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明細書 :口腔洗浄装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6093928号 (P6093928)
登録日 平成29年2月24日(2017.2.24)
発行日 平成29年3月15日(2017.3.15)
発明の名称または考案の名称 口腔洗浄装置
国際特許分類 A61C  17/02        (2006.01)
FI A61C 17/02 B
A61C 17/02 G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2013-511013 (P2013-511013)
出願日 平成24年4月18日(2012.4.18)
国際出願番号 PCT/JP2012/060411
国際公開番号 WO2012/144505
国際公開日 平成24年10月26日(2012.10.26)
優先権出願番号 2011095623
優先日 平成23年4月22日(2011.4.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年4月17日(2015.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】592019213
【氏名又は名称】学校法人昭和大学
発明者または考案者 【氏名】祖山 均
【氏名】山本 松男
【氏名】滝口 尚
個別代理人の代理人 【識別番号】100095359、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 篤
【識別番号】100143834、【弁理士】、【氏名又は名称】楠 修二
審査官 【審査官】胡谷 佳津志
参考文献・文献 米国特許第05860942(US,A)
米国特許出願公開第2008/0255498(US,A1)
国際公開第01/097709(WO,A1)
米国特許第05800367(US,A)
特表2008-515575(JP,A)
調査した分野 A61C 17/02
特許請求の範囲 【請求項1】
噴射孔を有し、歯との間に隙間をあけて前記歯を被覆し、前記隙間に水を保持可能に設けられたカバーと、
前記噴射孔に取り付けられ、前記隙間に連通する流路を有し、前記流路を前記隙間に向かって流れる水によりキャビテーション気泡を発生可能であり、前記カバーの内側に向かって前記キャビテーション気泡を噴射する噴射手段とを有し、
前記流路は上流側より流路径が小さい小径部を有し、前記小径部で前記キャビテーション気泡を発生可能であり、
発生した前記キャビテーション気泡を前記カバーの内側の洗浄部に当てて洗浄可能に構成されていることを
特徴とする口腔洗浄装置。
【請求項2】
前記流路は、前記小径部より下流側に、前記小径部より流路径が大きい拡大部を有していることを特徴とする請求項1記載の口腔洗浄装置。
【請求項3】
前記流路は、前記小径部の上流側に、60乃至120度の角度で曲がる曲折部を有し、前記曲折部に対して、前記曲折部の上流側の流路とは反対側に広がるよう設けられた水流調整部を有することを特徴とする請求項2記載の口腔洗浄装置。
【請求項4】
前記カバーは排出孔を有し、
前記隙間の水を前記排出孔から排出する排出手段を
有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の口腔洗浄装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔洗浄装置に関する。

【背景技術】
【0002】
口腔内で歯やインプラント金属面に付着するデンタルプラーク(歯垢)は、数百種類の細菌が共生するバイオフィルムであることが分かっている。一般に、口腔内の歯やインプラントなどに付着した歯垢などを洗浄するために、歯ブラシや電動歯ブラシを使用した歯磨きが行われている。しかし、現実的には歯周病で抜歯せざるを得ない患者が多く、個人差があるものの歯ブラシのみでは十分な洗浄効果が得られていないことが多い。特にインプラントを使用する患者は、歯垢がつきやすいため歯周病になりやすく、また歯垢を除去するブラッシングなどの歯周病予防の習慣が適切でない場合が多い。これらを放置すると、歯垢から歯石になり、歯周病やインプラント周囲炎が悪化するため、何らかの洗浄法により、歯垢(バイオフィルム)などの汚れを除去あるいは削減する必要がある。
【0003】
歯ブラシ以外の口腔内の洗浄方法として、ウォーターピックによる洗浄方法がある。ウォーターピックでは、最大吐出圧力約0.6MPaで、直径0.5mm程度のノズルから脈動流を噴射して歯や歯間を洗浄することができるが、歯垢を除去することはできない。そこで、歯垢や歯石などの汚れを除去できる方法として、超音波振動子や、超音波振動子などを用いて発生させたキャビテーションにより洗浄する方法が提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0004】
なお、歯の着色原因の一つとして、コーヒーやお茶、ワインなどに含まれる色素成分のタンニンや、タバコのタールなどによる色素沈着がある。このような色素沈着をとるために、歯科で歯のホワイトニングが行われている。歯科で行われる歯のホワイトニングでは、一般的に、過酸化水素が分解する際に発生するヒドロキシラジカルなどのフリーラジカルを利用して、歯を明るく、白くしている。また、超音波やベンチュリ管を用いて発生させたキャビテーションにより、ヒドロキシラジカルが発生していることが明らかにされている(例えば、非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平7-47088号公報
【特許文献2】特表2008-507327号公報
【0006】

