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明細書 :燃料電池用アノード用触媒及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5967548号 (P5967548)
登録日 平成28年7月15日(2016.7.15)
発行日 平成28年8月10日(2016.8.10)
発明の名称または考案の名称 燃料電池用アノード用触媒及びその製造方法
国際特許分類 H01M   4/90        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/92        (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M   8/02        (2016.01)
FI H01M 4/90 M
H01M 4/88 K
H01M 4/92
H01M 8/10
H01M 8/02 E
請求項の数または発明の数 16
全頁数 17
出願番号 特願2013-507416 (P2013-507416)
出願日 平成24年3月21日(2012.3.21)
国際出願番号 PCT/JP2012/057109
国際公開番号 WO2012/133017
国際公開日 平成24年10月4日(2012.10.4)
優先権出願番号 2011068296
優先日 平成23年3月25日(2011.3.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月19日(2015.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】竹口 竜弥
【氏名】朝倉 清▲高▼
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】▲辻▼ 弘輔
参考文献・文献 特開平01-227361(JP,A)
特開2011-044334(JP,A)
特開2010-140767(JP,A)
特開2006-190686(JP,A)
特開2005-177661(JP,A)
特表2008-506513(JP,A)
特開2011-072934(JP,A)
Toshiro Yamanaka, Tatsuya Takeguchi, Guoxiong Wang, Ernee Noryana Muhamad, Wataru Ueda,Particle size dependence of CO tolerance of anode PtRu catalysts for polymer electrolyte fuel cells,Journal of Power Sources,2010年10月 1日,Vol.195, No.19,pp.6398-6404
Tatsuya Takeguchi, Toshiro Yamanaka, Kiyotaka Asakura, Ernee Noryana Muhamad, Kohei Uosaki, Wataru U,Evidence of Nonelectrochemical Shift Reaction on a CO-Tolerant High-Entropy State Pt-Ru Anode Cataly,Journal of the American Chemical Society,2012年 9月 9日,Vol.134, No.35,pp.14508-14512
固体高分子形燃料電池用PtRuアノード触媒への金属酸化物添加とCO耐性,山中俊朗, 竹口竜弥, 汪国雄, Ernee Noryana Muhamad, 上田渉,電気化学会大会講演要旨集,2009年 3月29日,Vol.76th,p.409
調査した分野 H01M 4/86 - 92
H01M 8/02
H01M 8/10
Scopus
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)炭素材料に白金化合物及びルテニウム化合物を担持する工程、
(2)工程(1)で白金化合物及びルテニウム化合物を担持した炭素材料を水素含有雰囲気下に置く工程、
(3)工程(2)で得られた炭素材料をヘリウム含有雰囲気下で加熱する工程、
(4)工程(3)で得られた炭素材料を水素含有雰囲気下で加熱する工程、
を含む、
炭素材料に白金とルテニウムの合金を担持した、燃料電池用アノード用触媒の製造方法であって、前記合金における、白金とルテニウムのモル比(Pt:Ru)は、1:1~5の範囲であり、X線吸収微細構造により測定された前記合金中の原子サイトのPt原子の配位数及びRu原子の配位数をそれぞれN(Pt)及びN(Ru)と表したとき、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、前記合金の平均粒子径は1~5nmの範囲であり、粒子経の標準偏差は2nm以下の範囲である、前記製造方法
【請求項2】
平均粒子径が1~5nmの範囲である金属酸化物をさらに担持した請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
金属酸化物がスズ酸化物である請求項2に記載の製造方法
【請求項4】
炭素材料は、平均粒子径が10nm~1000nmの範囲である粒子である請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項5】
白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.9~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値の0.9~1.1倍の範囲である請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項6】
工程(1)の前に炭素材料に金属酸化物を担持する工程をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(1)においては、炭素材料に白金化合物を担持し、次いでルテニウム化合物を担持する請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(2)の水素含有雰囲気下に置く工程は、0℃~50℃の範囲の温度で、0.1時間から10時間の範囲で実施する請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(3)のヘリウム含有雰囲気下での加熱工程は、700℃~1000℃の範囲の温度で、0.05時間から5時間の範囲で実施する請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(3)のヘリウム含有雰囲気下、700℃~1000℃の範囲の温度での加熱後、500℃以下の温度まで、冷却速度10~200℃/分で冷却する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
700℃~1000℃から500℃まで冷却速度10~20℃/分で冷却する請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(4)の水素含有雰囲気下での加熱工程は、70℃~200℃の範囲の温度で、0.2時間から20時間の範囲で実施する請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
燃料電池がメタノール燃料電池である請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により触媒を得ること、得られた触媒とプロトン伝導性ポリマーを含むアノード用組成物からなる層を基板表面に設けてアノードを調製することを含む、燃料電池用アノードの製造方法
【請求項15】
請求項14に記載の方法によりアノードを調製すること、高分子電解質膜を挟んで、得られたアノードとカソードを積層し膜電極接合体を調製することを含む、燃料電池用膜電極接合体の製造方法
【請求項16】
請求項15に記載の方法により膜電極接合体を調製すること、得られた膜電極接合体を用いて膜電極接合体を含む燃料電池を得ることを含む、燃料電池の製造方法
発明の詳細な説明
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2011年3月25日出願の日本特願2011-68296号の優先権を主張し、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、燃料電池用アノード用触媒及びその製造方法に関する。さらに本発明は、前記触媒を用いた燃料電池用アノード、このアノードを用いた燃料電池用膜電極接合体、この燃料電池用膜電極接合体を用いた燃料電池にも関する。
