TOP > 国内特許検索 > 新規バチルス属窒素固定細菌、植物生育促進剤、及び植物の栽培方法 > 明細書

明細書 :新規バチルス属窒素固定細菌、植物生育促進剤、及び植物の栽培方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6024963号 (P6024963)
公開番号 特開2014-096996 (P2014-096996A)
登録日 平成28年10月21日(2016.10.21)
発行日 平成28年11月16日(2016.11.16)
公開日 平成26年5月29日(2014.5.29)
発明の名称または考案の名称 新規バチルス属窒素固定細菌、植物生育促進剤、及び植物の栽培方法
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01P  21/00        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
FI C12N 1/20 A
A01N 63/00 F
A01P 21/00
A01G 7/00 605Z
請求項の数または発明の数 7
微生物の受託番号 NPMD NITE BP-1356
全頁数 17
出願番号 特願2012-249348 (P2012-249348)
出願日 平成24年11月13日(2012.11.13)
審査請求日 平成27年5月27日(2015.5.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】横山 正
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】飯室 里美
参考文献・文献 中国特許出願公開第102296036(CN,A)
Agron. Sustain. Dev.,2006年,Vol. 26,pp. 143-150
Journal of Applied Microbiology,2004年,Vol. 97,pp. 114-123
Eur J Soil Biol,2009年,Vol. 45,pp. 88-93
FEMS Microbiol Ecol,2011年,Vol. 76,pp. 381-392
Appl Microbiol Biotechnol,2007年,Vol. 76,pp. 1145-1152
J Microbiol Biotechnol,2009年,Vol. 19, No. 10,pp. 1213-1222
広辞苑,1998年,第五版,pp. 2511
調査した分野 C12N 1/00- 7/08
A01G 1/00- 1/02、 1/06- 1/12、
5/00- 7/06、16/00-17/02、
17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)



特許請求の範囲 【請求項1】
窒素固定能を有し、受託番号NITE BP-1356で特定されるバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)TUAT1株であるバチルス属窒素固定細菌。
【請求項2】
請求項記載のバチルス属窒素固定細菌を含む、発根促進効果を有する植物生育促進剤。
【請求項3】
上記バチルス属窒素固定細菌は栄養細胞及び/又は胞子であることを特徴とする請求項記載の植物生育促進剤。
【請求項4】
請求項記載のバチルス属窒素固定細菌又は請求項2若しくは3記載の植物生育促進剤を対象の植物に作用させて発根を促進させる、植物の製造方法。
【請求項5】
上記バチルス属窒素固定細菌又は上記植物生育促進剤を、上記植物の根圏に供給することを特徴とする請求項記載の植物の製造方法。
【請求項6】
上記植物はイネ科植物であることを特徴とする請求項4又は5記載の植物の製造方法。
【請求項7】
上記イネ科植物はイネであり、水稲栽培であることを特徴とする請求項記載の植物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バチルス属に属し、窒素固定能を有する新規バチルス属窒素固定細菌に関し、当該バチルス属窒素固定細菌を含む植物生育促進剤及び当該バチルス属窒素固定細菌を利用した水稲栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素固定細菌は、水稲根圏やその他の作物根圏に緩く共生し、植物体に窒素栄養を供給することで生育促進効果を奏する細菌として知られている。窒素固定細菌に関する研究の歴史は長く、1971年にYoshidaら(非特許文献1)により水稲根圏における窒素固定活性が発見・報告された。また、Watanabe and Furusaka(非特許文献2)は、水稲根圏には多数の窒素固定細菌が生息していることを明らかにした。さらに、BaldaniとDobereiner(非特許文献3)やLadhaら(非特許文献4)は、水稲の根からAzospirillum lipoferumとA. brasilenseを単離した。一方、GreenlandとWatanabeは、日本やフィリピンの長期肥料連用水田の窒素収支を測定し、水田における生物窒素固定を50~75KgN/haと推定した。
【0003】
以上のような長年の研究から、Azospirillum属細菌を水稲に接種することで当該水稲の根圏における窒素固定活性を上昇させ、栄養窒素を供給するための化学窒素肥料の使用量を低減しながら同程度の収量を達成技術が試験されている。ところが、窒素固定能を有するAzospirillum属細菌は、微生物担体に担持された状態での生残率が極めて低く、水稲栽培や他の植物栽培における生育促進剤として利用しても所期の効果を達成するのが困難であった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Yoshidaら(1971):Soil Sci. Soc. Am. Proc. 35:156-157.1971
【非特許文献2】Watanabe and Furusaka (1980):(‘Microbial ecology of flooded rice soils‘, in Alexander, (ed.), Advances in Microbial Ecology, Vol. 4, Plenum Publishing Corporation
【非特許文献3】BaldaniとDobereiner (1980):Biol Biochem 12: 433-439, 1980)
【非特許文献4】Ladhaら(1982):Can. J. Microbiol. 28:478-485, 1982
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述したような実情に鑑み、水稲を初めとする各種植物に対して窒素栄養を供給することができ、且つ、植物生育促進剤として使用して高い生残率を示す新規なバチルス属窒素固定細菌を提供し、当該バチルス属窒素固定細菌を利用した植物生育促進剤及び植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、東京都府中市東京農工大学畑圃場の土壌を分離源として目的の特性を有する微生物を単離、同定すべく鋭意検討した結果、バチルス・プミルスに分類されて窒素固定能を有する新規微生物株を単離、同定することができた。本発明は、これら新規微生物株が有する窒素固定能に基づいてなされたものである。
【0007】
本発明は以下を包含する。
(1)窒素固定能を有し、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)に分類されるバチルス属窒素固定細菌。
(2)受託番号NITE BP-1356で特定されるバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)TUAT1株であることを特徴とする(1)記載のバチルス属窒素固定細菌。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)記載のバチルス属窒素固定細菌を含む、植物生育促進剤。
(4)上記バチルス属窒素固定細菌は栄養細胞及び/又は胞子であることを特徴とする(3)記載の植物生育促進剤。
【0009】
(5)上記(1)又は(2)記載のバチルス属窒素固定細菌若しくは上記(3)又は(4)記載の植物生育促進剤を対象の植物に作用させる、植物の製造方法。
(6)上記バチルス属窒素固定細菌又は上記植物生育促進剤を、上記植物の根圏に供給することを特徴とする(5)記載の植物の製造方法。
【0010】
(7)上記植物はイネ科植物であることを特徴とする(5)又は(6)記載の植物の製造方法。
(8)上記イネ科植物はイネであり、水稲栽培であることを特徴とする(7)記載の植物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る新規なバチルス属窒素固定細菌は、優れた窒素固定能を有するため、植物に対して優れた生育促進作用を有している。したがって、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌を利用することによって、優れた生育促進作用を有する植物生育促進剤を提供することができる。また、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌を水稲に代表される植物の栽培に利用することによって、当該植物の生育を促進できることとなり、植物製造に係るコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポット試験における各処理区の乾物蓄積量を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
<新規バチルス属窒素固定細菌>
本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)に分類され、窒素固定能を有する微生物である。ここで、窒素固定能とは、気体の窒素分子(N2)を窒素化合物(アンモニア、硝酸塩、二酸化窒素等)に変換する能力を意味する。本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は、窒素固定能を有するために、根圏に生息することによって植物に窒素を供給することができる。このとき、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は、必ずしも植物との共生を図ることはない、いわゆる単生窒素固定菌類であり、多種多様な植物に対して窒素を供給することができる。

