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明細書 :スピンモータ及びスピン回転部材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5534493号 (P5534493)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年7月2日(2014.7.2)
発明の名称または考案の名称 スピンモータ及びスピン回転部材
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 10
出願番号 特願2013-554509 (P2013-554509)
出願日 平成25年7月25日(2013.7.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/070216
優先権出願番号 2012177339
優先日 平成24年8月9日(2012.8.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年11月28日(2013.11.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】500116351
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ヨーク
【氏名又は名称】UNIVERSITY OF YORK
発明者または考案者 【氏名】廣畑 貴文
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100161425、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 鉄平
審査官 【審査官】松永 謙一
参考文献・文献 特開2001-358379(JP,A)
国際公開第2008/123023(WO,A1)
調査した分野 H02N 1/00-99/00
H01L 43/00-43/14
要約 スピン回転部材は、基板と、基板上に設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体からなるスピン注入子と、基板上にスピン注入子と離間して設けられ、基板面内方向に磁気モーメントが回転可能な強磁性体からなるスピン回転子と、スピン注入子とスピン回転子との間に配置され、スピン注入子及びスピン回転子と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなるチャネル部と、チャネル部のスピンの回転方向を制御するスピン回転制御部と、を備える。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体からなるスピン注入子と、
前記基板上に前記スピン注入子と離間して設けられ、基板面内方向に磁気モーメントが回転可能な強磁性体からなる円板状のスピン回転子と、
前記スピン注入子と前記スピン回転子との間に配置され、前記スピン注入子及び前記スピン回転子と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなるチャネル部と、
前記チャネル部のスピンの回転方向を制御するスピン回転制御部と、
を備えるスピン回転部材。
【請求項2】
前記スピン回転制御部は、前記チャネル部と直接又は絶縁層を介して接合され、前記チャネル部へ電圧を印加する請求項1に記載のスピン回転部材。
【請求項3】
前記スピン回転制御部は、円偏光を前記チャネル部へ照射する請求項1に記載のスピン回転部材。
【請求項4】
前記スピン回転制御部は、前記スピン注入子へ印加する電圧値を変更する請求項1に記載のスピン回転部材。
【請求項5】
前記チャネル部は、半導体材料により形成される請求項1~4の何れか一項に記載のスピン回転部材。
【請求項6】
前記チャネル部は、二次元電子ガス層を有する請求項1~5の何れか一項に記載のスピン回転部材。
【請求項7】
前記チャネル部は、軸線方向が面内方向に向くように配置された線形部材であって、
前記スピン回転子は、その直径が前記チャネル部の線幅より小さい請求項1~6の何れか一項に記載のスピン回転部材。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体からなるスピン注入子と、
前記基板上に前記スピン注入子と離間して設けられ、基板面内方向に磁気モーメントが回転可能な強磁性体からなるスピン回転子と、
前記スピン注入子と前記スピン回転子との間に配置され、前記スピン注入子及び前記スピン回転子と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなるチャネル部と、
前記チャネル部のスピンの回転方向を制御するスピン回転制御部と、
前記スピン回転子と離間し対向して配置され、前記スピン回転子の磁気モーメントに追従して回転する強磁性体からなるモータ回転子と、
を備えるスピンモータ。
【請求項9】
前記スピン回転子は、円板状を呈し、
前記モータ回転子は、回転軸が基板に直交するように配置される請求項8に記載のスピンモータ。
【請求項10】
前記チャネル部は、前記基板上に形成され、
前記スピン注入子及び前記スピン回転子は、前記チャネル部上に形成され、
前記モータ回転子は、前記スピン回転子の上方に離間して配置される請求項8又は9に記載のスピンモータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンモータ及びスピン回転部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとして、ナノスケールの小型モータが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1記載のモータは、磁石を有する回転子と回転子の周囲を四方から囲む小型のコイルを有し、電磁誘導を利用して駆動する。特許文献2記載のモータは、電極が接続された非磁性体からなる回転子を有し、ジャイロ磁気効果を利用して駆動する。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2007-069325号公報
