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明細書 :摘便バッグ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5544612号 (P5544612)
登録日 平成26年5月23日(2014.5.23)
発行日 平成26年7月9日(2014.7.9)
発明の名称または考案の名称 摘便バッグ
国際特許分類 A61F   5/44        (2006.01)
A61G   9/00        (2006.01)
A61M   1/00        (2006.01)
FI A61F 5/44 D
A61G 9/00 A
A61M 1/00 510
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2013-520565 (P2013-520565)
出願日 平成24年6月13日(2012.6.13)
国際出願番号 PCT/JP2012/065133
国際公開番号 WO2012/173146
国際公開日 平成24年12月20日(2012.12.20)
優先権出願番号 2011131415
優先日 平成23年6月13日(2011.6.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年11月14日(2013.11.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】前川 厚子
【氏名】大西 健路
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査官 【審査官】山口 賢一
参考文献・文献 特開2006-014966(JP,A)
特開2008-253584(JP,A)
特開2003-210571(JP,A)
調査した分野 A61F 5/44
A61G 9/00
A61M 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
摘便バッグであって、
一端に一つの開口部を備え、変形可能な材料から成る、便収容用の袋状の本体部と、
前記摘便バッグを肛門周囲皮膚に貼着させるための粘着部であって、前記開口部に沿って設けられ、粘着性を有する粘着部とを備え
前記本体部は、その側面及び底面のうちの一方から本体部の内側に向かって突出した、先端が閉じた挿入部を複数備え、
複数備えられた前記指挿入部は、それぞれ、前記本体部の外側から指を挿入することができ、
複数備えられた前記指挿入部の少なくとも一部を前記開口部を介して肛門内に挿入できるように構成されており、
複数備えられた前記指挿入部の各々は、複数備えられた前記指挿入部の各々から前記開口部までの距離が互いに異なる位置に形成されている、摘便バッグ。
【請求項2】
摘便バッグであって、
一端に一つの開口部を備え、変形可能な材料から成る、便収容用の袋状の本体部と、
前記摘便バッグを肛門周囲皮膚に貼着させるための粘着部であって、前記開口部に沿って設けられ、粘着性を有する粘着部とを備え
前記本体部は、その側面及び底面のうちの一方から本体部の内側に向かって突出した、先端が閉じた挿入部を複数備え、
複数備えられた前記指挿入部は、それぞれ、前記本体部の外側から指を挿入することができ、
複数備えられた前記指挿入部の少なくとも一部を前記開口部を介して肛門内に挿入できるように構成されており、
複数備えられた前記指挿入部の各々は、複数備えられた前記指挿入部の各々から前記開口部までの距離が互いに等しい位置に形成されている、摘便バッグ。
【請求項3】
前記粘着部は、前記開口部の端部に接続し、前記開口部から外側に張り出し、前記開口部を囲む形状を有し、
前記粘着部には、前記粘着部を二つに折り曲げるための折曲部が、設けられている、請求項1又は2に記載の摘便バッグ。
【請求項4】
前記本体部の内面のうち、少なくとも複数備えられた前記挿入部の部分に、潤滑剤が塗布されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の摘便バッグ。
発明の詳細な説明
