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明細書 :脳移行性機能性核酸及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5481762号 (P5481762)
登録日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発行日 平成26年4月23日(2014.4.23)
発明の名称または考案の名称 脳移行性機能性核酸及びその利用
国際特許分類 A61K  31/711       (2006.01)
A61K  31/7125      (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  39/205       (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
C07K  14/03        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A61K 31/711 ZNA
A61K 31/7125
A61K 47/48
A61K 48/00
A61K 39/205
A61P 25/28
C07K 14/03
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2012-555978 (P2012-555978)
出願日 平成24年4月25日(2012.4.25)
国際出願番号 PCT/JP2012/061115
国際公開番号 WO2012/147805
国際公開日 平成24年11月1日(2012.11.1)
優先権出願番号 2011100278
優先日 平成23年4月28日(2011.4.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年12月13日(2012.12.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】錫村 明生
【氏名】水野 哲也
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】前田 亜希
参考文献・文献 国際公開第2008/129023(WO,A1)
Henrieta Scholtzova, et al.,Induction of Toll-Like Receptor 9 Signaling as a Method for Ameliorating Alzheimer’s Disease-Relate,J Neurosci.,2009年 6月,29(6),1846-1854
Yukiko Doi, et al.,Microglia Activated with the Toll-Like Receptor 9 Ligand CpG Attenuate Oligomeric Amyloid β Neuroto,Am J Pathol.,2009年11月,175(5),2121-2132
Liu Y, et al,Brain-targeting gene delivery and cellular internalization mechanisms for modified rabies virus glycoprotein RVG29 nanoparticles.,Biomaterials,2009年,30(25),4195-4202
MAZARAKIS N D,HUMAN MOLECULAR GENETICS,英国,OXFORD UNIVERSITY PRESS,2001年 9月15日,V10 N19,P2109-2121
Alvarez-Erviti L, et al.,Delivery of siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosomes,Nature Biotechnology,2011年 4月,29(4),341-345,published online 20 March 2011
Turner JJ, et al,Synthesis, cellular uptake and HIV-1 Tat-dependent trans-activation inhibition activity of oligonucleotide analogues disulphide-conjugated to cell-penetrating peptides.,Nucleic Acids Res.,2005年,33(1),27-42
調査した分野 A61K 31/711
A61K 48/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
CpGモチーフを含み且つホスホロチオエート修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドであって、配列番号1又は配列番号2の配列からなるオリゴデオキシヌクレオチドと、脳移行性を付与する狂犬病ウイルス糖蛋白由来RVGペプチドであって、配列番号3の配列からなるRVGペプチドと、が該RVGペプチド中のシステイン残基位置においてジスルフィド結合を介して、及び/又は、該RVGペプチドのN末端又はC末端に付加されたシステイン残基位置においてジスルフィド結合を介して連結した構造体又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、アルツハイマー病治療薬。
【請求項2】
前記構造体は、ミクログリアの神経保護作用を増強する作用を示す、請求項1に記載のアルツハイマー病治療薬。
【請求項3】
前記作用はミクログリア特異的である、請求項2に記載のアルツハイマー病治療薬。
【請求項4】
2分子の前記オリゴデオキシヌクレオチドと1分子の前記RVGペプチドが連結している、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
【請求項5】
アルツハイマー病治療薬の製造のための、請求項1~のいずれか一項に定義される構造体の使用。
【請求項6】
配列番号1の配列からなりホスホロチオエート修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドと、配列番号3の配列からなる狂犬病ウイルス糖蛋白由来RVGペプチドとが、該RVGペプチド中のシステイン残基位置でジスルフィド結合を介して連結してなる構造体。
【請求項7】
