TOP > 国内特許検索 > 燃料電池 > 明細書

明細書 :燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6213958号 (P6213958)
公開番号 特開2014-123554 (P2014-123554A)
登録日 平成29年9月29日(2017.9.29)
発行日 平成29年10月18日(2017.10.18)
公開日 平成26年7月3日(2014.7.3)
発明の名称または考案の名称 燃料電池
国際特許分類 H01M   8/0606      (2016.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  27/10        (2006.01)
B01J  23/50        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
B01J  23/30        (2006.01)
H01M   8/00        (2016.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01M  14/00        (2006.01)
FI H01M 8/06 R
B01J 35/02 J
B01J 27/10 M
B01J 23/50 M
B01J 23/42 M
B01J 23/30 M
H01M 8/00 Z
H01M 8/10
H01M 14/00 P
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2013-211926 (P2013-211926)
出願日 平成25年10月9日(2013.10.9)
優先権出願番号 2012223765
2012254796
優先日 平成24年10月9日(2012.10.9)
平成24年11月21日(2012.11.21)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成28年3月24日(2016.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】泉 康雄
【氏名】小倉 優太
【氏名】藤嶋 幸子
審査官 【審査官】武市 匡紘
参考文献・文献 特開2006-302695(JP,A)
特開2012-050913(JP,A)
国際公開第2012/120835(WO,A1)
特開2011-213553(JP,A)
調査した分野 H01M 8/00-8/24
C01B 3/00-6/34
B01J 21/00-38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
酸水溶液と、
前記酸水溶液中に浸され、一方が前記酸水溶液中の水を酸素とプロトンに分解する光触媒が形成されてなり、他方が前記プロトンと酸素を反応させて水に戻す光触媒が形成されてなる一対の電極と、
前記酸水溶液、酸素ガス、及び、前記光触媒が形成された一対の電極を収容し、少なくとも一部が透過性を有する部材で構成される収容部材と、
前記一対の電極の間に配置され、前記収容部材を分け、かつ、前記プロトンを透過可能なイオン交換膜と、
を有する燃料電池。
【請求項2】
収容部材のカソード側に酸素ガスを含む、請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記光触媒は、WO及びTiOの少なくともいずれかを含む請求項1記載の燃料電池。
【請求項4】
前記光触媒がWO、Ag/TiO、Pt/TiOおよびBiOClの少なくともいずれかを含む請求項1記載の燃料電池。
【請求項5】
前記透過性を有する部材は、200nm以上700nm以下の範囲の波長領域において60%以上の透過性を有する請求項1記載の燃料電池。
【請求項6】
前記酸水溶液、前記酸素ガス、前記一対の電極及び前記光触媒を収容する空間が密封されている請求項1記載の燃料電池。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、燃料の酸化還元反応を用いることにより電気を取り出すことのできる電池であり、一般に、酸素と水素の反応を用いて電気を取り出すものであって、重金属等を使う他の化学電池に比べ地球環境に優しく、現在も活発に研究開発が行われている。
【0003】
