TOP > 国内特許検索 > 脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法 > 明細書

明細書 :脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6150294号 (P6150294)
公開番号 特開2014-111576 (P2014-111576A)
登録日 平成29年6月2日(2017.6.2)
発行日 平成29年6月21日(2017.6.21)
公開日 平成26年6月19日(2014.6.19)
発明の名称または考案の名称 脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法
国際特許分類 C07C  51/31        (2006.01)
C07C  55/14        (2006.01)
C07C  55/12        (2006.01)
C07C  55/16        (2006.01)
C07C  55/20        (2006.01)
C07C  55/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 51/31
C07C 55/14
C07C 55/12
C07C 55/16
C07C 55/20
C07C 55/02
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願2013-222940 (P2013-222940)
出願日 平成25年10月28日(2013.10.28)
優先権出願番号 2012241502
優先日 平成24年11月1日(2012.11.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年8月19日(2016.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
発明者または考案者 【氏名】尾野村 治
【氏名】松本 洋平
【氏名】竹本 祐樹
【氏名】岩崎 史哲
審査官 【審査官】水島 英一郎
参考文献・文献 特開2009-184950(JP,A)
特開平08-038909(JP,A)
調査した分野 C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
トリフルオロ酢酸およびN-ヒドロキシイミド化合物、及び酸素の存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を硝酸または硝酸塩で酸化することを特徴とする脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族環状炭化水素化合物を酸化して脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジカルボン酸化合物は、高分子化合物のモノマーとして或は化粧品、塗料の原料として重要な化合物である。その中でも、アジピン酸は、ナイロンやポリエステルの原料として年間200万トン以上が生産される極めて重要な化合物である。アジピン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸の製造方法としては、脂肪族環状二級アルコール化合物の炭素間結合を、酸化的に開裂する方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この方法は、脂肪族環状炭化水素化合物を一旦、脂肪族環状二級アルコール化合物に酸化した後に、脂肪族ジカルボン酸化合物へと変換する必要があった。さらに、この方法では、その他の脂肪族ジカルボン酸化合物が副生成物として大量に生成するという問題があった。
【0004】
そのため、脂肪族環状炭化水素化合物を脂肪族ジカルボン酸化合物に直接変換する方法が、近年、数多く検討されている。例えば、コバルト塩またはルテニウム塩存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を酸素と接触させる方法(例えば、特許文献2、特許文献3参照)、アルコキシナイトライド化合物またはアルコキシナイトレート化合物存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を酸素と接触させる方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。また、イミド化合物およびコバルト錯体またはマンガン錯体の存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を酸素と接触させる方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0005】
しかしながら、脂肪族環状炭化水素化合物をコバルト塩またはルテニウム塩存在下、酸素と接触させる方法や、アルコキシナイトライド化合物もしくはアルコキシナイトレート化合物存在下、酸素と接触させる方法では、反応温度が100℃以上と高温である上に、反応転化率も20%程度と低く、脂肪族ジカルボン酸化合物が主生成物とはなりえていない。
【0006】
また、イミド化合物およびコバルト錯体またはマンガン錯体の存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を酸素と接触させる方法においては、シクロオクタンを例に挙げると、反応転化率94%、収率74%で脂肪族ジカルボン酸化合物が生成するものの、反応温度が100℃と依然高く温和な酸化反応とは言い難い。
【0007】
そのため、比較的温和な酸化反応として、トリフルオロ酢酸水溶液存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を過マンガン酸塩で酸化する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この酸化反応は、室温で反応を行っており、比較的温和条件で酸化をすることができる。
【0008】
しかしながら、この方法は、シクロヘキサンから収率75%でアジピン酸を取得できてはいるが、その収率は消費された原料に基づくとの記載があるにもかかわらず、消費された原料の量、即ち反応転化率の記載は全くなく、本製造方法のシクロヘキサンを基準とした収率は不明である。さらに、この方法は、トリフルオロ酢酸水溶液を使用するため、溶媒量の増加につながり、さらに、系内に水が存在するため、これを除去する操作が煩雑になるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明者等は、さらに検討を加え、室温下、積極的に水を添加しないトルフルオロ酢酸の存在下、過マンガン酸塩と、亜硝酸塩または硝酸塩を用いて脂肪族環状炭化水素化合物を酸化させることで、脂肪族ジカルボン酸化合物が高収率で生成することを見出した(例えば、特許文献6参照)。この方法によれば、温和な条件下で脂肪族ジカルボン酸を高収率で生成することができる。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】米国特許第1921101号明細書
【特許文献2】特開2006-131582号公報
【特許文献3】特開2006-83159号公報
【特許文献4】特開2004-290948号公報
【特許文献5】特開平9-327626号公報
【特許文献6】特開2009-184950号公報
【0011】