前記RVGペプチドのN末端又はC末端にはシステインが付加されており、該システイン位置にも前記オリゴデオキシヌクレオチドが連結している、請求項に記載の構造体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は機能性核酸のアルツハイマー病治療への適用に関する。より詳しくは、CpGモチーフを有する機能性核酸を利用したアルツハイマー病治療薬及びその用途に関する。本出願は、2011年4月28日に出願された日本国特許出願第2011-100278号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、アルツハイマー病の患者数は増加しているが、現在、国内で認可されている治療薬はアセチルコリン分解酵素阻害薬のみである。アルツハイマー病の病因蛋白と考えられているAβを標的として、β及びγセクレターゼ阻害剤やAβワクチンなど、Aβ産生抑制又はAβ分解促進に着目した新規治療薬の開発が進められているが、未だ有効な治療法は確立していない。Aβの神経毒性は、不溶性のアミロイド線維として脳内に沈着した凝集Aβ(fAβ)にあると考えられていたが、近年、可溶性のAβオリゴマー(oAβ)に、より強い神経傷害作用があることが明らかとなった。その神経障害作用は、シナプス可塑性の障害、活性酸素による酸化ストレス、海馬におけるインスリン受容体機能の障害などによるものと考えられている。したがって、アルツハイマー病の治療戦略においてAβオリゴマーを制御することの重要性が示唆される。
【0003】
脳内の免疫細胞であるミクログリアは、アルツハイマー病の病態に関与することが示されている。ミクログリアは老人斑に集族し、凝集AβのみならずAβオリゴマーも処理する一方、炎症性細胞としての側面をもち、その過剰な活性化は炎症性サイトカイン、活性酸素、グルタミン酸等の神経傷害因子を産生するなど相反する作用を有している。ミクログリアのAβ処理には、自然免疫の活性化に関与する受容体であるトル様受容体(Toll like receptor:TLR)のシグナルが関与している。
【0004】
本発明者らの研究グループは、自然免疫の活性化に関与するトル様受容体9(TLR9)に注目して研究を進め、そのリガンドである機能性核酸CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)が脳内の免疫細胞であるミクログリアのAβ処理能を増強し、抗酸化酵素ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)を誘導することにより神経細胞・ミクログリア共培養においてオリゴマーAβ神経毒性を抑制し、さらにCpG-ODNの脳室内投与により、アルツハイマー病モデルマウスの認知機能障害およびその病理所見を改善することを見出した(非特許文献1)。アルツハイマー病におけるTLRシグナルの重要性については他の研究グループによっても研究が進められており、その成果の一つとして、CpG-ODNを末梢から数ヶ月投与した際の有用性が報告されている(非特許文献2)。しかしながら、末梢投与では他の免疫細胞を活性化し副反応が生じやすくなることや、CpG-ODNは分解されやすく脳内への移行が困難であることなど、様々な問題がある。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】The American Journal of Pathology. 175: 2121-2131, 2009
【非特許文献2】The Journal of Neuroscience. 29:1846-1854, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TLR9リガンドである機能性核酸CpG-ODNには、アルツハイマー病治療薬としての適用・臨床応用が期待される。しかしながら、上記の通り、過去に報告されたCpG-ODNは脳移行性がなく、実際の治療には用いることができない。また、生体へ投与した際には核酸分解酵素の攻撃を受けること等を考慮すれば、特に安定性などについて改善の余地は大きい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題に鑑み、臨床応用を最終目標とした上で、機能性核酸CpG-ODNの最適化を試みるとともに、末梢からの投与を可能にするためにCpG-ODNの脳移行性を高めることを試みた。試行錯誤の末、新たにデザインした配列にホスホロチオエート修飾を施すとともに、狂犬病ウイルス糖蛋白由来のRVGペプチドを連結することによって、安定性が高く且つ良好な脳移行性を示す新規分子(RVG-CpGと称する)の合成に成功した。当該分子は、Aβ処理能、抗酸化酵素HO-1誘導能を保持し、神経細胞・ミクログリア共培養におけるオリゴマーAβ神経毒性を抑制することが確認された。さらに、アルツハイマー病モデルマウスの認知機能障害を有意に改善した。このように、当該分子がアルツハイマー病に対して極めて有効であることが裏付けられるとともに、当該分子の合成に際して採用した手法(安定化のためのホスホロチオエート修飾、及び脳移行性付与のためのRVGペプチドの連結)が機能性CpG-ODNの臨床応用のために有効であることが示された。
以下に示す本発明は主として以上の成果に基づく。
[1]CpGモチーフを含み且つホスホロチオエート修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドと、狂犬病ウイルス糖蛋白由来RVGペプチドと、が連結した構造体又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、アルツハイマー病治療薬。
[2]前記構造体は、ミクログリアの神経保護作用を増強する作用を示す、[1]に記載のアルツハイマー病治療薬。
[3]前記作用はミクログリア特異的である、[1]に記載のアルツハイマー病治療薬。
[4]前記オリゴデオキシヌクレオチドがCpG Bクラスである、[1]~[3]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[5]前記CpGモチーフがgacgttからなる、[1]~[4]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[6]前記オリゴデオキシヌクレオチドは、CpGモチーフの両側にそれぞれ1ないし数個のヌクレオチドが連結した構造を備える、[1]~[5]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[7]前記オリゴデオキシヌクレオチドが10~20ヌクレオチド長である、[6]に記載のアルツハイマー病治療薬。