また、上記燃料電池において、光エネルギーを用いてより効率的に電気を取り出そうとする試みがなされており、例えば下記特許文献1に、光触媒を用いた燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009-218080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、メタノール等の液相燃料を使用しており、その場で燃料を合成するような仕組みではない。さらに、液相燃料の酸化反応を含むため、温室効果ガスである二酸化炭素が発電時に発生してしまうといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、二酸化炭素を発生させることなく、より簡便な構成により電気を発生することのできる光触媒を用いた燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一の観点に係る燃料電池は、酸水溶液と、酸水溶液中に浸される一対の電極と、酸水溶液中の水を分解する光触媒と、酸水溶液、一対の電極及び光触媒を収容し、少なくとも一部が透過性を有する部材で構成される収容部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明により、二酸化炭素を発生させることなく、より簡便な構成により電気を発生することのできる光触媒を用いた燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る燃料電池の断面の概略を示す図である。
【図2】酸化タングステンの紫外可視スペクトルを示す図である。
【図3】WO光触媒による水の光酸化分解反応試験での経時変化を示す図である。
【図4】実施例1,2,3,5,6に係るセルの断面の概略図である。
【図5】実施例で電極を結線することにより形成される回路を示す図である。
【図6】実施例1に係る燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。
【図7】実施例2に係る燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。
【図8】実施例3に係る燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。
【図9】実施例3に係る燃料電池の起電力を測定した結果の図である。
【図10】実施例4に係るセルの断面の概略図である。
【図11】実施例4に係る燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。
【図12】実施例5に係る燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。
【図13】BiOClの紫外可視スペクトルを示す図である。
【図14】実施例6に係る電解液がpH3の塩酸水溶液である燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。
【図15】実施例6に係る電解液がpH2の塩酸水溶液である燃料電池の回路に流れる電流の変化を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る燃料電池(以下「本電池」という。)1の概略を示す図である。本電池1は、酸水溶液2と、窒素ガスまたは酸素ガス3と、酸水溶液2中に浸される一対の電極4と、酸水溶液2中の水を分解する光触媒5と、酸水溶液2、窒素ガスまたは酸素ガス3、一対の電極4及び光触媒5を収容し、少なくとも一部が透過性を有する部材で構成される収容部材6と、を有する。本電池は、一対の電極を電子部品を介して導線により接続することで一対の電極間に電気を流すことができる。
【0012】
本実施形態において酸水溶液2は、酸を含み酸性を示す水溶液をいう。酸性とすることで、水溶液内でプロトンが関わる化学反応を速めるといった効果がある。pHとしては、上記効果を達成することができる限りにおいて限定されるわけではないが6以下であることが好ましく、より好ましくは2以上5以下の範囲である。
【0013】
また本実施形態において、酸水溶液2に含まれる酸としては、本実施形態の効果を達成することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、等を挙げることができる。とりわけ、酸水溶液の濃度を変化させることが容易な、強酸性の塩酸、硫酸、硝酸がとりわけ好適である。酸水溶液2は、水溶液中の水が光触媒によって分解される際に生ずる電子を外部回路に供給するのに対応してプロトンをもう一方の電極触媒に伝達するのに必要な物質である。
【0014】
また本実施形態において、酸素ガス3は、プロトン及び電子と反応して水となり、一対の電極間に電気を流すのに必要な物質である。酸素ガス3は、収容部材外部から常時供給する構成としてもよく、また収容部材6中に密封された状態としても、または外部から供給せずに収容部材6内で循環する構成としてもよい。密封する場合、酸素ガスの圧力(分圧)としては、例えば0.2atm以上1.1atm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0015】