【特許文献2】特開2006-345638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のモータにあっては、回転子を複数のコイルで囲むように配置関係を調整して組み立てる必要があるため、さらなる小型化を図る場合には製造が困難となるおそれがある。また、特許文献2記載のモータにあっては、回転子そのものに電流を印加する必要性があるため、回転子の回転性を確保した状態で電極と結合させる特別な構造が必要となる。このため、本技術分野では、簡易な構造のモータ及び該モータ等に用いられる部材が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係るスピン回転部材は、基板と、基板上に設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体からなるスピン注入子と、基板上にスピン注入子と離間して設けられ、基板面内方向に磁気モーメントが回転可能な強磁性体からなる円板状のスピン回転子と、スピン注入子とスピン回転子との間に配置され、スピン注入子及びスピン回転子と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなるチャネル部と、チャネル部のスピンの回転方向を制御するスピン回転制御部と、を備える。
【0006】
このように構成することで、例えば強磁性体からなるスピン注入子と非磁性体からなるチャネル部とに電流又は電圧を印加すると、チャネル部に強磁性体からなるスピン回転子へ向けてスピン流が生じる。チャネル部に流れるスピンは、スピン回転子の磁気モーメントに対してスピントランスファートルク(Spin-Transfer Torque)として作用する。このとき、スピン回転制御部により、チャネル部に流れるスピンの向きを制御することができるため、スピン回転子の磁気モーメントを回転させることができる。よって簡易な構造でスピン回転部材を実現することができる。また、このスピン回転部材を用いることで、例えば簡易な構造のモータを構成することができる。
【0007】
一実施形態では、スピン回転制御部はチャネル部と直接又は絶縁層を介して接合されてもよく、チャネル部へ電圧を印加してもよい。またスピン回転制御部は、円偏光をチャネル部へ照射してもよい。さらにスピン回転制御部は、スピン注入子へ印加する電圧値を変更してもよい。このように構成することで、チャネル部に流れるスピン流を適切に制御することができる。
【0008】
一実施形態では、チャネル部は、半導体材料により形成されてもよい。このように構成することで、円偏光をチャネル部に照射することによって、スピンの向きを制御することができる。また、スピン軌道相互作用を介したスピン制御が可能となる。
【0009】
一実施形態では、チャネル部は、二次元電子ガス層を有していてもよい。このように構成することで、二次元電子ガス層により、スピンが供給されるため、チャネル部におけるスピンの角運動量の伝搬を効率良く行うことができる。
【0010】
一実施形態では、チャネル部は、軸線方向が面内方向に向くように配置された線形部材であって、スピン回転子は、該スピン回転子の直径がチャネル部の前記線幅より小さくてもよい。このように構成することで、スピン回転子に対するスピンの角運動量の伝搬を効率良く行うことができる。
【0011】
本発明の他の側面に係るスピンモータは、基板と、基板上に設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体からなるスピン注入子と、基板上にスピン注入子と離間して設けられ、基板面内方向に磁気モーメントが回転可能な強磁性体からなるスピン回転子と、スピン注入子とスピン回転子との間に配置され、スピン注入子及びスピン回転子と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなるチャネル部と、チャネル部のスピンの回転方向を制御するスピン回転制御部と、スピン回転子と離間し対向して配置され、スピン回転子の磁気モーメントに追従して回転する強磁性体からなるモータ回転子と、を備える。
【0012】
このように構成することで、スピン回転子の磁気モーメントが回転すると、スピン回転子に対向配置させた強磁性体からなるモータ回転子をスピン回転子の磁気モーメントの回転に追従させて回転させることが可能となる。よって、スピン回転子とモータ回転子とを対向配置させるという簡易な構造でスピンモータを実現することができる。
【0013】
一実施形態では、スピン回転子は、円板状を呈し、モータ回転子は、回転軸が基板に直交するように配置してもよい。スピン回転子が円板状の場合、基板面内方向におけるスピン回転子の磁気異方性を均一にすることができるため、スピン回転子の磁気モーメントの基板面内方向における回転の制御を容易に行うことができる。
【0014】
一実施形態では、チャネル部は、基板上に形成され、スピン注入子及び前記スピン回転子は、チャネル部上に形成され、モータ回転子は、スピン回転子の上方に離間して配置されてもよい。このように構成することで、スピンモータの作成が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び実施形態によれば、簡易な構造のモータ及び該モータ等に用いられる部材を提供することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係るスピン回転部材の斜視図である。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】一実施形態に係るスピンモータを示した斜視図である。
【図4】一実施形態に係るスピン回転部材の動作原理を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。