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2011年6月13日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2011-131415号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2011-131415号の全内容を参照により本国際出願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、例えば、自力での排泄が困難な患者に実施される医療処置である摘便において使用できる摘便バッグ(Disimpaction Bag)に関する。
【背景技術】
【0003】
摘便という排泄援助法は、自力で大便の排出が困難な患者に対して医師の指示の下に看護師等が実施する医療処置であり、病医院ならびに訪問看護や高齢者介護施設の業務の中で日常的に行われている(特許文献1参照)。排泄のケアは、羞恥心の問題とともに、肛門出血の危険性や心身の負担が大きいという問題を伴うが、生命維持のためには必要不可欠な援助であり、下部消化管通過障害や腸管麻痺のために自力で排便できない患者の場合は摘便が必須である。
【0004】
摘便方法の一例は、ゴム手袋をはめて肛門から指を挿入し、直腸・結腸に溜まった便塊をほぐして掻き出し、掻き出した便を紙オムツにぬぐいつけたり、ポータブル便器に落としたりするという方法である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-210571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の一例では、患者と看護師の両者に、停留した便の悪臭による不快感を与えてしまう。また、上述の一例では、伝播・飛沫感染リスクがある。
本発明の1つの局面は、便の悪臭や便との接触、飛沫感染リスクを低減できる摘便バッグを提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る摘便バッグは、一端に一つの開口部を備え、変形可能な材料から成る、便収容用の袋状の本体部と、前記摘便バッグを肛門周囲皮膚に貼着させるための粘着部であって、前記開口部に沿って設けられ、粘着性を有する粘着部とを備え、前記本体部は、その側面及び底面のうちの一方から本体部の内側に向かって突出した、先端が閉じた挿入部を複数備え、複数備えられた前記挿入部の少なくとも一部を前記開口部を介して肛門内に挿入できるように構成されている。
【0008】
本発明の摘便バッグは、次のように使用できる。まず、摘便バッグを患者に装着する。装着は、摘便バッグの粘着部を患者の肛門周囲皮膚に貼着するように行う。このとき、摘便バッグの開口部は、患者の肛門に臨み、肛門周囲に接触、好ましくは密着できる。また、摘便バッグの内部は、外部に対して好ましくは密閉される。次に、看護師等が少なくとも1つの指(例えば人差し指と中指)を本体部の外側から少なくとも1つの指挿入部に挿入した状態で、少なくとも1つの指挿入部の少なくとも一部を肛門内に入れ、更に直腸内に挿入する。その後、看護師等は少なくとも1つの指挿入部に挿入した少なくとも1つの指を動かすことで、患者の肛門から便を掻き出す。掻き出した便は、本体部の中に落とす。摘便の終了後、摘便バッグを患者の肛門周囲皮膚から取り外し、廃棄する。
【0009】
また、前記粘着部には、粘着部を二つに折り曲げるための折曲部が設けられていてもよい。この場合、折曲部を用いて粘着部を二つに折り曲げることで、本体部の開口部を容易に閉鎖することができる。本体部の開口部を閉鎖した場合、便の臭気の拡散や、感染を抑制することができる。
【0010】
本発明の摘便バッグは、掻き出した便を袋状の本体部の中に収容し、本体部を閉鎖することができるため、便の臭いの拡散を抑制できる。また、臭いが拡散しにくいことから、患者の心理的な負担を軽減できる。
【0011】
患者は、摘便バッグを装着したまま、体を動かし、姿勢を変えることが可能である。そのため、例えば、排便促進用の坐薬挿入や浣腸を行った後、摘便バッグを装着すれば、バッグの上から浣腸液が漏れないように肛門部を抑えることが可能であり、排便反射が起こるまで安楽な姿勢を保持しながら、便が出るのを待つことができる。排便反射後には、浣腸液と便はそのまま摘便バッグに収容でき、続けて摘便を実施する時には臭気を気にせずに排便ケアを受けることができる。
【0012】