また本実施形態において一対の電極4は、酸水溶液2中に浸されるとともに、水溶液中の水が光触媒によって分解される際に生ずる電子を外部回路に供給する一方、外部回路を経由して戻ってきた電子が電極4内において、酸水溶液2からイオン交換膜を通過したプロトン及び酸素ガスと反応して水を発生させる。本実施形態に係る電極4の材料としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、C、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(fluorine-doped Tin Oxide)、TO(Tin Oxide)などを含んだものを採用することができる。なお、ITO等の薄膜を電極として用いる場合、ガラス等の基板上に付することが好ましい。
【0016】
また本実施形態において光触媒5(アノード側)は、光が照射されることによって水溶液中の水を分解することができるものであり、より具体的には水を酸素、プロトン、電子に分解させるものである。本実施形態に係る光触媒5の例としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、WO、TiO、SnO、及びZnOの少なくともいずれかを含むものであることが好ましい。これらは200nm以上700nm以下の範囲の波長領域において上記分解活性を十分に発揮することができ、とりわけ紫外可視領域近傍の光で発電することが可能となる。
【0017】
なお、下記に、光触媒による反応について示す。本電池では、アノードで水を光分解して水素を得て、カソードでその水素を化学反応させる。この際の両極間での電子の移動を電力として得る。具体的には、水溶液に浸けたアノード電極光触媒に紫外可視光を照射すると、光触媒内に励起電子と正孔が発生する。この正孔が消費されることで、水が酸素とプロトンとに分解されて(下記反応式1)、電子が過剰の状態になる。この電子が外部回路を、反応1で生じたプロトンが酸水溶液および膜をそれぞれ伝わり、カソードに到達する。カソード電極光触媒の選択により、たとえばプロトンを酸素と反応させ、水に戻すことができる(下記反応式2)。またプロトンと電子との反応により水素ガスとして取り出すこともできる(下記反応式3)。
【数1】
JP0006213958B2_000002t.gif

【0018】
また本実施形態において、光触媒は、上記電極の両方の上に形成されていることが好ましい。電極上に光触媒を配置すると、電極に極めて近い位置で光触媒反応を起こし、水を酸素とプロトンに分解させる一方、電子を外部回路に供給させやすくなる。 また光触媒を、カソード側においても配置することが好ましい。カソード側の電極上に配置することで外部回路経由で伝達してきた電子が光触媒内に取り込まれやすくなり、その結果酸素ガスの光を利用した還元反応がより促進されるといった効果がある。 本実施形態に係る光触媒5(カソード側)の例としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、WO、およびナノ粒子担持n型半導体、例えばPt-TiO、Ag-TiO、および各種p型半導体、例えばBiOCl,CaFe,ZnMn,InP,AgGaSの少なくともいずれかを含むものであることが好ましいが、これに限定されるものではない。ここでより仕事関数が大きい金属のナノ粒子に接した担持n型半導体は、金属ナノ粒子との界面においてバンドが高エネルギー側に曲がるため、n型半導体から金属ナノ粒子に流れた電子は逆に戻りにくくなり、整流作用を示すことでカソードにおいて円滑に光還元作用を示すと考えることができる。一方、各種p型半導体では水溶液との界面においてバンドが低エネルギー側に曲がるため、カソードに用いた場合には水溶液中に電子を移行させやすく、やはり円滑に光還元作用を示すといえる。
【0019】
また本実施形態において、収容部材6は、上記のとおり、酸水溶液2、窒素ガスまたは酸素ガス3、一対の電極4及び光触媒5を収容し、少なくとも一部が透過性を有する部材で構成されている。ここでいう透過性とは、光触媒による反応に必要な範囲の光のうち60%以上透過させるものをいい、より具体的には、上記200nm以上700nmの波長範囲にある光のうち60%を透過するものをいい、より好ましくは70%、更に好ましくは80%以上である。本実施形態に係る収容部材の材料としては、上記機能を有し、酸水溶液や酸素ガスと不要な反応をしない限りにおいて限定されるわけではないが、例えば金属やガラス等を用いることができ、一部に透過性を有する部材として、石英ガラス、耐熱ガラス等を用いることが好ましい。なおこの透過性を有する部材近傍に、電極を配置することが反応効率の観点から好ましい。
【0020】
