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明細書 :呼吸計測方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6014846号 (P6014846)
公開番号 特開2014-023550 (P2014-023550A)
登録日 平成28年10月7日(2016.10.7)
発行日 平成28年10月26日(2016.10.26)
公開日 平成26年2月6日(2014.2.6)
発明の名称または考案の名称 呼吸計測方法および装置
国際特許分類 A61B   5/113       (2006.01)
A61B   5/103       (2006.01)
A61B   5/22        (2006.01)
FI A61B 5/10 315
A61B 5/10 ZDM
A61B 5/22 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2012-163670 (P2012-163670)
出願日 平成24年7月24日(2012.7.24)
審査請求日 平成27年6月25日(2015.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】510108951
【氏名又は名称】公立大学法人広島市立大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】青木 広宙
【氏名】古川 亮
【氏名】佐川 立昌
【氏名】川崎 洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
審査官 【審査官】▲高▼ 芳徳
参考文献・文献 特表2010-508128(JP,A)
特開2005-246033(JP,A)
特開平11-276443(JP,A)
調査した分野 A61B 5/11 - 5/113
A61B 5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
自転車エルゴメータを運転する人の胸腹部の距離変動分布を算出することでその呼吸を非接触で計測する呼吸計測方法において、
前記人の胸腹部に該当する領域を格子状の複数の領域に分割する第1のステップと、
該第1のステップで分割された各領域についてアクティブステレオ法に基づいて取得した距離変動を周波数分析する第2のステップと、
該第2のステップの周波数分析の結果から得られたパワースペクトラムのピークの大きさが最大となる周波数を各領域の主要周波数として算定する第3のステップと、
該第3のステップで各領域の内で算定された主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出する第4のステップと、
該第4のステップで抽出された各呼吸主要領域において距離変動波形に対し呼吸周波数帯のバンドパスフィルター処理を行うことで呼吸波形を抽出し全呼吸主要領域における平均呼吸波形を算出する第5のステップと、
を含むことを特徴とする呼吸計測方法。
【請求項2】
自転車エルゴメータを運転する人の胸腹部の距離変動分布を計測することでその呼吸を非接触で計測する呼吸計測装置であって、
アクティブステレオ法に基づいて前記人の胸腹部の距離分布情報を取得する距離分布取得手段と、
該距離分布取得手段により取得された距離分布を時系列に差分することで距離変動分布を算出する距離変動分布取得手段と、
該距離変動分布取得手段により取得された距離変動分布において前記人の胸腹部に該当する領域を格子状の複数の領域に分割する第1のステップと、該第1のステップで分割された各領域の距離変動を周波数分析する第2のステップと、該第2のステップの周波数分析の結果から得られたパワースペクトラムのピークの大きさが最大となる周波数を各領域の主要周波数として算定する第3のステップと、該第3のステップで各領域の内で算定された主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出する第4のステップと、該第4のステップで抽出された各呼吸主要領域において距離変動波形に対し呼吸周波数帯のバンドパスフィルター処理を行うことで呼吸波形を抽出し全呼吸主要領域における平均呼吸波形を算出する第5のステップとを実行することで呼吸波形を取得する呼吸波形取得手段と、
を備えることを特徴とする呼吸計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車エルゴメータによるペダルこぎ運動中の呼吸を非接触で計測する呼吸計測方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動負荷試験とは、運動中の心拍応答や血圧あるいは心電図など、医学的な側面から身体の生理学的な変化を確認し、より安全に効果的な運動を行なうために実施される体力測定・運動能力測定である。
