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明細書 :熱電材料及びその製造方法並びにそれを用いた熱電変換モジュール

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5424436号 (P5424436)
登録日 平成25年12月6日(2013.12.6)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
発明の名称または考案の名称 熱電材料及びその製造方法並びにそれを用いた熱電変換モジュール
国際特許分類 H01L  35/32        (2006.01)
H01L  35/14        (2006.01)
H01L  35/26        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
FI H01L 35/32 A
H01L 35/14
H01L 35/26
H01L 35/34
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2013-543430 (P2013-543430)
出願日 平成25年5月15日(2013.5.15)
国際出願番号 PCT/JP2013/063580
優先権出願番号 2012124940
優先日 平成24年5月31日(2012.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年9月20日(2013.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中村 芳明
【氏名】五十川 雅之
【氏名】上田 智広
【氏名】吉川 純
【氏名】酒井 朗
【氏名】細野 秀雄
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100100479、【弁理士】、【氏名又は名称】竹内 三喜夫
審査官 【審査官】小川 将之
参考文献・文献 特開平5-343746(JP,A)
特開2005-303249(JP,A)
特開2002-76452(JP,A)
特開平10-209508(JP,A)
特開2006-190773(JP,A)
調査した分野 H01L 35/32
H01L 35/14
H01L 35/26
H01L 35/34
H01L 29/06
要約 熱電材料は、半導体基板と、基板上に形成された半導体酸化膜と、酸化膜上に設けられた熱電層とを備えている。半導体酸化膜には第1ナノ開口部が形成され、熱電層は、複数の半導体ナノドットが粒子充填構造を有するように第1ナノ開口部上に積み上がった形をとり、複数の半導体ナノドットの少なくとも一部は、その表面に形成された第2ナノ開口部を有し、かつ、第2ナノ開口部を介して互いに結晶方位を揃えて連結している。この熱電材料は、半導体基板を酸化し、その上に半導体酸化膜を形成する工程と、酸化膜に第1ナノ開口部を形成する工程と、第1ナノ開口部上に複数の半導体ナノドットをエピタキシャル成長させて積み上げる工程を経て製造される。
このような構成により、熱電変換性能に優れた熱電材料が実現する。
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体基板と、
半導体基板上に形成された半導体酸化膜と、
半導体酸化膜上に設けられた熱電層とを備え、
半導体酸化膜には第1ナノ開口部が形成され、
熱電層は、複数の半導体ナノドットが粒子充填構造を有するように該第1ナノ開口部上に積み上がった形をとり、
複数の半導体ナノドットの少なくとも一部は、その表面に形成された第2ナノ開口部を有し、かつ、該第2ナノ開口部を介して互いに結晶方位を揃えて連結していることを特徴とする熱電材料。
【請求項2】
半導体ナノドットは、表面に設けられたポテンシャルバリア層を有し、
第2ナノ開口部は、該ポテンシャルバリア層に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の熱電材料。
【請求項3】
半導体ナノドットは、Si、Ge、SiGe並びにMg、Fe及びMnのシリコン系化合物から成る群から選択される材料で構成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱電材料。
【請求項4】
ポテンシャルバリア層は、SiOで構成されたことを特徴とする、請求項2に記載の熱電材料。
【請求項5】
ポテンシャルバリア層は、Siで構成され、かつ、表面にSiOで構成された酸化層を有することを特徴とする、請求項2に記載の熱電材料。
【請求項6】
半導体ナノドットは、2nm以上50nm以下の直径を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱電材料。
【請求項7】
半導体ナノドットは、1011cm-2以上の面内密度を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱電材料。
【請求項8】
ポテンシャルバリア層は、3nm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項2に記載の熱電材料。
【請求項9】
半導体ナノドットは、p型又はn型のドーパントを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱電材料。
【請求項10】
交互に配設され且つ電気的に直列接続されたp型熱電素子及びn型熱電素子を備えた熱電変換モジュールであって、
p型熱電素子及びn型熱電素子は、請求項9に記載の熱電材料を有し、
半導体デバイスが形成される半導体基板の主面と反対側の主面に設けられたことを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項11】
半導体基板を準備する準備工程と、
半導体基板を酸化し、該半導体基板上に半導体酸化膜を形成する酸化工程と、
半導体酸化膜に第1ナノ開口部を形成する開口工程と、
第1ナノ開口部上に、半導体材料で構成される複数の半導体ナノドットをエピタキシャル成長させて積み上げる成長工程とを含むことを特徴とする、熱電材料の製造方法。
【請求項12】
成長工程では、半導体ナノドットに第2ナノ開口部を形成し、該第2ナノ開口部を介して複数の半導体ナノドットを連結させることを特徴とする、請求項11に記載の熱電材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノドットを利用した熱電材料に関し、具体的には、シリコン、ゲルマニウム又はシリコン系半導体で構成されたナノドットを備えた熱電材料、熱電材料を利用した熱電変換モジュール、及び熱電材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷を低減するために、エネルギーを有効活用するための熱電変換技術が注目されている。そこで従来、ゼーベック効果を利用した熱電変換技術に使用する熱電材料として、BiTe、PbTe、SiGe等のレアメタルを用いた高性能熱電材料が開発されてきた。しかし、これらはレアメタルを使用するものであり、環境負荷や資源リスクの観点から好ましくないという問題があった。
【0003】
ここで、熱電変換性能を評価するときには、一般に無次元性能指数ZT(=SσT/k)が用いられる。Sはゼーベック係数、σは電気伝導度、kは熱伝導率、Tは絶対温度を表す。性能指数ZTが大きいほど、熱電変換性能が優れている。性能指数ZTを示す式からわかるように、熱電変換性能を向上させるためには、ゼーベック係数S及び電気伝導度σが大きく、熱伝導率kが小さい熱電材料を使用することが好ましい。
【0004】
前述のレアメタルの使用により生じる問題を解消するためには、Siに代表されるユビキタス元素を使用した熱電材料が好ましい。しかし、Siの場合、ゼーベック係数S、電気伝導度σは充分大きいが、熱伝導率kが大きいという問題があった。
【0005】
一方、熱電材料としてナノ構造を有する材料を使用した場合、フォノン散乱の増大等により熱伝導率kが低減し、また、低次元ナノ構造を利用することにより量子効果が得られ、パワーファクタ(Sσ)と呼ばれる指数が増加することが報告されている(非特許文献1~3)。
【0006】
そこで、ナノワイヤ、ナノコンポジット、ナノポーラス等のナノ構造を利用した高性能熱電材料を開発する研究が行われている(非特許文献4~8)。
【0007】
また、ナノドット構造を有する材料により、熱伝導率が低減するという報告もされている(非特許文献9)。そして、シリコン基板上に形成される極薄シリコン酸化膜にナノ開口を形成し、そこにナノドットのアイランドをエピタキシャル成長させ、光デバイスとして用いる試みがなされている(非特許文献10~12)。さらに、ストランスキ・クラスタノフ(SK)成長を用いてSKドット超格子をエピタキシャル成長する手法も試みられている。
【0008】
同様に、特許文献1では、Si等の材料で構成されたスペーサ層で間を埋めて、シリコン系化合物で構成されるナノドットをエピタキシャルに積層する半導体光デバイスの製造方法が開示されており、かかるデバイスを熱電変換デバイスとして使用することが示唆されている(段落[0042]等)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2005-303249号公報
【0010】