【非特許文献1】C. Sehgal et al., “Optical-Spectra of Sonoluminescence fromTransient and Stable Cavitation in Water Saturated with Various Gases”, Journalof Physical Chemistry, 1980, 84, p.388-395
【非特許文献2】H.Soyama and T.Muraoka, “Chemical reactor using radical induced by acavitating jet”, Proc. 20th International Conference on Water Jetting, 2010,p.259-267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に記載のような超音波振動子や、超音波振動子などを用いて発生させたキャビテーションを利用する洗浄方法では、超音波振動子を入れ難い歯の隙間やインプラントの隙間などは洗浄しにくく、歯垢や歯石などの汚れが残ってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、歯の隙間やインプラントの隙間などの狭隘部であっても、歯垢や歯石などの汚れをきれいに洗浄することができる口腔洗浄装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る口腔洗浄装置は、噴射孔を有し、歯との間に隙間をあけて前記歯を被覆し、前記隙間に水を保持可能に設けられたカバーと、前記噴射孔に取り付けられ、前記隙間に連通する流路を有し、前記流路を前記隙間に向かって流れる水によりキャビテーション気泡を発生可能であり、前記カバーの内側に向かって前記キャビテーション気泡を噴射する噴射手段とを有し、前記流路は上流側より流路径が小さい小径部を有し、前記小径部で前記キャビテーション気泡を発生可能であり、発生した前記キャビテーション気泡を前記カバーの内側の洗浄部に当てて洗浄可能に構成されていることを特徴とする。

【0010】
本発明に関する口腔洗浄方法は、噴射孔を有するカバーにより歯との間に隙間をあけて前記歯を被覆し、前記隙間に水を保持し、前記噴射孔に取り付けられ、前記隙間に連通する流路を有し、前記流路を前記隙間に向かって流れる水によりキャビテーション気泡を発生可能な噴射手段により、前記カバーの内側に向かって前記キャビテーション気泡を噴射することを特徴とする。

【0011】
本発明に関する口腔洗浄方法は、本発明に係る口腔洗浄装置により好適に実施可能である。本発明に係る口腔洗浄装置および口腔洗浄方法では、噴射手段の流路に、歯とカバーとの隙間に向かって所定の流速で水を流すことによりキャビテーション気泡を発生させることができる。流路に流す水の流速を調整することにより、キャビテーション気泡を効率的に発生させることができる。発生したキャビテーション気泡を、カバーの内側の歯やインプラント等の洗浄部に噴射することにより、洗浄部に付着した汚れを洗浄することができる。このとき、歯とカバーとの隙間に水を保持しているため、キャビテーション気泡をカバーの内側の洗浄部に当てることができる。