また、本発明の摘便バッグは、便をその中に収容するので、看護師等は直接便に触れる必要がない。そのため、便中に、MRSA、肝炎、O-157、エイズ等の感染性の細菌やウイルスが含まれる場合でも、看護師等への感染を抑制できる。また、患者が抗がん剤治療を受けており、便中に有害な化学物質が含まれている場合でも、看護師、介護者への暴露を抑制できる。
【0013】
複数備えられた指挿入部の各々は、該複数備えられた指挿入部の各々から開口部までの距離が互いに等しい位置に形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明の摘便バッグを用いれば、従来の方法のように、別々に、紙オムツ、潤滑剤、防臭剤等の物品を揃える必要がない。
備えられた指挿入部の各々は、該複数備えられた指挿入部の各々から前記開口部までの距離が互いに異なる位置に形成されていてもよい。複数備えられた指挿入部の各々がこのような位置に配置されていることにより、複数備えられた指挿入部に挿入した複数の指による操作が容易になり、摘便の処置が一層容易になる。例えば人差し指と中指を本体部の外側から2つの指挿入部にそれぞれ挿入した状態で、2つの指挿入部の少なくとも一部を肛門内に入れ、更に直腸内に挿入して人差し指と中指両方を動かすことで、便を掻き出す作業が簡単になる。
【0015】
前記粘着部は、中央に孔が形成された楕円形のシート状部材であり、その外周部にタブを備えていてもよい。タブを備えることにより、そのタブで、便を収容した摘便バッグをバネ秤により、便の重量を測定することもできる。
【0016】
前記本体部の内面のうち、なくとも1つの指挿入部及び周囲に、潤滑剤が塗布されていてもよい。潤滑剤が塗布されていることにより、肛門及びその周囲粘膜を傷付けることなく、指で便をスムーズに取り出すことができる。潤滑剤は、本体部の内面全体に塗布されていてもよいし、少なくとも1つの指挿入部の部分だけに塗布されていてもよい。
【0017】
前記変形可能な材料は特に限定されず、例えば、各種ゴム、プラスチック(特に伸縮性を有するプラスチック)、紙、表面に樹脂コーティングを施した紙等を用いることができる。この材料は、伸縮性も有してもよい。また、挿入部の数は、人差し指と中指をそれぞれ挿入できるよう2個形成することが望ましいが、それ以外の個数でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における摘便バッグの構成を表す斜視図である。
【図2A-2D】第1実施形態における摘便バッグの製造工程を表す説明図である。
【図3】第1実施形態における摘便バッグの使用方法を表す説明図である。
【図4】摘便バッグの変形例を拡大して表す斜視図である。
【図5】第1実施形態における摘便バッグを上方から見たときにおける2つの指挿入部と、タブと、折曲部との位置関係を表す説明図である。
【図6】第2実施形態における摘便バッグの構成を表す斜視図である。
【図7】第2実施形態における摘便バッグを上方から見たときにおける2つ指挿入部と、タブと、折曲部との位置関係を表す説明図である。
【図8】第3実施形態における摘便バッグの構成を表す側断面図である。
【図9】第4実施形態における摘便バッグの構成を表す斜視図である。
【図10】第4実施形態における摘便バッグの製造工程の一部を表す説明図である。
【図11】第4実施形態における摘便バッグの使用方法を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・摘便バッグ、3、20・・・本体部、5・・・粘着部、5a・・・皮膚装着面、5a・・・折曲部、7・・・開口部、9、11・・・指挿入部、12・・孔、13・・・タブ、13a・・・孔、15、17・・・凸部、19・・・端部、21・・・粘着部、23・・・粘着剤層、101・・・患者、103・・・肛門
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
1.摘便バッグ1の構成
摘便バッグ1の構成を、図1及び図5に基づいて説明する。摘便バッグ1は、低アレルギー性の透明なラテックスフリー(変形可能であり、伸縮可能な材料)の薄いゴム膜から成る袋状の本体部3と、粘着部5とを備える。袋状の本体部3は掻き出した便、粘膜等を収容するためのものである。なお摘便バッグ1は半透明であっても良い。