[8]前記オリゴデオキシヌクレオチドが10~14ヌクレオチド長である、[6]に記載のアルツハイマー病治療薬。
[9]前記オリゴデオキシヌクレオチドが配列番号1の配列からなる、[6]に記載のアルツハイマー病治療薬。
[10]前記オリゴヌクレオチドは、それを構成する全てのヌクレオチドがホスホロチオエート修飾されている、[1]~[9]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[11]前記オリゴデオキシヌクレオチドと前記RVGペプチドは、前記RVGペプチド中のシステイン残基位置においてジスルフィド結合を介して連結している、[1]~[10]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[12]前記オリゴデオキシヌクレオチドの5'末端に前記RVGペプチドが連結している、[1]~[11]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[13]前記RVGペプチドのN末端又はC末端にはシステインが付加されており、該システイン位置にも前記オリゴデオキシヌクレオチドが連結している、[1]~[12]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[14]2分子の前記オリゴデオキシヌクレオチドと1分子の前記RVGペプチドが連結している、[13]に記載のアルツハイマー病治療薬。
[15]前記RVGペプチドが配列番号3の配列からなる、[1]~[14]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬。
[16]アルツハイマー病治療薬の製造のための、[1]~[15]のいずれか一項に定義される構造体の使用。
[17][1]~[15]のいずれか一項に記載のアルツハイマー病治療薬の治療上有効量をアルツハイマー病患者に投与するステップを含む、アルツハイマー病の治療法。
[18]配列番号1の配列からなりホスホロチオエート修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドと、配列番号3の配列からなる狂犬病ウイルス糖蛋白由来RVGペプチドとが、該RVGペプチド中のシステイン残基位置でジスルフィド結合を介して連結してなる構造体。
[19]前記RVGペプチドのN末端又はC末端にはシステインが付加されており、該システイン位置にも前記オリゴデオキシヌクレオチドが連結している、[18]に記載の構造体。
[20]前記オリゴヌクレオチドは、それを構成する全てのヌクレオチドがホスホロチオエート修飾されている、[18]又は[19]に記載の構造体。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ホスホロチオエート修飾を説明する模式図。
【図2】CpG-ODNと狂犬病ウイルス糖蛋白由来のRVGペプチドとの連結態様。この例では、直鎖状炭素鎖(C6)とジスルフィド結合を介してCpG-ODNとRVGペプチドが連結される。
【図3】作製した各種CpG-ODNのミクログリア活性化作用を比較したグラフ(MTSアッセイの結果)。*はコントロール(-:非添加)との間で有意差があることを表す。
【図4】作製した各種CpG-ODNのAβオリゴマー減少効果を比較したグラフ。oAβ:Aβオリゴマー
【図5】作製した各種CpG-ODNの神経保護作用を比較したグラフ。各CpG-ODNを添加した際の神経細胞の生存率を非添加の場合(左から2番目)と比較した。*はコントロール(非添加)との間で有意差があることを表す。oAβ:Aβオリゴマー
【図6】CpG-ODNとRVGペプチドが連結した構造体の構造。CpG-ODNと、C末端にシステインを付加したRVGペプチド(RVG-Cysペプチド)が連結している。連結部位は、RVG-Cysペプチドの中央部のシステイン位置とC末端に付加したシステイン位置の2箇所であり、2分子のCpG-ODNと1分子のRVG-Cysペプチドが連結した構造体(RVG-CpG)となる。CpG-ODNについては連結部(5'末端)のみを示し、その他を省略した。
【図7】アルツハイマー病モデルマウスを用いた恐怖条件付け学習試験の結果。RVG-Cys-127-5をアルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1トランスジェニックマウス)に腹腔内投与し、認知機能障害の改善の程度を調べた。コントロールにはPBSを投与した。*はコントロール(PBS)との間で有意差があることを表す。WT:同系の野生型マウス。APP/PS1:APP/PS1トランスジェニックマウス。
【図8】RVG-Cys-127-5のAβオリゴマー減少効果を示すグラフ。*はコントロール(oAβ:RVG-Cys-127-5非添加)との間で有意差があることを表す。oAβ:Aβオリゴマー
【図9】RVG-Cys-127-5の神経保護作用を示すグラフ。RVG-Cys-127-5を添加した際の神経細胞の生存率(右)を非添加の場合(中央)と比較した。*はコントロール(cont:RVG-Cys-127-5非添加)との間で有意差があることを表す。cont:コントロール、oAβ:Aβオリゴマー
【図10】RVG-Cys-127-5の抗酸化酵素HO-1産生効果を示すグラフ。*はコントロール(oAβ:RVG-Cys-127-5非添加)との間で有意差があることを表す。oAβ:Aβオリゴマー
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の局面はアルツハイマー病治療薬に関する。本明細書において用語「治療薬」とは、標的の疾病ないし病態であるアルツハイマー病に対する治療的又は予防的効果を示す医薬のことをいう。治療的効果には、アルツハイマー病に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であることから、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、アルツハイマー病に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。尚、アルツハイマーに対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、アルツハイマー病治療薬に該当する。