【非特許文献1】L. D. Hicks, et al., "Thermoelectric figure of merit of a one-dimensional conductor", Physical review B, VOL 47, NUMBER 24, 15 JUNE 1993, 16631-16634.
【非特許文献2】HIROMICHI OHTA1, et al., "Giant thermoelectric Seebeck coefficient of a two-dimensional electron gas in SrTiO3", nature materials VOL 6, FEBRUARY 2007, 129-134.
【非特許文献3】L. D. Hicks, et al., "Effect of quantum-well structures on the thermoelectric figure of merit", Physical review B, VOL 47, NUMBER 19, 15 MAY 1993, 12727-12731.
【非特許文献4】Allon I. Hochbaum, et al., "Enhanced thermoelectric performance of rough silicon nanowires", nature letters, Vol 451, 10 January 2008, 06381.
【非特許文献5】Sabah K. Bux, et al., "Nanostructured Bulk Silicon as an Effective Thermoelectric Material", Advanced Functional Materials 2009, 19, 2445-2452.
【非特許文献6】Giri Joshi, et al., "Enhanced Thermoelectric Figure-of-Merit in Nanostructured p-type Silicon Germanium Bulk Alloys", American Chemical Society NANO LETTERS 2008 Vol. 8, No.12, 4670-4674.
【非特許文献7】J.-H. Lee, et al., "Lattice thermal conductivity of nanoporous Si: Molecular dynamics study", APPLIED PHYSICS LETTERS 91, 223110 2007.
【非特許文献8】G Geseley, et al., "Temperature-dependent thermal conductivity of porous silicon", J. Phys. D: Appl. Phys. 30 (1997) 2911-2916.
【非特許文献9】G. Pernot, et al., "Precise control of thermal conductivity at the nanoscale through individual phonon-scattering barriers", NATURE MATERIALS, VOL 9 , JUNE 2010, 491-495.
【非特許文献10】Alexander A. Shklyaev, et al., "Visible photoluminescence of Ge dots embedded in SiO/SiO2 matrices", APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 80, NUMBER 8, 25 FEBRUARY 2002, 1432-1434.
【非特許文献11】Alexander A. Shklyaev, et al., "High-density ultrasmall epitaxial Ge islands on Si(111) surfaces with a SiO2 coverage", PHYSICAL REVIEW B VOLUME 62, NUMBER 3 15 JULY 2000-I, 1540-1543.
【非特許文献12】Alexander A. Shklyaev, et al., "Three-dimensional Si islands on Si(001) surfaces", PHYSICAL REVIEW B, VOLUME 65, 045307.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、低次元ナノ構造化により、熱電変換効率に優れた熱電材料が得られる可能性がある。しかし、1次元構造を有するナノワイヤの場合、その構造上、熱電材料として利用するのは難しい。また、薄膜中にナノ構造を含むナノコンポジットの場合、ナノ構造の結晶方位、サイズ、ナノ構造間の間隔等が不揃いなため制御性に乏しく、従って電気伝導度が低下し、更には量子効果を利用することも難しい。さらに、ナノポーラス構造の場合、ナノ構造特有の量子効果を用いた性能向上を利用することが困難である。そして、エピタキシャル成長技術を用いたSKドット超格子技術では、ナノドットサイズとナノドット間隔のナノメートルスケールの縮小化、ナノドット面内密度の増大が困難であり、電気伝導度がそれほど増大しないという問題や高性能化するのが難しいという問題が生じる。
