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明細書 :ヒト間葉系幹細胞を肝細胞へ分化誘導する新規化合物の合成と解析

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6008297号 (P6008297)
登録日 平成28年9月23日(2016.9.23)
発行日 平成28年10月19日(2016.10.19)
発明の名称または考案の名称 ヒト間葉系幹細胞を肝細胞へ分化誘導する新規化合物の合成と解析
国際特許分類 C07D 487/04        (2006.01)
A61K  31/519       (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12N   5/0775      (2010.01)
FI C07D 487/04 147
C07D 487/04 CSP
A61K 31/519
A61P 1/16
A61P 43/00 111
C12N 5/0775
請求項の数または発明の数 11
全頁数 51
出願番号 特願2013-509857 (P2013-509857)
出願日 平成24年4月2日(2012.4.2)
国際出願番号 PCT/JP2012/059021
国際公開番号 WO2012/141038
国際公開日 平成24年10月18日(2012.10.18)
優先権出願番号 2011091599
優先日 平成23年4月15日(2011.4.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月10日(2015.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
発明者または考案者 【氏名】汐田 剛史
【氏名】星川 淑子
【氏名】松本 則子
【氏名】松見 吉朗
【氏名】森本 稔
【氏名】殿井 貴之
【氏名】斎本 博之
【氏名】大橋 一夫
【氏名】岡野 光夫
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 特表2009-538903(JP,A)
再生医療,2009年,VOL.8, NO.1,P.95-103, 12-14
調査した分野 C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(3)に示す化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
【化3】
JP0006008297B2_000021t.gif

【請求項2】
間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤であって、請求項1に記載の化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物を含む、分化誘導剤。
【請求項3】
Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制する、請求項2に記載の分化誘導剤。
【請求項4】
前記間葉系幹細胞が、骨髄由来細胞である、請求項2又は3に記載の分化誘導剤。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞におけるアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、及びCYP3A4からなる群から選ばれる1種以上の蛋白質の発現を誘導する、請求項2~4いずれかに記載の分化誘導剤。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞におけるグリコーゲン生産能または尿素合成能を増強する、請求項2~5いずれかに記載の分化誘導剤。
【請求項7】
Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤であって、請求項1に記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含む、Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤。
【請求項8】
間葉系幹細胞から肝細胞を生産する方法であって、インビトロにおいて間葉系幹細胞を、請求項1に記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法。
【請求項9】
移植材料を生産する方法であって、幹細胞を、請求項1に記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法。
【請求項10】
前記工程は、間葉系幹細胞を請求項1に記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含む培地で培養し、間葉系幹細胞を肝細胞に分化させる工程を含む、請求項9に記載の生産方法。
【請求項11】
前記移植材料が細胞シートである、請求項9または10に記載の生産方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤、Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤、それらを用いる肝細胞の生産方法、その生産方法による肝細胞等に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓病はわが国の国民病と言われ、多数の患者が肝臓病に苦しんでいる。また、肝細胞癌による年間死亡者数は約3万4千人に上る。最近では肝細胞癌は治療法の進歩により治療成績が向上しているが、進行癌の増加に伴い、合併する肝硬変の肝機能低下による、いわゆる肝不全死が増加している。肝不全治療は、肝移植が理想的であるが、わが国では十分なドナーを得ることは困難であり、幹細胞による肝再生治療の開発が必要である。
【0003】
肝細胞への分化する可能性のある幹細胞として、骨髄細胞、臍帯血細胞などの組織幹細胞が期待できる。そのため、多くの研究機関が、慢性肝不全患者への肝細胞移植治療による再生医療の実現のため、ヒト組織幹細胞を機能性肝細胞へ分化させる、真に臨床応用可能な効率的な分化誘導技術を開発することを目標に研究開発を行っている。
【0004】
例えば、鳥取大学医学研究科の汐田教授の研究室では、ヒト間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導時にWnt/β-カテニンシグナル経路をRNA干渉により抑制したところ肝細胞へ分化したことを報告している(非特許文献1および非特許文献3~5)。また、他の研究機関でも肝細胞を分化誘導するための研究が行われている(非特許文献2、特許文献1~2)。
【0005】
一方、最近、4,000種類以上の大規模化合物ライブラリーのスクリーニングから、Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制性の低分子化合物5種類が同定されている(非特許文献6~9)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2009-535035号公報
【特許文献2】特開2010-75631号公報
【0007】

【非特許文献1】Atsushi Yanagitani et al., "Retinoic Acid Receptor Dominant Negative Form Causes Steatohepatitis and Liver Tumors in Transgenic Mice", HEPATOLOGY, Vol. 40, No. 2, 2004, p. 366-375
【非特許文献2】Seoyoung Park et al., "Hexachlorophene Inhibits Wnt/β-Catenin Pathway by Promoting Siah-Mediated β-Catenin Degradation", Mol Pharmacol Vol. 70, No. 3, 960-966, 2006
【非特許文献3】Yoko Yoshida et al., "A role of Wnt/β-catenin signals in hepatic fate specification of human umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells", Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 293: G1089-G1098, 2007
【非特許文献4】Shimomura T et al., "Hepatic differentiation of human bone marrow-derived UE7T-13 cells: Effects of cytokines and CCN family gene expression", Hepatol Res., 37, 1068-79, 2007
【非特許文献5】Ishii K et al., "Hepatic differentiation of human bone marrow-derived mesenchymal stem cells by tetracycline-regulated hepatocyte nuclear factor 3beta" Hepatology, 48, 597-606, 2008
【非特許文献6】Maina Lepourcelet et al., "Small-molecule antagonists of the oncogenic Tcf/β-catenin protein complex", CANCER CELL, JANUARY 2004, VOL. 5, 91-102
【非特許文献7】Emami KH et al., "A small molecule inhibitor of beta-catenin/CREB-binding protein transcription", Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Aug 24;101(34):12682-7.
【非特許文献8】Jufang Shan et al., "Identification of a Specific Inhibitor of the Dishevelled PDZ Domain", Biochemistry. 2005 Nov 29; 44 (47): 15495-503
【非特許文献9】Trosset JY et al., "Inhibition of protein-protein interactions: the discovery of druglike beta-catenin inhibitors by combining virtual and biophysical screening", Proteins. 2006 Jul 1; 64 (1): 60-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
特許文献1~2では、非肝幹細胞から幹細胞を誘導するための蛋白質について説明されているが、分化誘導剤として蛋白製剤を用いているため、安定性・安全性などの面でさらなる改善の余地があった。
【0009】
非特許文献1および非特許文献3~5では、ヒト間葉系幹細胞から肝細胞を分化誘導したことを報告しているが、分化誘導剤としてsiRNAを用いているため、安定性・安全性などの面でさらなる改善の余地があった。非特許文献2、6~9には、肝細胞への分化誘導方法に関しては記載されていない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、間葉系幹細胞から肝細胞への分化を誘導する有効な低分子化合物を提供することを目的とする。または、その低分子化合物を利用した、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率に優れる安全な分化誘導法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を提供する。
【0012】
【化1】
JP0006008297B2_000002t.gif

【化2】
JP0006008297B2_000003t.gif

(式中、
R1、R2、R4、R5、及びR6は、同一又は互いに異なって、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OH、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、アリール、又はヘテロアリール;
R3、及びR7は、H、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル;
環Aは、置換されていてもよいアリール、又は置換されていてもよいヘテロアリール;
m、及びqは、1~4いずれかの整数;
nは、1~3いずれかの整数;
p及びrは、1~5いずれかの整数である。
但し、N-[(5-メチル-2-フリル)メチリデンアミノ]-2-フェノキシ-ベンザミドを除く。)
【0013】
この化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を用いれば、後述する実施例で実証されているように、間葉系幹細胞から肝細胞への分化を誘導できる。またこの化合物、その塩またはそれらの溶媒和物は、有機低分子量化合物であるため、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率に優れる安全な分化誘導法を実現できる。
【0014】
また本発明によれば、間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤であって、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含む分化誘導剤が提供される。または、式(8)に示す化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物を含む分化誘導剤が提供される。
【化3】
JP0006008297B2_000004t.gif

(式中、
R8、及びR9は、同一又は互いに異なって、置換されていてもよいC1~C6アルキル、又は置換されていてもよいC2~C6アルケニルである。)
【0015】
この分化誘導剤を用いれば、後述する実施例で実証されているように、間葉系幹細胞から肝細胞への分化を誘導できる。またこの分化誘導剤は、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率に優れる安全な分化誘導法を実現できる。
【0016】
また本発明によれば、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含むWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤が提供される。または、式(8)に示す化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物を含むWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤が提供される。
【0017】
これらのWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤によれば、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制することが可能であり、且つ有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れている。
【0018】
また、本発明によれば、間葉系幹細胞から肝細胞を生産する方法であって、間葉系幹細胞を式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法が提供される。または、間葉系幹細胞を上記の分化誘導剤で処理する工程を含む、生産方法が提供される。
【0019】
これらの生産方法は、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導を効率よく行うことができる。
【0020】
また、本発明によれば、間葉系幹細胞から分化誘導された肝細胞であって、間葉系幹細胞を式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理してなる、肝細胞が提供される。または、間葉系幹細胞を上記の分化誘導剤で処理してなる、肝細胞が提供される。
【0021】
これらの幹細胞は、有機低分子量化合物を用いて間葉系幹細胞から分化誘導されるので、蛋白製剤や核酸製剤を用いて分化誘導される場合に比べ製造時の安定性または安全性などの面で優れている。
【0022】
また、本発明によれば、再生医療用の肝組織または肝臓であって、上記の肝細胞を含む肝組織または肝臓が提供される。この肝組織または肝臓は、有機低分子量化合物を用いて間葉系幹細胞から分化誘導される幹細胞を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤を用いて分化誘導される幹細胞を用いる場合に比べ製造時の安定性または安全性などの面で優れているため、再生医療用の肝組織または肝臓として好適に使用できる。
【0023】
また、本発明によれば、上記の肝細胞を含む細胞シートが提供される。この細胞シートを用いれば、後述する実施例で実証されているように、肝障害を抑制できる。また、蛋白製剤や核酸製剤を用いて分化誘導される幹細胞を用いる場合に比べ製造時の安定性・安全性などの面で優れている。
【0024】
また、本発明によれば、上記の細胞シートと細胞シート回収用支持体とを含む、移植材料が提供される。この移植材料を用いれば、後述する実施例で実証されているように、肝障害を抑制できる。また、蛋白製剤や核酸製剤を用いて分化誘導される幹細胞を用いる場合に比べ製造時の安定性・安全性などの面で優れている。
【0025】
また、本発明によれば、移植材料を生産する方法であって、幹細胞を、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法が提供される。または、式(8)に示す化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法が提供される。これらの生産方法は、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れている。
【0026】
また、本発明によれば、間葉系幹細胞をヘキサクロロフェン、その誘導体、それらの塩、またはそれらの溶媒和物で処理し、間葉系幹細胞を肝細胞に誘導する誘導工程を含む、肝表面移植用の細胞シートの生産方法が提供される。この生産方法は、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れている。また、この生産方法で得られた細胞シートは後述する実施例で実証されているように、肝表面に移植した際に、特に優れた肝障害抑制効果を発揮する。そのためこの生産方法は、肝表面移植用の細胞シートを生産するために優れた生産方法である。
【0027】
また、本発明によれば、間葉系幹細胞をWnt/β-カテニンシグナル経路阻害剤で処理し、間葉系幹細胞を肝細胞に誘導する誘導工程を含む、肝表面移植用の細胞シートの生産方法が提供される。この生産方法で得られた細胞シートは後述する実施例で実証されているように、肝表面に移植した際に、特に優れた肝障害抑制効果を発揮する。そのためこの生産方法は、肝表面移植用の細胞シートを生産するために優れた生産方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、特定の有機低分子量化合物を用いることで、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導を効率よく安全に行うことができる。または、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例に記載のICG-001のスペクトルデータを示す図である。
【図2】実施例に記載のIC-2のスペクトルデータを示す図である。
【図3】β-catenin/TCF4/ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞の樹立方法について説明するための概念図である。
【図4】骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をIC-2で処理した場合の、増殖能を調査した結果について説明するためのグラフである。
【図5】骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をHC-1で処理した場合の、増殖能を調査した結果について説明するためのグラフである。
【図6】骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をPN-3-4で処理した場合の、増殖能を調査した結果について説明するためのグラフである。
【図7】骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をPN-3-13で処理した場合の、増殖能を調査した結果について説明するためのグラフである。
【図8】骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をPN-1-2で処理した場合の、増殖能を調査した結果について説明するためのグラフである。
【図9】IC-2等によるWnt/β-catenin活性への影響を説明するためのグラフである。
【図10】IC-2等による肝細胞分化誘導について説明するための電気泳動写真である。
【図11】IC-2等による肝細胞分化誘導について説明するための電気泳動写真である。
【図12】IC-2等による分化誘導サンプルの尿素合成能(day8、16)について説明するためのグラフである。
【図13】IC-2等による肝細胞分化誘導能(PAS染色)について説明するための顕微鏡写真である。
【図14】IC-2等による肝細胞分化誘導(day8)について説明するための蛍光顕微鏡写真である。
【図15】IC-2等による肝細胞分化誘導(day16)について説明するための蛍光顕微鏡写真である。
【図16】サイトカインの遺伝子発現を調べた結果について説明するための図である。
【図17】bFGF徐放デバイスの血管新生効果を調べた結果について説明するための図である。
【図18】皮下に細胞シートを移植したときの、肝障害抑制実験の実験方法を説明するための図である。
【図19】皮下に細胞シートを移植したときの、肝機能の変動を調べた結果を説明するための図である。
【図20】肝表面に細胞シートを移植したときの、肝臓の写真と、免疫組織化学染色の結果を説明するための図である。
【図21】肝表面の2か所に細胞シートを移植したときの、肝障害抑制実験の実験方法を説明するための図である。
【図22】肝表面の2か所に細胞シートを移植したときの、肝臓の写真である。
【図23】肝表面の2か所に細胞シートを移植したときの、肝機能の変動を調べた結果を説明するための図である。
【図24】肝表面の2か所に細胞シートを移植したときの、肝機能の変動を調べた結果を説明するための図である。
【図25】肝表面の2か所に細胞シートを移植したときの、マウスの生存率を調べた結果を説明するための図である。
【図26】肝特異的分泌蛋白質とサイトカインの遺伝子発現を調べた結果について説明するための図である。
【図27】肝表面の2か所に細胞シートを移植したときの、ヒトα1アンチトリプシンの発現量を調べた結果を説明するための図である。
【図28】間葉系幹細胞の分取方法(特開2009-060840)の概要図である。
【図29】ルシフェラーゼ活性を測定した結果を説明するための図である。
【図30】肝細胞分化マーカーの遺伝子発現を調べた結果を説明するための図である。
【図31】臨床検体の情報を説明するための図である。
【図32】肝細胞分化マーカーの遺伝子発現を調べた結果を説明するための図である。
【図33】PN-3-13又はIC-2による肝細胞分化誘導能(免疫蛍光染色)について説明するための顕微鏡写真である。
【図34】hexachlorophene、PN-3-13又はIC-2による肝細胞分化誘導能(ウレアアッセイ)について説明するためグラフである。
【図35】PN-3-13又はIC-2による肝細胞分化誘導能(PAS染色)について説明するための顕微鏡写真である。
【図36】healthy又はpatient由来の細胞シートを肝表面に移植したときの、肝機能の変動を調べた結果を説明するための図である。
【図37】肝表面の6か所に細胞シートを移植したときと、脾内注入により経門脈的に細胞移植を実施したときの、肝障害抑制実験の実験方法を説明するための図である。
【図38】マウスの生存率を調べた結果を説明するための図である。
【図39】肝機能の変動を調べた結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<化合物>
本発明の一実施形態に係る化合物は、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物である。この化合物、その塩またはそれらの溶媒和物は、有機低分子量化合物であるため、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性・安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率に優れる安全な分化誘導法を実現できる。

