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明細書 :ヒトコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1を特異的に認識するモノクローナル抗体の使用およびこの抗体を含むキット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6183880号 (P6183880)
公開番号 特開2014-084284 (P2014-084284A)
登録日 平成29年8月4日(2017.8.4)
発行日 平成29年8月23日(2017.8.23)
公開日 平成26年5月12日(2014.5.12)
発明の名称または考案の名称 ヒトコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1を特異的に認識するモノクローナル抗体の使用およびこの抗体を含むキット
国際特許分類 C07K  16/40        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
G01N  33/573       (2006.01)
G01N  33/577       (2006.01)
C12N   5/20        (2006.01)
FI C07K 16/40 ZNA
G01N 33/574 A
G01N 33/573 A
G01N 33/577 B
C12N 5/20
請求項の数または発明の数 2
微生物の受託番号 NPMD NITE P-1409
全頁数 12
出願番号 特願2012-232564 (P2012-232564)
出願日 平成24年10月22日(2012.10.22)
審査請求日 平成27年8月8日(2015.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
発明者または考案者 【氏名】大山 力
【氏名】米山 徹
【氏名】飛澤 悠葵
【氏名】畠山 真吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
審査官 【審査官】小林 薫
参考文献・文献 特表2006-520912(JP,A)
Glycobiology, 2005, Vol.15, No.3, p,271-280
Database GenBank [online], Accession No. AAA35919<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/183441>1993.04.27, [検索日 2016.12.26]Definition: beta-1,6-N-acetylglucosaminyltransferase [Homo sapiens]
Database GenBank [online], Accession No. AAH17032<https://www.ncbi.nlm.hnih.gov/protein/AAH17032.1>2006.08.11, [検索日 2016.12.22]Definition: GCNT3 protein [Homo sapiens]Gene synonym: C2GnT2
Database UniProtKB/Swiss-Prot [online], Accession No. Q9P109<https://www.ncbi.nlm.hnih.gov/protein/74719783?sat=16&satkey=10906674>2012.10.03, [検索日 2016.12.22]Definition: Core2-GlcNAc-transferase 3
大沢利昭他,「免疫学辞典」, 第2版, 株式会社東京化学同人, 2001年12月3日, p.6
Glycobiology, 2005, Vol.15, No.10, p.1016-1024
J. Biol. Chem., 1997, Vol.272, No.36, p.22695-22702
日泌尿会誌, 1995, 86巻, 12号, p.1776-1783
Biochem. Biophys. Res. Commun., 2005, Vol.331, p.958-963
調査した分野 C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE(STN)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
特許請求の範囲 【請求項1】
前立腺癌の悪性度の判定および/または前立腺癌と前立腺肥大の識別を行うために、分析試料中のヒトコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1を検出するための、ヒトコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1を特異的に認識し、分子量が14万Da~16万Daであって、免疫グロブリンタイプがIgG1(κ)である、ハイブリドーマHU127(NITE P-1409)から産生されるモノクローナル抗体の使用
【請求項2】