【背景技術】
【0003】
固体高分子形燃料電池は、従来の発電技術と比較して高いエネルギー効率を達成し得ることから、環境負荷の少ない電力発生源としてその実用化が期待されている。固体高分子形燃料電池のアノード(燃料極)に対して水素を供給し、カソード(空気極)に対して空気を供給すると、下記の反応が生じる。すなわち、アノード触媒の働きにより燃料極において水素イオン(プロトン)が生じ、電解質膜を通過したプロトンと酸素が結合して空気極において水が生じる。
【0004】
燃料極:H2→2H++2e-
空気極:1/2O2+2H++2e-→H2
【0005】
燃料となる水素は、天然ガスを水蒸気改質して生成されることが多い。この方法で作られた水素は微量の一酸化炭素(CO)を含んでおり、COがアノード触媒に吸着して触媒活性を下げることが知られている。そのため、CO耐性の高いアノード触媒の開発に向けて様々な取り組みがなされている。
【0006】
これまでに開発された触媒の中では、カーボン微粒子に白金及びルテニウムを担持した触媒(PtRu/C触媒)が最も優れたCO耐性を有するものとして知られている(特許文献1-5及び非特許文献1を参照)。特許文献1、2及び3には熱処理によりPtとRuを合金化させる合金触媒の製造方法が記載されている。特許文献1、3及び非特許文献1では、所定比率のPtとRuを担体に担持した触媒がCO耐性に優れることが記載されている。尚、特許文献1~3は同じファミリーに属する特許文献である。特許文献4には0.5から2.0nm未満の粒子サイズのPtとRuの合金を担体に担持した触媒がCO耐性に優れることが記載されている。特許文献5には2nm未満の粒子サイズのPtと1nm未満の粒子サイズのRuを担体に担持した触媒がCO耐性に優れることが記載されている。
【0007】
特許文献1:WO99/66576
特許文献2:日本特許第3839961号公報
特許文献3:米国特許第6339038号明細書
特許文献4:米国特許第6066410号明細書
特許文献5:米国特許第6007934号明細書
非特許文献1:多田ら、「熱拡散白金ルテニウム合金触媒の組成比が耐一酸化炭素被毒特性へ与える影響」、電気化学会誌、2008年、76,No.11、p.813-
【0008】
特許文献1~5および非特許文献1の全記載は、ここに特に開示として援用される。
【発明の概要】
【0009】
しかし、上記特許文献及び非特許文献に記載の従来のPtRu/C触媒は、CO耐性において未だ十分ではなく、固体高分子形燃料電池の実用化に向け、より一層のCO耐性の向上が求められている。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、従来のPtRu/C触媒と比較して優れたCO耐性を有するPtRu/C触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明者は、PtRu/C触媒の製造方法及び条件について種々検討し、Pt化合物及びRu化合物を担持したC材料を、特定の方法及び条件で処理することで、CO耐性が著しく向上した、燃料電池用アノード用触媒が得られることを見いだして本発明を完成させた。
【0011】
本発明は以下の通りである。
[1]
炭素材料に白金とルテニウムの合金を担持した、燃料電池用アノード用触媒であって、前記合金における、白金とルテニウムのモル比(Pt:Ru)は、1:1~5の範囲であり、X線吸収微細構造により測定された前記合金中の原子サイトのPt原子の配位数及びRu原子の配位数をそれぞれN(Pt)及びN(Ru)と表したとき、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、前記合金の平均粒子径は1~5nmの範囲であり、粒子経の標準偏差は2nm以下の範囲である、前記触媒。
[2]
平均粒子径が1~5nmの範囲である金属酸化物をさらに担持した[1]に記載の触媒。
[3]
金属酸化物がスズ酸化物である[2]に記載の触媒。
[4]
炭素材料は、平均粒子径が10nm~10mmの範囲である粒子である[1]~[3]のいずれか1項に記載の触媒。
[5]
白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.9~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値の0.9~1.1倍の範囲である[1]~[4]のいずれか1項に記載の触媒。
[6]
燃料電池がメタノール燃料電池である[1]~[5]のいずれか1項に記載の触媒。
[7]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の触媒とプロトン伝導性ポリマーを含むアノード用組成物からなる層を基板表面に有する燃料電池用アノード。
[8]
高分子電解質膜を挟んで[7]に記載のアノードとカソードを積層した、燃料電池用膜電極接合体。
[9]
[8]に記載の燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池。
[10]
(1)炭素材料に白金化合物及びルテニウム化合物を担持する工程、
(2)工程(1)で白金化合物及びルテニウム化合物を担持した炭素材料を水素含有雰囲気下に置く工程、
(3)工程(2)で得られた炭素材料をヘリウム含有雰囲気下で加熱する工程、
(4)工程(3)で得られた炭素材料を水素含有雰囲気下で加熱する工程、
を含む、[1]に記載の燃料電池用アノード用触媒の製造方法。
[11]
工程(1)の前に炭素材料に金属酸化物を担持する工程をさらに含む[10]に記載の製造方法。
[12]
工程(1)においては、炭素材料に白金化合物を担持し、次いでルテニウム化合物を担持する[10]または[11]に記載の製造方法。
[13]
工程(2)の水素含有雰囲気下に置く工程は、0℃~50℃の範囲の温度で、0.1時間から10時間の範囲で実施する[10]~[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[14]
工程(3)のヘリウム含有雰囲気下での加熱工程は、700℃~1000℃の範囲の温度で、0.05時間から5時間の範囲で実施する[10]~[13]のいずれか1項に記載の製造方法。
[15]
700℃~1000℃の範囲の温度での加熱後、500℃以下の温度まで、冷却速度10~200℃/分で冷却する、[14]に記載の製造方法。
[16]
750℃から500℃まで冷却速度10~20℃/分で冷却する[15]に記載の製造方法。
[17]
工程(4)の水素含有雰囲気下での加熱工程は、70℃~200℃の範囲の温度で、0.2時間から20時間の範囲で実施する[10]~[14]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、CO耐性が著しく向上した、燃料電池用アノード用触媒が得られる。さらに本発明によれば、前記触媒を用いた、CO耐性が著しく向上した燃料電池用アノード、このアノードを用いた燃料電池用膜電極接合体、この燃料電池用膜電極接合体を用いた燃料電池も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アノード触媒として実施例1、3、5、6及び比較例1の触媒をそれぞれ用いた燃料電池の電流密度0.2A/cm2における電圧の測定結果である。
【図2】実施例5で調製したPtRu/SnO2/C触媒及び比較例1に示したPt2Ru3/C触媒についての「その場FTIR」の測定結果である。
【図3】アノード触媒として実施例9及び10の触媒をそれぞれ用いた燃料電池の電流密度0.2A/cm2における電圧の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔燃料電池用アノード用触媒〕
本発明は、炭素材料に白金とルテニウムの合金を担持した、燃料電池用アノード用触媒である。この触媒は、前記合金における、白金とルテニウムのモル比(Pt:Ru)は、1:1~5の範囲であり、X線吸収微細構造により測定された前記合金中の原子サイトのPt原子の配位数及びRu原子の配位数をそれぞれN(Pt)及びN(Ru)と表したとき、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、前記合金の平均粒子径は1~5nmの範囲であり、粒子経の標準偏差は2nm以下の範囲である。