【0021】
前記本体部3は、その一端に開口部7を備える。開口部7の形状は、円であってもよいし、楕円であってもよい。また、本体部3の容量は1000mlである。本体部3の側面(図1のように、開口部7を上向きとしたとき、側面となる部分)に、手の指を挿入可能な凹部状の指挿入部9、11がそれぞれ形成されている。指挿入部9、11は、本体部3における他の部分と一体であり、透明なラテックスフリーゴムの薄い膜から成る。すなわち、指挿入部9、11は、本体部3の一部を、内側に嵌入させた凹部となっている。

【0022】
指挿入部9は、摘便バッグ1を図1のように置いたとき、指挿入部11の上側に位置する。すなわち、指挿入部9と指挿入部11は、図1において、鉛直線に沿って配置されており、指挿入部9は、指挿入部11よりも、開口部7までの距離が小さい。指挿入部9と指挿入部11との間隔は、看護師等が指挿入部9に人差し指を入れ、指挿入部11に中指を入れやすいように設定された間隔である。なお、指挿入部9と指挿入部11の先端は閉じた状態であるので、看護師等が本体部3の外側から指挿入部9、11に指(例えば5~7cm)を挿入した状態で指を腸管内に入れても、指先が便等に直接触れることがない。

【0023】
本体部3の内面には、水溶性潤滑剤が塗布されている。この水溶性潤滑剤は、指挿入部9、11の部分にも塗布されている。水溶性潤滑剤は、水溶性潤滑ゼリーを用いることができる。

【0024】
前記粘着部5は、中央に孔12が形成された楕円形のシート状部材である。粘着部5は、本体部3の開口部7に取り付けられている。より詳しくは、粘着部5の下面(図1における下面)のうち、孔12を囲む接着領域14と、本体部3の開口部7側の端部とが接着されている。接着領域14は、孔12の全周にわたって延びている。また、本体部3の開口部7側の端部は、その全てが粘着部5に接着されている。粘着部5と本体部3とが上記のように接着されていることにより、粘着部5の孔12は、開口部7に臨んでいる。また、本体部3の内部は、粘着部5の孔12以外では、外部に対して密閉されている。また、粘着部5は、本体部3よりも、外側に張り出している。

【0025】
粘着部5のうち、本体部3とは反対側の面(図1における上面)である皮膚装着面5aに、粘着剤層が形成されており、皮膚に対して貼着可能である。また、粘着部5は、ハイドロ-コロイド(Hydro-colloid)皮膚保護材から成り、ハイドロ-コロイド皮膚保護材は、皮膚に貼着しても皮膚の負担が少ない。粘着部5の外周における一部には、タブ13が形成されている。タブ13の中心には、孔13aが設けられている。このように本体部3の開口部7に沿って設けられた、粘着性を有する粘着部5は、患者の肛門周囲皮膚に密着できるように構成されている。

【0026】
皮膚装着面5aには、折曲部5bが形成されている。折曲部5bは、皮膚装着面5aにおける周囲よりも一段凹んだ溝である。折曲部5bは、粘着部5を、均等に2つ折にする場合における折り目線上(すなわち、粘着部5を2等分する直線上)に位置する。粘着部5は、折曲部5bを折り目として、皮膚装着面5aが内側となるように、2つ折にすることができる。粘着部5を2つ折にしたとき、粘着部5の孔12、及び本体部3の開口部7は閉じられる。また、粘着部5を2つ折にしたとき、皮膚装着面5aの粘着剤層同士が貼り合わされ、2つ折の状態を維持する。

【0027】
摘便バッグ1を上方(図1における上方)から見た場合において、開口部7の中心7aを中心とする円を想定すると、その円周上において、図5に示すように、タブ13の位置は、指挿入部9、11の位置から、時計回りにθ回転した位置である。そのθの値は、45~135度の範囲内である。また、折曲部5bのうちの一方はタブ13の近傍にあり、他方の折曲部5bは、上記の円周における反対側にある。

【0028】
2.摘便バッグ1の製造方法
摘便バッグ1を製造する方法を図2A-2Dに基づいて説明する。まず、図2Aに示すように、開口部7を備えた袋状の本体部3を成形する。本体部3には、2つの指挿入部(この場合本体部3の内側から本体部3の外側に向かう凸部15、17となる)を設ける。なお、指挿入部としての凸部15、17は、本体部3における他の部分と一体成形されたものであり、本体部3における他の部分と同じ材質、及び同じ厚さを有する。

