TOP > 国内特許検索 > 有機太陽電池用有機材料の評価装置および評価方法 > 明細書

明細書 :有機太陽電池用有機材料の評価装置および評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5354632号 (P5354632)
登録日 平成25年9月6日(2013.9.6)
発行日 平成25年11月27日(2013.11.27)
発明の名称または考案の名称 有機太陽電池用有機材料の評価装置および評価方法
国際特許分類 G01N  22/00        (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
FI G01N 22/00 U
H01L 31/04 D
H01L 31/04 K
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2012-531930 (P2012-531930)
出願日 平成24年3月8日(2012.3.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第58回応用物理学関係連合講演会[講演予稿集](平成23年3月9日)社団法人応用物理学会発行第12-448ページに発表
特許法第30条第1項適用 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aenm.201100143/abstract(掲載日平成23年5月16日)
国際出願番号 PCT/JP2012/055993
国際公開番号 WO2013/024602
国際公開日 平成25年2月21日(2013.2.21)
優先権出願番号 2011177637
優先日 平成23年8月15日(2011.8.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月3日(2012.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】佐伯 昭紀
【氏名】関 修平
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】比嘉 翔一
参考文献・文献 特開2010-272674(JP,A)
国際公開第2010/118004(WO,A1)
特開2010-287849(JP,A)
特開平11-312718(JP,A)
特開平06-097248(JP,A)
SAEKI A,外,Direct Evaluation of Organic Photovoltaic Cell by Time-Resolved Microwave Conductivity,高分子学会予稿集,2011年 5月10日,P.ROMBUNNO.3L08
佐伯 昭紀 AKINORI SAEKI,マイクロ波による電極レス電荷キャリア移動度測定,放射線化学2006年NO.81,日本放射線化学会 勝村 庸介,2006年,第2006巻
佐伯昭紀,外,マイクロ波法による自己組織化材料中の局所的電荷輸送特性,化学工業,2011年 7月 1日,第62巻,第7号,P.494-502
調査した分野 G01N 22/00-22/04
H01L 21/64-21/66
H01L 31/04
H01L 51/42
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価装置であって、
上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、
上記マイクロ波照射部から照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過部と、
パルス幅が10μs~1msのパルス白色光を上記有機材料に照射するキセノン・フラッシュランプからなる光照射部と、
上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知部と、
上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価部とを有し、
前記評価部が、前記パルス白色光の非照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度と、前記パルス白色光の照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度との差の時間的変化が緩やかなほど前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする評価装置。
【請求項2】
前記評価部が、前記パルス白色光の非照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度と、前記パルス白色光の照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度との差が大きいほど、前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価装置であって、
上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、
上記マイクロ波照射部から照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過部と、
パルス幅が10μs~1msのパルス白色光を上記有機材料に照射するキセノン・フラッシュランプからなる光照射部と、
上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知部と、
上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価部とを有し、
前記評価部が、物理量φΣμ (cm/Vs)
(ただし、φは1フォトン吸収あたりの電荷キャリア生成効率、Σμは正負電荷のTRMC電荷移動度の和を示す。)
が大きいほど、かつ、上記の物理量の時間的変化が緩やかなほど前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする評価装置。
【請求項4】
有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価方法であって、
上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射ステップと、
上記マイクロ波照射ステップにおいて照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過ステップと、
キセノン・フラッシュランプからなる光照射部によりパルス幅が10μs~1msのパルス白色光を上記有機材料に照射する光照射ステップと、
上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知ステップと、
上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価ステップとを有し、
前記評価ステップが、前記パルス白色光の非照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度と、前記パルス白色光の照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度との差の時間的変化が緩やかなほど前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする評価方法。
【請求項5】
前記評価ステップが、前記パルス白色光の非照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度と、前記パルス白色光の照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度との差が大きいほど、前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする請求項4に記載の評価方法。
【請求項6】
有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価方法であって、
上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射ステップと、
上記マイクロ波照射ステップにおいて照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過ステップと、
