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明細書 :カーボンナノチューブ複合電極及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6016036号 (P6016036)
登録日 平成28年10月7日(2016.10.7)
発行日 平成28年11月2日(2016.11.2)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブ複合電極及びその製造方法
国際特許分類 B82B   1/00        (2006.01)
H01M  14/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
C01B  31/02        (2006.01)
H01M   8/16        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01L  31/04        (2014.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01L  35/32        (2006.01)
H01G  11/36        (2013.01)
FI B82B 1/00
H01M 14/00 P
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C01B 31/02 101F
H01M 8/16
H01M 4/86 M
H01M 4/86 B
H01L 31/04
H01M 4/96 B
H01M 4/96 M
H01L 35/32 A
H01G 11/36
請求項の数または発明の数 32
全頁数 36
出願番号 特願2013-515096 (P2013-515096)
出願日 平成24年5月10日(2012.5.10)
国際出願番号 PCT/JP2012/061967
国際公開番号 WO2012/157506
国際公開日 平成24年11月22日(2012.11.22)
優先権出願番号 2011108659
優先日 平成23年5月13日(2011.5.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年5月7日(2015.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】冨永 昌人
【氏名】坂本 伸悟
【氏名】深道 佑一
【氏名】岩岡 彩子
【氏名】橋口 昭貴
【氏名】戸上 純
【氏名】渡邊 範明
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100195327、【弁理士】、【氏名又は名称】森 博
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査官 【審査官】松岡 智也
参考文献・文献 特開2003-335509(JP,A)
特開2008-105906(JP,A)
特開2009-076568(JP,A)
特開2010-155929(JP,A)
J.S.Sakamoto and B.Dunn,"Vanadium Oxide-Carbon Nanotube Composite Electrodes for use in Secondary Lithium Batteries",Journal of The Electrochemical Society,2002年,Vol.149(1),A26-A30
調査した分野 B82Y 5/00-99/00
B82B 1/00-3/00
C01B 31/00-31/02
H01J 9/02、1/304
H01L 13/04、35/30
H01B 1/24
G01N 27/30
H01M 8/16、14/00

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特許請求の範囲 【請求項1】
電極基材の表面に、多孔質酸化物及びカーボンナノチューブからなる表面層を有するカーボンナノチューブ複合電極であって、
前記カーボンナノチューブは、一端が前記多孔質酸化物の細孔内に存在するカーボンナノチューブを含み、かつ、該カーボンナノチューブのうち、少なくとも一部のカーボンナノチューブが、電極基材と電気的に接続してなり、かつ、前記カーボンナノチューブが相互接触し、表面層全体として導電性を有することを特徴とするカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項2】
前記多孔質酸化物が、ゼオライト、活性アルミナ及びメソポーラスシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項3】
前記多孔質酸化物が、ゼオライトである請求項2記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項4】
前記電極基材が、金(Au)からなる電極基材又は金(Au)メッキした電極基材である請求項1から3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項5】
前記多孔質酸化物から生成したカーボンナノチューブのうち、一部のカーボンナノチューブが、部分的に前記電極基材の表面に埋包されている請求項1から4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブの総数の70%以上が、単層カーボンナノチューブである請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブが、非酸化型のカーボンナノチューブである請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブの壁面に、金属及び/又は半導体を固着してなる請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項9】
前記金属及び/又は半導体が、平均粒径100nm以下の微粒子である請求項記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項10】
前記微粒子の総数の80%以上が、粒径0.5nm以上5nm以下の範囲にある請求項記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブの壁面が、表面修飾物質で被覆されてなる請求項1から10のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項12】
前記表面修飾物質が、界面活性剤である請求項11記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項13】
少なくとも一部のカーボンナノチューブの先端が、開端してなる請求項1から12のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項14】
前記開端したカーボンナノチューブが、内包修飾物質を内包してなる請求項13に記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項15】
前記内包修飾物質が、カロテノイドである請求項14に記載のカーボンナノチューブ複合電極。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極を有してなることを特徴とする電気化学センサ。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極を有してなることを特徴とする発電デバイス。
【請求項18】
色素増感型太陽電池、バイオ燃料電池及び熱電発電デバイスのいずれか1種である請求項17記載の発電デバイス。
【請求項19】
請求項1から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極を有してなることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項20】
請求項1から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極から電極基材を除去する工程を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ-多孔質酸化物複合体の製造方法
【請求項21】
請求項1から12のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極に電位を印加し、該電極に含まれるカーボンナノチューブの先端を電気化学的に分解して開端することを特徴とするカーボンナノチューブの開端方法。
【請求項22】
以下の工程を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
(1)電極基材上に、金属触媒微粒子を担持させた多孔質酸化物粒子又は金属触媒微粒子の前駆体を含有させた多孔質酸化物粒子を含む皮膜を形成する工程
(2)前記皮膜が形成された電極基材を熱処理して、金属触媒微粒子を含む多孔質酸化物層を形成する工程
(3)前記多孔質酸化物層が形成された電極基材を、炭素含有化合物を含む非酸化性雰囲気下で熱処理して、前記多孔質酸化物に担持された金属触媒微粒子からカーボンナノチューブを生成させる工程
【請求項23】
前記多孔質酸化物粒子が、孔径0.4nm以上20nm以下の範囲の細孔を有し、かつ、該多孔質酸化物粒子の比表面積が100m2/g以上である請求項22記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項24】
前記多孔質酸化物が、ゼオライトである請求項22または23記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項25】
前記多孔質酸化物粒子の粒径が、0.05μm以上10μm以下である請求項22から24のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項26】
前記金属触媒微粒子の担持量が、多孔質酸化物100重量部に対し、0.1重量部以上10重量部以下である請求項22から25のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項27】
前記金属触媒微粒子の粒径が、0.5nm以上100nm以下である請求項22から26のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項28】
前記金属触媒微粒子が、CoMo合金である請求項22から27のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項29】
前記電極基材が、金(Au)からなる電極基材又は金(Au)メッキした電極基材である請求項22から28のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項30】
工程(2)における熱処理温度が、300℃以上900℃以下である請求項22から29のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項31】
工程(3)における熱処理温度が、600℃以上900℃以下である請求項22から30のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【請求項32】
前記炭素含有化合物が、エタノールである請求項22から31のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ複合電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、1層のグラフェンシート(炭素六員環からなる層)を円筒状に丸めた、直径が0.4nmから数十nm程度のチューブ状の物質であり、熱的・化学的安定性、力学的強度、電子伝導性、熱伝導性、近赤外域まで伸びた分光特性を有する優れたナノマテリアルとして注目されている。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と記載する場合がある。)には、前記グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、グラフェンシートが2層である2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、グラフェンシートが2層以上の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)がある。
【0003】
カーボンナノチューブの応用例として、カーボンナノチューブを電極基板上に固定したカーボンナノチューブ複合電極(CNT複合電極)が開発されている。
例えば、特許文献1には、電極基板上に固定された金属触媒から成長させたCNTを備えるCNT複合電極が開示されている。
この方法では、電極基板上に直接CNTが形成されているため、CNTと電極との電子移動が容易であり、高感度なセンサとして用いることができる。一方で、CNTと電極との接合力は十分ではなく、CNTが脱落しやすい。特にセンサ用途など水中に浸漬する必要がある場合には、CNTが容易に脱離するという問題がある。
【0004】
また、特許文献2には、電極基板上に、該電極基板の主成分を含む微粒子とCNTの混合物を堆積させ、無酸素雰囲気で加熱して該微粒子を皮膜化してCNTを固定化したCNT複合電極の製造方法が開示されている。
このCNT複合電極において、CNTは、該電極基板の主成分を含む微粒子に挟み込まれて固定されるため、電極上に強固に固定される。しかしながら、固定化の際にCNT壁面が電極基板の主成分を含む微粒子により傷つけられるため、CNT本来の特性を十分に得られない。また、この方法では、単位電極面積当たりに固定できるCNTの量をそれほど多くできないという欠点がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-64724号公報
【特許文献2】特開2005-332612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、カーボンナノチューブがその特性を活かした状態で電極基材に強固に固定され、かつ、カーボンナノチューブ本来の電極特性を有するカーボンナノチューブ複合電極及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 電極基材の表面に、多孔質酸化物及びカーボンナノチューブからなる表面層を有するカーボンナノチューブ複合電極であって、
前記カーボンナノチューブが、前記多孔質酸化物から生成してなり、かつ、該カーボンナノチューブのうち、少なくとも一部のカーボンナノチューブが、電極基材と電気的に接続してなり、かつ、前記カーボンナノチューブが相互接触し、表面層全体として導電性を有するカーボンナノチューブ複合電極。
<2> 前記多孔質酸化物が、ゼオライト、活性アルミナ及びメソポーラスシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である前記<1>記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<3> 前記多孔質酸化物が、ゼオライトである前記<2>記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<4> 前記電極基材が、金(Au)からなる電極基材又は金(Au)メッキした電極基材である前記<1>から<3>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<5> 前記多孔質酸化物に生成したカーボンナノチューブのうち、一部のカーボンナノチューブが部分的に前記電極基材の表面に埋包されている前記<1>から<4>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<6> 前記カーボンナノチューブが、前記多孔質酸化物の細孔から生成したカーボンナノチューブを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<7> 前記カーボンナノチューブが、多孔質酸化物に担持した金属微粒子を触媒として生成したカーボンナノチューブである前記<1>から<6>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<8> 前記金属微粒子の担持量が、多孔質酸化物100重量部に対し、0.1重量部以上10重量部以下である前記<7>記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<9> 前記カーボンナノチューブの総数の70%以上が、単層カーボンナノチューブである前記<1>から<8>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<10> 前記カーボンナノチューブが、非酸化型のカーボンナノチューブである前記<1>から<9>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<11> 前記カーボンナノチューブの壁面に、金属及び/又は半導体を固着してなる前記<1>から<10>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<12> 前記金属及び/又は半導体が、平均粒径100nm以下の微粒子である前記<11>記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<13> 前記微粒子の総数の80%以上が、粒径0.5nm以上5nm以下の範囲にある前記<12>記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<14> 前記カーボンナノチューブの壁面が、表面修飾物質で被覆されてなる前記<1>から<13>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<15> 前記表面修飾物質が、界面活性剤である前記<14>記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<16> 少なくとも一部のカーボンナノチューブの先端が、開端してなる前記<1>から<15>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<17> 電気化学的に開端してなる前記<16>に記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<18> 前記開端したカーボンナノチューブが、内包修飾物質を内包してなる前記<16>又は<17>に記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<19> 前記内包修飾物質が、カロテノイドである前記<18>に記載のカーボンナノチューブ複合電極。
<20> 前記<1>から<19>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極を有してなることを特徴とする電気化学センサ。
<21> 前記<1>から<19>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極を有してなることを特徴とする発電デバイス。
<22> 色素増感型太陽電池、バイオ燃料電池及び熱電発電デバイスのいずれか1種である前記<21>記載の発電デバイス。
<23> 前記<1>から<19>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極を有してなることを特徴とする蓄電デバイス。
<24> 前記<1>から<19>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極から電極基材を除去してなることを特徴とするカーボンナノチューブ-多孔質酸化物複合体。
<25> 前記<1>から<15>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極に電位を印加し、該電極に含まれるカーボンナノチューブの先端を電気化学的に分解して開端することを特徴とするカーボンナノチューブの開端方法。
<26> 以下の工程を含むカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
(1)電極基材上に、金属触媒微粒子を担持させた多孔質酸化物粒子又は金属触媒微粒子の前駆体を含有させた多孔質酸化物粒子を含む皮膜を形成する工程
(2)前記皮膜が形成された電極基材を熱処理して、金属触媒微粒子を含む多孔質酸化物層を形成する工程
(3)前記多孔質酸化物層が形成された電極基材を、炭素含有化合物を含む非酸化性雰囲気下で熱処理して、前記多孔質酸化物に担持された金属触媒微粒子からカーボンナノチューブを生成させる工程
<27> 前記多孔質酸化物粒子が、孔径0.4nm以上20nm以下の範囲の細孔を有し、かつ、該多孔質酸化物粒子の比表面積が100m2/g以上である前記<26>記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<28> 前記多孔質酸化物が、ゼオライトである前記<26>または<27>記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<29> 前記多孔質酸化物粒子の粒径が、0.05μm以上10μm以下である前記<26>から<28>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<30> 前記金属微粒子の担持量が、多孔質酸化物100重量部に対し、0.1重量部以上10重量部以下である前記<26>から<29>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<31> 前記金属微粒子の粒径が、0.5nm以上100nm以下である前記<26>から<30>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<32> 前記金属触媒微粒子が、CoMo合金である前記<26>から<31>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<33> 前記電極基材が、金(Au)からなる電極基材又は金(Au)メッキした電極基材である前記<26>から<32>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<34> 工程(2)における熱処理温度が、300℃以上900℃以下である前記<26>から<33>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<35> 工程(3)における熱処理温度が、600℃以上900℃以下である前記<26>から<34>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
<36> 前記炭素含有化合物が、エタノールである前記<26>から<35>のいずれかに記載のカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多孔質酸化物から生成したカーボンナノチューブが電極基材に強固に固定されると共に、カーボンナノチューブ本来の電極特性を有するカーボンナノチューブ複合電極が提供される。該カーボンナノチューブ複合電極は、電気化学センサ、各種発電デバイス、電池を始めとした蓄電デバイスの電極としての用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本発明のCNT複合電極の一実施形態である、表面層を構成する多孔質酸化物の細孔から生成したCNTを含むCNT複合電極の模式図である。
【図1b】図1aにおける表面層部分の拡大模式図及び電極基材部分の拡大模式図である。
【図2】熱CVD法(化学気相成長法)によるCNT合成装置の概略構成図である。
【図3a】CNTを含む表面層形成前の電極(Au線)の外観写真である。
【図3b】CNTを含む表面層形成後の電極(CNT複合電極1、多孔質酸化物:ゼオライト)の外観写真である。
【図4】CNT複合電極2~5の外観写真である。
【図5a】CNT複合電極1における表面層をSEM(走査型電子顕微鏡)観察した結果であり、電極基材(Au線)と表面層の境界部分のSEM写真である。
【図5b】CNT複合電極1における電極基材(Au線)と表面層の境界部分のSEM写真(拡大写真)である。
【図5c】CNT複合電極1における電極基材(Au線)と表面層の境界部分のSEM写真(拡大写真)である。
【図5d】CNT複合電極1における表面層のSEM写真(平面図)である。
【図5e】CNT複合電極1における表面層のカーボンナノチューブのTEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【図6a】CNTを成長させる前の電極基材(Au線)と多孔質酸化物層との境界部分のSEM写真である。
【図6b】図6a多孔質酸化物層のSEM写真(平面図)である。
【図7】CNT生成量を抑制したCNT複合電極1の表面層のSEM像(平面図)である。
【図8】CNT複合電極1における表面層をラマン分光法(レーザー波長:514.5nm)にて評価した結果である。
【図9a】CNT複合電極6(多孔質酸化物:活性アルミナ)における表面層のカーボンナノチューブのTEM写真である。
【図9b】CNT複合電極6における表面層をラマン分光法(レーザー波長:532nm)にて評価した結果である。
【図10】CNT複合電極7における表面層をラマン分光法(レーザー波長:532nm)にて評価した結果である。
【図11】CNT複合電極1(SWCNTs/Au)のβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの還元体(NADH)の酸化反応の挙動を、他の炭素電極及び金電極と比較した結果である。
【図12a】電極表面におけるNADHとアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)による酸化還元サイクルを表すスキームである。
【図12b】CNT複合電極1(SWCNTs/Au)を用いて、ADH及びADHの基質のエタノールの共存下、NADHの酸化反応の評価結果である。
【図13】(酸化型)CNT複合電極A~CにおけるNADHの酸化反応の評価結果である。
【図14】Au-CNT複合電極(I)のSEM写真である。
【図15】Au-CNT複合電極(I)のTEM写真である。
【図16】Au-CNT複合電極(II)のSEM写真である。
【図17】Au-CNT複合電極(III)のSEM写真である。
【図18】Pd-CNT複合電極(I)のSEM写真である。
【図19】Pd-CNT複合電極(II)のSEM写真である。
【図20a】CNT複合電極1の電気化学的酸素還元触媒反応を示す図である。
【図20b】Au-CNT複合電極(I)のグルコースの触媒酸化反応を示す図である。
【図21a】本発明のCNT複合電極を用いた色素増感型太陽電池の電極作製方法の模式図である。
【図21b】本発明のCNT複合電極を用いた色素増感型太陽電池における、アノード、カソードの外観写真である。
【図21c】アノードに塗布された色素の化学構造である。
【図21d】色素増感型太陽電池の模式図である。
【図21e】本発明のCNT複合電極を用いた色素増感型太陽電池における光応答を示す図である。
【図22】Lac修飾CNT複合電極1、2を用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行い、酵素電極反応を評価した結果である。
【図23】本発明のCNT複合電極を用いたバイオ燃料電池の模式図である。
【図24】熱電発電デバイスの評価方法の模式図である。
【図25】実施例及び比較例の熱電発電デバイスの評価結果である。
【図26】(a)β-カロテンの化学構造式、(b)β-カロテンの模式図、(c)開端処理したCNT複合電極へβ-カロテンが内包される様子を示す模式図である。
【図27】β-カロテン修飾CNT複合電極のラマン分光測定結果であり、各スペクトルは、(a)β-カロテン未修飾のCNT複合電極、(b)β-カロテン修飾CNT複合電極a、(c)β-カロテン修飾CNT複合電極b、(d)β-カロテン修飾CNT複合電極c、(e)β-カロテン修飾CNT複合電極d、(f)β-カロテンのみ、である。
【図28】β-カロテン修飾CNT複合電極c及びβ-カロテン未修飾修飾CNT複合電極(CNT複合電極1)のCV測定の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電極基材の表面に、多孔質酸化物及びカーボンナノチューブを含む表面層を有するカーボンナノチューブ複合電極であって、前記カーボンナノチューブが、前記多孔質酸化物から生成してなり、かつ、該カーボンナノチューブの少なくとも一部が、電極基材と電気的に接続されてなるカーボンナノチューブ複合電極(以下、「本発明のCNT複合電極」と記載する。)に関する。
本発明のCNT複合電極は、多孔質酸化物から生成した多数のCNTが相互に接触すると共に、該CNTの少なくとも一部が電極基材と電気的に接続されているため、CNT本来の電極特性を十分に有し、かつ、電極全体として導電性に優れる。
以下、本発明のCNT複合電極の構成要素を詳細に説明する。