【0003】
運動負荷試験において算定される指標のひとつとして、嫌気性作業閾値(AT:Anaerobic Threshold)が知られている。ATは最大酸素摂取量と同様に全身持久力(スタミナ)の体力指標として用いられ、最大限までの運動を実施しなくても算定可能であることから、健康づくりや生活習慣病の予防・改善を目的とした運動における強度の目安として広く利用されている。ATにおける運動強度は、最大運動の50~60%程度の運動強度に相当し、かつ、キツさを感じない程度の無理なく実施可能な運動である。血液中の乳酸が急増しないため運動を長時間持続でき、息切れを起こさない、心臓への負担が少ないという利点がある。
【0004】
このATは概念的な指標であることから、より具体的な指標として、換気性作業閾値(VT:Ventilation Threshold)や乳酸性作業閾値(LT:Lactate Threshold)が、指標として利用されている(非特許文献1)
【0005】
運動負荷試験では、呼気ガス分析装置を併用することで、非侵襲的に全身持久性体力や運動の安全限界などを客観的に測定できる。特に、直線的漸増負荷法(ランプ負荷法)は、安全性と効果の両面で有効とされるVTを測定する上で有効な方法と考えられている。ランプ負荷法は、自転車エルゴメータを用いて行われるのが一般的であり、ランプ負荷法による測定の利点として、運動の強度を定量化できること、また、負荷を細かく設定できることが挙げられる。
VTは、筋肉への酸素供給が十分に足りている状態から不足が生じる状態に移行する変化点となる運動強度であり、この変化点は、運動負荷の漸増に伴い、以下の生理現象として現れる。
1)酸素摂取量の増加に対して二酸化炭素排出量の増加が上回る。
2)換気量の増加割合が上昇する。
【0006】
VT算定において用いられる呼気ガス分析装置は、流量計、酸素濃度計、二酸化炭素濃度計からなる測定部分と、それらの測定値からVO2、VCO2、VEなどの基本的パラメータを計算する演算部、さらにこれらのデータに心拍数や血圧などを加えてモニター画面に表示したり、ATなどを決定するための解析部からなる。ガス分析器と流量計の組合せによる測定モードとしてはBreath-by-breath法が広く用いられている。Breath-by-breath法においては、呼気と吸気のガス濃度の差からVO2、VCO2を求める方法である。他にも、Mixing chamber法と呼ばれる方法が知られているが、非定常状態では誤差が大きく測定値の信頼性が極めて低下することから、漸増負荷試験にはBreath-by-breath法が適していると考えられている(非特許文献2)。
【0007】
しかし、一般に、呼気ガス分析装置は大変に高価であるため、医療機関や研究機関でしか利用されていないのが現状であり、スポーツクラブなどで気軽に利用することはできない。呼気ガス分析装置による測定時には、口鼻を覆う形でマスクを着用する必要があるため、運動中の呼吸が自然な状態であるとは言い難い。また、測定終了後にマスクの洗浄が必要である。このため、拘束感が少なく簡便な測定が実施しにくいといった欠点を持つ。
本発明の発明者の内のひとりは、VTが運動負荷の漸増に伴い換気量の増加割合が上昇する点として現れることに着目し、画像工学技術を応用した非接触呼吸計測方法を応用したVT算定方法について提案している(非特許文献3)。この非接触呼吸計測方法は、胸腹部に投影しパターン光を撮影し、動画像解析することにより非接触での呼吸計測を実現するものであり、本発明の発明者の内のひとりによってなされた発明(特許文献1)に示された非接触呼吸計測方法に基づくものである。
【0008】
非特許文献3においては、リカベント型自転車エルゴメータによるペダルこぎ運動中の非接触呼吸計測が実現できることが明らかとなり、さらに、VT算定が高い精度で実施可能であることが示されている。非特許文献3に示された非接触呼吸計測方法を応用したVT算定方法について以下に説明する。
【0009】
図10および図11にシステム構成の概要を示す。図10にはリカンベント型自転車エルゴメータを用いる場合の構成が、図11にはアップライト型自転車エルゴメータを用いる場合の構成が、それぞれ記されている。
【0010】
システムにおいては、パターン光投影装置101および撮像装置102が、自転車エルゴメータ103でペダルこぎ運動を行う被験者104の正面に設置される。そして、パターン光投影装置101から被験者104の胸腹部にパターン光105が投影される。パターン光は撮像装置102により撮影され、画像処理装置106に動画像として取り込まれる。撮影される画像には、被験者の胸部、腹部、足の付け根が撮影される。被験者は、測定中、ペダルこぎ運動を行う。
【0011】
三角測量の原理に基づき、パターン光の画像中での座標は、実空間においてパターン光が投影されている座標と対応する。すなわち、画像中でのパターン光の分布は、被験者の胸腹部の三次元形状を反映している。当該手法はパターン光を投影しその分布を画像解析することで三次元形状を復元するアクティブステレオ法の一種であると言える。