【0012】
本発明に係る口腔洗浄装置および口腔洗浄方法では、水の流れによりキャビテーション気泡が発生する、いわゆる流動キャビテーションを利用するため、キャビテーション気泡による洗浄効果だけでなく、流れを伴うことによる相乗効果も得られる。このため、超音波振動子や、超音波振動子などを用いて発生させたキャビテーション気泡で洗浄する場合と比べて洗浄効果が高く、それらで洗浄できない歯垢や歯石などの汚れもきれいに洗浄することができる。また、水の流れを利用して歯の隙間やインプラントの隙間などの狭隘部にもキャビテーション気泡を流し込むことができるため、そのような狭隘部であっても歯垢や歯石などの汚れをきれいに洗浄することができる。
【0013】
このように、本発明に係る口腔洗浄装置および口腔洗浄方法では、口腔微生物からなる歯垢(バイオフィルム)や歯石などの汚れをきれいに洗浄することができ、歯周病やインプラント周囲炎などを効果的に予防することができる。また、歯の表面の沈着粒子を除去できるため、歯のホワイトニング効果が期待できる。キャビテーションによりヒドロキシラジカルなどのフリーラジカルが発生するため、フリーラジカルによる歯のホワイトニング効果も期待できる。本発明に係る口腔洗浄装置および口腔洗浄方法は、カバーの内側の任意の位置にキャビテーション気泡を噴射できるよう、噴射手段のカバーへの取付角度が可変であったり、カバーの取付位置を容易にずらしたりできるよう構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る口腔洗浄装置で、前記流路は、前記小径部より下流側に、前記小径部より流路径が大きい拡大部を有していることが好ましい。小径部より下流側に拡大部を有することにより、低い噴射圧力でもキャビテーション気泡を効率よく発生させることができる。
【0015】
流路は、内面が滑らかな曲面で形成されていることが好ましい。小径部は、上流から下流に向かって流路径が漸次小さくなるよう設けられていることが好ましい。また、拡大部は、小径部から下流に向かって流路径が漸次大きくなるよう設けられていることが好ましい。これらの場合、水が流路を滑らかに流れ、少流量かつ低噴射圧力でキャビテーション気泡を効率よく発生させることができる。
【0016】
本発明に係る口腔洗浄装置で、前記流路は、前記小径部の上流側に、60乃至120度の角度で曲がる曲折部を有し、前記曲折部に対して、前記曲折部の上流側の流路とは反対側に広がるよう設けられた水流調整部を有していてもよい。この場合、曲折部によりキャビテーション気泡の噴射方向が変わるため、口腔内の奥の臼歯やインプラント等を洗浄しやすい。また、歯やインプラントの裏側も洗浄しやすい。流路を流れる水が、曲折部で水流調整部に入って一旦滞留するため、曲折部で流れの方向を変えても、小径部に向かってほぼ均等に流れるようにすることができ、キャビテーション気泡を効率よく発生させることができる。曲折部は、洗浄する場所に応じて、所望の角度に曲げられていることが好ましい。また、任意の角度に調節可能に構成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る口腔洗浄装置で、前記カバーは排出孔を有し、前記隙間の水を前記排出孔から排出する排出手段を有していてもよい。この場合、キャビテーション気泡により歯やインプラント等から落とした歯垢や歯石などの汚れを、排出手段により歯とカバーとの隙間から水とともに排出することができる。このため、歯とカバーとの隙間の水をきれいに保つことができ、キャビテーション気泡による洗浄効果が汚れにより低下するのを防ぐことができる。排出手段で排出された水は、廃棄されてもよく、噴射手段に戻して再利用されてもよい。水を再利用する場合には、排出孔から排出された水から汚れを除去するフィルタ部を排出手段に設け、噴射手段、歯とカバーとの隙間、および排出手段の間で水を循環させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、歯の隙間やインプラントの隙間などの狭隘部であっても、歯垢や歯石などの汚れをきれいに洗浄することができる口腔洗浄装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の口腔洗浄装置および口腔洗浄方法の(a)使用状態を示す斜視図、(b)ベンチュリ管を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の口腔洗浄装置および口腔洗浄方法のベンチュリ管の変形例を示す(a)全体側面図、(b)縦断面図、(c)A-A’線断面図である。
【図3】図1に示す口腔洗浄装置および口腔洗浄方法により(a)歯科用塗料を塗布した歯科用光硬化性樹脂の表面全体を数分間走査して洗浄した結果を示す観察図、(b)歯科用光硬化性樹脂に歯科用塗料を塗布した状態を示す観察図である。
【図4】歯科用塗料を塗布した歯科用光硬化性樹脂の所定の位置を(a)図1に示す口腔洗浄装置および口腔洗浄方法により洗浄した結果、(b)ウォータージェットにより洗浄した結果を示す観察図である。
【図5】図1に示す口腔洗浄装置の、ベンチュリ管の最適形状を調べる実験の概要を示すベンチュリ管付近の縦断面図である。
【図6】図5に示す口腔洗浄装置の実験による、キャビテーション衝撃力の大きさ(しきい値Fth)と、しきい値Fth以上の衝撃力の発生頻度との関係を示すグラフである。
【図7】図6に示すグラフから求めた、ベンチュリ管の拡大部の長さλと衝撃エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図8】図1に示す口腔洗浄装置および口腔洗浄方法により、ミニブタの下顎の歯を洗浄したときの(a)洗浄前の歯の状態、(b)そこでの5分間洗浄後の歯の状態、(c)別の位置での洗浄前の歯の状態、(d)そこでの1分間洗浄後の歯の状態、(e)そこでの3分間洗浄後の歯の状態を示す斜視図である。
【図9】図1に示す口腔洗浄装置および口腔洗浄方法により、ヒトの下顎前歯部唇側の歯を洗浄したときの(a)洗浄前にプラーク洗浄液で染色した歯の状態、(b)5分間洗浄を行った後の歯の状態を示す正面図である。
【図10】図1に示す口腔洗浄装置および口腔洗浄方法により、ミニブタの歯肉粘膜に対してキャビテーション気泡の噴射を行ったときの、噴射終了後4時間経過した歯肉粘膜の組織を示す顕微鏡写真である。
【図11】図1に示す口腔洗浄装置および口腔洗浄方法により、歯科用インプラントと同じ表面性状を持つ試験片に付着した歯垢の洗浄を行ったときの(a)洗浄後の試験片の状態を示す平面図、(b)試験片の一部拡大平面図、(c)試験片の表面に付着した歯垢(バイオフィルム)の破壊・除去後の状態を、全焦点画像を用いた3次元表示により測定した斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図6は、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置および口腔洗浄方法を示している。
図1に示すように、口腔洗浄装置10は、カバー11と噴射手段12と排出手段13とを有している。

