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明細書 :水中位置関係情報取得システム及び水中位置関係情報取得方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-035328 (P2014-035328A)
公開日 平成26年2月24日(2014.2.24)
発明の名称または考案の名称 水中位置関係情報取得システム及び水中位置関係情報取得方法
国際特許分類 G01S   5/30        (2006.01)
FI G01S 5/30
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2012-178124 (P2012-178124)
出願日 平成24年8月10日(2012.8.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 東京海洋大学海運ロジスティクス専攻修士学位論文発表会 平成24年2月14日
発明者または考案者 【氏名】近藤 逸人
【氏名】福地 鉄雄
【氏名】似鳥 一彦
【氏名】五十嵐 正夫
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】591065859
【氏名又は名称】株式会社SGKシステム技研
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査請求 未請求
テーマコード 5J083
Fターム 5J083AD01
5J083AD06
5J083AE03
5J083BE08
5J083CA04
5J083CA12
要約 【課題】音源装置側と水中航走体側とで同期をとることなく、且つ長い基線長の配列物を水中航走体側に装備する必要もなく、音源装置側から送波された送信波形に基づいて水中航走体側で位置関係情報を求めることができる水中位置関係情報取得システムを提供する。
【解決手段】従来のパッシブレンジングの1個の音源(送波器)と3個以上の受波器という組み合わせを、3個以上の送波器14~14からなる送波器配列と、1個の受波器21に置き換える。これにより、各送波器14~14から送信される音響信号の当該受波器21への到達時間差を求めることにより、当該送波器14~14の配列から見た受波器21の相対位置関係情報を水中航走体2側で得る。水中航走体2側から音波を送信する必要がないことに加え、長い基線長の配列物を水中航走体2側に装備する必要もなくなるという利点がある。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
誘導目標に設置された送信側装置から送波された音響信号を、水中航走体に設置された受信側装置で受波することで、前記誘導目標に対する前記水中航走体の位置関係情報を取得する水中位置関係情報取得システムであって、
前記送信側装置は、
送信波形を生成する送信波形生成手段と、
分散して配列され、前記送信波形を前記音響信号として送波する3個以上の送波器とを具備し、
前記受信側装置は、
3個以上の前記送波器から前記音響信号としてそれぞれ送波された前記送信波形を受波する受波器と、
前記受波器によって受波された前記送信波形を送波した前記送波器を特定する送波器特定手段と、
該送波器特定手段によって特定された前記送波器と前記受波器によって前記送信波形が受波されたタイミングとに基づいて、3個以上の前記送波器から前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出する到達時間差算出手段と、
前記送波器の配列情報が記憶されている送信情報記憶手段と、
該送信情報記憶手段に記憶されている前記配列情報と前記到達時間差算出手段によって算出された前記到達時間差とに基づいて、前記誘導目標に対する位置関係情報を算出する位置関係情報算出手段とを具備することを特徴とする水中位置関係情報取得システム。
【請求項2】
前記送信側装置の送信波形生成手段は、3個以上の前記送波器から送波される前記送信波形を互いに異なる波形で生成させ、
前記受信側装置の前記送波器特定手段は、前記受波器によって受波された前記送信波形に基づいて前記送波器を特定することを特徴とする請求項1記載の水中位置関係情報取得システム。
【請求項3】
前記位置関係情報算出手段は、前記水中航走体の深度を補完情報として用いて前記位置関係情報を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の水中位置関係情報取得システム。
【請求項4】
前記受信側装置は、
分散して配列された複数の受波器を具備し、
前記到達時間差算出手段は、3個以上の前記送波器のうちの少なくとも1つから複数の前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出し、
前記位置関係情報算出手段は、前記受波器の配列に設定された局所座標系で見た前記位置関係情報を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水中位置関係情報取得システム。
【請求項5】
前記位置関係情報算出手段は、前記受波器の配列の地球座標系に対する向きの情報を補完情報として用いて前記位置関係情報を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の水中位置関係情報取得システム。
