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明細書 :脳送達用キャリアおよびその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-101300 (P2014-101300A)
公開日 平成26年6月5日(2014.6.5)
発明の名称または考案の名称 脳送達用キャリアおよびその用途
国際特許分類 A61K  47/42        (2006.01)
C12N   9/06        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K   9/48        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
FI A61K 47/42
C12N 9/06 ZNAZ
C12N 15/00 A
A61K 9/127
A61K 9/48
A61K 45/00
A61K 47/48
A61P 25/00
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2012-253363 (P2012-253363)
出願日 平成24年11月19日(2012.11.19)
発明者または考案者 【氏名】降幡 知巳
【氏名】川松 真也
【氏名】上市 敦子
【氏名】千葉 寛
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000671、【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B050
4C076
4C084
Fターム 4B024AA01
4B024BA08
4B024CA02
4B024DA03
4B024EA04
4B024GA11
4B050CC05
4B050DD11
4B050LL01
4C076AA19
4C076AA61
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084MA24
4C084MA38
4C084NA13
4C084ZA021
4C084ZA022
要約 【課題】新規なペプチド性薬剤脳送達用キャリアを提供する。
【解決手段】本発明の一形態によれば、以下の(a)および(b)のいずれかに記載のポリペプチドからなる、脳送達用キャリアが提供される:
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)および(b)のいずれかに記載のポリペプチドからなる、脳送達用キャリア:
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するか、または、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し脳移行活性を有する、請求項1に記載の脳送達用キャリア。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、ミセル、リポソームまたはマイクロカプセルと結合した構造からなる、請求項1または2に記載の脳送達用キャリア。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の脳送達用キャリアに薬物が担持されてなる、脳疾患治療剤。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリペプチドを含有する、任意の分子に脳移行活性を付与するための薬剤。
【請求項6】
前記任意の分子が任意のポリペプチドである、請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
請求項1または2に記載のポリペプチドと任意のポリペプチドとの融合タンパク質である、脳移行活性を有する分子。
【請求項8】
任意の分子に請求項1または2に記載のポリペプチドを結合させる工程を含む、脳移行活性を有する分子の製造方法。
【請求項9】
以下の工程(a)~(c)を含む、脳移行活性を有するタンパク質分子の製造方法:
(a)発現可能な状態で任意のタンパク質分子をコードするDNAと、請求項1または2に記載のポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクターを作製する工程;
(b)前記発現ベクターを細胞へ導入する工程;および、
(c)前記発現ベクターからの発現産物を回収する工程。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脳送達用キャリアおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
脳には血液脳関門(Blood Brain Barrier; BBB)が存在することから、薬物などを経口摂取したり注射などにより投与したりしても、ほかの臓器に比べて有効濃度が得られにくいという特徴がある。一方、大量投与することにより有効な濃度を脳内で確保することが可能にはなるが、末梢血液中には大過剰の薬物を注入することになり、腎障害や肝障害などの副作用の問題が生じる。そこで、脳への選択的薬物輸送のシステムを開発することが必要となり、実際に多くの研究がなされてきている。このような研究開発の多くは、脂溶性が高い物質ほど血液脳関門を通過しやすいという脳の血管内皮細胞の性質を利用した、薬物そのものの化学修飾による脳移行性の増大をはかるものであった。このような方法論では薬物の脳移行性が最大数倍程度改善するものの、全体としてはほとんど誤差範囲に留まるにすぎないという結果である。これは、末梢臓器への物質の浸透が血管内皮細胞の細胞間隙を通過するのに対して、脳の血管内皮細胞は細胞間隙が密着帯という特殊な構造を形成し細胞間隙からの血液成分の浸透がほとんどみられないため、脳への物質輸送は脂溶性の化学修飾を行い直接細胞膜に溶け込ませて浸透させるということを行わなければならない。しかしながら、直接細胞膜を透過させる際の効率は細胞間隙の透過と比較して数千から数万倍低く、脳特異的な薬物輸送とはいえない。
【0003】
また、最近の技術的な進歩により、脳血管内皮細胞に発現している膜表面タンパク質を標的化する方法論が開発されてきた。特に脳内に薬物を取り込ませるにはトランスポーター(上述のように脳は細胞間隙からの物質の浸透がないため、血液中のアミノ酸や糖分は血液脳関門上に発現するトランスポーターに結合して脳内に特異的に運搬される。例えばトランスフェリン受容体は脳の活動に必要な金属結合型酵素に金属イオンを供給するトランスフェリンというタンパク質を脳に輸送するトランスポーター分子である。)と呼ばれるタンパク質の機能を利用することが有効であり、トランスフェリン受容体を特殊な抗体で標的化することにより脳への薬物の移行性を数十倍から100倍程度増大させることができるとの報告もある。また、トランスフェリンに結合するペプチドを用い、ペプチド-トランスフェリン複合体としてトランスフェリン受容体に結合させ、血液脳関門を通過させて脳へ移行させる技術も提案されている(非特許文献1)。
【0004】
また、いくつかのトランスポーター分子やP糖タンパク質のようなアンチポーター分子を利用するものなども報告されているが、いずれも有効性が確認できていない。
【0005】