【0021】
図1(a)に示すように、カバー11は、歯科用熱可塑性樹脂製で、歯1との間に隙間をあけて、2~3本の歯1を被覆可能に形成されている。カバー11は、歯1を被覆したとき、歯1の手前側と奥側の端縁部が歯肉に密着し、歯列に沿った両端部が歯冠に密着するよう構成されている。これにより、カバー11は、歯1との間の隙間に水を保持可能になっている。また、カバー11は、口腔内の任意の位置に容易に着脱可能である。カバー11は、歯1を被覆したときの歯1との間の隙間に連通する噴射孔11aと排出孔11bとを有している。

【0022】
噴射手段12は、供給タンク21と、供給タンク21に接続されたポンプ22と、ポンプ22に接続されたチューブ23と、チューブ23の先端に取り付けられたベンチュリ管24とを有している。供給タンク21は、歯1を洗浄するための水が収納されている。ポンプ22は、供給タンク21に収納された水をチューブ23に向かって送水可能に構成されている。ポンプ22は、チューブ23に送る水の圧力を調整可能になっている。チューブ23は、軟質の樹脂製である。

【0023】
ベンチュリ管24は、先端部がカバー11の噴射孔11aに取り付けられている。図1(b)に示すように、ベンチュリ管24は、チューブ23の内部および歯1とカバー11との隙間に連通する流路24aを有し、チューブ23から歯1とカバー11との隙間に向かって流路24aを水が流れるようになっている。流路24aは、内面が滑らかな曲面で形成されており、上流側より流路径が小さい小径部24bと、小径部24bより下流側に、小径部24bより流路径が大きい拡大部24cとを有している。小径部24bは、上流から下流に向かって流路径が漸次小さくなるよう設けられている。また、拡大部24cは、小径部24bから下流に向かって流路径が漸次大きくなるよう設けられている。これにより、ベンチュリ管24は、流路24aを流れる水によりキャビテーション気泡を発生可能になっている。なお、具体的な一例では、カバー11へのベンチュリ管24の装着は、歯科技工の分野で確立しつつあるCADCAMシステムを用いて形成されている。

【0024】
図1(a)に示すように、噴射手段12は、供給タンク21の水を、ポンプ22により所定の圧力でチューブ23に向かって送ることにより、ベンチュリ管24でキャビテーション気泡を発生させて、カバー11の内側に向かって噴射するよう構成されている。噴射手段12は、噴射孔11aでのベンチュリ管24の取付角度を調整することにより、キャビテーション気泡の噴射角度を変更可能になっている。