【0012】
本発明は、熱電変換性能に優れた熱電材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、
半導体基板と、
半導体基板上に形成された半導体酸化膜と、
半導体酸化膜上に設けられた熱電層とを備えた熱電材料であって、
半導体酸化膜には第1ナノ開口部が形成され、
熱電層は、複数の半導体ナノドットが粒子充填構造を有するように該第1ナノ開口部上に積み上がった形をとり、
複数の半導体ナノドットの少なくとも一部は、その表面に形成された第2ナノ開口部を有し、かつ、該第2ナノ開口部を介して互いに結晶方位を揃えて連結している。
【0014】
本発明の第1態様において、半導体ナノドットは、表面に設けられたポテンシャルバリア層を有し、
第2ナノ開口部は、該ポテンシャルバリア層に形成されることが好ましい。
【0015】
本発明の第1態様において、半導体ナノドットは、Si、Ge、SiGe並びにMg、Fe及びMnのシリコン系化合物から成る群から選択される材料で構成されることが好ましい。
【0016】
本発明の第1態様において、ポテンシャルバリア層は、SiOで構成されることが好ましい。
【0017】
本発明の第1態様において、ポテンシャルバリア層は、Siで構成され、かつ、表面にSiOで構成された酸化層を有することが好ましい。
【0018】
本発明の第1態様において、半導体ナノドットは、2nm以上50nm以下の直径を有することが好ましい。
【0019】
本発明の第1態様において、半導体ナノドットは、1011cm-2以上の面内密度を有することが好ましい。
【0020】
本発明の第1態様において、ポテンシャルバリア層は、3nm以下の厚さを有することが好ましい。
【0021】
本発明の第1態様において、半導体ナノドットは、p型又はn型のドーパントを含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明の第2態様は、
交互に配設され且つ電気的に直列接続されたp型熱電素子及びn型熱電素子を備えた熱電変換モジュールであって、
p型熱電素子及びn型熱電素子は、本発明の第1態様の熱電材料を有し、
半導体デバイスが形成される半導体基板の主面と反対側の主面に設けられる。
【0023】
また、本発明の第3態様は、
熱電材料の製造方法であって、
半導体基板を準備する準備工程と、
半導体基板を酸化し、該半導体基板上に半導体酸化膜を形成する酸化工程と、
半導体酸化膜に第1ナノ開口部を形成する開口工程と、
第1ナノ開口部上に、半導体材料で構成される複数の半導体ナノドットをエピタキシャル成長させて積み上げる成長工程とを含む。
【0024】
本発明の第3態様において、
成長工程では、半導体ナノドットに第2ナノ開口部を形成し、該第2ナノ開口部を介して複数の半導体ナノドットを連結させることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、半導体ナノドット同士が互いに結晶方位を揃えて連結することにより電気伝導度が向上する。また、ナノドット自体の構造に起因して熱伝導率が低減し、さらに、ナノ構造に起因する量子効果が得られるため、パワーファクタが増加する。これらにより、熱電変換性能に優れた熱電材料、更には、当該熱電材料を利用した熱電変換素子を備えた熱電変換モジュールが実現することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による熱電材料を示す斜視図である。
【図2】図1のA-A線断面図である。
【図3】熱電材料の製造方法の開口工程を示す図であり、図3Aは膜開口部の形成前を、図3Bは形成後をそれぞれ示す。
【図4】熱電材料の製造方法の成長工程を示す図であり、図4Aはナノドットの作成を、図4Bはバリア層への層開口部の形成を、図4Cは新たなナノドットの作成をそれぞれ示す。
【図5】シリサイドで構成されるナノドットの作成を示す図である。
【図6】図6Aは、エピタキシャル成長したSiナノドットの高分解能断面TEM画像であり、図6Bは、図6Aにおいて四角で囲まれた部分の拡大図である。
【図7】本発明の実施形態2による熱電変換モジュールを示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態2による熱電変換モジュールを示す斜視図である。
【図9】熱電変換モジュールの代替の構成を示す、図7に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態1.
まず、図1、図2を用いて、本発明の実施形態1による熱電材料10について説明する。
図1、図2に示すように、本実施形態による熱電材料10は、シリコン基板1と、シリコン基板1上に形成されたシリコン酸化膜2と、シリコン酸化膜2上に設けられた熱電層3とを備える。シリコン基板1は、単結晶シリコン基板を用いることが好ましい。シリコン酸化膜2は、SiOの単分子膜又は二分子膜程度の厚さを有する極薄酸化膜であることが好ましい。熱電層3は、ポテンシャルバリア層(以下、バリア層)5に包囲された複数のナノドット4が粒子充填構造を有するように積み上がった形で構成される。