【請求項6】
誘導目標に設置された送信側装置の3個以上の送波器から送波された音響信号を受波することで、前記誘導目標に対する位置関係情報を取得する受信側装置であって、
3個以上の前記送波器から前記音響信号としてそれぞれ送波された送信波形を受波する受波器と、
前記受波器によって受波された前記送信波形を送波した前記送波器を特定する送波器特定手段と、
該送波器特定手段によって特定された前記送波器と前記受波器によって前記送信波形が受波されたタイミングとに基づいて、3個以上の前記送波器から前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出する到達時間差算出手段と、
前記送波器の配列情報が記憶されている送信情報記憶手段と、
該送信情報記憶手段に記憶されている前記配列情報と前記到達時間差算出手段によって算出された前記到達時間差とに基づいて、前記誘導目標に対する位置関係情報を算出する位置関係情報算出手段とを具備することを特徴とする受信側装置。
【請求項7】
誘導目標に設置された送信側装置から送波された音響信号を、水中航走体に設置された受信側装置で受波することで、前記誘導目標に対する前記水中航走体の位置関係情報を取得する水中位置関係情報取得方法であって、
前記送信側装置は、送信波形を生成し、生成した送信波形を、分散して配列された3個以上の送波器から前記音響信号として送波し、
前記受信側装置は、受波器によって3個以上の前記送波器から前記音響信号としてそれぞれ送波された前記送信波形を受波し、
前記受波器によって受波された前記送信波形を送波した前記送波器を特定し、
特定した前記送波器と前記受波器によって前記送信波形が受波されたタイミングとに基づいて、3個以上の前記送波器から前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出し、
送信情報記憶手段に前記送波器の配列情報を記憶しておき、
前記配列情報と算出した前記到達時間差とに基づいて、前記誘導目標に対する位置関係情報を算出することを特徴とする水中位置関係情報取得方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、AUV(Autonomous Underwater Vehicle)等の水中航走体と、ドックや母船等の誘導目標との位置関係情報を、水中航走体側で取得する水中位置関係情報取得システム及び水中位置関係情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中航走体が誘導目標に自動的に接近できるためには、水中航走体と誘導目標との位置関係情報を水中航走体側で知ることが不可欠である。このような位置関係情報を求める手段としては光を含む電磁波を用いるものと音波を用いるものがある。前者の電磁波は、水中での伝搬損失が大きいため位置関係情報が得られる距離範囲はおおよそ数m以内に限られる。一方、後者の音波は、周波数に依存するものの電磁波と比して伝搬損失が小さいため位置関係情報の得られる範囲を数十mから数百mとすることが可能である。
【0003】
ところで、音波の送信は光と比べ大きな電力を要する。また、位置関係情報を得るため水中航走体側から音波を送信するようにすれば、複数の水中航走体の同時誘導を想定した場合、水中航走体間で信号の干渉問題が生じ、それを避けようとすると自動誘導システムは極めて複雑なものとなる。従って、水中航走体における消費電力低減や、複数の水中航走体間の干渉問題回避によるシステム簡易化の面で、水中航走体側からは音波を送信しないようにすることが望ましい。
【0004】
水中航走体側からは音波を送信しないで、すなわち水中航走体は音波を受信するだけで、所要の位置関係情報を得る方法としては、音源装置における音波の送信時刻と水中航走体における音波の受波時刻とに基づいて、複数の音源装置と水中航走体との距離をそれぞれ求め、水中航走体の位置を計測する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの方法では、音源装置側と水中航走体側とで同期をとったり、音源装置側と水中航走体側とに高精度の時計を設けたりして、音源装置と水中航走体とで時刻を高精度に合わせている。音源装置と水中航走体とで時刻を高精度に合わせるためには、定期的なメンテナンスが必要となり、維持コストが高価なものになってしまう。
【0005】
そこで、音波を出す音源装置側と測位情報を得る水中航走体側とで同期をとることや測位情報を得る側で高精度の時計を必要としない方法として、パッシブレンジングによる方法が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。パッシブレンジングの原理は、測位情報を得る側に3個以上の受波器で構成される受波器配列を置き、当該受波器配列によって音源側からの音波を受信し、当該受波器間の音波到達時間差を求めることで、当該受波器配列と音源との相対位置関係情報を得るものである。当該パッシブレンジングで得られる位置関係情報の内容は用いる受波器配列の形状や当該配列を成す受波器個数で変化する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平10-111352号公報
【特許文献2】特開2005-321225号公報
【0007】