キセノン・フラッシュランプからなる光照射部によりパルス幅が10μs~1msのパルス白色光を上記有機材料に照射する光照射ステップと、
上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知ステップと、
上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価ステップとを有し、
前記評価ステップが、物理量φΣμ (cm/Vs)
(ただし、φは1フォトン吸収あたりの電荷キャリア生成効率、Σμは正負電荷のTRMC電荷移動度の和を示す。)
が大きいほど、かつ、上記の物理量の時間的変化が緩やかなほど前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜太陽電池や色素増感太陽電池等の有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価するための評価装置および評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭および大規模発電施設で利用されている太陽電池は、すべてシリコンやCuInSeなどの無機化合物半導体を用いた無機太陽電池であり、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変える光電変換効率は10-20%である(例えば、非特許文献1)。しかし、無機太陽電池は、シリコンの結晶化や成膜プロセスに多くのコストがかかり、初期投資を回収するには、さらなる光電変換効率の向上と低コスト化が必要とされる。
【0003】
一方、有機薄膜太陽電池や色素増感太陽電池等の、活性層や電荷輸送物質に有機物を用いる有機太陽電池は、低コストである点、軽量でフレキシブルな発電デバイスを実現可能である点から、次世代太陽電池として期待されている。そのため、有機太陽電池用の新規材料の開発、製造プロセスの改善、デバイス構造の最適化、大面積化、さらにRoll-to-roll方式による高生産性プロセスの適用など、有機太陽電池に関する様々な研究が、世界中の産業界・研究機関・大学で行われている。
【0004】
その中でも特にバルクヘテロジャンクション(Bulk Heterojunction:BHJ)型と呼ばれる有機薄膜太陽電池は、製造プロセスが簡便で、多様な有機材料を用いることができることから、更なる低コスト化の可能性があり、次世代太陽電池の有力候補の一つとして位置づけられている(例えば、非特許文献2)。BHJ型有機薄膜太陽電池では、高分子ドナー材料とアクセプター材料が混合された発電層を有しており、高分子ドナー材料とアクセプター材料がナノスケールで相分離することで電荷を容易に分離させる。アクセプター材料としては、フラーレン誘導体(主としてPCBM([6,6]-Phenyl-C61-Butyric Acid Methyl Ester(フェニルC61酪酸メチルエステル)))がよく知られている。
【0005】
図7は、BHJ型有機薄膜太陽電池100の光電変換原理を説明するための概略図である。BHJ型有機薄膜太陽電池100は、高分子のドナー101とフラーレン誘導体(主としてPCBM)のアクセプター102とが混合されて形成される。ドナー101に光が照射されると、正孔と電子とがペアとなって結合している励起子が生成される。励起子は接合面まで拡散し、自由なキャリアに解離する。これにより、電子はアクセプター102に移動して電極104から取り出され、正孔はドナー101の電極103から取り出される。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Martin A. Green et. al.,Progress Photovoltaics Res. Appl. 2010,p.144-150,2010
【非特許文献2】N. S. Sariciftci et. al.,SCIENCE VOL. 258,p.1474-1476,1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、有機太陽電池は、無機太陽電池に比べると光電変換効率が低く(3-9%程度)、また、耐久性が低い。光電変換効率及び耐久性を改善するには、有機太陽電池に用いられる新規な有機材料の開発が必須である。
新規な有機材料の評価は、その有機材料を使って作製された有機薄膜太陽電池の性能を評価することにより行われる。ところが、有機材料であるが故の問題が存在する。
【0008】
一つの問題は、クロスカップリング反応や置換基付加反応等において、金属触媒や不純物が残存するため、太陽光照射で生じた電荷キャリアが、不純物や分子内・分子間の構造欠陥・グレイン境界でトラップされるという点である。その結果、電荷キャリアが電極に到達して得られる電流値が下がってしまう。もう一つの問題は、有機材料が多様性な化学的・物理的構造を有するため、無機太陽電池に比べて圧倒的に多くのパラメータを最適化しなければ、本来の性能を測ることができない点である。とくに、有機材料と電極との界面でのトラップの存在や、BHJ層作製時のドナー・アクセプター材料の偏析は大きな問題である。
【0009】
通常、光電変換が行われる有機半導体中での電荷キャリア移動度測定には、TOF(Time-of-flight)法やFET(Field-effect transistor)法のようなDC(direct current)法が用いられる。TOF法およびFET法では、電荷キャリアは電極間を高電場(10~10V/cm)で長距離(数μm~数百μm)移動する必要があるため、電極—有機半導体界面のバリアや系中に多く存在するトラップサイト(不純物・構造欠陥・グレイン境界)などの要因の影響を強く受ける。そのため、たとえその材料自身が高いキャリア移動度を持っていたとしても、移動度を減少させるこれらの要因が、TOF法やFET法を用いた測定で得られる、サンプル全体の平均としての移動度を低下させてしまう。
【0010】
このことは、性能評価のためのサンプル作製の条件、つまり酸素の混入、フィルムモーフォロジー(wetプロセスでは溶媒の種類・濃度・基板温度・キャスト方法・基板処理など様々な条件でグレインサイズや分子配向・結晶性が大きく変わる)、電極間距離、デバイス構造、残存溶媒などに依存して、測定される電荷キャリアの移動度が何桁も変動することを意味する。
【0011】
そのため、サンプルを作製するためには、有機材料を塗布後、精密に制御されたグローブボックス内で、ショートや低出力化の原因となるホコリ・キズや溶媒除去時にできるボイド(pin-hole)が生じないように慎重に有機材料を作製し、さらに長時間(1-4時間)かけて有機材料(光電変換層)に電極を蒸着する必要があった。
【0012】
このように、有機太陽電池の性能評価では、不純物などの外的要因に影響を受けやすく、有機材料自身の性能を評価することは非常に難しく、また、性能評価のために多大な時間・労力がかかるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、有機太陽電池用有機材料の光電変換特性を迅速かつ簡便に評価可能な有機太陽電池用有機材料の評価装置および評価方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る有機太陽電池用有機材料の評価装置は、有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価装置であって、
上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、
上記マイクロ波照射部から照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過部と、
パルス幅が10μs~1msのパルス白色光を上記有機材料に照射するキセノン・フラッシュランプからなる光照射部と、
上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知部と、
上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価部とを有し、
前記評価部が、前記パルス白色光の非照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度と、前記パルス白色光の照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度との差の時間的変化が緩やかなほど前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴とする。

【0016】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る有機太陽電池用有機材料の評価方法は、有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価方法であって、
上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射ステップと、
上記マイクロ波照射ステップにおいて照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過ステップと、
キセノン・フラッシュランプからなる光照射部によりパルス幅が10μs~1msのパルス白色光を上記有機材料に照射する光照射ステップと、
上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知ステップと、
上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価ステップとを有し、
前記評価ステップが、前記パルス白色光の非照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度と、前記パルス白色光の照射時における前記有機材料を透過したマイクロ波の強度との差の時間的変化が緩やかなほど前記有機材料の光電変換特性が優れていると評価することを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、有機材料にマイクロ波を照射した状態で、パルス白色光(以下、この段落では、パルス白色光とレーザーパルス光をまとめて「パルス光」という。)を有機材料に照射すると、有機材料が太陽光の波長範囲の光に感度を有する場合、有機材料に電荷キャリアが発生する。この電荷キャリアがマイクロ波を吸収するため、マイクロ波が有機材料を透過する毎に、マイクロ波の強度は、光の非照射時に比べて減衰する。また、マイクロ波が有機材料を1回透過した場合のマイクロ波の減衰量は僅かであるが、マイクロ波は有機材料を複数回透過するため、電荷キャリアによるマイクロ波の減衰量を大きくすることができる。そのため、パルス光の照射時におけるマイクロ波の強度と、パルス光の非照射時におけるマイクロ波の強度とを比較することにより、電荷キャリアによるマイクロ波の減衰量が正確に検出できる。そして、この減衰量が大きいほど、有機材料の光電変換特性が優れていると評価することができる。

【0019】
また、パルス光照射直後およびナノ秒~マイクロ秒後における、マイクロ波の強度を検知することにより、電荷キャリアの再結合までの時間情報を得ることができる。そして、電荷キャリアの再結合までの時間が長いほど、つまり、パルス光照射直後のマイクロ波の強度の時間的変化が緩やかなほど、有機材料の光電変換特性が優れていると評価することができる。
【0020】
このように、本発明によれば、電荷キャリアによるマイクロ波の減衰量、及び電荷キャリアの再結合までの時間情報に基づいて有機材料の光電変換特性を正確に評価することができる。
【0021】
また、このように、マイクロ波の減衰量に基づいて有機材料の光電変換特性を評価できるため、従来の構成とは異なり、有機材料の性能評価のために、有機材料に電極を形成する必要がない。また、上記の構成では、不純物の影響が小さいため、材料を精製することなく、例えば、大気中で基板にスピンコート法により有機材料を塗布するだけで、評価可能となる。そのため、評価にかかる時間および労力を大幅に削減することができる。
【0022】
したがって、有機太陽電池用有機材料の光電変換特性を迅速かつ簡便に評価可能な評価装置および評価方法を実現することができる。
【0023】
特に、パルス白色光は、太陽光に近似したスペクトルを有するので、実際の光電変換特性に直結した情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係る有機太陽電池用有機材料の評価装置は、有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価装置であって、上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、上記マイクロ波照射部から照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過部と、その波長が太陽光の波長の範囲に含まれるパルス白色光を上記有機材料に照射する光照射部と、上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知部と、上記パルス白色光やレーザーパルス光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価部とを有する。