【0018】
本実施形態に係るスピンモータは、いわゆるスピンバルブ構造を応用したスピンモータであって、例えばナノスケールのスピンモータとして好適に採用されるものである。図1は、一実施形態に係るスピンモータに用いられるスピン回転部材の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。

【0019】
図1に示すように、スピン回転部材10は、例えば、チャネル部12、スピン注入子14、スピン回転制御部15及びスピン回転子16を備えている。ここでは、強磁性体からなるスピン注入子14及び強磁性体からなるスピン回転子16を非磁性体からなるチャネル部12によって橋渡しした面内スピンバルブ構造が形成されている。スピン注入子14及びスピン回転子16は、例えばFe、NiFe等により形成され得る。チャネル部12は、例えばSiもしくはヒ化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、又は、AgもしくはCu等の非磁性金属により形成され得る。以下では、チャネル部12が半導体材料で形成された場合を説明する。

【0020】
図1,2に示すように、チャネル部12は基板24上に配置されている。基板24として例えば半導体基板が用いられる。チャネル部12は、線形部材であって、その軸線方向が面内方向に向くように配置されている。チャネル部12は、例えば基板24上に積層させた半導体層20をメサ状に加工することによって形成される。チャネル部12の線幅は、例えば10μm以下とされる。また、チャネル部12の線幅は、例えば、0.05μm以上であってもよい。なお、基板24と半導体層20との間に二次元電子ガス層22を形成した場合には、二次元電子ガス層22及び半導体層20をメサ状に加工することによってチャネル部12を形成してもよい。例えば、基板24としてGaAs基板を用い、半導体層20を基板24に電子をドーピングして形成した場合には、半導体層20と基板24との間に二次元電子ガス層22が形成される。

【0021】
スピン注入子14は、基板24上に設けられる。スピン注入子14は、線形部材であって、その軸線方向が面内方向に向くように配置され、面内方向に磁化されている。なお、ここではスピン注入子14は、チャネル部12上に配置されている。スピン注入子14は、チャネル部12と交差するように配置される。このため、スピン注入子14及びチャネル部12は、互いに接触(直接的に接合)している。スピン注入子14とチャネル部12とが交差する領域がスピン注入領域(スピン注入位置)となる。スピン注入子14の線幅は、例えば10μm以下とされる。また、スピン注入子14の線幅は、例えば、0.05μm以上であってもよい。

【0022】
スピン回転子16は、基板24上にスピン注入子14と離間して設けられる。スピン回転子は、円板部材であって、基板面内方向に磁気モーメントが向くように形成されている。なお、円板部材とは、その水平断面が鋭角部を有さない形状の部材を意味する。円板部材は、例えば、その直径が小さい円板形状(ドット形状)の部材や、円錐状の部材であってもよい。また、円板部材は、例えば、その水平断面が円形の板状部材のみならず、水平断面が楕円形状である部材、水平断面が多角形であって角の角度が例えば180度に近い非常に大きな多角形となる部材を含む。ここではスピン回転子16は、チャネル部12上に配置されている。スピン回転子16は、チャネル部12と接触(直接的に接合)されている。ここでは、スピン回転子16は、その直径がチャネル部12の線幅より小さくなるように形成されている。スピン回転子16の直径は、例えば10μm以下とされる。また、スピン回転子16の直径は、例えば、0.05μm以上であってもよい。

【0023】
このように、スピン注入子14とスピン回転子16との間にチャネル部12が配置された面内スピンバルブ構造とされている。スピン注入子14の一端部には、電流又は電圧印加用の端子部14aが形成され、チャネル部12の一端部(両端部のうちスピン注入子14に近い端部)には、電流又は電圧印加用の端子部12aが形成されている。

【0024】
スピン回転制御部15は、例えば電圧制御部及び電圧印加用端子を備えている。スピン回転制御部15は、チャネル部12に接続されている。例えば、スピン回転制御部15は、チャネル部12上の領域であって、スピン注入子14とスピン回転子16との間に位置する領域と直接接合されている。スピン回転制御部15は、チャネル部12のスピンの回転方向を制御するために、チャネル部12へ電場又は磁場を印加可能に構成されている。スピン回転制御部15は、例えば略直方体を呈し、チャネル部12の長手方向に直交する方向の幅が例えば10μm以下とされる。また、チャネル部12の長手方向に直交する方向の幅は例えば0.1μm以上であってもよい。なお、ここでは、スピン回転子16は、チャネル部12の長手方向に直交する方向の幅がチャネル部12の線幅以下になるように形成されている。

【0025】
図3は、一実施形態に係るスピンモータを示した斜視図である。図3に示すように、スピンモータ40は、スピン回転部材10とモータ回転子30を備える。モータ回転子30は、強磁性体材料により形成され、スピン回転子16の上方にスピン回転子と離間して対向して配置されている。モータ回転子30は、スピン回転子16の漏洩磁場が伝達される範囲に配置されればよく、スピン回転子16から例えば数10nm以下の範囲に配置される。すなわち、モータ回転子30は、スピン回転子16の磁気モーメントに追従して回転可能な位置に配置されている。モータ回転子30は、例えば略円板状を呈し、その回転軸が基板24に直交するように配置されている。なお、モータ回転子30の形状は略円板状に限られるものではなく、例えば棒状部材等であってもよい。モータ回転子30には、モータ回転子30の回転運動を伝達させる棒状部材等が接続されている。モータ回転子30の直径は、例えば10μm以下とされる。また、モータ回転子30の直径は、例えば、0.1μm以上であってもよい。

