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明細書 :結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法、結像パターンシミュレーションプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-086060 (P2016-086060A)
公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
発明の名称または考案の名称 結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法、結像パターンシミュレーションプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体
国際特許分類 H01L  21/027       (2006.01)
G03F   1/36        (2012.01)
G02B  19/00        (2006.01)
FI H01L 21/30 502Z
G03F 1/36
G02B 19/00
H01L 21/30 515D
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 31
出願番号 特願2014-217379 (P2014-217379)
出願日 平成26年10月24日(2014.10.24)
発明者または考案者 【氏名】杉坂 純一郎
【氏名】安井 崇
【氏名】平山 浩一
出願人 【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081271、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 芳春
【識別番号】100162189、【弁理士】、【氏名又は名称】堀越 真弓
審査請求 未請求
テーマコード 2H052
2H095
2H195
5F146
Fターム 2H052BA02
2H052BA07
2H052BA12
2H095BA01
2H095BA02
2H095BB02
2H095BB36
2H195BA01
2H195BA02
2H195BB02
2H195BB36
5F146AA25
5F146CB45
5F146DA13
5F146DA30
5F146DD03
要約 【課題】コンピュータのメモリを大量消費することなく、マスクパターンの一部の形状を変更した場合にも極めて短い時間でシミュレーションできる結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法を提供する。
【解決手段】結像パターンシミュレーションシステムは、マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手段と、各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算しライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手段と、ライブラリに基づいて小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手段と、第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手段と、求めた綴合波と第1の結像パターンとからマスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手段とを備えている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーションシステムであって、前記マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手段と、該分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手段と、該作成保存されているライブラリに基づいて、前記小パターンに対応する前記結像パターンを貼り合わせることにより、前記マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手段と、該作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手段と、該求めた綴合波と前記第1の結像パターンとから前記マスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手段とを備えていることを特徴とする結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記分割手段が、同じ形状の小パターンが多く得られるように前記マスクパターンを分割する手段であることを特徴とする請求項1に記載の結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記ライブラリ作成保存手段が、時間領域有限差分法により前記小パターンへの入射波に対するマスク表面の電磁界を計算する手段と、該計算したマスク表面の電磁界をフーリエ変換して結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する手段と、該計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する手段と、前記計算した電磁界及び前記計算した結像パターンを保存する手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記ライブラリ作成保存手段が、差分界境界要素法により前記小パターンへの入射波に対する結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する手段と、該計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する手段と、前記計算した電磁界及び前記計算した結像パターンを保存する手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記第1の結像パターン作成手段が、前記作成保存されている各ライブラリを分割前の前記マスクパターンの対応する位置に移動する手段と、前記作成保存されている各ライブラリの電磁界を前記移動に対応して修正する手段とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項6】
前記綴合波計算手段が、前記移動に対応して修正された各ライブラリの電磁界に基づく前記積分方程式を解いて綴合波を求める手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項7】
前記第2の結像パターン作成手段が、前記第1の結像パターンと前記求めた綴合波をフーリエ変換して計算した結像パターンとを加算して前記第2の結像パターンを作成する手段を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の結像パターンシミュレーションシステム。
【請求項8】
マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーション方法であって、前記マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割工程と、該分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存工程と、該作成保存されているライブラリに基づいて、前記小パターンに対応する前記結像パターンを貼り合わせることにより、前記マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成工程と、該作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算工程と、該求めた綴合波と前記第1の結像パターンとから前記マスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成工程とを備えていることを特徴とする結像パターンシミュレーション方法。
【請求項9】
前記分割工程が、同じ形状の小パターンが多く得られるように前記マスクパターンを分割する工程であることを特徴とする請求項8に記載の結像パターンシミュレーション方法。
【請求項10】
前記ライブラリ作成保存工程が、時間領域有限差分法により前記小パターンへの入射波に対するマスク表面の電磁界を計算する工程と、該計算したマスク表面の電磁界をフーリエ変換して結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する工程と、該計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する工程と、前記計算した電磁界及び前記計算した結像パターンを保存する工程とを備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載の結像パターンシミュレーション方法。
【請求項11】
前記ライブラリ作成保存工程が、差分界境界要素法により前記小パターンへの入射波に対する結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する工程と、該計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する工程と、前記計算した電磁界及び前記計算した結像パターンを保存する工程とを備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載の結像パターンシミュレーション方法。
【請求項12】
前記第1の結像パターン作成工程が、前記作成保存されている各ライブラリを分割前の前記マスクパターンの対応する位置に移動する工程と、前記作成保存されている各ライブラリの電磁界を前記移動に対応して修正する工程とを備えていることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の結像パターンシミュレーション方法。
【請求項13】
前記綴合波計算工程が、前記移動に対応して修正された各ライブラリの電磁界に基づく前記積分方程式を解いて綴合波を求める工程を備えていることを特徴とする請求項12に記載の結像パターンシミュレーション方法。
【請求項14】
前記第2の結像パターン作成工程が、前記第1の結像パターンと前記求めた綴合波をフーリエ変換して計算した結像パターンとを加算して前記第2の結像パターンを作成する工程を備えていることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の結像パターンシミュレーション方法。
【請求項15】
マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーションプログラムであって、前記マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手順と、該分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手順と、該作成保存されているライブラリに基づいて、前記小パターンに対応する前記結像パターンを貼り合わせることにより、前記マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手順と、該作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手順と、該求めた綴合波と前記第1の結像パターンとから前記マスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手順とを備えていることを特徴とする結像パターンシミュレーションプログラム。
【請求項16】
マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手順と、該分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手順と、該作成保存されているライブラリに基づいて、前記小パターンに対応する前記結像パターンを貼り合わせることにより、前記マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手順と、該作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手順と、該求めた綴合波と前記第1の結像パターンとから前記マスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手順とをコンピュータで実行させるように構成されている結像パターンシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィにおいてマスクが形成する結像パターン(露光像)をシミュレーションする結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法、結像パターンシミュレーションプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィは、フォトマスク上に加工形成した配線パターンを、半導体基板上に縮小投影露光し、エッチング技術を用いて微細な回路パターンを形成する技術である。近年、パターンの極端な微細化と露光に用いる光の短波長化のために、マスクのパターンと露光されるパターンとが一致しなくなってきている。このため、露光されるパターンが目的とするパターンに一致するように、マスクパターンを最適化する必要がある。
【0003】
マスクパターンを最適化する従来技術として、あらゆるマスクパターンに対して露光されるパターンをシミュレーションする以下のような手法が既に開発されている。
(1)時間領域有限差分(FDTD)法:マクスウェル方程式を有限差分方程式の組に置き換えて数値解析する手法であり、完全導体による電磁パルスの散乱解析に利用できる(例えば、非特許文献1参照)。
(2)マルチステップ差分界境界要素法:フォトマスクの基板に、全体が目的のマスクパターンに一致するまで配線パターンを1本ずつ追加しながら、フォトマスクの透過光を差分界境界要素法により逐次更新して行く手法である(例えば、非特許文献2、特許文献1参照)。
(3)リソグラフィシミュレーション法:大面積のマスクを分割し、マスク表面上で光近接効果の及ぶ範囲毎にパターンを分割し、分割した小面積のパターンに対してFDTD法によりシミュレーションを行い、得られた露光パターンを合成する手法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】K.S.Yee, IEEE Trans. Antenna Propag 14,302(1966)
【非特許文献2】J.Sugisaka et al., Proc. SPIE, 8556, 85560T(2012)
【0005】