【0012】
「1.電極基材」
本発明のCNT複合電極において、電極基材は、導電性を有するものならば特に限定はない。具体的には、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の金属及びその合金類や、ガラスやセラミック等の基材の表面に前記金属やその合金、導電性酸化物からなる皮膜を形成したもの等が挙げられる。ここで、導電性酸化物(半導体含む)としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。
なお、後述するように、CNT生成の時に加熱するため、600℃以上の温度で耐熱性を有するものであることが好ましい。
上記電極基材の中でも、より耐熱性が高く、多孔質酸化物の表面層がより容易に成形できるという点で、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の金属及びその合金類が好ましく用いられる。また、後述するように、本発明の製造方法では、電極基材上に形成した多孔質酸化物層からCNTが生成するが、金属及びその合金類を電極基材に用いると、後述するCNTの生成条件では金属が軟化するため、CNT表面の炭素と金属原子との相互作用により、生成したCNTが電極基材に潜り込み、該CNTのうち一部のCNTが部分的に電極基材の表面に埋包された形態となる傾向にある。なお、CNTの生成を減圧下で行うこともあるが、減圧下でCNT生成を行うと電極基材に用いられた金属の融点や軟化温度が低下する傾向にあるため、CNTの埋包がより起こりやすくなる。その結果、CNTが電極基材に強固に固定され、かつ、CNTと電極基材との電子授受性が向上するという利点がある。金(Au)は化学安定性が高く、CNTの生成条件で軟化してCNTの埋包を起こしやすいため、好適な電極基材材料のひとつである。

【0013】
また、電極基材の表面はメッキにより被覆されていてもよい。そのため、例えば、銅(Cu)、鉄(Fe)等の安価な金属を基材として使用し、その表面に金(Au)、白金(Pt)等の高価な金属をメッキしたものを電極基材とすることもできる。また、ガラスやセラミックなどの耐熱性に優れた非導電性のものを金属メッキしたものを電極基材とすることもできる。上述のように金(Au)は化学安定性が高いため、金属メッキの材料として好ましい。

【0014】
電極基材の形状は、平板状、網状、柱状などのいずれの形態でもよい。なお、表面層との接合性を高める点では、円柱状の電極基材であることが好ましい。また、電極面積を大きくするためには網状が好ましい。なお、電極基材の大きさは特に限定はなく、使用用途を考慮して適宜選択される。

【0015】
「2.表面層」
本発明のCNT複合電極における表面層は、多孔質酸化物及びCNTから構成される。該多孔質酸化物にはCNTが生成しており、該CNTの少なくとも一部は、電極基材と電気的に接続している。表面層は、その目的に応じて、電極基材の全面あるいは一部の面に形成される。その厚みは、その用途に応じて適宜決めることが出来るが、通常、0.1~100μm程度である。
以下、表面層を構成する多孔質酸化物、CNTについて説明する。

【0016】
(i)多孔質酸化物
多孔質酸化物は、ナノオーダー(通常100nm以下)の細孔を多数有している酸化物であり、本発明のCNT複合電極において、気体や液体の流通が可能な多孔質層として電極基材の表面に固定されている。
細孔としては、2~50nmのいわゆる、メソ孔であることが好ましいが、直径2nm未満のミクロ孔や、50nm超のマクロ孔を有していてもよい。
より均質なCNTを得ることができる点では、多孔質酸化物は、孔径0.4nm以上20nm以下の範囲の細孔を有していることが好ましい。