【0031】
式(1)及び式(2)において、R1、R2、R4、R5、及びR6は、同一又は互いに異なって、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OH、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、アリール、又はヘテロアリールである。また、R3、及びR7は、H、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニルである。また、環Aは、置換されていてもよいアリール、又は置換されていてもよいヘテロアリールである。また、m、及びqは、1~4いずれかの整数である。また、nは、1~3いずれかの整数である。また、p及びrは、1~5いずれかの整数である。但し、N-[(5-メチル-2-フリル)メチリデンアミノ]-2-フェノキシ-ベンザミドを除くこととする。

【0032】
上記R1、R2、R4、R5、及びR6は、同一又は互いに異なって、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、又はC1~C6アルコキシアミノ上記R3、及びR7はHであってもよい。また、上記環Aは、置換されていてもよいナフチル、5つのハロゲンで置換されているフェニル、又は1つのメチルで置換されているフリルであってもよい。

【0033】
本明細書において「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。

【0034】
本明細書において「アルキル」及び「アルケニル」とは、特に断らない限り、直鎖又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。

【0035】
本明細書において「C1~C6」は、炭素数が1、2、3、4、5、または6の炭化水素である。即ち、「C1~C6アルキル」は、炭素数が1、2、3、4、5、または6のアルキルである。C1~C6アルキルとしては、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等を含む。

【0036】
本明細書において「アルケニル」は、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、または5-ヘキセニル等を含む。

【0037】
本明細書において「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ等を含む。

【0038】
本明細書において「置換されていてもよい」とは、無置換、又は置換可能な位置に置換基を1、2、3、4、もしくは5個有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また置換位置は1、2、3、4、5、6、7、8、または9位であってもよい。ここで、置換基としては、例えばH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル、C2~C6アルケニル、ハロゲノC2~C6アルケニル、ヒドロキシC2~C6アルケニル、C2~C6アルケニルアミノ、C3~C6シクロアルケニル、C2~C6アルキニル、ハロゲノC2~C6アルキニル、ヒドロキシC2~C6アルキニル、C2~C6アルキニルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシアミノ、アリール、又はヘテロアリール等が挙げられる。

【0039】
本明細書において「ハロゲノC1~C6アルキル」とは、1個以上のハロゲンで置換されたC1~C6アルキルである。このハロゲンの数は、例えば1、2、3、4、5、6または13個であってもよく、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。また、ハロゲンが2個以上である場合の各ハロゲンの種類は、同一又は異なっていてもよい。ハロゲノC1~C6アルキルは、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、トリクロロエチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル等を含む。

【0040】
本明細書において「ヒドロキシC1~C6アルキル」とは、1個以上のヒドロキシで置換されたC1~C6アルキルである。このヒドロキシンの数は、例えば1、2、3、4、5、6または13個であってもよく、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。ヒドロキシC1~C6アルキルは、例えば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、又は2,3-ジヒドロキシ-n-プロピル等を含む。

【0041】
本明細書において「C1~C6アルキルアミノ」とは、1個以上のアミノで置換されたC1~C6アルキルである。このアミノの数は、例えば1、2、3、4、5、6または13個であってもよく、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。C1~C6アルキルアミノは、例えば、メチルアミノ、又はエチルアミノ等を含む。

【0042】
本明細書において「ハロゲノC1~C6アルコキシ」とは、ハロゲノC1~C6アルキルのアルキルをアルコキシに置き換えたものと等価である。ハロゲノC1~C6アルコキシは、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2-ブロモエトキシ、(1,1-ジフルオロ)エトキシ、(1,2-ジフルオロ)エトキシ、(2,2,2-トリフルオロ)エトキシ、(1,1,2,2-テトラフルオロ)エトキシ、(1,1,2,2,2-ペンタフルオロ)エトキシ、1-フルオロ-n-プロポキシ、1,1-ジフルオロ-n-プロポキシ、2,2-ジフルオロ-n-プロポキシ、3-フルオロ-n-プロポキシ、(3,3,3-トリフルオロ)-n-プロポキシ、(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ)-n-プロポキシ、4-フルオロ-n-ブトキシ、(4,4,4-トリフルオロ)-n-ブトキシ、5-フルオロ-n-ペンチルオキシ、(5,5,5-トリフルオロ)-n-ペンチルオキシ、6-フルオロ-n-ヘキシルオキシ、(6,6,6-トリフルオロ)-n-ヘキシルオキシ、2-フルオロシクロプロポキシ、2-フルオロシクロブトキシ等を含む。

【0043】
本明細書において「ヒドロキシC1~C6アルコキシ」とは、ヒドロキシC1~C6アルキルのアルキルをアルコキシに置き換えたものと等価である。ヒドロキシC1~C6アルコキシは、例えば、2-ヒドロキシエトキシ、2-ヒドロキシ-n-プロポキシ、3-ヒドロキシ-n-プロポキシ、2,3-ジヒドロキシ-n-プロポキシ、2-ヒドロキシシクロプロピル等を含む。

【0044】
本明細書において「C1~C6アルコキシアミノ」とは、C1~C6アルキルアミノのアルキルをアルコキシに置き換えたものと等価である。C1~C6アルコキシアミノは、例えば、メトキシアミノ、エトキシアミノを含む。

【0045】
本明細書において「アリール」とは、C6~14の単環、二環、または三環式芳香族炭化水素環基である。アリールは、例えばフェニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、テトラヒドロナフタレニル、インデニル、又はフルオレニル、5つのハロゲンで置換されていているフェニル等が挙げられる。またアリールは、例えばC5~8シクロアルケンとその二重結合部位で縮合した環基を含む。

【0046】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、環内に5から14個の環原子、および共有π電子系を有し、N、S、及びOよりなる群から選択されたヘテロ原子を1~4個含有する基を挙げることができる。ヘテロアリールは、例えば、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、又はイソオキサゾリル等を含む。

【0047】
本明細書において「塩」は、特に限定されないが、例えば任意の酸性(例えばカルボキシル)基で形成されるアニオン塩、または任意の塩基性(例えばアミノ)基で形成されるカチオン塩を含む。塩類には無機塩および有機塩を含み、[Berge,BighleyおよびMonkhouse、 J.Pharm.Sci., 1977, 66, 1-19]に記載されている塩が含まれる。例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩は、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩は、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。

【0048】
本明細書において「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される化合物である。溶媒和物については例えば、[J.Honig et al., The Van Nostrand Chemist's Dictionary P650 (1953)]を参照できる。溶媒が水であれば形成される溶媒和物は水和物である。この溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものが好ましい。そのような好ましい溶媒の例として、限定するものではないが、水、エタノール、および酢酸が挙げられる。最も好ましい溶媒は、水である。本発明に係る化合物またはその塩は、大気に触れるかまたは再結晶するときに水分を吸収し、場合によっては吸湿水を有するかまたは水和物となりうる。本明細書において「異性体」は、分子式は同一だが構造が異なる分子を含む。鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体、または相互に鏡像ではない不斉中心を1個以上有する異性体(ジアステレオマー)を含む。本明細書において「プロドラッグ」は、前駆体である化合物であって、その化合物を被験体へ投与した際に、代謝過程または種々化学反応によって化学的変化を起こし、本発明に係る化合物またはその塩もしくはその溶媒和物をもたらす化合物を含む。プロドラッグについては、例えば[T. Higuchi and V. Stella, "Pro-Drugs as Novel Delivery Systems", A.C.S. Symposium Series, Volume 14]を参照できる。

【0049】
本発明の一実施形態に係る化合物は、式(3)~式(5)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物であってもよい。

【0050】
【化4】
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【0051】
【化5】
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【0052】
【化6】
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【0053】
式(4)において、R7は、置換されていてもよいナフチル、または5つのハロゲンで置換されていているフェニルである。

【0054】
また本発明の一実施形態に係る化合物は、式(3)、式(5)、式(6)、及び式(7)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物であってもよい。また本発明の一実施形態に係る化合物の構造は、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率の観点からは、これらの化合物の構造に近いほど好ましい。

【0055】
【化7】
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【0056】
【化8】
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【0057】
<間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤>
本発明の一実施形態に係る間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤は、式(1)~式(7)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含む分化誘導剤である。または、式(8)及び式(9)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物を含む分化誘導剤である。これらの分化誘導剤によれば、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性・安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率に優れる安全な分化誘導法を実現できる。

【0058】
【化9】
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【0059】
式(8)においてR8、及びR9は、同一又は互いに異なって、置換されていてもよいC1~C6アルキル、又は置換されていてもよいC2~C6アルケニルである。また、本実施形態に係る間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤に含まれる化合物の構造は、間葉系幹細胞から肝細胞への分化効率の観点からは、式(3)、式(5)、式(6)、式(7)、及び式(9)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物の構造に近いほど好ましい。

【0060】
本明細書において「間葉系幹細胞」(mesenchymal stem cell)とは、間葉に由来する体性幹細胞を含む。この間葉系幹細胞は、間葉系に属する細胞への分化能をもつ。この間葉系幹細胞は、近年の骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されている。

【0061】
「間葉系幹細胞」には、例えば、骨髄間葉系細胞および臍帯血由来幹細胞が含まれる。間葉系幹細胞は間葉系組織のあるすべての組織に存在すると考えられているが、間葉系組織のなかでも骨髄間葉系幹細胞は、骨髄穿刺で容易に採取でき、培養技術も確立されている。骨髄間葉系幹細胞は骨髄間質細胞の中に含まれており、骨髄間質細胞は骨髄の中で主体となる造血細胞を支える細胞の一種である。一方、臍帯血(さいたいけつ)とは、胎児と母体を繋ぐ胎児側の組織であるへその緒(臍帯;さいたい)の中に含まれる血液を含む。この臍帯血のなかには、臍帯血由来幹細胞(造血幹細胞)が多量に含まれていることが知られている。最近、造血幹細胞以外の体性幹細胞である間葉系幹細胞(臍帯血由来の間葉性幹細胞)が臍帯血中から見出されている。これまで間葉系幹細胞は骨髄中に存在することが報告されていたが、骨髄だけでなく臍帯血も間葉系幹細胞の供給源として、骨や軟骨の組織工学的修復あるいは再生医療への臨床応用へ適用できる可能性が示されている。

【0062】
ここで、間葉系幹細胞は一般にライフスパンが短く、in vitroでの長期培養は必ずしも容易ではないが、既にhTERT遺伝子などを導入し、安定に増殖しうるヒト骨髄由来およびヒト臍帯血由来間葉系幹細胞株が樹立されている。これらの細胞は、安定に増殖するが、染色体異常がなく、コンタクトインヒビションが機能し、免疫抑制動物に移植しても腫瘍を形成しない。また、細胞分化に影響しないことから、間葉系幹細胞の分化研究に有用な細胞である。

【0063】
また、本明細書において「肝細胞」(Hepatocyte)とは、肝臓を構成する70-80%を構成する約20μm大の細胞を含む。肝細胞の一般的な働きとして、蛋白質の合成と貯蔵、炭水化物の変換、コレステロール、胆汁酸、リン脂質の合成、または内生および外生物質の解毒、変性、もしくは排出に関与することなどが挙げられる。または、胆汁の生成と分泌を促進することが挙げられる。

【0064】
本明細書において「分化」とは、多細胞生物において個々の細胞が構造機能的に変化することを含む。一般的に、多細胞生物の幹細胞から機能性細胞への分化は往々にして不可逆なケースが多い。これまでの知見では、間葉系幹細胞は、分化多能性(Multipotency)を持つとされており、分化可能な細胞系列が限定されているが、多様な細胞種へ分化可能な能力を指す。そのため、一般的に胚葉を超えた分化は行えないが、本実施形態に係る間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤は、間葉系幹細胞から肝細胞への胚葉を超えた分化を誘導する点に大きな技術的な特徴があると言える。

【0065】
一般的に、肝再生医療の細胞ソースとして、肝幹細胞を用いるのが自然であるが、肝幹細胞は劇症肝炎などの重症肝障害時にしか出現しないことから、実際の患者からの採取は現実性が低い。そこで、肝臓以外の組織幹細胞やiPS細胞が、肝再生医療の細胞ソースとなると考えられる。近年、間葉系幹細胞はin vitroの条件下で、ある程度の肝機能をもつ細胞に分化しうることが報告されている。すなわち、間葉系幹細胞に種々のサイトカインを添加し、約4週間培養し肝細胞様に分化したと報告されている。間葉系幹細胞は骨髄、腰帯血などに存在し、比較的採取が容易である。骨髄は自己細胞を用いることで免疫拒絶反応を回避できる利点がある。また、臍帯血は通常廃棄されるため、倫理的問題が少ないというメリットがある。以上より、間葉系幹細胞は肝再生医療の有望な細胞ソースといえる

【0066】
本明細書において「Wnt/β-カテニンシグナル経路」とは、脊椎動物および無脊椎動物の発生における細胞運命決定を調節している経路の一種を含む。Wntリガンドは、典型的には分泌性のFrizzled受容体に結合する糖蛋白質であり、それによりシグナルカスケードを惹起し、結果として、APC/Axin/GSK-3β複合体から多機能性キナーゼ:GSK-3βを解離させる。Wntシグナルがない場合(オフ状態)は、転写共役因子であり、細胞間接着に必須のアダプター蛋白でもあるβ-カテニンが、APC/Axin/GSK-3β複合体による分解標的となる。CK1とGSK-3βの協調作用により適切にリン酸化されると、β-カテニンはユビキチン化され、β-TrCP/SKP 複合体を介してプロテオゾームでの分解を受ける。

【0067】
Wntが結合した場合(オン状態)は、Dishevelled(Dsh)が、一見、少なくとも部分的にはリン酸化されることで活性化し、次いで、分解誘導複合体からGSK-3βを引き離す。これが、β-カテニンレベルを安定、核内輸送、さらにはLEF/TCFのDNA結合因子へのリクルートメントを促し、そこで、β-カテニンはGriucho-HDAC補助抑制因子と置き換わり、転写活性化因子として作用する。

【0068】
さらには、ホメオドメイン因子であるProp1との複合体において、β-カテニンは、転写抑制複合体と同様に状況依存的な活性化により作用することが示されている。重要なのは、いくつかのヒトの癌では、β-カテニンに、制御不能の安定化につながる点変異が見つかり、また、APCとaxinにおいても同様に変異が報告され、この経路の異常な活性化とヒト腫瘍との関連性が強調されていることである。発生過程において、Wnt/β-カテニンシグナル経路は、多くの異なる細胞種や組織において、レチノイン酸、FGF、TGF-β、BMPなどの多様な経路からのシグナルを統合する役目を担う。さらに、Wnt/β-カテニンシグナル経路の構成単位であるGSK-3βは、グリコーゲン代謝や他の主要な経路においても関連しており、それを阻害することが糖尿病や神経変性疾患には妥当な対処法とされる。

【0069】
本明細書において「低分子量有機化合物」(low molecular weight organic compound)とは、分子量2000以下の有機化合物を含む。好ましくは、この分子量は1000以下であり、特に好ましくは900以下であり、最も好ましくは800以下である。なぜなら、いわゆる核酸製剤、蛋白製剤を含む高分子は生体内外で分解されやすいため不安定であり、再生医療に活用する上では安全性の面でも不安が残る。これに対して、低分子量有機化合物は、生体内外で分解されにくいため安定であり、再生医療に活用する上では安全性の面でも有利である。また、分子量が小さいほど有機合成も容易であり、安定性、安全性などのフィージビリティにおいて優れている。なお、この低分子量有機化合物からは、ペプチドおよびヌクレオチドが除かれる。なぜなら、ペプチドおよびヌクレオチドは、生体内外で分解されやすいため不安定であり、再生医療に活用する上では安全性の面でも不安が残るからである。

