、
配列番号2のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;
配列番号4のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;
配列番号6のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;及び
配列番号8のアミノ酸配列と98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質;
も有用である。

【0024】
本発明においては、上記のようなセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸が使用される。1つの実施態様において、この核酸は配列番号1、3、5または7の塩基配列からなる核酸である。別の実施態様において、本発明の核酸は、配列番号1、3、5または7の塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつそれぞれ所定のタンパク質と組み合わせた場合にセレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする核酸である。本明細書において使用する「ストリンジェントな条件」なる用語は、緊縮なハイブリダイゼーションの条件をさす。

【0025】
本発明のセレン酸の還元方法において、セレン酸還元活性を示すタンパク質を宿主細胞において発現させる。宿主細胞としては、任意の細胞を使用することができるが、セレン化合物の存在下で生存できる細菌が好ましい。1つの実施態様において、セレン酸還元活性を示すタンパク質の発現は、このタンパク質をコードする核酸を宿主細胞に導入することによって行われる。この目的のためには、組換えDNA技術が確立されている細菌を宿主として使用することが好ましい。そのような細菌の例としては、限定するものではないが、Escherichia coli、Bacillus subtilisなどが挙げられる。核酸の導入には、選択された宿主細胞において複製可能なベクターが使用される。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルスなどに由来するものが使用できる。核酸を含むベクターには目的の遺伝子の転写の開始および終結を担う配列(プロモーター、ターミネーターなど)、翻訳の開始に必要とされる配列(リボソーム結合部位など)が含まれる。当業者は、宿主細胞に適切なこれらの配列を選択することができる。例えば、セレン酸還元活性を示すタンパク質をコードする配列の上流に本来存在するプロモーターが宿主細胞中で機能する場合はそのプロモーターを利用することができ、あるいは宿主細胞において機能する別のプロモーターの制御下に目的の遺伝子を配置して発現させることもできる。

