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明細書 :目的細胞の分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6198186号 (P6198186)
公開番号 特開2014-083000 (P2014-083000A)
登録日 平成29年9月1日(2017.9.1)
発行日 平成29年9月20日(2017.9.20)
公開日 平成26年5月12日(2014.5.12)
発明の名称または考案の名称 目的細胞の分離方法
国際特許分類 C12N   1/02        (2006.01)
C12N   5/078       (2010.01)
C12N   5/074       (2010.01)
C12N   5/09        (2010.01)
C12N   5/071       (2010.01)
C12M   1/12        (2006.01)
C12M   1/26        (2006.01)
FI C12N 1/02
C12N 5/078
C12N 5/074
C12N 5/09
C12N 5/071
C12M 1/12
C12M 1/26
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2012-234653 (P2012-234653)
出願日 平成24年10月24日(2012.10.24)
審査請求日 平成27年9月28日(2015.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000049
【氏名又は名称】一般財団法人生産技術研究奨励会
発明者または考案者 【氏名】藤井 輝夫
【氏名】金田 祥平
【氏名】荒木 文子
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】小林 薫
参考文献・文献 国際公開第2011/139445(WO,A1)
国際公開第2012/105505(WO,A1)
国際公開第2012/133811(WO,A1)
特開平11-266852(JP,A)
特開2010-227013(JP,A)
特開2010-227014(JP,A)
調査した分野 C12N 1/00-7/08
C12M 1/00-3/10
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)目的細胞4および5の直径よりも小さいフィルタリングサイズを有するマイクロフィルター3と、該マイクロフィルター3の一部を構成する基板1表面に目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面2とを形成し、
(b)そこに特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´および特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞と夾雑物としての特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい非目的細胞5´が懸濁された溶液6を導入し、
(c)前記修飾表面2の生体高分子2Aと前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´の表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行い、
(d)前記マイクロフィルター3の下流に陰圧、もしくは前記細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加させて、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず前記マイクロフィルター3のフィルタリングサイズより小さい非目的細胞5´を除去・回収することで、前記非目的細胞5´と前記目的細胞4,4´,5を分離し、
(e)さらにリンス液7を導入し、
(f)前記リンス液7を攪拌する操作を行い、前記マイクロフィルター3のフィルタリングサイズより大きい目的細胞5を回収することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞5を分離することを可能とし、
(g)前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´のみを前記基板1の修飾表面上に捕捉することにより、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´を前記非目的細胞5´から分離することを特徴とする目的細胞の分離方法。
【請求項2】
請求項1記載の目的細胞の分離方法において、細胞剥離液8を用いて前記修飾表面2上から前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´を離脱させ、その後に、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´をサイズ毎に回収することを特徴とする目的細胞の分離方法。
【請求項3】
(a)目的細胞14,15の直径よりも小さいフィルタリングサイズを有するマイクロフィルターとしての微細構造を有する貫通穴フィルター12を構成する基板11表面に目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面13とを形成し、
(b)そこに特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´および特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞15と夾雑物としての特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい非目的細胞15´が懸濁された溶液16を導入し、
(c)前記修飾表面13の生体高分子13Aと前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´の表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行い、