【0012】
被験者の胸腹部の距離変化、すなわち、呼吸の上下動に伴い、動画像中のパターン光は画像中を周期的に移動する。動画像中のパターン光が移動する方向は、パターン光投影装置と撮像装置とを結ぶ方向である。図12に示す光学配置において被験者121の胸郭部の上下動ΔZと撮像素子122上(すなわち画像中)でのそれぞれのパターン光123の移動量ΔPとの間には次の数式の関係が成り立つ。
【数1】
JP0006014846B2_000002t.gif
(1)
【0013】
ここで、Lはパターン光投影装置のレンズ中心124と撮像装置のレンズ中心125との距離、Zはパターン光が投影された部位126と線分Lとの距離、ΔZはパターン光が投影された部位126の変動距離、デルタPは画像中におけるパターン光123の移動距離をそれぞれ示している。前記数式(1)は、三角測量の原理に基づくものである。Z>>ΔZであるから、画像中でのパターン光123の移動距離は、パターン光が投影された部位126の動きの大きさ、すなわち、被験者の動きの大きさと、比例関係にあると言える。
【0014】
呼吸を測定するために、まず、パターンのフレーム間移動量を算出する。そして、各パターンのフレーム間移動量を、全パターンについて総和を算出する。前記の通り、パターンのフレーム間移動量は三角測量の原理に基づき体表面と撮像装置との距離変化に相当することから、パターンのフレーム間移動量の総和は体積変化に相当する量である。
【0015】
被験者がペダルこぎ運動をせずにじっとしている状態(安静状態)においては、胸腹部に表れる動きは呼吸によるものである。したがって、パターンのフレーム間移動量の総和を時系列に並べることで呼吸波形が得られる。波形の正負符号は呼吸の状態を示し、呼気状態と吸気状態では符号が逆転する。
【0016】
前述の通り、当該手法は三角測量の原理に基づく測定法であることから、呼吸波形の積分値は、呼吸に伴う胸腹部の体積変動に相当する量である。それぞれの積分値の値を準一回換気量(QTV)と定義する。このQTVは実際の呼吸流量である一回換気量TVに準ずることから、QTVと1分間当りの呼吸数との積は、分時換気量(VE)に相当するものと考えることができる。ここで、QTVと1分間当りの呼吸数の積を、準分時換気量(QVE)と呼ぶこととする。当該手法においては、運動強度漸増に伴うQVEの増加率が変化する点に対応する運動強度をVTとして算定するものである。
【0017】
被験者がペダルこぎをしている状態では、胸腹部には呼吸による動き以外にペダルこぎによる動きが含まれるため、フレーム間移動量を時系列に並べて得られる波形は呼吸運動とペダルこぎ運動の合成波形である。上記のQVEの算出においては、ペダルこぎ運動成分はノイズ成分となるため、ペダルこぎ運動成分を除去する必要がある。
【0018】
当該手法では、被験者のペダルこぎのペダル回転数を、自転車エルゴメータによる運動で一般的に利用されるペダル回転数である60回転/分(1Hz)と定めることとした。被験者がペダルこぎを行っている状態で算出される波形から、ペダル回転数に対応する周波数(1Hz)よりも高い周波数成分を、ローパスフィルタ処理によりカットすることで、呼吸運動の周波数成分のみを抽出する。ローパスフィルタ処理によって抽出された呼吸運動成分波形は、呼吸の周期変動を示す。一般に自転車エルゴメータでは、ペダル回転数がメトロノーム音によって管理されるが、実際には誤差が含まれるため呼吸周波数以上の周波数成分をカットする。
【0019】
図13のグラフ中の細線は、運動強度100~140W時に実測された波形である。この測定波形から0.916Hz以下の低周波成分を抽出することで細線に示すような呼吸運動成分のみを抽出することが可能である。
【0020】
図14はランプ負荷法における当該非接触呼吸計測手法のQVE算定結果について示したグラフである。図14(1)はリカベント型自転車エルゴメータによる結果、図14(2)はアップライト型自転車エルゴメータによる結果をそれぞれ示している。同時計測結果として、呼気ガス分析装置による直接計測により得られたVEを併せて示している。この結果より、運動強度の漸増にともなうQVEとVEの変化は傾向として一致していることがわかる。すなわち、この結果は、当該非接触呼吸計測手法においても、呼気ガス分析装置と同様に運動強度漸増に伴う呼気量の変化を捉えることができていることを示している。
【0021】
一方で、部分的に両者の値に乖離が見られ、運動強度が増加するに連れて乖離が大きくなっていることがわかる。特に、アップライト型自転車エルゴメータにおいては、乖離の度合いが大きい。これは、運動強度の増加に伴い体動が大きくなるため、非接触呼吸計測手法において体動成分のカットが正確に行われていないためと考えられた。
このため、正確なVT算定のためには、より正確な運動中の非接触呼吸計測を実現する必要があるものと考えられた。
【先行技術文献】
【0022】