【0026】
上記構成を有するスピン回転部材10及びモータ回転子30は、以下のように動作する。図4は、一実施形態のスピンモータ40の動作原理を説明するための概略図である。まず、スピン注入子14の端子部14aとチャネル部12の端子部12aとの間に電流が印加される。これにより、図4に示すように、スピン注入子14の磁化方向と反平行となるスピンがチャネル部12へ注入される。チャネル部12に注入されたスピンは、チャネル部12の両端部へ拡散する。このとき、拡散するスピンとは反平行のスピンがスピン回転子16側からスピン注入子14側に向けて流れる。このため、電荷を伴わないスピン流が、スピン注入子14側からスピン回転子16側へ向けて発生する。チャネル部12に流れるスピンは、スピン軌道相互作用によって歳差運動しており、このスピン軌道相互作用がスピン回転制御部15によって印加された電圧による電界によって制御される。すなわち、チャネル部12に流れるスピンの向きは、スピン回転制御部15の印加電圧によって変更される。ここでは、スピンの向きが、時間に応じて基板面内方向に除々にΔθずつ回転するように変更される。このとき、回転角度として固定値を設定してもよく、例えば、単位時間あたり10°(Δθ=10°)回転するように設定してもよい。あるいは、回転角度を可変値としてもよい。スピン回転子16へ到来するスピン流は、時系列でスピンの向きが基板面内方向にΔθずつ回転されている。チャネル部12のスピンは、スピン回転子16の磁気モーメントにスピントランスファートルク(Spin-Transfer Torque)を与える。このため、スピン流のスピンの向きが時系列で回転させられていることで、スピン回転子16の磁気モーメントが回転する。このとき、図3に示すように、モータ回転子30はスピン回転子16の磁気モーメントに追従して回転する。このように、磁気モーメントの回転を運動エネルギーに変換することでスピンモータ40として駆動させることができる。また、例えば、スピン回転子16の水平断面を楕円形など軸の長さに差がある形状を採用した場合には、長軸方向に磁気モーメントが向きやすくなるため、初期の磁気モーメントの向きを制御することができる。

【0027】
上述したように、一実施形態に係るスピン回転部材10及びスピンモータ40によれば、モータ回転子30を、スピン回転子16の上方に離間して配置するだけで磁気モーメントの回転を運動エネルギーに変換することができる。すなわち、モータ回転子30を複数のコイル等で囲むように配置関係を調整して組み立てる必要がなく、また、モータ回転子30そのものに電流を印加する必要性がないため、簡易な構造のモータとすることができる。

【0028】
また、一実施形態に係るスピン回転部材10及びスピンモータ40によれば、基板24上に積層・エッチング等を行うことにより製造することができるため、従来の半導体技術で容易に製造可能である。

【0029】
また、非磁性金属のスピン拡散長は室温において数100nm程度であるところ、これに比べて半導体はスピン拡散長が1桁以上長い。このため、チャネル部12を半導体材料で形成することにより、スピン注入子14とスピン回転子16とを他の非磁性体を採用した場合に比べて離して形成することができる。したがって、他の非磁性材料を採用した場合に比べて製造工程において厳密な加工精度が要求されることがなく、容易にスピン回転部材10を作成することが可能となる。

【0030】
また、一実施形態に係るスピン回転部材10によれば、チャネル部12を二次元電子ガス層22及び半導体層20で形成することにより、二次元電子ガス層22からスピンが供給されるため、チャネル部12におけるスピンの角運動量の伝搬を効率良く行うことができる。

【0031】
また、一実施形態に係るスピン回転部材10によれば、スピン回転子16は、チャネル部12の長手方向に直交する方向の幅がチャネル部12の線幅以下になるように形成されているため、チャネル部12のスピンの角運動量をスピン回転子16へ効率良く伝搬させることができる。

【0032】
さらに、一実施形態に係るスピン回転部材10によれば、スピン注入子14に近いチャネル部12の端部に電流印加用の端子部12aが形成されていることから、電荷の流れを伴わないスピン流を発生させてスピン回転子16の磁気モーメントを回転させることができる。このため、ジュール熱の発生を抑えることができるため、安定動作可能なスピン回転部材10とすることができる。

【0033】
上述した実施形態は、本発明に係るスピン回転部材及びスピンモータの一例を示すものであり、実施形態に係るスピン回転部材及びスピンモータに限られるものではなく、変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。