(d)続いて前記貫通穴フィルター12の下流に陰圧、もしくは前記細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず前記貫通穴フィルター12のサイズより小さい非目的細胞15´を除去・回収し、
(e)さらにリンス液17を導入し、
(f)前記リンス液17を攪拌する操作を行い、前記貫通穴フィルター12のフィルタリングサイズより大きい目的細胞15を回収することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞15を分離することを可能とし、
(g)前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´のみを前記基板11の修飾表面上に捕捉することにより、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´を前記非目的細胞15´から分離することを特徴とする目的細胞の分離方法。
【請求項4】
請求項3記載の目的細胞の分離方法において、細胞剥離液18を用いて前記基板11の修飾表面上から前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´を離脱させ、その後に、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´をサイズ毎に回収することを特徴とする目的細胞の分離方法。
【請求項5】
請求項1又は3記載の目的細胞の分離方法において、前記生体高分子2A,13Aが抗体、核酸アプタマー又はペプチドアプタマーであることを特徴とする目的細胞の分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、目的細胞の分離方法に関するものであり、特に、夾雑物を含む溶液から目的細胞を分離し、分離後の細胞を解析および培養する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の夾雑物を含む溶液からの細胞分離法としては、目的細胞表面に特異的に発現しているたんぱく質と結合する抗体を用いるもの(イムノアフィニティ)が主流である。具体的には蛍光修飾抗体を用いて染色した細胞を含む懸濁液を微小流路内に導入し、レーザーを用いて細胞の蛍光強度を解析し、強度に応じて細胞を分離・分取するFACS(Fluorescent Activated Cell Sorting)や抗体修飾磁気粒子とその細胞懸濁液を混合し、磁気粒子に補足された目的細胞だけを磁力によって分離するMACS(Magnetic Activated Cell Sorting)と呼ばれる分離技術が開発され、その装置が市販されている。市販されている装置以外では、抗体修飾したマイクロポスト構造を内部に持つ微小流路を利用したアフィニティ分離(下記非特許文献1参照)や細胞のサイズを用いた分離も行われている(下記非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】S.L.Stott et.al.,PNAS,pp.18392-18397,107(2010)
【非特許文献2】S.Zheng et.al.,Biomed Microdevices,pp.203-213,13(2011)
【非特許文献3】P.J.Maimonis et.al.,Proc.AACR 2010(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したそれらの分離法では、(1)細胞の回収率が低い(FACS)、(2)分離された細胞の純度が低い(MACS)、(3)細胞生存率が低い(FACS)、(4)また、細胞検出装置自体が非常に高価である(FACS、MACS)、(5)ランニングコストが高い(FACS、MACS)、(6)細胞の大きさと表面マーカーの発現量を同時に考慮した分離ができない(MACS)、(7)希少な細胞(レアイベント)の分離が困難である(FACS)、(8)細胞に結合した磁気粒子を完全に除去することが困難である(MACS)、などの問題点が指摘されている。
【0005】
また、目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質の発現量やその細胞サイズに大きなばらつきがある場合には、表面に特異的に発現しているたんぱく質と細胞サイズのどちらか一方に着目した分離法では、分離の効率低下が避けられない。アフィニティと細胞サイズを考慮した細胞分離の両者を組み合わせる試みもわずかにある(上記非特許文献3参照)が、どのような装置構成を採用することが望ましいかは検討されていなかった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、夾雑物を含む溶液から目的細胞をそのサイズとアフィニティを考慮して捕捉率を高めて分離し、分離後の細胞の解析および培養も可能な、目的細胞の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕目的細胞の分離方法において、(a)目的細胞4および5の直径よりも小さいフィルタリングサイズを有するマイクロフィルター3と、このマイクロフィルター3の一部を構成する基板1表面に目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面2とを形成し、(b)そこに特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´および特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞と夾雑物としての特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい非目的細胞5´が懸濁された溶液6を導入し、(c)前記修飾表面2の生体高分子2Aと前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´の表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