【0015】
炭素材料は、本発明の触媒が、燃料電池用アノードにおける触媒として用いられること、この触媒はプロトン伝導性ポリマーとの混合物からなるアノード用組成物層を基板表面に有する燃料電池用アノードとして用いられることから、粒子状であることが好ましく、粒子状の場合は、例えば、平均粒子径が10nm~10mmの範囲であることができる。同様の観点で、平均粒子径は、好ましくは10nm~1000nmの範囲である。

【0016】
炭素材料の例は特に制限されるものではないが、例えば、カーボンブラック、活性炭、黒鉛等を挙げることができる。炭素材料は、比表面積が、例えば、500~3000m2/g、好ましくは700~2500m2/gの範囲であることができる。また、炭素材料以外にアルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタン、酸化スズ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、セリア(酸化セリウム)、セリア-ジルコニアなどの材料も白金とルテニウムの合金の担体として用いることができる。また、炭素材料と炭素材料以外の材料との混合物を担体として用いることができる。

【0017】
白金とルテニウムの合金は、白金とルテニウムのモル比(Pt:Ru)は、1:1~5の範囲である。モル比(Pt:Ru)が、1:1未満の場合には、Ru量が少なく、その結果、Pt-Ruの結合が少なくなり、CO耐性が低下する傾向がある。また、モル比(Pt:Ru)が、1:5を超える場合には、Ru量が過剰となり、その結果、活性点のPtの量が少なくなり、Ptの触媒効果が低下する傾向がある。より高いCO耐性を有し、かつPtによる触媒効果も発揮できるという観点から、白金とルテニウムのモル比(Pt:Ru)は、好ましくは1:1~4の範囲であり、さらに好ましくは1:1~3の範囲であり、一層好ましくは1:1~2の範囲である。

【0018】
白金とルテニウムの合金は、X線吸収微細構造(XAFS)により測定された白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.8~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値の0.8~1.1倍の範囲である。XAFSで測定されるN(Pt)及びN(Ru)は、合金中におけるPt原子の数及びRu原子の数を表し、合金を形成するRu及びPtモル比に基づいて、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))及びRuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が決まる。例えば、モル比(Pt:Ru)が、2:3の合金においては、N(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))の理論値は、0.60(3/(3+2))であり、N(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))の理論値は、0.40(2/(2+3))である。尚、白金サイトとは、合金中に配位した白金のサイトであり、Ruサイトとは、合金中に配位したRuのサイトである。合金粒子中におけるPtとRuの原子が均一に分散していればそれだけ、上記N(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))及びN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))は、理論値に近い値を示す。一方、理論値から遠くなれば、それだけ、Ptサイトにおいては、Ptの存在量が多くなり、Ruサイトにおいては、Ruの存在量が多くなり、結局合金全体としては、PtとRuの原子の分散の均一が低いことを意味する。従って、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))およびRuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))がそれぞれ理論値に近い白金とルテニウムの合金は、合金全体としては、PtとRuの原子の分散の均一が高く、その結果、より高いCO耐性を有し、かつPtによる触媒効果も発揮できる。

【0019】
本発明の触媒においては、従来のPtRu合金を担持する炭素材料に比べて、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))及びRuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))は理論値に近く、合金中のPtとRuの原子がより均一に存在する。それにより、CO耐性が向上しているものと推察する。このような観点から、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))が理論値の0.9~1.1倍の範囲であり、RuサイトにおけるN(Ru)/N(Pt)が理論値の0.9~1.1倍の範囲であることが好ましい。尚、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))およびRuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))が理論値を超えることは、理論上はあり得ない。従って、理論上の上限値は、理論値の1.0倍であり、理論値の1.0倍が最も好ましい。しかし、EXAFSの測定精度を考慮すると、理論値を超えて1.1倍までの値を示すことはある。このような事情を考慮して、白金サイトにおけるN(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))およびRuサイトにおけるN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))の上限値は、いずれも理論値の1.1倍とした。尚、XAFS はそのエネルギー領域によってXANESとEXAFS(extend X-ray absorption fine structure)に分けられる。本発明におけるXAFSは、EXAFSである。

【0020】
本発明の触媒においては、前記合金の平均粒子径は1~5nmの範囲であり、粒子経の標準偏差は2nm以下の範囲である。合金の平均粒子径が1nm未満では、表面活性点あたりの水素酸化反応活性が低下し、5nmを超えると、表面活性点が減少する。いずれの場合も触媒活性を低下させる。より高い触媒活性を示すという観点からは、合金の平均粒子径は、好ましくは、2~5nmの範囲である。また、合金の粒子経の標準偏差は2nm以下の範囲である。2nmを超えると活性点の性能にばらつきが生じる傾向がある。尚、粒子経の標準偏差の下限は、製造効率と均一な反応活性を両立させるという観点から0.5nmであることが適当である。