さらに近年では、脳移行活性を有する機能性ペプチドを利用する方法が開発されつつある。例えば非特許文献2では、血液脳関門移行性を有するペプチドが報告されている。また、非特許文献3では、このペプチドを抗がん剤キャリアとして用いて脳腫瘍治療の臨床試験がおこなわれたことも報告されている。このように、脳移行活性を有するペプチドをキャリアとして用いることにより、そのままでは血液脳関門を通過しにくい/できない薬剤を効果的に脳実質に運ぶことが可能となる。また、この技術を応用することにより、従来の末梢薬の効果を中枢神経系疾患まで拡大すること、さらには新規の中枢神経系創薬を展開することが可能となる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Staquicini FI et al., J. Clin. Invest. 2011;121(1)161-73
【非特許文献2】Demeule et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 2008;324:1064-1072
【非特許文献3】Kurzrock R et al., Mol. Cancer. Ther. 2012;11:308-316
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、非特許文献2や非特許文献3に開示されているような技術を臨床応用するにあたっては、臨床試験を経たのちに医薬品としての製造承認を得る必要がある。また、上市されたのちにはより多くの患者に投与されて初めてその真の有用性および問題点が評価可能となる。したがって、現時点においては、非特許文献2や非特許文献3に開示された技術に固有の明確な問題点は明らかとなっていない。しかし一般的な問題として、脳内移行率および副作用発現に改善の余地はあると考えられる。
【0008】
また、全ての薬物治療における問題は、患者間で異なる薬物応答/副作用が生じることにある。このため薬物治療遂行には複数の薬剤選択肢が必要とされる。例えば抗がん剤治療では、通常、ファーストライン治療、セカンドライン治療、サードライン治療が設定されている。現在、ペプチド性薬剤脳送達用キャリアはまだ実用化に至っていないことから、今後のさらなる選択肢の拡充のために、新たな薬剤キャリア候補を開発することが強く求められている。
【0009】
そこで本発明は、新規なペプチド性薬剤脳送達用キャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った。その過程において、本発明者らは、新たな血液脳関門透過性ペプチドを同定する目的で、ルシフェラーゼをレポーターとしたペプチドスクリーニング系の構築をおこなった。その結果、驚くべきことに、レポーターとして用いたCypridina noctiluca luciferase(C-Luc、図1)それ自体が血液脳関門透過能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一形態によれば、以下の(a)および(b)のいずれかに記載のポリペプチドからなる、脳送達用キャリアが提供される:
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド。
【0012】
本形態に係る脳送達用キャリアにおいて、上記ポリペプチドは、配列番号:3に記載のアミノ酸配列(ヒト由来von Willebrand factor(vWF)Dドメイン)と同一のアミノ酸配列を有するか、または、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し脳移行活性を有するものであることが好ましい。また、上記ポリぺプチドは、ミセル、リポソームまたはマイクロカプセルと結合した構造からなるものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の形態によれば、以下のものが提供される:
・上記脳送達用キャリアに薬物が担持されてなる、脳疾患治療剤。
・上記ポリペプチドを含有する、任意の分子に脳移行活性を付与するための薬剤(当該任意の分子は任意のポリペプチドであることが好ましい);
・上記ポリペプチドと任意のポリペプチドとの融合タンパク質である、脳移行活性を有する分子;
・任意の分子に上記ポリペプチドを結合させる工程を含む、脳移行活性を有する分子の製造方法;および、
・上記ポリペプチドを利用した、脳移行活性を有するタンパク質分子の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新規なペプチド性薬剤脳送達用キャリアが提供される。また、脳移行活性を有するポリペプチドの各種の用途も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1のAは、実施例の「3.1.C-Luc溶液の調製」において用いた、C-Lucタンパク質をコードするDNAをインサートとして含むpCL-sv vectorの構造を説明するための説明図である。図1のBは、Cypridina noctiluca由来のluciferaseタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1)である。下線部は、当該アミノ酸配列に存在する、vWF Dドメインと高い相同性を示す領域である。
【図2】図2のAは、実施例の「3-2.C-Luc透過性実験」において、33℃法により作製したin vitroヒト血液脳関門モデルを用いてC-Lucのin vitroヒト血液脳関門透過性を解析した結果を示すグラフである。図2のBは、同様に実施例の「3-2.C-Luc透過性実験」において、37℃法により作製したin vitroヒト血液脳関門モデルを用いてC-Lucのin vitroヒト血液脳関門透過性を解析した結果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例の「3-3.Na+-フルオレセイン透過性実験」において、C-Lucのin vitroヒト血液脳関門透過性実験の際のin vitro血液脳関門モデルの密着結合能を、細胞間隙透過の指標となるNa+-フルオレセイン透過性(Papp)を用いて解析した結果を示すグラフである。
【図4】図4のAは、実施例の「4.LDLR mRNAおよびLRP-1 mRNA発現量の測定」において、33℃法および37℃法で培養したHBMEC/ciβから得られた全RNAに対応するcDNAを鋳型とし、low density lipoprotein receptor (LDLR) mRNA、LDLR-related protein-1 (LRP-1) mRNA、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)mRNAの発現量を定量的リアルタイムPCR法により解析した結果を示すグラフである。図4のBは、実施例の「6.ウエスタンブロッティング法」において、33℃法および37℃法で培養したHBMEC/ciβから得られた全細胞溶解液におけるLDLRおよびLRP-1のタンパク質の発現量を測定した結果を示す電気泳動写真である。
【図5】実施例の「7.データベース解析」では、C-LucがvWF Dドメイン(配列番号:3)と相同性の高い領域を2つ有しており、これら領域が8種のヒトタンパク質と相同性を示すことが明らかとなったが、図5は、上記2つの領域のうち、vWF Dドメインとの相同性がより高い後半領域について、上記8種の遺伝子のアミノ酸配列との相同性を解析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されることはない。