また本電池は、一対の電極の間に配置され、収容部材を分けるイオン交換膜7を有する。このイオン交換膜は異符号のイオンの通過を阻止し、同符号のイオンのみを通過させる性質を持ち、材料としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、フッ素樹脂等の高分子樹脂中に、硫酸基やカルボキシル基などを含んだものを採用することができる。なおこのイオン交換膜7によって収納部材6の内部は2つに分割されることとなり、一方で水から酸素とプロトンが、他方からプロトンと酸素の反応によって水をえるものであるため、一方に酸素ガスを、他方に非酸化性のガス(例えば窒素ガス)等を充填させることが好ましい。またこのイオン交換膜7はイオンの効率的な移動のためには備えておくことが好ましいが、後述の実施例からも明らかなように、設けない場合も可能である。さらに、酸素ガスを外部から供給することなく、収容部材6内で循環させる構成も可能である。
【0021】
以上、本電池により、二酸化炭素を発生させることなく、より簡便な構成により電気を発生することのできる光触媒を用いた燃料電池を提供することができる。特に、本電池では、燃料としての水素を光触媒によって水から、なおかつ、その場で得ることができる。この動作原理により、従来の燃料としての水素あるいは有機燃料をセル自身に投入する必要がなく、原理的にきわめてクリーンで、安全である。水を分解してまた水に戻るというサイクルを中心にするため、二酸化炭素などの余計な環境負荷となる生成物も生じない。
【実施例】
【0022】
以下、上記実施形態にかかる電池の効果について実際に作成を行ない、その効果を確認した。以下具体的に示す。
【0023】
(実施例1:WO) まず、タングステン酸アンモニウム5水和物((NH
101241・5HO)3.01グラムを空気中、700℃で、4時間焼成し酸化タングステンWOを得た。このWOについて紫外可視スペクトルを測定すると、紫外光領域から400~500nmの可視光領域にかかる吸収端を示した。この結果を図2に示す。これより、このWOは半導体性を有することが分かった。
【0024】
次に、上記で得られたWO159ミリグラムを石英窓付き耐熱ガラス製ガラス容器に入れ、pH2の塩酸水溶液、および犠牲酸化剤として57ミリグラムの塩化鉄(III)6水和物を加えた。400rpm(回転/分)で磁気攪拌を行いながら2時間アルゴンガスを流通させることで、水溶液中の溶存酸素を除去した。その後、容器を密閉し480Wキセノンアーク灯から光照射し、同じく400rpmで磁気攪拌を続けた。アーク灯照射直前、2.5時間後、5時間後、7.5時間後、10時間後の容器中各気相部分を取り出し、熱伝導度検出器(TCD)式ガスクロマトグラフィで分析した。分析結果を図3および下記表1に示す。10時間の反応試験でOガスの継続的生成が認められ、生成O量は時間とともに直線的に増加した。以上から、WOにより水の光酸化分解が起き、Oガスが生成することが示された。
【0025】
一方、上記で得られたWO160ミリグラムを石英窓付き耐熱ガラス製ガラス容器に入れ、pH2の塩酸水溶液、および犠牲酸化剤として58ミリグラムの塩化鉄(III)6水和物を加えた。容器をアルミホイルで覆って完全に遮光し、400rpmで磁気攪拌を行いながら2時間アルゴンガスを流通させ水溶液中の溶存酸素を除去した。さらに容器を遮光したまま密閉し400rpmで磁気攪拌を続けた。5時間後の容器中の気相部分をTCD式ガスクロマトグラフィで分析した。分析結果を下記表1に示す。遮光時にはOガスの生成が認められず、WOによる水の酸化分解は光照射が原因となって起きたことの裏付けとなった。
【表1】
JP0006213958B2_000003t.gif

【0026】
また、カーボン紙(ケミックス製;面積20×21 mm)に28ミリグラムのWOをマウントし、WO電極とした。同様にカーボン紙に酸化チタン(P25、日本アエロジル製)64ミリグラムをマウントしTiO電極とした。
【0027】
そして、両側に石英窓が付いた耐熱ガラスガラス容器の中央をプロトン伝導性高分子膜で仕切って反応セルとした(図4)。両側にpH3の塩酸水溶液を加え、WO電極およびTiO電極を、それぞれの水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。
【0028】
その後、WO電極およびTiO電極に、それぞれ窒素、酸素ガスを100mL/minの速度でバブリングしながら流通させ、WO電極に480Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。ガスは流通させたままとした。このon/offサイクルを5回繰り返し、回路に流れる電流の変化をモニターした。
【0029】
この測定結果を図6に示す。アーク灯照射中にTiO電極からWO電極への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。2HO→O+4H+4eの反応式に従いTiO電極が水を光酸化して、光反応セルその場でプロトンが得られたことが分かる。電流値は1.4~5.8μAの間であった(下記表3参照)。
【0030】