【特許文献1】特許第3477166号公報
【0023】

【非特許文献1】大宮一人:心筋梗塞.臨床スポーツ医学、16(7)、pp.763-769、1999
【非特許文献2】伊東春樹、谷口興一:Anaerobic Threshold(AT)、循環器負荷試験法、水野康、福田市蔵編、診断と治療社、pp.256-294、1991
【非特許文献3】青木広宙,市村志朗,藤原豊樹,清岡智,越地耕二,続敬之,仲村秀俊,藤本英雄:パターン光投影による非接触呼吸計測を用いた換気性作業閾値算定の提案、電気学会論文誌C、Vol.131-C、No.1、pp.152-159、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
前記の通り、これまで検討されてきたペダルこぎ運動中の非接触呼吸計測手法においては、運動強度の増加に伴い体動が大きくなることが原因となり、体動成分のカットが正確に行われず、正確な呼吸計測を実施できていないという課題が残されていた。このため、正確なVT算定のためには、より正確な運動中の非接触呼吸計測を実現する必要があるものと考えられる。
【0025】
本発明が解決しようとする課題は、自転車エルゴメータによるペダルこぎ運動中の非接触呼吸計測においてペダルこぎ運動と呼吸とを分離し呼吸波形のみを正確に抽出することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、第1に、自転車エルゴメータを運転する人の胸腹部の距離変動分布を算出することでその呼吸を非接触で計測する呼吸計測方法において、前記人の胸腹部に該当する領域を格子状の複数の領域に分割する第1のステップと、該第1のステップで分割された各領域についてアクティブステレオ法に基づいて取得した距離変動を周波数分析する第2のステップと、該第2のステップの周波数分析の結果から得られたパワースペクトラムのピークの大きさが最大となる周波数を各領域の主要周波数として算定する第3のステップと、該第3のステップで各領域の内で算定された主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出する第4のステップと、該第4のステップで抽出された各呼吸主要領域において距離変動波形に対し呼吸周波数帯のバンドパスフィルター処理を行うことで呼吸波形を抽出し全呼吸主要領域における平均呼吸波形を算出する第5のステップと、を含むことを特徴とする呼吸計測方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、第2に、自転車エルゴメータを運転する人の胸腹部の距離変動分布を計測することでその呼吸を非接触で計測する呼吸計測装置であって、アクティブステレオ法に基づいて前記人の胸腹部の距離分布情報を取得する距離分布取得手段と、該距離分布取得手段により取得された距離分布を時系列に差分することで距離変動分布を算出する距離変動分布取得手段と、該距離変動分布取得手段により取得された距離変動分布において前記人の胸腹部に該当する領域を格子状の複数の領域に分割する第1のステップと、該第1のステップで分割された各領域の距離変動を周波数分析する第2のステップと、該第2のステップの周波数分析の結果から得られたパワースペクトラムのピークの大きさが最大となる周波数を各領域の主要周波数として算定する第3のステップと該第3のステップで各領域の内で算定された主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出する第4のステップと、該第4のステップで抽出された各呼吸主要領域において距離変動波形に対し呼吸周波数帯のバンドパスフィルター処理を行うことで呼吸波形を抽出し全呼吸主要領域における平均呼吸波形を算出する第5のステップとを実行することで呼吸波形を取得する呼吸波形取得手段と、を備えることを特徴とする呼吸計測装置を提供する。