【特許文献1】特開2013-156030号公報
【特許文献2】特開2009-294386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)の非特許文献1に開示されている時間領域有限差分(FDTD)法は、マスクパターンに周期性がない場合にも計算が可能であり、汎用性が高いため市販のソフトウェアも存在するが、フォトマスクの面積に比例してコンピュータのメモリを多量に必要とするため、大型コンピュータが必要である。しかも、計算量が膨大であるため、計算時間が非常に長くなってしまう。
【0007】
また、(2)の非特許文献2及び特許文献1に開示されているマルチステップ差分界境界要素法は、メモリ消費量が非常に少ないが、並列コンピュータなどのハードウェアの性能を生かした計算時間の短縮には限界があり、計算時間をさほど短くすることが難しい。また、マスクパターンの一部の形状を変更した場合、計算を最初からやり直す必要があるため、マスク形状を少しずつ変えながら最適構造を求めるようなマスク設計を行う場合は効率的ではない。
【0008】
さらに、(3)の特許文献2に開示されているリソグラフィシミュレーション法は、コンピュータの限られたメモリ搭載量でシミュレーションを行うことができるが、合成した光(電磁界)分布が物理的に正しくなるという保証はなく、光近接効果が広範囲に及ぶ微細なパターンなどに対しては、精度が悪くなる可能性がある。
【0009】
従って本発明の目的は、コンピュータのメモリを一度に大量消費することなく、大きなサイズのマスクについてもシミュレーションが可能な結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法、結像パターンシミュレーションプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、マスクパターンの一部の形状を変更した場合にも極めて短い時間でシミュレーションすることが可能な結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法、結像パターンシミュレーションプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーションシステムが提供される。この結像パターンシミュレーションシステムは、マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手段と、分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手段と、作成保存されているライブラリに基づいて、小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手段と、作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手段と、求めた綴合波と第1の結像パターンとからマスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手段とを備えている。
【0012】
マスクパターンを分割して得た各小パターンについて結像パターンを計算してライブラリを作成しておき、これらライブラリに基づいて、小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、マスクの第1の結像パターンを作成し、作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し積分方程式を解いて求めた綴合波と第1の結像パターンとから最終的な第2の結像パターンを作成している。このように、小パターン及びその結像パターンをあらかじめ計算してライブラリを作成し貼り合わせる作業を行っており、しかも、これによって得られる第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて求めた綴合波と第1の結像パターンとから最終的な第2の結像パターンとしているので、不整合がなく、物理的に正しい結像パターンを、コンピュータのメモリを一度に大量消費することなく、大きなサイズのマスクについてもシミュレーションが可能となり、マスクパターンの一部の形状を変更した場合にも極めて短い時間でシミュレーションすることが可能となる。
【0013】
分割手段が、同じ形状の小パターンが多く得られるように、従って1つの溝を分断しないように、マスクパターンを分割する手段であることが好ましい。
【0014】
ライブラリ作成保存手段が、FDTD法により小パターンへの入射波に対するマスク表面の電磁界を計算する手段と、計算したマスク表面の電磁界をフーリエ変換して結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する手段と、計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する手段と、計算した電磁界及び計算した結像パターンを保存する手段とを備えていることも好ましい。
【0015】
ライブラリ作成保存手段が、差分界境界要素法により小パターンへの入射波に対する結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する手段と、計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する手段と、計算した電磁界及び前記計算した結像パターンを保存する手段とを備えていることも好ましい。
【0016】
第1の結像パターン作成手段が、作成保存されている各ライブラリを分割前のマスクパターンの対応する位置に移動する手段と、作成保存されている各ライブラリの電磁界を移動に対応して修正する手段とを備えていることも好ましい。
【0017】
この場合、綴合波計算手段が、移動に対応して修正された各ライブラリの電磁界に基づく積分方程式を解いて綴合波を求める手段を備えていることがより好ましい。
【0018】
第2の結像パターン作成手段が、第1の結像パターンと求めた綴合波をフーリエ変換して計算した結像パターンとを加算して第2の結像パターンを作成する手段を備えていることも好ましい。
【0019】
本発明によれば、さらに、マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーション方法が提供される。この結像パターンシミュレーション方法は、マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割工程と、分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存工程と、作成保存されているライブラリに基づいて、小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成工程と、作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算工程と、求めた綴合波と第1の結像パターンとからマスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成工程とを備えている。
【0020】
マスクパターンを分割して得た各小パターンについて結像パターンを計算してライブラリを作成しておき、これらライブラリに基づいて、小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、マスクの第1の結像パターンを作成し、作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し積分方程式を解いて求めた綴合波と第1の結像パターンとから最終的な第2の結像パターンを作成している。このように、小パターン及びその結像パターンをあらかじめ計算してライブラリを作成し貼り合わせる作業を行っており、しかも、これによって得られる第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し積分方程式を解いて求めた綴合波と第1の結像パターンとから最終的な第2の結像パターンとしているので、不整合がなく、物理的に正しい結像パターンを、コンピュータのメモリを一度に大量消費することなく、大きなサイズのマスクについてもシミュレーションが可能となり、マスクパターンの一部の形状を変更した場合にも極めて短い時間でシミュレーションすることが可能となる。
【0021】
分割工程が、同じ形状の小パターンが多く得られるように、従って1つの溝を分断しないように、マスクパターンを分割する工程であることが好ましい。
【0022】
ライブラリ作成保存工程が、FDTD法により小パターンへの入射波に対するマスク表面の電磁界を計算する工程と、計算したマスク表面の電磁界をフーリエ変換して結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する工程と、計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する工程と、計算した電磁界及び計算した結像パターンを保存する工程とを備えていることも好ましい。