【非特許文献1】カナディアン・ジャーナル・ケミストリー 56巻 1273-1278頁(1978年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献6に記載の方法では、酸化剤として過マンガン酸塩を使用するため、反応終了後に二酸化マンガンを副生する。このため、別途、重金属の処理方法を検討する必要があった。特に、工業的にアジピン酸を大量に製造しようとする場合には、このことは重要な問題となるため、改善の余地があった。
【0013】
したがって、本発明の目的は、重金属を使用せず、高収率でしかも温和な条件下で脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる事実に鑑み、本発明者らは温和な条件で脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する方法について鋭意研究を行った。その結果、温和な温度条件下、トルフルオロ酢酸およびN-ヒドロキシイミド化合物の存在下、硝酸または硝酸塩を用いて脂肪族環状炭化水素化合物を酸化させることで、脂肪族ジカルボン酸化合物が高収率で生成することを見出し、発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、トリフルオロ酢酸およびN-ヒドロキシイミド化合物、及び酸素の存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を硝酸または硝酸塩で酸化することを特徴とする脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法である。


【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、極めて温和な条件で、脂肪族環状炭化水素化合物から高収率で脂肪族ジカルボン酸化合物を製造することができる。しかも、重金属を使用しないため、生成物の単離操作が容易となり、工業的利用価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造方法では、脂肪族環状炭化水素化合物を、トリフルオロ酢酸およびN-ヒドロキシイミド化合物の存在下、脂肪族環状炭化水素化合物を硝酸または硝酸塩で酸化して脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する。以下、順を追って説明する。

【0018】
(脂肪族環状炭化水素化合物)
本発明において、原料として用いられる脂肪族環状炭化水素化合物は、目的とする脂肪族ジカルボン酸化合物の種類に応じて、試薬或いは工業原料として入手容易な化合物が何等制限なく使用できる。

【0019】
具体的な脂肪族環状炭化水素化合物としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、メチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、tert-ブチルシクロヘキサン等の5~12員環化合物を挙げることができる。

【0020】
これらの脂肪族環状炭化水素化合物の中でも、生成物が単一化合物となるため、分子構造が対称構造をとるシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン等の脂肪族環状炭化水素化合物が本製造方法において好適に用いられる。

【0021】
(トリフルオロ酢酸)
本発明の方法は、トリフルオロ酢酸の存在下で実施される。このトリフルオロ酢酸は、溶媒(反応溶媒)を兼ねて用いられる。そのため、本発明においては、その他の有機溶媒を使用することもできるが、トリフルオロ酢酸を反応溶媒として使用することができる。トリフルオロ酢酸のみを反応溶媒として使用する場合には、後処理等の操作性を改善できる。

【0022】
本発明に用いられるトリフルオロ酢酸の量は、使用する原料、反応装置等に応じて適宜決定すればよい。ただし、使用量が少なすぎると酸化反応の収率が低下する傾向にあり、一方、使用量が多すぎると後処理操作が煩雑になる傾向がある。そのため、通常、トリフルオロ酢酸は、トリフルオロ酢酸と脂肪族炭化水素化合物の合計量を基準として、脂肪族環状炭化水素化合物の濃度が0.05~60質量%となる量で使用することが好ましく、さらに0.1~30質量%となる量で使用することが好ましい。