【0017】
多孔質酸化物としては、CNT形成時の処理温度(600℃以上)での耐熱性を有しているものであればよく、メソポーラスシリカ等のシリカ(SiO2)、活性アルミナ等のアルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)及びチタニア(TiO2)や、ゼオライト等のアルミノケイ酸を始めとするこれらの複合酸化物が挙げられる。これらは1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、活性アルミナ、メソポーラスシリカ、ゼオライトが好適である。
これらの多孔質酸化物は、例えば、原料前駆体(例えば、アルミニウムアルコキシド、アルコキシシラン等)を、細孔形成用の可燃性あるいは熱分解性の有機化合物をテンプレート材と共に加熱して形成することができる。

【0018】
なお、後述の本発明のCNT複合電極の製造方法にて詳しく説明するが、多孔質酸化物層は、多孔質酸化物の粒子を含む皮膜を熱処理して得ることができる。また、原料として好適な多孔質酸化物の細孔径や比表面積についても本発明のCNT複合電極の製造方法にて後述する。

【0019】
この中でも、ゼオライトは、耐熱性が高く、比表面積が大きいことから、好ましい多孔質酸化物である。
ゼオライトとは、結晶中に0.4nm~2nm程度の微細孔を持つ結晶性アルミノケイ酸塩の総称であり、Si-O四面体とAl-O四面体とが頂点のO原子を共有した三次元ネットワーク構造をもつ。ゼオライトとしては、ZSM-5型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、L型ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトなどが挙げられる。この中でも、耐熱性の高いY型ゼオライトが好ましい。

【0020】
(ii)カーボンナノチューブ(CNT)
表面層における多孔質酸化物に形成されたCNTは、その少なくとも一部と電極基材とが電気的に接続しているため、電極基材と電子授受を行うことができる。
上記CNTは、単層CNT、多層CNT及びこれらの混合物を含んでよいが、特にはCNTの総数の70%以上が単層CNTであることが好ましい。なお、単層CNTの割合は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上(100%含む)である。
単層CNTは、多層CNTに比べて高品質であるため、単層CNTが上記割合以上であると、CNTの有する本来の性質を有効に利用できるという利点がある。なお、単層CNTの割合は、TEMにおいて、任意に100本のCNTを選択したときの単層CNTの本数をカウントすることで求めることができる。

【0021】
CNTの長さ、太さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)で確認することができる。なお、CNTは1本1本単独に成長するだけでなく、複数のCNTが束状になって成長する場合もあるが、束状のCNTはSEMで観察することができる。
上記多孔質酸化物に形成されたCNTの長さ、太さは特に制限はないが、通常、全長0.1~10000μm程度、好ましくは1μm~1000μmであり、直径が0.5~100nm程度、好ましくは0.5nm~2nmである。

【0022】
表面層におけるCNTの密度は、形成されたCNTが相互接触し、全体として充分な導電性を有し、電極と電子授受を行える程度の密度であればよい。本発明のCNT複合電極において、多孔質酸化物の表面積あたりのCNTの密度は、通常、1×108本/cm2~1×1014本/cm2、好ましくは1×1011本/cm2~1×1013本/cm2である。
それぞれのCNTの間の距離(束状のCNTの場合は、束状のCNTの間の距離)は、通常、0.2~1000nm、好ましくは1nm~100nmである。

【0023】
なお、上記CNTは、表面層を構成する多孔質酸化物の細孔から生成したCNTを含むことが好ましい。特に細孔から生成したCNTの割合が全CNTの50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
本発明のCNT複合電極の好適な態様の一例として、図1(a)に表面層を構成する多孔質酸化物の細孔から生成したCNTを含むCNT複合電極の模式図、図1(b)に表面層部分の拡大模式図及び電極基材部分の拡大模式図を示す。なお、これらの模式図では、CNTの成長に伴う応力によって、多孔質酸化物の粒子同士が分離している状態を示しているが、CNTの成長前と同様に多孔質酸化物の粒子が分離せずに固まった状態であってもよい。
また、図1(a),図1(b)では電極基材と表面層の界面の様子も示しているが、上述したように電極基材に、成長したCNTが部分的に電極基材の表面に埋包された形態となる場合がある。

【0024】
本発明のCNT複合電極の製造方法にて後述するようにCNTは、例えば、多孔質酸化物に担持された金属触媒微粒子から成長させることができる。この場合、収量の点で、前記金属微粒子の担持量が、多孔質酸化物100重量部に対し、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2重量部以上5重量部以下である。なお、金属触媒微粒子の種類、大きさや具体的なCNTの合成方法は、本発明のCNT複合電極の製造方法にて後述する。
また、このような金属触媒微粒子は、CNT形成した後に、適当な薬剤を使用して溶解させて除去してもよい。

【0025】
また、カーボンナノチューブが、表面層を構成する前記多孔質酸化物の細孔から生成したカーボンナノチューブを含むことが好ましい。このようなCNTは、多孔質酸化物の細孔の大きさにその直径が規制される。そのため、多孔質酸化物として、例えば、結晶中に0.4nm~2nm程度の微細孔を有するゼオライトを用いると、直径が該微細孔で規制されたCNTを得ることができる。
なお、多孔質酸化物の細孔から生成したCNTを得るためには、前記金属触媒微粒子を多孔質酸化物の細孔内に担持させたのち、適当な条件でCNTを成長させればよい。

【0026】
本発明のCNT複合電極におけるCNTとして、その壁面が酸化されていない「非酸化型CNT」及びその壁面が酸化された「酸化型CNT」のいずれでもよく、用途によって使いわけることができる。
すなわち、太陽電池用電極や電気化学センサ電極の用途など、CNT表面本来の特性を生かす場合や高い導電性を必要とする場合には、壁面に官能基が少ない非酸化型のCNTであることが好ましい。
一方で、ドラッグデリバリーシステム用途や光機能性分子修飾などの機能性材料開発用途など、CNT表面の官能基を使った合成反応や高い導電性を必要としない場合には、酸化型のCNTを使用することもできる。
なお、「非酸化型CNT」は、合成直後のCNTとして得ることができる。非酸化型CNTは、空気中に保管してもほとんど酸化されることはないが、油性成分の汚れが付着しやすいので、合成直後に非酸化性雰囲気(液体含む)で保存することが好ましい。
「酸化型CNT」は非酸化型CNTを、例えば、プラズマ処理、UV-オゾン処理、高温(300~600℃程度)で処理、過酸化水素などの酸化試薬処理、電気化学的酸化処理することにより得ることができる。

【0027】
また、本発明のCNT複合電極におけるCNTのうち、一部のCNTが開端していてもよい。
CNTの開端方法として、例えば、空気中での350℃~600℃の加熱もしくはプラズマエッチングもしくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過酸化水素、混酸等の薬剤を用いて、CNT複合電極におけるCNTの先端部を溶解させる方法と、CNT複合電極に電位を印加し、該電極に含まれるCNTの先端を電気化学的に分解して開端する方法が挙げられる。ここで、薬剤を用いてCNTの先端部を溶解させる方法では、CNTの先端部のみならず、側壁部分も必然的にダメージを受けるのに対し、電気化学的にCNT複合電極の先端部を開端する方法では、電位条件を適当に選択することにより、先端のみを選択的に分解することができるという利点がある。
CNTの開端に好適な印加電位の範囲は、溶液pHや共存イオン種等に依存するが、pH7の0.1Mリン酸緩衝液中の条件下における好適な印加電位の範囲は、Ag/AgCl(飽和KCl)基準で、0.8~1.2Vであり、より好ましくは0.9~1.1Vである。なお、以下、Ag/AgCl(飽和KCl)は、Ag/AgClと表記する場合がある。

【0028】
「3.CNT複合電極の修飾」
(3-1.CNT壁面への金属及び/又は半導体の固着)
本発明のCNT複合電極において、CNTの壁面(外壁面)に、金属及び/又は半導体を固着することもでき、固着された金属、半導体に由来した性質(例えば、触媒作用など)をCNTに付与することができる。
CNT壁面に固着された金属及び/又は半導体の形態は、使用目的や形成の容易さなどを考慮して決定され、CNT壁面に微粒子として担持して固着されていてよいし、CNT壁面を被覆するように膜として固着されていてもよい。
なお、微粒子として固着される場合には、平均粒径100nm以下、好ましくは平均粒径20nm以下の金属微粒子及び/又は半導体微粒子であることが好ましい。
特に多層CNTの生成を抑制して高品質の単層CNTの合成を促進できることから、前記微粒子の総数の80%以上、好ましくは90%以上が、粒径0.5~5nmの範囲であることが好ましい。
なお、微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の平均値として算出した値である。また、微粒子の形状は、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。

【0029】
このような微粒子として好適な金属としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。
また、金属半導体としては、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。

【0030】
CNTへの上記微粒子の担持の方法は、上記金属前駆体あるいは金属半導体前駆体からいかなる製法で製造してもよい。金属或いは金属半導体の前駆体としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、金属カルボニルなどが挙げられる。

【0031】
(3-2.CNT壁面への表面修飾物質の被覆)
CNTの壁面を表面修飾物質で被覆してもよい。ここで、「表面修飾物質」とは、CNT壁面に吸着して表面を被覆する物質である。
表面修飾物質としては、界面活性剤、脂質、アミノ酸やその高分子状体(タンパク質や酵素を含む)や、その他CNT吸着性の高分子等が挙げられる。
CNT壁面との弱い相互作用を目的とした表面修飾の場合には、界面活性剤や脂質が好ましく使用される。
界面活性剤や脂質としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドやフォスファチジルコリン、ジテトラデシルフォスフェート、N,N-ジドデシル-ω-(グルコノアミド)-ヘキサアミド、などを用いることができる。
高分子として、ポリパラフェニレンビニレン誘導体や共役系高分子、ピレンポリマー、カルボキシメチルセルロース、キトサン、ゼラチン、ポリスチレンーポリアクリル酸ブロック重合体、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、などが挙げられる。

【0032】
(3-3.CNT内部への内包修飾物質による修飾)
また、本発明のCNT複合電極において、上述の開端CNTを含むCNT複合電極の場合には、CNTの内部に内包修飾物質を内包させることができる。内包修飾物質をCNTに内包することにより、CNT複合電極に新たな機能を付与することができる。
ここで、内包修飾物質とは、カーボンナノチューブの内に入ることができる修飾物質を意味し、具体的には、カーボンナノチューブの内径サイズ未満の分子あるいは原子あるいはそれらの単独の集合体あるいはそれらが複合した集合体である。
内包修飾物質は、目的とする機能や内包するCNTの直径、長さなどの諸条件を勘案して選択される。内包修飾物質として、例えば、CNT内径サイズ未満の金属や金属化合物微粒子、各種色素、カロテノイド、蛍光物質等が挙げられる。
例えば、本発明のCNT複合電極では、金属性CNTと、半導体性CNTとを混在して含む場合が多いが、内包修飾物質としてCNTに対して電子供与性を有する物質をCNTに内包させれば、半導体性CNTが金属性CNTに変換されて、CNT全体として金属性のCNT複合電極とすることができる。また、内包修飾物質としてCNTに対して電子吸引性を有する物質をCNTに内包させれば、金属性CNTを半導体性CNTへの変換が期待でき、全体として半導体性のCNT複合電極とすることが期待できる。