【0025】
排出手段13は、排水管25と、排水管25が接続された排水タンク26とを有している。排水管25は、歯1とカバー11との隙間に連通するよう、排出孔11bに接続されている。排水タンク26は、排水管25から排水された水を溜めるようになっている。排出手段13は、歯1とカバー11との隙間の水を、排出孔11bから排水管25を通して排水タンク26に排出するよう構成されている。なお、排出手段13は、吸引器から成り、歯1とカバー11との隙間の水を、排出孔11bから吸引して排出するよう構成されていてもよい。

【0026】
本発明の実施の形態の口腔洗浄方法は、口腔洗浄装置10により好適に実施可能である。図1(a)に示すように、本発明の実施の形態の口腔洗浄方法では、まず、洗浄する歯1をカバー11で被覆し、歯1とカバー11との隙間に水を入れる。このとき、カバー11の手前側と奥側の端縁部が歯肉に密着し、歯列に沿った両端部が歯冠に密着するため、歯1とカバー11との隙間に水を保持することができる。

【0027】
この状態で、供給タンク21の水を、ポンプ22により所定の圧力でチューブ23に向かって送り、ベンチュリ管24の流路24aに所定の流速で水を流す。ポンプ22により圧力を制御して、流路24aに流す水の流速を調整することにより、流路24aの小径部24bでキャビテーション気泡を発生させることができる。発生したキャビテーション気泡を、カバー11の内側の歯1やインプラント等の洗浄部に向かって噴射することにより、洗浄部に付着した汚れを洗浄することができる。このとき、歯1とカバー11との隙間に水を保持しているため、キャビテーション気泡をカバー11の内側の洗浄部に当てることができる。

【0028】
噴射手段12から歯1とカバー11との隙間に水が供給されるため、その供給された水の量と同じ量の水が、排出孔11bから排水管25を通して排水タンク26に排出される。これにより、キャビテーション気泡により歯1やインプラント等から落とした歯垢や歯石などの汚れを、歯1とカバー11との隙間から水とともに排出することができる。このため、歯1とカバー11との隙間の水をきれいに保つことができ、キャビテーション気泡による洗浄効果が汚れにより低下するのを防ぐことができる。

【0029】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法では、水の流れによりキャビテーション気泡が発生する、いわゆる流動キャビテーションを利用するため、キャビテーション気泡による洗浄効果だけでなく、流れを伴うことによる相乗効果も得られる。このため、超音波振動子や、超音波振動子などを用いて発生させたキャビテーション気泡で洗浄する場合と比べて洗浄効果が高く、それらで洗浄できない歯垢や歯石などの汚れもきれいに洗浄することができる。

【0030】
また、カバー11を口腔内の所望の位置に取り付けたり、ベンチュリ管24の取付角度を調整してキャビテーション気泡の噴射角度を変更したりすることにより、カバー11の内側の任意の位置にキャビテーション気泡を噴射することができるとともに、水の流れを利用して歯1の隙間やインプラントの隙間などの狭隘部にもキャビテーション気泡を流し込むことができる。このため、歯1の隙間やインプラントの隙間などの狭隘部や、歯垢や歯石などの汚れがひどい部分等に向かってキャビテーション気泡を容易に噴射することができ、歯垢や歯石などの汚れを効率的に洗浄することができる。

【0031】
このように、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法では、口腔微生物からなる歯垢(バイオフィルム)や歯石などの汚れをきれいに洗浄することができ、歯周病やインプラント周囲炎などを効果的に予防することができる。また、歯1の表面の沈着粒子を除去できるため、歯1のホワイトニング効果が期待できる。キャビテーションによりヒドロキシラジカルなどのフリーラジカルが発生するため、フリーラジカルによる歯1のホワイトニング効果も期待できる。カバー11を口腔内に取り付けずに容器として使用することにより、例えば、抜去歯や抜去インプラントなどをカバー11に入れて洗浄することもできる。

【0032】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法では、流路24aの小径部24bより下流側に拡大部24cを有しているため、低い噴射圧力でもキャビテーション気泡を効率よく発生させることができる。また、流路24aの内面が滑らかな曲面で形成されているため、水が流路24aを滑らかに流れ、より少流量かつ低噴射圧力でキャビテーション気泡を効率よく発生させることができる。