(実施例2:酸化チタン) まず、ヘキサクロロ白金酸6水和物(H[PtIVCl2-・6HO、30ミリグラム)を含む水溶液(3 mL)に、酸化チタン(P25、日本アエロジル製)を1.02グラム加えた。磁気攪拌および超音波処理し、湯浴で水を留去後100℃で24時間乾燥させた。乾燥後の粉末を空気中400℃で2時間焼成し、Pt/TiOを得た。カーボン紙(面積2.0 cm)にTiO(65ミリグラム)を物理的にマウントし、TiO電極とした。また、カーボン紙(面積2.0 cm)にPt/TiO(60ミリグラム)を物理的にマウントし、Pt/TiO電極とした。
【0031】
そして、両側に石英窓が付いた耐熱ガラスガラス容器の中央をプロトン伝導性高分子膜で仕切って反応セルとした(図4)。両側にpH3の塩酸水溶液を加えた。上記で作成したTiO電極およびPt/TiO電極を、それぞれの水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。TiO電極およびPt/TiO電極に、それぞれ窒素、酸素ガスを100 mL/minの速度でバブリングしながら流通させ、TiO電極およびPt/TiO電極双方に480 Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。ガスは流通させたままとした。このon/offサイクルを5回繰り返し、回路に流れる電流の変化をモニターした。
【0032】
測定結果を図7に示す。アーク灯照射中にTiO電極からPt/TiO電極への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。2HO→O+4H+4eの反応式に従い、TiO電極が水を光酸化してその場でプロトンが得られ、同時に得られた電子が外部回路を経てカソード側の光触媒Pt/TiOによってプロトンとの光触媒反応により消費されたことが分かった。電流値は27~59μAの間であった(下記表3参照)。
【0033】
(実施例3) まず、0.15 mLの水に、実施例2で得られたPt/TiOを10.7ミリグラム加え撹拌し、Pt/TiOペーストを作成した。
【0034】
ITO被膜付ガラス(面積25×17mm)にTiOペースト(Peccell製)を塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 10.5ミリグラム)とした。同様に、ITO被膜付ガラス(面積16×8mm)にPt/TiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しPt/TiO電極(Pt/TiO 6.0ミリグラム)とした。
【0035】
上記実施例2と同様の反応セル(図4)中、両側にpH3の塩酸水溶液を加えた。上記で作成したTiO電極およびPt/TiO電極を、それぞれの水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。TiO電極およびPt/TiO電極に、それぞれ窒素、酸素ガスを100mL/minの速度でバブリングしながら流通させ、TiO電極およびPt/TiO電極双方に480Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。ガスは流通させたままとした。このon/offサイクルを5回繰り返し、回路に流れる電流の変化をモニターした。合計5時間のモニター後、アーク灯照射下で15分間、アーク灯消灯下で15分間、この光燃料電池の起電力を測定した。
【0036】
測定結果を図8、9に示す。アーク灯照射中にPt/TiO電極側への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。これに加えて、アーク灯の照射時は電位差も14倍程度に大幅に増加している。2HO→O+4H+4eの反応式に従い、TiO電極が水を光酸化してその場でプロトンが得られ、その電子がカソード側の光触媒Pt/TiOによってプロトンとの光触媒反応により消費され、電流および0.89Vの起電力が生じたことが分かった。電流値は18~40μAの間であった(下記表3参照)。
【0037】
(実施例4) まず、酸化チタン(P25)1.00グラムを3mLの水に加え、磁気攪拌および超音波処理し、湯浴で水を留去後100℃で24時間乾燥させた。乾燥後の粉末を空気中400℃で2時間焼成した。0.15mLの水に焼成済TiOを11.1ミリグラム加え、撹拌してTiOペーストを作成した。
【0038】
ITO被膜付ガラス(面積13×9mm)にTiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 5.0ミリグラム)とした。同様に、上記実施例と同様にしてPt/TiO電極(面積14×10mm、Pt/TiO 5.7ミリグラム)を得た。
【0039】
次に、両側に石英窓が付いた耐熱ガラス製反応セル(図10)中に、pH3の塩酸水溶液を加えた。上記で作成したTiO電極およびPt/TiO電極を水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。セル内に酸素ガスを100mL/minの速度で5時間バブリングして流通させた。その後容器を密閉し、TiO電極およびPt/TiO電極双方に480 Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。このon/offサイクルを5回繰り返し、回路に流れる電流の変化をモニターした。