前立腺癌の悪性度の判定および/または前立腺癌と前立腺肥大の識別を行うための、ヒトコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1を特異的に認識し、分子量が14万Da~16万Daであって、免疫グロブリンタイプがIgG1(κ)である、ハイブリドーマHU127(NITE P-1409)から産生されるモノクローナル抗体を少なくとも含むキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌の悪性度の判定や前立腺癌と前立腺肥大の識別を行うために有用な、ヒトコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1を特異的に認識するモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(prostate carcinoma:以下「Pca」と略す)は男性の主要な死亡原因であることは周知の通りであり、前立腺特異抗原(prostate specific antigen:以下「PSA」と略す)はPcaに対する最も重要な腫瘍マーカーとして認識されている。しかしながら、PSAを指標にしてPcaの悪性度を判定したり、Pcaと前立腺肥大(benign prostate hyperplasia:以下「BPH」と略す)を識別したりすることは困難である。そのため、Pcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を高感度に再現性よく行うための方法の開発が望まれている。
【0003】
このような背景のもと、本発明者らの研究グループは、ある種の癌細胞の表面に発現し、癌の転移などに関わっていることが知られているCore2 O-glycanと呼ばれるO-グリカンの生合成のキーとなる糖転移酵素であるコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Core2 β1,6-N-acetylglucosaminyltransferase:以下「C2GnT」と略す。図1にCore2 O-glycanの構造とC2GnTが触媒する糖転移反応部位を示す)に注目し、C2GnTを指標にしてPcaの悪性度を判定する方法を特許文献1において提案している。しかしながら、特許文献1においては、ポリクローナル抗体を用いて分析試料中のC2GnTを検出しているため、3種類のアイソフォームが存在するC2GnTに対する特異性の面で改良の余地がある。また、ポリクローナル抗体は均質なものを安定に大量供給することが困難であるといった問題もある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2006-520912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、Pcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を行うために有用なモノクローナル抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を行い、C2GnTの3種類のアイソフォームの1つであるコア2β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ1(以下「C2GnT1」と略す)を特異的に認識するモノクローナル抗体を調製した。そして、このモノクローナル抗体を用いてPcaに罹患している男性やBPHに罹患している男性からの分析試料中のC2GnT1を検出することで、その存在の有無や存在量に基づいてPcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を高感度に再現性よく行うことができることを見出した。
【0007】
上記の知見に基づいてなされた請求項1記載の発明は、Pcaの悪性度の判定および/またはPcaとBPHの識別を行うために、分析試料中のヒトC2GnT1を検出するための、ヒトC2GnT1を特異的に認識し、分子量が14万Da~16万Daであって、免疫グロブリンタイプがIgG1(κ)である、ハイブリドーマHU127(NITE P-1409)から産生されるモノクローナル抗体の使用である。
また、請求項2記載の発明は、Pcaの悪性度の判定および/またはPcaとBPHの識別を行うための、ヒトC2GnT1を特異的に認識し、分子量が14万Da~16万Daであって、免疫グロブリンタイプがIgG1(κ)である、ハイブリドーマHU127(NITE P-1409)から産生されるモノクローナル抗体を少なくとも含むキットである
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒトC2GnT1を特異的に認識するモノクローナル抗体が提供され、このモノクローナル抗体を用いて分析試料中のC2GnT1を検出することで、その存在の有無や存在量に基づいてPcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を高感度に再現性よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Core2 O-glycanの構造とC2GnTが触媒する糖転移反応部位を示す図である。