【0023】
ライブラリ作成保存工程が、差分界境界要素法により小パターンへの入射波に対する結像光学系の瞳面上の電磁界を計算する工程と、計算した瞳面上の電磁界をフーリエ変換して結像パターンを計算する工程と、計算した電磁界及び計算した結像パターンを保存する工程とを備えていることも好ましい。
【0024】
第1の結像パターン作成工程が、作成保存されている各ライブラリを分割前のマスクパターンの対応する位置に移動する工程と、作成保存されている各ライブラリの電磁界を移動に対応して修正する工程とを備えていることも好ましい。
【0025】
この場合、綴合波計算工程が、移動に対応して修正された各ライブラリの電磁界に基づく積分方程式を解いて綴合波を求める工程を備えていることがより好ましい。
【0026】
第2の結像パターン作成工程が、第1の結像パターンと求めた綴合波をフーリエ変換して計算した結像パターンとを加算して第2の結像パターンを作成する工程を備えていることも好ましい。
【0027】
本発明によれば、またさらに、マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーションプログラムが提供される。この結像パターンシミュレーションプログラムは、マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手順と、分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手順と、作成保存されているライブラリに基づいて、小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手順と、作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手順と、求めた綴合波と第1の結像パターンとからマスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手順とを備えている。
【0028】
本発明によれば、さらに、マスクの透過光が形成する結像パターンをシミュレーションする結像パターンシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。このコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、マスクのマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手順と、分割された各小パターンの透過光が形成する結像パターンを計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手順と、作成保存されているライブラリに基づいて、小パターンに対応する結像パターンを貼り合わせることにより、マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手順と、作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手順と、求めた綴合波と第1の結像パターンとからマスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手順とをコンピュータで実行させるように構成されている結像パターンシミュレーションプログラムを記録している。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、不整合がなく、物理的に正しい結像パターンを、コンピュータのメモリを一度に大量消費することなく、大きなサイズのマスクについてもシミュレーションが可能であり、マスクパターンの一部の形状を変更した場合にも極めて短い時間でシミュレーションすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の結像パターンシミュレーションシステム及び方法における露光像計算の流れを概略的に説明するための図である。
【図2】本発明の結像パターンシミュレーションシステム及び方法における複数パターンの計算の手順を従来技術と比較して概略的に説明するための図である。
【図3】本発明の結像パターンシミュレーションシステム方法における計算例を従来技術と比較して概略的に説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態として、結像パターンシミュレーションシステムの全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの主要部の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの主要部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムにおいて使用されるマスクの一例の(A)斜視図及び(B)断面図である。
【図8】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムで使用される光学系の構成例を示す図である。
【図9】図4の実施形態における積分演算子の定義を説明するための図である。
【図10】図4の実施形態におけるマスクパターンの分割動作を説明するための断面図である。
【図11】図4の実施形態におけるライブラリの作成動作を説明するための断面図である。
【図12】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの光学系の一構成例を示す図である。
【図13】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの光学系の他の構成例を示す図である。
【図14】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図15】図4の実施形態における電磁界の計算手順を説明するためのフローチャートである。
【図16】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図17】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図18】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図19】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図20】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図21】図4の実施形態における電磁界の計算を説明するための図である。
【図22】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムのライブラリ接合動作を説明するための断面図である。
【図23】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムのパターン0の電磁界を説明するための図である。
【図24】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの接合のための移動動作を説明するための断面図である。
【図25】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの移動後の電磁界を説明するための図である。
【図26】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの接合のための移動動作を説明するための断面図である。
【図27】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの移動後の電磁界を説明するための図である。
【図28】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの綴合波計算処理を説明するための図である。
【図29】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの綴合波計算処理を説明するための図である。
【図30】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの綴合波計算処理を説明するための図である。
【図31】図4の実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの積分動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明の結像パターンシミュレーションシステム及び方法における露光像計算の流れを概略的に示している。本発明は、フォトリソグラフィにおいてマスクが形成する結像パターンを1枚のマスクパターンに同じ形状の複数の小パターンが現れることを利用してシミュレーションの効率化を図る結像パターンシミュレーションシステム及び方法である。

