TOP > 国内特許検索 > レチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物及びこのレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有する薬剤 > 明細書

明細書 :レチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物及びこのレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有する薬剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-076953 (P2014-076953A)
公開日 平成26年5月1日(2014.5.1)
発明の名称または考案の名称 レチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物及びこのレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有する薬剤
国際特許分類 A61K  31/455       (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P   1/00        (2006.01)
FI A61K 31/455
A61P 3/10
A61P 29/00
A61P 43/00 111
A61P 37/08
A61P 35/00
A61P 37/06
A61P 1/00
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2012-224474 (P2012-224474)
出願日 平成24年10月9日(2012.10.9)
発明者または考案者 【氏名】加来田 博貴
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC19
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC35
4C086ZC41
要約 【課題】レチノイドX受容体(RXR)に結合し、部分作動性(パーシャルアゴニスト)作用を有する化合物(レキシノイド),ならびにこの化合物を有効成分として含有する薬剤を提供する。
【解決手段】下記の式で表されるレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物、及びこの化合物を有効成分として含有する薬剤。
JP2014076953A_000014t.gif
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式Iで表されるレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物。
化学式I:
【化1】
JP2014076953A_000013t.gif

【請求項2】
請求項1に記載のレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有する薬剤。
【請求項3】
有効成分が、転写調節剤及び核内受容体リガンド作用調節剤である請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
薬剤が、糖尿病治療剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項5】
薬剤が、メタボリックシンドローム治療剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項6】
薬剤が、抗炎症剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項7】
薬剤が、抗アレルギー剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項8】
薬剤が、抗がん剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項9】
薬剤が、炎症性腸疾患の治療剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項10】
薬剤が、自己免疫疾患に対する治療剤である請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1に記載の薬剤、並びに薬理学的及び製剤学的に許容される担体を含む医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核内受容体であるレチノイドX受容体に対し、部分作動性物質として作用するレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物及びこのレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
核内受容体は、細胞増殖や免疫応答、糖・脂質代謝等の生理機能、恒常性の維持を担っているリガンド依存性の転写調節因子のひとつである。核内受容体に対応するリガンドにより、その下流にある遺伝子の転写を制御している。核内受容体は、同一の原初遺伝子から派生しており、スーパーファミリーを形成する。
【0003】
レチノイドX受容体(retinoid X receptor;以降、「RXR」と略す。)は、9-cisレチノイン酸やドコサヘキサンエン酸(DHA)を内因性リガンドにすると考えられている、リガンド依存的な転写因子である核内受容体の一つである。その機能は、ホモ二量体として、また種々の核内受容体とヘテロ二量体を形成し発揮される(非特許文献1)。
【0004】
RXRのヘテロ二量体のパートナーとしては、細胞分化や増殖に関与するレチノイン酸受容体(RAR)、同じく細胞分化や増殖また骨代謝に関与するビタミンD受容体(VDR)、脂質代謝に関与するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)、甲状腺ホルモン受容体のチロイドホルモン受容体(TR)などがある。従って、RXRの機能とこれら核内受容体の活性発現は密接な関係にあり、RXR機能を制御する作動性若しくは拮抗性物質は、これらのヘテロ二量体の機能を制御することが可能になる(非特許文献2)。
【0005】
例えば、RAR作動性物質であるAm80(一般名:タミバロテン:再発又は難治性の急性前骨髄球性白血病の治療薬:4-[(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthyl) carbamoyl] benzoic acid)(非特許文献3)は、3.3×10-10M濃度で単独に存在する場合はほとんど細胞分化誘導作用を示さないのに対し、Am80とRXR作動性物質を併用すると、RXR作動性物質はAm80のシナジストとして機能し、有意な分化誘導作用が見られるようになる(非特許文献4)。このようなRXR作動性物質による核内受容体ヘテロ二量体に対するシナジスト効果は、RARに対してのみならず、RXRとヘテロ二量体を形成するVDRやPPAR等においても見られる。このような核内受容体を標的とした脂溶性の高い医薬分子において、その薬物を低容量で用いても効果を発揮させるシナジストとして効果が発揮できる。
【0006】
RXR作動性物質は、RXRを含有する核内受容体へテロ二量体を介した作用に限ることはない。例えば、乳がん治療に用いられるタモキシフェンは、RXRとヘテロ二量体を形成しないエストロゲン受容体(ER)が分子標的であるものの、RXR作動性物質がエストロゲン抵抗性乳がんにおいて、その抵抗性を改善する報告がされている(非特許文献6)。さらに、RXR作動性物質単独若しくはタモキシフェンとの併用による発がん予防効果も報告されている(非特許文献7)。またタキソール抵抗性がんにおける、RXR作動性物質の有効性も報告されている(非特許文献8)。加えて、RXR作動性物質の血管新生抑制作用も報告されている(非特許文献9)。
【0007】
また、RXR作動性物質は単独投与においても興味深い生理活性が得られている。たとえば2型糖尿病モデルマウスにRXR作動性物質を投与すると、インスリン抵抗性が改善され血糖値低下が見られることが報告されている(非特許文献10)。
【0008】
また,RXR作動性物質は単独投与において,TNBS誘発腸炎モデルマウスにおける,治療効果が報告されている(非特許文献11)。
【0009】
またRXR作動性物質は、毛根周期に作用し毛髪育成作用があることから、育毛剤としての応用も報告されている(特許文献1)。
【0010】
既知のRXR作動薬は、医薬用途に応用されているが、既存のRXRアゴニストの共通の問題点として血中トリグリセリド(TG)の上昇が挙げられる(非特許文献12、13)。これらのRXR作動薬について精査すると、共通してRXRを完全に活性化しうるRXR完全作動薬(RXRフルアゴニスト)であること(非特許文献14、15)から、そのefficacyを適度に弱めたRXRパーシャルアゴニストに興味を抱き研究を行ってきた。
【0011】
これまでに特許文献2、特許文献3に記載するRXRパーシャルアゴニスト化合物の創出に成功している。中でも,特許文献3記載のRXRパーシャルアゴニスト化合物であるCBt-PMNは、2型糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスにおける顕著な糖尿病治療効果,インスリン抵抗性改善作用が報告されている(非特許文献16)。しかし、RXR活性化に要する濃度が高く、より低濃度で効果を示す、血中移行性の良好な化合物が望まれた。
【先行技術文献】
【0012】