【0017】
上述したように、本発明者らは、新たな血液脳関門透過性ペプチドを同定する目的で、ルシフェラーゼをレポーターとしたペプチドスクリーニング系の構築をおこなった。その結果、驚くべきことに、レポーターとして用いたCypridina noctiluca由来のluciferase(C-Luc、図1)それ自体が血液脳関門透過能を有することを見出した。ここで、Cypridina noctiluca由来のluciferaseタンパク質のアミノ酸配列およびこれをコードするDNAの塩基配列は公知である。このタンパク質のアミノ酸配列(GenBank Accession No.: BAD08210.1)を配列番号:1(および図1)に示し、このDNAの塩基配列(CDS;終止コドン含む;GenBank Accession No.: AB159608.1)を配列番号:2に示す。

【0018】
一般に血液から脳組織内への物質の移行は、血液脳関門と呼ばれる仕組みによって制限されている。これによって脳は有害物質等から守られている。本発明において「脳移行活性」とは、ポリペプチド等の分子が体内へ投与(例えば、静脈投与等)された際に、当該分子が脳組織内へ移行する活性をいう。本形態に係る脳送達用キャリアを構成するポリペプチドは、通常、脳移行活性(脳移行性)を有するポリペプチドであると表現することができるが、例えば、血液脳関門の通過能を有するポリペプチドと表現することも可能である。また、本発明に係るポリペプチドは、他の物質(分子)と結合させることにより、他の分子を脳へ移行させる機能を有する。従って、本発明のポリペプチドは、「脳移行活性を付与するポリペプチド」、「脳移行ペプチドタグ」、「脳移行活性付与剤」と表現することもできる。

【0019】
本発明に係るポリペプチドとして、より具体的には、例えば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド(好ましくは、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド)を挙げることができるが、これらは本発明に係るポリペプチドの一例であり、本発明に係るポリペプチドはこれらに限定されない。

【0020】
すなわち、本発明の一形態によれば、以下の(a)および(b)のいずれかに記載のポリペプチドからなる、脳送達用キャリアが提供される:
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド。

【0021】
ここで、上記(a)のポリペプチドのうち、好ましくは、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。

【0022】
また、上記(b)のポリペプチドのうち、好ましくは、配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。また、配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列としては、例えば、(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列に1個または2個以上(例えば、1~50個程度、好ましくは1~30個程度、より好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列中の1個または2個以上(例えば、1~50個程度、好ましくは1~30個程度、より好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(iii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列に1個または2個以上(例えば、1~50個程度、好ましくは1~30個程度、より好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:1に記載のアミノ酸配列中の1個または2個以上(例えば、1~50個程度、好ましくは1~30個程度、より好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列、などが挙げられる。

【0023】
そして、上記(b)のポリペプチドにおいて上記のようにアミノ酸配列が付加、欠失、挿入または置換されている場合、その付加、欠失、挿入または置換の位置は、特に限定されない。ただし、上記(b)のポリペプチドにおいては、上述したヒト由来vWF Dドメインと相同性の高い領域(図1のBに示す配列番号:1における下線部)以外のアミノ酸残基において付加、欠失、挿入または置換されることが好ましい。

【0024】
上記(b)のポリペプチドとしては、配列番号:1に記載のアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性(ホモロジー;homology)を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(すなわち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306-1310(1990)を参照)。

【0025】
ここで、本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444-453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11-17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444-2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられうる。

【0026】
より好ましくは、上記(b)のポリペプチドは、配列番号:1に記載のアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性(アイデンティティ(identity))を有するアミノ酸配列である。

【0027】
そして、上記(b)のポリペプチドは、上述したように配列番号:1に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、かつ配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質(つまり、Cypridina noctiluca luciferase(C-Luc))と実質的に同質の活性を有するタンパク質である。

【0028】
ここで、実質的に同質の活性は「脳移行活性」である。ここで「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、上記(b)のポリペプチドの脳移行活性が配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等であることが好ましいが、これらの活性の程度(例、約0.01~約100倍、好ましくは約0.1~約10倍、より好ましくは0.5~2倍)や、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。なお、脳移行活性が実質的に同質であるか否かは、例えば、後述する実施例の欄に記載の「3-2.C-Luc透過性実験」をおこなうことなどにより、判定することが可能である。

【0029】
本明細書において、ポリペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを初めとする、本発明で用いられるポリペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO)、アミド(-CONH)またはエステル(-COOR)のいずれであってもよい。

【0030】
ここで、C末端がエステル(-COOR)である場合におけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基もしくはα-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。

【0031】
本発明で用いられるポリペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上述したC末端のエステルなどが用いられる。

【0032】
さらに、本発明で用いられるポリペプチドには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。

【0033】
本発明に係るポリペプチドが脳移行活性を示す対象となる生物は、血液脳関門を有する動物であれば特に制限されないが、通常、哺乳動物であり、好ましくは、マウス、ラット、スナネズミ、ネコ、ウシ、サル、またはヒトである。

【0034】
また、本発明に係るポリペプチドは、天然タンパク質由来ポリペプチド、組換えタンパク質由来ポリペプチド、または化学合成ポリペプチド等のいずれのポリペプチドであってもよい。当業者においては、任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成することが可能である。

【0035】
ところで、後述する実施例に記載のように、本発明者らの解析により、C-Lucタンパク質のアミノ酸配列は、ヒト由来von Willebrand factor(vWF)Dドメインと相同性の高い領域を2つ有していることが判明した(図1のBに示す配列番号:1における2か所の下線部;その後半領域を図5にも示す)。ヒト由来von Willebrand factor(vWF)は2813アミノ酸からなるタンパク質であり、そのアミノ酸配列も公知である(GenBank Accession No.: AAB59458.1)。このvWFタンパク質はDドメインと称される特徴的な配列を4つ有しており、そのうち最も上流(第33~178アミノ酸)に位置するもののアミノ酸配列を配列番号:3に示す。本形態に係る脳送達用キャリアにおいて、当該キャリアを構成するポリペプチドは、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を少なくとも1つ有するものであることが好ましく、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を2つ有するものであることがより好ましい。