【非特許文献1】G. Clifford Carter, “Variance bounds for passively locating an acoustic source with a symmetric line array”, J. Acoust. Soc. Am.62(4), 922-927 (1977)
【非特許文献2】M. Meister & D. Neumeister, “ADVANCED RANGING SONAR : PASSIVE RANGE MEASUREMENT WITH LINE-ARRAYS”, Proceedings of UDT Europe 2006 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のパッシブレンジングにより位置関係情報を求める場合、信号対雑音比や受波器配列における各受波器取り付け精度を考慮すれば、一般に、受波器配列長を測位最大距離の数%以上にとる必要がある。誘導目標(音源装置)と水中航走体間距離の最大値を例えば50mとすれば、とるべき受波器配列長(一般に基線長といわれる)は1~2m程度となる。従って、水中航走体を小型化しようとすればするほど、このような基線長を有する受波器配列を水中航走体に装備することは困難になってしまうという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来技術の問題を解決することができる水中位置関係情報取得システム及び水中位置関係情報取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水中位置関係情報取得システムは、誘導目標に設置された送信側装置から送波された音響信号を、水中航走体に設置された受信側装置で受波することで、前記誘導目標に対する前記水中航走体の位置関係情報を取得する水中位置関係情報取得システムであって、前記送信側装置は、送信波形を生成する送信波形生成手段と、分散して配列され、前記送信波形を前記音響信号として送波する3個以上の送波器とを具備し、前記受信側装置は、3個以上の前記送波器から前記音響信号としてそれぞれ送波された前記送信波形を受波する受波器と、前記受波器によって受波された前記送信波形を送波した前記送波器を特定する送波器特定手段と、該送波器特定手段によって特定された前記送波器と前記受波器によって前記送信波形が受波されたタイミングとに基づいて、3個以上の前記送波器から前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出する到達時間差算出手段と、前記送波器の配列情報が記憶されている送信情報記憶手段と、該送信情報記憶手段に記憶されている前記配列情報と前記到達時間差算出手段によって算出された前記到達時間差とに基づいて、前記誘導目標に対する位置関係情報を算出する位置関係情報算出手段とを具備することを特徴とする。
さらに、本発明の水中位置関係情報取得システムにおいて、前記送信側装置の送信波形生成手段は、3個以上の前記送波器から送波される前記送信波形を互いに異なる波形で生成させ、前記受信側装置の前記送波器特定手段は、前記受波器によって受波された前記送信波形に基づいて前記送波器を特定するようにしても良い。
さらに、本発明の水中位置関係情報取得システムにおいて、前記位置関係情報算出手段は、前記水中航走体の深度を補完情報として用いて前記位置関係情報を算出することを特徴とするようにしても良い。
さらに、本発明の水中位置関係情報取得システムにおいて、前記受信側装置は、分散して配列された複数の受波器を具備し、前記到達時間差算出手段は、3個以上の前記送波器のうちの少なくとも1つから複数の前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出し、前記位置関係情報算出手段は、前記受波器の配列に設定された局所座標系で見た前記位置関係情報を算出するようにしても良い。
さらに、本発明の水中位置関係情報取得システムにおいて、前記位置関係情報算出手段は、前記受波器の配列の地球座標系に対する向きの情報を補完情報として用いて前記位置関係情報を算出するようにしても良い。
また、本発明の受信側装置は、誘導目標に設置された送信側装置の3個以上の送波器から送波された音響信号を受波することで、前記誘導目標に対する位置関係情報を取得する受信側装置であって、3個以上の前記送波器から前記音響信号としてそれぞれ送波された送信波形を受波する受波器と、前記受波器によって受波された前記送信波形を送波した前記送波器を特定する送波器特定手段と、該送波器特定手段によって特定された前記送波器と前記受波器によって前記送信波形が受波されたタイミングとに基づいて、3個以上の前記送波器から前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出する到達時間差算出手段と、前記送波器の配列情報が記憶されている送信情報記憶手段と、該送信情報記憶手段に記憶されている前記配列情報と前記到達時間差算出手段によって算出された前記到達時間差とに基づいて、前記誘導目標に対する位置関係情報を算出する位置関係情報算出手段とを具備することを特徴とする。
また、本発明の水中位置関係情報取得方法は、誘導目標に設置された送信側装置から送波された音響信号を、水中航走体に設置された受信側装置で受波することで、前記誘導目標に対する前記水中航走体の位置関係情報を取得する水中位置関係情報取得方法であって、前記送信側装置は、送信波形を生成し、生成した送信波形を、分散して配列された3個以上の送波器から前記音響信号として送波し、前記受信側装置は、受波器によって3個以上の前記送波器から前記音響信号としてそれぞれ送波された前記送信波形を受波し、前記受波器によって受波された前記送信波形を送波した前記送波器を特定し、特定した前記送波器と前記受波器によって前記送信波形が受波されたタイミングとに基づいて、3個以上の前記送波器から前記受波器への前記送信波形の到達時間差を算出し、送信情報記憶手段に前記送波器の配列情報を記憶しておき、前記配列情報と算出した前記到達時間差とに基づいて、前記誘導目標に対する位置関係情報を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音源装置側と水中航走体側とで同期をとることなく、且つ長い基線長の配列物を水中航走体側に装備する必要もなく、音源装置側から送波された送信波形に基づいて水中航走体側で位置関係情報を求めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る水中位置関係情報取得システムの第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す送波器及び受波器の位置関係を示す説明図である。
【図3】本発明に係る水中位置関係情報取得システムの第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す送波器及び受波器の位置関係を示す説明図である。
【図5】本発明に係る水中位置関係情報取得システムの第3の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示す送波器及び受波器の位置関係を示す説明図である。
【図7】本発明に係る水中位置関係情報取得システムの第4の実施の形態における送波器及び受波器の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。