【0028】
ここで、本明細書において、ナノドットとは、ナノメートルオーダのサイズを有する略球状又は略楕円球状のナノ結晶をいう。ただし、製造工程によっては球状又は楕円球状から大きく離れた形状をとることがある。また、「複数の」とは、縦方向で2個以上のナノドットが積み上がっていることを指す。例えば素子高さ数十μm程度の熱電変換素子として使用する場合には、ナノドット4が縦方向で10個~10個程度積み上がった熱電材料を用いることができる。

【0029】
また、図2の断面図に示すように、シリコン酸化膜2には酸化膜開口部(以下、単に膜開口部という)2aが形成されており、ナノドット4は膜開口部2a上に設けられている。さらに、バリア層5にもバリア層開口部(以下、単に層開口部という)5aが形成されており、複数のナノドット4の少なくとも一部は、層開口部5aを介して互いに結晶方位を揃えて連結している。つまり、複数のナノドット4は、シリコン酸化膜2上にエピタキシャル成長し、積み上がった形で構成される。

【0030】
また、前述のように、ナノドット4は粒子充填構造を有するように積み上がっている。ここで、粒子充填構造は、規則的な充填構造でもよく、或いはランダム充填構造でもよい。更には、一部が規則的な充填構造で、一部がランダム充填構造を有してもよい。ナノドット4は、熱電層3中でのナノドット4の充填率を向上させる観点では、膜開口部2a上に直線状に積み上がるのが好ましい。ただし、図2に示すように、1つのバリア層5に複数の層開口部5aが形成され、ナノドット4が樹状に或いはランダムに成長した構成を有してもよい。