【0025】
また、本発明に係る有機太陽電池用有機材料の評価方法は、有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を評価する評価方法であって、上記有機材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射ステップと、上記マイクロ波照射ステップにおいて照射されたマイクロ波を上記有機材料に複数回透過させるマイクロ波透過ステップと、その波長が太陽光の波長の範囲に含まれるパルス白色光を上記有機材料に照射する光照射ステップと、上記有機材料を透過したマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知ステップと、上記パルス白色光の照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度と上記パルス白色光の非照射時における上記有機材料を透過したマイクロ波の強度とに基づいて上記有機材料の光電変換特性を評価する評価ステップとを有する。したがって、有機太陽電池に用いられる有機材料の光電変換特性を迅速かつ簡便に評価可能な評価装置および評価方法を実現できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の参考実施形態に係る評価装置の構成を示す図である。
【図2】サンプルの一例を示す図である。
【図3】マイクロ波透過部の構成を示す図である。
【図4】(a)は、電極を形成した有機薄膜太陽電池デバイスの変換効率と、当該有機薄膜太陽電池デバイスに用いる有機材料を時間分解マイクロ波伝導度測定法(Time-Resolved Microwave Conductivity:以下TRMC)によって測定したときに得られるφΣμのピーク値との関係を示すグラフであり、(b)は、有機薄膜太陽電池デバイスの起電力の測定結果を示すグラフであり、(c)は、TRMC光過渡伝導度の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る評価装置の構成を示す図である。
【図6】(a)は実施形態に係る評価装置を用いて測定したTRMC信号とPCBMの混合比率との関係を示す図であり、(b)は実施形態の係る評価装置を用いて測定したTRMC信号とPCBMの混合比率との関係を示す図である。
【図7】BHJ型有機薄膜太陽電池の光電変換原理を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
参考実施形態〕
本発明の参考実施形態について図1~図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。


【0028】
(装置構成)
図1は、本実施形態に係る評価装置1の構成を示す図である。評価装置1は、光照射部2、駆動用電源3、パルスジェネレータ4、シャッター5、シャッターコントローラ6、マイクロ波透過部7、マイクロ波照射部・マイクロ波検知部8、オシロスコープ9および評価部10を備えている。

【0029】
本実施形態では、光照射部2は、レーザー光源で構成される。また、マイクロ波透過部7は、空洞共振器で構成され、マイクロ波照射部・マイクロ波検知部8は、マイクロ波立体回路で構成され、評価部10は、制御・解析用コンピュータで構成される。マイクロ波立体回路は、マイクロ波を発生して、当該マイクロ波を空洞共振器に導くとともに、空洞共振器から反射されたマイクロ波の強度を検知する機能を有しており、例えば、ガンオシレータ、減衰器、位相器、導波管、周波数カウンター、マイクロ波検波器、アンプ、方向性結合器、サーキュレータ、同軸ケーブル等から構成される。

【0030】
図2は、マイクロ波透過部7の内部に設置されるサンプルSPの一例を示す図である。サンプルSPは、石英基板11にスピンコート法により有機材料12を塗布したものであり、従来の評価装置で用いられるサンプルとは異なり、電極は形成されない。

【0031】
図3は、マイクロ波透過部7を構成する空洞共振器を示している。この空洞共振器は、一方の端部にマイクロ波導入口72を、他方の端部にパルス光取込口73を有する矩形筒状の共振部71と、この共振部71にサンプルSPを挿入するためのサンプル挿入口74及びサンプル挿入口75とから構成されている。サンプル挿入口74は共振部71を垂直方向に貫通し、サンプル挿入口75は共振部71を水平方向に貫通している。このような2個の挿入口74、75を備えることにより、共振部71に対してサンプルSPを垂直方向及び水平方向に挿入することができる。このため、共振部71にマイクロ波を照射したとき、石英基板11上に塗布された有機材料12に対して、異なる方向の光電変換特性を評価することができる。

【0032】
サンプルSPが、評価装置1のマイクロ波透過部7の内部に設置された後、マイクロ波照射部・マイクロ波検知部8からマイクロ波透過部7の内部に向かってマイクロ波W1が照射される(マイクロ波照射ステップ)。これにより、マイクロ波透過部7のマイクロ波導入口72から共振部71にマイクロ波が導入され、共振条件を満たす単一の周波数のマイクロ波のみが有機材料12に到達して、有機材料12を透過する(マイクロ波透過ステップ)。有機材料12を透過したマイクロ波W1は、共振部71のマイクロ波導入口72とは反対側の内部端面73a(パルス光取り込み口73側の端面)によって反射された後、有機材料12を再び透過し、共振部71のマイクロ波導入口72側の内部端面72aによって反射される。このように共振部71の両端の内部端面72a、73aによってマイクロ波W1が反射されることにより、マイクロ波W1は共振部71の内部を複数回往復し、例えば2000~3000回有機材料12を透過した後、マイクロ波導入口72からマイクロ波照射部・マイクロ波検知部8に向かって出射される(以下、有機材料12を透過した後、共振部71から出射されたマイクロ波を「マイクロ波W2」という。)。なお、マイクロ波透過部7の共振部71と共振するマイクロ波の波長は、共振部71の形状や大きさによって決まり、測定者によって適宜変えることができる。