【非特許文献1】Science, 290, pp.2140-2144, 2000
【非特許文献2】Cell, 83, pp.841-850, 1995
【非特許文献3】アムノレイク錠2mg<タミバロテン製剤>日本新薬販売添付文書(2005年6月作成)
【非特許文献4】Journal of Medicinal Chemistry, 37, pp.1508-1517, 1994
【非特許文献5】The Journal of Clinical Investigation, 108, pp.1001-1013, 2001
【非特許文献6】Cancer Research, 58, pp.479-484, 1998など
【非特許文献7】Cancer Letters, 201, pp.17-24, 2003
【非特許文献8】Clinical Cancer Research, 10, pp8656-8664, 2004
【非特許文献9】British Journal of Cancer, 94, pp.654-660, 2006
【非特許文献10】Nature, 386, 407-410, 1997
【非特許文献11】J. Exp. Med. 193, 827-838, 2011.
【非特許文献12】Mol. Pharmacol., 59, pp.170-176, 2001
【非特許文献13】J. Clin. Oncol., 15, pp.790-795, 1997
【非特許文献14】J. Med. Chem., 44, 2298-2303, 2001
【非特許文献15】Med. Chem. Lett., 14, 6117-6122, 2004
【非特許文献16】ACS Med. Chem. Lett., 3, 427-432, 2012
【0013】

【特許文献1】米国特許第5962508号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/098125号
【特許文献3】特開2010-111588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来のRXRパーシャルアゴニスト化合物に比べ、より強力な、血中移行性の良好なRXRパーシャルアゴニスト化合物、さらにはこのRXRパーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有する薬剤を提供するものであり、この薬剤の利用による糖尿病治療、抗炎症、自己免疫疾患治療作用、抗アレルギー作用などを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物は、下記の一般式Iで表されるものである。
一般式I:
【化1】
JP2014076953A_000003t.gif

【0016】
また、本発明の薬剤は、上記の一般式Iで表されるレチノイドX受容体パーシャルアゴニスト化合物を有効成分として含有するものであり、さらには有効成分が、転写調節剤及び核内受容体リガンド作用調節剤であるものである。
【0017】
また、本発明の薬剤は、以下の点にも特徴を有するものである。
1)薬剤が、糖尿病治療剤であること。
2)薬剤が、メタボリックシンドローム治療剤であること。
3)薬剤が、抗炎症剤であること。
4)薬剤が、抗アレルギー剤であること。
5)薬剤が、抗がん剤であること。
6)薬剤が、炎症性腸疾患の治療剤であること。
7)薬剤が、自己免疫疾患に対する治療剤であること。
【0018】
また、本発明の医薬組成物として、上記の薬剤、並びに薬理学的及び製剤学的に許容される担体を含むことを特徴とする医薬組成物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既存のRXRアゴニスト(フルアゴニスト)化合物で問題となっていた肝肥大、血中トリグリセリド上昇を生じることなく、低濃度でも優れたRXR活性化能を示すRXR部分(パーシャル)アゴニスト化合物として有用な化合物及びこの化合物を有効成分として含有した薬剤を提供できる。
本発明に係る化合物は、RXRアゴニストが奏功する疾患の治療薬の開発、とりわけ2型糖尿病、メタボリックシンドローム、クローン病等の難治性自己免疫疾患の治療薬に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】中間体A~Dの化合物および目的化合物(NEt-4IB)(実験例1)の合成スキームを示す図である。
【図2】(A)関連化合物の構造式ならびに(B)NEt-3IBおよび目的化合物(NEt-4IB)のRXR活性化試験(実験例2)の結果を示す図である。
【図3】マウス経口単回投与による化合物の血中移行性ならびに血中トリグリセリド値の評価(実験例3)およびマウス経口1週間反復投与による副作用発現確認試験(実験例4)の結果を示す図である。各化合物(30 mg/kg)のマウス単回経口投与による血中濃度をAに、NEt-4IB単回投与(30 mg/kg)による血中トリグリセリド値の変化をBに、1週間反復投与による体重変化をCに示した。
【図4】ラット経口28日間反復投与による副作用発現確認試験(実験例5)の結果を示す図である。A,C,Eはオス,B,D,Fはメスに関する図である。
【図5】2型糖尿病モデルマウスKK-Ayによる目的化合物の薬効評価(実験例6)の結果を示す図である。
【図6】NBD-Cl誘発クローン病モデルマウスによる薬効評価(実験例7)の結果を示す図である。Aは体重変化,Bは大腸長,Cは解剖時の大腸の平均的な像である。
【図7】Imiquimod誘発乾癬モデルマウスによる薬効評価(実験例8)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明者らは、上記した課題を解決するために、下記の一般式IIの構造式で示される化合物の構造展開を行った。
一般式II:
【化2】
JP2014076953A_000004t.gif
(式中、R1は直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。R2は直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基からなる群から選択される。Wは、NR3又はCR3であり、R3は水素、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基から選択される。
X1、Y1は、CH若しくはNから選択される。 X2、Y2は、CH、CR4、若しくはNから選択される。R4は、直線若しくは分岐状の、非置換若しくは置換の、飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基及びアミノ基から選択される。Zは、直接、若しくは飽和若しくは不飽和の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を介したカルボン酸、カルボン酸エステル、又はヒドロキサム酸から選択される。)