行い、(d)前記マイクロフィルター3の下流に陰圧、もしくは前記細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加させて、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず前記マイクロフィルター3のフィルタリングサイズより小さい非目的細胞5´を除去・回収することで、前記非目的細胞5´と前記目的細胞4,4´,5を分離し、(e)さらにリンス液7を導入し、(f)前記リンス液7を攪拌する操作を行い、前記マイクロフィルター3のフィルタリングサイズより大きい目的細胞5を回収することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞5を分離することを可能とし、(g)前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´のみを前記基板1の修飾表面上に捕捉することにより、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´を前記非目的細胞5´から分離することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の目的細胞の分離方法において、細胞剥離液8を用いて前記修飾表面2上から前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´を離脱させ、その後に、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´をサイズ毎に回収することを特徴とする。
【0009】
〔3〕目的細胞の分離方法において、(a)目的細胞14,15の直径よりも小さいフィルタリングサイズを有するマイクロフィルターとしての微細構造を有する貫通穴フィルター12を構成する基板11表面に目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面13とを形成し、(b)そこに特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´および特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞15と夾雑物としての特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい非目的細胞15´が懸濁された溶液16を導入し、(c)前記修飾表面13の生体高分子13Aと前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´の表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行い、(d)続いて前記貫通穴フィルター12の下流に陰圧、もしくは前記細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず前記貫通穴フィルター12のサイズより小さい非目的細胞15´を除去・回収し、(e)さらにリンス液17を導入し、(f)前記リンス液17を攪拌する操作を行い、前記貫通穴フィルター12のフィルタリングサイズより大きい目的細胞15を回収することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞15を分離することを可能とし、(g)前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´のみを前記基板11の修飾表面上に捕捉することにより、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´を前記非目的細胞15´から分離することを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔3〕記載の目的細胞の分離方法において、細胞剥離液18を用いて前記基板11の修飾表面上から前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´を離脱させ、その後に、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14´をサイズ毎に回収することを特徴とする。
【0011】
〔5〕上記〔1〕又は〔3〕記載の目的細胞の分離方法において、前記生体高分子2A,13Aが抗体、核酸アプタマー又はペプチドアプタマーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0013】
本発明の目的細胞の分離方法によれば、サイズとアフィニティの両方を考慮した細胞分離が可能であるという特徴を有しており、従来装置(FACS)と比較すると、ポピュレーションの小さい希少な細胞の分離に利用可能で、また分離の際の細胞懸濁液の送液条件を適切にすることで、細胞に対するダメージを減らし、分離細胞の生存率を高く保つことが可能である点が重要である。加えて、細胞懸濁液の導入後の静置操作による細胞沈降や懸濁液の水位を減少させるための送液操作によって、積極的もしくは強制的に高分子の修飾表面に細胞を接触させることができることから、特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞を従来法と比較して高効率に回収可能である。
【0014】
細胞サイズによる分離では、従来法にみられる光学的に細胞サイズを見積もる方法と比較し、力学的にサイズを見積もるため精度の向上が期待できる。加えて、本発明は細胞サイズのみならずその変形能も考慮した分離も可能である。抗体修飾磁気粒子を利用する従来法(MACS)と比較を行うと、本発明は細胞を分離後に磁気粒子を外す必要がないため、分離後の培養や解析に影響が少ない点やサイズを考慮した分離が可能であることも重要である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例を示す目的細胞の分離装置の模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す目的細胞の分離装置を用いた目的細胞の分離方法を示す概念図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す細胞分離装置の模式図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す細胞分離装置を用いた細胞分離方法を示す概念図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す目的細胞分離装置における目的細胞の培養増殖を示す模式図である。