【0033】
共振部71の内部をマイクロ波W1が往復している状態で、駆動用電源3によって光照射部2が駆動される。続いて、光照射部2とマイクロ波透過部7との間に位置していたシャッター5が、シャッターコントローラ6の制御によって移動し、光照射部2からのレーザーパルス光が共振部71の内部に設置されたサンプルSPに照射される(光照射ステップ)。レーザーパルス光の照射時間のタイミングおよび繰り返し周波数は、パルスジェネレータ4によって制御される。また、レーザーパルス光の波長も355~700nmの範囲で段階的に設定可能となっている。なお、レーザーパルス光の波長は、太陽光の波長の範囲であれば、特に限定されない。

【0034】
サンプルSPにレーザーパルス光が照射されると、サンプルSPの有機材料12に電荷キャリアが発生する。この電荷キャリアがマイクロ波を吸収するため、レーザーパルス光を照射しない場合に比べて、有機材料12を透過して共振部71から出射されるマイクロ波W2の強度が低下する。すなわち、非照射時と比較したマイクロ波の減衰量(パワー損失)は、電荷キャリアの量に応じて変化する。

【0035】
マイクロ波透過部7(共振部71)から出射されるマイクロ波W2の強度は、マイクロ波照射部・マイクロ波検知部8によって検知され(マイクロ波検知ステップ)、検知されたマイクロ波の強度を示す信号Sは、オシロスコープ9を介して評価部10に送られる。評価部10は、レーザーパルス光照射時のマイクロ波W2の強度とレーザーパルス光非照射時のマイクロ波W2の強度とを比較することにより、電荷キャリアによるマイクロ波の減衰量を検出し、当該減衰量に基づいてサンプルの光電変換特性を評価する(評価ステップ)。具体的には、マイクロ波の減衰量(パワー損失)が大きいほど、且つ、緩やかに減衰する方が(つまり、減衰曲線(図4(c)参照)と横軸で囲まれた部分の面積が大きい方が)光電変換特性に優れていると評価される。

【0036】
また、マイクロ波が有機材料12を1回透過した場合のマイクロ波の減衰量は僅かであるが、マイクロ波透過部7では、マイクロ波が複数回(実用上は2000~3000回)有機材料12を透過するので、電荷キャリアによるマイクロ波の減衰量を大きくすることができる。そのため、マイクロ波照射部・マイクロ波検知部8は、電荷キャリアによるマイクロ波の減衰量を正確に検出することができ、評価部10は、当該減衰量に基づいて有機材料12の光電変換特性を評価することができる。

【0037】
(評価の原理)
このように、本実施形態に係る評価装置1は、時間分解マイクロ波伝導度測定法(Time-Resolved Microwave Conductivity:TRMC)を有機薄膜太陽電池の性能評価に応用したものである。本測定法では、実験的にはパワー損失を検出する。検出されたパワー損失は、誘起双極子が関与する場合は誘電損失に対応し、電荷キャリアが関与する場合は伝導度に対応する。系(気相・液相・固体)、条件(ガス圧・ガス種・マイクロ波パワー)および材料に依存して、パワー損失の寄与は大きく変わる。そのため、パワー損失を測定できるように実験条件・マイクロ波立体回路等を選定すればよい。

【0038】
デバイスの性能(光電変換特性)を示す物性値として、電気伝導度と電荷キャリア移動度とがある。電気伝導度σ(S/cm)は、電荷キャリア移動度μ(cm/Vs)と電荷キャリア密度n(/cm)の積で表され、 σ=eΣnμとなる(eは電気素量)。nとμの積を、Σによる和と表記したのは、電荷キャリアには正と負があり、デバイス中ではそれぞれの密度および移動度が異なるためである。電荷キャリア移動度が高いほどデバイスは高速応答し、また、同じ電界強度であれば、電荷キャリア移動度が高いほどより多くの電流が流れる。