【0040】
測定結果を図11に示す。アーク灯照射中にTiO電極からPt/TiO電極への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。光燃料電池を完全に閉鎖した系とし、酸素や窒素を流通させるのではなく酸素を充填した条件で、さらにアノード側・カソード側の両電解槽をプロトン電導膜で仕切らずに同一電解槽とした条件でも発電が可能であることが示された。電流値は6.4~14μAの間であった(下記表3参照)。
【表2】
JP0006213958B2_000004t.gif
【表3】
JP0006213958B2_000005t.gif

【0041】
(実施例5) まず、酸化チタン(P25)1.00グラムを3mLの水に加え、磁気攪拌および超音波処理し、湯浴で水を留去後100℃で24時間乾燥させた。乾燥後の粉末を空気中400℃で2時間焼成した。0.15mLの水に焼成済TiOを10.2ミリグラム加え、撹拌してTiOペーストを作成した。
【0042】
ITO被膜付ガラス(面積17×10mm)にTiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 5.5ミリグラム)とした。
【0043】
ITO被膜付ガラス(面積16×9mm)にTiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 4.3ミリグラム)とした。
【0044】
ITO被膜付ガラス(面積16×10mm)にTiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 4.9ミリグラム)とした。
【0045】
硝酸銀(AgNО、18ミリグラム)を含む水溶液(10.3mL)に、酸化チタン(P25、日本アエロ
ジル製)を3.43グラム加えた。磁気攪拌および超音波処理し、湯浴で水を留去後100℃で24時間乾燥させた。乾燥後の粉末を空気中400℃で2時間焼成し、Ag/TiO(0.33重量%-Ag)を得た。ITO被膜付ガラス(面積16×8mm)にAg/TiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しAg/TiO(0.33重量%-Ag)電極5.6ミリグラムを得た。
【0046】
硝酸銀(24ミリグラム)を含む水溶液(4.65mL)に、酸化チタン(P25)を1.54グラム加えた。磁気攪拌および超音波処理し、湯浴で水を留去後100℃で24時間乾燥させた。乾燥後の粉末を空気中400℃で2時間焼成し、Ag/TiO(1.0重量%-Ag)を得た。上記と同様にしてAg/TiO(1.0重量%-Ag)電極5.3ミリグラムを得た。
【0047】
硝酸銀(65ミリグラム)を含む水溶液(4.1mL)に、酸化チタン(P25)を1.38グラム加えた。磁気攪拌および超音波処理し、湯浴で水を留去後100℃で24時間乾燥させた。乾燥後の粉末を空気中400℃で2時間焼成し、Ag/TiO(3.0重量%-Ag)を得た。上記と同様にしてAg/TiO(3.0重量%-Ag)電極5.8ミリグラムを得た。
【0048】
上記実施例2および3と同様の反応セル(図4)中、両側にpH3の塩酸水溶液を加えた。上記実施例で作成したTiO電極および上記のAg/TiO(0.33、1.0、あるいは3.0重量%-Ag)電極を、それぞれの水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。TiO電極およびAg/TiO電極に、それぞれ窒素、酸素ガスを100mL/minの速度でバブリングしながら流通させ、TiO電極およびAg/TiO電極双方に480Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。ガスは流通させたままとした。このon/offサイクルを5回繰り返し、回路に流れる電流の変化をモニターした。
【0049】
測定結果を図12に示す。アーク灯照射中にTiO電極からAg/TiO電極への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。カソード触媒がAg/TiOでも発電が可能であることが示され、電流値もAgの担持量に応じて上昇することが示された。電流値はAg/TiO(0.33重量%-Ag)電極、Ag/TiO(1.0重量%-Ag)電極、Ag/TiO(3.0重量%-Ag)電極、でそれぞれ9.4~13μA、15~21μA、22~27μAの間であった(下記表5参照)。
【0050】
【表4】
JP0006213958B2_000006t.gif

【0051】
【表5】
JP0006213958B2_000007t.gif