【0029】
次に、図2Bに示すように、指挿入部(この場合凸部15、17となっている)を、本体部3の内側に押し込む。この結果、本体部3の外側から指を挿入できる指挿入部(この場合凸部15、17が本体部3内側に押し込まれることで凹部となる)9、11が形成される。この場合、先端が閉じた指挿入部9、11は、本体部3の側面から本体部3の内側に向かって突出した形状となる。そして、本体部3の外側から指を挿入することができる指挿入部9、11は、開口部7を介して、その少なくとも一部(先端を含む部分)を、患者の肛門内に挿入することができるような、長さ及び弾力性を有している
次に、本体部3のうち、開口部7側の端部19(図2A及び2B参照)を、図2Cに示すとおり、外側に張り出すように折り曲げる。そして、その端部19に、粘着部5の接着領域14を貼り合わせる。貼り合わせる方法としては、熱溶着を用いることができる。本体部3と粘着部5とを上記のように貼り合わせた状態における側断面図を図2Dに示す。

【0030】
次に、本体部3の内面に、水溶性潤滑剤を塗布する。また、粘着部5の皮膚装着面5aに、図示しない剥離紙を貼着する。なお、この剥離紙は、摘便バッグ1を使用するときに剥がされる。上記のように製造した摘便バッグ1は、個別に包装することができる。

【0031】
3.摘便バッグ1の使用方法
摘便バッグ1の使用方法を図3に基づいて説明する。まず、摘便バッグ1を個別包装から取り出し、粘着部5の皮膚装着面5aに貼着されていた剥離紙を剥がす。そして、摘便バッグ1を患者101に装着する。装着は、摘便バッグ1の皮膚装着面5aが、患者101における肛門103の周囲に貼着するように行う。このとき、摘便バッグ1の開口部7は、肛門103に臨む。また、摘便バッグ1の内部は、外部に対して密閉される。

【0032】
摘便バッグ1の装着後、看護師等の人差し指を指挿入部9に挿入し、中指を指挿入部11に挿入する。看護師等が指を入れた指挿入部9、11及び本体部3の内側を開口部7側に伸ばして、指挿入部9、11の少なくとも一部(例えば先端を含む部分)を肛門103内に入れて動かすことで、患者101の肛門から便を掻き出す。掻き出した便は、本体部3の中に落とす。摘便の終了後、摘便バッグ1を患者から取り外し、廃棄する。廃棄するときは、粘着部5を二つ折りにし、皮膚装着面5a同士を接着することが好ましい。このようにすることで、開口部7を閉じ、便の臭気の拡散や、感染を抑制することができる。また、摘便バッグ1を患者101から取り外した後、タブ13をバネ秤のフックに引っ掛けて、摘便バッグ1の重量を測定することができる。予め摘便バッグ1のみの重量を取得しておき、便を収容した摘便バッグ1の重量から差し引けば、便のみの重量を算出することができる。
摘便バッグ1が奏する効果
(1)摘便バッグ1は、掻き出した便をその中に収容し、密閉することができる。そのため、便の臭いの拡散を抑制できる。また、臭いが拡散しにくいことから、患者の心理的な負担を軽減できる。なお、摘便バッグ1の密閉は、粘着部5を、折曲部5bにおいて、皮膚装着面5aが内側となるように2つ折にすることで、容易に実現できる。この場合、皮膚装着面5aの粘着剤層同士が貼り合わされるので、2つ折の状態(摘便バッグ1が密閉された状態)を維持することができる。摘便バッグ1は透明ないし半透明である場合、便の性状が観察しやすい。

【0033】
(2)患者は、摘便バッグを装着したまま、体を動かし、姿勢を変えることが可能である。そのため、例えば、排便促進用の坐薬挿入や浣腸を行った後、摘便バッグを装着すれば、バッグの上から浣腸液が漏れないように肛門部を抑えることが可能であり、排便反射が起こるまで安楽な姿勢を保持しながら、便が出るのを待つことができる。排便反射後には、浣腸液と便はそのまま摘便バッグに収容でき、続けて摘便を実施する時には臭気を気にせずに排便ケアを受けることができる。