【0070】
そのような中、本発明者らは、種々の低分子量有機化合物を合成し、以下の点について、検討した結果、後述する実施例で実証するように、IC-2、HC-1、PN-3-4、PN-3-13、またはPN-1-2の5種類の低分子量有機化合物(以下「IC-2等」と称することもある)が間葉系幹細胞を幹細胞に分化誘導することを発見した。
1.肝特異的転写因子発現
2.肝特異的蛋白発現
3.グリコーゲン合成
4.尿素合成
5.TCF活性によるWnt/β-カテニンシグナル経路のシグナル強度をルシフェラーゼ活性で評価

【0071】
こうして見出された本実施形態に係る間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤は、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制する有機低分子量化合物(IC-2等)を含み、これらの低分子化合物は蛋白製剤や核酸製剤に比べ、安定性、安全性などのフィージビリティにおいて優れ、再生医療の実現に有力な方法と期待される。

【0072】
なお、本実施形態において、分化誘導剤の候補物質である有機低分子量化合物が、間葉系幹細胞を肝細胞に分化誘導する性質を有するかどうか判断するには、間葉系幹細胞におけるアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、及びCYP3A4からなる群から選ばれる1種以上の蛋白質の発現を誘導するかどうかが重要な指標となる。なぜなら、一般的には、肝細胞ではこれらのアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、及びCYP3A4からなる群から選ばれる1種以上の蛋白質(以下、「アルブミン等」と称することがある)が多量に発現しているのに対して、間葉系幹細胞ではこれらのアルブミン等が少量しか発現していないからである。

【0073】
なおこのとき、アルブミン等の発現量が候補物質による処理後の間葉系幹細胞で所定の閾値を超えていれば、候補物質が間葉系幹細胞を肝細胞に分化誘導すると判定することができる。一方、これらの発現量が所定の閾値を下回れば、候補物質が間葉系幹細胞を肝細胞に分化誘導する性質を有さないと判定することができる。この閾値は、例えば処理前の間葉系幹細胞の発現量のアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、及びCYP3A4のそれぞれの平均値の1.5倍以上に設定してもよく、2倍以上に設定してもよく、5倍以上に設定してもよく、10倍以上に設定してもよい。また、この閾値は、例えば処理前の間葉系幹細胞の発現量のアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、及びCYP3A4のそれぞれの平均値よりも標準偏差の2倍以上大きい場合に設定してもよく、標準偏差の5倍以上大きい場合に設定してもよく、標準偏差の10倍以上大きい場合に設定してもよい。

【0074】
あるいは、候補物質で処理された間葉系幹細胞におけるアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、及びCYP3A4のいずれかの発現量が、例えば処理前の間葉系幹細胞の発現量に比べて有意差が認められるほど大きいかどうかで判定してもよい。有意差があるかどうかの判定としては、例えば母集団が正規分布に従うと仮定できる場合にはパラメトリック検定であるスチューデントのt検定(Student's t-test)において有意差があれば好ましい。すなわち、スチューデントのt検定において片側検定でp<0.05となればよく、より好ましくは片側検定でp<0.03となればよく、最も好ましくは片側検定でp<0.01となればよい。なお、スチューデントのt検定は特に片側検定に限定するわけではなく、両側検定で行っても良い。さらに、母集団が正規分布に従うと仮定できない場合には、ノンパラメトリック検定として、マン・ホイットニーのU検定などを行って有意差の有無を検定してもよい。

【0075】
また、本実施形態において、分化誘導剤の候補物質である有機低分子量化合物が、間葉系幹細胞を肝細胞に分化誘導する性質を有するかどうか判断するには、間葉系幹細胞におけるグリコーゲン生産能または尿素合成能を増強するかどうかが別の重要な指標となる。なぜなら、一般的には、肝細胞ではこれらのグリコーゲン生産能または尿素合成能が増強されているのに対して、間葉系幹細胞ではこれらのグリコーゲン生産能または尿素合成能が増強されていないからである。なおこのとき、上記のアルブミン等の発現量による判断の場合と同様の方法を用いて閾値または有意差によって判断することができる。

【0076】
<Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤>
本発明の一実施形態に係るWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤は、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含むWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤である。または、式(8)に示す化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物を含むWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤である。これらのWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤を用いれば、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制することが可能であり、且つ有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れている。

【0077】
式(8)においてR8、及びR9は、同一又は互いに異なって、置換されていてもよいC1~C6アルキル、又は置換されていてもよいC2~C6アルケニルである。また、本実施形態に係るWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤に含まれる化合物の構造は、Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制効率の観点からは、式(3)、式(5)、式(6)、式(7)、及び式(9)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物の構造に近いほど好ましい。

【0078】
<間葉系幹細胞から肝細胞を生産する方法>
本発明の一実施形態に係る肝細胞を生産する方法は、間葉系幹細胞を式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法である。または、間葉系幹細胞を上記の分化誘導剤で処理する工程を含む、生産方法である。これらの方法によれば、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性・安全性などの面で優れており、間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導を効率よく安全に行うことができる。

【0079】
なおこのとき、処理時間については、後述する実施例で実証されているように、間葉系幹細胞を分化誘導剤で8日以上処理する工程を含むことが好ましい。なぜなら、間葉系幹細胞から肝細胞への分化は生物的なプロセスであるため、細胞内での各種分子生物学的変化が進行するのにその程度の期間がかかってしまうからである。このとき、本実施形態にかかる分化誘導剤は有機低分子量化合物であるため安定性に優れているので、8日以上という長期にわたる処理において分解されてしまう可能性は低い。しかしながら、間葉系幹細胞の生存・増殖・変化に必要な栄養素を供給するためには培地を適宜交換することが好ましく、その際には新しく交換される培地にも交換前の培地と同程度の有機低分子量化合物を添加しておくことが好ましい。

【0080】
また、本実施形態にかかる分化誘導剤は有機低分子量化合物であるため安定性に優れているので、処理温度の高低によって分解されてしまう可能性は低い。間葉系幹細胞の生存・増殖・変化に必要な環境を維持するために培地を哺乳動物細胞の生存に適した温度にすることが好ましく、具体的には20~45℃の範囲内にしておくことがよく、特に30~40℃の間に維持することが好ましく、36~38℃前後に設定することが最も好ましい。

【0081】
この場合、間葉系幹細胞の培養方法は特に限定されないが、例えば温度応答性培養皿などの上で哺乳動物細胞の生存に適した培地中で有機低分子量化合物に接触されることが好ましい。例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle modeium;DMEM)やヒト間葉系幹細胞専用培地(Mesenchymal Stem Cell Basal Medium;MSCBM)などの培地を好適に用いることができる。

【0082】
その際、温度応答性培養皿としては、温度応答性ポリマー(PIPAAmなど)やメチルセルロースを表面に重合させた培養皿などを用いることが好ましい。なぜなら、温度を低下させるのみで細胞に損傷を与えることなく、かつ細胞間の接着を保ったまま回収することが可能だからである。

【0083】
<再生医療上の用途>
このようにして分化誘導された肝細胞は、肝細胞移植などの移植医療、薬の薬効や副作用を評価する創薬などの用途に好適に用いることができる。また、この肝細胞は、有機低分子量化合物を用いて間葉系幹細胞から分化誘導されるので、蛋白製剤や核酸製剤を用いて分化誘導される場合に比べ製造時の安定性・安全性などの面で優れている。

【0084】
また、このようにして分化誘導された肝細胞は、温度応答性培養皿やポリ-乳酸(PLA)、ポリエチレングリコール酸(PGA)などの生分解性合成ポリマーを使用した合成ポリマースキャフォールドなどの基材を用いて所望の形態に成長させて再生医療用の肝組織、肝臓、または細胞シートとしても用いることができる。このようにして立体構造を形成された再生医療用の肝組織、肝臓、または細胞シートは、肝細胞移植などの移植医療、薬の薬効や副作用を評価する創薬などの用途に好適に用いることができる。また、この肝組織、肝臓、または細胞シートは、有機低分子量化合物を用いて間葉系幹細胞から分化誘導されるので、蛋白製剤や核酸製剤を用いて分化誘導される場合に比べ製造時の安定性・安全性などの面で優れている。

【0085】
また上記肝細胞、肝組織、肝臓、または細胞シートの含有成分は、例えば、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含んでいてもよい。または、式(8)に示す化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物を含んでいてもよい。

【0086】
また上記肝細胞における遺伝子の発現量は特に限定されないが、例えば、transthyretin、apolipoprotein B、haptoglobin、fibrinogen α、及びfibrinogen βのいずれか1つ以上の遺伝子の発現量が、市販の肝細胞における上記遺伝子の発現量に比べて低減していてもよい。または、上記いずれかの遺伝子の発現量が、上記肝細胞非移植者における肝臓の肝細胞に比べて低減していてもよい。なお「市販」は、再生医療用として市販されているもの、または研究用として市販されているものを含む。また「低減」されている状態は、遺伝子の発現が有意にまたは実質的に低減されている状態を含む。又は、40、50、60、70、80、90、又は100%低減されていてもよい。この割合は、ここで例示したいずれか1つの値以上、又はいずれか2つの値の範囲内であってもよい。

【0087】
また上記肝組織、肝臓、または細胞シートにおける遺伝子の発現量は特に限定されないが、例えば、transthyretin、apolipoprotein B、C4、RBP4、RBP1、haptoglobin、fibrinogen α、及びfibrinogen βのいずれか1つ以上の遺伝子の発現量が、市販の肝細胞、肝組織、または肝臓における上記遺伝子の発現量に比べて低減していてもよい。または、上記いずれかの遺伝子の発現量が、上記肝細胞非移植者におけるの肝臓の肝細胞、肝組織、または肝臓に比べて低減していてもよい。

【0088】
また本発明の一実施形態は、本発明の実施形態に係る肝細胞、肝組織、肝臓、または細胞シートを含む、肝障害もしくは肝障害に伴って生じる疾患の治療用材料、または治療薬である。または、それらを用いた、肝障害もしくは肝障害に伴って生じる疾患の治療方法である。

【0089】
<細胞シート>
本発明の一実施形態は、上記のようにして分化誘導された肝細胞を含む、細胞シートである。この細胞シートは、後述する実施例で実証されているように、肝障害を抑制することができる。そのため、肝障害治療用として好適に使用できる。

【0090】
またこの細胞シートは、肝表面移植用であってもよい。後述する実施例では、この細胞シートを肝表面に移植したところ、特に優れた肝障害抑制効果を発揮したことが実証されている。

【0091】
またこの細胞シートを移植する場合、1層又は複数層を移植してもよい。また、移植する部位は、1カ所又は複数カ所であってもよい。なお複数は、例えば2、3、4、5、または6であってもよく、それら以上、またはそれらの範囲内であってもよい。

【0092】
本発明の一実施形態は、上記の細胞シートと、細胞シート回収用支持体とを含む、移植材料である。この移植材料を用いれば、後述する実施例で実証されているように、肝障害を抑制することができる。この移植材料の使用する際には、例えば、移植材料を患部に載せ、細胞シートを接着させた後、細胞シート回収用支持体を取り除いてもよい。この方法によれば、細胞シートを安定的に患部に適用することができる。

【0093】
本発明の一実施形態は、移植材料を生産する方法であって、幹細胞を、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法が提供される。または、式(8)に示す化合物、その塩またはそれらの溶媒和物で処理する工程を含む、生産方法が提供される。これらの生産方法によれば、有機低分子量化合物を用いるので、蛋白製剤や核酸製剤に比べ安定性または安全性などの面で優れており、移植材料の生産を効率よく行うことができる。

【0094】
この移植材料を生産する方法は、間葉系幹細胞を、式(1)及び式(2)に示す化合物群から選ばれる1種以上の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含む培地で培養し、間葉系幹細胞を肝細胞に分化させる工程を含んでいてもよい。または、式(8)に示す化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を含む培地で培養し、間葉系幹細胞を肝細胞に分化させる工程を含んでいてもよい。なお、本明細書において「移植材料」は特に限定されないが、例えば細胞シートであってもよい。また、移植材料は任意の支持体を付属していてもよい。

【0095】
本発明の一実施形態は、間葉系幹細胞をヘキサクロロフェン、その誘導体、それらの塩、またはそれらの溶媒和物で処理し、間葉系幹細胞を肝細胞に誘導する誘導工程を含む、肝表面移植用の細胞シートの生産方法である。この生産方法で得られた細胞シートは後述する実施例で実証されているように、肝表面に移植した際に、特に優れた肝障害抑制効果を発揮する。そのためこの生産方法は、肝表面移植用の細胞シートを生産するために優れた生産方法である。なお、誘導体とは、ある有機化合物を母体として考えたとき、官能基の導入、酸化、還元、または原子の置き換えもしくは原子の付加などによって、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物のことを意味する。例えば、"Burger's Medicinal Chemistry And Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1: Principles and Practice"を参照できる。

【0096】
本発明の一実施形態は、間葉系幹細胞をWnt/β-カテニンシグナル経路阻害剤で処理し、間葉系幹細胞を肝細胞に誘導する誘導工程を含む、肝表面移植用の細胞シートの生産方法である。この生産方法で得られた細胞シートは後述する実施例で実証されているように、肝表面に移植した際に、特に優れた肝障害抑制効果を発揮する。そのためこの生産方法は、肝表面移植用の細胞シートを生産するために優れた生産方法である。