【図2】C2GnTの3種類のアイソフォームのアミノ酸配列を示す図である(濃淡が濃いほどアミノ酸残基の共通性が高い。Tilo Schwientek et al.,The Journal of Biological Chemistry,Vol.275,No.15,pp.11106-11113,2000より)。
【図3】実施例におけるELISA法によるHU127mAbのヒトC2GnT1に対する特異性評価の結果を示すグラフである。
【図4】同、HU127mAbを用いて行った前立腺癌全摘標本の染色写真である。
【図5】同、C2GnT1の発現の有無とPSA再発率の関係を示すグラフである。
【図6】同、ドットブロット法によるHU127mAbを用いた前立腺マッサージ尿中のC2GnT1の検出結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によって提供されるモノクローナル抗体は、ヒトC2GnT1を特異的に認識し、分子量が14万Da~16万Daであって、免疫グロブリンタイプがIgG1(κ)である。

【0011】
本発明によって提供されるモノクローナル抗体は、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むペプチドを用いて免疫した哺乳動物(ヒトを除く)の脾臓細胞と、同種または異種の骨髄腫細胞から、自体公知の方法でこのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製することで調製することができる。配列番号1に記載のアミノ酸配列(NLETERMPSHKEERWKKRYEV)は、ヒトC2GnT1の241~261番目のアミノ酸配列に相当する(図2)。免疫原として用いるペプチドは、化学合成したものであってもよいし、C2GnT1から調製したものであってもよい。

【0012】
免疫原として用いるペプチドは、必要に応じて適当なアジュバント、例えば、フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、Ribiアジュバント、水酸化アルミニウム(Alum)、コレラトキシン、酸処理したSalmonela minnesota菌体膜画分などと混合して免疫対象とする哺乳動物(ヒトを除く)、例えば、マウス(BALB/cなど)やラットやウサギなどに投与される。免疫方法は、免疫対象とする哺乳動物の種類、抗原量、アジュバントの有無、免疫回数などを考慮して決定することができる。免疫原として用いるペプチドを投与してから所定の期間経過後、免疫した哺乳動物の脾臓細胞(リンパ球など)を採取し、採取した脾臓細胞を、例えば、ミラーとミルシュタインの常法(Nature,256,495,1975)などに従って、同種または異種の骨髄腫細胞と融合させる。骨髄腫細胞としてはマウス由来のP3U1やP3X63Ag8.683などが挙げられる。細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコールやHVJ(センダイウイルス)などの公知の細胞融合剤を用いて行うことができる。融合された細胞は、HAT培地を用いて選抜することができる。選抜された融合細胞は、融合細胞が産生するモノクローナル抗体のC2GnT1に対する反応性に基づいて免疫学的にスクリーニングすることができる。こうして作製された本発明によって提供されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの具体例としては、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-1409として寄託されているハイブリドーマHU127が挙げられる。

【0013】
本発明によって提供されるモノクローナル抗体は、Pcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を行うために用いることができる。その利用方法は特段限定されるものではなく、例えば、このモノクローナル抗体を用いて分析試料中のC2GnT1を検出することで、その存在の有無や存在量に基づいて行う方法が挙げられる。分析試料としては、血清、尿、前立腺組織やその抽出液、精液、膀胱洗浄液などが挙げられる。その調製は自体公知の方法によって行えばよい。

【0014】
本発明によって提供されるモノクローナル抗体を用いて分析試料中のC2GnT1を検出する工程は、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)サンドイッチ法、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、フローサイトメトリー法などの免疫学的な方法によって行うことができる。こうした方法は、本発明によって提供されるモノクローナル抗体をC2GnT1に結合させた後、酵素標識を行った二次抗体を結合させてから酵素基質を加えて酵素反応生成物を測定したり、ビオチン標識を行った二次抗体を結合させてから酵素標識を行ったアビジンやストレプトアビジンを結合させた後、酵素基質を加えて酵素反応生成物を測定したり、蛍光標識を行った二次抗体を結合させて蛍光を測定したり、放射線標識を行った二次抗体を結合させて放射線を測定したりして行うことができる。しかしながら、本発明によって提供されるモノクローナル抗体を酵素標識したりビオチン標識したり蛍光標識したり放射線標識したりして二次抗体を用いずに行ってもよい。なお、C2GnT1の検出の際に必要に応じて、洗浄、精製、分画といった操作を行ってもよいことは言うまでもない。また、本発明によって提供されるモノクローナル抗体は、Pcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を容易かつ簡便に行うことができるように、二次抗体、酵素基質、反応停止液、洗浄液などとともにキット化してもよい。