【0022】
誠意努力の結果、下記の一般式Iで示される化合物(NEt-4IB)がRXRパーシャルアゴニスト化合物であることを見出し、加えて血中移行性が高く、さらには、RXRフルアゴニスト化合物で見られる顕著な体重増加、肝肥大、血中トリグリセリドの上昇を生じることなく、2型糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスにおける顕著な糖尿病治療効果、NBD-Cl誘発クローン病モデルマウスにおける抗炎症効果、imiquimod誘発による乾癬様モデルマウスにおける体重改善などを見出し、本発明を完成した。
一般式I:
【化3】
JP2014076953A_000005t.gif

【0023】
本発明において、示される化合物は、さらに、薬学的に許容される塩であってもよい。また、一般式Iの化合物又はその塩において、異性体(例えば光学異性体、幾何異性体及び互換異性体)などが存在する場合は、本発明はそれらの異性体を包含し、また溶媒和物、水和物及び種々の形状の結晶を包含するものである。

【0024】
本発明において、薬学的に許容される塩とは、薬理学的及び製剤学的に許容される一般的な塩が挙げられる。そのような塩として、具体的には以下が例示される。
塩基性付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩;ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;たとえばN,N-ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩;リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。

【0025】
酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。

【0026】
本発明において、一般式Iで表される化合物は、RXRに対し部分作動性を有する。RXRはDNAの転写に関わる核内受容体であることから、本発明の化合物は転写調節化合物ということもできる。本明細書において「調節作用」という用語又はその類似語は、作用の増強を含めて最も広義に解釈する必要がある。本発明の化合物が増強作用を有するかは、本明細書の実験例に具体的に示した方法に従って容易に検定可能である。

【0027】
本発明において、一般式Iで表される化合物は、レチノイドの生理作用、例えば細胞分化作用、細胞抑制作用などを顕著に増強するシナジスト作用を有する。そのため、レチノイン酸やレチノイン酸様の生物活性を有する化合物(例えば、Am80など)を包含するレチノイドを含む医薬組成物を用いて治療する際の、作用増強剤として利用することができる。

【0028】
レチノイドの生理活性の代表的なものとして、細胞分化作用、細胞抑制作用、及び生命維持作用などが挙げられる。そして、レチノイドはビタミンA欠乏症、上皮組織の角化症、リウマチ、遅延型アレルギー、骨疾患、及び白血病やある種の癌の治療や予防に有用であると考えられる。また、レチノイドを投与しない場合においても、本発明の化合物は生体内に既に存在するレチノイン酸の作用を増強するので、本発明の化合物自体を投与することも可能である。

【0029】
一般式Iで表される化合物は、細胞の核内に存在する核内受容体・スーパーファミリーに属する受容体に結合して生理活性を発現する物質、例えば、活性型ビタミンA代謝物(All-trans Retinoic Acid:ATRA)を含むレチノイド化合物、エイコサノイド類、ビタミンD3などのビタミンD化合物、又はチロキシンやリガンド不明のオーファン受容体リガンドなどの作用を増強若しくは抑制することができる。

【0030】
従ってRXR作動性の化合物は、これらの生理活性物質の作用発現の調節に用いることができ、核内受容体・スーパーファミリーに属する核内受容体の1又は2以上が関与する生物作用の異常を伴う疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。

【0031】
一般式Iで表される化合物を有効成分とする試薬又は医薬等の薬剤も、本発明の範囲に含まれる。医薬品として用いる場合には、例えば、抗アレルギー剤、抗炎症剤、抗メタボリックシンドローム剤、抗糖尿病剤及び/又は抗がん剤として用いることができる。

【0032】
一般式Iで表される化合物を有効成分とする医薬として用いる場合には、投与量は特に限定されない。例えばレチノイン酸などのレチノイドを有効成分として含む医薬と本発明の化合物とを併用してレチノイドの作用を調節する場合、あるいは、レチノイドを含む医薬を併用せずに、生体内に既に存在するレチノイン酸の作用調節のために本発明の薬剤を投与する場合など、あらゆる投与方法において適宜の投与量が容易に選択できる。例えば、経口投与の場合には有効成分を成人一日あたり0.01~1000mg程度の範囲で用いることができる。レチノイドを有効成分として含む医薬と本発明の薬剤とを併用する場合には、レチノイドの投与期間中、及び/又はその前若しくは後の期間のいずれにおいても本発明の薬剤を投与することが可能である。

【0033】
本発明の薬剤を抗アレルギー剤として用いる場合は、上記本発明の化合物を有効成分とする他、公知の抗アレルギー剤を有効成分として含んでいてもよい。抗アレルギー剤としては、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1-拮抗薬、トロンボキサン阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬等が挙げられ、具体的には、メディエーター遊離抑制薬として、クロモグリク酸ナトリウムやトラニラスト、ヒスタミンH1-措抗薬として、フマル酸ケトチフェンや塩酸アゼラスチン、トロンボキサン阻害薬として、塩酸オザグレル(トロンボキサンA2合成酵素阻害薬)やセラトロダスト(トロンボキサンA2拮抗薬)、ロイコトリエン拮抗薬としてプランルカスト、Th2サイトカイン阻害薬としてトシル酸スプラタストなどが挙げられる。