【0021】
本発明の燃料電池用アノード用触媒における、白金とルテニウムの合金の担持量は、本発明の触媒をアノード用触媒として用いる場合に良好な性能が得られるという観点から、担体100質量部に対して、例えば、10~120質量部の範囲とすることができる。好ましくは、担体100質量部に対して、例えば、90~130質量部の範囲とすることができる。

【0022】
本発明の燃料電池用アノード用触媒は、上記白金とルテニウムの合金に加えて、平均粒子径が1~5nmの範囲である金属酸化物をさらに担持した触媒も包含する。この金属酸化物としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタン、酸化スズ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、セリア(酸化セリウム)、セリア-ジルコニア等を挙げることができる。

【0023】
本発明の触媒においては、前記金属酸化物の平均粒子径は1~5nmの範囲であり、粒子経の標準偏差は好ましくは0.5~2nmの範囲である。金属酸化物の平均粒子径が1nm未満では、Ptなどとの反応性が高く合金化が制御できない、5nmを超えると、表面活性点減少しPtと相互作用が弱くなる。金属酸化物の平均粒子径は、好ましくは、2~5nmの範囲である。また、金属酸化物の粒子経の標準偏差は2nm以下の範囲である。2nmを超えると、Ptなどとの反応性が制御できない。金属酸化物の粒子経の標準偏差の下限は、製造効率と均一な反応活性を両立させるという観点から0.5nmであることが適当である。

【0024】
本発明の燃料電池用アノード用触媒における、金属酸化物の担持量は、本発明の触媒をアノード用触媒として用いる場合に良好な性能が得られるという観点から、担体100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部の範囲とすることができる。好ましくは、担体100質量部に対して、例えば、0.1~5質量部の範囲とすることができる。さらに、白金とルテニウムの合金の担持量及び金属酸化物の担持質量の比は、前記合金粒子による活性点を被覆せず、かつ相互作用を与えることかできるという観点から、例えば、白金とルテニウムの合金1質量部に対して、金属酸化物0.03質量部~0.3質量部の範囲であることができる。

【0025】
〔製造方法〕
本発明の燃料電池用アノード用触媒の製造方法について説明する。本発明は、この製造方法も本発明として包含する。本発明の燃料電池用アノード用触媒の製造方法は以下の工程(1)~(4)を含む。
(1)炭素材料に白金化合物及びルテニウム化合物を担持する工程、
(2)工程(1)で白金化合物及びルテニウム化合物を担持した炭素材料を水素含有雰囲気下に置く工程、
(3)工程(2)で得られた炭素材料をヘリウム含有雰囲気下で加熱する工程、
(4)工程(3)で得られた炭素材料を水素含有雰囲気下で加熱する工程、
を含む。

【0026】
工程(1)
工程(1)では、炭素材料に白金化合物及びルテニウム化合物を担持する。工程(1)においては、例えば、炭素材料に白金化合物を担持し、次いでルテニウム化合物を担持することができる。逆に、炭素材料にルテニウム化合物を担持し、次いで白金化合物を担持することもできる。炭素材料は前述の説明の通りである。白金化合物としては、例えば、ジニトロジアミン白金硝酸等を挙げることができる。但し、この化合物に限定される意図ではなく、一般に白金や白金合金を調製する際に利用される白金化合物を適宜使用することができる。ルテニウム化合物としては、例えば、RuCl3n(H2O)等を挙げることができる。しかし、この化合物に限定される意図ではなく、一般にルテニウムやルテニウム合金を調製する際に利用されるルテニウム化合物を適宜使用することができる。白金化合物及びルテニウム化合物は、所望の白金及びルテニウムのモル比、さらには白金及びルテニウムの担持量を考慮して、炭素材料に担持する。担持方法には特に制限はなく、例えば、白金化合物及びルテニウム化合物を含有する水溶液に炭素材料を含浸することで実施できる。上記水溶液には、含浸を促進する助剤を適宜添加することもできる。

【0027】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)において、白金化合物及びルテニウム化合物を担持した炭素材料を水素含有雰囲気下に置く工程である。この工程では、炭素材料に担持された白金化合物及びルテニウム化合物を還元する。水素含有雰囲気は、水素雰囲気、即ち、水素のみの雰囲気であることもできるが、水素に不活性ガスを含有するものであることもできる。不活性ガスとしてはアルゴン等を例示できる。水素と不活性ガスの混合ガスを用いる場合には、水素の含有量は、例えば、2~10%の範囲であることが、穏やかに還元するという観点から適当である。水素含有雰囲気は、水素ガスまたは水素含有ガスの充填した反応容器内で行うことも、これらのガスを流通させた反応容器内で行うこともできる。

【0028】
工程(2)の水素含有雰囲気下に置く工程は、例えば、0℃~50℃の範囲の温度で、0.1時間から10時間の範囲で実施することができる。温度が0℃未満で、実施時間が0.1時間未満の場合には、所望の効果、即ち、還元の効果が得られにくい。一方、温度が50℃を超え、実施時間が10時間を超える場合にも、所望の効果、即ち、高分散したPtRu触媒が得られにくくなる。