【0010】
本発明の有効成分は、CpGモチーフを含み且つホスホロチオエート修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドと狂犬病ウイルス糖蛋白由来RVGペプチドが連結した構造体又はその薬理学的に許容可能な塩である。即ち、本発明では所定のオリゴデオキシヌクレオチドとRVGペプチドが連結した構造の分子を有効成分とする。本発明の有効成分はミクログリアに対する特徴的な作用、即ち、ミクログリアの神経保護作用を増強する作用を示す。より具体的には、本発明の有効成分は神経傷害因子であるグルタミン酸、一酸化窒素及びTNF-αの産生を誘導することなくミクログリアのAβオリゴマー処理能を高め得る。当該作用は典型的にはミクログリア特異的である。ここでの用語「ミクログリア特異的」とは、ミクログリアに作用する一方で、他の細胞(特に末梢における単球、マクロファージ、B細胞、樹状細胞)に対しては実質的に作用しないか或いは作用するとしてもその程度が有意に低いことを意味する。

【0011】
一方、本発明の有効成分はミクログリアに作用し、抗酸化酵素ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の産生を促し得る。この作用は、Aβオリゴマーによる活性酸素(ROS)の産生抑制に有効である。

【0012】
(1)CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)
本発明におけるオリゴデオキシヌクレオチドはCpGモチーフを含む。ここでの用語「モチーフ」とは特定の機能を有する特徴的な共通配列のことをいう。「CpGモチーフ」は、特定の6塩基(5'-プリン-プリン-CG-ピリミジン-ピリミジン-3')で構成されるオリゴDNAである。本発明の一態様ではCpGモチーフ部分の配列としてgacgttが含まれることになる。

【0013】
CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドはその構造上の特徴によって3クラス、即ちAクラス、Bクラス及びCクラスに分類できる。AクラスのCpG-ODNではCpGモチーフ部分にはホスホジエステル結合が用いられる。AクラスのCpG-ODNは、形質細胞様樹状細胞(pDC)のIFN-α分泌を強く誘導する。その一方で形質細胞様樹状細胞の成熟化作用はそれほど強くなく、また、B細胞への作用は低い。BクラスのCpG-ODNは直線状であり、ホスホロチオエート骨格を有する。典型的には完全にホスホロチオエート修飾されている。BクラスのCpG-ODNは一般に、B細胞の増殖及び形質細胞様樹状細胞(pDC)の成熟化を強く誘導する一方、形質細胞様樹状細胞のIFN-α分泌は殆ど誘導しない。Cクラスは3'末端側にパリンドローム構造を有し、2本鎖を形成する。CクラスのCpG-ODNはB細胞及びNK細胞を活性化し、IFN-γを誘導する。