【0031】
さらに、複数のナノドット4の間には空隙が形成されるが、その空隙に熱電材料10の製造過程で生じるシリコン等の材料から成る部分が含まれてもよい。

【0032】
ナノドット4は、Si、Ge若しくはSiGe、又は、Mg、Fe、Mn等のシリサイドで構成される。これらのシリサイドの化学式は、それぞれMgSi、β-FeSi、MnSiで表される。また、ナノドット4は、量子効果を顕著に発揮させるために、好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは2nm以上50nm以下の直径を有する。また、ナノドット4は、電気伝導率σを向上させるために、好ましくは10cm-2以上1013cm-2以下、さらに好ましくは1011cm-2以上の面内密度を有する。さらに、向上した電気伝導率σを維持するために、各ナノドット4のサイズは略均一であることが好ましい。

【0033】
また、バリア層5は、ナノドット4を構成する材料よりもバンドギャップの大きい材料で構成する。例えば、ナノドット4をSiで構成した場合、バリア層5はSiOで構成することができ、ナノドット4をGe、SiGe又はシリサイドで構成した場合、バリア層5はSiやSiGeで構成することができる。尚、バリア層5が、例示した上記材料のうちSiO以外の材料で構成された場合には、バリア層5の最表面にはSiOで構成された表面酸化層(不図示)が形成される。そして、バリア層5は、ナノドット4を構成する材料の熱電特性を充分に発揮させるために、3nm以下の厚さを有することが好ましい。

【0034】
次に、図3を用いて、本発明の実施形態1による熱電材料10の製造方法を、ナノドット4がSiで構成される場合について説明する。
本実施形態による熱電材料10の製造方法は、シリコン基板1を準備する準備工程S1と、シリコン基板1の基板表面を酸化してシリコン酸化膜2を形成する酸化工程S2と、シリコン酸化膜2に膜開口部2aを形成する開口工程S3と、膜開口部2a上にSiで構成されるナノドット4をエピタキシャル成長させて積み上げる成長工程S4と、等を含む。

【0035】
酸化工程S2では、例えば酸素分圧が2×10-4Pa、600℃のような低酸素分圧・高温条件でシリコン基板1の表面を酸化し、1分子層又は2分子層程度の厚さを有するシリコン酸化膜2を形成する。

【0036】
次に、開口工程S3では、高真空下(例えば10-5Pa以下)、例えば500℃以上の条件で、図3Aに示すシリコン蒸発源20によって発生したSi原子線20aをシリコン酸化膜2に照射する。この場合、下記の式(1)に示す反応、
Si+SiO→2SiO↑ …(1)
によりシリコン酸化膜2が消失し、SiOが昇華して、図3Bに示すように膜開口部2aが形成される。

【0037】
次に、成長工程S4では、まず、図4Aに示すように、Si原子線20aをシリコン酸化膜2に照射する。そして、膜開口部2a上が形成されて露出したシリコン基板1の表面におけるSiのダングリングボンドにSi原子を蒸着させ、ナノドット4を作成する。

【0038】
続いて、Si原子線20aの照射を中止し、Siで構成されるナノドット4の酸化により、ナノドット4の周囲にSiOで構成されるバリア層5を設ける。次に、図4Bに示すように、膜開口部2aを形成したときと同様に、Si原子線20aの照射を再開し、上記の式(1)に従って層開口部5aを形成する。このとき、膜開口部2aを形成した開口工程S3と同じ真空条件・温度条件で層開口部5aの形成を行ってもよいし、例えばバリア層5のサイズや組成を考慮して、異なる真空条件・温度条件で形成を行ってもよい。

【0039】
最後に、図4Cに示すように、層開口部5a上にSi原子を蒸着させ、新たなナノドット4を作成する。このとき、ナノドット4の多くは、層開口部5aを介して結晶方位が揃った状態で連結している。つまり、以上の図4A~図4Cの過程が繰り返されることにより、複数のナノドット4が、シリコン酸化膜2に形成された膜開口部2a上にエピタキシャル成長し、積み上がった構成となる。

【0040】
ここで、開口工程S3と成長工程S4とを分けて説明したが、ナノドット4をSiで作成する場合には、開口工程S3での膜開口部2aの形成及び成長工程S4でのナノドット4の作成は、Si原子線20aのシリコン酸化膜2への照射により連続的に進行することとなる。