【0033】
「4.CNT複合電極の応用例」
本発明のCNT複合電極は、CNTとしての有効表面積が広く、CNTの有する本来の性質を有効に利用できるため、各種デバイスの電極として広く適用することができる。
特に、電気化学センサ(酵素センサ含む)や、色素増感太陽電池、燃料電池(酵素反応型のバイオ燃料電池含む)、熱電発電デバイスなどの発電デバイス、一次電池、二次電池、キャパシタ等の蓄電デバイスに好適に使用することができる。
なお、CNT複合電極は、例えば、各種デバイスの使用用途に応じて、上述のようにCNT表面を酸化処理したり、金属、半導体や表面修飾物質で修飾して使用してもよい。
また、酵素センサや酵素反応バイオ電池などに使用される電極に酵素を固定した酵素電極用途に本発明のCNT複合電極を使用する場合、本発明のCNT複合電極は、CNTが表面層内部に適度に広がった構造であるため、電極の表面のみならず十分量の酵素を保持できるとともに、その基質もCNT複合電極内部に十分に拡散される。さらに該電極は、表面層上部及び内部のCNTと酵素との電子授受が良好に行うことができるため、より高感度な酵素センサや、酵素反応を利用した高出力のバイオ燃料電池を実現できる。なお、これらの用途には酵素との親和性を高めた、適度な酸化型のCNT複合電極が好適に用いられることが多い。
また、単層カーボンナノチューブの合成においては、現時点の技術では半導体性カーボンナノチューブが必ず混入するが、上述のようにCNT内部への内包修飾物質により、全体として金属性や半導体性の複合CNT電極を作製出来る。すなわち、電子構造を改変した単層カーボンナノチューブの作製が可能である。半導体性のものは電子移動抵抗を有するために、燃料電池用電極として用いる場合にはその存在は好ましくない。特に大規模発電では電流の大きなロスにつながる。CNTの金属性を高める内包修飾複合CNT電極を用いることで、導電特性に優れたカーボンナノチューブ複合電極を作製可能になり燃料電池の出力を改善できることが期待できる。CNTの半導体性を高める内包修飾CNT複合電極を用いることにより、ナノチューブ自身を増感剤とした増感型太陽電池の作製も期待できる。

【0034】
また、本発明のCNT複合電極は、電極基材上に多孔質酸化物及びCNTからなる表面層が形成された構造を有するが、この複合電極から電極基材を除去して、CNT及び多孔質酸化物からなるCNT-多孔質酸化物複合体として用いることもできる。
電極基材を有さないCNT-多孔質酸化物複合体は、例えば、ガス拡散電極のフレーム電極、燃料電池のセパレータ、分離カラム、反応カラム、検出カラム、分離フィルター等の用途に用いることができる。
CNT複合電極から電極基材を除去する方法は、例えば、機械的にCNTと多孔質酸化物とからなる表面層をはぎ取る方法や、電極基材を適当な薬剤にて溶解させる方法や電気化学的に電極基材を溶解する方法が挙げられる。

【0035】
「5.CNT複合電極の製造方法」
上述したCNT複合電極の製造方法は特に限定されないが、比較的容易な方法で、再現性よく製造できる点で、以下に説明する製造方法(以下、「本発明のCNT複合電極の製造方法」と称す。)が好適である。

【0036】
以下、本発明のCNT複合電極の製造方法について説明する。
本発明のCNT複合電極の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
以下の工程を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ複合電極の製造方法。
(1)電極基材上に、金属触媒微粒子を担持させた多孔質酸化物粒子又は金属触媒微粒子の前駆体を含有させた多孔質酸化物粒子を含む皮膜を形成する工程
(2)前記皮膜が形成された電極基材を熱処理して、金属触媒微粒子を含む多孔質酸化物層を形成する工程
(3)前記多孔質酸化物層が形成された電極基材を、炭素含有化合物を含む非酸化性雰囲気下で熱処理して、前記多孔質酸化物に担持された金属触媒微粒子からカーボンナノチューブを生成させる工程
を含むことを特徴とする。なお、工程(2)、(3)は同時におこなってもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。

【0037】
<工程(1)>
工程(1)は、電極基材上に、金属触媒微粒子を担持させた多孔質酸化物粒子又は金属触媒微粒子の前駆体を含有させた多孔質酸化物粒子を含む皮膜を形成する工程である。なお、電極基材の詳細は上述した通りであり、ここでは詳しい説明を省略する。

【0038】
多孔質酸化物層の原料となる、多孔質酸化物粒子は、上述した多孔質酸化物からなる粒子であり、その形態は特に限定されず、一次粒子、それらが凝集した二次粒子、さらには前駆体から合成された粒子ゾルの形態であってもよい。
また、該多孔質酸化物粒子には、本発明の効果を損なわない限りで多孔質酸化物以外の成分(例えば、溶媒、分散剤等)を含んでいてもよい。なお、多孔質酸化物以外の成分は、通常、工程(2)における熱処理で除去することができる。

【0039】
多孔質酸化物粒子は、細孔として、直径2nm未満のミクロ孔や2~50nmのいわゆるメソ孔を有する。また、50nm超のマクロ孔を有していてもよい。
均質なCNTが形成でき、CNTの固定力を高めることができるという観点からは、多孔質酸化物が、直径20nm以下の細孔を主に有することが好ましい。

【0040】
多数の細孔を有する多孔質酸化物では、細孔がCNT成長のガイドとなり、細孔径に応じた直径を有するCNTを形成しやすい。
多孔質酸化物に担持した金属触媒から直接CNTを成長させる場合、金属触媒微粒子を細孔内に担持させることにより、金属触媒微粒子と多孔質酸化物との接着性が向上し、金属触媒微粒子から成長するCNTと多孔質酸化物との接着性も向上するという利点がある。そのため、多孔質酸化物の細孔内に金属触媒微粒子を担持させることが好ましい。多孔質酸化物の細孔内に金属触媒微粒子を担持させる方法は後述する。
より均質なCNTを得ることができる点では、多孔質酸化物は、孔径0.4nm以上20nm以下の範囲の細孔を有していることが好ましい。

【0041】
なお、単層CNTと多層CNTの生成は、多孔質酸化物の細孔径に依存するため、単層CNTあるいは多層CNTを選択的に形成するには、それぞれのCNTの生成に適した特定の範囲の孔径を有する多孔質酸化物を使用すればよい。また、生成するCNTは、金属触媒微粒子の粒径にも依存するため、多孔質酸化物の細孔内に担持できる粒径の金属触媒微粒子であることが好ましい。
単層CNTを選択的に合成する場合には、多孔質酸化物の中でも、孔径0.4nm~2nmの細孔を有しているものが好ましい。これに対し、多層CNTの割合を増やすには、より大きな細孔径を有する多孔質酸化物を使用すればよい。

【0042】
多孔質酸化物粒子における比表面積は、通常、10m2/g以上であり、金属触媒を十分に担持でき、高密度にCNTを形成できる点で、100m2/g以上であることが好ましい。
なお、多孔質酸化物粒子における比表面積の上限は、その機械的強度が保たれる範囲であれば制限はなく、その多孔質酸化物の種類にもよるが、通常、1200m2/g以下である。
なお、多孔質酸化物における、比表面積及び細孔径(直径)分布は、窒素吸着によるBET法にて求められる。

【0043】
均一なCNTを高密度に合成できるという点では、前記多孔質酸化物粒子が、孔径0.4nm以上20nm以下の範囲の細孔を有し、かつ、該多孔質酸化物粒子の比表面積が100m2/g以上であることが好ましい。
特に単層CNTを高密度に形成できる点では、孔径0.4nm以上2nm以下の範囲の細孔を有し、かつ、該多孔質酸化物粒子の比表面積が100m2/g以上であることが好ましい。

【0044】
多孔質酸化物粒子の粒径は、工程(1)における皮膜、さらには工程(2)における熱処理後の多孔質酸化物層が均質に形成できる範囲で選択される。その具体的な粒径は、多孔質酸化物の種類にもよるが、平均粒径で、通常、0.01~100μm程度である。CNTは多孔質酸化物粒子表面に形成され、多孔質酸化物粒子の粒径が大きすぎると、CNTの密度が低くなることから、多孔質酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは0.02~10μmであり、より好ましくは0.05~1μmである。
なお、多孔質酸化物粒子の平均粒径は、微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の平均値として算出した値である。また、多孔質酸化物粒子の形状が、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。

【0045】
多孔質酸化物粒子を構成する多孔質酸化物としては、上述のようにメソポーラスシリカ等のシリカ(SiO2)、活性アルミナ等のアルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)及びチタニア(TiO2)や、ゼオライト等のアルミノケイ酸を始めとするこれらの複合酸化物が挙げられる。これらは1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
この中でも、活性アルミナ、メソポーラスシリカ、ゼオライトが好ましく、ゼオライトが特に好ましい。なお、ゼオライトの詳細は上述の通りである。

【0046】
金属触媒微粒子における金属触媒としては、グラフェンの形成の触媒作用を有するものであればよく、Co、Fe、Ni、Mo、W、Mn、Ti、V、Cr、Nb、Ru、Pd、Rh、Ag、Au、Cu、Irなどの第4~11族の遷移金属元素からなる金属やその合金、さらにはその金属化合物(例えば金属酸化物、金属ホウ化物)を用いることができる。また、これらの2種以上の合金あるいは混合物として用いることもできる。
金属触媒微粒子の前駆体としては、後述する塗布液の溶媒に溶解又は分散するものであり、熱処理により分解するものであればよく、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、金属カルボニルなどが挙げられる。
これらの中でも、CoとMoの合金であるCoMo合金は、特にCNTの生成に対する触媒活性が高く、また、CNT以外の炭素複生成物が生成しにくいため、好適に用いられる。なお、このよう金属触媒微粒子は、CNT形成した後に、適当な薬剤を使用して溶解させて除去してもよい。

【0047】
また、金属触媒微粒子の粒径は、該金属触媒微粒子を核として成長、形成されるCNTの直径を決定する要素となる。そのため、形成しようとするCNTの直径に応じて適宜設定することができるが、単層CNTを形成するためには、金属触媒微粒子の平均粒径は、0.5nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは0.5nm以上10nm以下である。なお、金属触媒微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の平均値として算出した値である。また、微粒子の形状は、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。

【0048】
上記皮膜を形成する方法としては、金属触媒微粒子を担持させた多孔質酸化物粒子を含む懸濁液(スラリー状の塗布液)又は金属触媒微粒子の前駆体と多孔質酸化物粒子とを含む懸濁液(スラリー状の塗布液)を電極基材上に塗布した後に、乾燥させる方法が挙げられる。
懸濁液の塗布方法としては、電極基材の形状に応じて、刷毛塗り法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法などの従来公知の塗布方法を適宜選択すればよい。
円柱状の電極基材である場合には、ディップコート法が好適な塗布法としてあげられる。