【0039】
本実施形態による評価方法は、従来の評価法であるTOF法やFET法などのDC法とは異なり、マイクロ波をプローブとして用いるAC(alternating current)法であるため、サンプルに電極を形成することなく光電変換特性を測定することができる。そのため、電極界面のコンタクトの問題を排除し、有機材料自身が有するナノスケールの界面・形態(モーフォロジー、分子間相互作用)・構造(超分子構造、高分子の主鎖構造)等を強く反映した純粋な光電変換特性を簡便に得ることができる。さらに、有機材料を非極性溶媒に溶かすことで分子間相互作用も取り除いて、分子内のみの電気伝導度を測定することが可能である。

【0040】
また、本実施形態では、数GHz~数10GHzオーダーの高周波(波長は数cm)とナノ秒レーザーパルス光とを用いるため、パルスエンド(時間分解能は1ns~数10ns)のTRMC信号は、多くの電荷キャリアがトラップサイトに捕捉される前の、微小領域での移動度を反映する。したがって、不純物等の影響は最小限に抑えられる。

【0041】
電界強度も非常に小さい(10-1~10V/cm)ため、Poole-Frenkelモデルに代表されるような、材料中で電荷キャリアが受けている局所的なポテンシャルの影響や、熱活性化過程のモデリングといった複雑な因子の排除が可能である。サンプルが、極性溶媒のように双極子モーメントが大きいもの(誘電率が高いもの)や、金属のように自由電子が多く存在するものである場合、材料自体がマイクロ波を吸収するため測定には不向きであるが、そうでない場合は、溶液、フィルム、粉末など多種の形態のサンプルをそのまま測定に用いることができる。

【0042】
従来の評価方法では、サンプルを作製するために、1週間程度かけてカラム精製・ソックスレー抽出・金属触媒除去処理等を行うことにより材料を精製し、有機材料を塗布後、精密に制御されたグローブボックス内で、ショートや低出力化の原因となるホコリ・キズをつけないよう慎重に作業して、さらに1-4時間かけて電極を蒸着しなければならない。一方、本実施形態による評価方法では、不純物の影響が小さいため、材料を精製することなく、大気中で石英基板にスピンコート法により有機材料を塗布するだけでよい。また、電極を形成する必要がないため、短時間にサンプルを作製することができる。そのため、サンプルの作製時間を大幅に短縮することができる。

【0043】
また、従来の評価方法では、サンプルを作製するために必要な有機材料が50mg以上必要であった。一方、本実施形態による評価方法では、3~4mgの極少量の有機材料でサンプルを作製することができる。本実施形態による評価方法は、その後の、熱処理・溶媒・混合溶媒・コーティング等のプロセスの最適化にも適用でき、少量の有機材料のサンプルで多くのパラメータを迅速に測定することができる。さらに、電極界面とのトラップについても、実際のデバイス性能との比較により、その存在の有無を検討することができる。

【0044】
以上のように、本実施形態による評価方法は、有機薄膜太陽電池や色素増感型太陽電池といった有機太陽電池用有機材料を迅速に診断する方法として有効である。

【0045】
(実施例)
上記の実施形態1に係る評価装置1によって、電極を形成していないサンプルの光電変換特性を直接評価できることを証明するために、実験を行った。実験では、代表的な有機材料である立体規則性ポリチオフェン(poly(3-n-hexylthiophene):P3HT)とフラーレン誘導体([6,6]-phenyl-C61-butyric acid methyl ester:PCBM)とを用いた。

【0046】
まず、P3HT:PCBM=1:1のBHJ(Bulk Heterojunction)層に電極を形成した有機薄膜太陽電池デバイス(Glass/ITO/ PEDOT:PSS/BHJ/Ca/Al)を作製して、その光電変換特性を従来の評価方法によって評価した。ここでは、従来の評価方法として、「ソーラーシミュレータからの疑似太陽光照射下での有機薄膜太陽電池のJ-V特性評価」方法を採用した。

【0047】
また、電極を形成せずに石英基板に上記のBHJ層を形成したサンプル(Quartz/PEDOT:PSS/BHJ、以下「電極レスサンプル」とする)を作製して、図1に示す評価装置1のマイクロ波透過部7に設置し、9GHzのマイクロ波を照射しながら、355nm波長のレーザーパルス光を照射して、その光電変換特性を評価した。電極レスサンプルは、窒素グローブボックス内でジクロロベンゼン(o-dichlorobenzene),クロロベンゼン(chlorobenzene), クロロホルム(chloroform)の混合溶液からスピンコートし、アニール温度・時間を変えて作製した。