【図6】本発明の更なる実施例を示す可搬型のシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的細胞の分離方法は、(a)目的細胞4および5の直径よりも小さいフィルタリングサイズを有するマイクロフィルター3と、このマイクロフィルター3の一部を構成する基板1表面に目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面2とを形成し、(b)そこに特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´および特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞と夾雑物としての特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい非目的細胞5´が懸濁された溶液6を導入し、(c)前記修飾表面2の生体高分子2Aと前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´の表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行い、(d)前記マイクロフィルター3の下流に陰圧、もしくは前記細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加させて、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず前記マイクロフィルター3のフィルタリングサイズより小さい非目的細胞5´を除去・回収することで、前記非目的細胞5´と前記目的細胞4,4´,5を分離し、(e)さらにリンス液7を導入し、(f)前記リンス液7を攪拌する操作を行い、前記マイクロフィルター3のフィルタリングサイズより大きい目的細胞5を回収することで、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい目的細胞5を分離することを可能とし、(g)前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´のみを前記基板1の修飾表面上に捕捉することにより、前記特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4,4´を前記非目的細胞5´から分離する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の第1実施例を示す目的細胞の分離装置の模式図、図2はそれを用いた目的細胞の分離方法を示す概念図である。
【実施例】
【0019】
これらの図において、1は基板(底面基板、側面基板、マイクロフィルターを形成する基板を含む)、2は基板1の目的細胞表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面、2Aは生体高分子、3はマイクロフィルター、4,4′は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞(目的細胞)、5は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずマイクロフィルター3のフィルタリングサイズより大きい細胞(目的細胞)、5′は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずマイクロフィルター3のフィルタリングサイズより小さい細胞(非目的細胞)、6は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞4,4′や特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たない細胞5,5′を含む溶液である。
【実施例】
【0020】
図2はその細胞分離装置を用いた細胞分離方法を示す概念図であり、細胞分離には、目的細胞4, 5の直径よりも小さい寸法(例えば3~50μm)の微細フィルタリング構造を持つ流路構造のマイクロフィルター3と、このマイクロフィルター3の一部を構成する、目的細胞4,4′の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子2Aが固定化された基板1の生体高分子の修飾表面2を用いる〔図2(A)参照〕。このような細胞分離装置に対して、目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞)4,4′と目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい細胞)5と夾雑物としての非目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい細胞)5′が懸濁された溶液6を導入し〔図2(B)参照〕、必要に応じて生体高分子の修飾表面2の生体高分子2Aと目的細胞表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行う〔図2(C)参照〕。続いてマイクロフィルター3の下流に陰圧を印加する、もしくは細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加することで、サイズの小さい非目的細胞5′を除去・回収する〔図2(D)参照〕。さらにリンス液7を導入後〔図2(E)参照〕、ピペッティング(リンス液7を攪拌する)操作を行うことでマイクロフィルター3に捕捉されていたサイズの大きい目的細胞5をリンス液7中に解放し、このリンス液7を回収することで、サイズの大きい目的細胞5を回収して、特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞4, 4′のみを基板1の生体高分子の修飾表面2上に分離することが可能である〔図2(F)参照〕。また、必要があればトリプシン等の細胞剥離液8を用いて基板1の生体高分子の修飾表面2上から目的細胞4, 4′を離脱させ〔図2(G)参照〕、その後に、目的細胞4,4′をサイズ毎に回収することも可能である〔図2(H),(I)参照〕。