【0036】
ここで、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性(homology)を有するアミノ酸配列などが挙げられる。より好ましくは、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性(identity)を有するアミノ酸配列である。そして、これらの配列番号:3に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと実質的に同質の活性を有する(すなわち、脳移行活性を有する)ものである。

【0037】
さらに、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。上記ポリヌクレオチドとは、通常、DNAまたはRNAの双方が含まれる。すなわち、本発明に係るポリヌクレオチドをコードするDNA、および該DNAの転写産物であるRNAは、本発明に包含される。

【0038】
本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドが挿入されたベクター、本発明のポリヌクレオチドまたは該ベクターを保持する宿主細胞、および当該宿主細胞を利用した本発明に係るポリペプチドの製造方法を提供する。

【0039】
本発明に係るベクターとしては、挿入したDNAを安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてはpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましい。本発明に係るポリペプチドを生産する目的においてベクターを用いる場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でポリペプチドを発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(Invitrogen社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No.AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol.8:466-472(1988))などが好ましい。ベクターへの本発明に係るポリヌクレオチドの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley & Sons.Section 11.4-11.11)。

【0040】
本発明に係るベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。ポリペプチドを発現させるための細胞としては、例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、真菌細胞(例:酵母、アスペルギルス)、昆虫細胞(例:ドロソフィラS2、スポドプテラSF9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ細胞)および植物細胞を例示することができる。宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクタミン法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。

【0041】
宿主細胞において発現したポリペプチドを小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを目的のポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルは目的のポリペプチドに対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。

【0042】
本発明に係るポリペプチドの回収は、本発明に係るポリペプチドが培地に分泌される場合は、培地を回収する。本発明に係るポリペプチドが細胞内に産生される場合は、その細胞をまず溶解し、その後にポリペプチドを回収する。

【0043】
組換え細胞培養物から本発明に係るポリペプチドを回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法を用いることができる。

【0044】
上述したように、本形態では、本発明に係る脳移行活性を有するポリペプチドからなる脳送達用キャリアが提供される。この脳送達用キャリアは、「担体」または「運搬体」と表現することも可能である。本発明に係る脳移行活性を有するポリペプチド自体も、上記キャリアの例として挙げることができる。すなわち、本発明に係るポリペプチドと、脳へ移行させるべき分子とを直接結合させることによって、当該分子を脳へ送達させることができる。また、本発明により提供される上記脳送達用キャリアの好ましい実施形態として、例えば、本発明に係るポリペプチドが、ミセル(高分子ミセル)、リポソームまたはマイクロカプセルと結合した構造からなるものを挙げることができる。

【0045】
さらに、本発明に係る脳送達用キャリアを利用することにより、所望の薬剤を脳へ移行させることが可能である。例えば、脳疾患に対して治療効果を有する化合物(医薬組成物)を、上記脳送達用キャリアに担持させることにより、当該化合物(医薬組成物)を効率的に脳へ送達させ、有効な治療効果を発揮させることが可能である。上記化合物(医薬組成物)を担持させた脳送達用キャリア自体は、脳疾患治療剤として期待される。従って本発明は、本発明の上記脳送達用キャリアに薬物が担持されてなる脳疾患治療剤を提供する。なお、キャリアに薬剤が「担持された」とは、薬物をキャリアと直接結合させた状態でもよいし、薬物(医薬組成物)をキャリアに内包させた状態でもよい。

【0046】
本発明に係るポリペプチドは脳移行活性を有することから、本発明に係るポリペプチドが結合した分子は脳移行活性を有することが期待される。すなわち、本発明に係るポリペプチドは、任意の分子に対して結合することにより、当該任意の分子に脳移行活性を付与する機能を有するものと考えられる。

【0047】
したがって、本発明の他の形態によれば、本発明に係るポリペプチドを含有する、任意の分子に脳移行活性を付与するための薬剤が提供される。本発明に係るポリペプチド(上記薬剤)によって脳移行活性を付与される分子は、特に制限されず、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、糖鎖、タンパク質、ペプチド等の単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物、微生物産生物、ファージ、抗原、抗体、ミセル(高分子ミセル等)、リポソーム、マイクロカプセル、ペプチド核酸(PNA)、医薬化合物等が挙げられる。特に、本発明に係るポリペプチド(上記薬剤)によって脳移行活性を付与される分子は、任意のポリペプチドであることが好ましく、この場合、融合タンパク質の形態として脳移行活性を有する分子が提供される。

【0048】
また、本発明に係るポリペプチドまたはこれによって脳移行活性を付与された分子は必要に応じて適宜標識されうる。標識としては、例えば、放射標識、蛍光標識、酵素標識等が挙げられる。

【0049】
さらに、本発明に係るポリペプチドによって脳移行活性を付与される分子の大きさは、特に制限されないが、上限は例えば、血清タンパク質程度の大きさのものが想定されうる。

【0050】
本発明の他の形態によれば、任意の分子に上記ポリペプチドを結合させる工程を含む、脳移行活性を有する分子の製造方法もまた、提供される。ここで、上記分子と本発明に係るポリペプチド(上記薬剤)とを結合させることは、当業者であれば、当該分子の種類を考慮して適宜、公知の方法を利用して実施することが可能である。一例として、市販のカップリング試薬(N-結合型、COOH-結合型、アミノ酸残基修飾型、S-S結合型等)を用いる方法、クロラミンTを用いる方法、イソチアネート基を導入する方法等により、上記分子と本発明に係るポリペプチドとを結合させることができる。なお、本発明に係るポリペプチドは、脳移行活性を付与したい分子の外側に配置されるように当該分子と結合させることが好ましい。すなわち、本発明に係るポリペプチドは、当該分子の表面上へ配置されるように当該分子と結合させることが望ましい。本発明に係るポリペプチドを外側へ配置させる方法として、例えば、ポリペプチド鎖を導入するタンパク質分子の外側に露出するドメインに本発明に係るポリペプチドを配置させるように組換え体を作成する方法、PEGのような架橋剤をタンパク質、脂質、人工担体などに結合させ、PEG鎖の末端にポリペプチド鎖を結合させる方法、ポリペプチド鎖を担体表面に化学結合させる方法等が挙げられる。