【発明の効果】
【0028】
第1の課題解決手段である呼吸計測方法および第2の課題解決手段である呼吸計測装置においては、呼吸運動に伴う距離変動が主要成分となる領域のみを呼吸波形算出に用いることで、ペダルこぎ運動の影響を効率的に除去し、正確な呼吸計測を実現する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の呼吸計測方法の各ステップについて示した流れ図である。
【図2】図2は本発明の呼吸計測方法の第1のステップにおける処理を示した説明図である。
【図3】図3は本発明の呼吸計測方法の第2のステップで得られたパワースペクトラムを示した説明図である。
【図4】図4は本発明の呼吸計測装置の構成を示した説明図である。
【図5】図5はプロトタイプシステムの距離分布取得手段で取得された距離分布情報を示した図面代用写真である。(実施例1)
【図6】図6はプロトタイプシステムの呼吸波形取得手段で格子状の領域に分割された胸腹部領域を示した図面代用写真である。(実施例1)
【図7】図7は主要周波数がペダルこぎ運動/呼吸の周波数帯である領域について示した図面代用写真である。(実施例1)
【図8】図8はプロトタイプシステムで得られた呼吸波形を示したグラフである。(実施例1)
【図9】図9はプロトタイプシステムで得られた呼吸波形から算出されたQVEの変化を示したグラフである。(実施例1)
【図10】図10は従来技術の構成を示した説明図である。
【図11】図10は従来技術の構成を示した説明図である。
【図12】図12は従来技術の計測原理を示した説明図である。
【図13】図13は従来技術の計測結果を示したグラフである。
【図14】図13は従来技術の計測結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の呼吸計測方法は、自転車エルゴメータを運転する人の呼吸を非接触で計測するものであり、図1に示すように5つのステップから構成される処理が行われる。本発明の呼吸計測方法において処理対象となる自転車エルゴメータを運転する人の胸腹部の距離変動分布は、アクティブステレオ法に基づき計測される。

【0031】
まず、第1のステップにおいては、図2に示すように、人の胸腹部に該当する領域21を格子状の複数の領域22に分割がなされる。人の胸腹部に該当する領域21の分割数あるいは格子状の複数の領域22の長辺/短辺の長さは適宜設定されるものであるが、実空間での格子の一辺の長さが5cm以下であれば十分である。

【0032】
次に、第2のステップにおいて、第1のステップで分割された各領域の距離変動を周波数分析する。周波数分析には、例えば、高速フーリエ変換が用いられる。各領域の周波数分析の結果としては、図3に示すようなパワースペクトラム31が得られる。

【0033】
そして、第3のステップでは、第2のステップの周波数分析の結果から各領域における主要周波数の算定が行われる。図3に示すように、各領域において算出されるパワースペクトラム31には、呼吸の周波数帯32およびペダルこぎ運動の周波数帯33にピーク34が現れる。ピーク34の大きさが最大となる周波数が各領域における主要周波数として考えることができる。