【0014】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の水中位置関係情報取得システムは、図1を参照すると、誘導目標1に設定された送信側装置10と、水中航走体2に設置された受信側装置20とで構成されている。なお、水中航走体2は、AUV(Autonomous Underwater Vehicle)等の自律型無人潜水機であり、誘導目標1は、水中航走体2が帰還するドックや母船等の基地である。

【0015】
送信側装置10は、送信波形記憶部11と、送信波形生成部12と、送信波形処理部13~13、送波器14~14とを備え、送波器14~14から音響信号を同時に送信する。

【0016】
送信波形記憶部11は、フラッシュメモリ等の記憶手段であり、送波器14~14から送信する送信波形がそれぞれ記憶されている。送波器14~14から送信するそれぞれの送信波形は、互いに異なる波形であり、例えば、M系列信号やGold系列信号等の互いに相関性の低い信号である。

【0017】
送信波形生成部12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピューター等の情報処理部である。ROMには送信波形生成部12の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、送信波形生成部12として機能する。

【0018】
送信波形生成部12は、送信波形記憶部11に記憶されている送信波形に基づいて送波器14~14から送信する互いに相関性の低い送信波形をそれぞれ生成し、生成した送信波形を送信波形処理部13~13にそれぞれ同時に出力する。

【0019】
送信波形処理部13~13は、入力された送信波形に対してD/A変換や増幅等の信号処理を施し、信号処理を施した送信波形を送波器14~14にそれぞれ出力する。

【0020】
送波器14~14は、入力された送信波形を音響信号に変換する水中音響トランスデューサであり、送信波形処理部13~13からそれぞれ入力された送信波形を音響信号に変換し水中に送出する。これにより、送波器14~14から互いに相関性の低い送信波形が音響信号として同時に送出されることになる。

【0021】
送波器14~14は、図2を参照すると、水平面に分散して配列されており、送波器14と送波器14とを結ぶ線分上に送波器14が配列されている。送波器14を直交座表系(X,Y,Z)の原点とし、送波器14~送波器14が配列されている直線をX軸とすると、X軸と直交するY軸上に送波器14が配列されている。従って、送波器14~14のそれぞれの座標は、(0,0,0)、(-D,0,0)、(D,0,0)および(0,D,0)で表すことができる。

【0022】
受信側装置20は、図1を参照すると、受波器21と、受波信号処理部22と、送信情報記憶部23と、送波器特定部24と、到達時間差算出部25と、位置ベクトル算出部26とを備えている。

【0023】
受波器21は、送波器14~14から送出された音響信号を受波する水中マイクロフォンであり、受波した音響信号を電気信号である受波信号に変換して出力する。図2を参照すると、直交座表系(X,Y,Z)の原点である送波器14から送出された音響信号は、送波器14と受波器21とを結ぶ直線rを伝搬して受波器21に到達する。同様に、送波器14から送出された音響信号は、送波器14と受波器21とを結ぶ直線rを、送波器14から送出された音響信号は、送波器14と受波器21とを結ぶ直線rを、送波器14から送出された音響信号は、送波器14と受波器21とを結ぶ直線rをそれぞれ伝搬して受波器21に到達する。