【0014】
好ましくは、特に強い神経保護作用を示したという事実(後述の実施例及びThe American Journal of Pathology. 175: 2121-2131, 2009を参照)、本発明ではBクラスのCpG-ODNを用いる。ホスホロチオエート修飾の位置及び程度(即ち、ホスホロチオエート結合の導入位置及び導入数)は限定されない。ホスホロチオエート修飾された部位は安定化し、ヌクレアーゼに対する分解抵抗性が向上することから、ホスホロチオエート修飾の程度は大きいほどよい。特に好ましくは、それを構成する全てのヌクレオチドがホスホロチオエート修飾されているBクラスのCpG-ODNを用いる。

【0015】
好ましくは、本発明におけるCpG-ODNはCpGモチーフの両側にそれぞれ1ないし数個のヌクレオチドが連結した構造を備える。換言すれば、CpGモチーフが末端に位置しない。CpGモチーフの5'側又は3'側に連結されるヌクレオチドの数は特に限定されないが、脳移行性を考慮すれば分子量は大きくない方がよい。CpGモチーフの5'側に連結されるヌクレオチドの数は好ましくは1~8個、更に好ましくは2~6個、一層好ましくは2~4個である。CpGモチーフの3'側に連結されるオリゴヌクレオチドの数についても同様である。

【0016】
上述の通り、脳移行性を考慮すればCpG-ODNの分子量は大きくない方がよい。そこで、CpG-ODNの全体の長さを好ましくは10~25ヌクレオチド長、更に好ましくは10~20ヌクレオチド長、より一層好ましくは10~14ヌクレオチド長とする。本発明において好ましいCpG-ODNの具体例を以下に示す。尚、配列中のSはホスホロチオエート結合(図1を参照)を表す。
c S a S t S g S a S c S g S t S t S c S c S t(配列番号1)
tc S gtc S gttttgtc S gttttgtc S gtt(配列番号2)

【0017】
前者のCpG-ODN(配列番号1)については、培養細胞を用いた実験に加え、アルツハイマー病モデル動物を用いた実験においてもその有効性が確認されており、特に好ましいCpG-ODNといえる。

【0018】
ホスホロチオエート修飾されたCpG-ODNは、固相シアノエチルホスホアミダイト法を利用した方法など、常法で合成すればよい(例えばJournal of the American ChemicalSociety 112:1253, 1990を参照)。合成したCpG-ODNの分離・精製には、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィーを利用すればよい。

【0019】
(2)狂犬病ウイルス糖蛋白由来RVGペプチド
脳内への移行は血液脳関門により厳密に制御されている。本発明では脳移行性の付与のために狂犬病ウイルス糖蛋白由来のRVGペプチドを用いる。RVGペプチドの配列を以下に示す。本明細書では慣例の標記法に従い左端がアミノ末端(N末端)、右端がカルボキシ末端(C末端)となるようにペプチドを表記する。尚、狂犬病ウイルス糖蛋白由来ペプチドを利用したデリバリーシステムが報告されている(例えば、Nature 448:39-43, 2007; Nature Biotechnology 29:341-345, 2011を参照)。
YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNG(配列番号3)

【0020】
本発明において要求される特性(即ち、脳移行性の付与)を損なわない限りにおいて、RVGペプチドの構成アミノ酸の一部の改変や修飾が許容される。ここでの「一部の改変」とは、1~数個(上限は例えば3個、5個、7個)のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1~数個(上限は例えば3個、5個、7個)のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変異(変化)が生じていることをいう。また、「修飾」とは、基本構造(典型的には、配列番号3の配列からなるペプチド)の部分的な置換や他の分子の付加などによって、安定化を向上させたり、新たな機能を付加したりすることをいう。当業者であれば、周知ないし慣用の手段を用いて置換体などの修飾体をデザインすることができる。また、かかるデザインに基づき、周知ないし慣用の手段を用いて目的の修飾体を調製し、その性質や作用を調べることも当業者には容易である。