【0034】
第4のステップにおいては、第3のステップで各領域の内で算定された主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出する。図3のパワースペクトラム31においてピーク34が呼吸の周波数帯32に現れた領域は、呼吸運動が支配的な呼吸主要領域として考えられる。第4のステップでは、この領域を呼吸主要領域として定め、全領域の中から抽出する。

【0035】
第5のステップでは、第4のステップで抽出された各呼吸主要領域において距離変動波形に対し、呼吸周波数帯のバンドパスフィルター処理を行うことで、呼吸波形のみを抽出する。そして、全呼吸主要領域において呼吸波形の平均を求める。

【0036】
当該手法は三角測量の原理に基づく測定法であることから、呼吸波形を呼気あるいは吸気の一回分を時間積分した値は、呼気あるいは吸気の一回分の胸腹部の距離変動に相当する。さらに、その値に呼吸主要領域の面積分を乗じたものは、呼気あるいは吸気の一回分の胸腹部の体積変動に相当する。この値は一回換気量(TV)と準定量的に等しい値であることから準一回換気量(QTV)と呼ぶ。さらに、QTVと1分間当りの呼吸数との積は、分時換気量(VE)に準定量的に等しいと考えられるため準分時換気量(QVE)と呼ぶ。QVEは、QTVと1分間当りの呼吸数の積として算出することができる。そして、QVEの変化から人の作業性換気閾値を算定することが可能である。

【0037】
本発明の呼吸計測装置は、自転車エルゴメータを運転する人の胸腹部の距離変動をアクティブステレオ法に基づき算出することで人の呼吸を非接触で計測する。本発明の呼吸計測装置は、図4に示すように、距離分布取得手段41、距離変動分布取得手段42、呼吸波形取得手段43とを備える。

【0038】
図4では、距離分布取得手段41、距離変動分布取得手段42、および、呼吸波形取得手段43は、自転車エルゴメータ44の一部に備え付けられているような形態を示しているが、本発明の呼吸計測装置の形態はこれに限定されるものではない。例えば、距離分布取得手段が自転車エルゴメータに備え付けられ、距離分布情報を取得するものとし、距離分布取得手段で取得された距離分布情報が、無線を用いて、自転車エルゴメータと離れた位置に配置された距離変動分布取得手段および呼吸波形取得手段は伝送されるような形態も考えられることは言うまでもない。

【0039】
距離分布取得手段41においては、アクティブステレオ法に基づき、自転車エルゴメータ44を運転する人45の胸腹部の距離分布情報を取得する。距離分布取得手段41はアクティブステレオ法による距離計測を行うための、パターン光投影装置46と撮像装置47から構成される。パターン光投影装置46より人45の胸腹部にパターン光が投影され、撮像装置46で撮像されるパターン光の分布を画像解析することで、パターン光が投影される実空間における三次元座標(撮像装置との距離)を算出することが可能である。

【0040】
距離変動分布取得手段42においては、距離分布取得手段41により取得された距離分布を時系列に差分することで距離変動分布が算出される。
呼吸波形取得手段43においては、前記の呼吸計測方法が実行される。すなわち、以下の5段階のステップに基づき、呼吸波形の算出が行われる。

【0041】
第1のステップでは、距離変動分布取得手段により取得された距離変動分布において人の胸腹部に該当する領域を格子状の複数の領域に分割する。次に、第2のステップでは、第1のステップで分割された各領域の距離変動を周波数分析する。次いで、第3のステップでは、第2のステップの周波数分析の結果から各領域の主要周波数を算定する。そして、第4のステップでは、第3のステップで各領域の内で算定された主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出する。最後に、第5のステップでは、第4のステップで抽出された呼吸主要領域における距離変動の平均値を求めることで呼吸波形を算出する。