【0034】
本発明の薬剤を抗メタボリックシンドローム剤もしくは糖尿病治療剤として用いる場合は、上記本発明の化合物を有効成分とする他、公知の抗メタボリックシンドローム剤もしくは糖尿病治療剤を有効成分として含んでいてもよい。抗メタボリックシンドローム剤としては、スタチン系抗高脂血漿薬、フィブラート系抗高脂血漿薬などのPPAR活性化薬、また抗糖尿病薬としては、スルホニル尿素(SU)薬、フェニルアラニン誘導体薬、ビグアナイド系薬剤、チアゾリジンジオン誘導体、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP-IV阻害剤、インスリン製剤などが挙げられる。

【0035】
本発明の薬剤を抗がん剤として用いる場合は、上記本発明の化合物を有効成分とする他、公知の抗がん剤を有効成分として含んでいてもよい。抗がん剤としては、エストロゲン拮抗性抗乳がん剤やタキサン系抗がん剤が挙げられ、具体的にはタモキシフェン又はタキソールなどが挙げられる。

【0036】
本発明の薬剤を抗炎症剤として用いる場合は、上記本発明の化合物を有効成分とする他、公知の抗炎症剤を有効成分として含んでいてもよい。抗炎症剤はステロイド系であっても非ステロイド系であってもよい。非ステロイド系抗炎症剤は、アミノアリールカルボン酸誘導体類、アリール酢酸誘導体類、アリール酪酸誘導体類、アリールカルボン酸類、アリールプロピオン酸誘導体類、ピラゾール類、ピラゾロン類、サリチル酸誘導体類、チアジンカルボキサミド類、及び他の構造を有する種類の中から選択し得る。

【0037】
本発明の薬剤として、一般式Iで表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の物質をそのまま投与してもよいが、好ましくは、上記の物質の1種又は2種以上を含む、経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することが好ましい。経口用あるいは非経口用の医薬組成物は、当業者に利用可能な製剤用添加物、即ち薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体を用いて製造することができる。例えば、レチノイン酸などのレチノイドを有効成分として含む医薬に上記の物質の1種又は2種以上を配合して、いわゆる合剤の形態の医薬組成物として用いることもできる。

【0038】
経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、及び貼付剤等を挙げることができる。上記の医薬組成物の製造に用いられる薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができる。