【0033】
なお、噴射手段12の供給タンク21と排出手段13の排水タンク26とを一体とし、排出孔11bから排出された水から汚れを除去するフィルタ部を排出手段13に設けることにより、噴射手段12、歯1とカバー11との隙間、および排出手段13の間で水を循環させてもよい。

【0034】
また、図2に示すように、ベンチュリ管24は、小径部24bの上流側に、60乃至120度の角度で曲がる曲折部24dを有し、曲折部24dに対して、曲折部24dの上流側の流路24aとは反対側に広がるよう設けられた水流調整部24eを有していてもよい。この場合、曲折部24dによりキャビテーション気泡の噴射方向が変わるため、口腔内の奥の臼歯やインプラント等を洗浄しやすい。また、歯やインプラントの裏側も洗浄しやすい。流路を流れる水が、曲折部24dで水流調整部24eに入って一旦滞留するため、曲折部24dで流れの方向を変えても、小径部24bに向かってほぼ均等に流れるようにすることができ、キャビテーション気泡を効率よく発生させることができる。なお、図2に示す具体的な一例では、曲折部24dは約90度で曲げられている。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法による洗浄効果を検証するため、歯科用光硬化性樹脂の表面に、噛み合わせ確認用の歯科用塗料を塗布し、この塗料に対して洗浄を行った。ベンチュリ管24の小径部24bの内径を0.5mm、噴射圧力を0.5MPaとして塗料の洗浄を行った。歯科用光硬化性樹脂の表面に歯科用塗料を塗布した状態を図3(b)に、歯科用光硬化性樹脂の表面全体を数分間走査して洗浄した結果を図3(a)に、洗浄位置を固定して10秒間噴射したときの結果を図4(a)に示す。また、比較のため、ノズル口径0.5mm、噴射圧力を0.5MPaのウォータージェットで、洗浄位置を固定して10秒間噴射したときの結果を図4(b)に示す。
【実施例1】
【0036】
図3に示すように、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法によれば、塗料をふき取った領域と同じ程度まで、歯科用光硬化性樹脂の表面全体をきれいに洗浄できており、洗浄効果が高いことが確認された。また、図4に示すように、同じ条件で洗浄した場合、ウォータージェットよりも高い洗浄効果が得られることも確認された。
【実施例2】
【0037】
ベンチュリ管24の最適形状を調べるための実験を行った。図5に示すように、小径部24bの内径dに対する、拡大部24cの最適な長さλを調べるため、ベンチュリ管24から発生するキャビテーション気泡を、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)センサから成る高分子圧電フィルムセンサに噴射して、キャビテーション・インパクト・カウンタによりキャビテーション衝撃力エネルギーの計測を行った。
【実施例2】
【0038】
噴射圧力p=0.5MPa、小径部24bの直径d=0.5mm、ベンチュリ管24の先端からPVDFセンサまでのスタンドオフ距離s=0.5mmとして、拡大部24cの長さλを5、6、7、8mmにしたときのキャビテーション衝撃力の大きさ(しきい値Fth)と、しきい値Fth以上の衝撃力の発生頻度とを測定し、その結果を図6に示す。図6に示すように、明らかに、λ=7mmの場合に大きな衝撃力が発生し、発生頻度も高いことが確認された。
【実施例2】
【0039】
各しきい値(Fth=0.08N、0.19N、0.31N)に対する、拡大部24cの長さλと衝撃エネルギーとの関係を、図6に示す結果から求め、図7に示す。ここで、衝撃エネルギーは、最大値を示したλ=7mmの値で無次元化している。図7に示すように、明らかに、いずれのしきい値でもλ=7mmにおいて、衝撃エネルギーが最大値を示し、λ=6mmや8mmの場合に比べて、衝撃エネルギーが10倍以上大きいことが確認された。
【実施例2】
【0040】
このことから、噴射圧力pが0.5MPaの場合には、拡大部24cの長さλを小径部24bの直径dの14倍程度にすることにより、最適な洗浄効果を得ることができるといえる。また、噴射圧力pが0.5MPaより小さい場合には、キャビテーション長さが短くなるため、拡大部24cの長さλを小径部24bの直径dの14倍より短くし、噴射圧力pが0.5MPaより大きい場合には、キャビテーション長さが長くなるため、拡大部24cの長さλを小径部24bの直径dの14倍よりも長くする必要があると考えられる。
【実施例3】