【0049】
金属触媒微粒子を担持させた多孔質酸化物粒子を含む懸濁液を使用する場合、多孔質酸化物粒子への金属触媒微粒子の担持する方法としては、担体に金属触媒を担持させる従来公知の各種製法を適宜利用することができる。多孔質酸化物粒子上に予め調整した粒子状の金属触媒を付着させ焼成することで担持する方法や、金属触媒の前駆体を含む溶液に多孔質酸化物粒子を分散させ、多孔質酸化物粒子に金属触媒の前駆体を吸着させた後に乾燥し、熱処理することで、金属触媒の前駆体を熱分解し金属触媒微粒子として担持する方法などがある。特に後者の溶液を使用する方法は、簡便で均等に金属触媒微粒子を多孔質酸化物粒子に担持することができるため好適である。
なお、金属触媒の前駆体を熱分解によって担持する場合は、後述する工程(2)における熱処理によってもよい。
すなわち、金属触媒微粒子の前駆体と多孔質酸化物粒子とを含む懸濁液を塗布液として使用し、電極基材に塗布後乾燥させることで、まず、金属触媒微粒子の前駆体を含有させた多孔質酸化物粒子を含む皮膜を形成し、その後、工程(2)で熱処理することで、金属触媒微粒子を含む多孔質酸化物層を形成する。この方法では、金属触媒微粒子と生成と多孔質酸化物粒子を焼成することによる多孔質酸化物層の形成が一工程でできるという利点がある。

【0050】
皮膜形成用の懸濁液は、金属触媒微粒子が担持された多孔質酸化物粒子、又は金属触媒微粒子の前駆体と多孔質酸化物粒子を分散することで、皮膜形成用の懸濁液を得ることができる。
溶媒としては、多孔質酸化物を分散し得るものであれば特に制限はなく、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。

【0051】
懸濁液中の多孔質酸化物粒子の濃度は、均質な皮膜の形成ができる範囲であればよく、通常、1~90重量%、好ましくは、30~70重量%である。

【0052】
金属微粒子の担持量は仕込み量で、多孔質酸化物100重量部に対し、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは、0.2重量部以上5重量部以下である。
なお、この担持量は、塗布液として、金属触媒微粒子の前駆体と多孔質酸化物粒子と含む懸濁液を使用する場合には、金属触媒微粒子の前駆体を工程(2)にて熱分解した後に生成する金属触媒微粒子換算での値である。

【0053】
上記懸濁液を電極基材に塗布し、乾燥することで、電極基材の表面上に多孔質酸化物粒子を含む皮膜を形成する。

【0054】
形成された皮膜の乾燥方法は、例えば、真空乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥などの方法が挙げられる。場合によっては、特別な乾燥工程を経ずに、工程(2)の熱処理工程において乾燥させてもよい。
この乾燥によって皮膜に残存した溶媒や揮発性未反応物などを除去することができる。なお、乾燥工程を特段設けずに、後述する工程(2)に伴う昇温過程が乾燥工程を兼ねてもよい。

【0055】
<工程(2)>
工程(2)は、上記工程(1)にて、皮膜が形成された電極基材を熱処理して、多孔質酸化物層を形成する工程である。
工程(2)にて熱処理を行うことにより、上記皮膜に含まれる多孔質酸化物粒子が焼結して、電極基材上に固着した多孔質酸化物層を形成する。なお、上記皮膜が金属触媒微粒子の前駆体と多孔質酸化物粒子と含む懸濁液を乾燥した、金属触媒微粒子の前駆体を含有する多孔質酸化物粒子からなる場合には、この工程での熱処理により、前駆体が熱分解して、金属触媒微粒子を生成する。

【0056】
熱処理温度は、多孔質酸化物粒子の焼結性や電極基材の耐熱性を考慮して決定され、通常、200℃~1000℃、好ましくは300℃~900℃である。また、熱処理時間は、上記熱処理温度にて、多孔質酸化物層が十分に焼結する範囲で決定され、通常、1~30分間程度である。
温度が低すぎると、電極基材上と多孔質酸化物層の接着性が不足する場合があり、温度が高すぎると、多孔質酸化物粒子の焼結が進行しすぎて、多孔質酸化物層が緻密になりすぎて、ガス透過性が低下したり、多孔質酸化物粒子上に担持された金属触媒微粒子が失活したり、凝集したりする問題が生じやすい。
なお、後述する工程(3)における昇温工程が、工程(2)の熱処理工程を兼ねてもよい。

【0057】
熱処理の雰囲気は、多孔質酸化物粒子の焼結性や電極基材の材質等を考慮して、空気などの酸素を含む酸化雰囲気や、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気、水素あるいは水素を含む不活性ガス等の還元雰囲気が適宜選択される。
工程(2)の熱処理において、多孔質酸化物粒子が還元しやすい場合等には酸化性雰囲気や不活性雰囲気が選択される。
一方で、電極基材の酸化劣化が起こりやすい場合には、非酸化性の不活性ガス雰囲気や還元雰囲気で熱処理することが好ましい。

【0058】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)にて多孔質酸化物層が形成された電極基材を、炭素含有化合物を含む非酸化性雰囲気下で熱処理して、多孔質酸化物粒子に担持された金属触媒微粒子からCNTを生成させる工程である。

【0059】
CNTの炭素源である炭素含有化合物としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、軽油などの炭化水素;一酸化炭素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;等が挙げられる。これらの炭素含有化合物を単独であるいは、アルゴンなどのキャリアを加えた混合物として使用する。

【0060】
炭化水素の中では、メタンやエチレンが、CNT以外の炭素複生成物の生成が少なく、収率よくCNTを合成できるため好適に用いられる。
また、アルコール類、好ましくはメタノール、エタノール、特に好ましくはエタノールを炭素源として使用すると、炭素含有化合物として、炭化水素を使用した場合と比較して、低温でも高品質の単層CNTを成長させることができるため好適である。

【0061】
なお、「非酸化性雰囲気」とは、酸素等の酸化性ガスを含まない雰囲気をいい、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気、水素あるいは水素を含む不活性ガス等の還元雰囲気が適宜選択される。
すなわち、炭素含有化合物を含む非酸化性雰囲気は、上述の炭素含有化合物とアルゴン等の不活性ガスまたは水素を含む不活性ガスが共存する雰囲気である。
より具体的には、アルゴン等の不活性ガスや水素を含有する不活性ガスをキャリアガスとしてメタン等の炭化水素を流通させる方法や、炭素含有化合物がアルコール類の場合には、前記キャリアガスでバブリングしながら、或いは反応系内を100~3000Pa程度に減圧し、アルコールの蒸気を流通させる方法などが挙げられる。

【0062】
CNTの合成は、例えば、下記文献等で開示された従来公知の方法をもちいることができる。
S. Maruyama, R. Kojima, Y. Miyauchi, S. Chiashi and M. Kohno, Chem. Phys. Lett. 360 (2002) 229.
S. Murakami, Y. Miyauchi, S. Chiashi, S. Maruyama, Chem. Phys. Lett. 374 (2003) 53.
以下において、単層CNTの合成に適した、炭素含有化合物としてエタノールを使用した、熱CVD法(化学気相成長法)を図面を参照して具体的に説明する。なお、工程(3)の方法はこの方法に限定されるものではない。

【0063】
まず、図2に示すCNT合成装置において、石英ガラス製の反応容器内に、多孔質酸化物層が形成された電極基材を配置し、ガス供給装置で、流量と圧力を調整した、アルゴンガスを供給しながら、電気炉で所定の温度まで昇温する。
次いで、反応容器に水素/アルゴンの混合ガスを供給し、多孔質酸化物層を構成する多孔質酸化物に担持された金属触媒を活性化させる。水素濃度は、金属触媒を活性化できればよく、通常、10~100体積%である。
続いて、反応容器にエタノール蒸気あるいはエタノール蒸気/アルゴンの混合ガスを供給し、前記電極基材の多孔質酸化物層に含まれる金属系触媒微粒子とエタノール蒸気を接触させることでCNTを製造する。

【0064】
熱CVD法の場合の好適な条件は、合成温度が600~900℃(好ましくは、700~850℃)、合成時間が5~60分、合成圧力が0.01~1気圧である。
また、エタノール供給速度は、反応容器の大きさ、ガス濃度などを勘案して適宜選択され、一例を挙げるとエタノール200sccmである。
上記条件の中でも、合成温度は、生成するCNTの直径や副生物の生成などに影響を及し、合成温度が600℃未満であると、CNTの成長速度が小さくなり、収率が低下することがあり、900℃を超えると、多孔質酸化物が熱分解されやすくなるとともに、金属触媒粒子が凝集して、その粒径が不均一になるため、生成するCNTの直径、配向性が不均一化したり、CNTの収率が低下したりすることがある。