【0051】
また、上記分子がタンパク質である場合には、当該タンパク質と本発明に係るポリペプチドとの融合タンパク質をコードするDNAを用いて、本発明に係るポリペプチドが結合した分子を作製することも可能である。

【0052】
より具体的には、以下の工程(a)~(c)を含む方法によって、脳移行活性を有するタンパク質分子を作製することができる。
(a)発現可能な状態で任意のタンパク質分子をコードするDNAと、本発明に係るポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクターを作製する工程;
(b)前記発現ベクターを細胞へ導入する工程;および、
(c)前記ベクターからの発現産物を回収する工程。

【0053】
本発明に係る脳移行活性を有するポリペプチドを用いた脳神経疾患の治療に対する治療戦略として、例えば以下の場合に、本発明を適用することが可能である:
1)欠損または変異などによって量や活性が低下した酵素や生理活性タンパク質を補う補充療法:遺伝子欠損や遺伝子変異により特定の酵素またはタンパク質が脳内で欠乏することによって生じる様々な脳疾患に対し、欠乏するタンパク質や酵素の遺伝子を導入した細胞を注入することにより行われる。また、特定の神経細胞が変性脱落するパーキンソン病やアルツハイマー病に対し、神経の変性脱落により欠乏する神経伝達物質の合成を促進するような遺伝子、たとえばパーキンソン病におけるチロシン水酸化酵素やビオプテリン合成酵素などのドーパミン生合成系の酵素遺伝子が考えられる;
2)変性などで脱落する神経細胞を保護し機能を強化する保護療法:変性疾患や脳虚血など色々な原因で生じる神経細胞死を抑制し、神経突起の再生を促す神経栄養因子(NGF、BDNF、GDNF、NT3など。)遺伝子を発現する細胞を注入することにより行われる。また多発性硬化症のように免疫細胞が関与する疾患では免疫抑制作用があるTGFβやIL-10遺伝子を発現する細胞を導入することにより行われる;
3)腫瘍や血栓などを除去するような方法:抗腫瘍作用を持つ因子を発現させたり、抗がん剤を導入した細胞を脳に移入したりすることにより行なわれる。血栓除去については、線溶系の酵素を発現させることが考えられる;
4)有効な薬物を脳にだけ導入するような方法:神経系に作用する薬物は末梢毒性が高かったり、末梢神経系に作用を持つもの、血液脳関門を通過しにくいものなど色々あり、脳への特異的なドラッグデリバリーシステムが必要とされていた。本発明に係るポリペプチドを用いることにより、末梢臓器にあまり影響を与えず脳に特異的に薬物投与ができる可能性がある;
5)脳疾患予防システムとしての利用法:もともとミクログリアはその細胞の性質として変性や炎症部位に集まり死細胞を取り除き損傷修復にも関わったり、抗腫瘍作用や抗ウィルス作用を持つ、いわば脳内防御システムともいうべき細胞であることから、その性質を遺伝子操作などで強化することによって、単一疾患の治療だけでなく、脳内防御システムそのものの強化を行うことによってあらゆる疾患に対する予防措置にも応用しうると考えられる。

【0054】
本発明の上記薬剤や上記脳疾患治療剤は、本発明に係るポリペプチド、当該ポリペプチドを含む脳移行活性を有する分子、または本発明に係るポリペプチドからなる脳送達用キャリアに薬物が担持された複合体のみを成分とするものであってもよいし、また、公知の製剤学的製造法によって、製剤化することもできる。例えば、薬剤として一般的に用いられる適当な担体、または媒体、例えば滅菌水や生理食塩水、植物油(例、ゴマ油、オリーブ油等)、着色剤、乳化剤(例、コレステロール)、懸濁剤(例、アラビアゴム)、界面活性剤(例、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系界面活性剤)、溶解補助剤(例、リン酸ナトリウム)、安定剤(例、糖、糖アルコール、アルブミン)、または保存剤(例、パラベン)、等と適宜組み合わせて、生体に効果的に投与するのに適した注射剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経口剤等の医薬用製剤、好ましくは注射剤に調製することができる。例えば、注射剤の製剤としては、凍結乾燥品や、注射用水剤等で提供できる。