【0026】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1:セレン酸還元変異株の取得
接合伝達によってPseudomonas stutzeri NT-I株にトランスポゾンMini-Tn5(Biomedal, S.L.)を導入し(図1)、変異株ライブラリーを作製した。
具体的には以下の様に行った。受容菌Pseudomonas stutzeri NT-I 株をTSB培地に植菌し、28度で終夜培養する。トランスポゾンMini-Tn5を含有する供与菌である大腸菌Escherichia coli S17-1株をLB培地に植菌し、37度で終夜培養する。同量の受容菌培養液と供与菌培養液を混合し、遠心分離後、上清を捨てる。10mM硫酸マグネシウムを含む極少量のLB培地に懸濁後、懸濁液をLB寒天培地上におき、28-37度で8-18時間培養する。寒天培地上で増殖した混合菌体を10mM硫酸マグネシウム溶液5mLに懸濁する。その懸濁液を適宜希釈し、最終濃度10-30 mg/mLのテトラサイクリンを含むTSB寒天培地に播種し、28度で終夜培養する。この様にして、トランスポゾンMini-Tn5由来のテトラサイクリン遺伝子が、受容菌Pseudomonas stutzeri NT-I 株のゲノムDNAにランダムに挿入された変異株ライブラリーを作製した。
【実施例】
【0028】
ライブラリーより、セレン酸を含む寒天培地上で、元素態セレン生成を示す赤色を呈色しない株を、セレン酸還元能変異株として取得した。Mini-Tn5の導入の結果、3株(NT-IAM2, NT-IAM3, NT-IAM4)のセレン酸還元能変異株が得られた。NT-IAM2及びNT-IAM4は完全に白く、またNT-IAM3は一部赤いもののほとんどの部分が白かった(図2)。また、亜セレン酸を含む培地では、全ての株が赤色のコロニーを形成した。上記の結果から、これらの変異株は、セレン酸を還元できないことが示唆された。
【実施例】
【0029】
実施例2:セレン酸還元変異株のセレン酸、亜セレン酸の還元率の測定
TSB3g/Lを添加した乳酸無機塩培地で、野生株と各変異株をそれぞれ、28℃で24時間好気的に前々培養した。同培地に、前々培養液をOD=0.02になるよう植菌し、28℃12時間好気的に前培養した。1mMのセレン酸または亜セレン酸を含む同培地に、前培養液をOD=0.02になるよう植菌し、本培養を開始した。バイアルにシリコセンをしたものを好気条件、気相部を窒素置換しブチルゴム栓をしたものを嫌気条件とした。経時的にサンプリングし、セレン酸、亜セレン酸濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。セレン酸または亜セレン酸の初期添加濃度に対する、培養24時間後までに還元されたものの割合をセレン酸または亜セレン酸還元率として示した。
【実施例】
【0030】
測定の結果を図3に示す。
野生株は好気条件下、嫌気条件下のいずれにおいてもセレン酸を96~97%還元し、また好気条件下において亜セレン酸を95%還元した。
一方で、いずれの変異株も、好気、嫌気両条件ともにセレン酸還元率が大きく低下し、特に好気条件下においてはNT-IAM2及びNT-IAM4はまったく還元しなかった。NT-IAM3は、好気、嫌気両条件下においてわずかな還元(11~13%)を示した。
亜セレン酸については、いずれの変異株も還元率が低下しているが、完全に還元能が失われることはなかった。
従って、3株の変異株において、Mini-Tn5が破壊されている遺伝子は、亜セレン酸還元に部分的な影響を持つものの、主にセレン酸還元に関わるものであり、好気、嫌気いずれの条件下でも働いているものと推測された。
【実施例】
【0031】
実施例3:セレン酸還元関連遺伝子群の単離
変異株NT-IAM2, NT-IAM3, NT-IAM4について、(SphI等の制限酵素で変異株のゲノムDNAを切断し、適当なプライマーを作製後)、InversePCR法により、ゲノム中の Mini-Tn5近傍の配列を増幅し、クローニングした(図1)。決定した配列を含む領域を、全ゲノム配列データより取得した。Blastxによって、遺伝子領域の推定とアノーテションを行い、Blastnによって既知遺伝子との塩基配列との相同性を調べた。
【実施例】
【0032】
NT-IAM2及びNT-IAM4はともに、Mini-Tn5によって、セレン酸還元関連酵素遺伝子serAが破壊されていることが分かった。serABDCは、そのORFの連続性からオペロンを形成していることが強く示唆された(図4)。serABDCの周辺には、モリブデン補因子生合成酵素遺伝子moaAや、oxyanionセンサーをコードすると推測されるオペロンの存在が示唆された。serAの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号1及び2に示し、serBの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号3及び4に示し、serDの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号5及び6に示し、serCの塩基配列とアミノ酸配列を配列表の配列番号7及び8に示す。また、NT-I株におけるserABDC遺伝子座(プロモーター領域、serABDCのORF、ターミネーター領域を含む)の塩基配列を配列表の配列番号9に示す。
【実施例】
【0033】
【表1】
JP0006011980B2_000002t.gif
【実施例】
【0034】
NT-IAM3は、Mini-Tn5によって、モリブドプテリン生合成酵素遺伝子moaEが破壊されていることがわかった。moaCDEは、そのORFの連続性からオペロンを形成していることが強く示唆された(図5)。
【実施例】
【0035】
【表2】
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【実施例】
【0036】
serABDCが、NT-I株のセレン酸還元酵素をコードしていることが示唆された。セレン酸還元酵素SerABDCは、嫌気条件下でセレン酸を還元する細菌であるThauera selenatisにおいて詳細な生化学的研究が行われており、SerAにはモリブデン補因子であるMo-bis-MGDと[4Fe-4S]クラスター、SerBには3つの[4Fe-4S]クラスターと1つの[3Fe-4S]クラスター、SerCにはheme-bが含まれていることが明らかとなっている。また、SerDはSerAへのモリブドプテリンの組み込みを制御するsystem specific chaperonであることが示唆されている。
【実施例】
【0037】
NT-I株のserABDC構造遺伝子、及び推測されるアミノ酸配列はThauera selenatisのものと83~95%の高い相同性を示し(表3)、Thauera selenatisのSerABDCと同様の構成をもった酵素であることが推測される。また、Thauera selenatis が嫌気条件下のみでセレン酸を還元するのに対し、NT-I株は好気・嫌気両条件下でセレン酸を還元するという点が大きく異なるが、プロモーター領域の塩基配列の相同性が低いこと(48%)が、セレン酸還元能の発現制御の差異の要因であることが推測された。
【実施例】
【0038】
【表3】
JP0006011980B2_000004t.gif
【実施例】
【0039】
NT-I株のセレン酸還元酵素SerABDCの組み立てと輸送は、図6のように推測される。SerAおよびSerBは細胞質でMo-bis-MGDや、鉄・硫黄クラスターに組み込まれる。SerAのN末端領域にはTATシグナルペプチドが存在しており、折りたたまれた酵素を細胞膜外に輸送するTAT経路によって、SerABはペリプラズム領域に輸送される。SerDはSerAにMo-bis-MGDが挿入されるまではTATシグナルペプチドに結合していることにより、補因子挿入が不完全のままにSerABが輸送されることを防ぐ。また、SerCはN末端領域にSecシグナルペプチドが存在しており、Sec経路によってペリプラズムに輸送された後、折りたたまれ、heme-bが挿入される。SerABCは最終的にペリプラズムで会合し、セレン酸を触媒する。
【実施例】
【0040】
また、SerAに挿入されるMo-bis-MGDは2分子のGPTとモリブデン酸よりMoaA, MoaC, MoaDEを含む一連の合成酵素群によって合成される。MoaA及びMoaCは、GTPの環状化反応、MoaDEはチオール基の導入を触媒することが知られている。
【実施例】
【0041】
実施例4:セレン酸還元酵素をコードする遺伝子の発現
上記の実施例3で示したserABDC遺伝子を含むようにPCRにてDNAを増幅した。増幅産物をpGEM-T Easyベクター(Promega社)と結合し、大腸菌Escherichia coli DH5α株を形質転換した。形質転換体の写真を図8に示す。図8の右側は、pGEM-T Easyというベクターだけを保有するネガティブコンコントロールとなる大腸菌を示し、図8の左側は、pGEMserABDC というベクターを保有するポジティブコントロールとなる大腸菌を示す。これは、pGEM-T Easyベクターにlacプロモーターと逆方向にserABDCオペロンが挿入されたプラスミドDNAを保有した大腸菌である。即ち、serABDCオペロン由来のプロモーターから転写されていることが示唆される。どちらの大腸菌も0.5mMのセレン酸を加えたLB寒天培地で増殖し、左側のベクターpGEMserABDCを保有する大腸菌の方が赤色になっていることが観察された。
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7