【0034】
(3)摘便バッグ1は、便、血液、粘液等をその中に収容するので、便、血液、粘液等は、看護師等に触れない。そのため、便中に、MRSA、肝炎、O-157、エイズ等の感染性の細菌やウイルスが含まれる場合でも、看護師等への感染を抑制できる。また、患者が抗がん剤治療を受けており、便中に有害な化学物質が含まれている場合でも、看護師等への暴露を抑制できる。

【0035】
(4)摘便バッグ1は、摘便を行うのに必要な構成がオールインワンとなっているため、別個に紙オムツ、潤滑剤、防臭剤、ビニール袋等の物品を揃える必要がない。
(5)摘便バッグ1を用いれば、便の量を容易に測定することができる。

【0036】
(6)本体部3の内面に水溶性潤滑剤が塗布されていることにより、肛門及びその周囲粘膜を傷付けることなく、指で便をスムーズに取り出すことができる。
(7)タブ13と指挿入部9、11の位置関係を図5に示すものにすることにより、摘便バッグ1を正しい向きに装着することが容易になる。すなわち、横臥する患者に対し、タブ13を目印として、それが上向きとなるように摘便バッグ1を装着すると、指挿入部9、11の位置が、右利きの看護師等にとって、作業しやすい位置となる。
<第2の実施形態>
本実施形態の摘便バッグ1の構成を図6、及び図7に基づいて説明する。本実施形態の摘便バッグ1の構成は、基本的には前記第1の実施形態の場合と同様であるが、指挿入部9から開口部7までの距離と、指挿入部11から開口部7までの距離とが等しいという点で相違する。すなわち、指挿入部9、11の位置関係は、図6に示すように、開口部7が上側となるように摘便バッグ1を置いたとき、所定の間隔をおいて横並びとなる。指挿入部9と指挿入部11との間隔は、看護師等が指挿入部9、11のうちの一方に人差し指を入れ、他方に中指を入れやすいように設定された間隔である。

【0037】
摘便バッグ1を上方(図6における上方)から見た場合において、開口部7の中心7aを中心とする円を想定すると、その円周上において、図7に示すように、タブ13の位置は、指挿入部9、11の中間の位置から、時計回りにθ回転した位置である。そのθの値は、45~135度の範囲内である。また、折曲部5bのうちの一方はタブ13の近傍にあり、他方の折曲部5bは、上記の円周における反対側にある。

【0038】
本実施形態の摘便バッグ1は、前記第1の実施形態の場合と略同様の効果を奏することができる。
<第3の実施形態>
本実施形態の摘便バッグ1の構成を図8に基づいて説明する。本実施形態の摘便バッグ1の構成は、基本的には前記第2の実施形態の場合と同様であるが、本体部3と粘着部5とが一体で形成されている点で相違する。すなわち、本実施形態の摘便バッグ1は、前記第2の実施形態における本体部3と粘着部5とを併せたものと同様の形状を有する一体型の本体部20を備えている。この本体部20は、低アレルギー性の透明なラテックスフリー(変形可能であり、伸縮可能な材料)の薄いゴム膜から成る袋状の部材である。本体部20のうち、前記第2の実施形態における粘着部5に対応する部分は、外側に張り出す粘着部21である。粘着部21のうち、図8における上面に、粘着剤層23が形成されており、皮膚に対して貼着可能である。また、本体部20には、指挿入部9、11が形成されている。