【0032】
図1(A)に示すような配線パターンのマスクに図の奥から手前方向に光を照射し、その透過光が形成する露光像(結像パターン)をシミュレーションする場合について説明する。

【0033】
まず、同図(A)のパターンを同図(B)のように分割する。このパターンは4種類の小パターンの組み合わせからなっている。

【0034】
次いで、同図(C)に示すように、4種類の小パターンの各々について透過光による露光像を個別に計算し、ライブラリとして保存しておく。

【0035】
次いで、同図(D)に示すように、保存されているライブラリに基づいて、4つの小パターンに対応する露光像の計算結果を貼り合わせる(接合する)ことによって、マスクのおおまかな露光像(本発明の第1の結像パターンに対応する)を作成する。

【0036】
しかしながら、このままでは、貼り合わせた接合面の光(電磁界)に不整合が生じ、物理的に正確なシミュレーション結果とはならない。そこで、このおおまかな露光像の各接合面付近を境界要素に分割し、新たに導出した積分方程式を解いて、同図(E)に示すように、この不整合を相殺する光(綴合波)を求める。

【0037】
次いで、この綴合波が作る像を前述のごとく求めたおおまかな露光像に加えることにより、同図(F)に示すように、最終的な露光像(本発明の第2の結像パターンに対応する)が得られる。この最終的な露光像は、同図(A)に示すような大面積のパターンを直接的に計算した場合と同じである不整合がなく、物理的に正しい透過像を得ることができる。

【0038】
図2は本発明の結像パターンシミュレーションシステム及び方法における複数パターンの計算の手順を概略的に示している。本発明は、上述したようにマスクパターンを小パターンに分割して個別に計算しているので、従来の時間領域有限差分(FDTD)法のように、コンピュータのメモリを一度に大量消費することがない。そのため、FDTD法では計算できなかった大きなサイズのマスクについてもシミュレーションすることができる。

【0039】
また、従来のマルチステップ差分界境界要素法は、図2(A)、(B)及び(C)に示すように一部のパターンのみが異なる場合でも、マスク全体を始めから計算し直さなければならないので、近接効果補正など一部のパターンのみを少しずつ変えて最適なマスクパターンを見出す作業には向いていない。

【0040】
これに対して本発明では、まず、同図(D)に示すように、小パターンの各々について透過光による露光像を個別に計算し、ライブラリを作成しておく。次いで、同図(E)に示すように同図(A)、(B)及び(C)の共通部分を先に貼り合わせ、さらに接合面の綴合波を計算してその像を加える。その後、同図(E)の露光像に同図(D)の小パターンp2の露光像を貼り合わせ、さらに、p2周辺の接合面に対して計算した綴合波の像を加えることにより、同図(F)に示すように、同図(A)のマスクのシミュレーションが完了する。同様に、同図(E)の露光像に同図(D)の小パターンp3及びp4の露光像をそれぞれ貼り合わせ、さらに、p3及びp4周辺の接合面に対して計算した綴合波の像をそれぞれ加えることにより、同図(F)に示すように、同図(B)及び(C)のマスクのシミュレーションが完了する。この場合のパターンを貼り合わせて綴合波を求める計算は、マスク全体を最初から計算する場合に比較して非常に短時間で良いため、複数のパターンを効率良く計算することができる。

【0041】
図3は本発明の結像パターンシミュレーションシステム方法における計算例を従来技術と比較して概略的に示している。

【0042】
同図(A)に示すように、それぞれ10本のラインを互いに平行に配置したパターンp1及びp2を互いに貼り合わせ、同図(B)に示すように、綴合波分布を加えて20本のラインを平行に並べたマスクパターンM1を計算している。

【0043】
小パターンp1及びp2の露光像があらかじめ計算されライブラリに保存されているとして、両者を貼り合わせて綴合波を計算し加えることによりマスクパターンM1を得る処理に要した時間は1.8秒であった。一方、同図(C)に示すように従来のマルチステップ差分界境界要素法によりマスクパターンM1を最初から計算する処理に要した時間は26秒であった。本発明のシミュレーションシステム及び方法によれば、処理時間は小パターンp1及びp2の面積に無関係であるが、マルチステップ差分界境界要素法では処理時間は小パターンp1及びp2の面積に比例する。従って、貼り合わせる前の小パターンの面積が大きいほど、本発明の効果が顕著に表れることとなる。

【0044】
従来のリソグラフィシミュレーション法によると、パターン分割の際に光近接効果の範囲を考慮する必要があり、マスクパターン内に複数の共通のパターンが存在している場合にも、同じ形状の複数の小パターンに切り分けできるとは限らない。これに対して本発明のシミュレーションシステム及び方法によれば、光近接効果は綴合波によって補綴されることから、光近接効果の範囲に関係なく自由な位置で分割することができるため、マスクパターンを同じ形状の複数の小パターンに分割することが容易となり、結果として、計算時間が短縮化する。

【0045】
なお、例えば、図2(A)、(B)及び(C)の各マスクには、図2(D)に示す小パターンp6が3箇所現れているが、本発明によれば、小パターンp6はライブラリ作成時にその露光像を1回計算しておけば良いため、全体の計算時間が短くなる。また、できるだけ少ない種類の小パターンでマスクを構成できれば、ライブラリの数が少なくなり、ライブラリ全体を作成するための時間も短縮化される。