【0029】
工程(3)
工程(3)は、工程(2)で得られた炭素材料をヘリウム含有雰囲気下で加熱する工程である。この工程では、炭素材料に担持された白金化合物及びルテニウム化合物(その少なくとも一部は、工程(2)において還元されて金属となっている)からPtRu合金または合金の前駆体が生成する。ヘリウム含有雰囲気は、ヘリウム雰囲気、即ち、ヘリウムのみの雰囲気であることもできるが、ヘリウムに他の不活性ガスを含有するものであることもできる。不活性ガスとしてはアルゴン、窒素等を例示できる。ヘリウムと不活性ガスの混合ガスを用いる場合には、ヘリウムの含有量は、例えば、20~100%の範囲であることが、熱処理後に冷却する際に、後述のように急冷が可能であるという観点から適当である。ヘリウム含有雰囲気は、ヘリウムガスまたはヘリウム含有ガスの充填した反応容器内で行うことも、これらのガスを流通させた反応容器内で行うこともできる。また、加熱は、加熱効率を高めるという観点からは、ヘリウムガスまたはヘリウム含有ガスを充填した(非流通下)反応容器内で行い、冷却の際は、冷却効果を高める観点から、ヘリウムガスまたはヘリウム含有ガスを流通させて行うこともできる。

【0030】
工程(3)のヘリウム含有雰囲気下での加熱工程は、例えば、700℃~1000℃の範囲の温度で、0.05時間から5時間の範囲で実施することができる。温度が700℃未満で、実施時間が0.05時間未満の場合には、所望の効果、即ち、合金化効果(または合金の前駆体生成効果)が得られにくい。一方、温度が1000℃を超え、実施時間が5時間を超える場合にも、所望の効果、即ち、粒子が大きくなり表面活性点の数が得られにくい。

【0031】
工程(3)のヘリウム含有雰囲気下での加熱工程では、工程(2)の終了時の温度(例えば、室温(10~35℃の範囲)から、上記700℃~1000℃の範囲の温度に、例えば、昇温速度50~100℃/分で急速に昇温することが、粒子の成長を抑制しつつ、所望の還元の効果を得るという観点から好ましい。

【0032】
また、加熱終了後は、少なくとも500℃以下の温度になるまで冷却速度10~200℃/分で冷却することが好ましい。より具体的には、例えば、冷却速度100~200℃/分で少なくとも750℃まで急速冷却し、さらに、冷却速度10~20℃/分で少なくとも500℃まで冷却することが好ましい。500℃まで冷却した後は、室温まで(10~35℃の範囲)放冷することができる(放冷の冷却速度は任意である)。加熱温度が、700℃~750℃の場合には、冷却速度10~20℃/分で少なくとも500℃まで冷却することが好ましい。500℃まで冷却した後は、上記と同様に室温まで(10~35℃の範囲)放冷することができる(放冷の冷却速度は任意である)。

【0033】
工程(3)においては、500℃以上の温度では、合金粒子の成長が加速されるので、加熱終了後は、500℃以上の時間を極力短くすることが、合金粒子を微細な状態に維持するという観点から重要である。さらに、上記のように500℃まで急冷(クエンチ)することは、700℃~1000℃の範囲での加熱によって生じたPtとRuの分散した状態が、極力そのまま保たれた状態の合金粒子が得られるという観点からも重要である。加熱後、500℃までの冷却をゆっくり行うと、PtとRuが上記加熱により一旦、分散しても、冷却途中でPtとRuの相分離がおこり、分散状態が保てず、本発明が目的とする合金粒子を担持する触媒は得られにくくなる。

【0034】
工程(4)
工程(4)は、工程(3)で得られた炭素材料を水素含有雰囲気下で加熱する工程である。
この工程では、工程(3)で生成したPtとRuが分散した状態を有する合金を維持しつつ、完全には還元されていない白金化合物及びルテニウム化合物またはそれらから誘導された合金の前駆体が還元されて合金化する。水素含有雰囲気は、水素雰囲気、即ち、水素のみの雰囲気であることもできるが、水素に不活性ガスを含有するものであることもできる。不活性ガスとしてはアルゴン等を例示できる。水素と不活性ガスの混合ガスを用いる場合には、水素の含有量は、例えば、5~20%の範囲であることが、緩やかに還元するという観点から適当である。

【0035】
工程(4)の水素含有雰囲気下に置く工程は、例えば、70℃~200℃の範囲の温度で、0.2時間から20時間の範囲で実施することができる。温度が70℃未満で、実施時間が0.2時間未満の場合には、所望の効果、即ち、表面を還元する効果が得られにくい。一方、温度が200℃を超え、実施時間が20時間を超える場合にも、所望の効果、即ち、原子を安定に分散させるという効果が得られにくい。

【0036】
本発明の燃料電池用アノード用触媒の製造方法においては、工程(1)の前に炭素材料に金属酸化物を担持する工程をさらに含むことができる。この工程(1)においては、例えば、炭素材料に金属酸化物を構成する金属の化合物を含浸した後に、金属の化合物を酸化するか、または、金属酸化物の粒子を担持することができる。金属酸化物の粒子を担持する場合には、金属酸化物の粒子は、所定の平均粒子径を有する微粒子、例えば、コロイダル粒子を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、前述のようスズの酸化物、セリア(酸化セリウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、セリアージルコニア、アルミナ(酸化アルミニウム)等を挙げることができる。金属酸化物または金属の化合物は、所望の担持量を考慮して、炭素材料に担持する。担持方法には特に制限はなく、例えば、金属酸化物または金属の化合物を含有する水溶液に炭素材料を含浸することで実施できる。上記水溶液には、含浸または担持を促進する助剤を適宜添加することもできる。

【0037】
上記製造方法により、前記本発明の材料を製造することができる。

【0038】
本発明の燃料電池用アノード用触媒が用いられる燃料電池は、例えば、天然ガスを改質して得られた水素を用いる燃料電池であることができる。それ以外の燃料電池としては、例えば、メタノール燃料電池、特にダイレクトメタノール燃料電池等の燃料電池においても、アノード用触媒として用いることができる。本発明の燃料電池用アノード用触媒はCO耐性に優れることからダイレクトメタノール燃料電池用アノード用触媒としても良好に利用できる。