【0039】
本明細書の実施例に、本発明の化学式Iに示される好ましい化合物の製造方法を具体的に説明する。これらの製造方法において用いられた出発原料及び試薬、並びに反応条件などを適宜修飾ないし改変することにより、本発明の範囲に包含される化合物はいずれも製造可能である。本発明の化合物の製造方法は、実施例に具体的に説明されたものに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例の範囲に限定されることはない。
【実施例】
【0041】
[実験例1] 目的化合物(NEt-4IB)の合成
本実施例における(NEt-4IB)を得るまでの製造方法のスキームを図1に示した。
【実施例】
【0042】
1)中間体A:2-Isopropyl-4-nitrophenolの合成
【化4】
JP2014076953A_000006t.gif
【実施例】
【0043】
2-イソプロピルフェノール(6.1mL、45mmol)を酢酸エチル(200mL)に溶解後、塩化亜鉛(6.1g、45mmol)を加え、氷冷下で撹拌しつつ、超音波をかけながら濃硝酸(3.4mL、45mmol)を滴下した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:5)で反応終了を確認後、反応液を水(100mL×2)、続いて飽和食塩水(100mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒留去後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:5)を行い、茶色固体の中間体A(4.9g、60%)を得た。
【実施例】
【0044】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.13 (d, 1H, J = 2.8 Hz), 8.00 (dd, 1H, J = 9.0, 2.8 Hz), 6.83 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 6.04 (s, 1H), 3.26 (sep, 1H, J = 7.0 Hz), 1.30 (d, 6H, J = 7.0 Hz).
【実施例】
【0045】
2)中間体B:4-Isobutoxy-3-isopropylnitrobenzeneの合成
【化5】
JP2014076953A_000007t.gif
【実施例】
【0046】
中間体A(3.3g、18mmol)をN,N‘-ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解後、炭酸カリウム(3.7g、27mmol)、ヨウ化カリウム(300mg、1.8mmol)、1-ブロモ-2-メチルプロパン(2.9mL、27mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、80℃で12時間撹拌した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:8)で反応終了を確認後、2N塩酸(100mL)にあけ、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機層を水(150mL×2)、飽和食塩水(150mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒留去後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:14→1:12)を行い、橙色油状の中間体B(3.9g、98%)を得た。
【実施例】
【0047】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.08 (m, 2H), 6.85 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 3.84 (d, 2H, J = 6.7 Hz), 3.36 (sep, 1H, J = 7.0 Hz), 2.17 (sep, 1H, J = 6.7 Hz), 1.26 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 1.08 (d, 6H, J = 6.7 Hz).
【実施例】
【0048】
3)中間体C:Methyl 6-[(4-isobutoxy-3-isopropylphenyl)amino]-3-pyridinecarboxylateの合成
【化6】
JP2014076953A_000008t.gif
【実施例】
【0049】
中間体B(10g、44mmol)をメタノール(30mL)に溶解後、10%パラジウム活性化炭素(触媒量)を加え、水素雰囲気下で5.5時間撹拌した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:3)で反応終了を確認後、セライト濾過を行い、減圧下で溶媒留去した。そこに、6-クロロニコチン酸(6.9g、44mmol)、メタンスルホン酸(2.9mL、44mmol)、1,4-ジオキサン(20mL)を加え、アルゴン雰囲気下、120℃で23時間撹拌した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=3:1)で反応終了を確認後、減圧下で溶媒留去し、濃硫酸(2.0mL)、メタノール(20mL)を加え、アルゴン雰囲気下、80℃で5時間撹拌した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=2:1)で反応終了を確認後、減圧下で溶媒留去し、2N水酸化ナトリウム水溶液で中和を行った後、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機層を水(150mL×2)、飽和食塩水(150mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒留去後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:10→1:5)を行い、白色個体の中間体(7.3g、48%)を得た。
【実施例】
【0050】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.79 (dd, 1H, J = 2.0, 0.5 Hz), 7.99 (dd, 1H, J = 9.0, 2.5 Hz), 7.13-7.09 (m, 2H), 6.88 (br s, 1H), 6.83 (d, 1H, J = 9.5 Hz), 6.62 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 3.88 (s, 3H), 3.74 (d, 2H, J = 6.5 Hz), 3.36 (sep, 1H, J = 7.0 Hz), 2.14 (sep, 1H, J = 6.5 Hz), 1.22 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 1.07 (d, 6H, J = 6.5 Hz).
【実施例】
【0051】
4)中間体D:Methyl 6-[Ethyl(4-isobutoxy-3-isopropylphenyl)amino]-3-pyridinecarboxylateの合成