【0046】
以上述べた本発明のシミュレーションシステム及び方法は、例えば、「フォトマスクの設計」、及び「フォトマスクの異物の影響の解析」に使用することができる。

【0047】
「フォトマスクの設計」は、マスクパターンを設計する際に、露光像が所望の回路パターンとなるように、マスクパターンを最適設計する際に使用するものである。具体的には、マスクが作る露光像を、本発明のシミュレーションを用いて計算する。露光像と目的の回路パターンとの間にずれがあれば、そのずれに相当する箇所のマスクパターンを変更し、以上の処理を繰り返して行う。

【0048】
「フォトマスクの異物の影響の解析」は、マスクに異物や汚れが付着すると、露光像には、パターンの歪み、又は配線パターンの切断若しくはショートなどが起こるため、マスクの製造中に混入する可能性のある異物が露光結果にどのように影響するかをシミュレーションして明らかにしておくものである。この解析結果に基づいて、マスク製造工程を改善したり、実際に現れた露光像の歪みから原因となった異物を特定することにより、歩留まり改善を図ることが可能となる。

【0049】
次に、実施形態によって本発明を詳細に説明する。図4は本発明の一実施形態として、結像パターンシミュレーションシステムの全体構成を概略的に示しており、図5は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの主要部の動作を示しており、図6は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの主要部の構成を概略的に示している。

【0050】
本実施形態における結像パターンシミュレーションシステムの電気的構成は、図4に示すように、バス40を介して互いに接続された中央処理装置(CPU)41と、リードオンリメモリ(ROM)42と、ランダムアクセスメモリ(RAM)43と、ハードディスク駆動装置(HDD)44と、画像処理部45と、外部メモリ駆動装置46と、入出力インタフェース47とを備えたコンピュータ及びこれを作動させるプログラムから構成される。

【0051】
画像処理部45は表示ディスプレイ48に接続されており、外部メモリ駆動装置46は例えばブルーレイディスク/デジタルバーサタイルディスク/コンパクトディスク(BD/DVD/CD)49やメモリカードが装着可能となっており、入出力インタフェース47にはキーボード50及びマウス51が接続されている。

【0052】
CPU41は、ROM42に記憶されているオペレーションシステム(OS)やブートプログラム等の基本プログラムに従ってRAM43に記憶されているプログラムを実行して本実施形態の処理を行う。また、CPU41は、RAM43、HDD44、画像処理部45、外部メモリ駆動装置46、及び入出力インタフェース47の動作を制御する。

【0053】
RAM43は結像パターンシミュレーションシステムのメインメモリとして使用され、HDD44や外部メモリ駆動装置46から転送されたプログラムやデータを記憶する。また、RAM43は、プログラム実行時の各種データが一時的に記憶されるワークエリアとしても使用される。

【0054】
HDD44は、プログラム及びデータをあらかじめ記憶している。

【0055】
画像処理部45は、CPU41の指示に従ってグラフィック処理を行い、画像データを生成する。生成された画像データは、表示ディスプレイ48に出力される。

【0056】
外部メモリ駆動装置46は、CPU41の指示に従って、セットされたBD/DVD/CD49やメモリカード等の外部メモリからプログラムやデータを読出し、RAM43へ転送する。また、セットされた外部メモリへプログラムやデータの書き込みをすることも可能である。

【0057】
入出力インタフェース47は、キーボード50及びマウス51とCPU41又はRAM43との間のデータのやり取りを制御する。

【0058】
このような構成のパターンシミュレーションシステムにおいて、CPU41は、作動時は、まず、RAM43内にプログラム記憶領域、データ記憶領域及びワークエリアを確保し、HDD44又は外部からプログラム及びデータを取り込んで、プログラム記憶領域及びデータ記憶領域に格納する。次いで、このプログラム記憶領域に格納されたプログラムに基づいて、図5に示す処理を実行する。CPU41がプログラムを実行することによって、図6に概略的に示すごとき結像パターンシミュレーションシステム60が構築される。

【0059】
図6において、61はマスクパターンを複数の小パターンに分割する分割手段、62は分割された各小パターンの透過光が形成する露光像を計算することによりライブラリを作成して保存するライブラリ作成保存手段、63は作成保存されているライブラリに基づいて、小パターンに対応する露光像を貼り合わせる(接合する)ことにより、マスクの第1の結像パターンを作成する第1の結像パターン作成手段、64は作成した第1の結像パターンにおける接合面付近を境界要素に分割し、積分方程式を解いて綴合波を求める綴合波計算手段、並びに65は求めた綴合波と第1の結像パターンとからマスクによる第2の結像パターンを作成する第2の結像パターン作成手段をそれぞれ示している。

【0060】
以下、この結像パターンシミュレーションシステム60の構成及び動作について、図5に示したフローチャート、図6~図11、及び図22~図31をも合わせ用いて、詳細に説明する。

【0061】
図7は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステムにおいて使用されるマスクの一例を示している。

【0062】
ただし、図7(A)のマスクは上下が逆に示されており、同図の下方から光が照射されて上方に進む透過光が作る結像パターンが計算(シミュレーション)される。図7(B)では上下が正しく示されており、上方から光が照射されて下方に透過光が進む。

【0063】
同図に示すように、マスクは、誘電体又は金属の基板表面に凹凸のマスクパターンが施されたものである。この場合の凹凸は、光の照射範囲に対して十分長い直線状の突起及び溝であり、溝の幅や深さが一定である必要はない。また、突起の断面が矩形以外の形状であってもよい。溝が基板とは異なる材料で充填されていてもよい。突起が直線状のものではないものであっても計算可能である(その場合は、以降の式中の線積分を面積分に拡張する)。