【0041】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法による洗浄効果を検証するため、冷凍保存したミニブタの下顎の歯に付着した歯垢(歯石)の洗浄を行った。ベンチュリ管24の小径部24bの内径を0.5mm、噴射圧力を0.5MPa、スタンドオフ距離を2mmとした。洗浄前の歯の状態を図8(a)に、5分間洗浄を行った後の歯の状態を図8(b)に示す。また、別の位置での、洗浄前の歯の状態を図8(c)に、1分間洗浄を行った後の歯の状態を図8(d)に、3分間洗浄を行った後の歯の状態を図8(e)に示す。
【実施例3】
【0042】
図8に示すように、1~5分間の洗浄で、歯に付着した歯垢(歯石)をきれいに洗浄できており、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法による洗浄効果が高いことが確認された。
【実施例4】
【0043】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法による洗浄効果を検証するため、ヒトの下顎前歯部唇側の歯の表面に付着した歯垢の洗浄を行った。ベンチュリ管24の小径部24bの内径を0.5mm、噴射圧力を0.5MPa、スタンドオフ距離を2mmとした。歯垢が付着した部位が分かるよう、洗浄前にプラーク洗浄液で赤色に染色したときの歯の状態を図9(a)に、5分間洗浄を行った後の歯の状態を図9(b)に示す。キャビテーション気泡の噴射位置を、図9中に矢印で示す。
【実施例4】
【0044】
図9(a)に示すように、歯に付着した歯垢がきれいに洗浄されており、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法が、歯垢除去に効果があることが確認された。
【実施例5】
【0045】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法のキャビテーション気泡の噴射による組織障害性を確認するため、ミニブタの歯肉粘膜に対して、キャビテーション気泡の噴射を行った。ベンチュリ管24の小径部24bの内径を0.5mm、噴射圧力を0.5MPa、スタンドオフ距離を2mmとし、3分間噴射を行った。噴射終了後4時間経過した歯肉粘膜の組織を、図10に示す。図10に示すように、上皮における好中球の浸潤や固有層における単核細胞浸潤は観察されず、水腫等の急性炎症反応も観察されなかった。このことから、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法による、歯肉組織に対する為害作用は無いと判断できる。
【実施例6】
【0046】
本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法による洗浄効果を検証するため、歯科用インプラント(チタン製)と同じ表面性状を持つ試験片に付着した歯垢の洗浄を行った。試験では、まず、試験片を着脱可能な入れ歯型装置に固定し、ヒトの口腔内で3日間保持して表面に歯垢を形成させた。その試験片を口腔外に取り出して、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法により5分間洗浄を行った。このとき、ベンチュリ管24の小径部24bの内径を0.5mm、噴射圧力を0.5MPa、スタンドオフ距離を2mmとした。洗浄後、プラーク染色液により着色し、デジタルマイクロスコープで観察した。
【実施例6】
【0047】
洗浄後の試験片の状態を図11(a)に、試験片の一部を拡大したものを図11(b)に、試験片の表面に付着した歯垢(バイオフィルム)の破壊・除去後の状態を、全焦点画像を用いた3次元表示により測定した表面形状を図11(c)に示す。図11に示すように、ベンチュリ管24からキャビテーション気泡が噴出された領域で、スポット状に歯垢が剥離して除去されているのが確認された。また、厚みがおよそ8μmの歯垢(バイオフィルム)が剥離され、スポット状に金属表面が露出していることが確認された。このように、本発明の実施の形態の口腔洗浄装置10および口腔洗浄方法は、歯科用インプラントの歯垢除去にも効果的であることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 歯
10 口腔洗浄装置
11 カバー
11a 噴射孔
11b 排出孔
12 噴射手段
21 供給タンク
22 ポンプ
23 チューブ
24 ベンチュリ管
24a 流路
24b 小径部
24c 拡大部
13 排出手段
25 排水管
26 排水タンク
図面
【図2】
0
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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