【0097】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0099】
<実施例1>IC-2の合成
(1)ICG-001の合成
ICG-001は中心骨格に二環性のβ-ターン模倣構造を有するオリゴペプチドであり、β-catenin/Tcf複合体による転写活性化に対する強力なアンタゴニストとして機能することが報告されている(Drug Discov. Today 2005, 10, 1467-1474)。ICG-001の合成は文献(Tetrahedron 2007, 63, 12912-12916)に従い、検討を行なった。
【実施例】
【0100】
【化10】
JP0006008297B2_000011t.gif
【実施例】
【0101】
(1-1)化合物1の合成
1-naphtaldehyde (和光純薬)(1.56 g, 10 mmol)と 2,2-diethoxyethanamine (東京化成工業)(1.33 g, 10 mmol)を混合し100 Cで20 min撹拌した。室温まで冷却後、EtOH (20 mL)で希釈し、NaBH (0.38 g, 10 mmol)を少量ずつ加え、室温下、16 h撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりEtOHを留去し、生成物をAcOEtで抽出した。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/AcOEt = 5/1)で精製し、化合物1を得た(2.29 g, 8.5 mmol, 85 %)。
【実施例】
【0102】
【化11】
JP0006008297B2_000012t.gif
【実施例】
【0103】
(1-2)化合物3の合成
Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH (0.87 g, 1.9 mmol)のDMF (7 mL)溶液に、縮合剤HATU (0.76 g, 2.0 mmol)とdiisopropylethylamine (DIEA) (0.35 mL, 2.0 mmol)を加え、20 min撹拌後、化合物1 (0.54 g, 2.0 mmol)を加え、室温下、16 h撹拌した。反応後、減圧濃縮によりDMFを留去し、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(hexane/AcOEt = 10/1)で精製し、化合物2を得た(1.33 g, 1.9 mmol, 93 %)。得られた化合物2 (1.33 g, 1.9 mmol)をCHCl (20 mL)に溶解し、diethylamine (DEA) (10 ml, excess)を加え、室温下、2 h撹拌した。TLCで反応終了を確認後、減圧濃縮によりCHClを留去し、得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt)で精製し、化合物3を得た(0.92 g, 1.8 mmol, 92 %)。
【実施例】
【0104】
【化12】
JP0006008297B2_000013t.gif
【実施例】
【0105】
(1-3)化合物5の合成
Fmoc-β-Ala-OH (0.53 g, 1.7 mmol)のDMF (8 mL)溶液に、縮合剤HATU (0.70 g, 1.8 mmol)とdiisopropylethylamine (DIEA) (0.32 mL, 1.8 mmol)を加え、20 min撹拌後、化合物3 (0.92 g, 1.8 mmol)を加え、室温下、14 h撹拌した。反応後、減圧濃縮によりDMFを留去し、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(hexane/AcOEt = 1/1)で精製し、化合物4を得た(1.2 g, 1.5 mmol, 82 %)。得られた化合物4 (1.2 g, 1.5 mmol)をCHCl (20 mL)に溶解し、diethylamine (DEA) (9 mL, excess)を加え、室温下、1 h撹拌した。TLCで反応終了を確認後、減圧濃縮によりCHClを留去し、得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 1/1)で精製し、化合物5を得た(0.66 g, 1.2 mmol, 80 %)。
【実施例】
【0106】
【化13】
JP0006008297B2_000014t.gif
【実施例】
【0107】
(1-4)化合物7の合成
化合物5(0.66 g, 1.2 mmol)のCHCl溶液(8 mL)にbenzylisocyanate (0.16 g, 1.2 mmol)のCHCl溶液(8 mL)を加え、室温下、12 h撹拌した。TLCで反応終了を確認後、減圧濃縮によりCHClを留去し、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 1/1)で精製し、化合物6を得た(0.59 g, 0.85 mmol, 73 %)。得られた化合物6(0.59 g, 0.85 mmol)を蟻酸(9 ml)中で室温下、20 h撹拌した。減圧濃縮により蟻酸を留去し、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(AcOEt)で精製し、化合物7a (ICG-001)を白色個体として得た(0.26 g, 0.48 mmol, 57 %)。
得られた生成物は、MSスペクトルおよび、H NMRスペクトル(文献値と一致)から同定した(図1)。
【実施例】
【0108】
【化14】
JP0006008297B2_000015t.gif
【実施例】
【0109】
(2)IC-2の合成
上記(1)の合成法において、上記(1-2)の化合物3の合成の際に、「Fmoc-L-Tyr(t-Bu)-OH」を「Fmoc-L-Phe(t-Bu)-OH」に代えて合成を行った。これによりICG-001の側鎖を変換した、誘導体IC-2 ((6S,9aS)-6-phenyl-8-naphthalen-1-ylmethyl-4,7-dioxo-hexahydro-pyrazino[1,2-a]pyrimidine-1-carbocylic acid benzylamide)(全収率29%)を合成した。スペクトルデータを図2に示す。
【実施例】
【0110】
【化15】
JP0006008297B2_000016t.gif
【実施例】
【0111】
<実施例2>HC-1の合成
Hexachloropheneは防虫剤、殺菌剤、消毒剤などに用いられている高度に塩素化されたフェノール性化合物である。ここでは、Hexachloropheneのフェノール性水酸基をメチル基でキャップした誘導体を合成した。hexachlorophene(東京化成工業)(417 mg, 1.0 mmol)のacetone溶液(10 mL)にMeI (1.0 mL, 16 mmol)、KCO (5.3 g, 36 mmol)を加え、14 h撹拌した。過剰のKCOを除去し、NaSOで乾燥後、溶媒を留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(hexane/AcOEt =7/1)で精製し目的のhexachlorophene誘導体(メチルエーテル体)(bis(2,3,5-trichloro-6-methoxyphenyl)methane)を得た(355 mg, 0.85 mmol, 85 %)。このメチルエーテル体をH NMRで分析した。
【実施例】
【0112】
【化16】
JP0006008297B2_000017t.gif
【実施例】
【0113】
<実施例3>PN-3-4の合成
Phenoxy benzhydrazide (和光純薬)(0.46 g, 2.0 mmol, 1.0 eq)をEtOHに溶解させ、1-naphtaldehyde ( 0.32g, 2.0 mmol, 1.0 eq )を加えて室温で22時間攪拌。22時間後反応溶液を濾過し、EtOHで再結晶して目的物を得た(403 mg, 58 %)。
【実施例】
【0114】
【化17】
JP0006008297B2_000018t.gif
【実施例】
【0115】
得られたPN-3-4(N'-[(E)-1-naphtylmethylidene]-2-phenoxybenzohydrazide)の分析結果は以下の通りである。
H-NMR (400 MHz, CDCl
6.83-8.78 ( m , 16H , Ar-H) 8.82 (s , 1H, -CONHN=CHC), 10.79 (s , 1H , CONHN=CH)
IR(KBr) 758, 1249, 1358, 1371, 1449, 1481, 1662, 2969, 3082 cm-1
MS (EI) Found: m/z 366. Calcd for C2418: M+, Mol. Wt.: 366.41
Anal. Found: C, 78.37; H, 5.02; N, 7.68; O, 8.98 %. Calcd for C2418: C, 78.67; H, 4.95; N, 7.65; O, 8.73
【実施例】
【0116】
<実施例4>PN-3-13の合成
上記実施例3において、1-naphtaldehydeをpentafluorobenzaldehyde(東京化成工業)に変えて合成を行った。Phenoxy benzhydrazide ( 0.24 g, 1.0 mmol, 1.0 eq)をEtOHに溶解させ、 pentafluorobenzaldehyde( 196 g, 1.0 mmol, 1.0 eq )を加えて室温で14時間攪拌。14時間後反応溶液を濾過し、EtOHで再結晶して目的物を得た(287 mg,, 71 %)。
【実施例】
【0117】
【化18】
JP0006008297B2_000019t.gif
【実施例】
【0118】
得られたPN-3-13(N'-[(E)-pentafluoropheylmethylidene]-2-phenoxybenzohydrazide)の分析結果は以下の通りである。
H-NMR (400 MHz, CDCl
6.79-8.37( m , 9H , Ar-H) 8.53 (s , 1H, -CONHN=CH-C), 10.92 (s , 1H , CONHN=CH)
IR(KBr) 750, 980, 1231, 1493, 1518, 1659, 3285 cm-1
MS (EI) Found: m/z 406. Calcd for : C2011 M Mol. Wt.: 406.31
【実施例】
【0119】
<実施例5>PN-1-2の合成
上記実施例3において、1-naphtaldehydeを3-phenoxy benzhydrazide(和光純薬)に変えて合成を行った。3-Phenoxy benzhydrazide ( 0.78 g, 3.4 mmol, 1.0 eq)をEtOHに溶解させ、5-methyl-furfural ( 0.43 g, 3.4 mmol, 1.0 eq )を加えて室温で14時間攪拌。14時間後反応溶液を濾過し、EtOHで再結晶して目的物を得た(318 mg, 29 %)。
【実施例】
【0120】
【化19】
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【実施例】
【0121】
得られたPN-1-2(N'-[(E)-(5-methyl-2-fulyl)methylidene]-3-phenoxybenzohydrazide)の分析結果は以下の通りである。
H-NMR (400 MHz, CDCl
2.35 { s , 3H , -CH=C(CH)} 6.11{ s , 1H , -CHC(CH)}6.69{ s , 1H , -CHCHC(CH)} 7.03-7.52 ( m , 9H , Ar-H) 8.48 (s , 1H, -CONHN=CH-), 8.92 (s , 1H , CONHN=CH)
IR(KBr) 746, 1018, 1233, 1287, 1300, 1489, 1580, 1651, 3048, 3194 cm-1
MS (EI) Found: m/z 320. Calcd for C1916: M, Mol. Wt.: 320.34
Anal. Found: C, 71.25; H, 5.04; N, 8.79; O, 14.92 %. Calcd for : C1916 C, 71.24; H, 5.03; N, 8.74; O, 14.98
【実施例】
【0122】
<実施例6>Luciferase発現ベクター安定導入株の構築(UE7T-13)
図3は、β-catenin/TCF4/ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞の樹立方法について説明するための概念図である。図1に示すように、Luciferase発現ベクターを用いてpTCF4-CMVpro-GL4.20プラスミドを構築した。TCF4-CMVpro-GL4.20プラスミドは、3回繰り返しのTCF4配列CCTTTGATCをCMVプロモーターの上流に含み、luciferaseを発現する。また、pCMVpro-GL4.20プラスミドをコントロールとして構築した。得られたプラスミドをそれぞれ線状化し、UE7T-13にエレクトロポレーションによって導入し、培地中に加えたPuromycin(0.25μg/ml)によって選別した。Puromycin耐性の細胞はクローン化し、luciferaseアッセイに用いることにした。
【実施例】
【0123】
<実施例7>IC-2等の試験例
骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をIC-2等で処理した場合について、(1)増殖能(毒性)の検討、(2)Wnt/β-catenin経路抑制能の検討、(3)肝細胞分化能の検討を行った。
【実施例】
【0124】
(1)増殖能(毒性)の検討(MTTアッセイ(UE7T-13))
ヒト間葉系幹細胞株UE7T-13を細胞密度が9.0x10cells/cmになるように96well plate(底面積:0.3cm)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS,JRH Biosciences,INC)、100U/ml penicillin、100ug/ml streptomycin(Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM,ニッスイ)にて培養した。この時点をday0とする。翌日(day1)、IC-2等を含むDMEMにメディウムチェンジした。以降、day2、day4、day8にTetraColor one(生化学工業)を用いて測定を行い、UE7T-13の細胞増殖への影響を検討した。培養液に含まれるDMSOは、終濃度が0.1%となるようにした。
【実施例】
【0125】
骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)をIC-2等で処理した場合の結果を図4~8に示す。IC-2等で処理すると、骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)の増殖が若干抑制される場合があったが、増殖能自体は維持されていた(50μM IC-2の2、4、8日後のとき、及び10μM PN-1-2の8日後のときを除く)。すなわち、IC-2等による骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)への細胞毒性は十分に低く、分化誘導剤として使用可能な水準であることが判明した。特に、20μM以下のIC-2、8μM以下のHC-1、30μM以下のPN-3-4、10μM以下のPN-3-13、40μM以下のPN-1-2を用いたとき、骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)への細胞毒性は非常に低いことが判明した。
【実施例】
【0126】
(2)Wnt/β-catenin経路抑制能の検討(Luciferaseアッセイ(UE7T-13))
24well plateにLuciferase発現ベクター安定導入株を播種し、37℃で培養した。翌日、IC-2等を含むメディウムに交換し、37℃で培養した。その後、1,4,8日後にluciferase活性をLuciferase Assay System(Promega)を使用し、556nmの波長を蛍光プレートリーダー(ARVIO)で測定した。
【実施例】
【0127】
その結果、pTCF4-CMVルシフェラーゼプラスミドによるレポーターアッセイにより、15μM以上のIC-2で骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)を処理すると、処理8日後にはWnt/β-カテニンシグナル経路が有意に抑制されていることを確認した(図9)。また、2μM以上のHC-1で骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)を処理すると、処理8日後にはWnt/β-カテニンシグナル経路が有意に抑制されていることを確認した。また、20μM以上のPN-3-4で骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)を処理すると、処理8日後にはWnt/β-カテニンシグナル経路が有意に抑制されていることを確認した。また、9μM以上のPN-3-13で骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)を処理すると、処理8日後にはWnt/β-カテニンシグナル経路が有意に抑制されていることを確認した。また、3μM以上のPN-1-2をで骨髄由来細胞(UE7T-13細胞)を処理すると、処理8日後にはWnt/β-カテニンシグナル経路が有意に抑制されていることを確認した。
【実施例】
【0128】
(3)肝細胞分化能の検討
(3-1) 分化誘導(UE7T-13)
6well plateに細胞密度が9.0x10cells/cmになるように播種し、37℃で24時間培養した。24時間後に、IC-2等を含むメディウムに交換した。以降、週に2回培地交換し、週に1回継代して細胞数を9.0x10cells/cmに調整した。誘導開始から8、16、24日目にTotal RNAを回収した。
【実施例】
【0129】
(3-2) Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction(UE7T-13)
Total RNAは、TRIzol試薬で抽出した。抽出後、DNAを完全に除くため、Deoxyribonucleaseを加えて37℃で1時間インキュベートした。逆転写反応には、SuperScript First-Stand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen)を使用し、1μgのRNAをOligo dT PrimerにてcDNAへ変換した。PCRには、cDNAを5倍希釈し、そのうち1μlを使用した。PCR反応には、Taq DNA polymerase,recombinat(Invitrogen)を使用した。ヒトアルブミンのプライマーは、5'-TTGGAAAAATCCCACTGCAT-3'(配列番号:1)と5'-CTCCAAGCTGCTCAAAAAGC-3'(配列番号:2)を用いた。PCR反応は、95℃2分で1サイクル、95℃30秒、58℃30秒、72℃30秒で35サイクル施行した。内部対照としてヒトglyceradehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)を用いた。GAPDHプライマーは、5'-GTCTTCTCCACCATGGAGAAGGCT-3'(配列番号:3)と5'-CATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCA-3'(配列番号:4)を用いた。PCR反応は、95℃2分で1サイクル、95℃30秒、60℃30秒、72℃30秒で20サイクル施行した。PCR産物は、エチジウムブロマイドの入った2%アガロースゲルで30分間電気泳動し、トランスイルミネ—ターを用いて写真を撮った。
【実施例】
【0130】