【0021】
ペプチド修飾体の例として、構成アミノ酸残基内の官能基が適当な保護基(アシル基、アルキル基、単糖、オリゴ糖、多糖など)によって保護されているもの、糖鎖が付加されているもの、N末端又はC末端が他の原子等で置換されることによってアルキルアミン、アルキルアミド、スルフィニル、スルフォニルアミド、ハライド、アミド、アミノアルコール、エステル、アミノアルデヒド等に分類される各種ペプチド誘導体、標識化ペプチド(例えばN末端がビオチン標識やFITC標識されたペプチド、蛍光色素で標識化されたペプチドなど)を挙げることができる。尚、保護基は、保護基を結合させるペプチド部位や使用する保護基の種類などに応じてアミド結合、エステル結合、ウレタン結合、尿素結合等によって連結される。

【0022】
本発明におけるペプチド(RVGペプチド又はその改変体や修飾体)は、公知のペプチド合成法(例えば固相合成法、液相合成法)を利用して製造することができる。尚、生体材料から抽出・精製することによって、本発明におけるペプチドを調製することもできる。

【0023】
本発明におけるペプチドを遺伝子工学的手法で調製してもよい。即ち、本発明におけるペプチドをコードする核酸を適当な宿主細胞に導入し、形質転換体内で発現されたペプチドを回収することによって、本発明におけるペプチドを調製することもできる。回収したペプチドは必要に応じて精製される。回収したペプチドを適当な置換反応に供し、所望の改変体に変換することもできる。

【0024】
本発明の有効成分である構造体ではCpG-ODNとRVGペプチドが連結している。連結には、核酸とペプチドの連結に適した各種手法を利用できる。一態様では、RVGペプチド中のシステイン位置において、ジスルフィド結合を介して、CpG-ODNを連結させる。このような連結にはJohn J. Turnerらが開発した方法を利用できる(例えば、Nucleic Acids Research, 33:27-42, 2005を参照)。当該方法では例えばチオール化修飾剤が使用され、その結果、炭素鎖を介したジスルフィド結合によって、CpG-ODNの5'末端側とRVGペプチドが連結されることになる(図2を参照)。使用する修飾剤によって炭素鎖の種類(直鎖又は分岐鎖、長さ)は変化し得る。炭素鎖の炭素数は例えばC3~C10である。但し、脳移行性を考慮すれば構造体を低分子化することが好ましいため、炭素鎖の長さをC3~C7程度にするとよい。

【0025】
本発明の一態様では、RVGペプチドのN末端又はC末端にシステインが付加されている。当該システインはCoG-ODNの連結に利用される。即ち、当該態様においてはRVGペプチド中のシステイン残基位置に加えて、末端システイン位置においてもCpG-ODNが連結される。即ち、2分子のCpG-ODNと1分子のRVGペプチドが連結した構造体が有効成分として用いられることになる。この場合において2分子のCpG-ODNは構造が同一である必要はない。但し、典型的には、同一構造のCpG-ODNを2分子用いて当該構造体を形成する。尚、C末端にシステインを付加したRVGペプチドの配列を以下に示す
YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNGC(配列番号4)

【0026】
N末端側又はC末端側に更に1~数個のシステインを付加することにしてもよい。このように追加で付加するシステインの数は特に限定されないが、例えば1~10個である。付加されたシステインの一部又は全部はCpG-ODNとの結合に供される。これによって、RVGペプチドの分子数に対するCPG-ODNの分子数の比率が増大した構造体(例えば1分子のRVGペプチドと3~10分子のCPG-ODNが連結した構造体)を形成できる。尚、RVGペプチドのN末端側又はC末端側に直接システインを付加するのではなく、他のアミノ酸を間に介在させた状態でシステインを付加することにしてもよい。二以上のシステインを追加で付加する場合にも各システイン残基の間に他のアミノ酸を介在させることにしてもよい。