【0023】
本発明において使用されるトリフルオロ酢酸は、工業的或いは試薬として入手容易な化合物が何等制限なく用いられる。

【0024】
(N-ヒドロキシイミド化合物)
本発明の方法は、N-ヒドロキシイミド化合物を必須成分とし、硝酸または硝酸塩により上記脂肪族環状炭化水素化合物を酸化するものである。つまり、本発明においては、上記脂肪族環状炭化水素化合物を酸化するに際し、N-ヒドロキシイミド化合物と硝酸、またはN-ヒドロキシイミド化合物と硝酸塩とを使用する。また、N-ヒドロキシイミド化合物と、硝酸および硝酸塩の両方を使用することもできる。このように組み合わせたものを使用することにより、温和な条件下で酸化反応を行うことができ、さらに、脂肪族ジカルボン酸化合物の収率を高めることができる。

【0025】
本発明において、N-ヒドロキシイミド化合物は、分子内に下記式

【0026】
【化1】
JP0006150294B2_000002t.gif

【0027】
で示される結合を有する化合物を指す。このN-ヒドロキシイミド化合物は、工業的或いは試薬として入手容易な化合物が何等制限なく用いられる。中でも、該結合の両末端に結合する基が一緒になって環を形成する、環状N-ヒドロキシイミド化合物を使用することが好ましい。

【0028】
具体的なN-ヒドロキシイミド化合物を例示すれば、N-ヒドロキシマレイン酸イミド、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N-ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N-ヒドロキシヘキサブロモフタルイミド、4-メチル-N-ヒドロキシフタルイミド、4-クロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-ニトロ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-メトキシカルボニル-N-ヒドロキシフタルイミド、4-エトキシカルボニル-N-ヒドロキシフタルイミド、4-ヘキシロキシカルボニル-N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘット酸イミド、N-ヒドロキシハイミック酸イミド、N-ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N’-ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N,N’-ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N’-ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミド等を挙げることができる。これらのN-ヒドロキシイミド化合物の中でも、特に高い収率を与えるN-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4-メチル-N-ヒドロキシフタルイミド、4-クロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-ニトロ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-メトキシカルボニル-N-ヒドロキシフタルイミド、4-エトキシカルボニル-N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N’-ジヒドロキシピロメリット酸イミド等が特に好適に使用される。

【0029】
本発明において、N-ヒドロキシイミド化合物の使用量は、原料とする脂肪族環状炭化水素化合物、その他、反応の雰囲気によって異なるため一概には限定できないが、少な過ぎると酸化反応が進行し難く、一方、多過ぎると後処理操作が煩雑になる傾向がある。そのため、原料として用いる脂肪族環状炭化水素化合物1モルに対して、0.01~1モルとすることが好ましく、さらに0.05~0.5モルとすることが好ましい。

【0030】
(硝酸または硝酸塩)
本発明に用いられる硝酸としては、工業的或いは試薬として入手容易な化合物が何等制限なく用いられる。使用する硝酸の濃度としては、特に制限されるものではないが、濃度が低すぎると硝酸の酸化力が落ちるため、通常、50質量%以上の濃度の硝酸を使用することが好ましい。また、濃度の上限は、特に制限されるものではないが、工業的に入手が容易であるという理由から、98質量%である。

【0031】
また、本発明に用いられる硝酸塩としては、工業的或いは試薬として入手容易な化合物が何等制限なく用いられる。これらを具体的に例示すると、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウムセリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸セシウム、硝酸ニッケル、硝酸サマリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸鉛等を挙げることができる。本発明においては、これらを単独で使用することもできるし、2種類以上のものを混合して使用することもできる。以上の硝酸塩の中でも、脂肪族ジカルボン酸化合物の収率を特に高めるには、硝酸アンモニウムおよび硝酸アルカリ金属塩を使用することが好ましく、その中でも、硝酸アンモニウムを使用することが最も好ましい。