図10及び11は、IC-2等による肝細胞分化誘導について説明するための電気泳動写真である。IC-2等による処理の結果、肝細胞への分化誘導の代表的なマーカーであるアルブミンの発現量がいずれもコントロールにくらべて明らかに増大していた。アルブミン発現量は、15μMのIC-2で処理したときが特に多かった。なお、GAPDHはインターナルコントロールであり、被検物質と同量のRNAを用いている。HuH-7はヒト肝癌細胞株である。PNU-74654(N-[(5-メチル-2-フリル)メチリデンアミノ]-2-フェノキシ-ベンザミド)は、β-cateninとTCFとの相互作用を妨げることによって、Wnt-βcatenin経路を抑制することが報告されている低分子化合物である。
【実施例】
【0131】
(3-3)Ureaアッセイ(UE7T-13)
細胞を24well plateに播種し、IC-2等を含む培地で培養した。メディウムに塩化アンモニウム(終濃度5mM)を加え、48,72,96時間培養後にメディウム中の尿素量をQuantiChrom Urea Assay Kit(BioAssay Systems)を使用し、520nmの波長を蛍光プレートリーダー(TECAN)を用いて測定した。
【実施例】
【0132】
図12は、IC-2等による分化誘導サンプルの尿素合成能(day8、16)について説明するためのグラフである。IC-2等による肝細胞分化誘導能(尿素合成能測定)を8日間行った結果、細胞の尿素合成能がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大していた。さらに、ポジティブコントロール(HuH-7)にくらべて、同程度か同程度以上に増大していた。
【実施例】
【0133】
また、IC-2等による肝細胞分化誘導能(尿素合成能測定)を16日間行った場合にも、細胞の尿素合成能がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大していた。さらに、ポジティブコントロール(HuH-7)にくらべて、同程度か同程度以上に増大していた。特に、IC-2で処理したときの尿素合成能は顕著に高かった。以上の結果は、IC-2等で処理した細胞が単に肝細胞マーカーを有するのみでなく、機能性肝細胞としての能力をもつことを示している。
【実施例】
【0134】
(3-4)Periodic Acid-Schiff(PAS)染色(UE7T-13)
6well plateに70% EtOHで滅菌したカバーガラス(22x22mm,MATSUNAMI)を入れ、その上に細胞を播種し、IC-2等を含む培地で培養した。培養開始から8,16,24日後にPBSで2回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド/PBSで細胞を20分間処理してカバーガラスに固定した。陰性対照として、10mg/mlのα-アミラーゼ(10mg/ml,0.1M リン酸緩衝液,pH6.8)で1時間、37℃でインキュベートしてグリコーゲンを消化した。1%過ヨウ素酸水溶液で10分間酸化処理した後、Schiff試薬で15分間処理してグリコーゲンを染色し、亜硫酸水溶液で3回、蒸留水で3回洗浄した。Mayer's hematoxylinで核染色した後、カバーガラスをPBSで希釈した50% glycerolで封入し、光学顕微鏡下で観察した。0.1% DMSOで培養した細胞をコントロールとした。
【実施例】
【0135】
図13は、IC-2等による肝細胞分化誘導能(PAS染色)について説明するための顕微鏡写真である。IC-2等による肝細胞分化誘導能(PAS染色)を行った結果、細胞内のグリコーゲンの蓄積量がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大して、ポジティブコントロール(肝癌細胞のHuH7)と同等になっていた。
【実施例】
【0136】
また、IC-2等以外に、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制する化合物を合成した。この化合物と、ICG-001、PNU-74654について、上記と同様にPAS染色で肝細胞分化誘導能を評価した。その結果、いずれの化合物を使用した場合にも、細胞内のグリコーゲンの蓄積量はネガティブコントロールにくらべて増加しなかった。このことから、本実施例において、間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導ができたことは、IC-2等が特定の構造を有しているためだということがわかった。
【実施例】
【0137】
(3-5)Immunocytochemistry(UE7T-13)
6well plateに70% EtOHで滅菌したカバーガラス(22x22mm,MATSUNAMI)を入れ、その上に細胞を播種し、IC-2等を含む培地で培養した。培養開始から8,16,24日後にPBSで2回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド/PBSで細胞を20分間処理してカバーガラスに固定した。その後、0.2% Triton X-100で10分間透過処理した。3% BSA/PBSで30分間処理してブロッキングした。一次抗体としてanti-albumin antibody, anti-C/EBP antibody, anti-AFP antibody, anti-CYP1A1 antibodyを用い、4℃で一晩インキュベートした。次に、二次抗体としてAlexa Fluoro 488 goat anti-mouse antibody、Alexa Fluoro 594 goat anti-rabbit antibodyを用い、室温で1時間インキュベートした。核染色にDAPIを用いた。カバーガラスをPBSで希釈した50% glycerolで封入し、共焦点レーザー顕微鏡下で観察した。0.1% DMSOで培養した細胞をコントロールとした。
【実施例】
【0138】
図14は、IC-2等による肝細胞分化誘導(day8)について説明するための蛍光顕微鏡写真である。IC-2等による肝細胞分化誘導を行った結果、IC-2等による処理8日後には、肝細胞への分化誘導の代表的なマーカーであるアルブミン、C/EBPα、CYP1A1、CYP3A4などのマーカーの発現量がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大して、ポジティブコントロール(Huh-7)に近い量になっていた。図15は、IC-2等による肝細胞分化誘導(day16)について説明するための蛍光顕微鏡写真である。IC-2等による処理16日後についても、同様の結果を得た。特に、IC-2で処理したときのマーカーの発現量は顕著に高かった。なお、DAPIはコントロールとして各染色を行ったときの蛍光顕微鏡写真である。
【実施例】
【0139】
<結果の考察>
以上の実験結果から、本発明者らは、IC-2等を用いて間葉系幹細胞を機能性肝細胞へ分化誘導可能であることを明らかにした。同時に、肝再生医療の実現化に向けて、間葉系幹細胞は肝再生医療の細胞ソースとして有用であることを明らかにした。また分化誘導には、IC-2等によるWnt/β-カテニンシグナル経路の抑制が有効であった。これらは、真に臨床応用可能な肝再生医療の開発をしていく上で重要な知見である。
【実施例】
【0140】
<実施例8>肝特異的分泌蛋白質とサイトカインの遺伝子発現の評価
骨髄由来間葉系幹細胞(UE7T-13細胞)を化合物hexachlorophene(Sigma-Aldrich社、H4625-25G)、IC-2で処理した場合の肝特異的分泌蛋白質とサイトカインの遺伝子発現を検討した。まず、骨髄由来間葉系幹細胞(UE7T-13細胞)を細胞密度が9.0×103 cells/cm2となるように6-well plate (底面積:9.6cm2)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS, JRH Biosciences, INC)、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM, ニッスイ)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0141】
day 1に相当する翌日に最終濃度0.8 μM hexachlorophene、15 μM IC-2を含むDMEMで培地交換を行った。day 4で培地交換、day 8で継代して細胞数を9.0×103 cells/cm2に調整し直し再播種した。以降、8日間に2回の培地交換、8日毎の継代を同様の操作でday 24まで実施した。誘導開始から8、16、24日目にTRIzol (Invitrogen)を用いて添付文書の方法に従い、Total RNAを抽出した。抽出後、Deoxyribonuclease (NipponGene)を加え37℃、30分間incubation し、DNAの除去を行った。逆転写反応には、1 μgのRNA にSuperScriptII Reverse Transcriptase (Invitrogen)、Oligo(dt)15 primerを加えcDNAへ変換した。RT-PCR法には、cDNAを5倍希釈後、そのうちの1 μlを鋳型として使用し、rTaq DNA polymerase (TOYOBO)により増幅した。陰性対照はMQ水を、陽性対照はHuh-7もしくはUE7T-13細胞のcDNAを使用した。
【実施例】
【0142】
PCR反応に用いた、ヒト肝特異的分泌タンパク遺伝子発現検出用プライマーの各配列を記す。アルブミンは5’-TTGGAAAAATCCCACTGCAT-3’ (配列番号: 1)と5’-CTCCAAGCTGCTCAAAAAGC-3’ (配列番号: 2)、α1アンチトリプシンは5’- CAAGGAGCTTGACAGAGACACAGTTTTT-3’ (配列番号: 5)と5’- GTGTCCTTGACTTCAAAGGGTCTCT-3’ (配列番号: 6)、セルロプラスミンは5’- CGACTTGGGATTATGCCTCTGACC-3’ (配列番号: 7)と5’- CCCAATTCTATCTGGGCCATTTTGA-3’ (配列番号: 8)、トランスサイレチンは5’- AAGGCACTTGGCATCTCCCCA-3’ (配列番号: 9)と5’- CAGGGCGGCAATGGTGTAGC-3’ (配列番号: 10)、アポリポ蛋白Eは5’- GTCCTTCCCCAGGAGCCGAC-3’ (配列番号: 11)と5’- GTCTCCACCGCTTGCTCCAC-3’ (配列番号: 12)、アポリポ蛋白Bは5’- GCTTCAAGCCCATCCGCACA-3’ (配列番号: 13)と5’- TGACAGGACTGGCTGCTGCT-3’ (配列番号: 14)、補体C3は5’- CAGCACCATGGGACCCACCTCAG-3’ (配列番号: 15)と5’- CTCTCCAGCCGCAAGATGTTGGG-3’ (配列番号: 16)、補体C4は5’- ACTTTGAGACCGAGGGGCCC-3’ (配列番号: 17)と5’- GGCACTTCCTGCACAGCCTC-3’ (配列番号: 18)、レチノール結合タンパク4は5’- CCCAGAAGCGCAGAAGATT-3’ (配列番号: 19)と5’- AAGGTTTCTTTCTGATCTGCCAT-3’ (配列番号: 20)、レチノール結合タンパク1は5’- CTTGTGGCCAACTGGCTC-3’ (配列番号: 21)と5’- GCTTCAGCAAGTTGGCGA-3’ (配列番号: 22)、ハプトグロビンは5’- TTCCAGAGGCAAGACCAACC-3’ (配列番号: 23)と5’- TGCCTGAGTCCACTGCAAA-3’ (配列番号: 24)、フィブリノゲンαは5’- AGGATTCTCATTCGTTGACCAC-3’ (配列番号: 25)と5’- TCTGACACTCGGTTGTAGGT-3’ (配列番号: 26)、フィブリノゲンβは5’- AAAGTTAGAATCTGATGTCTCAGCTCAA-3’ (配列番号: 27)と5’ -CTTTCCTGATAATTTCCTCACATTCTTT-3’ (配列番号: 28)、内部対照のGAPDHは5’- AGCCACATCGCTCAGACAC-3’ (配列番号: 29)と5’- GCCCAATACGACCAAATCC-3’ (配列番号: 30)を使用した。
【実施例】
【0143】
PCR反応は、94℃2分を1サイクル後、94℃30秒、各プライマーに対応する温度で30秒、72℃30秒を35サイクル、72℃5分を1サイクル施行した。各プライマーに対応する温度は、アルブミンが58℃、補体C3が68℃、レチノール結合タンパク4は60℃、レチノール結合タンパク1ならびにハプトグロビンは56℃、それ以外は全て64℃で行った。
【実施例】
【0144】
PCR反応に用いた、ヒトサイトカイン遺伝子発現検出用プライマーの各配列を記す。インターロイキン6 (IL6)は5’-CCAGAGCTGTGCAGATGAG-3’ (配列番号: 31)と5’-GTCAGCAGGCTGGCATTT-3’ (配列番号: 32)、インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL1ra)は5’-CAGCTGGAGGCAGTTAACAT-3’ (配列番号: 33)と5’-CGCCTTCGTCAGGCATATTG-3’ (配列番号: 34)、肝細胞増殖因子(HGF)は5’-CCCTTCAATAGCATGTCAAGTGG-3’ (配列番号: 35)と5’-GTTCCCTTGTAGCTGCGT-3’ (配列番号: 36)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は5’-TTGCCTTGCTGCTCTACCT-3’ (配列番号: 37)と5’-TCCATGAACTTCACCACTTCGT-3’ (配列番号: 38)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)は5’-CTGAAGGGAAGAACCGCTTG-3’ (配列番号: 39)と5’-AGCCTTTCTTTATTGATCTGCCACA-3’ (配列番号: 40)、 トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は5’-CTGCGTCTGCTGAGGC-3’ (配列番号: 41)と5’-TCCACGGCTCAACCACTG-3’ (配列番号: 42)、上皮成長因子(EGF)は5’-TGGGTCAAGGCAAGAGAGAGTA-3’ (配列番号: 43)と5’-GATTCCTTCCTGTTGATTTGACCA-3’ (配列番号: 44)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は5’-GGGTCCGGGAGAAGAGC-3’ (配列番号: 45)と5’-GCCAGGTAACGGTTAGCAC-3’ (配列番号: 46)、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)は5’-GGACCGGAAAGTCCGT-3’ (配列番号: 47)と5’-GCTCCTCCTTGTTTGGTGT-3’ (配列番号: 48)、アンフィレグリン(AREG)は5’-AACGAAAGAAACTTCGACAAGAGA-3’ (配列番号: 49)と5’-ATGATCCACTGGAAAGAGGACC-3’ (配列番号: 50)、幹細胞因子(SCF)は5’-AGGGACAGTGGAGAGGG-3’ (配列番号: 51)と5’-GCAAGTGAGAATCCAAGTTTGTGT-3’ (配列番号: 52)、アンジオジェニンは5’-TTCCATTGTCCTGCCCG-3’ (配列番号: 53)と5’-AAGTGTGTGTACCTGGAGTTATC-3’ (配列番号: 54)、アンジオポエチンは5’-ATGTGCAAATGTGCCCTCA-3’ (配列番号: 55)と5’-TCGCTTCTGACATTGCGCT-3’ (配列番号: 56)、腫瘍壊死因子(TNFα)は5’-CCCAGGGACCTCTCTCTAATC-3’ (配列番号: 57)と5’-GGCCAGGAGGGCATTG-3’ (配列番号: 58)、ファス抗原(Fas)は5’-GTTGGTGGACCCGCTCAGTA-3’ (配列番号: 59)と5’-AACAGACGTAAGAACCAGAGGTAG-3’ (配列番号: 60)、 組織メタロプロテアーゼ阻害物質3 (TIMP3)は5’-GGCAGCAGCGGCAATG-3’ (配列番号: 61)と5’-CCACCTTGGCCCGGATCA-3’ (配列番号: 62)、 内部対照のGAPDHは5’- AGCCACATCGCTCAGACAC-3’ (配列番号: 63)と5’- GCCCAATACGACCAAATCC-3’ (配列番号: 64)を使用した。
【実施例】
【0145】
PCR反応は、94℃2分を1サイクル後、94℃30秒、各プライマーに対応する温度で30秒、72℃30秒を35サイクル、72℃5分を1サイクル施行した。各プライマーに対応する温度は、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)、アンフィレグリン(AREG)、幹細胞因子(SCF)、腫瘍壊死因子(TNFα)、ファス抗原(Fas)が60℃、それ以外は全て56℃で行った。PCR産物はエチジウムブロマイドを入れた2%アガロースゲルで30分間電気泳動し、トランスイルミネ—ターを用いて電気泳動像を取得した。
【実施例】
【0146】
図16に、肝特異的分泌蛋白質とサイトカインの遺伝子発現を調べた結果を示す。その結果、hexachlorophene、またはIC-2で処理して得られた肝細胞において、複数の肝特異的分泌蛋白質、及びサイトカインの発現が見られた。また、分化誘導をしても尚、肝再生に有効な(間葉系幹細胞が本来発現している)肝特異的分泌蛋白質またはサイトカインの発現を維持していることがわかった。
【実施例】
【0147】
<実施例9>bFGF徐放デバイスの作製
bFGF徐放デバイスの作製法は、American Journal of Transplantation 2006; 6: 50-59ならびにNature Medicine 2007; 13(7): 880-885に準ずる。bFGF徐放デバイスは免疫不全マウスNOD-SCIDマウスの背部皮下に埋め込み血管新生を誘導した。まず、NOD-SCIDマウス体重1gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入後マウスの左背部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具によりbFGFデバイスを埋め込む位置の1cm弱尾側の箇所を皮下組織のみ体軸方向に対して垂直に約1.5cm~2.0cm、切開した。切開口より術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具を皮下に沿って頭側に向かって、デバイスを埋め込む位置より奥に進めた。その後、術用ハサミを皮下で開くことで、マウス皮下にデバイスを埋め込み可能な空間を作った。この空間にbFGFデバイスを入れ、縫合クリップもしくは縫合糸により切開口を縫合した。
【実施例】
【0148】
10日間~12日間、通常飼育を行い、10~12日後、bFGFデバイスを埋め込んだ日同様に、NOD-SCIDマウス体重1gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。bFGFデバイスを埋め込んだ部位の周囲を術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により切開し、皮下組織を摘出した。対照として同じNOD-SCIDマウスのbFGFを埋め込んでいない右背部の皮下を同様に切開し摘出した。摘出した皮下組織は、4% パラホルムアルデヒド (nacalai tesque)により固定を行った。固定後の組織はパラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を実施した。これによりbFGFデバイスの皮下埋め込みによる血管新生効果を確認した(図17)。
【実施例】
【0149】
<実施例10>細胞シートの作製及び皮下移植