【化7】
JP2014076953A_000009t.gif
【実施例】
【0052】
60%水素化ナトリウム(1.3g、31mmol)をn-ヘキサンで洗い、N,N‘-ジメチルホルムアミド(50mL)で懸濁した後、氷冷下にて中間体4(6.3g、18mmol)、ヨウ化エチル(2.5mL、31mmol)を加えた。その後、室温に戻し、アルゴン雰囲気下にて1.5時間撹拌した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:4)で反応終了を確認後、反応液を氷にあけ、2N塩酸で酸性にした後、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機層を水(150mL×2)、飽和食塩水(150mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒留去後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:9)を行い、橙色油状の中間体Dとそのエチルエステル体の混合物(6.2g)を得た。
【実施例】
【0053】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.83 (dd, 1H, J = 2.3, 0.7 Hz), 7.77 (dd, 1H, J = 9.3, 2.3 Hz), 7.02 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.97 (dd, 1H, J = 8.6, 2.5 Hz), 6.86 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 6.14 (d, 1H, J = 9.3 Hz), 4.31 (q, 0.2H, J = 7.0 Hz), 4.00 (q, 2H, J = 7.0 Hz), 3.85 (s, 2.8H), 3.77 (d, 2H, J = 6.5 Hz), 3.36 (sep, 1H, J = 7.0 Hz), 2.15 (sep, 1H, J = 6.5 Hz), 1.35 (t, 0.3H, J = 7.0 Hz), 1.24-1.20 (m, 9H), 1.08 (d, 6H, J = 6.5 Hz).
【実施例】
【0054】
5)目的化合物(NEt-4IB):6-[Ethyl(4-isobutoxy-3-isopropylphenyl)amino]-3-pyridinecarboxylic acidの合成
【化8】
JP2014076953A_000010t.gif
【実施例】
【0055】
中間体Dとそのエチルエステル体混合物(6.2g)をメタノール(50mL)、テトラヒドロフラン(25mL)に溶解した後、2N水酸化ナトリウム水溶液(40mL)を加え、60℃で2時間撹拌した。TLCプレート(酢酸エチル:n‐ヘキサン=1:2)で反応終了を確認後、反応液を減圧下で濃縮し、2N塩酸で中和し、酢酸エチル(150mL×3)で抽出した。有機層を水(150mL×2)、飽和食塩水(150mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒留去後、メタノールを用いて再結晶を行うことで目的化合物である桃色個体(4.6g、71%)を得た。
【実施例】
【0056】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.90 (d, 1H, J = 2.3 Hz), 7.80 (dd, 1H, J = 9.0, 2.3 Hz), 7.02 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.97 (dd, 1H, J = 8.5, 2.5 Hz), 6.87 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 6.15 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 4.02 (q, 2H, J = 7.0 Hz), 3.77 (d, 2H, J = 6.6 Hz), 3.36 (sep, 1H, J = 7.0 Hz), 2.16 (sep, 1H, J = 6.6 Hz), 1.25-1.21 (m, 9H), 1.08 (d, 6H, J = 6.6 Hz).
【実施例】
【0057】
[実験例2] RXR活性評価
【実施例】
【0058】
1)測定原理
核内受容体の多くは転写調節に関わる転写因子であるため、その転写活性を測定する手段としてレポーター遺伝子アッセイ(reporter gene assay)が行われる。COS-1細胞やHeLa細胞などの細胞に、RXR受容体タンパク質発現プラスミド及びレポータープラスミドを導入し、融合タンパク質(fusion protein)を過剰発現させる。そこに、RXR作動性物質(リガンド)が受容体に結合すると、転写がリガンド依存的に起こり、その下流にある融合タンパク質が生成され、下流にあるルシフェラーゼの産生が始まる。このルシフェラーゼ活性を測ることにより、RXR作動活性を測定した。
【実施例】
【0059】
2)宿主細胞の培養
細胞の増殖培地は、ダルベッコ変法イーグルMEM培地(DMEM)を用いた。まず、500mLの超純水(Milli-Q(R)にて生成)にDMEM粉末を4.75g溶解し、高圧加熱滅菌(121℃、20分間)を行った後、室温に戻し、これを非働化したウシ胎児血清(FBS)を10%(v/v)となるように加え、さらに高圧加熱滅菌した10%NaHCO3を10mL添加し、その後L-グルタミン0.292gを8mLの超純水に溶解したものをろ過滅菌後添加して調製した。
【実施例】
【0060】
各細胞の継代は、100mm培養シャーレで培養した細胞の培養上清を除き、トリプシン処理により細胞を回収し、4℃、1000rpm、3分間遠心分離後、増殖培地を加えて細胞を分散させ、100mm培養シャーレに細胞を分散した増殖培地を15mL加え、37℃、5%CO2存在下で培養した。
形質転換はEffecteneTM Transection Reagent (QIAGEN社)を用いて行った。RXRの陽性コントロールにはLGD1069、PPARの陽性コントロールにはTIPP-703、LXRの陽性コントロールにはcarba-T0901317を用いた。これらは、DMSO溶解したものをストック溶液とし、アッセイするプレートにおいて計測した。
【実施例】
【0061】
3)転写活性の測定
(1日目)60mm培養シャーレに、増殖培地5mLとともにCOS-1細胞を50×104cells播種し、一晩培養した。
(2日目)EffecteneTM Transection Reagent (QIAGEN社)を用いたリポフェクション法により形質転換を行った。
(3日目)16~18時間後、培養上清を除き、トリプシン処理により細胞を回収し、4℃、1000rpm、3分間遠心分離後、増殖培地を加えて細胞を分散し、2.0×104cells/wellとなるように96ウェルのホワイトプレートに播種した。その後、DMSO濃度が1%以下になるように各化合物を加えた。
(4日目)24時間後、上清25μLをSEAP測定に用い、残りの細胞液はルシフェラーゼ活性測定に用いた。
【実施例】
【0062】