【0041】
本実施形態では、膜開口部2aをSi原子線20aの照射によって形成したが、ゲルマニウム蒸発源(不図示)によって発生したGe原子線の照射によって形成することも可能である。その場合、下記の式(2)に示す反応、
Ge+SiO→SiO↑+GeO↑ …(2)
によりシリコン酸化膜2が消失し、SiO及びGeOが昇華して膜開口部2aが形成される。

【0042】
また、本実施形態では、ナノドット4がSiで構成される場合について説明したが、ナノドット4がSiGeやシリサイド等で構成される場合には、複数の蒸発源を用いて開口工程S3及び成長工程S4を実施する。例えば、ナノドット4を鉄シリサイドで構成する場合、図5に示すように、シリコン蒸発源20によって発生するSi原子線20aにより膜開口部2aを形成し、Si原子線20aと、鉄蒸発源22によって発生するFe原子線22aとを、例えば250℃~600℃の雰囲気温度で照射することにより、鉄シリサイドで構成されるナノドット4を作成することができる。マンガンシリサイド及びマグネシウムシリサイドで構成されるナノドットについても、同様の条件で作成することができる。

【0043】
さらに、ナノドット4の作成後、バリア層5を構成するSi、SiGe、シリサイド等の材料の原子線を照射することにより、所望の材料で構成されたバリア層5を設けることができる。このように、バリア層5がSiO以外の材料で構成された場合、バリア層5を酸化して表面にSiOで構成された表面酸化層を形成し、続いて前述の通り、Si原子線20a(Ge原子線)を照射し、上記式(1)又は(2)に従って層開口部5aを形成する。

【0044】
図6Aは、上述の方法で製造した熱電材料の熱電層部分の高分解能断面TEM画像であり、単結晶シリコン基板上にエピタキシャル成長したSiナノドット断面を示している。ナノドットの大きさは、直径約3nmとなるように作成した。SiOで構成されるバリア層は、1、2分子程度、即ち1nm未満の厚さを有するため視認することはできない。一方、図6Aにおいて四角で囲まれた部分の拡大図である図6Bでは、丸囲み部分にSiで構成される略球状のナノドットが作成されていることがわかる。また、丸囲み部分同士の間には空隙が生じており、ナノドットがランダムに広がって積み上がっていることがわかる。

【0045】
このように製造した熱電材料の熱伝導率kを2ω法によって測定した。つまり、熱電材料に周波数ωの電圧を印加すると、発生するジュール熱が周波数2ωで変化し、従って熱電材料の電気抵抗値も周波数2ωで変化することを利用して、出力電圧の振幅を測定し、熱伝導率kを測定した。

【0046】
その結果、k=0.67±0.11W/mKという非常に小さい熱伝導率kの値が得られた。バルクのSiは、約150W/mK程度の熱伝導率kを有することから、本実施形態のようにナノドットを積み上げた構成の熱電層とすることで、熱伝導率kの値が大きく低減することがわかる。また、一般に、材料をアモルファス化することにより、フォノン散乱が増大し、熱伝導率kの値が極小化することが知られている。本実施形態による製造方法で製造した熱電材料の熱伝導率kの値は、アモルファスシリコンの熱伝導率約2.0W/mKを大きく下回った。

【0047】
以上、本実施形態では、複数のナノドット4を有する熱電層3を備えた熱電材料10、及びその製造方法について説明した。本実施形態によれば、熱電層3が複数のナノドット4で構成されるため、ナノ構造に起因してフォノン散乱が増大することによって熱伝導率kが低減する。特に、ナノドット4がSiで構成された場合には、2ω法の結果からもわかるように、問題であった熱伝導率kを大幅に低減させることができる。

【0048】
また、複数のナノドット4の少なくとも一部が互いに結晶方位を揃えて連結しているため、電気伝導度σが向上するという効果が得られる。さらに、ナノ構造に起因して量子効果が得られるため、パワーファクタSσが増加する。これらにより、性能指数ZTは大きく増加し、それゆえ熱電変換性能に優れた熱電材料10が実現されることとなる。