【0039】
本実施形態の摘便バッグ1は、前記第2の実施形態の場合と略同様の効果を奏することができる。
<第4の実施形態>
本実施形態の摘便バッグ1の構成を図9~図11に基づいて説明する。本実施形態の摘便バッグ1の構成は、基本的には前記第1の実施形態の場合と同様であるが、図9に示すように、指挿入部9、11が、本体部3における底面(開口部7と対向する部分)に形成されている点と、本体部3の素材がポリエチレン系素材(変形可能であり、伸縮可能な素材)である点で相違する。本実施形態でも、指挿入部9と指挿入部11との間隔は、看護師等が人差し指と中指を入れやすいように設定された間隔である。

【0040】
摘便バッグ1は、前記第1の実施形態と同様に、本体部3と粘着部5とを貼り合わせる方法で製造される。本体部3の製造は、まず、図10に示すように、外側に向かって突出する凸部15、17を備えた袋状の本体部3を製造する。凸部15、17は、本体部3における他の部分と一体成形されたものであり、本体部3における他の部分と同じ材質、及び同じ厚さを有する。そして、凸部15、17を本体部3の内側に押し込み、図9に示す指挿入部9、11とする。

【0041】
摘便バッグ1は、図11に示すように、患者11に装着される。装着は、摘便バッグ1の皮膚装着面5aが、患者101における肛門103の周囲に貼着するように行う。このとき、摘便バッグ1の指挿入部9、11は、肛門103に対向する。また、摘便バッグ1の内部は、外部に対して密閉される。

【0042】
摘便バッグ1の装着後、看護師等の人差し指を指挿入部11に挿入し、中指を指挿入部9に挿入する。看護師等が指を入れた指挿入部9、11及び本体部3の内側を開口部7側に伸ばして、指挿入部9、11の少なくとも一部(例えば先端を含む部分)を肛門103内に入れて動かすことで、患者101の肛門から便105を掻き出す。このとき、本体部3の素材が変形可能であり伸縮可能なポリエチレン系樹脂であることにより、上記の作業を容易に行うことができる。掻き出した便105は、本体部3の中に落とす。

【0043】
摘便の終了後、摘便バッグ1を患者から取り外し、廃棄する。廃棄するときは、粘着部5を二つ折りにし、皮膚装着面5a同士を接着することが好ましい。このようにすることで、開口部7を閉じ、便の臭気の拡散や、感染を抑制することができる。

【0044】
なお、本実施形態の摘便バック1は、前記第3の実施形態と同様に、粘着部5に相当する部分も含めて一体型の本体部を備えるものであってもよい。
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

【0045】
例えば、指挿入部9、指挿入部11の位置及び個数は、前記実施形態における位置には限定されず、適宜設定できる。例えば左利き用と右利き用に指挿入部の設置位置を変更しても良い。また、摘便バッグの形態を変更し、図1に示す本体部3と粘着部5との位置関係を図4に示すような形態に変更しても良い(変形例)。

【0046】
即ち、本体部3の側方位置に開口7を設け、更に開口7の周囲に粘着部5を設ける。この変形例の場合も、看護師等は本体部3の外側から指を挿入した指挿入部9、11の少なくとも一部を患者の肛門103に差し込んで摘便作業を行うが、指挿入部9、11の長手方向が開口7に対してほぼ垂直となるので、肛門103への挿入が容易になる。このとき、指挿入部9、11の先端は、図4において実線で示す位置にも、図4において破線で示す位置にも、移動可能である。

【0047】
なお、粘着部5には、粘着部5を二つに折るため、上下方向に延びる2つの折曲部5bを設ける。折曲部5bは、粘着部5の表面(粘着剤が存在する面)における周囲よりも一段凹んだ溝である。折曲部5bは、粘着部5を、均等に2つ折にする場合における折り目線上(すなわち、粘着部5を2等分する直線上)に位置する。粘着部5は、折曲部5bを折り目として、粘着剤が存在する面が内側となるように、2つ折にすることができる。粘着部5を2つ折にしたとき、本体部3の開口部7は閉じられる。そのことにより、便の臭気の拡散や、感染を抑制することができる。
図面
【図1】
0
【図2A-2D】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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