【0048】
そして、電極を形成した有機薄膜太陽電池デバイスの評価結果と、評価装置1による電極レスサンプルの評価結果との相関を検討した。

【0049】
図4(a)は、電極を形成した有機薄膜太陽電池デバイスの変換効率(power conversion efficiency:以下PCE)を縦軸に、当該有機薄膜太陽電池デバイスに用いる有機材料を時間分解マイクロ波伝導度測定法(Time-Resolved Microwave Conductivity:以下、TRMCという。)によって測定したときに得られるφΣμのピーク値(φΣμmax)を横軸にプロットしたグラフである。「φΣμ」は、レーザーパルス光の照射時とレーザーパルス光の非照射時におけるマイクロ波強度の差を物理量(cm/Vs)に変換したものであり、φは光照射による電荷キャリア発生効率、Σμは電荷キャリア移動度の和を表す。図4(b)は、縦軸が電流密度で、横軸が電圧である有機薄膜太陽電池デバイスの起電力の測定結果を示すグラフである。図4(c)は、縦軸がTRMC法で得られるφΣμで、横軸が光パルス照射後の時間であるTRMC光過渡伝導度の測定結果を示すグラフである。図4(a)は、図4(b)と図4(c)の結果に基づき作成される。

【0050】
PCEは、(有機薄膜太陽電池デバイスの発電量)/(有機薄膜太陽電池デバイスに照射された光のエネルギー)を演算することにより求められる。φは、評価装置1の時間分解能での1フォトン吸収あたりの電荷キャリア生成効率を表しており、Σμは正負電荷のTRMC電荷キャリア移動度の和を表している。PCEとφΣμmaxとは良い相関を示しており、本実施形態に係る評価装置1によって、BHJ層のモーフォロジーを反映した光電気特性を直接評価することが可能であることが証明された。

【0051】
また、不純物効果や劣化効果についても従来の評価方法および本実施形態の評価方法によって評価を行い、過渡伝導度の寿命や強度について検討した。これらにより、本実施形態の評価方法は、不純物・劣化効果を最小化し、電極を形成しないサンプルの光電変換特性を迅速かつ簡便に評価することができ、プロセスおよび材料のスクリーニングに有効であることが示された。

【0052】
〔実施形態〕
本発明の実施形態について図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。


【0053】
同一の有機材料で作製され、ドナー分子とアクセプター分子の混合比は同じであるがアニール温度・アニール時間といった処理条件が異なる複数のサンプルを評価する場合は、単一波長のレーザーパルス光による1回の測定で充分な評価が可能である。しかしながら、同一の有機材料で作製され、ドナー分子とアクセプター分子の混合比が異なる複数のサンプルを評価する場合、あるいは、異なる有機材料からなる複数のサンプルを評価する場合は、太陽光または擬似太陽光に対する光電変換特性を測定する必要がある。

【0054】
この点、上記の参考実施形態における評価方法では、1回の測定につき、単一波長のレーザーパルス光しか利用できない。そのため、上述のような、短波長から長波長の光まで吸収特性を持つ低バンドギャップ高分子で構成されたサンプル等、太陽光または擬似太陽光に対する光電変換特性を測定する必要があるサンプルを評価するためには、レーザーパルス光の波長を切り替えて、異なる波長のレーザーパルス光毎に特性を測定しなければならない。測定精度を高めるためには、波長の切り替え幅を小さくして多数回測定する必要がある。また、レーザーパルス光の波長切り替えには数分を要するので、測定に多大な時間と労力がかかる。


【0055】
そこで、本実施形態では、サンプル測定に用いられるパルス白色光源としてキセノン・フラッシュランプを採用している。キセノン・フラッシュランプは、太陽光に近い波長範囲のパルス白色光を出射する。

【0056】
図5は、本実施形態に係る評価装置1aの構成を示す図である。評価装置1aは、図1に示す評価装置1において、光照射部2を光照射部2aに置き換え、光照射部2aとマイクロ波透過部7との間に、フィルタ13を設けた構成である。本実施形態では、光照射部2aは、キセノン・フラッシュランプで構成される。説明の便宜上、第1の実施形態において説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0057】
評価装置1aにおける評価手順は、図1に示す評価装置1と同様である。すなわち、サンプルをマイクロ波透過部7の内部に設置し、サンプルにマイクロ波W1を照射した状態で、駆動用電源によって光照射部2aを駆動する。これにより、光照射部2aからパルス白色光がフィルタ13を通ってマイクロ波透過部7の内部に設置されたサンプルに照射される。パルス白色光のパルス幅は、パルスジェネレータ4によって制御され、例えば10μs~1msに設定可能となっている。また、パルス白色光の時間分解能は10μs~1msに、白色光エネルギーは0.1~100mJ/cm/pulseに、繰り返し0.1~20Hzに設定可能となっている。なお、フィルタ13は、光照射部2aから出射されるパルス白色光のスペクトルを、太陽光のスペクトルにより近づけるために用いられたものである。