【0055】
また体内への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、または経口的に当業者に公知の方法により行うことができるが、好ましくは動脈内投与である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および参考例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
【実施例】
【0057】
≪実験手法≫
<1.ヒト脳毛細血管内皮細胞の条件的不死化クローンβ(HBMEC/ciβ)の作製>
文献(Kamiichi A et al., Brain Res 2012:1488;113-122)に記載された方法に従って、temperature-sensitive simian virus 40 large T antigen(tsSV40T)遺伝子およびhuman telomerase catalytic subunit(hTERT)遺伝子を、レンチウイルスベクターを用いて正常ヒト脳毛細血管内皮細胞(ロット番号RI-376、DSファーマバイオメディカル株式会社、大阪)に導入することにより、HBMEC/ciβを作製した。HBMEC/ciβの培養培地には、CSC-Complete Recombinant Medium(Cell systems corporation, Kirkland, WA, USA)に2% (v/v) Defined CultureBoost-R(Cell systems corporation)および50 units/mL penicillin-50 μg/mL streptomycin(和光純薬工業株式会社、大阪)を加えたもの(CSC Mediumとする)を用い、ここにBlasticidin S HClを4 μg/mLの濃度で添加して使用した。細胞の培養は、5% CO2/95%空気を気相とした33℃または37℃のCO2インキュベーター中でおこなった。培養ディッシュおよびインサートは、collagen type-I(SIGMA, St. Louis, MO, USA)を用いてコートした。
【実施例】
【0058】
<2.細胞単層培養法>
HBMEC/ciβを培養ディッシュおよび24-wellプレート用インサート(ポリエチレンテレフタレート製、0.4 μm高密度ポア、細胞培養有効面積0.33 cm2)(BD FalconTM, Franklin Lakes, NJ, USA)にそれぞれ細胞密度1.0×105 cells/mLおよび4.0×105 cells/mLで播種した。インサートを用いた培養法は、in vitro血液脳関門モデル作製に汎用される方法であり、これに従い培養したHBMEC/ciβは血液脳関門機能を有することがこれまでに明らかとなっている(Kamiichi A et al., Brain Res 2012:1488;113-122)。これら細胞について、2種の培養法(33℃のみで12日間培養する33℃法、および33℃で9日間培養した後37℃に切り替えて3日間培養する37℃法)により培養をおこなった。培地交換はまず播種後3日目におこない、以後は1日おきにおこなった。培養最終日に細胞の回収またはアッセイをおこなった。
【実施例】
【0059】
<3.Cypridina noctiluca Luciferase (C-Luc)の透過性試験>
3-1.C-Luc溶液の調製
293FT細胞をInvitrogen(Carlsbad, CA, USA)より入手し、D-MEMを用いて5% CO2/95%空気を気相とした37℃のCO2インキュベーターにて培養した。293FT細胞溶液(8.0 ×105 cells)を調製して250 ngのpCL-sv vector(アトー株式会社、東京)と混合し、Multifectam(Promega, Madison, WI, USA)を用いてリバーストランスフェクションをおこなった。図1のAは、ベクター購入元のアトー製品情報(http://ns.atto.co.jp/pdf/Cluc.pdf)を基に作成したpCL-sv vectorの構造を説明するための説明図である。トランスフェクションの24時間後に培地をCSC Defined Medium(Cell systems corporation)に2% (v/v) Defined CultureBoost-Rおよび50 units/mL penicillin-50 μg/ml streptomycinを加えた培地(CSC Serum Free Mediumとする)へ交換し、さらに48時間培養をおこなった。この培地を回収し、C-Luc活性をC-Luc reporter kit(アトー)およびGloMax(登録商標)20/20n Luminometer(Promega)により解析した。なお、結果解析ではC-Luc活性による蛍光強度10,000 RLUを1ユニットと定義した。
【実施例】
【0060】
3-2.C-Luc透過性実験
HBMEC/ciβを24-wellプレート用インサートに播種し、上記「2.細胞単層培養法」に示す方法に従い培養した。アッセイ前に培地をCSC Serum Free Mediumに交換し、37℃で30分以上のプレインキュベーションをおこなった。インサートのapical側にC-Luc溶液を50,000 ユニット添加し、37℃で上部(apical側)から下部(basolateral側)への輸送実験をおこなった。阻害実験では、アプロチニン(200 μg/mL, Sigma)、またはヒトトランスフェリン(6 μg/mL, 和光純薬工業)をC-Luc溶液添加の30分前にapical側に添加した。C-Luc添加時を0分(T=0)とし、T=0, 15, 30, 45, 60, 75, 90[分]において、インサートを予め培地を入れた隣のウェルに順次移した。それぞれのbasolateral側の培地を用いて、C-Luc活性をC-Luc reporter kit(アトー)およびGloMax(登録商標)20/20n Luminometerにより解析した。T=0から各時間までのbasolateral側C-Luc活性の和を、各時間におけるC-Luc透過量とし、添加ユニット数で補正した。これにより得られた値を用いてapical側へのC-Luc添加量に対するC-Luc透過量の割合(%)を算出し、経時的にプロットした。統計計算は、Statcel第3版(OMS、東京)を用い、Studentのt検定によりおこなった。
【実施例】
【0061】
3-3.Na+-フルオレセイン透過性実験
HBMEC/ciβを、上述のとおりインサートに播種して培養し、プレインキュベーションをおこなった。インサートのapical側に最終濃度500 ng/mLとなるようにNa+-フルオレセイン(SIGMA)水溶液を添加し、37℃でアッセイを開始した。Na+-フルオレセイン添加時を0分(T=0)とした。T=40[分]においてインサートのbasolateral側から20 μL培地を回収し、回収した培地中のフルオレセインの蛍光をARVO-SX(PerkinElmer, Waltham, MA, USA)を用いて、励起波長485 nm、蛍光波長535 nmで測定した。そして、Na+-フルオレセインのapical側からbasolateral側への透過性を示すPapp値を、以下の式を用いて求めた。
【実施例】