【0064】
図8は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステムで使用される光学系の一構成例を示している。同図に示すように、光源からレンズL(焦点距離f)を介してマスクに入射波(平面波)が印加され、マスクの透過光がレンズL(焦点距離f)、瞳面及びレンズL(焦点距離f)による結像光学系を介して基板T上に露光像(結像パターン)として結像される。なお、マスクからの透過光を計算できれば、どのような結像光学系についても露光像の計算は可能であるため、マスクより下方の結像光学系のレンズの枚数や位置関係などは図示の光学系には限定されない。

【0065】
ここで、後述する数式に含まれる積分項を簡単に表記するために、積分演算子を下式のように定義する。図9はこの定義における積分経路などを説明している。

【0066】
【数1】
JP2016086060A_000003t.gif

また、略記法として下記の

【0067】
【数2】
JP2016086060A_000004t.gif

なる連立方程式を、下記のように略記する。

【0068】
【数3】
JP2016086060A_000005t.gif

【0069】
結像パターンシミュレーションシステム60の分割手段61(図6参照)により、まず、シミュレーションすべきマスクのマスクパターンが複数の小パターンに分割される(図5のステップS1)。分割時にマスクパターンの1つの溝を分断しなければ、自由な位置で自由な数の小パターンに分割することができる。パターンに共通部分ができるように分割した方が小パターンの種類を少なくすることができ、後述するライブラリの数を少なくすることができるため、効率が良くなる。

【0070】
図10は本実施形態におけるマスクパターンの分割動作を示している。同図(A)はマスクパターンを効率良く分割している例であり、パターンA~Cの3種類の小パターンから構成可能である。同図(B)はマスクパターンを効率悪く分割している例であり、パターンA~Dの3種類の小パターンが必要である。

【0071】
マスクパターンの分割の後、結像パターンシミュレーションシステム60のライブラリ作成保存手段62(図6参照)により、分割された各小パターンの透過光が形成する露光像を計算してライブラリが作成され、作成されたライブラリがRAM43に保存される(図5のステップS2)。

【0072】
図11は本実施形態におけるライブラリの作成処理動作を示している。同図(A)に示すように、分割された小パターン(パターンA~C)の各々について、基板付近の電磁界(反射波、透過波、散乱波)、及び結像パターン(露光像)が計算される。この計算は、後述するように、FDTD法又は差分界境界要素法で行われる。その場合、同図(B)~(D)に示すように、溝パターンの左右には平面基板が無限に続いていると仮定して計算が行われる。また、同図(E)に示すように、溝の存在しない平面基板(パターン0)の反射波及び透過波も計算される。計算結果である小パターン表面近傍の電磁界及び結像パターンが、ライブラリとして保存される。

【0073】
図12は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステム60の光学系の一構成例を示し、図13は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステム60の光学系の他の構成例を示している。

【0074】
図12はFDTD法による電磁界及び結像パターンの計算方法を示している。まず、入射波に対するマスク表面の電磁界がFDTD法によって計算され、得られたマスク表面の電磁界がフーリエ変換されて結像光学系の瞳面上の電磁界が計算され、計算された瞳面上の電磁界がフーリエ変換されて結像パターンが計算される。このようにして計算された電磁界及び結像パターンがライブラリとして保存される。

【0075】
図13は差分界境界要素法による電磁界及び結像パターンの計算方法を示している。まず、差分界境界要素法で結像光学系の瞳面上の電磁界(遠方界)が計算され、計算された瞳面上の電磁界がフーリエ変換されて結像パターンが計算される。このようにして計算された電磁界及び結像パターンがライブラリとして保存される。

【0076】
以下、FDTD法によるマスク表面の電磁界の計算についてより詳細に説明する。

【0077】
図14は本実施形態における結像パターンシミュレーションシステム60の電磁界計算のための準備処理を示している。準備処理として、まず、マスク表面近傍が、同図に示すようにグリッドで分割される。マスク内部側には点光源がx方向に沿って配列され、マスク外部側にはマスク表面近傍のx方向格子点列が観測位置とされる。

【0078】
次いで、磁界分布H(x,y)及び電解分布E(x,y)の離散化が行われる。RAM43内にグリッドの各格子点に対応する電磁界が割り当てられる。ただし、初期値は全て0とされる。

【0079】
【数4】
JP2016086060A_000006t.gif

tは時刻を表している。t=nΔtと離散化し、n=1,2、・・・と変えて行くことによりマスク周囲の電磁波の伝搬が計算される。

【0080】
図15はこの電磁界計算の手順を示している。同図に示すように、最初にパラメータの初期化が行われる(図15のステップS11)。

【0081】
次いで、光源の更新が行われる(図15のステップS12)。光源の更新として、入射波がs偏光のとき、光源位置(x,y)の電界の更新が下式で行われる。

【0082】
【数5】
JP2016086060A_000007t.gif

入射波がp偏光のとき、光源位置(x,y)の磁界の更新が下式で行われる。

【0083】
【数6】
JP2016086060A_000008t.gif

【0084】
次いで、磁界分布の更新が行われる(図15のステップS13)。磁界分布の更新は、入射波がs偏光のとき、下式で行われる。

【0085】
【数7】
JP2016086060A_000009t.gif

入射波がp偏光のとき、下式で行われる。

【0086】
【数8】
JP2016086060A_000010t.gif

【0087】
次いで、電界分布の更新が行われる(図15のステップS14)。電界分布の更新は、入射波がs偏光のとき、下式で行われる。

【0088】
【数9】
JP2016086060A_000011t.gif

入射波がp偏光のとき、下式で行われる。

【0089】
【数10】
JP2016086060A_000012t.gif

【0090】
次いで、観測位置の電磁界の振幅が一定値に収束したか否かが判別され(図15のステップS15)、収束していないと判別された場合は、ステップS11へ戻ってステップS11~S15の処理が繰り返される。収束したと判別された場合は、観測点の電磁界分布が出力される(図15のステップS16)。観測点(x,y)のデータ列(yは一定)であるF(x)は下式から与えられる。