7週齢の雄のNOD-SCIDマウスを4群に分けた(図18)。第1群は、細胞シートの移植を行わない偽移植群とし、第2群は細胞シートを血管新生後の皮下へ1枚移植を実施する群、第3群は細胞シートを血管新生後の皮下へ2枚移植を実施する群、第4群は細胞シートを血管新生後の皮下へ3枚移植を実施する群とした。4群共に細胞シート移植実施日の12日前にbFGFデバイスをマウスの背部皮下に埋め込み血管新生を誘導した。
【実施例】
【0150】
まず、NOD-SCIDマウス体重1gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入後マウスの左背部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具によりbFGFデバイスを埋め込む位置の1cm弱尾側の箇所を皮下組織のみ体軸方向に対して垂直に約1.5cm~2.0cm、切開した。切開口より術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具を皮下に沿って頭側に向かって、デバイスを埋め込む位置より奥に進めた。その後、術用ハサミを皮下で開くことで、マウス皮下にデバイスを埋め込み可能な空間を作った。この空間にbFGFデバイスを入れ、縫合クリップもしくは縫合糸により切開口を縫合した。
【実施例】
【0151】
12日間の通常飼育後、細胞シートを移植した。細胞シートの作製は以下の要領で行った。移植8日前に、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞を細胞密度が9.0×103 cells/cm2となるようにUpCell細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材6 cm dish (セルシード)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS, JRH Biosciences, INC)、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM, ニッスイ)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0152】
day 1に相当する翌日に最終濃度0.8 μl hexachloropheneを含むDMEMで培地交換を行った。day 4でday 1同様に培地交換を行い、細胞シート移植前日に相当するday 8に、ディッシュの底面の辺縁部をディスポーザブルチップ等の尖端でこそぎ、室温に戻した培地で培地交換を行った後に20℃、5%CO2条件下で20分以上インキュベートし、細胞をシート化した。移植実施まで細胞シートは、20℃、5%CO2条件下に置いた。
【実施例】
【0153】
bFGFデバイス埋め込みから12日後、第2群から第4群のマウスへ細胞シートを移植した。まず、NOD-SCIDマウス体重1gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。bFGFデバイスを埋め込み時の切開口を再切開し、切開部の背側の端から直角に頭側にむけて術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具を用いて皮下組織のみ切開し、皮下組織を開き、bFGFデバイスを取り除いた。血清を含まないDMEMで培地交換し培地をきれいに取り除いた細胞シートの上に細胞シート回収用支持体Cell Shifter(セルシード)をのせ、その支持体と共に細胞シートをピンセット等で回収し、bFGFデバイスにより血管新生を生じた部位に支持体ごと細胞シートをのせた。約3分から5分そのまま細胞シートが接着するまで待ち、細胞シートがマウス皮下に接着したことを確認した後に、細胞シート回収用支持体のみピンセット等で取り除いた。
【実施例】
【0154】
第2群は細胞シート1枚移植後、縫合クリップもしくは縫合糸により切開口を縫合した。第3群・第4群に関しては、細胞シート回収用支持体をピンセット等で取り除いた後、同様の操作により2枚目の細胞シートをすでに移植した1枚目の細胞シートの上に移植した。第3群は細胞シート2枚移植後、縫合クリップもしくは縫合糸により切開口を縫合した。第4群は、繰り返し3枚目の細胞シートをすでに移植した2枚の細胞シートの上に移植し、縫合クリップもしくは縫合糸により切開口を縫合した。対照となる第1群については、第2群から第4群同様の操作でbFGFデバイスを取り除いた後、縫合クリップもしくは縫合糸により切開口を縫合した。
【実施例】
【0155】
通常飼育に戻し、術後翌日にマウス体重1gあたり0.2 μlあたりの四塩化炭素をオリーブオイルにて10倍希釈し、ディスポーザブル経口ゾンデを用いて第1群から第4群のすべてのマウスに胃管経口投与した。以降、移植日から8日後まで、生存マウスの確認は毎日実施し、体重計測は1日おきに実施した。細胞シート移植から2日後、4日後にイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、マウス眼窩叢より採血用キャピラリー (HIRSCHMANN LABORGERATE)を使用して100~200μl量の静脈血を1.5ml tubeに回収した。回収した静脈血は、氷上で一晩静置した後、冷却遠心機にて2,000g、20分間、4℃で遠心操作を行うことで血清を分離し、血清のみ新しい1.5ml tubeに回収した。回収した血清は、必要量ずつ1.5ml tubeに分注し使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0156】
細胞シート移植から8日後、すべてのマウスはイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、術用ハサミやそれに準ずる術用器具ならびにピンセットを用いて開腹し、27Gの注射針ならびに1mlシリンジを使用して下大静脈より全採血を実施した。採血後、細胞シート移植片を含む皮下組織、ならびに全肝臓を摘出した。全摘肝臓は湿重量を測定し、デジタルカメラにより写真撮影を行った。摘出した組織のうち、RNA抽出用は湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、1mlのTRIzol (Invitrogen)を加えた後、ポリトロン(KINEMATICA AG)によりホモジナイズし、実験に使用するまで-30℃の低温槽で保存した。タンパク抽出用の組織片も同様に湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、15ml tubeに入れた後液体窒素に浸すことで瞬間凍結し、以降実験に使用するまで-80℃の超低温槽で保存した。組織化学染色用の組織片は、4% パラホルムアルデヒド (nacalai tesque)により固定を行い、固定後の組織はパラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を実施、それ以外の組織切片は免疫組織化学染色実施まで室温にて保存した。下大静脈より採取した静脈血は、前述同様の操作で血清を分離し、実験使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0157】
細胞シート移植、2日後、4日後、8日後のマウスの血清トランスアミナーゼ値をトランスアミナーゼCII-テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。操作は、反応スケールを添付文書の4分の1スケールで実施した以外は添付の操作方法に従い、555nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、得られた吸光度からアスパラギン酸トランスフェラーゼ(AST)ならびにアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、それぞれの活性値(Karmen単位)ならびに国際単位を算出した。
【実施例】
【0158】
細胞シート移植2日後、4日後、8日後のマウスの血清ビリルビン値をQuantiChrom Bilirubin Assay Kit (BioAssaySystems)を用いて測定した。添付の操作方法に従い、530nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、total ビリルビンの値を算出した。
【実施例】
【0159】
以上の結果を図19に示す。2層又は3層の細胞シートを皮下に移植した結果、血清トランスアミナーゼ値が減少していた。また、細胞シートを1層以上移植した結果、ビリルビン値が減少していた。
【実施例】
【0160】
<実施例11>細胞シートの作製及び肝表面移植
7週齢雄のNOD-SCIDマウスを4群に分けた。第1群は、細胞シートの移植を行わない偽移植群とし、第2群は肝外側左葉に細胞シート1枚移植を実施する群、第3群は肝外側左葉に細胞シート2枚移植を実施する群、第4群は肝外側左葉に細胞シート3枚移植を実施する群とした。
【実施例】
【0161】
細胞シートは以下の要領で準備した。細胞シートを移植する8日前に、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞を細胞密度が9.0×103 cells/cm2となるようにUpCell細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材6 cm dish (セルシード)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS, JRH Biosciences, INC)、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM, ニッスイ)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0162】
day 1に相当する翌日に最終濃度0.8 μl hexachloropheneを含むDMEMで培地交換を行った。day 4でday 1同様に培地交換を行い、細胞シート移植前日に相当するday 8に、ディッシュの底面の辺縁部をディスポーザブルチップ等の尖端でこそぎ、室温に戻した培地で培地交換を行った後に20℃、5%CO2条件下で20分以上インキュベートし、細胞をシート化した。移植実施まで細胞シートは、20℃、5%CO2条件下に置いた。
【実施例】
【0163】
移植当日、まず、NOD-SCIDマウス体重1 gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入後マウス腹部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により腹部の皮膚を正中線に沿って切開した。次に腹膜を術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により正中線に沿って切開した。鉗子等により皮膚ならびに腹膜を保持することで、腹腔内の術野を確保した。剣状突起に2回通した縫合糸を持ち上げ固定することで、肝周囲の術野をさらに確保した。細胞シートは培養器材中で血清を含まないDMEMで培地交換した後培地をきれいに取り除き、細胞シートの上に細胞シート回収用支持体Cell Shifter(セルシード)をのせ、その支持体と共に細胞シートをピンセット等で回収し、肝外側左葉の表面に細胞シートを細胞シート回収用支持体ごとのせた。約3分から5分そのまま細胞シートが接着するまで待ち、細胞シートがマウス肝表面に接着したことを確認した後に、細胞シート回収用支持体のみピンセット等で取り除いた。
【実施例】
【0164】
第2群は細胞シート1枚移植後、剣状突起に通していた縫合糸を取り除き、腹膜ならびに皮膚を固定していた鉗子等を外し、腹膜を縫合糸で縫合した。その後、皮膚を縫合クリップもしくは縫合糸により縫合した。第3群・第4群に関しては、細胞シート回収用支持体をピンセット等で取り除いた後、同様の操作により2枚目の細胞シートをすでに移植した1枚目の細胞シートの上に重ねて移植した。第3群は細胞シート2枚移植後、剣状突起に通していた縫合糸を取り除き、腹膜ならびに皮膚を固定していた鉗子等を外し、腹膜を縫合糸で縫合した。その後、皮膚を縫合クリップもしくは縫合糸により縫合した。第4群は、繰り返し3枚目の細胞シートをすでに移植した2枚の細胞シートの上に移植し、同様の操作で腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。対照となる第1群については、移植群同様の操作で術野を確保した後、腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。
【実施例】
【0165】
以降犠死の日まで通常飼育を行った。細胞シート移植から7日後、イソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、移植時と同様の操作で開腹し、肝臓を全摘した。摘出した肝臓はデジタルカメラにより、写真撮影を行った。移植した細胞シート含む組織片のうち、RNA抽出用は湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、1mlのTRIzol (Invitrogen)を加えた後、ポリトロン(KINEMATICA AG)によりホモジナイズし、実験に使用するまで-30℃の低温槽で保存した。組織化学染色用の組織片は、4% パラホルムアルデヒド (nacalai tesque)により固定を行い、固定後の組織はパラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を実施、それ以外の組織切片は免疫組織化学染色実施まで室温にて保存した。
【実施例】
【0166】
以上の結果を図20に示す。細胞シートを肝表面に移植した結果、肝障害が抑制されていた。
【実施例】
【0167】
<実施例12>細胞シートの作製及び2か所の肝表面移植
9週齢の雄のNOD-SCIDマウスを4群に分けた(図21)。第1群は、細胞シートの移植を行わない偽移植群とし、第2群は2か所の肝外側左葉表面に細胞シートを1枚ずつ移植する群、第3群は2か所の肝外側左葉表面に細胞シートを2枚ずつ移植する群、第4群は2か所の肝外側左葉表面に細胞シートを3枚ずつ移植する群とした。
【実施例】
【0168】
細胞シートは以下の要領で準備した。細胞シートを移植する8日前に、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞を細胞密度が9.0×103 cells/cm2となるようにUpCell細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材6 cm dish (セルシード)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS, JRH Biosciences, INC)、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM, ニッスイ)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0169】
day 1に相当する翌日に最終濃度0.8 μl hexachloropheneを含むDMEMで培地交換を行った。day 4でday 1同様に培地交換を行い、細胞シート移植前日に相当するday 8に、ディッシュの底面の辺縁部をディスポーザブルチップ等の尖端でこそぎ、室温に戻した培地で培地交換を行った後に20℃、5%CO2条件下で20分以上インキュベートし、細胞をシート化した。移植実施まで細胞シートは、20℃、5%CO2条件下に置いた。
【実施例】
【0170】
移植当日、まず、NOD-SCIDマウス体重1 gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入後マウス腹部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により腹部の皮膚を正中線に沿って切開した。次に腹膜を術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により正中線に沿って切開した。鉗子等により皮膚ならびに腹膜を保持することで、腹腔内の術野を確保した。剣状突起に2回通した縫合糸を持ち上げ固定することで、肝周囲の術野をさらに確保した。細胞シートは培養器材中で血清を含まないDMEMで培地交換した後培地をきれいに取り除き、細胞シートの上に細胞シート回収用支持体Cell Shifter(セルシード)をのせ、その支持体と共に細胞シートをピンセット等で回収し、肝外側左葉の表面2か所にそれぞれ細胞シートを細胞シート回収用支持体ごとのせた。約3分から5分そのまま細胞シートが接着するまで待ち、細胞シートがマウス肝表面に接着したことを確認した後に、細胞シート回収用支持体のみピンセット等で取り除いた。
【実施例】
【0171】
第2群は細胞シートを1枚ずつ2か所に移植後、剣状突起に通していた縫合糸を取り除き、腹膜ならびに皮膚を固定していた鉗子等を外し、腹膜を縫合糸で縫合した。その後、皮膚を縫合クリップもしくは縫合糸により縫合した。第3群・第4群は、細胞シート回収用支持体をピンセット等で取り除いた後、同様の操作により2枚目の細胞シートをすでに移植した1枚目の細胞シートの上にそれぞれ重ねて移植した。第3群は細胞シートを2枚ずつ2か所に移植後、剣状突起に通していた縫合糸を取り除き、腹膜ならびに皮膚を固定していた鉗子等を外し、腹膜を縫合糸で縫合した。その後、皮膚を縫合クリップもしくは縫合糸により縫合した。第4群は、繰り返し3枚目の細胞シートをすでに移植した2か所の細胞シートの上に移植し、同様の操作で腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。対照となる第1群については、移植群同様の操作で術野を確保した後、腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。
【実施例】
【0172】
術後翌日にマウス体重1gあたり0.2 μlあたりの四塩化炭素をオリーブオイルにて10倍希釈し、ディスポーザブル経口ゾンデを用いて第1群から第4群のすべてのマウスに胃管経口投与した。以降、移植日から8日後まで、生存マウスの確認は毎日実施し、体重計測は1日おきに実施した。細胞シート移植から2日後、4日後にイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、マウス眼窩静脈叢より採血用キャピラリー (HIRSCHMANN LABORGERATE)を使用して100~200μl量の静脈血を1.5ml tubeに回収した。回収した静脈血は、氷上で一晩静置した後、冷却遠心機にて2,000g、20分間、4℃で遠心操作を行うことで血清を分離し、血清のみ新しい1.5ml tubeに回収した。回収した血清は、必要量ずつ1.5ml tubeに分注し使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0173】
細胞シート移植から8日後、すべてのマウスはイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、術用ハサミやそれに準ずる術用器具ならびにピンセットを用いて開腹し、27Gの注射針ならびに1mlシリンジを使用して下大静脈より全採血を実施した。採血後、全肝臓を摘出した。全摘肝臓は湿重量を測定し、デジタルカメラにより写真撮影を行った。移植した細胞シートを含む組織片のうち、RNA抽出用は湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、1mlのTRIzol (Invitrogen)を加えた後、ポリトロン(KINEMATICA AG)によりホモジナイズし、実験に使用するまで-30℃の低温槽で保存した。タンパク抽出用の組織片も同様に湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、15ml tubeに入れた後液体窒素に浸すことで瞬間凍結し、以降実験に使用するまで-80℃の超低温槽で保存した。組織化学染色用の組織片は、4% パラホルムアルデヒド (nacalai tesque)により固定を行い、固定後の組織はパラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を実施、それ以外の組織切片は免疫組織化学染色実施まで室温にて保存した。下大静脈より採取した静脈血は、前述同様の操作で血清を分離し、実験使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0174】