【0052】
(実施例6)
エチレングリコール65mLに1.61グラムの硝酸ビスマス・5水和物(Bi(NO・5HO)とCTAC(セチルトリメチルアンモニウムクロリド)([(CHNC1633]Cl)1.06グラムを混合、17℃で1時間攪拌した。これに1.0M KOHのエチレングリコール溶液を加えpHを1.0に調整した。この溶液をオートクレーブに封入し、160℃で12時間置いた。得られた沈殿物を水とエタノールで洗浄し、50℃で18時間乾燥させ、オキシ塩化ビスマスBiOClを得た。
【0053】
上記BiOClについて紫外可視スペクトルを測定すると300~400 nmの紫外光領域に吸収端を示した。この結果を図13に示す。これより、このBiOClは半導体性を有することが分かった。
【0054】
0.15mLの水に、TiO(P25)を10.1ミリグラム加え撹拌し、TiOペーストを作成した。ITO被膜付ガラス(面積13×10mm)にTiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 6.3ミリグラム)とした。同様に、BiOCl電極(面積14×10mm、BiOCl 3.3ミリグラム)を得た。
【0055】
上記実施例2、3および5と同様の反応セル(図4)中、両側にpH3の塩酸水溶液を加えた。上記で作成したTiO電極およびBiOCl電極を、それぞれの水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。TiO電極およびBiOCl電極に、それぞれ窒素、酸素ガスを100 mL/minの速度でバブリングしながら流通させ、TiO電極およびBiOCl電極双方に480Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。ガスは流通させたままとした。このon/offサイクルを5回繰り返し、回路に流れる電流の変化をモニターした。
【0056】
測定結果を図14に示す。アーク灯照射中にTiO電極からBiOCl電極への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。2HO→O+4H+4eの反応式に従い、TiO電極が水を光酸化してその場でプロトンが得られ、同時に得られた電子が外部回路を経てカソード側の光触媒BiOClによってプロトンとの光触媒反応により消費されたことが分かった。電流値は26~34μAの間であった(下記表7参照)。
【0057】
(実施例7)
0.15mLの水に、TiO(P25)を10.3ミリグラム加え撹拌し、TiOペーストを作成した。ITO被膜付ガラス(面積14×9mm)にTiOペーストを塗布し100℃で乾燥後、空気中300℃で30分間加熱しTiO電極(TiO 6.4ミリグラム)とした。同様に、BiOCl電極(面積15×10mm、BiOCl 3.7ミリグラム)を得た。
【0058】
上記実施例2、3および5と同様の反応セル(図4)中、両側にpH2の塩酸水溶液を加えた。上記で作成したTiO電極およびBiOCl電極を、それぞれの水溶液に浸した。さらに両電極を結線した回路(図5)を構成した。TiO電極およびBiOCl電極に、それぞれ窒素、酸素ガスを100 mL/minの速度でバブリングしながら流通させ、TiO電極およびBiOCl電極双方に480Wアーク灯から光照射した。30分間光照射した後、光照射を30分間停止した。ガスは流通させたままとした。このon/offサイクルを5回繰り返した後、1時間光照射を続け、回路に流れる電流の変化をモニターした。
【0059】
測定結果を図15に示す。アーク灯照射中にTiO電極からBiOCl電極への電子移動(あるいは逆方向への電流)が認められ、アーク灯の照射を止めるとすぐに電子移動も停止した。2HO→O+4H+4eの反応式に従い、TiO電極が水を光酸化してその場でプロトンが得られ、同時に得られた電子が外部回路を経てカソード側の光触媒BiOClによってプロトンとの光触媒反応により消費されたことが分かった。電流値は59~211μAの間であった(下記表7参照)。
【0060】
【表6】
JP0006213958B2_000008t.gif

【0061】
【表7】
JP0006213958B2_000009t.gif

【0062】
以上、本電池により、二酸化炭素を発生させることなく、より簡便な構成により電気を発生することのできる光触媒を用いた燃料電池を提供することができることを確認した。特に、本電池では、燃料としての水素を光触媒によって水から、なおかつ、その場で得ることができる。この動作原理により、従来の燃料としての水素あるいは有機燃料をセル自身に投入する必要がなく、原理的にきわめてクリーンで、安全である。水を分解してまた水に戻るというサイクルを中心にするため、二酸化炭素などの余計な環境負荷となる生成物も生じないといった効果もある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14