【0015】
分析試料中のC2GnT1の存在の有無や存在量に基づいて行うPcaの悪性度の判定は、例えば、C2GnT1が存在すると悪性度が高いかその蓋然性が高い、および/または、C2GnT1が存在しないと悪性度が低いかその蓋然性が高いと判断することができる。また、分析試料中のC2GnT1の存在量を予め設定したPcaの悪性度についてのカットオフ値と比較することにより、カットオフ値よりも多い場合は悪性度が高いかその蓋然性が高い、および/または、少ない場合は悪性度が低いかその蓋然性が高いと判断することができる。この場合、カットオフ値はPcaに罹患している男性群からの分析試料中のC2GnT1の存在量をもとに設定することができる。一方、分析試料中のC2GnT1の存在の有無や存在量に基づいて行うPcaとBPHの識別は、例えば、C2GnT1が存在するとPcaであるかその蓋然性が高い、および/または、C2GnT1が存在しないとBPHであるかその蓋然性が高いと判断することができる。また、分析試料中のC2GnT1の存在量を予め設定したPcaとBPHの間のカットオフ値と比較することにより、カットオフ値よりも多い場合はPcaであるかその蓋然性が高い、および/または、少ない場合はBPHであるかその蓋然性が高いと判断することができる。この場合、カットオフ値はPcaに罹患している男性群とBPHに罹患している男性群からの分析試料中のC2GnT1の存在量をもとに設定することができる。

【0016】
なお、本発明によって提供されるモノクローナル抗体は、前述したようなPcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別の他、膀胱癌の診断などにも用いることができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0018】
実施例1:ヒトC2GnT1を特異的に認識するモノクローナル抗体の調製
(1)抗原の調製
ヒトC2GnT1の241~261番目のアミノ酸配列に相当する配列番号1に記載のアミノ酸配列(NLETERMPSHKEERWKKRYEV)を有するペプチドを化学合成し、免疫原として用いた。
【実施例】
【0019】
(2)ハイブリドーマの作製
免疫原として用いる21アミノ酸残基からなるペプチド228μgをEtOH114μlに溶かし、超音波処理後、PBS1820μlを加えて、37℃に加温した。その後、アジュバントとして酸処理したSalmonela minnesota菌体膜画分をPBSで1mg/mlに懸濁した溶液568μlを加えて37℃で10分間静置させた。この混合溶液200μlを0,4,7,11,21,25日目にBALB/cマウスに腹腔内投与した。最終投与後3日目に、免疫したマウスの脾臓から調製したリンパ球をケーラーとミルシュタインの常法(Nature,256,495,1975)に従って、細胞融合に供した。融合相手の親細胞に、マウス骨髄腫細胞株であるP3U1(ATCC CRL-1580)を用い、融合剤としてはポリエチレングリコール4000(メルク社)を用いた。このようにして融合した細胞は、HAT培地に懸濁し、96穴のマイクロカルチャープレートに分注して培養した。約2週間後、コロニー陽性ウェルの培養上清中の抗体産生を、前立腺癌細胞株PC3の細胞破壊液を抗原とするドットブロット法、および大腸菌大量発現系を用いて作製した組み換えヒトC2GnT1タンパク質を用いたELISA法でスクリーニングした。ドットブロット法によるスクリーニングは次のようにして行った。前立腺癌細胞株PC3の細胞破壊液を、20600xgで5分間遠心し、上清20μlを採取した。ニトロセルロース膜に各検体をブロット後、室温でよく乾燥させた。0.05%Tween20-PBS(PBST)にて膜を洗浄後、5%スキムミルク-PBSにて室温で1時間ブロッキング処理を行った。PBST洗浄後、コロニー陽性ウェルの培養上清100μl/spotを室温で1時間反応させた。PBST洗浄後、0.1%スキムミルク-PBSにより2500倍に希釈したHRP標識Goat Anti-mouse IgG(H+L)(Cell signaling technology社)を室温で1時間反応させた。PBST洗浄後、ECL prime(GE healthcare社)により化学発光させ、ChemiDoc XRS Plus(Bio-Rad社)により発光を検出した。ELISA法によるスクリーニングは96穴マイクロタイタープレート(ダイナテック社、IMMULON 1B)を用いて次のようにして行った。組み換えヒトC2GnT1タンパク質をPBSで5ng/mlに調整し、75μl/wellとなるように加えた。ブランクとなるウェルにはPBS75μlを入れた。4℃で一晩静置し、組み換えヒトC2GnT1タンパク質を固相化後、3%BSA-PBS(PBS-1)を200μl/wellとなるように加え、室温で1時間放置した。