【実施例】
【0021】
なお、上記した底面の基板及びマイクロフィルターを形成する基板1の生体高分子の修飾表面2Aには、目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子が修飾されるが、この生体高分子としては、抗体、核酸アプタマー、ペプチドアプタマーを挙げることができる。
【実施例】
【0022】
このようにして、サイズによる細胞分離とイムノアフィニティを考慮した細胞分離を組み合わせた細胞分離を行う。
【実施例】
【0023】
図3は本発明の第2実施例を示す細胞分離装置の模式図、図4はそれを用いた細胞分離方法を示す概念図である。
【実施例】
【0024】
これらの図において、11は基板(底面基板、側面基板を含む)、12は基板11に形成された後述する目的細胞の直径よりも小さい寸法の穴(マイクロフィルターとしての貫通穴フィルター)、13は貫通穴フィルター12が形成された基板11の表面に形成される目的細胞の表面に特異的に発現しているたんぱく質と特異的に結合する生体高分子の修飾表面、13Aは生体高分子(抗体、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー)、14,14′は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞(目的細胞)、15は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず貫通穴フィルターのフィルタリングサイズよりも大きい細胞(目的細胞),15′は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず貫通穴フィルターのフィルタリングサイズよりも小さい細胞(非目的細胞)、16は特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞(目的細胞)14,14′および特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず貫通穴フィルターのフィルタリングサイズよりも大きい細胞(目的細胞)15や特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず貫通穴フィルターのフィルタリングサイズよりも小さい細胞(非目的細胞)15′が懸濁された溶液である。
【実施例】
【0025】
図4は本発明の第2実施例の目的細胞分離装置を用いた細胞分離方法を示す概念図であり、細胞分離には、基板11に形成された目的細胞14, 15の直径よりも小さい寸法(例えば3~50μm)の微細構造を持つ貫通穴フィルター12形式のマイクロフィルターと、目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞)14, 14′に対する生体高分子13Aが固定化された基板11の生体高分子13Aの修飾表面13を用いる〔図4(A)参照〕。このような細胞分離装置に対して、目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞)14,14′、目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず細胞サイズが貫通穴フィルターサイズより大きい細胞)15、と夾雑物としての非目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たず細胞サイズが貫通穴フィルターサイズより小さい細胞)15′が懸濁された溶液16を導入し〔図4(B)参照〕、必要に応じて生体高分子の修飾表面13の生体高分子13Aと目的細胞表面に特異的に発現しているたんぱく質を反応させるための静置や送液を行う〔図4(C)参照〕。続いて貫通穴フィルター12の下流に陰圧、もしくは細胞が懸濁された溶液に陽圧を印加することで、サイズの小さい非目的細胞15′を除去・回収する〔図4(D)参照〕。さらにリンス液17を導入後、ピペッティング(リンス液17を攪拌する)操作を行うことで貫通穴フィルター12に捕捉されていたサイズの大きい目的細胞15をリンス液17の中に解放し、このリンス液17を回収することで、サイズの大きい目的細胞15を回収して〔図4(E)参照〕、特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ目的細胞14,14′のみを基板11の生体高分子の修飾表面12上に分離することが可能である。また、必要があればトリプシン等の細胞剥離液18を用いて基板11の生体高分子の修飾表面13上から目的細胞14, 14′を離脱させ〔図4(F)参照〕、その後に、目的細胞14, 14′をサイズ毎に回収することも可能である〔図4(G)参照〕。
【実施例】
【0026】
このようにして、サイズによる細胞分離とアフィニティを考慮した細胞分離を組み合わせた細胞分離を行う。
【実施例】
【0027】
また、本実施例のマイクロフィルターは、図3に示すような貫通穴フィルター12形式の構造としたので、よりコンパクトなデバイスとすることができる。
【実施例】
【0028】
図5は本発明の第3実施例を示す目的細胞分離装置における目的細胞の培養増殖を示す模式図である。
【実施例】
【0029】
本発明では、さらに、図5に示すように、非目的細胞分離後の目的細胞21(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ、もしくは細胞サイズがフィルタリングサイズよりも大きい細胞)に対して、培溶液22を供給することで培養増殖が可能である。加えて、分離された細胞に対して蛍光in situ hybridization反応や、分離された細胞をその場で溶解し、DNA増幅反応を行うことで、その遺伝子解析が可能となる。その他では、分離された細胞に対して、薬剤を供給することで薬剤反応性試験などの実施が可能である。