【0034】
例えば、上述した実施形態では、スピン注入子14、スピン回転制御部15及びスピン回転子16は、チャネル部12と直接接合されている例を説明したが、スピン注入子14、スピン回転制御部15及びスピン回転子16の少なくとも1つが、チャネル部12と絶縁層を介して接合されていてもよい。このように構成した場合であっても、スピン回転部材10として機能させることができる。

【0035】
また、上述した実施形態では、スピン注入子14及びスピン回転子16がチャネル部12よりも上方に配置される例を説明したが、スピン注入子14及びスピン回転子16は、チャネル部12と少なくとも一部が接触した状態となっていれば、どのように配置されていてもよい。すなわち、スピン注入子14及びスピン回転子16は、チャネル部12の側方に配置されてもよい。また、スピン回転子16はチャネル部12の線幅以上であってもよい。

【0036】
また、上述した実施形態では、スピン回転制御部15としてチャネル部12に電流を印加する例を説明したが、他のスピン回転制御部を採用してもよい。例えば、チャネル部12へ円偏光を照射する照射部をスピン回転制御部15として採用してもよい。なお、この場合、チャネル部12は半導体材料により形成される。このように形成することで、円偏光を用いてスピンの向きを制御することが可能となるため、チャネル部12に接触させる部品点数を少なくすることができる。

【0037】
さらに、スピン注入子14へ印加する電圧値を変更する制御部を、スピン回転制御部15として採用してもよい。強磁性体金属と半導体との界面にはショットキー障壁が形成されており、電子のエネルギーと共鳴準位とが一致したときに電流が大きく流れる。スピン注入子14へ印加する電圧値を変更することで、強磁性体金属/半導体界面内に生成された共鳴準位を変更することができるため、チャネル部12のスピンの向きをスピン注入子への印加電圧で制御することができる。このように形成することで、チャネル部12に接触させる部品点数を少なくすることができる。

【0038】
また、上述した実施形態では、いわゆる非局所手法によって電荷の流れを伴わないスピン流を発生させてスピン回転子16を回転させる例を説明したが、スピン回転子16に近いチャネル部12の端部に電流印加用の端子部12aを形成し、いわゆる局所手法によって電荷の流れを伴うスピン流を発生させてスピン回転子16の磁気モーメントを回転させてもよい。この場合、非局所手法の場合に比べて電流密度を大きくすることができるため、スピントルクを大きくすることが可能となる。よって、効率良くスピン回転子16の磁気モーメントを回転させることができる。

【0039】
また、上述した実施形態では、モータ回転子30は、スピン回転子16と離間し対向して配置される例を説明したが、スピン回転子16とモータ回転子30は離間している場合に限定されない。例えば、スピン回転子16とモータ回転子30とがベアリング等を介して接続されていてもよい。このように構成した場合であっても、スピンモータとして機能させることができる。

【0040】
上述した実施形態では、スピン回転部材10及びスピンモータ40の各構成部材の大きさがマイクロオーダーの部材である場合も含むように説明しているが、各構成部材の大きさをナノオーダーで形成し、ナノスケールのスピン回転部材10及びスピンモータ40としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
スピン回転部材10は、産業上、以下のような利用可能性を有している。スピン回転部材10は、例えば、上述した実施形態に係るスピンモータ40のように、微小モータを駆動するモータ用の動力源として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)や、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)などの分野で利用することができる。またスピン回転部材10及びスピンモータ40は、電子・電気分野、医療関係分野等の機器部品、モータとして使用できる。
【0042】
また、スピン回転部材10は、例えば、遠心分離器の一部品(遠心分離器用の部品)として利用することもできる。スピン回転部材10を用いた遠心分離器は、例えば、回転数の異なる複数のスピン回転子16を配列させ、磁気ビーズを組み込んだ高分子・生体材料等をスピン回転子16の磁気モーメントに追従させて回転させ、遠心力によって分離させる構造としてもよい。
【0043】
また、スピン回転部材10は、例えば、発振器の一部品(発振器用の部品)として利用することもできる。スピン回転部材10を用いた発振器は、例えば、2つの磁気モーメントの向きが一致したときにだけ電流が流れる磁気抵抗効果を利用してもよい。スピン回転子16と非磁性体部材を介して接触させた強磁性体の磁気モーメントの向きと、スピン回転子16の磁気モーメントとの向きとを利用した磁気抵抗効果により、スピン回転子16の回転数に応じて発振させる構造としてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…スピン回転部材、12…チャネル部、14…スピン注入子、15…スピン回転制御部、16…スピン回転子、24…基板、30…モータ回転子、40…スピンモータ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3