PBS-1を除去後、コロニー陽性ウェルの培養上清を75μl/wellとなるように加え、室温にて1時間反応させた。培養上清を除去後、PBS100μl/wellでウェルを1回洗浄した。PBS-1で2000倍希釈した二次抗体(HRP標識Goat Anti-mouse IgG(H+L)(Cell signaling technology社))を100μl/wellとなるように加え、室温にて1時間反応させた。二次抗体溶液を除去後、ウェルをPBS100μl/wellで5回洗浄した。ペルオキシダーゼ基質としてTMB One Solution(Promega社,Cat.No.G7431)を100μl/wellとなるように加えた。遮光放置して発色が見られたところで1M HCl100μl/wellを加えて発色を停止させた。その後、測定波長450nmに設定したマイクロプレートリーダーで吸光度を測定した(対照波長は設定なし)。以上の方法によって高い抗体産生能と良好な増殖能をもつハイブリドーマクローンとしてHU127を得た。このクローンHU127由来のモノクローナル抗体は、大腸菌大量発現系を用いて作製した組み換えヒトC2GnT1タンパク質と特異的に反応し、組み換えヒトC2GnT2タンパク質と組み換えヒトC2GnT3タンパク質とは交差反応性を示さなかった(ウエスタンブロット法による)。このクローンHU127は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-1409として寄託されている。
【実施例】
【0020】
(3)ヒトC2GnT1を特異的に認識するモノクローナル抗体の調製
(2)において得られたハイブリドーマ(クローンHU127)を、75cm2フラスコ(BD pharmingen社)を用いて、5%(v/v)HLCM含有Alys Ab Pro培地(細胞科学研究所社)20ml中、37℃、5%CO存在下で7日間培養した。この培養液中にヒトC2GnT1を特異的に認識するモノクローナル抗体が高濃度に含まれていた。クローンHU127由来の培養液は、プロテインGセファロースによるアフニティクロマトグラフィーで精製した。こうしてクローンHU127から調製したHU127モノクローナル抗体(以下「HU127mAb」と略す)は、分子量が約15万Daであって、免疫グロブリンのタイプがIgG1(κ)であった。ELISA法によるHU127mAbのヒトC2GnT1に対する特異性評価の結果を図3に示す(ELISA法のプロトコルは前述の通り)。図3から明らかなように、HU127mAbは抗体濃度依存的にシグナルを増強した。
【実施例】
【0021】
実験例1:前立腺癌全摘標本のHU127mAbによる染色とその臨床的意義
前立腺全摘除術を施行された250例のPca患者の前立腺組織標本を、HU127mAbを用いて免疫組織染色し、その臨床的意義を調べた。
【実施例】
【0022】
免疫組織染色は以下に示す方法にて行った。前立腺全摘除術施行後、組織をホルマリン固定し、パラフィンに包埋した。パラフィン切片を作製後、脱パラフィン処理を施した。脱パラフィン処理はキシレンで5分間×2回、100%EtOHで10分間×2回、その後、90%EtOH、80%EtOH、MilliQ水の順に5分間ずつスライドグラスを浸す方法で行った。脱パラフィン処理後、10mM Tris-HCl(pH10.0),1mM EDTA溶液にスライドグラスを浸し、95℃で20分間、抗原賦活化処理を行った。抗原賦活化処理後、PBSに置換し、3%BSA-PBSにより室温で30分間ブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、0.1%BSA-PBSにより5μg/mlに調整したHU127mAbを4℃で一晩反応させた。PBSにより洗浄し、MilliQ水に置換後、0.3%過酸化水素含有MeOHに10分間浸し、細胞内ペルオキシダーゼの不活化処理を施した。MilliQ水により洗浄し、PBSに置換後、5%ヤギ血清含有PBSにより室温で30分間ブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、2%ヤギ血清含有PBSにより200倍に希釈したHRP標識Goat Anti-mouse IgG(H+L)(Millipore社)を室温で2時間反応させた。PBSにより洗浄し、MilliQ水に置換後、ダコENVISIONキット/HRP(DAB)(DAKO社)を用いて発色させた。MilliQ水で洗浄後、カウンターステインとしてヘマトキシリン染色を行った。染色操作後、EtOHからキシレンへと透徹を行い、油系封入剤にて封入して光学顕微鏡による観察を行った。前立腺組織標本におけるC2GnT1の発現の有無により患者を2群に分け、患者の年齢、PSA値、臨床病期、Pcaのリスク層別化、病理組織学的悪性度分類、神経周囲浸潤の有無などとの関係について解析を行った。結果を表1に示す。
【実施例】
【0023】
【表1】
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【実施例】
【0024】