【0027】
本発明の治療薬の有効成分として上記構造体の薬理学的に許容される塩を用いても良い。「薬理学的に許容される塩」とは例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、又はアミノ酸付加塩である。酸付加塩の例としてはトリフルオロ酢酸塩塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩が挙げられる。金属塩の例としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム塩の例としてはアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としてはモルホリン付加塩、ピペリジン付加塩が挙げられる。アミノ酸付加塩の例としてはグリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩が挙げられる。これらの塩の調製は慣用手段によって行なうことができる。

【0028】
本発明の治療薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、緩衝剤、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水、担体など)を含有させることができる。緩衝剤としてはリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液などを用いることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

【0029】
製剤化する場合の剤型も特に限定されない。剤型の例は注射剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤及びシロップ剤である。

【0030】
本発明の治療薬には、期待される治療効果(又は予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の治療薬中の有効成分量は一般に剤型によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.001重量%~約95重量%の範囲内で設定する。

【0031】
本発明の治療薬はその剤型に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では本発明の治療薬はヒトに対して適用される。

【0032】
本発明の治療薬の投与量は、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約10μg~約100μg、好ましくは約20μg~約50μgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば1日1回~数回、2日に1回、或いは3日に1回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。

【0033】
本発明の有効成分である構造体はミクログリアの神経保護作用を増強することから、アルツハイマー病以外の神経変性疾患(例えばパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病)への適用の可能性も秘め、それ自体が有用且つ高い価値を有する。また、当該構造体は、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患に対する医薬・薬剤の開発にけるシーズ化合物としても有用である。
【実施例】
【0034】
トル様受容体9(TLR9)のリガンドであるCpG-ODNの有用性に注目し、新規アルツハイマー病治療法の開発を目指した。
【実施例】
【0035】
1.CpG-ODNの最適化
アルツハイマー病に対して有効性を示したCpG-ODN(CpGサブタイプB:5’-TCCATGACGTTCCTGATGCT-3’(配列番号5))を基に、直線構造を有するODNをデザインすることにした。また、核酸分解酵素による分解を阻止するため修飾を施すことにした。
【実施例】
【0036】
2.作製したCpG-ODNの有効性の検討
作製したCpG-ODNについて、次の方法で有効性を評価した。まず、MTSアッセイにより、培養ミクログリアを活性化するCpG-ODNを選択する。一方、ニューロン、ミクログリア共培養下、作製したCpG-ODN (1, 10 , 100 nM)を投与した後、5μMのAβオリゴマーを添加し、24時間後の神経細胞死を検出・評価する。免疫染色にて70%以上の生存率を示すものを選択する。次に、培養ミクログリアに対して、選択したCpG-ODNを添加後、5μMのAβオリゴマーを加え、24時間後のAβオリゴマーがELISA法による定量にて40%以上減少するものを選択する。
【実施例】
【0037】
MTSアッセイ検討の結果を図3に示す。6種のCpG-ODN(127-1、127-2、127-3、127-4、127-5、2006)の結果を比較した。127-1、127-2、127-5が高い活性化能を示した。特に有効性が高いと判断された127-5は全体にホスホロチオエート修飾されている。127-2についても一部にホスホロチオエート修飾が施されている。これら二つのCpG-ODNの配列を以下に示す。尚、配列中のSはホスホロチオエート結合を表す。
127-5:c S a S t S g S a S c S g S t S t S c S c S t(配列番号1)
127-2:tc S gtc S gttttgtc S gttttgtc S gtt(配列番号2)
【実施例】
【0038】