【0062】
【数1】
JP2014101300A_000003t.gif
【実施例】
【0063】
<4.LDLR mRNAおよびLRP-1 mRNA発現量の測定>
4-1.Total RNA抽出およびcDNA合成
上記33℃法および37℃法で培養したHBMEC/ciβから、FastPureTM RNA Isolation Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて全RNAを抽出した。ゲノムDNAはDNase I(Roche, Basal, Switzerland)にて除去した。cDNAの合成は、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kits(Applied Biosystems, Foster City, USA) を用いておこなった。
【実施例】
【0064】
4-2.定量的リアルタイムPCR法
Δ 上記4-1で合成したcDNAを鋳型とし、下記の表1に示すプライマーを用いてプローブ法またはSyber green法を用いて、LDLR mRNA、LRP-1 mRNA、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)mRNAの発現量を解析した。プローブ法では、下記の表1に示すとおりアッセイ特異的なUniversal Probe(Roche)およびEagle Taq Master Mix with ROX(Roche)を用い、Syber green法ではKAPATM SYBR(登録商標)FAST qPCR Kit(KAPA BIOSYSTEMS, Boston, MA, USA)を用いた。LDLR mRNAおよびLRP-1 mRNAの発現量は、GAPDH mRNAの発現量を用いてΔΔCt法により解析した。
【実施例】
【0065】
【表1】
JP2014101300A_000004t.gif
【実施例】
【0066】
<5.細胞画分の調製>
HBMEC/ciβを培養ディッシュに細胞密度3.2×105cells/mLで播種し、33℃法および37℃法で培養をおこなった。Phosphate-buffered saline(PBS)(-)で細胞層をリンスし、0.5% Protease Inhibitor Cocktail(Calbiochem, Nottingham, UK)と最終濃度1 mM phenylmethanesulfonylfluorideを加えたlysis buffer(1% Nonidet P-40, 20 mM Tris, 150 mM NaCl, 5 mM EDTA, pH7.5)で溶解し、全細胞溶解液とした。全細胞溶解液のタンパク質濃度はDC protein assay kit II(Bio-Rad laboratories, Hercules, CA, USA)を用いて測定した。
【実施例】
【0067】
<6.ウエスタンブロッティング法>
上記33℃法および37℃法で培養したHBMEC/ciβにおけるLDLRおよびLRP-1のタンパク質発現を、ウエスタンブロッティング法により解析した。この際、β-actinの発現をコントロールとして用いた。全細胞溶解液30 μgを、8.5% SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離した後、Immobilon-P Transfer Membrane(Millipore, Billerica, MA, USA)に転写した。転写後の膜を、5%スキムミルクを加えた0.05% Tween20含有Tris-Buffered Saline(SM/TBS/t)を用いてブロッキングした。一次抗体としては、LDL Receptor (C-term) Rabbit Monoclonal Antibody(EPITOMICS, Burlingame, CA, USA)または LRP-1 Rabbit Monoclonal Antibody(EPITOMICS)をCan Get Signal Solution 1(東洋紡株式会社、大阪)でそれぞれ5,000倍、40,000倍に希釈したもの、およびanti-β-actin produced in rabbit(SIGMA)を1% BSA含有TBS/t(BSA/TBS/t)で5,000倍に希釈したものを用いた。二次抗体としては、anti-Rabbit IgG (whole molecule)-peroxidase antibody produced in goat(SIGMA)をCan Get Signal Solution 2(東洋紡)またはBSA/TBS/tで100,000倍希釈したものを用いた。蛍光検出はECLTM Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare Life Sciences)またはImmunoStar(登録商標)LD(和光純薬工業)およびLAS-1000(富士フイルム)によりおこなった。
【実施例】
【0068】
<7.データベース解析>
C-Lucとヒトタンパク質とのアミノ酸配列相同性の解析を、National Center for Biotechnology InformationのBLAST解析(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)によりおこなった。また、C-Lucの機能ドメインをProsite(http://prosite.expasy.org/)により解析した。
【実施例】
【0069】
≪結果および考察≫
<1.C-Lucのin vitroヒト血液脳関門透過性>
上記「3-2.C-Luc透過性実験」では、HBMEC/ciβを用いて33℃法によりin vitroヒト血液脳関門モデルを作製し、C-Lucを血管側インサートウェルに添加して、その血液脳関門透過性を解析した。その結果を図2のAに示す。ここで、図2のA(および後述する図2のB)には、添加後90分における透過量を数値で示しており、アプロチニンまたはトランスフェリンの存在下・非存在下における差の検定結果もあわせて示す。データは3回の独立した実験(n=3)より得られた平均値および標準偏差である。図2のAに示すように、C-Lucは経時的に脳側ウェルに移行し、添加後90分においてその透過量は添加量の1.43±0.06(%)であった。さらに、C-Lucの透過はアプロチニンの存在下において有意に阻害され、透過量は1.16±0.05(%)(P=0.004)にまで低下した。一方、同時点におけるトランスフェリン存在下でのC-Luc透過量は、1.46±0.02(%)(P=0.59)であり、C-Lucの透過はトランスフェリンにより阻害されなかった。
【実施例】
【0070】
HBMEC/ciβは、37℃で培養することによりその分化形質が向上することが知られている。そこで、上記「3-2.C-Luc透過性実験」では、37℃法によりin vitroヒト血液脳関門モデルを作製して同様の実験をおこなった。その結果を図2のBに示す。図2のBに示すように、添加後90分におけるC-Lucの透過量は3.2倍増大し、添加量の4.53±0.78(%)(P=0.003)となった。また、33℃法(図2のA)と同様、この透過量はアプロチニン存在下で有意に低下して2.88±0.70(%)(P=0.02)となったが、トランスフェリン存在下ではほとんど変化しなかった(4.12±0.96(%)、P=0.61)。