【0024】
受波信号処理部22は、受波器21から出力された受波信号に対して、増幅、直交検波A/D変換等の信号処理を行い、信号処理を施した受波信号を送波器特定部24に出力する。

【0025】
送信情報記憶部23は、フラッシュメモリ等の記憶手段であり、送波器14~14から送信されるそれぞれの送信波形と、送波器14~14の配列情報(送波器14を直交座表系(X,Y,Z)の原点とした場合の送波器14~14のそれぞれの座標)とが記憶されている。

【0026】
送波器特定部24、到達時間差算出部25及び位置ベクトル算出部26は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピューター等の情報処理部である。ROMには送波器特定部24、到達時間差算出部25及び位置ベクトル算出部26の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、送波器特定部24、到達時間差算出部25及び位置ベクトル算出部26としてそれぞれ機能する。

【0027】
送波器特定部24は、入力された受波信号と送信情報記憶部23に記憶されている送波器14~14の送信波形との相関を求めることで、入力された受波信号を送出した送波器14~14をそれぞれ特定し、送波器14~14から送信されたそれぞれの送信波形が受波されたそれぞれのタイミングを時刻t~tとして到達時間差算出部25にそれぞれ出力する。

【0028】
到達時間差算出部25は、送波器特定部24から入力された時刻t~tに基づき、
送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻tを基準にし、時刻tと送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻tとの到達時間差τ01と、時刻tと送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻tとの到達時間差τ02と、時刻tと送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻tとの到達時間差τ03とを算出し、算出した到達時間差τ01、到達時間差τ02及び到達時間差τ03を位置ベクトル算出部26に出力する。

【0029】
位置ベクトル算出部26は、入力された到達時間差τ01、到達時間差τ02及び到達時τ03と、送信情報記憶部23に記憶されている送波器14~14の配列情報とに基づいて、直交座表系(X,Y,Z)で見た航走体2の位置ベクトル(厳密に言えば、受波器21の位置ベクトル)を算出する。

【0030】
位置ベクトル算出部26による直交座表系(X,Y,Z)で見た受波器21の位置ベクトルの算出動作について詳細に説明する。
送波器14と受波器21とを結ぶ直線rを、誘導目標1と航走体2を結ぶスラントレンジrとし、音響信号(音波)の伝搬速度をCとすると、スラントレンジrは、入力された到達時間差τ01、到達時間差τ02及び到達時間差τ03と、送信情報記憶部23に記憶されている送波器14~14の配列情報とを用いて、位置ベクトル算出部26において次式で求めることができる。

【0031】
【数1】
JP2014035328A_000003t.gif

【0032】
また、X座標軸に関する直線rの方向余弦角をθ、およびY座標軸に関する直線rの方向余弦角をθとそれぞれすると、それぞれの方向余弦cosθ及びcosθは、位置ベクトル算出部26において次式で求めることができる。

【0033】
【数2】
JP2014035328A_000004t.gif

【0034】
従って、直交座表系(X,Y,Z)で見た水中航走体2の位置ベクトル(厳密に言えば、受波器21の位置ベクトル)をP=[x,y,zとすると、水中航走体2の位置ベクトルPは、位置ベクトル算出部26において次式で求めることができる。なお、[]のtは転置を表す。

【0035】
【数3】
JP2014035328A_000005t.gif

【0036】
ところで、[数3]式で示されるように、送波器14~14の配列を第1の実施の形態のようにした場合、Z成分の符号判別に関して曖昧さが生じる。しかし、例えば、送波器14~14の配列の後方(本実施例の場合は-Z方向)からの音波を遮断するような遮音措置等を講ずればこのような曖昧さをなくすることができ、その場合には、位置ベクトル算出部26において、水中航走体2の位置ベクトルPを曖昧さなく、次式で求めることができる。

【0037】
【数4】
JP2014035328A_000006t.gif

【0038】
以下、他の実施の形態においても、特段の断りがない限り、符号の曖昧さを解消する措置が講じられているものと想定し、水中航走体2の位置ベクトルPはZ成分の符号の曖昧さなく求められるものとする。