表1から明らかなように、C2GnT1の発現がある場合(C2GnTpositive)と発現がない場合(C2GnTnegative)を比較すると、臨床病期(Clinical stage)、Pcaのリスク層別化(Prostate cancer risk stratification)、病理組織学的悪性度分類(Final pathological stage)、神経周囲浸潤の有無(Perineural Invasion status)において、C2GnT1の発現がある場合の方が発現がない場合よりも悪性度が高く(例えば癌が前立腺外に浸潤していることを示すpT3の割合についてみるとC2GnT1の発現の有無は癌の浸潤度と密接に関連する(p=0.003,X-test))、前立腺組織標本におけるC2GnT1の発現の有無に基づいてPcaの悪性度を判定できることがわかった。染色結果の一例を図4に示す(C2GnT1陽性のPcaでは矢印で示した部位において細胞の核付近にあるゴルジ体の染色が認められる)。
【実施例】
【0025】
また、前立腺組織標本におけるC2GnT1の発現の有無とPSA再発率の関係をカプランマイヤー法により解析した結果を図5に示す。図5から明らかなように、C2GnT1陽性のPca(C2GnT(+))では前立腺全摘後のPSA再発率が有意に高く(p=0.000015,log-rank test)、PSA再発率の点においても前立腺組織標本におけるC2GnT1の発現の有無に基づいてPcaの悪性度を判定できることがわかった。
【実施例】
【0026】
さらに、PSA再発に関連する危険因子をCOXの比例ハザード分析により単変量解析と多変量解析した結果を表2に示す。表2から明らかなように、単変量解析と多変量解析いずれにおいてもHU127mAbを用いた免疫組織染色で検出されたC2GnT1の発現がPSA再発に対する危険因子であることが確認された。
【実施例】
【0027】
【表2】
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【実施例】
【0028】
実験例2:ドットブロット法によるHU127mAbを用いた前立腺マッサージ尿中のC2GnT1の検出
泌尿器科を受診し、PSAが高値のため前立腺マッサージ尿を採取された検体48例をニトロセルロース膜にブロットし、HU127mAbを用いてC2GnT1の検出を行った。前立腺マッサージ尿は、Pca検診の一つとして利用される、直腸から前立腺をマッサージすることにより得られる前立腺タンパク質を高濃度に含む尿検体であり、通常の検査に使用した残りの検体を凍結し保存していたものを用いた。マッサージ尿検体を自然解凍後、よく混和し、2000xgで5分間遠心し、上清20μlを採取した。ニトロセルロース膜に各検体をブロット後、室温でよく乾燥させた。0.05%Tween20-PBS(PBST)にて膜を洗浄後、5%スキムミルク-PBSにて室温で1時間ブロッキング処理を行った。PBST洗浄後、Can Get Signal Solution 1(TOYOBO社)により2μg/mlに調整したHU127mAbを室温で1時間反応させた。PBST洗浄後、Can Get Signal Solution 2(TOYOBO社)により2500倍に希釈したHRP標識Goat Anti-mouse IgG(H+L)(Cell signaling technology社)を室温で1時間反応させた。PBST洗浄後、ECL prime(GE healthcare社)により化学発光させ、ChemiDoc XRS Plus(Bio-Rad社)により発光を検出した。ブロッテイング結果とPcaまたはBPHの関係を図6と表3に示す。図6と表3から明らかなように、PcaにおいてはC2GnT1の発現がある場合(C2GnTpositive)と発現がない場合(C2GnTnegative)が併存するが、BPHにおいてはほとんどの場合においてC2GnT1の発現がないので、C2GnT1の発現がある場合にはPcaであるかその蓋然性が高いと判断できることから、前立腺マッサージ尿中のC2GnT1の存在の有無に基づいてPcaとBPHを識別できることがわかった。
【実施例】
【0029】
【表3】
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【実施例】
【0030】
まとめ:
以上の結果から、本発明によって提供されるモノクローナル抗体であるHU127mAbを用いて分析試料中のC2GnT1を検出することで、その存在の有無や存在量に基づいてPcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を高感度に再現性よく行うことができることがわかった。現在のところ、こうした判定や識別には、前述の通り、PSAを指標にして行うことが困難なため、前立腺に針を刺入する生検が必要となる。しかしながら、針生検は侵襲的であり、出血や感染症などの重篤な有害事象を伴うことが懸念される。本発明によれば、Pcaの悪性度の判定やPcaとBPHの識別を少ない分析試料で高感度に再現性よく行うことができるので、針生検の施行を必要とする症例の絞り込みが可能になるため、これまで困難であった非侵襲的な診断の実施ができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、前立腺癌の悪性度の判定や前立腺癌と前立腺肥大の識別を行うために有用な、ヒトC2GnT1を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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