【実施例】
【0030】
本発明は、具体的には血中からの白血球分離など通常の細胞分離(目的細胞のポピュレーションが大きい)への応用のみならず、体性細胞の集団中からの体性幹細胞の分離や血中を循環する腫瘍細胞(Circular Tumor Cell:CTC)、血中を循環する内皮細胞や血中を循環する血管内皮前駆細胞など、生物学的に重要である、“希少な細胞”の分離にも応用できる。
【実施例】
【0031】
これは、本発明での分離プロセスにて高い回収率を実現できるためである。また、分離後の細胞を培養し増殖させ、目的細胞の生物学的研究の材料・資源として用いることや、分離後の細胞の遺伝子解析や薬剤反応性試験を行うことが可能なため、希少細胞に関する生物学的基礎研究の発展に寄与することや、希少細胞を用いた疾患の診断に応用可能である。
【実施例】
【0032】
図6は本発明の更なる実施例を示す可搬型のシステムの模式図である。
【実施例】
【0033】
この図は実装の一例であり、図6(A)に示すように、本発明の細胞分離装置を構成する微小流体チップ33は、2mLピペットチップ32(血清用ピペット、Nunc)を介して電動ピペット(BDバイオサイエンス)31に接続することができる。この微小流体チップ33は、図6(B)に示すように、ピペットチップ32と接続するためのキャップ部分33Aと、マイクロフィルター層33B〔いずれもシリコーンゴムの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)〕と、このマイクロフィルター層33Bのマイクロフィルター構造を封止するガラス基板(直径10mm)33Cからなる。3.5mmのポートを備えるキャップ部分33Aはピペットチップ32とマイクロフィルター層33B間のコネクタとして働く。マイクロフィルター層33Bには、図6(C)に示すように、直径2mmの溶液リザーバーポートがキャップ部分33Aのポートに接続されるように作製されている。図6(D)は微小流体図6(C)の黒点線で囲んだ部分の拡大図であり、チップ33上のマイクロフィルター層33B(幅25μm、深さ7.6μm)を示している。この図6(D)に示されるように、10μmと16.5μmの蛍光ビーズをマイクロフィルター層33Bで捕捉することに成功した。また、図6(E)に示すように、微小流体チップ33内の液体の交換は、所望の溶液を入れた遠心分離管34に微小流体チップ33を浸し、続けてピペッティング操作によって陰圧もしくは陽圧を印加することで行われる。
【実施例】
【0034】
本発明の実用化の見通しと産業上の利用価値について述べると、本発明の細胞分離装置の実装では、図6に示すように小型化して実装を行うことで可搬型のシステムが構築可能であり、例えばCD4陽性細胞数の現場診断や、尿中に含まれる前立腺がん細胞の計数による細胞診断の“オンサイト化”などが期待できる。一方で、本発明の細胞分離装置を96ウェルなどのマイクロタイタープレート(マルチウェルプレート)のウェル部分に対応するようにアレイ化すると、既存の細胞分析装置(蛍光プレートリーダー等)との適合性が非常に高くなり、例えば、CTCの血中からの分離からその計数まで一般的な生物学の研究室の装置で行うことができるようになり、波及効果は極めて高い。また、アレイ化によって分離後の培養操作や遺伝子解析・薬剤反応性試験等をデバイス毎に区画化された形で実現することが可能になり、抗がん剤の投与前奏功判定や抗がん剤の創薬などへの強力なツールとなりうる。
【実施例】
【0035】
本発明は、従来法と比較し、細胞分離においても回収率/純度/生存率の面での向上が期待できる。具体的には細胞の大きさと表面マーカー(特異的に発現しているたんぱく質)発現量を同時に考慮した細胞分離が可能であるため、希少な細胞の分離などへの応用が期待できる。また、分離した細胞をその場で培養することや、遺伝子解析に必要な蛍光in situ hybridization反応やDNA増幅反応のための細胞溶解プロセスもしくは、薬剤反応性試験などの解析を他の反応容器に移すことなくその場で行うことが可能であるため、従来法と比較し、分離後の細胞の培養と解析に用いる場合のロスを減らすことが可能である。
【実施例】
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の細胞分離法は、回収率/純度/生存率の面での向上が期待できる細胞分離法として利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1,11 基板
2 基板の生体高分子の修飾表面
2A,13A 生体高分子
3 マイクロフィルター
4,4′,14,14′ 特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞(目的細胞)
5, 15 特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより大きい細胞(目的細胞)
5′,15′ 特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たずフィルタリングサイズより小さい細胞(非目的細胞)
6,16 特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ細胞や特異的に発現しているたんぱく質を表面に持たない細胞を含む溶液
7,17 リンス液
8,18 細胞剥離液
12 基板に形成された目的細胞の直径よりも小さい寸法の穴(マイクロフィルターとしての貫通穴フィルター)
13 貫通穴フィルターが形成された基板の表面に形成される生体高分子の修飾表面
21 分離後の目的細胞(特異的に発現しているたんぱく質を表面に持つ、もしくは細胞サイズがフィルタリングサイズより大きい細胞)
22 培溶液
31 電動ピペット
32 ピペットチップ
33 微小流体チップ
33A キャップ部分
33B マイクロフィルター層
33C ガラス基板
34 遠心分離管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5