【0042】
算出された呼吸波形は、前述のように、QVE算出に用いられ、QVEの変化から人の作業性換気閾値(VT)を算定することも可能である。
なお、本発明は、以上に説明した実施形態によって限定されるものではないことはいう
までもない。
【実施例1】
【0043】
本発明の有効性を検証するために、プロトタイプシステムを開発した。以下に、プロトタイプシステムに実装された本発明の呼吸計測方法について示す。
図5は、プロトタイプシステムの距離分布取得手段であるアクティブステレオセンサーで取得される距離分布情報である。アップライト型自転車エルゴメータでペダルこぎ運動を行う人の胸腹部を中心に距離分布情報を取得した。そして、距離分布情報のフレーム間差分を行うことで、距離変化分布を取得した。
【実施例1】
【0044】
図6は、人の胸腹部に該当する領域を格子状の複数の領域に分割した結果である。そして、分割された各領域の距離変動について周波数分析を行い、周波数分析の結果から各領域の主要周波数を算定した。
【実施例1】
【0045】
図7は、各領域における主要周波数が、ペダルこぎ運動の周波数帯である領域と、呼吸周波数帯である領域を、それぞれ示している。このように、体の部位によって主要周波数が異なることがわかる。腕部や脚部は、ペダルこぎ運動が顕著に距離変動として現れる領域であり、胸壁・腹壁領域においては、呼吸運動による距離変動が主要であることが明らかである。
【実施例1】
【0046】
主要周波数が呼吸周波数である呼吸主要領域のみを抽出し、各呼吸主要領域において距離変動波形に対し呼吸周波数帯のバンドパスフィルター処理を行う。バンドパスフィルター処理により抽出された波形を全呼吸主要領域において平均化することで得られた呼吸波形が図8である。なお、計測対象となった被験者(人)は、毎分30Wで運動強度が漸増するランプ負荷法によるペダルこぎ運動を実施している。
【実施例1】
【0047】
図9は、波形から求めたQVEの値である。比較結果として、直接流量計測手段である呼気ガス分析装置を用いた同時計測結果を示している。また、呼吸主要領域を抽出せずに、胸腹部に該当する領域全体から求められた呼吸波形(前出の非特許文献3による方法)から算出したQVEを合わせて示している。なお、縦軸は、開始30秒間分のQVEの平均値を基準に正規化されている。
【実施例1】
【0048】
図9より、胸腹部に該当する領域全体から求められた呼吸波形から算出したQVEよりも、本発明により算出されるQVEの方が、呼気ガス分析装置によるQVEの変化トレンドと一致していることがわかる。また、胸腹部に該当する領域全体から求められた呼吸波形から算出したQVEは、フローメータによるQVEの値から乖離することがあるが、本発明により算出されるQVEにおいては乖離は発生していない。したがって、本発明による呼吸計測の有用性が示された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の呼吸計測方法および呼吸計測装置は、従来、呼気ガス分析装置で行われていたペダルこぎ運動中の呼吸計測を非接触・無拘束で実現するものである。マスクの着用の手間や清掃などのメンテナンスを必要としないことから、手軽な運動負荷試験用呼吸計測装置としての実装・利用が期待できる。作業性換気閾値の算定への応用が期待できることから、簡便な代謝機能測定が実現する。これにより効率的な運動トレーニングの実施が可能となることから国民の健康増進に寄与するものと期待される。
【符号の説明】
【0050】
21 人の胸腹部に該当する領域
22 格子状の複数の領域
31 パワースペクトラム
32 呼吸の周波数帯
33 ペダルこぎ運動の周波数帯
34 ピーク
41 距離分布取得手段
42 距離変動分布取得手段
43 呼吸波形取得手段
44 自転車エルゴメータ
45 運転する人
46 パターン光投影装置
47 撮像装置
101 パターン光投影装置
102 撮像装置
103 自転車エルゴメータ
104 被験者
105 パターン光
106 画像処理装置
121 被験者
122 撮像素子
123 パターン光
124 パターン光投影装置のレンズ中心
125 撮像装置のレンズ中心
126 パターン光が投影された部位
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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