SEAP測定は、Methods in molecular biology, 63, pp.49-60, 1997/ BD Great EscAPe SEAP User manual (BD bioscience)に記載の方法に従い行った。
具体的には、以下の方法で測定した。上記4日目の上清25μ\ochLに対して希釈用緩衝液を25μL加えた後、65℃で30分インキュベートした。その後室温に戻し、アッセイ用緩衝液(7μL)、10×MUP(0.3μL)、希釈用緩衝液(2.7μL)を加え、暗所室温で60分インキュベートした。その後、マイクロプレートリーダー(インフィニットTM (infinite)200、TECAN社製)を用い励起波長360nm、蛍光波長465nmにより蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0063】
アッセイ用緩衝液は、以下の方法で調製した。50mLの超純水(Milli-Q(R)にて生成)にL-ホモアルギニン(0.45g)と塩化マグネシウム(0.02g)を溶解させ、ジエタノールアミン(21mL)を加えた。その後、塩酸を用いてpHを9.8になるように調整後、超純水を用いて全量が100mLになるようにメスアップし、それを4℃で保存した。
【実施例】
【0064】
希釈用緩衝液は、以下の方法で調製した。90mLの超純水(Milli-Q(R)にて生成)に塩化ナトリウム(4.38g)とTris Base(2.42g)を溶解させた。その後、塩酸を用いてpHが7.2になるように調整し、5倍濃度希釈用緩衝液を作製し、それを4℃で保存した。使用直前にそれを5倍希釈することで希釈用緩衝液を作製した。
【実施例】
【0065】
4-メチルウンベリフェリルホスフェートを25mMになるように超純水(Milli-Q(R)にて生成)に溶解させ、それを-20℃で保存したものを、10×MUPとした。
【実施例】
【0066】
ルシフェラーゼ活性は、NUNC社製の96穴ホワイトプレートを用い、発光基質(Steady-Glo(R) Luciferase Assay System、Promega社製)との反応産物との発光強度をマイクロプレートリーダー(インフィニットTM (infinite)200、TECAN社製)を用いて測定した。
【実施例】
【0067】
測定結果は、陽性コントロール(RXRには非特許文献の”Cancer Res. 1996, 56, 5566.”に記載のLGD1069を、PPARには非特許文献の”Bioorg. Med. Chem. Lett., 2008,18, 4525.”に記載のTIPP-703を、LXRには非特許文献の”Heterocycles,2008, 76, 137.”に記載のcarba-T0901317)を1μM反応させたときの転写活性を1とし、相対活性を調べた。
【実施例】
【0068】
4)測定結果
上記の測定結果を図2に示した。
【実施例】
【0069】
[実験例3] マウス経口単回投与による化合物の血中移行性ならびに血中トリグリセリド値の評価
【実施例】
【0070】
1)実験方法
(1) 6週齢の雄性ICRマウスを搬入し,1つの化合物,1つの時間につき,1群
4-8匹で実施した。
(2) 化合物投与量は1匹あたり30mg/kgで行った。投与する化合物は,終濃度
1%量のエタノールで溶かし、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)溶液で
懸濁することにより調整した。
(3) (2)で調整した化合物溶液を10 mL/kgの容量で胃ゾンデによって経口投与し,
0.5,1,3,6時間後にエーテル麻酔を行い,腹部を切り開いて大静脈より
血液を採取し,ヘパリン処理チューブに移した。その後,5分間1900gで
遠心分離を行って血漿とし,一部を血中TG値測定に用い,一部を血中濃度
測定用として100μLをとった。血中TG値は富士ドライケム4000を用いて
測定した。
(4) 血漿100μLに酢酸アンモニウム緩衝液(酢酸アンモニウム5mMに酢酸を加
え,pHを5に調整して作成した)を100 μL加え,酢酸エチルを1 mL加えた。
それを30秒間ボルテックスにかけ,室温で10分間放置したのち30秒間
遠心し,上清液800μLを取り、遠心エバポレーターで濃縮し,残さを
-20℃で保存した。
(5) -20℃で保存されたサンプルにメタノールを100μL加え,ボルテックスに
かけ,HPLCにて化合物ピークのエリア面積を測定した。
(6) 1,3,10,30μLの化合物溶液を作成し,HPLCにて化合物ピークのエリア面積
を測定することで検量線を作成した。
【実施例】
【0071】
2)測定結果
上記の測定結果のうち、各化合物の血中濃度を図3のAに、NEt-4IB単回投与(30mg/kg)による血中トリグリセリド値の変化を図3のBに示した。
【実施例】
【0072】
[実験例4] マウス経口1週間反復投与による副作用発現確認試験
【実施例】
【0073】
1)実験方法(マウス経口1週間反復投与)
(1) 6週齢の雄性ICRマウスを搬入し,6日間の順化を行った。その後,群間で
の体重のばらつきが少なくなるように1群8匹で群分けを行った。
(2) 毎日朝10時に体重測定を行った後,1匹あたり30mg/kgで化合物の経口投与
を行った。なお,normalについては0.5%CMC溶液の経口投与を行った。
(3) 投与する化合物は終濃度1%となる量のエタノールで溶かし,0.5%CMC溶液で
懸濁することにより調整した。
(4) ICRマウスに(3)で調整した化合物溶液を10mL/kgで胃ゾンデによって経口
投与した。化合物を7日間連続で経口投与し,体重変化を確認した。化合物
投与最終日である7日目の17時に絶食し,翌日の10時にマウスをエーテル
麻酔により安楽死させ,肝臓,血液の採取を行った。肝臓は重量を測定し,
血液はヘパリン処理チューブに移した後,5分間1900gで遠心分離を行って
血漿とし,AST,ALT,γ-GTP,ALP,CRE,BUN,TG,TCHO,GLUを富士ドライ
ケム4000を用いて測定した。
【実施例】
【0074】
2)測定結果
上記の測定結果のうち、体重変化を図3のCに、各種血中パラメータについては下表の表1に示した。
【実施例】
【0075】
【表1】
JP2014076953A_000011t.gif
【実施例】
【0076】
[実験例5] ラット経口28日間反復投与による副作用発現確認試験
【実施例】
【0077】
1)実験方法
(1) 本試験は,「化審法に基づく新規化学物質の届出等に係る資料」に要求さ
れる試験(経済協力開発機構(OECD)毒性試験ガイドライン407)である。
(2) 5週齢のSDラット(雄性,雌性)を搬入し,群間での体重のばらつきが少なく
なるように1群6匹で群分けを行った。
(3) 毎日朝10時に体重測定を行った後,1匹あたり30mg/kgで化合物の経口投与
を行った。なお,normalについては0.5%CMC溶液の経口投与を行った。
(4) 投与する化合物は終濃度1%となる量のエタノールで溶かし,0.5%CMC溶液で
懸濁することにより調整した。
(5) SDラットに4で調整した化合物溶液を5mL/kgで胃ゾンデによって経口投与した。
化合物を28日間連続で経口投与し,体重変化,摂餌量,摂水量,死亡数を
観察した。最終日である29日目には,エーテル麻酔により安楽死させ,脳・
肝臓・脾臓・腎臓・副腎・精巣を採取し,それぞれ重量を測定し,肉眼的所見