【0091】
【数11】
JP2016086060A_000013t.gif

【0092】
次に、FDTD法によるライブラリ作成における、フーリエ変換による瞳面上の電磁界の計算についてより詳細に説明する。

【0093】
図16に示すように、マスク表面がレンズの焦点位置に配置されている場合、マスク表面上の電磁界と瞳面上の電磁界とはフーリエ変換の関係にある。従って、瞳面上の点Pにおける電磁界f(i)は、マスク表面の電磁界F(x)を用いて下式で計算される。

【0094】
【数12】
JP2016086060A_000014t.gif

結像光学系によっては、ここで求めたf(i)に瞳関数(レンズの開口数、収差を表す関数)を乗算する必要がある。

【0095】
次に、FDTD法によるライブラリ作成における、フーリエ変換による結像パターンの計算についてより詳細に説明する。

【0096】
結像面がレンズの焦点位置に配置されている場合、瞳面上の電磁界と結像面上の電磁界とはフーリエ変換の関係にある。従って、結像パターン(結像面の電磁界)f′(x)は、瞳面上の電磁界分布f(i)を用いて下式で計算される。

【0097】
【数13】
JP2016086060A_000015t.gif

【0098】
以下、差分界境界要素法によるライブラリ作成における、瞳面上の電磁界の計算についてより詳細に説明する。

【0099】
差分界境界要素法では、図17(A)に示すように溝のない平坦なマスクを初期構造とし、同図(B)、同図(C)、同図(D)、同図(E)、及び同図(F)に示すように溝を1つずつ追加しながらマスク表面上及び瞳面上の電磁界が更新されて行く。

【0100】
図18に示すように追加する溝をP~Pとし、現在Pm-1までの溝が追加済みであるとすると、図19に示すように次の溝Pを追加する際に、Pの周囲の境界C0、C1、C2について積分方程式が解かれる。即ち、図20に示すようにPm-1までの溝が追加済みである現在のマスク外部及びマスク内部の電磁界をそれぞれf及びfとおき、さらに、図21に示すようにP追加後のマスク外部、マスク内部及び溝内部の電磁界をそれぞれf+Δf、f+Δf及びfとおき、下式の積分方程式を解いて、C上のΔf、C・C上のfが求められる。

【0101】
【数14】
JP2016086060A_000016t.gif

【0102】
m-1以降の溝を追加して積分方程式を解く際に、Pm-1以降の溝周囲の電磁界が必要となるため、下式によってこの電磁界が更新される。

【0103】
【数15】
JP2016086060A_000017t.gif

【0104】
瞳面上の電磁界分布(P追加前のもの)にΔf(i)を加えて更新される。

【0105】
【数16】
JP2016086060A_000018t.gif

次いで、下式の積分方程式を解いて瞳面上の電磁界分布を更新する処理が全ての溝について実行される。

【0106】
【数17】
JP2016086060A_000019t.gif

【0107】
次に、差分界境界要素法によるライブラリ作成における、フーリエ変換による結像パターンの計算についてより詳細に説明する。

【0108】
この計算は、FDTD法の場合と同じである。即ち、結像面がレンズの焦点位置に配置されている場合、瞳面上の電磁界と結像面上の電磁界とはフーリエ変換の関係にある。従って、結像パターン(結像面の電磁界)f′(x)は、瞳面上の電磁界分布f(i)を用いて下式で計算される。

【0109】
【数18】
JP2016086060A_000020t.gif

【0110】
以上詳細に説明したように、結像パターンシミュレーションシステム60のライブラリ作成保存手段62(図6参照)によりライブラリ作成及び保存が行われた後、結像パターンシミュレーションシステム60の第1の結像パターン作成手段63により、ライブラリを貼り合わせて(接合して)第1の結像パターンを作成する処理が行われる(図5のステップS3)。

【0111】
図22はこの結像パターンシミュレーションシステム60のライブラリ接合動作を示している。同図(A)はライブラリに保存されているパターンA、同図(B)はライブラリに保存されているパターンBであり、これらパターンA及びパターンBが同図(C)に示すように接続位置で接合されて元のパターンが再構成される。以下その手順を説明する。なお、図23に示すように、パターン0の表面上の電磁界をf01と表すこととする。

【0112】
図24はこの結像パターンシミュレーションシステム60のライブラリ接合時の移動動作を示している。同図(A)に示すパターンAが、同図(C)に示すように分割前のマスクの対応位置に同図(B)に示すように移動される。この移動に伴い、ライブラリに保存されている電磁界の修正も行われる。この修正は、移動量がxであるとすると、ライブラリに保存されている電磁界に複素定数exp(-jkcos(θ)x)を乗算することによって行われる。ただし、j:虚数単位、k=2π/λ、λ:マスク外部における電磁波の波長、θ:マスクに入射する電磁波の伝搬方向とx軸とがなす角度である。なお、移動量xは図にて右方向への移動では正の値、図にて左方向への移動では負の値となる。