【0065】
なお、合成したCNTの配向性、長さ、密度、成長位置は、ラマン分光法、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)などで確認することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
実施例及び比較例において、使用した試薬、原料は次の通りである。
「試薬」
・酢酸コバルト(II)・四水和物(99.0%、ナカライテスク(株))
・酢酸モリブデン(II)(98.0%、ナカライテスク(株))
・エタノール(特級、ナカライテスク(株))
・ゼオライト(東ソー(株)、HSZ-390HUA、細孔径0.4~0.8nm、比表面積 620m2/g(BET法による)、結晶サイズ0.3μm)
・活性アルミナ(和光純薬工業(株)、90%、カラムクロマト用、約30メッシュ、粒径75μm)
・メソポーラスシリカ(アルミノシリケート)(シグマ・アルドリッチ、表面積1000m2/g、細孔径2~4nm)
テトラクロロ金(III)酸三水和物(塩化金酸、99.9%、シグマ・アルドリッチ(株))
塩化パラジウム(II)(和光純薬工業(株)、99%)
ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸、和光純薬工業(株)、99.9%)
ラッカーゼ(Lac、大和化成(株)、Trametes sp. 由来、EC 1.10.3.2)
フルクトースデヒドロゲナーゼ(FDH、Gluconobacter sp.由来、東洋紡績(株)、EC 1.1.99.11)
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH、ナカライテスク(株)、酵母由来、EC 1.1.1.1)
β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH、ナカライテスク(株)、純度90%)
ラウリル酸硫酸ナトリウム(SDS、ナカライテスク(株)、99.5%)
「電極基材」
金(99.9~99.999%、(株)ニラコ)
銅(99.9%、(株)ニラコ)
鉄(99.5%、(株)ニラコ)
パラジウム(99.9%、(株)ニラコ)
ニッケル(99.9%、(株)ニラコ)
「評価装置」
・走査型電子顕微鏡(SEM):(株)日立ハイテクノロジーズSU8000
・透過型電子顕微鏡(TEM):日本電子(株) 2000FX
・ラマン分光測定装置:(株)堀場製作所 LabRAM HR800(レーザー波長:514.5nm又は532nm)
【実施例】
【0068】
「1.CNT複合電極の作製」
(CNT複合電極1の作製)
まず、10mLのエタノールに、酢酸コバルト(II)・四水和物及び酢酸モリブデンをそれぞれ10重量%、1.4重量%となるように溶解した。次いで、多孔質酸化物粒子としての5gのゼオライトを加えて十分に混合することで、溶液を多孔質酸化物粒子の細孔内に浸透させた。得られた懸濁液をスラリー状のCNT生成用触媒コート液とした。
次いで、電極基材として、図3(a)に示す、直径0.8mm、長さ10cmのAu線(純度:99.999%)を用意し、該Au線の下部1cm程度を、上記触媒コート液に浸漬し、Au線上に触媒コート液をディップコートした。
触媒コート液が塗布されたAu線を、図2の構成を有するCVD装置に入れ、Ar雰囲気下、昇温速度約40℃/分で850℃まで昇温した。なお、この昇温工程で、エタノール等の揮発性成分を除去すると共に、多孔質酸化物であるゼオライトがAu線に密着する。
次いで、850℃で10分間、水素を流通して還元処理を行い、触媒コート液に含まれる金属成分の還元を行った。
次いで、還元を行った後に、850℃で10分間、水素/エタノールの体積比、1/2の混合ガスを流通させることにより、CNT複合電極1を得た。CNT複合電極1の外観図を図3(b)に示す。
なお、CNT複合電極1(別サンプル)の還元後の金属成分をXRDで評価したところ、CoMo合金が形成されていることが確認された。また、TEM観察により、CoMo合金はすべて5nm以下の微粒子であることが確認された。
【実施例】
【0069】
(CNT複合電極2の作製)
電極基材として、Au線の代わりにCu線(直径0.5mm、長さ約4cm)を使用した以外は、CNT複合電極1の作製法と同様にして、CNT複合電極2を得た。CNT複合電極2の外観図を図4に示す。
【実施例】
【0070】
(CNT複合電極3の作製)
電極基材として、Au線の代わりにFe線(直径0.5mm、長さ約4cm)を使用した以外は、CNT複合電極1の作製法と同様にして、CNT複合電極3を得た。CNT複合電極3の外観図を図4に併せて示す。
【実施例】
【0071】
(CNT複合電極4の作製)
電極基材として、Au線の代わりにPd線(直径0.5mm、長さ約4cm)を使用した以外は、CNT複合電極1の作製法と同様にして、CNT複合電極4を得た。CNT複合電極4の外観図を図4に併せて示す。
【実施例】
【0072】
(CNT複合電極5の作製)
電極基材として、Au線の代わりにNi線(直径0.5mm、長さ約5cm)を使用した以外は、CNT複合電極1の作製法と同様にして、CNT複合電極5を得た。CNT複合電極5の外観図を図4に併せて示す。
【実施例】
【0073】
図3(b)及び図4に示すように得られたCNT複合電極1~5の何れにも、形成されたCNTに由来する、黒色を有する表面層が電極基材上に形成されていた。
【実施例】
【0074】
代表例としてCNT複合電極1に形成された表面層をSEM観察した結果を図5(a)~図5(d)に示す。なお、図5(a)~(c)は電極基材(Au線)と表面層の境界部分及びその拡大図であり、図5(d)は表面層を上から撮影した図である。
また、比較用にCNTを成長させる前の電極基材(Au線)と多孔質酸化物層の境界部分のSEM像を図6(a)及び図6(b)に示す。なお、図6(a)は電極基材(Au線)と多孔質酸化物層境界部分及びその拡大図であり、図6(b)は多孔質酸化物層を上から撮影した図である。
【実施例】
【0075】
図5(a)に示されるようにAu線上に形成された表面層の厚みは、20μm程度であった。該表面層の断面を拡大した図5(b)及び(c)、表面を拡大した図5(d)から、ジャングルジム構造の多数のCNTが多孔質酸化物(ゼオライト)の細孔から成長していることが確認された。
生成したCNTの密度を、TEM測定結果により算出した結果、CNT複合電極1におけるCNTの密度は、およそ1×1012本/cm2であった。
【実施例】
【0076】
また、図6(a)に示すようにCNTを有さない多孔質酸化物層では、多孔質酸化物層を構成する多孔質酸化物粒子同士が連結しているのに対し、CNT複合電極1ではCNTの成長により、多孔質酸化物粒子の一部が、分離していることが明らかになった(図5(b)参照)。また、図7に水素/エタノール混合ガスの体積比を1/5の混合ガスとした以外はCNT複合電極1と同様の方法で製造したCNT複合電極の表面層のSEM像を示すが、CNT複合電極1と比較して、生成したCNTの量は明らかに少ないことがわかる。なお、上記と同様の方法で算出したCNTの密度は、およそ2×1010本/cm2であった。
また、図7に示されるように、生成したCNTの密度は少ないものの表面層を構成する多孔質酸化物粒子の分離が確認された。
【実施例】
【0077】
また、図5(c)に示されるように、表面層に形成された一部のCNTと電極基材が接触していることが確認された。さらに、CNTが形成された表面層を剥ぎ取った後の電極基材には、CNTが残存していることが目視で確認された。このことから、成長したCNTの一部が電極基材に埋包していることが確認された。
【実施例】
【0078】
図5(e)にCNT複合電極1において、生成したCNTのTEM観察結果を示す。生成したCNTの直径は1nm程度であり、それらのCNTが20nm以下の束状になっていた。なお、観察されたCNTの総数の少なくとも70%以上が1nm程度の直径を有していた。
【実施例】
【0079】
また、表面層上をラマン分光測定した結果を図8に示す。なお、ラマン測定はレーザー波長514.5nmを用いた。
図8に示されるように1590cm-1付近にG-バンドと呼ばれるグラフェン構造由来のピークが観測された。また、1340cm-1付近にはD-バンドと呼ばれるアモルファスカーボンや欠陥構造を有するCNTに由来するブロードなピークが観察された。なお、G-バンドとD-バンドの強度比からCNTの結晶品質が評価され、G/D比が大きいほど欠陥の少ない高品質のCNTと考えられている。
CNT複合電極1のCNTのG/D比は約20~30であったことから、欠陥の少ない非酸化型のCNTであることが確認された。また、2700cm-1付近の2D(G’)-バンドと呼ばれるピークの半値幅が50cm-1程度でシャープであること、さらに100~200cm-1に観測されるCNTの直径に依存したピークのRBM(Radial breathing mode)が明確に観測されること、及び上述のTEMにおけて観察されたCNTの直径(1nm程度)から判断して、形成されたCNTの大部分が単層CNTであると考えられる。
【実施例】
【0080】
(CNT複合電極6の作製)
まず、10mLのエタノールに、酢酸コバルト(II)・四水和物及び酢酸モリブデン(II)をそれぞれ10重量%、1.4重量%となるように溶解した。次いで、多孔質酸化物粒子としての5gの活性アルミナを加えて混合することで、スラリー状のCNT生成用触媒コート液を得た。
この触媒コート液にAu線(99.999%、直径0.8mm、長さ10cm)を、CNT複合電極1の作製法と同様の条件でディップコート、さらにはCNTの合成を行うことで、CNT複合電極6を作製した。
【実施例】
【0081】
形成された表面層のTEM観察及びラマン分光測定(レーザー波長532nm)を行った。
図9(a)にCNT複合電極6に形成された表面層をTEM観察した結果を示す。図9(a)から分かるようにCNT複合電極6には、多層CNTが観察された。
また、図9(b)に示されるように表面層上をラマン分光測定では、CNT由来のG-バンドが観察された。
【実施例】
【0082】
(CNT複合電極7の作製)
まず、10mLのエタノールに、酢酸コバルト(II)・四水和物及び酢酸モリブデン(II)をそれぞれ10重量%、1.4重量%となるように溶解した。次いで、多孔質酸化物粒子としての5gのメソポーラスシリカを加えて混合することで、スラリー状のCNT生成用触媒コート液を得た。
この触媒コート液にAu線(99.999%、直径0.8mm、長さ10cm)を、CNT複合電極1の作製法と同様の条件でディップコート、さらにはCNTの合成を行うことで、CNT複合電極7を作製した。
【実施例】
【0083】
形成された表面層のラマン分光測定(レーザー波長532nm)を行った結果、図10に示すようにCNT由来のG-バンドが観察された。
【実施例】
【0084】
「2.電気化学的評価」
(評価1-1)
上述のCNT複合電極1と他の比較用電極を評価用電極として、NADHの電気化学酸化挙動を評価した。
使用した評価用電極を以下に示す。
(a)(非酸化型)CNT複合電極1(見かけの電極面積:0.25cm2
(b)高配向パイロリティックグラファイト(HOPG、パナソニック(株)、電極面積:0.28cm2
(c)グラッシーカーボン(GC、東海カーボン(株)、電極面積:0.07cm2
(d)プラスチックフォームドカーボン(PFC、三菱鉛筆(株)、電極面積:0.28cm2
(e)Au線(99.999%、ニラコ(株)、電極面積:0.02cm2
なお、CNT複合電極1は、形成されたCNT表面の汚染を避けたものを使用した。
【実施例】
【0085】
測定条件は以下の通りである。