【実施例】
【0071】
続いて、これら透過性実験時におけるin vitro血液脳関門モデルの密着結合能を、細胞間隙透過の指標となるNa+-フルオレセイン透過性(Papp)を用いて解析した(上記「3-3.Na+-フルオレセイン透過性実験」)。その結果を図3に示す。ここで、図3に示すデータは3回の独立した実験(n=3)より得られた平均値および標準偏差であり、平均値を各グラフの上に示す。また、図3における+および-はそれぞれアプロチニンまたはトランスフェリンの存在下、非存在下を示す。図3に示すように、33℃法および37℃法いずれのin vitro血液脳関門モデルにおいてもNa+-フルオレセインPappは既報のin vitro血液脳関門モデルと同等の値であり、アプロチニンまたはトランスフェリン添加によるNa+-フルオレセイン透過への影響は認められなかった。したがって、C-Luc透過に対するアプロチニンの抑制効果は、密着結合能の増強を介したものではないと考えられる。また、37℃法のNa+-フルオレセインPappは、33℃法のPappと比較して約1.3倍上昇していたが、これは37oC法におけるC-Lucの透過性増大量(3.2倍)よりも小さい。したがって、37℃法におけるC-Lucの透過量上昇には密着結合能の減弱が関与する可能性も否定できないものの、その寄与は小さいと考えられる。
【実施例】
【0072】
以上のことから、C-Lucはトランスフェリン感受性ではなく、主にアプロチニン感受性の経路により血液脳関門を透過すると考えられる。これまでにアプロチニンおよびトランスフェリンはそれぞれ血液脳関門に発現する細胞膜受容体LRP-1およびトランスフェリン受容体によりトランスサイトーシスされて血管側から脳側へ移行することが報告されている。したがって、C-Lucの血液脳関門透過にはトランスフェリン受容体ではなく、LRP-1を介したトランスサイトーシスが関与すると考えられた。
【実施例】
【0073】
<2.HBMEC/ciβにおけるLRP-1の発現とその温度依存性発現上昇>
培養温度を33℃から37℃へ上昇させることによりC-Lucの血液脳関門透過量が増大した(図2のAおよびB)ことから、33℃法および37℃法培養時のHBMEC/ciβにおけるLRP-1の発現量を解析した(上記「4.LDLR mRNAおよびLRP-1 mRNA発現量の測定」並びに「6.ウエスタンブロッティング法」)。その結果を図4のA(定量的リアルタイムPCR法によるmRNA発現量の測定結果)およびB(ウエスタンブロッティング法によるタンパク質発現量の測定結果)にそれぞれ示す。ここで、図4のAおよびBに示すデータは、それぞれ3回および2回の細胞培養実験(n=3、n=2)より得られたデータの平均値および標準偏差を用いたものである。図4のAおよびBに示すように、LRP-1 mRNAおよびタンパク質の発現は33℃培養下のHBMEC/ciβにおいても認められ、さらにそれらの発現レベルは37℃培養下において著しく上昇することが明らかとなった。一方、トランスサイトーシス能を有する別の細胞膜受容体LDLRでは、その発現は認められたものの、発現レベルに温度依存性は認められなかった。
【実施例】
【0074】
したがって、HBMEC/ciβの培養温度上昇に伴うLRP-1発現レベル上昇が、37℃法におけるC-Lucの血液脳関門透過量増大に関与すると考えられた。
【実施例】
【0075】
<3.C-Lucアミノ酸配列とヒト遺伝子アミノ酸配列の相同性解析>
C-LucはCypridina noctiluca由来であり、元来ヒトには存在しない。また、C-Lucはアプロチニン(ウシ遺伝子)とも相同性を持たない。したがって、C-Lucはなんらかのヒトタンパク質との相同領域を介してLRP-1に認識されると考えられる。そこで、上記「7.データベース解析」に示すようにデータベース解析をおこない、ヒトタンパク質との相同領域の探索をおこなった。その結果、C-Lucは以下の8種のヒトタンパク質と相同性を有する領域を持つことが明らかとなった:
・IgGFc-binding protein precursor [NP_003881.2]
・mucin glycoprotein [AAQ82434.1]
・zonadhesin [AAC78790.1]
・kielin/chordin-like protein isoform 1 precursor [NP_001129386.1]
・alpha-tectorin [AAC26019.1]
・von Willebrand factor (vWF) [AAH22258.1]
・BMP-binding endothelial regulator protein precursor [NP_597725.1]
・otogelin-like protein precursor [NP_775862.3])
これら8種の遺伝子のうち、vWFはLRP-1により認識されうることが従来報告されているものの、その認識配列は明らかとなっていない。また、vWF以外の上記遺伝子とLRP-1との相互作用は報告されていない。したがって、C-Lucが内在するLRP-1認識配列は既報のLRP-1リガンドとは異なるアミノ酸配列を有する可能性が考えられる。
【実施例】
【0076】
さらにProsite(http://prosite.expasy.org/)によるデータ解析を進めたところ、C-LucはvWF Dドメイン(配列番号:3)と相同性の高い領域を2つ有しており、これら領域が上記タンパク質と相同性を示すことが明らかとなった。図1のBに示すC-Lucのアミノ酸配列(配列番号:1)におけるこの2つの領域を下線で示す。また、上記2つの領域のうち、vWF Dドメインとの相同性がより高い後半領域について、上記8種の遺伝子のアミノ酸配列との相同性を解析した結果を図5に示す。なお、図5において「-(ハイフン)」はギャップを示す。
【実施例】
【0077】
以上に示す結果から、C-Lucはin vitroにおいてヒト血液脳関門透過性を示し、その血液脳関門透過にはLRP-1を介したトランスサイトーシスが関与すると考えられた。LRP-1によるC-Lucの認識機構は明らかになっていないものの、C-Lucは新規アミノ酸配列を介してLRP-1に認識される可能性が考えられた。そして、当該新規アミノ酸配列は、vWF Dドメインとの間で高い相同性を示す領域である可能性も考えられた。
【配列表フリ-テキスト】
【0078】
〔配列番号:1〕
Cypridina noctiluca由来Luciferaseタンパク質のアミノ酸配列(NCBI Accession No.: BAD08210.1)である。
【0079】
〔配列番号:2〕
Cypridina noctiluca由来Luciferaseタンパク質をコードするDNAの塩基配列(CDS;終止コドン含む;NCBI Accession No.: AB159608.1)を示す。
【0080】
〔配列番号:3〕
ヒト由来von Willebrand factor(vWF)タンパク質(NCBI Accession No.: AAB59458.1)の最も上流(第33~178アミノ酸)に位置するDドメインのアミノ酸配列である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4