【0113】
図25はパターンAのこの移動後の溝表面及び基板表面上の電磁界を示している。

【0114】
図26はこの結像パターンシミュレーションシステム60のライブラリ接合時の移動動作を示している。同図(A)に示すパターンBが、同図(C)に示すように分割前のマスクの対応位置に同図(B)に示すように移動される。この移動に伴い、ライブラリに保存されている電磁界の修正も行われる。この修正は、移動量がxであるとすると、ライブラリに保存されている電磁界に複素定数exp(-jkcos(θ)x)を乗算することによって行われる。ただし、j:虚数単位、k=2π/λ、λ:マスク外部における電磁波の波長、θ:マスクに入射する電磁波の伝搬方向とx軸とがなす角度である。

【0115】
図27はパターンBのこの移動後の溝表面及び基板表面上の電磁界を示している。

【0116】
次いで、結像パターンシミュレーションシステム60の綴合波計算手段64により、接合面の綴合波を計算する処理が行われる(図5のステップS4)。

【0117】
図28、図29及び図30はこの結像パターンシミュレーションシステム60の接合面の綴合波計算処理を説明するためのものである。接合部付近の溝を図28に示すように分類する。即ち、Pan:パターンA側の接合部から図にて左にn個目の溝、Pbn:パターンB側の接合部から図にて右にn個目の溝とする。また、上下領域と接合部付近の境界を図29に示すように分類する。即ち、Ca0:パターンA側の溝を除く物体表面(溝によって数カ所分断されているがまとめてCa0とする)、Ca1n:溝Panと基板との境界、Ca2n:溝Panの表面、Cb0:パターンB側の溝を除く物体表面(溝によって数カ所分断されているがまとめてCb0とする)、Cb1n:溝Pbnと基板との境界、Cb2n:溝Pbnの表面、S:マスク外部の領域、S:マスク内部の領域、S:溝内部の領域とする。なお、上述の境界において接合部より十分遠方の境界は無視するものとする。接合後の厳密な電磁界は図30に示すようになる。ただし、f01(ρ)、Δf(1)(ρ)、Δf(2)(ρ)はライブラリに保存されている現時点で既知の成分(パターン位置の移動により変化している)、f(ρ)、Δf(ρ)は綴合波(現時点で未知の成分)である。

【0118】
下記の連立積分方程式を解き、マスク表面上の綴合波が求められる。このように積分方程式をコンピュータによって解く場合は、図31に示すように、素子表面を短い線分(境界要素)に分割し、各要素に異なる未知変数f(ρ)又はΔf(ρ)を割り当てることにより、積分方程式は一次連立方程式に帰着される。連立方程式は、市販のソフトウェアやLAPACKなどのオープンソースソフトウェアを用いて容易に計算可能である。

【0119】
【数19】
JP2016086060A_000021t.gif

【0120】
このような積分方程式を解くことによって、境界上の綴合波が求められる。マスク(外部又は内部)の任意の点の電磁界は、積分方程式の解が得られた後、下式の積分表現を用いて計算される。

【0121】
【数20】
JP2016086060A_000022t.gif

【0122】
瞳面上の点Pの綴合波は、以下の式によって計算される(瞳面はS1側のマスクから遠方に存在する)。

【0123】
【数21】
JP2016086060A_000023t.gif

【0124】
その後、結像パターンシミュレーションシステム60の第2の結像パターン作成手段65により、第1の結像パターン及び綴合波から最終的な第2の結合パターンを作成する処理が行われる(図5のステップS5)。

【0125】
例えば、パターンAとパターンBとを貼り合わせた(接合した)後の結像パターンf(ρ)は、パターン0単独、パターンA単独及びパターンB単独の結像パターンをそれぞれf(ρ)、f(ρ)及びf(ρ)とすると、計算した綴合波の結像パターンf(ρ)を用いて下式から計算される。

【0126】
【数22】
JP2016086060A_000024t.gif

【0127】
なお、f(ρ)、f(ρ)及びf(ρ)はライブラリに保存されているものを使用する。また、綴合波の結像パターンf(ρ)は、瞳面上の綴合波をフーリエ変換して求められる。即ち、結像面がレンズの焦点位置に配置されている場合、瞳面上の電磁界と結像面上の電磁界とはフーリエ変換の関係にある。従って、結像パターン(結像面の電磁界)f′(x)は、瞳面上の電磁界分布f(i)を用いて下式で計算される。

【0128】
【数23】
JP2016086060A_000025t.gif

【0129】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の結像パターンシミュレーションシステム、結像パターンシミュレーション方法、結像パターンシミュレーションプログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体は、フォトマスクの設計、及びフォトマスクの異物の影響の解析に使用することができる。
【0131】
フォトマスクの設計は、マスクを設計する際に、露光像が所望の回路パターンとなるように、マスクパターンを最適設計する際に使用するものである。具体的には、マスクが作る露光像を、本発明のシミュレーションを用いて計算する。露光像と目的の回路パターンとの間にずれがあれば、そのずれに相当する箇所のマスクパターンを変更し、以上の処理を繰り返して行う。
【0132】
フォトマスクの異物の影響の解析は、マスクに異物や汚れが付着すると、露光像には、パターンの歪み、又は配線パターンの切断若しくはショートなどが起こるため、マスクの製造中に混入する可能性のある異物が露光結果にどのように影響するかをシミュレーションして明らかにしておくものである。この解析結果に基づいて、マスク製造工程を改善したり、実際に現れた露光像の歪みから原因となった異物を特定することにより、歩留まり改善を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0133】
40 バス
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 HDD
45 画像処理部
46 外部メモリ駆動装置
47 入出力インタフェース
48 表示ディスプレイ
49 BD/DVD/CD
50 キーボード
51 マウス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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