【0039】
〔燃料電池用アノード〕
本発明は、上記本発明の触媒とプロトン伝導性ポリマーを含むアノード用組成物からなる層を基板表面に有する燃料電池用アノードを包含する。

【0040】
アノード用組成物に用いるプロトン伝導性ポリマーは、アノードにおいて、電気化学反応によって発生するプロトンを固体高分子電解質に伝導させるためのプロトン伝導性媒体としての機能を有すると共に、上記本発明の触媒粒子を導電性多孔質基材に電極触媒層として結着させる結着剤としての機能を有する。このプロトン伝導性ポリマーとしては、固体高分子電解質膜と同じ素材からなるものを用いることができ、例えば、ナフィオン( デュポン杜登録商標) として知られているパーフルオロスルホン酸ポリマーが好適に用いられる。このポリマーは、有機溶媒、例えば、アルコール類に溶解するので、溶液として、触媒粒子を導電性多孔質基材に結着させる際に有利に用いることができ、触媒粒子の結着性にすぐれるのみならず、プロトン伝導性にすぐれる。但し、本発明において用いることができるプロトン伝導性ポリマーは、パーフルオロスルホン酸ポリマーに限定されるものではない。

【0041】
本発明によれば、電極触媒層において、プロトン伝導性ポリマーの質量に対する前記触媒粒子の質量の比( 以下、触媒粒子/ポリマー質量比ということがある。)は、例えば、3/1~20/1の範囲にあり、好ましくは、4/1~18/1の範囲にあることができる。触媒粒子/ポリマー質量比が3/1よりも小さいときは、得られる触媒が一酸化炭素被毒を受けやすい。他方、20/1を超えるときは、電極触媒層から触媒粒子が脱落しやすく、また、電極触媒層で生成したプロトンの輸送性に劣りやすく、その結果、得られる燃料電池の出力密度が低下する傾向がある。

【0042】
本発明においては、電極触媒層は、触媒粒子の結着剤として、プロトン伝導性ポリマーに加えて、他の樹脂を少量含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、プロトン伝導性を有しないフッ素樹脂等を挙げることができ、より具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体、ポリ四フッ化エチレン等を挙げることができる。結着剤におけるその樹脂の割合は、結着剤中、30重量%以下であることが好ましく、特に、10重量%以下であることが好ましい。

【0043】
また、導電性多孔質基材としては、炭素や導電性高分子等の繊維からなるペーパー、不織布、織布、編物、導電性多孔質膜等を挙げることができるが、通常、カーボンペーパーが好ましく用いられる。

【0044】
〔燃料電池用膜電極接合体〕
さらに本発明は、高分子電解質膜を挟んで上記本発明のアノードとカソードを積層した、燃料電池用膜電極接合体を包含する。

【0045】
カソード電極とアノード電極の製作について説明する。本発明において、カソードは、電極触媒を結着剤と共に電極触媒層として導電性多孔質基材に結着、担持させてなるものであり、その構成は特に限定されるものではないが、上記電極触媒層は、例えば、白金微粒子を担持させたカーボンブラック粉末と共に、導電助剤としてのカーボンブラック粉末、これらをまとめるための結着剤及び電気化学反応によって発生するプロトンの伝導体となるプロトン伝導性ポリマー等を適宜に含有する。

【0046】
一例を挙げれば、カソード電極は、例えば、白金微粒子を担持させたカーボンブラック粉末と、必要に応じて、導電助剤としてのカーボンブラックとを適宜の結着剤を用いてペーストとし、これを前述したような導電性多孔質基材に塗布し、加熱、乾燥させた後、更に、必要に応じて、その上にプロトン伝導性ポリマー溶液を塗布し、加熱、乾燥させることによって得ることができる。上記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂のN-メチル-2-ピロリドン溶液やナフィオン(デュポン社登録商標)のようなパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液が用いられる。

【0047】
アノード電極は、例えば、白金又は白金合金の微粒子とプロトン伝導性ポリマーとを含有するペーストを調製し、これを前述したような導電性多孔質基材上に塗布し、加熱、乾燥させることによって得ることができる。しかし、アノード電極の製造方法は、上記例示したものに限定されるものではない。

【0048】
また、カソード電極とアノード電極を構成するそれぞれの導電性多孔質基材は、所謂フラッディングを防止するために、電極触媒を担持させる側に導電性撥水層を有することが好ましい。

【0049】
本発明による燃料電池においては、固体高分子電解質膜としては、従来の固体高分子膜型電池に用いられているようなパーフルオロスルホン酸ポリマーからなる陽イオン交換膜、例えば、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられるが、しかし、これに限定されるものではない。従って、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。

【0050】
本発明によれば、このような固体高分子電解質膜を挟んで、上述したようなアノード電極とカソード電極とを積層一体化して、燃料電池用膜電極接合体を得ることができる。それぞれの電極に酸化剤又は還元剤を供給し、接触させるための構造体である導電性セパレータを膜電極接合体の両側に配設した構造はセルと呼ばれており、膜電極接合体と導電性セパレータを交互に且つ電気的に直列に多数を積層した構造はスタックと呼ばれている。

【0051】
〔燃料電池〕
さらに本発明は、上記本発明の燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池を包含する。

【0052】
本発明において、上記セパレータのための材料やセパレータの有する還元剤又は酸化剤のため通路の構造は、特に限定されるものではない。例えば、既に、よく知られているように、セパレータの両側に上記酸化剤又は還元剤の流路を形成して、これを上記電極に積層すればよい。また、セパレータは、例えば、グラファイト、炭素を分散させた樹脂成形体、金属材料等から形成される。