【0039】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の水中位置関係情報取得システムは、図3及び図4を参照すると、誘導目標1に設定された送信側装置10aと、水中航走体2に設置された受信側装置20aとで構成されている。

【0040】
送信側装置10aは、第1の実施の形態の送信側装置10の構成から送波器14を除いた構成であり、送波器14~14から互いに相関性の低い送信波形を音響信号として同時に送出する。

【0041】
受信側装置20aは、第1の実施の形態の受信側装置20の構成に加えて、受波器21の近傍に配置された深度計27を備えている。図4に示すzは、直交座表系(X,Y,Z)における水中航走体2のZ成分である。送波器14~14が水平面に配列されており、直交座表系(X,Y,Z)のZ軸が鉛直軸方向と一致する場合には、水中航走体2のZ成分zは、送波器14と受波器21との深度差となる。従って、送信情報記憶部23に送波器14~14の配列情報として送波器14の深度が記憶されていると、深度計27によって計測された深度に基づいて、水中航走体2のZ成分zが求められる。

【0042】
図4に示すように、直交座表系(X,Y,Z)のX軸上に並んだ3個の送波器14~14から送出される送信波形のみでは、スラントレンジrと方向余弦cosθとが求まるだけであるが、深度計27によって計測された深度に基づいて水中航走体2のZ成分zを求めることができるため、水中航走体2の位置ベクトルPは、Y成分の符号の曖昧さを伴うものの、位置ベクトル算出部26において次式で求めることができる。

【0043】
【数5】
JP2014035328A_000007t.gif

【0044】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の水中位置関係情報取得システムは、図5及び図6を参照すると、第2の実施の形態と同一構成の送信側装置10aと、水中航走体2に設置された受信側装置20bとで構成されている。

【0045】
受信側装置20bは、受波器21~21からなるUSBL(Ultra Short BaseLine)受波器配列の受波器アレイと、受波信号処理部22~22と、送信情報記憶部23aと、送波器特定部24aと、到達時間差算出部25aと、位置ベクトル算出部26aと、水中航走体2のヘディングの方向、ロール角及びピッチ角を測る方位姿勢センサ28とを備えている。

【0046】
USBL受波器配列は、3つの受波器21~21がL字型に配列されたものである。図6に示すように、受波器21を直交座表系(X’,Y’,Z’)の原点とし、X’軸を水中航走体2の船軸とすると、受波器21~21は、Y’-Z’平面に配列され、受波器21は、Y’軸上に、受波器21は、Z’軸上にそれぞれ配列されている。これにより、送波器14から送出された音響信号は、送波器14と受波器21とを結ぶ直線rを伝搬して受波器21に到達すると共に、送波器14と受波器21とを結ぶ直線r01を伝搬して受波器21に到達し、さらに、送波器14と受波器21とを結ぶ直線r02を伝搬して受波器21に到達する。なお、受波器21~21のそれぞれの座標は、(0,0,0)、(0,d,0)および(0,0,d)で表すことができ、この座標は、送信情報記憶部23aに受波器配列情報として記憶されている。

【0047】
受波器21~21によって受波された音響信号は、受波信号に変換され、それぞれ受波信号処理部22~22によって信号処理が施され、送波器特定部24aに入力される。

【0048】
送波器特定部24aは、先の実施の形態における送波器特定部24の機能に加え、送波器14から送信された送信波形が受波器21及び受波器21よって受波されたそれぞれの時刻t1'~t2'を到達時間差算出部25aにそれぞれ出力する。

【0049】
到達時間差算出部25aは、先の実施の形態における到達時間差算出部25の機能に加え、送波器特定部24から入力された時刻t1'~t2'に基づき、送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻tを基準にし、時刻tと送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻t1'との到達時間差ξ01'と、時刻tと送波器14からの送信波形が受波器21に到達する時刻t2'との到達時間差ξ02'とを算出し、到達時間差ξ01'及び到達時間差ξ02'を位置ベクトル算出部26に出力する。

【0050】
位置ベクトル算出部26bは、先の実施の形態における位置ベクトル算出部26の機能に加え、入力された到達時間差ξ01'及び到達時間差ξ02'と、送信情報記憶部23aに記憶されている受波器21~21の配列情報とに基づいて、直交座表系(X’,Y’,Z’)で見た誘導目標1の位置ベクトル(厳密に言えば、送波器14の位置ベクトル)を算出する。