以上の結果を図22に示す。細胞シートを肝表面の2か所に移植した結果、肝障害が抑制されていた。この抑制は、2層移植及び3層移植で特に顕著であった。
【実施例】
【0175】
細胞シート移植2日後、4日後、8日後のマウスの血清トランスアミナーゼ値をトランスアミナーゼCII-テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。操作は、反応スケールを添付文書の4分の1スケールで実施した以外は添付の操作方法に従い、555nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、得られた吸光度からアスパラギン酸トランスフェラーゼならびにアラニンアミノトランスフェラーゼ、それぞれの活性値(Karmen単位)ならびに国際単位を算出した。
【実施例】
【0176】
その結果を図23に示す。細胞シートを肝表面の2か所に移植した結果、血清トランスアミナーゼ値が大きく低下していた。この低下は、2層移植及び3層移植で特に顕著であった。
【実施例】
【0177】
細胞シート移植2日後、4日後、8日後のマウスの血清ビリルビン値をQuantiChrom Bilirubin Assay Kit (BioAssaySystems)を用いて測定した。添付の操作方法に従い、530nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、total ビリルビンの値を算出した。
【実施例】
【0178】
その結果を図24に示す。細胞シートを肝表面の2カ所に移植した結果、ビリルビン値が大きく低下していた。
【実施例】
【0179】
図21の方法に従い記録したマウスの移植後の各日における生存数を基にPASW Statisticソフトウェアを使用しカプラン・マイヤー法による生存率曲線を得た。生存率の検定にはログランク検定を使用した。
【実施例】
【0180】
その結果を図25に示す。細胞シートを肝表面の2カ所に移植した結果、生存率が大きく増加していた。
【実施例】
【0181】
図21の方法に従いRNA抽出用に保存していたサンプルは、TRIzol (Invitrogen)の添付文書の方法に従い、Total RNAを抽出した。抽出後、Deoxyribonuclease (NipponGene)を加え37℃、30分間incubation し、DNAの除去を行った。逆転写反応には、1 μgのRNA にSuperScriptII Reverse Transcriptase (Invitrogen)、Oligo(dt)15 primerを加えcDNAへ変換した。RT-PCR法には、cDNAを5倍希釈後、そのうちの1 μlを鋳型として使用し、rTaq DNA polymerase (TOYOBO)により増幅した。以降は上記実施例8の方法に従い、PCR反応を行い、エチジウムブロマイドを入れた2%アガロースゲルで30分間電気泳動し、トランスイルミネ—ターを使用し電気泳動像を取得した。
【実施例】
【0182】
図26に、肝特異的分泌蛋白質とサイトカインの遺伝子発現を調べた結果を示す。図26のうち、血清蛋白質のマーカー、及びサイトカインの中で発現のあったもの(例えばα1-AT等)が、肝再生に有効に作用していると考えられる。なお、発現が認められなかったマーカー(例えばApolipoprotein B等)は、今回の肝再生メカニズムに、直接は関与していない可能性がある。また、特に細胞シートを肝表面の2か所以上に移植したときに、移植しないときに比べて、血清蛋白質のマーカーとサイトカインの遺伝子発現が増加していた。
【実施例】
【0183】
図21の方法に従い作製した組織切片を使用して免疫蛍光染色を実施した。ヒトα1アンチトリプシンの染色は以下の操作で実施した。組織切片はキシレンによる脱パラフィン操作、100%エタノールによる水和処理を行い、水道水、次に1×PBS(-)で洗浄後ヤギ血清を含むブロッキング液にて室温で20分間ブロッキングを行った。ウサギポリクローナル抗α1アンチトリプシン抗体(abcam)を1~2滴、組織切片にのせ湿潤箱の中で4℃、一晩静置することで一次抗体反応を行った。1×PBS(-)で洗浄後200倍に希釈したAlexa Fluor 488 goat anti rabbit IgG (H+L) (Invitrogen)を100 μl組織切片にのせ、室温で1時間遮光の状態で静置し、二次抗体反応を行った。1×PBS(-)で洗浄後、封入を行った。染色像の観察には蛍光顕微鏡(オリンパス、IX71)を使用し、画像を取得した。
【実施例】
【0184】
以上の結果を図27に示す。移植した肝細胞シート内、およびマウス肝実質内においてヒトα1アンチトリプシンの発現を認めた。
【実施例】
【0185】
<実施例13>間葉系幹細胞の分取、及び肝細胞の分化誘導
(1)間葉系幹細胞の分取方法
慶応大学岡野教授、松崎准教授らにより開発されたCD90CD271間葉系幹細胞の分取方法(特開2009-060840)の概要図を図28に示す。この方法に基づいて、間葉系幹細胞を分取した。
【実施例】
【0186】
(2)骨髄由来間葉系幹細胞の分離・調整・培養方法
Lonza社より購入したヒト骨髄単核球細胞を100倍希釈したAPC標識抗CD90抗体、407倍希釈したPE標識抗CD271抗体、2% ウシ胎児血清 (FBS, Defined, Thermo Fisher Scientific Inc.)を加えた1 mlのHanks-balanced salution supplemented (HBSS, gibco, Life Technologies Corp.) に懸濁し、氷上で30分間染色した。フローサイトメーター (Moflo XDP, Beckman Coulter Inc.) を用いて間葉系幹細胞を選択的に分離した。得られた細胞は、20% FBS、100 U/ml penicillin、100 ng/ml streptomycin (Nacalai Tesque)、20 ng/ml basic fibroblast growth factor (株式会社トランスジェニック) を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (Low Glucose , gibco, Life Technologies Corp) 中で35 mm dish を用い37℃、5% CO2条件下で培養した。4日毎に培地交換を行い、コロニー形成後、0.025% trypsin/1mM EDTA solution (Nacalai Tesque) にて細胞を剥離し、100 mm dish に継代を行い37℃、5% CO2条件下で培養した。その後、70~80% コンフルエントの状態でトリプシン処理により細胞を剥離し、1dish分を4dishに分けて継代した。
【実施例】
【0187】
(3)肝細胞分化誘導、及びシフェラーゼアッセイ
96wellプレートに5.0×103 cells/cm2の細胞密度で細胞を播種し、24時間後0.1%DMSO、又はIC-2 (終濃度40、45 μM)を含む培地にて培地交換を行い、37℃、5% CO2条件下で培養した。細胞を播種してから4日後に、上記化合物を含む培地にて培地交換を行った。測定の3日前にTCFモチーフ及びmCMVプロモーターの制御によりホタルルシフェラーゼ発現するレンチウイルス (SABiosciences, Qiagen N.V.) をMOI=10で感染させた。内部コントロールとしてウミシイタケルシフェラーゼを発現するレンチウイルス (SABiosciences, Qiagen N.V.) を同時に感染させた。上記化合物による薬剤処理から8日目に、Dual-Luciferase Reporter Assay System (Promega Corp.) を使用し、ルミノメーターによりルシフェラーゼ活性を測定した。
【実施例】
【0188】
図29にルシフェラーゼアッセイの結果を示す。IC-2で骨髄由来間葉系幹細胞を処理すると、処理8日後にはWnt/β-カテニンシグナル経路が有意に抑制されていることを確認した。
【実施例】
【0189】
(4)肝細胞分化誘導、及び肝細胞分化マーカーの遺伝子発現の評価
6wellプレートに1.8×104 cells/cm2の細胞密度で細胞を播種し、この日をday 0とした。翌日に相当するday 1にIC-2 (終濃度25、35、45 μM)、又は0.1% DMSOを含む培地にて培地交換を行った。day 4でday 1同様の操作で培地交換を行い、day 8で継代して細胞数を1.8×104 cells/cm2に調整し直し再播種した。以降、8日間に2回の培地交換、8日毎の継代を同様の操作でday 24まで実施した。誘導開始から8、16、24日目にTRIzol (Invitrogen)を用いて添付文書の方法に従い、Total RNAを抽出した。抽出後、Deoxyribonuclease (NipponGene)を加え37℃、30分間incubation し、DNAの除去を行った。逆転写反応には、1 μgのRNA にSuperScriptII Reverse Transcriptase (Invitrogen)、Oligo(dt)15 primerを加えcDNAへ変換した。RT-PCR法には、cDNAを5倍希釈後、そのうちの1 μlを鋳型として使用し、rTaq DNA polymerase (TOYOBO)により増幅した。陰性対照はMQ水を、陽性対照はHuh-7もしくはUE7T-13細胞のcDNAを使用した。
【実施例】
【0190】
肝細胞分化マーカーを測定するために、アルブミンの発現量を測定した。使用したプライマーの配列は5’- TTGGAAAAATCCCACTGCAT-3’ (配列番号: 1)と5’- CTCCAAGCTGCTCAAAAAGC-3’ (配列番号: 2)である。
【実施例】
【0191】
PCR反応は、94℃2分を1サイクル後、94℃30秒、58℃で30秒、72℃30秒を35サイクル、72℃5分を1サイクル施行した。PCR産物はエチジウムブロマイドを含む2%アガロースゲルで30分間電気泳動し、トランスイルミネ—ターを用いて電気泳動像を取得した。
【実施例】
【0192】
図30に、アルブミンの遺伝子発現を調べた結果を示す。この結果から、上述の図29でWnt/β-カテニンシグナル経路の抑制効果が示された45μMのIC-2処理では、0.1% DMSOと比較して顕著にアルブミンの発現が誘導されていることがわかる。
【実施例】
【0193】
<実施例14>臨床検体由来の間葉系幹細胞の分取、及び肝細胞の分化誘導
(1)臨床検体由来の骨髄由来間葉系幹細胞の分離・調整・培養方法
インフォームドコンセントの下、鳥取大学附属病院整形外科にて人工関節置換術が施行された変形性関節症患者(60歳女性)より採取した新鮮骨髄液をficol (Amersham Biosciences) による密度勾配遠心にて骨髄単核球を分離した(図31)。この骨髄単核球を100倍希釈したAPC標識抗CD90抗体、407倍希釈したPE標識抗CD271抗体、2% ウシ胎児血清 (FBS, Defined, Thermo Fisher Scientific Inc.)を加えた1 mlのHanks-balanced salution supplemented (HBSS, gibco, Life Technologies Corp.) に懸濁し、氷上で30分間染色した。フローサイトメーター (Moflo XDP, Beckman Coulter Inc.) を用いて間葉系幹細胞を選択的に分離した。得られた細胞は、20% FBS、100 U/ml penicillin、100 ng/ml streptomycin (Nacalai Tesque)、20 ng/ml basic fibroblast growth factor (株式会社トランスジェニック) を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (Low Glucose , gibco, Life Technologies Corp) 中で35 mm dish を用い37℃、5% CO2条件下で培養した。4日毎に培地交換を行い、コロニー形成後、0.025% trypsin/1mM EDTA solution (Nacalai Tesque) にて細胞を剥離し、100 mm dish に継代を行い37℃、5% CO2条件下で培養した。その後、70~80% コンフルエントの状態でトリプシン処理により細胞を剥離し、1dish分を4dishに分けて継代した。
【実施例】
【0194】
(2)肝細胞分化誘導、及び肝細胞分化マーカーの遺伝子発現の評価
6wellプレートに1.8×104 cells/cm2の細胞密度で細胞を播種し、この日をday 0とした。翌日に相当するday 1にhexachlorophene (終濃度4 μM)、HC-2 (終濃度20 μM) 、PN-3-13 (終濃度20 μM) 、IC-2 (終濃度40 μM)又は0.1% DMSOをそれぞれ含む培地にて培地交換を行った。day 4でday 1同様の操作で培地交換を行い、day 8で継代して細胞数を1.8×104 cells/cm2に調整し直し再播種した。以降、8日間に2回の培地交換、8日毎の継代を同様の操作でday 24まで実施した。誘導開始から8、16、24日目にTRIzol (Invitrogen)を用いて添付文書の方法に従い、Total RNAを抽出した。以下の操作は上記実施例13(4)と同様の方法に従った。
【実施例】
【0195】
図32に、肝細胞分化マーカーの遺伝子発現を調べた結果を示す。Hexachlorophene、HC-2、PN-3-13、IC-2のいずれを用いたときも、アルブミンの発現が誘導された。
【実施例】
【0196】
(3)肝細胞分化誘導、及び免疫蛍光染色
12wellプレートに100%エタノールで滅菌したカバーガラスを入れ、その上に細胞を1.8×104 cells/cm2の細胞密度で播種し、この日をday 0とした。翌日に相当するday 1にHC-2 (終濃度20 μM) 、PN-3-13 (終濃度20 μM)、IC-2 (終濃度40 μM)、又は0.1% DMSOを含む培地にて培地交換を行った。day 4でday 1同様の操作で培地交換を行い、day 8で、培養液を除き、PBSで2回洗浄した後、albumin免疫染色には8% sucrose (和光純薬工業株式会社) を含む4% パラホルムアルデヒド (Nacalai Tesque)で20分間固定した。C/EBPαおよび、CYP1A1の免疫染色には4% パラホルムアルデヒドで20分間固定した。次に0.2% Triton X-100 (和光純薬工業株式会社) で10分間透過処理をし、3% BSA (Nacalai Tesque)で、室温、30分間静置してブロッキングを行った。
【実施例】
【0197】
一次抗体として1,000倍希釈のmonoclonal anti-human serum albumin (Sigma-Aldrich Corp.) 、125倍希釈のpolyclonal anti-human CCAAT enhancer-binding protein α (Santa Cruz Biotechnology, Inc.) 、250倍希釈のpolyclonal anti-CYP1A1 (Santa Cruz Biotechnology, Inc.) をそれぞれ細胞にのせ、4℃で一晩静置し、一次抗体反応を行った。一次抗体反応終了後、0.1% BSA/PBSで洗浄し、アルブミンの染色には1,000倍希釈のAlexa Fluoro 488 goat anti-mouse immunoglobrin G (Molecular Probes)抗体を、その他の染色には Alexa Fluoro 594 goat anti-rabbit immunoglobrin G (Molecular Probes)抗体をそれぞれ細胞にのせ、遮光条件下で室温、一時間静置し二次抗体反応を行った。核染色にはDAPI (Cell Signaling Technology Inc.) を用いた。反応終了後、0.2% Tween-20 (Nacalai Tesque)にて洗浄した。さらにMQ水で洗浄し、カバーガラスを取り出してスライドガラスに載せて封入し、FV1000D IX81 (オリンパス株式会社) で観察した。免疫蛍光染色の陽性対照には肝癌細胞株Huh-7を、陰性対照には免疫染色実施日の前日に播種した分化誘導未実施の同じCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞を使用した。
【実施例】
【0198】
図33に免疫蛍光染色の結果を示す。PN-3-13、IC-2による処理8日後には、肝細胞への分化誘導の代表的なマーカーであるアルブミン、C/EBPα、CYP1A1の発現量がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大していた。また、ポジティブコントロール(Huh-7)に近い量になっていた。
【実施例】
【0199】
(4)肝細胞分化誘導、及びウレアアッセイ
ウレアアッセイを次の操作方法に従い実施した。24wellプレートにCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞を1.8×104 cells/cm2の細胞密度で播種し、この日をday 0とした。翌日に相当するday 1にhexachlorophene (終濃度4 μM)、HC-2 (終濃度20 μM)、PN-3-13 (終濃度20 μM)、IC-2 (終濃度40 μM)、又は0.1% DMSOを含む培地にてそれぞれ培地交換を行った。day 4でday 1同様の操作で培地交換を行い、day 8まで培養した。day 8で培地を除き、最終濃度5 mMの塩化アンモニウム (Nacalai Tesque) を含む培地にて培地交換を行いさらに96時間培養した。塩化アンモニウムの添加96時間後、培地中の尿素量をQuantiChrom Urea Assay Kit (BioAssay Systems) を添付の操作方法に従い使用し、マイクロプレートリーダーにより520 nmの波長の吸光度を測定した。尿素量は添付の計算方法に従い、標準サンプルを元に算出した。ウレアアッセイの陰性対照には、免疫染色実施日の前日に播種した分化誘導未実施の同じCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞を用いた。
【実施例】
【0200】
図34にウレアアッセイの結果を示す。hexachlorophene、PN-3-13、又はIC-2を用いた結果、細胞の尿素合成能がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大していた。この結果は、hexachlorophene 、PN-3-13、又はIC-2で処理した細胞が単に肝細胞マーカーを有するのみでなく、機能性肝細胞としての能力をもつことを示している。
【実施例】
【0201】
(5)肝細胞分化誘導、及びPAS染色
以下の方法でPAS染色を実施した。12wellプレートに100% エタノールで滅菌したカバーガラスを入れ、その上に細胞を1.8×104 cells/cm2の細胞密度で播種し、この日をday 0とした。翌日に相当するday 1にHC-2 (終濃度20 μM)、PN-3-13 (終濃度20 μM)、IC-2 (終濃度40 μM)、又は0.1% DMSOを含む培地にてそれぞれ培地交換を行った。day 4でday 1同様の操作で培地交換を行い、day 8まで培養した。8日目にPBSで2回洗浄した後、4% パラホルムアルデヒドで30分間固定した。陰性対照として、終濃度10 mg/mlのα-アミラーゼ(Nacalai Tesque) で1時間、37℃でインキュベートしてグリコーゲンを消化した。1% 過ヨウ素酸水溶液 (Nacalai Tesque) で5分間処理した後、シッフ試薬 (Nacalai Tesque) で15分間処理してグリコーゲンを染色し、亜硫酸水で3回、脱イオン水で3回洗浄した。Mayer's Hematoxylin (武藤化学株式会社) で1分間核染色した後、カバーガラスを取り出してスライドガラスに載せて封入し、光学顕微鏡 (オリンパス、IX71)で観察した。PAS染色の陽性対照には、肝癌細胞株Huh-7を用いた。陰性対照には、免疫染色実施日の前日に播種した分化誘導未実施の同じCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞を用いた。