(セル構成) 3極式
作用極:CNT複合電極1
対極:白金板
参照極:銀/塩化銀(飽和KCl)電極
溶液:10mM NADH/リン酸緩衝液(pH7)
電位掃引速度:20mV/sec
【実施例】
【0086】
結果を図11に示す。
図11のNADHを含まない溶液中でのバックグラウンド電流と電位曲線から基板金属とCNTとの良好な電気的接続がわかる。大きな抵抗成分を含む場合、例えば基板金属とCNTの電気的接続が良好でない場合には、プラス電位でのリニアな右肩上がりの電流の増加とマイナス電位でのリニアな左肩下がりの電流の減少が観測されるはずであるが、このような減少は全く観測されていないことから、基板金属とCNTとの良好な電気的接続であることがわかる。
CNT複合電極1では電極上でのNADHの酸化反応に伴う酸化電流が-207mVから観察された。
一方、他の炭素電極である、HOPG、GC、PFC、及びAu(CNT複合電極1の電極基材)では、NADHの酸化反応に伴う酸化電流がそれぞれ298、203、86、193mVから観測された。
このようにCNT複合電極1は、他の比較用電極より陰電位からNADHの酸化反応が起こることが確認された。
【実施例】
【0087】
(評価1-2)
電極上でのNADHの酸化反応の生成物としてNAD+の生成を期待されているが、上述のCNT複合電極1によるNADHの酸化反応にて、実際にNAD+が生成されたか否かについてアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を用いて検討した。
電極上における酸化反応において、NADHの酸化生成物としてNAD+が生成しているのであれば、図12(a)で示すスキームのように、ADHの基質であるエタノールがADHにより酸化され、還元体のADHがNAD+によって再酸化されるため、電極で観測されるNADHの酸化電流の増加が予測される。
評価結果を図12(b)に示す。
CNT複合電極1では基質のエタノール濃度の増加に伴って、0V付近の酸化電流の増大が観測できた。一方、0.2V付近の酸化電流の増加は観測されなかったことから、この電位で起こっているNADHの酸化反応はNAD+の生成を伴わないことが示された。 生体内でのNADHの酸化反応は-0.5V付近で起こることが知られており、また大きな過電圧条件下でのNADHの酸化反応ではNAD+の二量体が生成しやすいことが知られていることから、0.2V付近のNADHの酸化電流は二量体の生成が予想される。 一方、HOPG、GC、PFCおよびAu電極を用いた場合にも、NADH、エタノールおよびADH共存下で図11に示したNADHの酸化電流の増加は全く観測されなかったことから、NAD+が生成されていないことが示された。
【実施例】
【0088】
(評価2)
上述の(非酸化型)CNT複合電極1を、以下の条件にて電気化学的に酸化して表1に示す酸化型CNT複合電極A~Cを作製した。
(電気化学的酸化条件)
・電解液(リン酸緩衝溶液(pH7、0.1M))
・電位掃引速度:20mV/sec
・電位掃引範囲:0V~+1.3V (vs.Ag/AgCl(飽和KCl))
・サイクル酸化回数:
CNT複合電極A:5回
CNT複合電極B:10回
CNT複合電極C:20回
【実施例】
【0089】
得られた(酸化型)CNT複合電極A~Cを使用して上述の(評価1-2)の同様の評価を行った結果を図13に示す。また、CNT複合電極A~CのG/D比のラマン測定による評価結果を、CNT複合電極1と併せて表1に示す。
CNT複合電極Aでは基質のエタノール存在下、0.1V付近に若干の酸化電流を観測できた。一方、0.2V付近の酸化電流の増加は全く観測されなかったことから、この電位で起こっているNADHの酸化反応はNAD+の生成を伴わないことが示された。同様にCNT複合電極B,Cについて検討したところ、酸化電流の増加は全く観測されなかったことから、これらの電極上でのNADHの酸化反応での生成物は、NAD+ではないことが示された。以上のことは、非酸化型CNT電極が、NADHの酸化反応によるNAD+生成において有用であることを示す。
【実施例】
【0090】
【表1】
JP0006016036B2_000002t.gif
【実施例】
【0091】
「3.金属微粒子を担持したCNT複合電極の作製」
(Au-CNT複合電極(I)の作製)
次の手順にて、Au-CNT複合電極1を作製した。
合成直後の清浄表面を有するCNT複合電極1(非酸化型)を、5mMの塩化金酸を含む0.5M硫酸中に30分間浸漬することで、Au-CNT複合電極(I)を作製した。なお、電極作製は常温・常圧・遮光下で行った。
Au-CNT複合電極(I)のSEM観察結果を図14、TEM観察結果を図15に結果を示す。
SEM像ではCNT表面に微少な付着物の吸着が観測された。CNT表面のTEM像より、直径10nm以下(主に2nm以下に分布)の金微粒子が高密度・高分散に作製された様子が観測された。
【実施例】
【0092】
(Au-CNT複合電極(II)の作製)
塩化金酸に浸漬する前に、SDS水溶液に30分間浸漬して純水でリンスした後、Au-CNT複合電極(I)の製造方法と同様にして、Au-CNT複合電極(II)を得た。
図16にSEM観察の結果を示す。SEM像より、直径約10nm以上の金微粒子が観測された。
【実施例】
【0093】
(Au-CNT複合電極(III)の作製)
大気保存(1日間)により、CNT表面が大気中の有機物等で汚染したCNT複合電極1を使用した。Au-CNT複合電極(I)の製造方法と同様にして、Au-CNT複合電極(III)を得た。
図17にSEM観察の結果を示す。SEM像より、直径50~200nmの金微粒子が観測された。
【実施例】
【0094】
(Pd-CNT複合電極(I)の作製)
塩化金酸の代わりに、塩化パラジウムを使用した。Au-CNT複合電極(I)の製造方法と同様にして、Pd-CNT複合電極(I)を得た。
図18にSEM観察の結果を示す。SEM像より、直径約10nm以下のパラジウム微粒子が観測された。また明確ではないものの、CNT表面に微粒子が多数吸着している様子がSEM像からわかった。
【実施例】
【0095】
(Pd-CNT複合電極(II)の作製)
塩化金酸の代わりに、塩化パラジウムを使用した。Au-CNT複合電極(III)の製造方法と同様にして、Pd-CNT複合電極(II)を得た。
図19にSEM観察の結果を示す。SEM像より、直径約10~20nmのパラジウム微粒子が、高密度・高分散に作製できている様子が観測された。
【実施例】
【0096】
「4.応用例」
(4-1:糖-酸素燃料電池用電極としての評価)
上述のCNT複合電極を用いることで、糖-酸素燃料電池が作製可能である。
図20(a)は、CNT複合電極1を用いて酸素還元反応の評価を行った結果であり、図20(b)は、Au-CNT複合電極1を用いてグルコース酸化反応を検討した結果である。測定条件は、図中に示す。
図20(a),(b)から、カソード電極となる酸素還元電位がアノード電極となるグルコース酸化電位よりも貴電位にあることが分かる。そのため、CNT複合電極1、Au-CNT複合電極1を用いて、約0.8Vの起電力を有する糖-酸素燃料電池を作成可能である。
【実施例】
【0097】
(4-2:色素増感型太陽電池としての応用)
以下に、本発明のCNT複合電極を色素増感型太陽電池用電極(カソード)としての応用した例を示す。
カソードとして、Pt微粒子をCNT上に担持したCNT複合電極を使用した。
まず、電極基材として、銅プレート(20×40mm)上に、上記CNT複合電極1の作製法と同様の条件でディップコート、さらにはCNTの合成を行い、銅プレート上に、単層CNTを含む表面層を有するCNT複合電極を作製した。さらに導電性向上のために、白金微粒子を電気化学還元法でCNT上に作製した。具体的には、1mMヘキサクロロ白金(IV)酸の0.1M硫酸溶液中でCNT複合電極に0V(vs.Ag/AgCl(飽和KCl))の電位印加を行うことで白金微粒子をCNT上に作製した。得られた電極をカソードとして用いた。図21(a)にカソード作製の模式図、図21(b)に作製後のカソードの外観写真を示す。
アノードには、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)透明電極の上に酸化チタン微粒子を塗布後、500℃で1時間加熱した。その後、表面に図21(c)の構造の色素を塗布し、乾燥させ、アノードとした。図21(a)にアノード作製の模式図、図21(b)に作製後のアノードの外観写真を示す。
次いで、図21(d)の構成のセルを作製し、光(白色ダイオード光)を照射したところ、図21(e)に示されるように光照射による光電流の発生が確認された。
【実施例】
【0098】
(4-3:バイオ燃料電池用酸素電極としての評価)
バイオ燃料電池の酸素還元極として有用なラッカーゼ(Lac)を用いて、CNT上での酵素の直接電子移動反応に及ぼすCNT界面状態および酵素吸着量の影響について検討した。
上記CNT複合電極1を、5mMのLac/リン酸溶液(pH5)中に浸漬して、Lacを電極に吸着固定化して、Lac修飾CNT複合電極1(非酸化型)とした。
これとは別に、CNT複合電極1を、pH7のリン酸緩衝液中での電位掃引(0~1.2V vs.Ag/Ag/Cl)を5回行って、電極に含まれるCNTの電気化学的酸化処理を行い、酸化型のCNT複合電極を得た。なお、ラマン分光測定より得られた酸化型CNT複合電極DのG/D比は、15程度であった。
次いで、酸化したCNT複合電極を、5mMのLac/リン酸溶液(pH5)中に浸漬して、Lacを電極に吸着固定化して、Lac修飾CNT複合電極2(酸化型)とした。
Lac修飾CNT複合電極1,2につき、以下の条件でサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行い、酵素電極反応を評価した。結果を図22に示す。
【実施例】
【0099】
Lac修飾CNT複合電極1,2を用いてCV測定を行うと、両電極共にLacとCNT間の直接電子移動反応に基づく酸素の触媒還元電流が0.6Vから観測された。
特に、酸化型のLac修飾CNT複合電極2において最も大きな酸素の触媒還元電流が観測された。この触媒電流値の違いは酵素修飾量または吸着配向の違いによるものであると考えられる。
【実施例】
【0100】
(4-4:バイオ燃料電池としての評価)
カソードには、上述のLac修飾CNT複合電極2(酸化型)を使用した。
アノードには、上記CNT複合電極1の作製法に準じた作製法によって、金ワイヤ(直径0.8mm)上に単層カーボンナノチューブを合成した(長さ2cm)。このCNT複合電極をフルクトースデヒドロゲナーゼ(FDH)の溶液に所定時間浸漬したものをアノードとして用いた。
上記のアノードとカソードを、100mLのビーカ中の酸素飽和した0.1Mフルクトースのリン酸溶液(pH5,0.1M)に浸漬して室温中(約20℃)で電池出力を測定した。アノードとカソードを隔てるセパレータは全く使用しなくてよい。図23にセルの概念図を示す。電池特性として、開回路ポテンシャル:0.78V、最大電流密度:0.6mA・cm-2、最大電力:0.2mW・cm-2を確認した。
【実施例】
【0101】
(4-5:熱電発電デバイスとしての評価)
(CNT複合電極8の作製)
まず、10mLのエタノールに、酢酸コバルト(II)・四水和物及び酢酸モリブデンをそれぞれ10重量%、1.4重量%となるように溶解した。次いで、多孔質酸化物粒子としての5gのゼオライトを加えて混合することで、スラリー状のCNT生成用触媒コート液を得た。
電極基材としてCuメッシュ((ニラコ株式会社)、100mesh、厚さ0.11×100×100mm))を用い、該Cuメッシュに製造した触媒コート液にディップコートした。