【0032】
本発明に用いられる硝酸または硝酸塩の使用量は、原料とする脂肪族環状炭化水素化合物、反応の雰囲気等に応じて適宜決定してやればよい。ただし、使用量が少なすぎると酸化反応が進行し難い傾向にあり、一方、使用量が多すぎると後処理操作が煩雑になる傾向がある。そのため、硝酸(HNO)または硝酸塩の量は、原料として用いる脂肪族環状炭化水素化合物1モルに対して、0.5~10モルとすることが好ましく、さらに0.7~7モルとすることが好ましい。なお、硝酸と硝酸塩、硝酸と複数の硝酸塩、複数の硝酸塩を使用する場合には、それらの合計使用量が0.5~10モルとなることが好ましい。

【0033】
(反応条件)
本発明において、反応温度は、特に制限されるものではないが、温度が高すぎると酸化反応の制御が困難になる傾向にあり、一方、温度が低すぎると反応時間が長くなる傾向にあるため、0~60℃であることが好ましく、さらに5~40℃であることが好ましい。

【0034】
本発明において、反応時間は、原料となる脂肪族環状炭化水素化合物の種類、硝酸、硝酸塩の種類、組み合わせに等に応じて、脂肪族環状炭化水素化合物が十分に反応できる時間を決定すればよい。通常、0.1~30時間であればよく、好ましくは0.5~25時間、さらに好ましくは5~20時間である。なお、この反応時間とは、脂肪族環状炭化水素化合物、トリフルオロ酢酸、N-ヒドロキシイミド化合物、硝酸および/または硝酸塩との全てが混合された時点を反応開始として測定したものを指す。

【0035】
本発明の方法は、常圧、減圧、加圧のいずれの状態でも実施可能である。また、本発明の方法は、酸素、大気等の酸素存在下だけでなく、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性気体存在下でも実施可能である。中でも、酸素存在下で実施することにより、硝酸または硝酸塩の使用量が低減でき、反応時間も短縮できる傾向にあるため、通常は、大気または酸素雰囲気下で実施するのが一般的である。

【0036】
本発明においては、以上のような条件において、トリフルオロ酢酸およびイミド化合物の存在下、原料である脂肪族環状炭化水素化合物と、硝酸または硝酸塩とを混合することにより、脂肪族環状炭化水素化合物を酸化させて脂肪族ジカルボン酸化合物とする。得られる脂肪族ジカルボン酸化合物は、原料となる脂肪族環状炭化水素化合物の構造によって決定されるものであり、脂肪族環状炭化水素化合物が5~12員環化合物である場合には、それに対応する脂肪族ジカルボン酸化合物が得られる。より具体的には、シクロヘキサンを原料とした場合には、1,4-ブタンジカルボン酸(アジピン酸)を得ることができる。

【0037】
(単離精製方法)
このようにして得られた脂肪族ジカルボン酸化合物の単離精製方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法が採用される。例えば、先ず、反応終了後、反応溶媒であるトリフルオロ酢酸を室温下、減圧留去した後、残渣に5質量%程度の炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を加えて塩基性にして、塩化メチレン等の非水溶性有機溶媒で抽出し、有機溶媒溶解成分を除去する。得られた水溶液に10質量%の塩酸等の酸性水溶液を加えて水溶液を酸性にした後、酢酸エチル等の非水溶性有機溶媒で抽出し、有機層(非水溶性有機溶媒層)を水で洗浄する。その後、硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて有機層を乾燥した後、乾燥剤を濾別して得られた濾液を減圧留去することにより、目的物である脂肪族ジカルボン酸化合物を単離精製することができる。