各CpG-ODNのAβオリゴマー減少効果(ELISA法の結果)を図4に示す。また、神経細胞死に対する効果(免疫染色による生存率の評価)を図5に示す。127-1、127-2及び127-5がAβオリゴマーを効果的に減少させ、神経保護作用を示すことがわかる。
【実施例】
【0039】
3.脳移行性CpG-ODNの作成(脳移行性ペプチドの付加)
有効性を認めたCpG-ODN(127-1、127-2、127-4、127-5)に狂犬病ウイルス糖蛋白由来のRVGペプチド(YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNG(配列番号3))を付加することで脳移行性を付与することにした。まず、RVGペプチドのC末端にシステイン(Cys)を付加した脳移行性RVG-Cysペプチド(YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNGC(配列番号4))を用意した。次にRVG-Cysペプチドのシステイン残基をピリジル化した後、適切な濃度条件下で5'チオール化CpG-ODNと混合し置換反応を行った。得られた反応物について逆相HPCL法にて精製を行った。
【実施例】
【0040】
以上の操作によって、RVG-Cysペプチド中の2箇所のシステイン位置において、CpG-ODNが炭素鎖及びジスルフィド結合を介して連結した構造体(RVG-CpG)を得た(図6)。
【実施例】
【0041】
4.脳移行性CpG-ODN(RVG-CpG)の有効性の検証(アルツハイマー病モデルマウスによる検討)
2.の検討によって有効性が最も高いと判断された127-5を用いて作製した脳移行性CpG-ODN(RVG-Cys-127-5)の治療効果を検討した。検討にはアルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1トランスジェニックマウス(ジャクソンラボラトリー))を用いた恐怖条件付け学習試験(連合学習)を採用した。試験方法を簡単に説明すると、アルツハイマー病モデルマウスに対してRVG-Cys-127-5を1回あたり1μgの投与量で隔日、腹腔内投与した(合計3回)。全投与終了2日目にマウスを試験箱に入れ、電気刺激のみ又は電気刺激と音刺激を与え、条件付けを行う。翌日、箱に入れただけの場合と、さらに音刺激を加えた場合のすくみ行動を評価し定量化する。アルツハイマー病モデルマウスでは、すくみ行動が減少するが、RVG-Cys-127-5投与群では有意にすくみ行動が増加し認知機能が改善したことが確かめられた。一方、2.での評価法に準じ、培養細胞を用いた検討も行った。また、以下の方法によって、Aβオリゴマー存在下における酸化酵素HO-1の産生促進作用も調べた。Aβオリゴマー存在下で培養ミクログリアにRVG-Cys-127-5を投与し、24時間後、細胞を破砕し、HO-1 ELISAキットを用いてHO-1蛋白を定量した。
【実施例】
【0042】
恐怖条件付け学習試験の結果を図7に示す。RVG-Cys-127-5の投与によって認知機能障害が有意に改善された。培養細胞を用いた実験では、RVG-Cys-127-5はAβオリゴマー量を有意に減少させ(図8)、神経細胞の生存率を有意に高め(図9)、更には神経保護に作用するHO-1の産生を促した(図10)。以上の結果は、アルツハイマー病に対してRVG-Cys-127-5が有効であることを示す。
【実施例】
【0043】
5.まとめ
脳移行性及び安定性に優れた新規分子、即ち機能性核酸(RVG-CpG)の合成に成功した。当該分子は神経保護作用を示し、末梢投与でアルツハイマー病モデル動物の認知能を有意に改善させた。この事実は当該分子がアルツハイマー病に有効であることを示す。また、他の神経変性疾患への適用の可能性を強く示唆する。当該分子を基に、更なる薬効の向上を目指した新規薬剤の開発も期待される。
【実施例】
【0044】
一方、以上の実験結果は、新規分子の合成に際して採用した手法(安定化のためのホスホロチオエート修飾、及び脳移行性付与のためのRVGペプチドの連結)の有効性も裏付ける。RVGペプチドの応用としては、RVGペプチドに9個のリジンを付加し、siRNAと電気的に結合させて投与するという、Kumarらの例(Nature 448:39-43, 2007)が有名である。対照的に、今回合成に成功した新規分子ではペプチドと核酸をS-S結合を利用して連結しており、安定性が高く、合成コストは低い。実用化する上でこれらの特徴も重要である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の有効成分である新規RVG-CpG構造体は脳移行性及び安定性に優れ、ミクログリアの神経保護作用を増強することで薬効を発揮する。アルツハイマー病への適用に限らず、その他の神経変性疾患(例えばパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病)への適用も大いに期待される。アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患に対する医薬・薬剤を開発するためのシーズ化合物として当該構造体を利用することも想定される。
【0046】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0047】
配列番号1:人工配列の説明:CpGオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号2:人工配列の説明:CpGオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号5:人工配列の説明:CpGオリゴデオキシヌクレオチド
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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