【0049】
また、特許文献1で開示されている半導体デバイスでは、スペーサ層を設けたことにより、ナノドットを構成する材料に対してスペーサ層を構成する材料の割合が大きくなる(図10を参照)。それゆえ、ナノドットを構成する材料の熱電特性が充分発揮されることがなかった。一方、本実施形態によれば、ナノドット4が積み上がった構成を有し、かつ、バリア層5はナノドット4の周囲に設けられた構成を有するため、ナノドット4を構成する材料の割合が大きくなり、ナノ構造化により優れた該材料の熱電特性が発揮されることとなる。

【0050】
また、ナノドット4は、シリコン酸化膜2に形成された膜開口部2a上に設けられるので、フォノン散乱を増大させるSiOのアモルファス構造を隔ててナノドット4がエピタキシャル成長することとなる。

【0051】
また、ナノドット4は、周囲に設けられた厚さ10nm以下、即ち数原子層程度のバリア層5を有し、バリア層5に形成された層開口部5aを介して連結している。かかる構造は原子線を連続的に照射して作成することができるため、熱電材料10の製造工程を簡略化することができる。

【0052】
以上の説明では、シリコン基板1上のシリコン酸化膜2に膜開口部2aを形成する構成について述べたが、シリコン基板以外の半導体基板上に半導体酸化膜を形成した場合でも、当該酸化膜に開口部を形成することにより、本実施形態による熱電材料10と同様の構造を有する熱電材料を得ることができる。当該半導体酸化膜としては、例えばSiGe混晶基板を酸化して形成したSiGe膜や、Ge基板を酸化して形成したGeO膜が可能である。このとき、Si原子線を用いた場合には、それぞれ下記の式(3),(4)に示す反応、
SiGe+aSi→bSiO↑+cGeO↑ …(3)
GeO+dSi→eSiO↑+GeO↑ …(4)
により開口部が形成され、Ge原子線を用いた場合には、それぞれ下記の式(5),(6)に示す反応、
SiGe+fGe→gSiO↑+hGeO↑ …(5)
GeO+iGe→jGeO↑ …(6)
により開口部が形成される。係数a~jは、x,y,zによって決定される。その他、化学式がSiFeで表されるシリサイドを酸化して形成した酸化膜にも、開口部が形成されることが考えられる。

【0053】
また、熱電材料10の基板として、半導体からなる基板を用いる場合について説明したが、ガラス基板等の上に電子ビーム加熱法等により半導体薄膜を蒸着させたものを半導体基板として用いてもよい。或いは、シリコン基板等の上に別の半導体の薄膜を形成してもよい。

【0054】
実施形態2.
次に、本発明の実施形態2による熱電材料60について、実施形態1の説明に用いた図1等により説明する。
実施形態1では、熱電材料の製造方法における成長工程S4において、ナノドット4を構成するSi、Ge、SiGe、シリサイド等の材料の原子線を照射した(図4を参照)。一方、本実施形態では、成長工程S4で、ナノドット54を構成する材料の原子線に加えて、ドーパント、即ちアクセプタ原子又はドナー原子の原子線を照射する。その結果、熱電層53が有するナノドット54はドープされ、熱電材料60はp型半導体又はn型半導体を構成する。以上の点を除き、熱電材料60の構成及びその製造方法の各工程は、実施形態1と同様であり、それゆえ同一の符号を付して説明は省略する。

【0055】
ナノドット54を構成する材料がSi又はGeである場合、アクセプタ原子としてはホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム等が可能であり、ドナー原子としてはリン、ヒ素、アンチモン等が可能である。ナノドット54がSi、Ge以外の材料で構成される場合は、アクセプタ原子又はドナー原子として当業者に周知の材料を用いることができる。

【0056】
図7は、本発明の実施形態2による熱電変換モジュール70を示す模式図である。熱電変換モジュール70は、熱電材料60を利用した熱電変換素子を備えている。尚、本明細書において、熱電変換モジュールとは、複数の熱電変換素子の集合体をいう。
図7に示すように、熱電変換モジュール70は、電極72aと電極72bとの間に交互に配設された熱電変換素子、即ちp型熱電素子71a及びn型熱電素子71bを有する。電極72aはシリコン基板81のモジュール面上に設けられており、電極72b上には電気絶縁材73、例えばセラミック板が設けられる。

【0057】
尚、図7では、便宜上、熱電変換モジュール70が二次元的に配設されているように図示しているが、図8に示すように、熱電変換モジュール70は三次元的に配設された構成を有する。図8では、電極72a,72bを省略して図示している。