【実施例】
【0202】
図35にPAS染色の結果を示す。PN-3-13、又はIC-2を用いた結果、細胞内のグリコーゲンの蓄積量がいずれもネガティブコントロール(0.1%DMSO)にくらべて明らかに増大していた。
【実施例】
【0203】
<実施例15>細胞シートの作製及び肝表面移植
7週齢の雄のNOD-SCIDマウスを3群に分けた。第1群は、細胞シートの移植を行わない偽移植群とし、第2群はLonza社より購入した骨髄単核球細胞より分離、調整したCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞(以下、healthyとする)を分化誘導し作製した細胞シートを移植する群、第3群は鳥取大学附属病院整形外科、人工関節置換術を施行された患者の骨髄より分離調整したCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞(以下、patientとする)を分化誘導し作製した細胞シートを移植する群とした。
【実施例】
【0204】
細胞シートは以下の要領で準備した。細胞シートを移植する8日前に、healthyならびにpatientそれぞれのCD90+CD271+骨髄由来間葉系幹細胞を細胞密度が1.8×104 cells/cm2となるようにUpCell細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材6 cm dish (セルシード)に播種し、20% FBS、100 U/ml ペニシリン、100 ng/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)、20 ng/ml basic fibroblast growth factor (株式会社トランスジェニック) を含むDMEM (Low Glucose , gibco, Life Technologies Corp)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0205】
day 1に相当する翌日にhealthyの細胞には最終濃度45 μlのIC-2を、patientの細胞には最終濃度45 μlのIC-2を含む培地でそれぞれ培地交換を行った。day 4でday 1同様に培地交換を行い、細胞シート移植前日に相当するday 8に、ディッシュの底面の辺縁部をディスポーザブルチップ等の尖端でこそぎ、室温に戻した培地で培地交換を行った後に20℃、5%CO2条件下で30分以上インキュベートし、細胞をシート化した。移植実施まで細胞シートは、20℃、5%CO2条件下に置いた。
【実施例】
【0206】
移植当日、まず、NOD-SCIDマウス体重1gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入後マウス腹部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により腹部の皮膚を正中線に沿って切開した。次に腹膜を術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により正中線に沿って切開した。鉗子等により皮膚ならびに腹膜を保持することで、腹腔内の術野を確保した。剣状突起に2回通した縫合糸を持ち上げ固定することで、肝周囲の術野をさらに確保した。
【実施例】
【0207】
第2群、第3群は細胞シート移植を実施した。細胞シートは培養器材中で血清を含まないDMEMで培地交換した後培地をきれいに取り除き、細胞シートの上に細胞シート回収用支持体Cell Shifter(セルシード)をのせ、その支持体と共に細胞シートをピンセット等で回収し、まず肝外側左葉の表面に細胞シートを細胞シート回収用支持体ごとのせた。約3分から5分そのまま細胞シートが接着するまで待ち、細胞シートがマウス肝表面に接着したことを確認した後に、細胞シート回収用支持体のみピンセット等で取り除いた。
【実施例】
【0208】
続けて、2枚目の細胞シートをすでに移植した1枚目の細胞シートの上に1枚目と同様の操作で移植した。次に3枚目の細胞シートをすでに移植した2枚目の細胞シートの上に1枚目と同様の操作で移植した。4枚目の細胞シートは肝内側右葉の表面に1枚目と同様の操作で移植した。5枚目の細胞シートはすでに内側右葉に移植した4枚目の細胞シートの上に同様の操作で移植した。さらに6枚目の細胞シートをすでに移植した5枚目の細胞シートの上に同様の操作で移植した。
【実施例】
【0209】
剣状突起に通していた縫合糸を取り除き、腹膜ならびに皮膚を固定していた鉗子等を外し、腹膜を縫合糸で縫合した。その後、皮膚を縫合クリップもしくは縫合糸により縫合した。対照となる第1群については、移植群同様の操作で術野を確保した後、腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。
【実施例】
【0210】
術後翌日にマウス体重1gあたり0.2 μlの四塩化炭素をオリーブオイルにて10倍希釈し、ディスポーザブル経口ゾンデを用いて第1群から第3群のすべてのマウスに胃管経口投与した。以降、移植日から8日後まで、生存マウスの確認は毎日実施し、体重計測は1日おきに実施した。細胞シート移植から2日後、4日後にイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、マウス眼窩静脈叢より採血用キャピラリー (HIRSCHMANN LABORGERATE)を使用して100~200 μl量の静脈血を1.5ml tubeに回収した。回収した静脈血は、氷上で一晩静置した後、冷却遠心機にて2,000g、20分間、4℃で遠心操作を行うことで血清を分離し、血清のみ新しい1.5ml tubeに回収した。回収した血清は、必要量ずつ1.5ml tubeに分注し使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0211】
細胞シート移植から8日後、すべてのマウスはイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、術用ハサミやそれに準ずる術用器具ならびにピンセットを用いて開腹し、27Gの注射針ならびに1mlシリンジを使用して下大静脈より全採血を実施した。採血後、全肝臓を摘出した。全摘肝臓は湿重量を測定し、デジタルカメラにより写真撮影を行った。
【実施例】
【0212】
移植した細胞シートを含む組織片のうち、RNA抽出用は湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、1mlのTRIzol (Invitrogen)を加えた後、ポリトロン(KINEMATICA AG)によりホモジナイズし、実験に使用するまで-30℃の低温槽で保存した。タンパク抽出用の組織片も同様に湿重量が0.1gとなるように術用ハサミやそれに準ずる術用器具で切り、15ml tubeに入れた後液体窒素に浸すことで瞬間凍結し、以降実験に使用するまで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0213】
組織化学染色用の組織片は、4% パラホルムアルデヒド (nacalai tesque)により固定を行い、固定後の組織はパラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を実施、それ以外の組織切片は免疫組織化学染色実施まで室温にて保存した。下大静脈より採取した静脈血は、前述同様の操作で血清を分離し、実験使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0214】
細胞シート移植2日後、4日後、8日後のマウスの血清トランスアミナーゼ値をトランスアミナーゼCII-テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。操作は、反応スケールを添付文書の4分の1スケールで実施した以外は添付の操作方法に従い、555nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、得られた吸光度からアスパラギン酸トランスフェラーゼならびにアラニンアミノトランスフェラーゼ、それぞれの活性値(Karmen単位)ならびに国際単位を算出した。
【実施例】
【0215】
以上の結果を図36に示す。healthyを分化誘導し作製した細胞シートを移植した結果、ALT値及びAST値が減少していた。また、patientを分化誘導し作製した細胞シートを移植した結果、AST値が減少していた。
【実施例】
【0216】
<実施例16>細胞シートの作製及び肝表面移植
9週齢雄のNOD-SCIDマウスを5群に分けた(図37)。第1群は、細胞シートの移植を行わない偽移植群とし、第2群は肝外側左葉表面に細胞シート6枚移植を実施する群、第3群は脾内注入による経門脈phosphate-buffered saline (PBS)投与を実施する群、第4群は脾内注入により経門脈的に1×106細胞移植を実施する群、第5群は脾内注入により経門脈的に4×107細胞移植を実施する群とした。
【実施例】
【0217】
細胞シートは以下の要領で準備した。細胞シートを移植する8日前に、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞を細胞密度が9.0×103 cells/cm2となるようにUpCell細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材6 cm dish (セルシード)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS, JRH Biosciences, INC)、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM, ニッスイ)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0218】
day 1に相当する翌日に最終濃度0.8 μM hexachloropheneを含むDMEMで培地交換を行った。day 4でday 1同様に培地交換を行い、細胞シート移植当日に、ディッシュの底面の辺縁部をディスポーザブルチップ等の尖端でこそぎ、室温に戻した培地で培地交換を行った後に20℃、5%CO2条件下で20分以上インキュベートし、細胞をシート化した。移植実施まで細胞シートは、20℃、5%CO2条件下に置いた。
【実施例】
【0219】
脾内注入による経門脈的な細胞移植用の細胞の調整は次の要領で実施した。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞を細胞密度が9.0×103 cells/cm2となるように細胞培養用10cm dish (TPP Techno Plastic Products AG)に播種し、10%ウシ胎児血清(FBS, JRH Biosciences, INC)、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン (Nacalai Tesque)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM, ニッスイ)中、37℃、5%CO2条件下で培養した。この時点をday 0とする。
【実施例】
【0220】
day 1に相当する翌日に最終濃度0.8 μM hexachloropheneを含むDMEMで培地交換を行った。day 4でday 1同様に培地交換を行い、細胞移植直前に細胞をトリンプシン処理により剥離し100 μlのPBSにて第4群は1×106細胞数に、第5群は4×107細胞数となるよう調整した。
【実施例】
【0221】
移植ではまず、NOD-SCIDマウス体重1gあたり1 μlの全身麻酔薬ソムノペンチル (共立製薬)を腹腔内投与し、麻酔を導入した。麻酔導入後、第2群はマウス腹部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により腹部の皮膚を正中線に沿って切開した。次に腹膜を術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により正中線に沿って切開した。鉗子等により皮膚ならびに腹膜を保持することで、腹腔内の術野を確保した。剣状突起に2回通した縫合糸を持ち上げ固定することで、肝周囲の術野をさらに確保した。
【実施例】
【0222】
細胞シートは培養器材中で血清を含まないDMEMで培地交換した後培地をきれいに取り除き、細胞シートの上に細胞シート回収用支持体Cell Shifter(セルシード)をのせ、その支持体と共に細胞シートをピンセット等で回収し、肝外側左葉の表面に細胞シートを細胞シート回収用支持体ごとのせた。約3分から5分そのまま細胞シートが接着するまで待ち、細胞シートがマウス肝表面に接着したことを確認した後に、細胞シート回収用支持体のみピンセット等で取り除いた。続けて同様の操作により、2枚目の細胞シートをすでに移植した1枚目の細胞シートの上に重ねて移植し、接着後3枚目の細胞シートをすでに移植した2枚の細胞シートの上に移植し、剣状突起に通していた縫合糸を取り除き、腹膜ならびに皮膚を固定していた鉗子等を外し、腹膜を縫合糸で縫合した。その後、皮膚を縫合クリップもしくは縫合糸により縫合した。
【実施例】
【0223】
細胞シート移植手技の対照となる第1群については、移植群同様の操作で術野を確保した後、腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。第4群、第5群については麻酔後左腹部の剃毛を行い、術用ハサミもしくはそれに準ずる術用器具により胸骨と大腿骨の中間点にあたる左腹部の皮膚を1cm程、正中線方向に対し垂直となるよう切開した。続いて腹膜も同様に切り、ピンセットで脾臓直下の脂肪をつまみ出し脾臓の2/3程度を体外に露出させた。第4群は100 μlのPBSに懸濁した1×106の細胞を24Gの注射針をセットした1ml シリンジに充填し、脾臓に注入した。注射針を脾臓より抜いた後、速やかに縫合糸にて脾臓を結紮し、止血を行い、脾臓を元の位置に戻した。その後、腹膜ならびに皮膚の縫合を縫合糸を用いて行った。第5群も同様の操作で、4×107の細胞を脾臓内に注入した。第4群、第5群の移植手技の対照となる第3群については、第4群、5群同様の操作で脾臓を露出後、100 μlのPBSを24Gの注射針をセットした1ml シリンジに充填し、脾臓に注入した。その後、第4群、5群同様の操作で腹膜ならびに皮膚の縫合を行った。以降犠死の日まで通常飼育を行った。
【実施例】
【0224】
術後翌日にマウス体重1gあたり0.2μlの四塩化炭素をオリーブオイルにて10倍希釈し、ディスポーザブル経口ゾンデを用いて第1群から第5群のすべてのマウスに胃管経口投与した。以降、移植日から8日後まで、生存マウスの確認を毎日実施した。細胞シート移植から2日後、4日後にイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、マウス眼窩静脈叢より採血用キャピラリー (HIRSCHMANN LABORGERATE)を使用して100~200μl量の静脈血を1.5ml tubeに回収した。回収した静脈血は、氷上で一晩静置した後、冷却遠心機にて2,000g、20分間、4℃で遠心操作を行うことで血清を分離し、血清のみ新しい1.5ml tubeに回収した。回収した血清は、必要量ずつ1.5ml tubeに分注し使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。細胞シート移植から8日後、すべてのマウスはイソフルラン(Abott Japan)による吸入麻酔実施下で、術用ハサミやそれに準ずる術用器具ならびにピンセットを用いて開腹し、27Gの注射針ならびに1mlシリンジを使用して下大静脈より全採血を実施した。下大静脈より採取した静脈血は、前述同様の操作で血清を分離し、実験使用時まで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0225】
以上のの方法に従い記録したマウスの移植後の各日における生存数を元にPASW Statisticソフトウェアを使用し、カプラン・マイヤー法による生存率曲線を得た。生存率の検定にはログランク検定を使用した。その結果を図38に示す。計6枚の細胞シートを肝表面移植に移植した第2群は、同等数となる4×107の細胞を脾内注入による経門脈的に移植した第5群と比べ有意な生存率の改善を認めた。第5群では移植後、8匹中5匹が1日以内に死亡した。この原因として細胞の塞栓が考えられ、多くの細胞数を移植する際には細胞シートの肝表面移植がより安全性が高いことが示された。
【実施例】
【0226】
細胞シート移植2日後、4日後、8日後のマウスの血清トランスアミナーゼ値をトランスアミナーゼCII-テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。操作は、反応スケールを添付文書の4分の1スケールで実施した以外は添付の操作方法に従い、555nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、得られた吸光度からアスパラギン酸トランスフェラーゼならびにアラニンアミノトランスフェラーゼ、それぞれの活性値(Karmen単位)ならびに国際単位を算出した。細胞シート移植2日後、4日後、8日後のマウスの血清ビリルビン値をQuantiChrom Bilirubin Assay Kit (BioAssaySystems)を用いて測定した。キットに添付の操作方法に従い、530nmの吸光度はマイクロプレートリーダー(Sunrize Absorbance Reader、Tecan Group Ltd) を使用し測定した。検量線に従い、total ビリルビンの値を算出した。トランスフェラーゼの値ならびにビリルビンの値は、それぞれ移植手技の対照となる群の各日のトランスフェラーゼならびにビリルビンに対する比を算出した。具体的には、第2群は第1群に対する比を、第4群ならびに第5群は第3群に対する比を算出した。
【実施例】
【0227】
その結果を図39に示す。移植群のトランスフェラーゼの値をそれぞれの手技対照群のトランスフェラーゼ値の比で算出すると、第2群のシート移植群では第4群ならびに第5群の脾内注入による経門脈的な細胞移植に対し、ALT、ASTともにday4以降に有意なトランスフェラーゼ値の低下を認めた。また移植群のビリルビン値をそれぞれの手技対照群のビリルビン値の比で算出すると、第2群のシート移植群では第4群ならびに第5群の脾内注入による経門脈的な細胞移植に対し、day2で有意なビリルビン値の低下を認めた。これにより、従来の細胞移植法の一つとして選択される経門脈的な細胞移植法よりも本実施例で作製した細胞シートの肝表面移植が治療効果が高いことが示された。
【実施例】
【0228】
<結果の考察>
以上の実験結果から、本発明者らは、IC-2等によって、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制できることを明らかにした。さらに、IC-2等を用いて間葉系幹細胞を機能性肝細胞へ分化誘導可能であることを明らかにした。
【実施例】
【0229】
また、IC-2等を利用して作製した細胞シートによって、肝機能障害を抑制できることを明らかにした。さらに、この細胞シートによる肝機能障害の抑制は、肝表面に移植したときに特に抑制効果が大きかった。また、実際に患者の骨髄より分離調整した細胞から、機能性幹細胞を分化誘導し、その機能性幹細胞を用いた細胞シートによって、肝機能障害を抑制できることを明らかにした。また、この細胞シートによる肝機能障害の抑制は、経門脈的な細胞移植法に比べて治療効果が高いことを明らかにした。これらは、真に臨床応用可能な肝再生医療の開発をしていく上で重要な知見である。
【実施例】
【0230】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38