【0053】
例えば、本発明による燃料電池は、上記固体高分子電解質膜を挟んで、上記アノード電極とカソード電極とを積層一体化してなる膜電極接合体アノード電極と、上記アノード電極に積層されていると共にアノード側に水素またはメタノール等のための通路を形成されている導電性セパレータと、上記カソード電極に積層されていると共にカソード側に空気又は酸素のための通路を形成されている導電性セパレータとからなり、上記セパレータの上記通路を利用して、上記アノード電極に還元剤(燃料)である水素またはメタノールを供給し、接触させると共に、上記セパレータの上記通路を利用して、カソード電極に酸化剤(酸素又は空気)を供給し、接触させて、電流を得るものである。本発明の燃料電池によれば、上述したように、アノード電極触媒が一酸化炭素被毒を受け難いので、安定して作動させることができる。

【0054】
本発明による燃料電池の作動温度は、通常、0℃以上であり、好ましくは、15~90℃の範囲であり、最も好ましくは、30~80℃の範囲である。作動温度が高すぎるときは、用いる材料の劣化や剥離等が起こるおそれがある。
【実施例】
【0055】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、これらの実施例は、例示を目的とするものであり、これらの例に限定される意図ではない。
【実施例】
【0056】
実施例1
(1)-1Ptの担持方法
1. TKKカーボンE担体(比表面積900m2/g)0.56506gとジニトリジアミン白金硝酸溶液8.2675gと蒸留水少々を超音波で混ぜる。蒸留水が全部で200mLになるまで蒸留水を追加し、エタノール25mLを加えた。
2. 還流管をつけて92℃以上で8時間攪拌した。
3. 蒸留水1L程度で洗浄ろ過した。
【実施例】
【0057】
(1)-2Ruの担持方法
1. RuCl3n(H2O)を0.75745g(PtとRuの比率(モル比)は1:3である)と蒸留水少々を超音波でよく混ぜる。これを3口フラスコに入れ、水の量が全部で85mLになるまで蒸留水を追加し、メタノール9mLを加えた。
2. 65℃で攪拌しながら6-8時間還流還元した。おおかた色が消えたが色が完全に消えないので温度を70℃に上げて6~8時間放置した。まだ色が消えないのでメタノールを10mL加え一晩おいた。まだ色が消えないので85℃に上げて6~8時間放置した。
3. 蒸留水2リットルを適当な温度に加熱して、これで触媒をろ過・洗浄した。
4. 80℃で一晩乾燥させた。
5. 触媒を細かく砕いて粉末にした。
6. 触媒0.1gを石英のボートにのせた。
【実施例】
【0058】
(2)還元工程
1. ボートを100V用管状炉に設置した。
2. Heを60mL/分で流し、30分間放置した。
3. H2(5%)+Arを60mL/分で流し、初めの10分は温度が上昇しその後下がった。次いで、1時間放置した。
4. Heを60mL/分で流し、60分間放置した。
【実施例】
【0059】
(3)熱処理工程
1. Heを60mL/分で流し、AC100Vをスライダックで115Vに上げる。
2. 管状炉を115Vで通電した。約11分で890℃程度に到達した(加熱速度約80℃/分)。
3. 890℃に到達した瞬間電源を切った。余熱で900℃程度に到達し、温度が急速に下がり始め、約1分で750℃になった(冷却速度150℃/分)。
4. 600℃くらいになったら管状炉の蓋を開け、750℃から500℃まで約17分であった(冷却速度約15℃/分)。
【実施例】
【0060】
(4)水素処理工程
1. 室温で、H2(5%)+Arを60mL/分で流し、4℃/分で昇温し150℃にした。
2. 150℃で、2時間保持した。
3. 室温まで冷却した。
4. ガスをN2に変え60mL/分で流した。
【実施例】
【0061】
得られたPtRu/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経は3.42nmであり、粒子経の標準偏差は1.38nmであった。また、XAFS測定より、N(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))比が0.63、及びN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))比が0.37であり、それぞれの理論値が0.60、0.40であることから、PtRu粒子N(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))及びN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))比が理論値の0.9~1.1倍の範囲であることから、極めて合金度の高いPtRu粒子が製造されていることが分かる。
【実施例】
【0062】
EXAFS(extend X-ray absorption fine structure)測定に使用した機器は以下の通りである。PtLIII吸収端およびRuK吸収端のX線吸収スペクトルは、それぞれ、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所フォトンファクトリーのBL-7CビームラインおよびNW/10Aビームラインを用いて分析した。
【実施例】
【0063】
実施例2
RuCl3・nH2Oを0.75745g使用する代わりに0.378g使用して、PtとRuの比率(モル比)が2:3となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてPtRu/C触媒を得た。
得られたPtRu/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経は2.35nmであり、粒子経の標準偏差は1.16nmであった。
【実施例】
【0064】
実施例3
TKKカーボンE担体を使用する代わりに、多孔質炭素(比表面積1800m2/g)を使用した以外は、実施例1と同様にしてPtRu/C触媒を得た。得られたPtRu/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経は2.35nmであり、粒子経の標準偏差は1.16nmであった。
【実施例】
【0065】
比較例1
比較例1で使用した触媒は市販のPt2Ru3/C触媒である。その合金度は、XAFS測定より、N(Ru)/(N(Pt)+N(Ru))比が0.54、及びN(Pt)/(N(Ru)+N(Pt))比が0.31であった。
【実施例】
【0066】
実施例4