【0058】
また、熱電変換モジュール70が設けられるシリコン基板81のモジュール面と反対側の面にはシリコン酸化膜82が形成され、酸化膜82上に、MOSFET(図7参照)等の半導体デバイス83が設けられている。熱電変換モジュール70は、半導体デバイス83の動作により発生してシリコン基板81のモジュール面に伝導したジュール熱を熱電変換する構成を有する。

【0059】
また、図7に示すように、p型熱電素子71aとn型熱電素子71bとは、電気的に直列接続されている。ここで、p型、n型熱電素子71a,71bとして、前述のようにドープして作成した熱電材料60を用いることができる。

【0060】
電極72aは、半導体基板81にアルミニウム等の金属を蒸着させ、続いてフォトリソグラフィ工程を実施して設けることができる。一般に、半導体デバイス83の形成には金属の蒸着及びフォトリソグラフィの工程が含まれることから、デバイス83の形成と同時に電極72aを設けることができる。p型、n型熱電素子71a,71bは、電気的に直列接続されるように電極72a,72bに接合される。このようにして、シリコン基板81のモジュール面上に熱電変換モジュール70が設けられる。尚、p型、n型熱電素子71a,71bと電極72a,72bとの間に接合部材が介在してもよい。

【0061】
一方、図9には、本実施形態による熱電変換モジュール70の代替の構成を示す。この構成では、シリコン基板81の上面に、例えば熱拡散によりアルミニウム等の不純物を高ドープして導電層74を形成し、続いてエッチング工程により、図9に示すような電極72aを形成する。そして、電極72aの酸化により電極72a上にシリコン酸化膜(不図示)を形成し、続いて前述の開口工程S3、成長工程S4を実施する。これにより、p型、n型熱電素子71a,71b及び電極72aを構成する熱電材料60を、シリコン基板81上に設けることができる。

【0062】
以上、本実施形態では、熱電材料60のナノドット54がアクセプタ原子又はドナー原子を有することにより、熱電材料60を熱電変換モジュール70におけるp型熱電素子71a及びn型熱電素子71bとして使用可能となる。

【0063】
そして、LSI等の半導体デバイス83の裏面に熱電変換モジュール70を設けることにより、デバイス83により生じた排熱が熱電変換モジュール70によって電気エネルギーに変換されることとなる。これにより、半導体デバイス83等を冷却して排熱による温度上昇を防止するための電力が不要になるばかりでなく、排熱を有効活用できるため、システム全体としてエネルギー効率が非常に上昇するという利点を有する。

【0064】
さらに、図9に示した代替の構成では、p型、n型熱電素子71a,71bを接合する工程を省略でき、熱電モジュール70の形成を半導体デバイス83の形成に完全に組み込むことができるため、容易かつ効率的に熱電モジュール70を設けることができる。

【0065】
尚、本実施形態で製造した熱電材料60が構成するp型及びn型半導体を熱電発電モジュールとして使用する場合として説明したが、同様の構成によりペルチェモジュールとして使用することも可能である。

【0066】
例えば、LSIの裏面(モジュール面)に本実施形態による熱電モジュール70を2段重ねて設け、1段目(LSI側)のモジュールをペルチェモジュール、2段目のモジュールを熱電発電モジュールとして使用することが考えられる。ペルチェモジュールを動作させると、当該モジュールのLSI側が冷却されて反対側が高温となる。この熱が熱電発電モジュールに伝わり、発電が行われる。このようにしても、排熱を有効活用してシステム全体のエネルギー効率を向上させることができる。

【0067】
また、例えば多結晶シリコン基板の表面を結晶化したシリコン基板1を用いて本発明による熱電材料10,60を製造した場合、かかる熱電材料10,60を太陽電池の製造に好適に利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による熱電材料は、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換する熱電変換素子、レーザ等の発光素子、更には太陽電池等の製造に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 シリコン基板
2 シリコン酸化膜
2a 酸化膜開口部(第1ナノ開口部)
3 熱電層
4 ナノドット
5 バリア層
5a バリア層開口部(第2ナノ開口部)
10,60 熱電材料
20 シリコン蒸発源
22 鉄蒸発源
70 熱電変換モジュール
83 半導体デバイス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8