を確認した。さらに採血を行い,ヘパリン処理チューブに移した後,4℃にて
10分間2000gで遠心分離を行って血漿とし,AST,ALT,γ-GTP,ALP,CRE,
BUN,TG,TCHO,GLUを富士ドライケム4000を用いて測定した。
【実施例】
【0078】
2)測定結果
上記の測定結果のうち、体重変化、摂食量、飲水量を図4に、各種血中パラメータについては下表の表2に示した。
【実施例】
【0079】
【表2】
JP2014076953A_000012t.gif
【実施例】
【0080】
[実験例6] 2型糖尿病モデルマウスKK-Ayによる目的化合物の薬効評価
【実施例】
【0081】
1)実験方法
(1) 4週齢の雄性KK-Ay/TaJclマウスを搬入し、1化合物につき、1群6匹用いた。
(2) 搬入後は一匹ずつケージに入れ、血糖値の上昇安定化のため6週間の馴化を行っ
た。
(3) 化合物投与は1匹あたり10mg/kgで行った。投与する化合物は、終濃度1%とな
る量のエタノールで溶かし、0.5%CMC溶液で懸濁することにより調整した。
化合物調製は10mL/kgの容量で行った。
(4) 実験開始後毎日、マウスの尾部より10μL程度の採血が可能になるよう26G注
射針にて出血させ、テルモの簡易型血糖測定装置を用いて血糖値測定すること
で血糖値の推移を見た。さらに体重,飲水量,摂食量を測定した。その後,試
験化合物の経口投与を行った。これを14日間続けた。
(5) 薬物投与14日目の17時より絶食を行った。
(6) 翌日の朝10時に体重測定、血糖値測定を行い、その後ブドウ糖負荷試験(OGTT)
を行った。本試験では、糖(グルコース)を1g/kgで経口投与し、0,15,30,45,
60,90,120分後に尾部より採血を行い、血糖値を測定した。
【実施例】
【0082】
2)評価方法
薬効の評価は、日々の体重、血糖値、摂食量、飲水量を測定して行った。
【実施例】
【0083】
3)測定結果
上記結果を、図5に示した。
【実施例】
【0084】
[実験例7] NBD-Cl誘発クローン病モデルマウスの作成および抗炎症試験による目的化合物の薬効評価
【実施例】
【0085】
1)モデルの作成方法
本モデルの作成においては、非特許文献の”J Immunol 2009,182, 5836-5845.”を参考に実施した。
(1) NBD-Cl(東京化成工業)200mgを1mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。
(2) (1)の溶液7.5μLにエタノール500μLを加え、さらに精製水を492.5μL加
えたものをNBD-Cl溶液とした。
(3) 7週齢(体重17-19 g)の雌性BALB/cマウスを搬入した。
(4) 投与する化合物はNEt-4IBは1mg/mL、Prednisoloneは3mg/mLとなるように、
終濃度1%となる量のエタノールで溶かし、0.5%CMC溶液で懸濁することにより
調整した。なお、vehicleについては化合物溶液の代わりに0.5%CMC溶液の経
口投与を行った。Normalについては何も投与しなかった。
(5) 実験開始日(day1)の朝9時に体重を測定し、体重のばらつきが少なくなるように
群分け(1群3-5匹)を行った。その後、胃ゾンデにて4で調整した化合物溶液を
1匹あたり200μLの投与量で経口投与を行った。
(6) 化合物の投与を行った後、NBD-Cl溶液を腸注しやすくするため,マウスに排便
を促し、ジエチルエーテル麻酔下,(2)で作製したNBD-Cl溶液100μLをカテー
テルを用いて直腸投与した(10時)。NBD-Cl直腸投与後6時間後に再び化合物の
経口投与を行った(16時)。以降3日間(day2-4)同じように10時に体重測定を行い、
10時と16時に胃ゾンデにて(4)で調整した化合物溶液を1匹あたり200μLの
投与量で経口投与を行った。
(7) NBD-Cl直腸投与から5日目(day5)の朝10時に体重測定を行った後、マウスを
ジエチルエーテルにより安楽死させ、解剖した。肝臓および大腸を摘出し、大
腸は炎症の程度を観察するとともに腸長の測定を行った。
【実施例】
【0086】
2)評価方法
薬効の評価は、体重変化、解剖時の大腸長を測定して行った。
【実施例】
【0087】
3)測定結果
上記結果を、図6に示した。
【実施例】
【0088】
[実験例8] Imiquimod誘発乾癬モデルマウスの作成および目的化合物の薬効評価
【実施例】
【0089】
1)モデルの作成方法
本モデルの作成においては、非特許文献の”J Immunol 2009,182, 5836-5845.”を参考に実施した。
(1) Imiquimodは、持田製薬より販売されているベセルナクリーム(5% Imiquimod)
を用いた。
(2) 7週齢(体重20-24g)の雄性BALB/cマウスを搬入し、1化合物につき、1群6匹
用いた。化合物投与は、1匹あたり30mg/kgで行った。投与する化合物は、終
濃度1%となる量のエタノールで溶かし、0.5%CMC溶液で懸濁することにより調
整した。化合物調製は10mL/kgの容量で行った。なお,vehicleについては化合
物溶液の代わりに0.5%CMC溶液の経口投与を行った。
(3) ジエチルエーテル麻酔下、バリカンを用いて、マウスの背中を1.5×1.5cm毛
ぞりした。毛ぞり3日後を実験開始日(day1)とし、朝10時に体重測定を行った
後、体重のばらつきが少なくなるように群分け(1群3-5匹)を行った。その後、
胃ゾンデを用いて化合物のCMC溶液を経口投与した。経口投与後、毛ぞりした
箇所に、(1)で準備したベセルナクリームを1匹あたり40mgスパ?テルを用いて
塗布した。
(4) 実験開始日から毎日、マウスの体重を測定した。測定後,(3)と同様に胃ゾン
デを用いて化合物のCMC溶液を経口投与した後、背中にベセルナクリームを
40mg塗布した(day1-4)。
(5) 4日後(day5)からはベセルナクリームの塗布は行わず、体重測定、化合物の経
口投与のみとした。最終日(day7)にマウスをジエチルエーテルにより安楽死さ
せた。
【実施例】
【0090】
2)評価方法
薬効の評価は,体重変化の測定ならびにimiquimodを塗布した箇所の皮膚症状を観察することで行った。
【実施例】
【0091】
3)測定結果
上記の測定結果を図7に示した。
【実施例】
【0092】
いずれの動物実験とも,岡山大学動物実験委員会の審査を受け実施した。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上詳述したように、本発明の化合物は、RXR部分作動性を有し、既存のRXR完全作動薬であるNEt-TMNの活性と比較してその転写活性化能は低かった。このことは、RXRパーシャルアゴニスト活性を示すということができ、RXRの活性を極端に活性化しないことから、RXRの適度な応用が期待できる。また、本発明の化合物は,2型糖尿病、メタボリックシンドローム、NBD-Cl誘発クローン病モデルマウス、imiquimod誘発乾癬様モデルマウスにおいて体重減少の抑制を示し,皮膚における抗炎症効果を示した。また本発明の化合物は、抗がん剤、抗炎症剤、抗アレルギーの有効成分としての作用が期待できるため、このような医薬として利用することができる。また、生化学試験用試薬としても利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6