燃料として純水素を使用した場合を基準にして、水素燃料に含まれる一酸化炭素によって電圧がどの程度降下するか評価した。表1及び図1にアノード触媒として実施例1、3及び比較例1の触媒をそれぞれ用いた燃料電池の電流密度0.2A/cm2における電圧の測定結果を示す。
条件は以下の通りである。
電解質: Nafion(登録商標) NRE 212
カソード:Pt/C (0.5 mg/cm2);ガス:O2;流速:80 mL/分;70℃加湿.
アノード:各種PtRu/C (0.5 mg-PtRu/cm2);
ガス:0-2000 ppm COを含む水素;流速:80 mL/分;70℃加湿.
【実施例】
【0067】
【表1】
JP0005967548B2_000002t.gif
【実施例】
【0068】
実施例5
(SnO2/C担体)
1. 薬包紙にSnCl2・2H2O 89.4mg 秤量、三口フラスコに投入した。
2. エチレングリコール溶液を適量投入した。
3. オイルバス(シリコンオイル)で190℃まで加熱し、30min後に室温まで静置した。
4. カーボン粉末(E担体)(比表面積900m2/g)1.866gを秤量し50mlビーカーに入れた。
5. 40ml付近までEGを入れ、数分間超音波震盪した。
6. フラスコに投入し、水を加えてオイルバス90℃で一夜攪拌した。
7. エチレングリコール除去の為、吸引ビン3倍分熱湯で吸引ろ過洗浄した。
8. 数時間乾燥した。
9. 熱処理を行った。N2 60ml/分流通下で30min昇温し、80℃で10時間乾燥した。
【実施例】
【0069】
(Pt担持工程)
1.上記で得られたSnO2/C(80℃ N2 Dry)を0.5651g秤量した。
2.純水100mlで攪拌し、2分超音波分散した後、フラスコへ投入した。
3.Pt(NO2)(NH2) (0.4579wt%) 8.31gを秤量した。
4.純水100mlで攪拌、2分超音波分散した後、フラスコへ投入した。
5.常温にて1~2時間攪拌した。
6.エタノール30mlをラスコへ投入した。
7.オイルバス、95℃で一夜加熱した。その後、減圧ろ過工程へ移送した。
8.減圧ろ過した後、常温乾燥した(5時間~一晩)。
9.N2 60ml/分を室温(25℃)にて30分~1時間流した。(air抜きのためである)
10.昇温した。30分で80℃に上げ、10時間キープ後、自然冷却した。
11.焼成終了後、ガラス管の栓を開けて静置30分。(N2は止めない。急に空気に触れると発火する恐れがある。)
12.N2を止めてさらに30分静置した。
13.前工程で得られた試料1.27gを秤量した。
14.RuCl3(99.9%)0.926gを秤量した。
15.純水100mlで2分超音波分散した後、フラスコへ投入した。
16.常温、100rpmにて1~2時間攪拌した。
17.Me-OH 10mlを添加し、オイルバス(70℃)一夜加熱した。
その後、還元工程(2)、熱処理工程(3)は実施例1と同様に行って、PtRu/SnO2/C触媒を得た。PtとRuの比率(モル比)は2:3であり、PtとRuに対するSnO2(SnO2/(Pt+Ru))は、1/50(質量比)である。得られたPtRu/SnO2/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経および粒子径の標準偏差は実施例1の場合と同等であった。
【実施例】
【0070】
実施例6
カーボン粉末(E担体)1.866g秤量((SnO2 1wt%の場合)を,1.134g(SnO2 2.5wt%の場合)とした以外は、実施例5と同様に行って、PtRu/SnO2/C触媒を得た。PtとRuの比率(モル比)は2:3であり、PtとRuに対するSnO2(SnO2/(Pt+Ru))は、1/20(質量比)である。得られたPtRu/SnO2/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経および粒子径の標準偏差は実施例1の場合と同等であった。
【実施例】
【0071】
実施例7
実施例5で調製したPtRu/SnO2/C触媒及び比較例1に示したPt2Ru3/C触媒について、電気化学CO酸化性能を、「その場FTIR解析」により求めた。条件は以下の通りである。結果は図2に示す。
セル温度.: 25℃; 0.1 M HClO4
1) 純COを0.05 Vで、0.1 M HClO4電解質溶液に、20分流通させる。
2) Arを流通し、溶液中に溶解したCOを35分除去した。
3) 25℃で0.00 - 0.5 Vの範囲を0.25 mV/sで掃引した。解像度 8 cm-1, 25 scans
【実施例】
【0072】
実施例8
燃料として純水素を使用した場合を基準にして、水素燃料に含まれる一酸化炭素によって電圧がどの程度降下するか評価した。図1にアノード触媒として実施例5、6及び比較例1の触媒をそれぞれ用いた燃料電池の電流密度0.2A/cm2における電圧の測定結果を示す。
条件は以下の通りである。
電解質:Nafion(登録商標)NRE 212
カソード:Pt/C(0.5 mg/cm2);ガス:O2;流速:80 mL/分;70℃加湿
アノード:各種Pt2Ru3/C(0.5 mg-PtRu/cm2);
ガス:0-2000 ppm COを含む水素;流速:80 mL/分;70℃加湿
【実施例】
【0073】
実施例9
SnO2/C(80℃ N2 Dry)をTiO2/C (TiO2 2.5wt%)とした以外は、実施例5の白金担持工程を同様に行って、PtRu/TiO2/Cを得た。PtとRuの比率(モル比)は2:3であり、PtとRuに対するTiO2 (TiO2/(Pt+Ru))は、1/20である。得られたPtRu/TiO2/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経および粒子経の標準偏差は実施例1と同等であった。
【実施例】
【0074】
実施例10
SnO2/C担体(9)の熱処理のあとに、300℃で空気焼成を30分行うことを追加した以外は、実施例5と同様に行って。PtRu/SnO2/Cを得た。PtとRuの比率(モル比)は2:3であり、PtとRuに対するSnO2 (SnO2/(Pt+Ru))は、1/50である。得られたPtRu/SnO2/C触媒粒子をSTEM測定した結果、PtRu粒子の平均粒子経および粒子経の標準偏差は実施例1と同等であった。
【実施例】
【0075】
実施例11
アノード触媒として実施例9および10を用いる以外は、実施例8と同様な測定を行った。図3に結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は燃料電池分野に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2