【0051】
位置ベクトル算出部26bによる直交座表系(X’,Y’,Z’)で見た送波器14の位置ベクトルの算出動作について詳細に説明する。
Y’座標軸に関する直線rの方向余弦角をθy’、およびZ’座標軸に関する直線rの方向余弦角をθz’とそれぞれすると、それぞれの方向余弦cosθy’及びcosθz’は、位置ベクトル算出部26において次式で求めることができる。

【0052】
【数6】
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【0053】
従って、直交座表系(X’,Y’,Z’)で見た誘導目標1の位置ベクトル(厳密に言えば、送波器14の位置ベクトル)をP’=[x’,y’,z’]とすると、送波器14の位置ベクトルP’は、位置ベクトル算出部26aにおいて次式で求めることができる。なお、rは、[数1]式で求めたスラントレンジである。

【0054】
【数7】
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【0055】
ところで、[数7]式で示されるように、受波器21~21の配列を第3の実施の形態のようにした場合、X’成分の符号判別に関して曖昧さが生じる。しかし、例えば、受波器21~21の配列の後方(本実施例の場合は-X’方向)からの音波を遮断するような遮音措置等を講ずればこのような曖昧さをなくすることができ、その場合には、位置ベクトル算出部26aにおいて、送波器14の位置ベクトルP’を曖昧さなく、次式で求めることができる。

【0056】
【数8】
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【0057】
以下、第3の実施の形態においては、特段の断りがない限り、符号の曖昧さを解消する措置が講じられているものと想定し、送波器14の位置ベクトルP’はX’成分の符号の曖昧さなく求められるものとする。

【0058】
ここで、送波器14~14が配列されている直交座表系(X,Y,Z)のいわゆる地球座標系に対する回転角が水中航走体2(位置ベクトル算出部26a)側において既知であると仮定する。すなわち、原点を送波器14に置き、経度軸をx座標軸、鉛直をz軸とする座標系を(x,y,z)とし、当該座標系に対する直交座表系(X,Y,Z)の回転(ロール角α、ピッチ角β及びヨー角γ)が水中航走体2(位置ベクトル算出部26a)側において既知である。また、方位姿勢センサ28によって水中航走体2のヘディングの方向と、ロール角、ピッチ角を測定され、受波器21~21が配列されている直交座表系(X’,Y’,Z’)のいわゆる地球座標系に対する回転角が水中航走体2(位置ベクトル算出部26a)側において既知であると仮定する。すなわち、原点を受波器21に置き、経度軸をx座標軸、鉛直をz軸とする座標系を(x’,y’,z’)とし、当該座標系に対する直交座表系(X’,Y’,Z’)の回転(ロール角α、ピッチ角β及びヨー角γ)が水中航走体2(位置ベクトル算出部26a)側において既知である。さらに、いずれの場合も、軸が上向きに傾く角度をピッチの正、軸が下向きに傾く角度をロールの正および軸が地軸から時計回りに回転する角度をヨーの正であるとする。そうすると、直交座表系(X,Y,Z)でみた水中航走体2(受波器21)の位置ベクトルは、位置ベクトル算出部26aにおいて次式で求めることができる。

【0059】
【数9】
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【0060】
ただし、[数9]式においてΛα(x),Λβ(x),Λγ(x)はそれぞれロール、ピッチおよびヨーに関する以下で示されるような変換行列であり、Λ-1α(x)=Λα(-x),Λ-1β(x)=Λβ(-x)及びΛ-1γ(x)=Λγ(-x)の関係が成り立つ。

【0061】
【数10】
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【0062】
以上のように、第3の実施の形態によれば、送波器14~14の向きが任意、すなわち、ドック等の誘導目標1が任意の向きであったとしても、送波器14~14が配列されている直交座表系(X,Y,Z)で見た水中航走体2(受波器21)の位置を、水中航走体2側において算出することができる。なお、第2の実施の形態で示したような送波器14~14の配列であっても、送波器配列を本実施例のようにした場合でも、位置ベクトルPのY成分が求まる。

【0063】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態の水中位置関係情報取得システムは、第1の実施の形態に、第3の実施の形態の機能を付加したシステムであり、図7に示すように、誘導目標1には、4個の送波器14~14が、水中航走体2には、USBL受波器配列の3つの受波器21~21がそれぞれ備えられている。