【0038】
以上のような方法で単離精製された脂肪族ジカルボン酸化合物は、分子構造が対称構造をとる脂肪族環状炭化水素化合物を原料とした場合には単一化合物が得られ、本発明の方法は、従来から知られている硝酸酸化のように複数の脂肪族ジカルボン酸化合物をほとんど生じないのが最大の特徴となっている。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等制限させるものではない。尚、本実施例の収率はすべて出発原料の脂肪族環状炭化水素化合物の使用量を基準としたものである。
【実施例】
【0040】
実施例1
10mlの蓋付き試験管に脂肪族環状炭化水素化合物としてシクロヘキサン(和光純薬試薬特級)84.2mg(1.0mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(和光純薬試薬特級)32.6mg(0.2mmol)をとり、溶媒としてのトリフルオロ酢酸(和光純薬試薬特級)1mlを加えて溶解させた。次に、70質量%硝酸0.190ml(硝酸(HNO)のモル数3.0mmol)を加えた後、大気雰囲気下、室温(23℃)で18時間反応させた。反応終了後、室温下で減圧度30mmHgの条件でトリフルオロ酢酸および水の大部分を留去した後、残渣に5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて塩基性にした後、塩化メチレン(10ml×3)で抽出した。残った水溶液に10質量%の塩酸を加えて酸性にした後、酢酸エチルで(10ml×3)で抽出した。有機層を10mlの水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、硫酸マグネシウムを濾過によって除去した後、酢酸エチルを減圧留去したところ、1,4-ブタンジカルボン酸125mg(収率86%)を取得した。
【実施例】
【0041】
実施例2~6
トリフルオロ酢酸の量を表1に示した量に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1示した。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP0006150294B2_000003t.gif
【実施例】
【0043】
実施例7~8
70質量%硝酸の使用量を代え、表2に示した硝酸(HNO)の使用量(モル数)に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表2に示した。
【実施例】
【0044】
【表2】
JP0006150294B2_000004t.gif
【実施例】
【0045】
実施例9~10
N-ヒドロキシフタルイミドの量を表3に示した量に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表3に示した。
【実施例】
【0046】
【表3】
JP0006150294B2_000005t.gif
【実施例】
【0047】
実施例11~13
70質量%硝酸に代えて硝酸アンモニウム(使用量3.0mmol)を用い、N-ヒドロキシフタルイミドの量を表4に示した量にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表4に示した。
【実施例】
【0048】
【表4】
JP0006150294B2_000006t.gif
【実施例】
【0049】
実施例14~17
シクロヘキサンに代えて、表5に示した脂肪族環状炭化水素化合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表5に示した。
【実施例】
【0050】
【表5】
JP0006150294B2_000007t.gif
【実施例】
【0051】
実施例18~27
N-ヒドロキシフタルイミドに代えて、表6に示したN-ヒドロキシイミド化合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表6に示した
【実施例】
【0052】
【表6】
JP0006150294B2_000008t.gif
【実施例】
【0053】
実施例28
10mlの蓋付き試験管に脂肪族環状炭化水素化合物としてシクロヘプタン(和光純薬試薬特級)98.1mg(1.0mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(和光純薬試薬特級)48.9mg(0.3mmol)をとり、溶媒としてのトリフルオロ酢酸(和光純薬試薬特級)1mlを加えて溶解させた。次に、70質量%硝酸0.253ml(硝酸(HNO)のモル数4.0mmol)を加えた後、大気雰囲気下、室温(23℃)で24時間反応させた。反応終了後、室温下で減圧度30mmHgの条件でトリフルオロ酢酸および水の大部分を留去した後、残渣に5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて塩基性にした後、塩化メチレン(10ml×3)で抽出した。残った水溶液に10質量%の塩酸を加えて酸性にした後、酢酸エチルで(10ml×3)で抽出した。有機層を10mlの水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、硫酸マグネシウムを濾過によって除去した後、酢酸エチルを減圧留去したところ、1,5-ペンタンジカルボン酸136mg(収率83%)を取得した。
【実施例】
【0054】
実施例29
N-ヒドロキシフタルイミドに代えてN-ヒドロキシトリメリット酸(和光純薬試薬特級)を使用した以外は実施例28と同様の操作を行った、その結果、1,5-ペンタンジカルボン酸155mg(収率97%)を取得した。
【実施例】
【0055】
比較例1
トリフルオロ酢酸を用いず、70質量%硝酸を合計1.190ml(HNOのモル数)用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的とするアジピン酸の収量は17.0mg(収率11%)に留まった。
【実施例】
【0056】
比較例2
トリフルオロ酢酸に代えて、酢酸を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的とするアジピン酸は全く取得できなかった。
【実施例】
【0057】
比較例3
70質量%硝酸を用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的とするアジピン酸は全く取得できなかった。