次いで、触媒コート液がコートされたCuメッシュを、図2の構成を有するCVD装置に入れ、Ar雰囲気下、昇温速度約40℃/分で850℃まで昇温した。なお、この昇温工程で、エタノール等の揮発性成分を除去すると共に、多孔質酸化物であるゼオライトがCuメッシュに密着する。
次いで、850℃で10分間、水素を流通して還元処理を行い、触媒コート液に含まれる金属成分の還元を行った。
次いで、還元を行った後に、850℃で10分間、水素/エタノールの体積比、1/2の混合ガスを流通させることにより、CNT複合電極8を得た。得られたCNT複合電極8の厚みは、約0.15mmであった。
【実施例】
【0102】
(熱電発電デバイスの製造)
市販のペルチェ素子の一面に、熱伝導性両面シール(住友3M製、厚さ約0.1mm)を貼り、この上に15.1×15.1mmにカットしたCNT複合電極8を貼り付けることで、実施例1である熱電発電デバイスを得た。
【実施例】
【0103】
(評価)
まず、厚紙を熱電発電デバイスの形状(ペルチェ素子の形状)に切り抜いて、開けられた窓の周辺に放熱用のアルミ箔を貼り付けた。次いで、開けられた窓に上記熱電発電デバイスをはめ込んだ。なお、厚紙への熱電発電デバイスの固定には、テープ、糊等は使用していない。
次いで、図24に模式図を示すように熱電発電デバイスをはめ込んだ厚紙を、熱源となる電気スタンドの下部に配置した。電気スタンドは、電球表面が熱電発電デバイスから垂直に約10cmの位置となるように固定した。電気スタンドにおける電球は、TOSHIBA 110V、40W、P45(形状:レフランプ)であり、スタンドは、100V,40W 40W E17 レフランプ (株)オーム電機 04-6282、を使用した
次いで、熱電発電デバイスの両面を電流測定回路計に接続し、電気スタンドのスイッチのON、OFFにより熱電発電デバイスを加熱、放冷し電流値を測定した。
【実施例】
【0104】
また、比較例1として、上記市販のペルチェ素子をそのまま使用した比較例1の熱電発電デバイスについて上記実施例1と同様の手順にて評価を行った。
また、比較例2として、上記市販のペルチェ素子に上記熱伝導性両面シールを張り付けた比較例熱電発電デバイスについて上記実施例1と同様の手順にて評価を行った。
また、比較例3として、上記市販のペルチェ素子に上記熱伝導性両面シールを張り付けその上に上記Cuメッシュを貼り付けた熱電発電デバイスについて上記実施例1と同様の手順にて評価を行った。
【実施例】
【0105】
図25に実施例1及び比較例1~3の熱電発電デバイスの評価結果を示す。
ペルチェ素子ならびにペルチェ素子/熱伝導性両面シール/銅メッシュのデバイスにおいては、熱電発電はほとんど起こらず、ランプが照射されたペルチェ素子の面とその反対面との間で温度差がほとんど発生していないことが示された。ペルチェ素子/熱伝導性両面シールのデバイスにおいては、熱伝導性両面シールが光源からの熱および光を吸収して、そのペルチェ素子面が加熱されたことが解った。さらに、ペルチェ素子/熱伝導性両面シール/CNT複合電極8のデバイスにおいては、ペルチェ素子/熱伝導性両面シールのデバイスと比較しても7倍以上の熱電発電が起こった。カーボンナノチューブは可視部から近赤外部の幅広い光を吸収し発熱すること、さらにカーボンナノチューブの熱伝導率はダイヤモンドと同等以上であることから、ペルチェ素子/熱伝導性両面シール/CNT複合電極8のデバイスでは、光源からの熱および光を効率よく吸収し、なおかつ効率よくペルチェ素子面に熱を伝えていることがわかった。
【実施例】
【0106】
(4-6:CNTの電気化学的開端処理)
上記と同様の方法にて4本のCNT複合電極1(基材電極:Auワイヤ、多孔質酸化物:ゼオライト)を製造した。
製造したCNT複合電極1に対し、下記構成の三極式セルにて、下記に示す所定の電位を30分間印加して、CNTを電気化学的に酸化分解し、開端したCNTを含むCNT複合電極a、b、c及びdを得た。なお、印加電位0VのCNT複合電極aは実質的に電気化学的開端処理が行われていない。
電位印加前に30分間以上高純度アルゴン(Assay:99.99%以上)によるバブリングを行い、溶存酸素を除去し、電位印加時にはセル内に高純度アルゴンをフローし、アルゴン雰囲気下で行った。
【実施例】
【0107】
<セル構成>
W.E.:CNT複合電極1
C.E.:Ptワイヤ
R.E.:Ag/AgCl
電解液:0.1M リン酸緩衝溶液(pH7)
【実施例】
【0108】
<印加電位>
CNT複合電極a:0V(vs.Ag/AgCl)
CNT複合電極b:0.8V(vs.Ag/AgCl)
CNT複合電極c:1.0V(vs.Ag/AgCl)
CNT複合電極d:1.3V(vs.Ag/AgCl)
【実施例】
【0109】
(4-7:β-カロテンによるCNTの修飾)
カロテノイドの1種であるβ-カロテンを内包修飾物質として用い、上記CNT複合電極a~dに対し、下記に示す方法でβ-カロテンの内包修飾を行った。
図26(a)にβ-カロテンの化学構造式、図26(b)にβ-カロテンの模式図及び図26(c)に開端処理したCNT複合電極にβ-カロテンが内包される様子を示す模式図を示す。
【実施例】
【0110】
(β-カロテン修飾CNT複合電極(β-car/CNT複合電極)の製造)
CNT複合電極aに対するβ-カロテンの修飾は、以下の手順で行った。
まず、2μM β-カロテンを含むヘキサン溶液を30分以上高純度アルゴン(Assay:99.99%以上)によるバブリングを行い、溶存酸素を除去した。その後、CNT複合電極aを浸漬し70℃、10時間の加熱還流を行った。加熱時にはβ-カロテンヘキサン溶液に高純度アルゴンをバブリングし続けた。加熱後、三つ口フラスコからCNT複合電極aを取り出し、テトラヒドロフラン(THF)で洗浄を行うことで、β-カロテン修飾CNT複合電極aを得た。
なお、洗浄操作は、CNT複合電極aと、THF3mLを試薬瓶(5mL)に加え、マグネットスターラーで10分間攪拌することで行った。洗浄操作は、THFを交換して3回行った。
【実施例】
【0111】
(β-カロテン修飾CNT複合電極b、c及びdの製造)
CNT複合電極aに代えて、CNT複合電極b、c及びdを使用した以外は、β-カロテン修飾CNT複合電極aの製法方法と同様にして、β-カロテン修飾CNT複合電極b、c及びdを得た。
【実施例】
【0112】
(評価:ラマン分光測定)
CNT複合電極のCNT評価のために、ホリバ社製のレーザーラマン分光装置 (LabRAM HR-800)を用いた(測定条件:レーザー波長:514.5nm、露光時間:60秒、積算回数:3回)
β-カロテン修飾CNT複合電極a~dのラマン分光測定の結果を図27(b)~(e)に示す。なお、参考のため、β-カロテン未修飾のCNT複合電極(CNT複合電極1)のスペクトル(図27(a))、β-カロテンのみのスペクトル(図27(f))も併せて示す。
【実施例】
【0113】
印加電位1.0Vで処理したβ-カロテン修飾CNT複合電極cは、β-カロテン未修飾のCNT由来のラマンピーク(図27(a)参照)に加えてβ-カロテン由来の1157cm-1および1525cm-1のラマンピークを有している。β-カロテンのみスペクトル(図27(f))ではピークが1152cm-1および1524cm-1にピークが見られるが、β-カロテン修飾CNT複合電極cでのβ-カロテン由来のものはピークシフトが観測された。これは内包したβ-カロテンとCNT間の電荷移動に起因すると考えられ、β-カロテンが内包されていることが示される。
0.8V印加処理のβ-カロテン修飾CNT複合電極bでは、β-カロテン由来のピーク強度が弱いことから、CNTの開端が十分ではなく、β-カロテンの内包量が減少したと考えられる。一方、開端処理を施していないβ-カロテン修飾CNT複合電極aでは、1159cm-1及びと1520cm-1付近に微少なピークが観測された。該複合電極におけるCNTは開端していないため、微量のβ-カロテンがCNTのバンドル間に入り込んだことによるものと考えられる。さらに、過度の電位印加処理もβ-カロテン内包には適さないことがわかった。例えば、1.3V印加処理したCNT複合電極dでは、CNT欠陥構造由来のD-bandのピーク強度が大きくなったため、末端だけでなく側面も酸化されたと判断された。このCNT複合電極dでは、β-カロテン由来のピークはほとんど観測されなかった。
以上のことから、β-カロテンを内包修飾するための電気化学的CNT開端処理のための最適な電位があることを示す。pH7の電解質溶液の条件下での電気化学的CNT酸化開端処理は0.9~1.1Vの電位が好適であることがわかった。
【実施例】
【0114】
(評価:サイクリックボルタンメトリー)
<測定条件>
下記構成の三極式セルにて、サイクリックボルタモグラム測定前に30分間以上高純度アルゴン(Assay:99.99%以上)によるバブリングを行い、溶存酸素を除去し、測定時にはセル内に高純度アルゴンをフローし、アルゴン雰囲気下で行った。
<セル構成>修飾
W.E.: β-カロテン内包修飾CNT複合電極c or CNT複合電極1
C.E.:Ptワイヤ
R.E.:Ag/AgCl(飽和KCl)
電解液:0.1M リン酸緩衝溶液(pH7)
【実施例】
【0115】
図28にβ-カロテン内包修飾CNT複合電極cおよび内包処理をしていないCNT複合電極1のサイクリックボルタモグラムを示す。一般的に合成された単層CNTは、金属性と半導体性のものが混在しており、本発明のCNT複合電極においても金属性と半導体性のCNTが混在したものが作製されていることが別途ラマン測定から確認された。通常の内包処理していないCNT複合電極1においては、ボルタモグラム中の電位掃引印加により半導体性CNTに対する電子のドープもしくは脱ドープが起こるため、サイクリックボルタモグラムはチョウチョが羽を広げたような形状(バタフライ型)になることが知られており、本条件下においてもー0.6~-0.2V(vs.Ag/AgCl)が窪んだバタフライ型となった。一方、β-カロテン内包修飾CNT複合電極cでは、バタフライ型ボルタモグラムではなかった。これは内包されたβ-カロテンのキャリアがCNT複合電極cの半導体性CNTに移動し、半導体性CNTが金属性のものに改変されたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、カーボンナノチューブが電極基材に強固に固定され、かつ、広い有効電極面積を有するカーボンナノチューブ複合電極が提供される。
該カーボンナノチューブ複合電極は、機械的強度および電気伝導性に優れ、特に溶液中でのCNTの電極からの剥離もなく、さらに電極上で適度にCNTが分散されており、溶液中でのCNT層内とその外の溶液層との間の物質移動がスムーズであるため、バイオセンサ、バイオ電池、燃料電池、キャパシタ、分析用の電気化学検出デバイス、神経ネットワークモデル、太陽電池等の電極としての用途に好適に使用できる。
図面
【図1a】
0
【図1b】
1
【図2】
2
【図3a】
3
【図3b】
4
【図4】
5
【図5a】
6
【図5b】
7
【図5c】
8
【図5d】
9
【図5e】
10
【図6a】
11
【図6b】
12
【図7】
13
【図8】
14
【図9a】
15
【図9b】
16
【図10】
17
【図11】
18
【図12a】
19
【図12b】
20
【図13】
21
【図14】
22
【図15】
23
【図16】
24
【図17】
25
【図18】
26
【図19】
27
【図20a】
28
【図20b】
29
【図21a】
30
【図21b】
31
【図21c】
32
【図21d】
33
【図21e】
34
【図22】
35
【図23】
36
【図24】
37
【図25】
38
【図26】
39
【図27】
40
【図28】
41