【0058】
つぎに、本実施形態に係る評価装置1aと上述の参考実施形態に係る評価装置1を用いて、有機材料中のドナー分子とアクセプター分子の最適混合比率を求めるための実験を行った。実験には、ドナー分子の有機材料としてPCPDTBT(poly[2,6-(4,4-bis-(2-ethylhexyl)-4H-cyclopenta[2,1-b;3,4-b']dithiophene)-alt-4,7-(2,1,3-benzothiadiazole)])を、アクセプター分子の有機材料としてフラーレン誘導体PCBMを用いた。


【0059】
図6(a)は、評価装置1aを用いた結果を、図6(b)は評価装置1を用いた結果を示している。図6の(a)及び(b)の横軸はいずれもPCBMの割合(重量%)を表しており、縦軸はいずれもTRMC法で得られるφΣμを表している。

【0060】
評価装置1aを用いた実験では、キセノン・フラッシュランプを用いて太陽光に近い1種類のパルス白色光をサンプルに照射した。この実験では、パルス幅が10μs程度、時間分解能が10μs程度、白色光エネルギーが1mJ/cm/pulse程度、繰り返し10Hz以上のパルス白色光をサンプルに照射した。この結果、TRMC信号が最大値を示すPCBMの混合比率(つまり最適混合比率)は75%付近であることが分かった。

【0061】
一方、評価装置1を用いた実験では、355nm、500nm、680nmの3種類の波長のレーザーパルス光を照射した。なお、レーザーパルス光の照射条件は、25mJ/cm/pulse、繰り返し10Hz、レーザーパルス幅5-8nsとし、他の測定システムは第1実施形態の実験と同じである。この結果を図6(b)に示す。図6(b)では、黒丸(●)が波長355nmのレーザーパルス光を照射したとき、黒四角(■)が波長500nmのレーザーパルス光を照射したとき、黒三角(▲)が波長680nmのレーザーパルス光を照射した時のTRMC信号をそれぞれ示している。
この図6(b)のように、TRMC信号が最大値を示すPCBMの混合比率は波長毎に異なる。従って、レーザーパルス光をサンプルに照射した場合は、TRMC信号の比較だけでは、最適混合比率を見つけることが難しいことが分かった。

【0062】
このように実施形態においても、参考実施形態と同様に、サンプルは、石英基板にスピンコート法により有機材料を塗布するだけであり、電極を形成する必要がないため、短時間で作製することができる。さらに、評価装置1aでは、擬似太陽光のスペクトルに合致したパルス白色光を発する光照射部2aを光源としているので、各サンプルに対して1種類の光を照射して測定するだけで、サンプルに対応するデバイス性能が直接反映された光電変換特性を評価することができる。そのため、異なる有機材料からなる複数のサンプル間の光電変換特性を迅速に比較することができる。


【0063】
したがって、評価装置1aは、参考実施形態(評価装置1)のように、レーザーパルス光の波長を切り替えながら、1つのサンプルに対して複数回の測定を行う必要がないので、サンプルの測定時間を、さらに大幅に短縮することができる。従来の電子デバイスによる評価方法では、測定に数時間かかり、しかも、再現性が低い傾向があったが、本実施形態に係る評価方法では、数分で、再現性の高い評価が可能になる。

【0064】
このように、本実施形態に係る評価方法は、多種の有機太陽電池の材料の開発、並びに、材料スクリーニングおよび薄膜生成プロセスの最適化のために、迅速かつ正確な診断ツールとして極めて有用である。さらに、従来の評価方法では測定できなかった、電荷キャリアの減衰ダイナミクスを直接測定することができ、電荷キャリア生成効率、ミクロな電荷移動度およびマイクロな電荷移動度を、それぞれ分離して検討することが可能である。

【0065】
上述した各実施形態では、サンプルにマイクロ波を照射しながら、パルスレーザ光またはパルス白色光を照射したが、有機薄膜太陽電池の性能評価においては、パルス白色光が適している。

【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、有機薄膜太陽電池や色素増感型太陽電池といった有機太陽電池用有機材料の性能評価に好適である。
【符号の説明】
【0068】
1:評価装置
1a:評価装置
2:光照射部
2a:光照射部
3:駆動用電源
4:パルスジェネレータ
5:シャッター
6:シャッターコントローラ
7:マイクロ波透過部
71:共振部
72:マイクロ波導入口
73:パルス光取込口
74,75:サンプル挿入口
8:マイクロ波照射部・マイクロ波検知部
9:オシロスコープ
10:評価部
11:石英基板
12:有機材料
100:BHJ型有機薄膜太陽電池
101:ドナー
102:アクセプター
103:電極
104:電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6