【0064】
第4の実施の形態では、位置ベクトル算出部26において、水中航走体2の位置ベクトルPを[数4]式で求めることができる。

【0065】
ここで、送波器14~14は、第3の実施の形態のロール角α、ピッチ角β及びヨー角γに加えて、例えばヨーに関して新たにγTAの回転が生ずるものとする。そうすると以下の式が成り立つ。

【0066】
【数11】
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【0067】
なお、この場合のPは、当該ベクトルのx成分およびy成分をrcosθ、をrcosθで置き換えることはできず、Pは以下の式で表される。

【0068】
【数12】
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【0069】
この[数12]式から関係式が得られる。

【0070】
【数13】
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【0071】
従って、水中航走体2において[数13]式にヒットするような角度γTAを求めるならば、水中航走体2(位置ベクトル算出部26a)側において、送波器14~14の地軸に対する新たな回転角γTAを知ることができる。新たな回転角度がロールのαTAである場合又はピッチのβTAである場合も同様となる。第4の実施の形態によれば、ドック等の誘導目標1が船舶などに取り付けられ、ヨー等が時間とともに変化するような場合でも、ドック等の誘導目標1からの通信手段を要することなく、当該ドック等の誘導目標1の向きを水中航走体2(位置ベクトル算出部26a)側において算出することができる。

【0072】
以上説明したように、第1及び第2の実施の形態によれば、従来のパッシブレンジングの1個の音源(送波器)と3個以上の受波器という組み合わせを、3個以上の送波器14~14からなる送波器配列と、1個の受波器21に置き換える、「逆パッシブレンジング」の構成を備えている。これにより、水中航走体2側から音波を送信する必要がないことに加え、長い基線長の配列物を水中航走体2側に装備する必要もなくなるという利点がある。さらに、各送波器14~14から送信される音響信号の受波器21への到達時間差を求めることにより、送波器14~14の配列から見た受波器の相対位置関係情報を水中航走体2側で得る構成になっているため、3個以上の送波器14~14からは、水中航走体2側時計とは非同期に送波することができる。

【0073】
さらに、第3及び第4の本実施の形態によれば、受波器21~21からなる受波器配列を用い、送波器配列の少なくとも1つの送波器からの信号を受波器配列で受信して当該各受波器間の到達時間差を求めることにより、水中航走体2側において当該送波器と受波器配列間を結ぶ直線が当該受波器配列に置かれた座標系の直交する座標軸の2つ以上に対する方向余弦を求めるように構成されている。これにより、受波器配列の座標系に対する方向余弦を得ることができ、水中航走体2の誘導制御にとってより有効な新たな位置関係情報を水中航走体2側で得ることができる。

【0074】
さらに、第2の実施の形態によれば、水中航走体2の深度を補完情報として用いることで、送波器個数を3とした直線配列の送波器配列の場合でも、3次元位置関係情報を曖昧さなく得られるという利点がある。

【0075】
さらに、第4の実施の形態によれば、水中航走体2に自身の地軸に対するヘディング方向と自身の姿勢角とを測る方位姿勢センサを取り付けることによって、送波器配列の向き(送波器配列を取り付けたドックなどの誘導目標1の向き)を水中航走体2側で知ることができる。従って、送波器配列が船舶などに取り付けられ、その向きが時間とともに変化する場合でも、当該向きを水中航走体2側において、通信手段を用いなくても知ることができるという利点がある。

【0076】
さらに、第1乃至第4の本実施の形態によれば、水中航走体2側から音波を送信することはない逆パッシブレンジングと水中航走体2側の受波器配列による方向測定によるものであるから、誘導対象の航走体が複数となっても誘導システムに付加的機能は不要であり、水中航走体2の群誘導などへの適用も容易であるという利点を有する。

【0077】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0078】
1 誘導目標
2 水中航走体
10、10a 送信側装置
11 送信波形記憶部
12 送信波形生成部
13~13 送信波形処理部
14~14 送波器
20、20a、20b 受信側装置
21、21~21 受波器
22、22~22 受波信号処理部
23、23a 送信情報記憶部
24、24a 送波器特定部
25、25a 到達時間差算出部
26、26a 位置ベクトル算出部
27 深度計
28 方位姿勢センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6