【0014】
なお、窒素固定能については、例えば、窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)を用いて評価することができる。δ15N値は元素分析計を接続した質量分析計を用いて測定することができる。この方法は、土壌における15Nの自然存在比が高いために土壌由来窒素の原子量は重くなるのに対して、空気中における15Nの自然存在比が低いために空気由来窒素の原子量は軽くなるという原理に基づいている。すなわち、化学肥料由来の窒素や微生物による窒素固定で供給された窒素は、土壌中に存在する土壌由来の窒素原子より原子量が軽くなる。そのため、化学窒素肥料や微生物による窒素固定で供給された窒素を蓄積した植物体は、原子量の軽い窒素を多く含むこととなる。一方、土壌由来の窒素を吸収した植物体は、原子量の高い窒素を多く含むこととなる。したがって、供試微生物を植物体の根圏に生息させた後、当該植物体のδ15N値を測定することによって、微生物における窒素固定能を評価することができる。

【0015】
本発明者らは、このような手法によって東京都府中市東京農工大学畑圃場の土壌からバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)に分類され、窒素固定能を有する新規微生物株を単離している。本発明者は、この新規微生物株をバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)TUAT1と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE特許微生物寄託センター:〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2012年5月10日付けで受託番号NITE BP-1356として国際寄託している。

【0016】
本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は、当該受託番号NITE BP-1356で特定されるバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)TUAT1株及び、当該TUAT1株と同一の株に分類され、且つ窒素固定能を有する微生物を含むこととなる。

【0017】
また、受託番号NITE BP-1356で特定されるバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)TUAT1株は、配列番号1に示す塩基配列を含む16SrDNAを有している。したがって、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は、配列番号1に示す塩基配列に対して95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含む16SrDNAを有するバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)であって、窒素固定能を有する微生物を含むこととなる。

【0018】
<植物生育促進剤>
本発明に係るバチルス属窒素固定細菌における窒素固定能を利用することによって、植物に栄養窒素を供給することができる。すなわち、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は植物生育促進剤として使用することができる。なお、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌は、栄養細胞及び胞子のいずれの状態で使用しても良い。

【0019】
本発明に係るバチルス属窒素固定細菌の栄養細胞を植物生育促進剤として利用する場合、例えば、以下に例示列挙するような培地を使用して適切な条件下で培養する。すなわち、使用可能な培地としては、NFb培地(リンゴ酸 5.0g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.2g、NaCl 0.1g、CaCl2 0.02g、Na2MoO4・2H2O 0.002g、MnSO4・H2O 0.01g、KOH 4.5g、Fe EDTA(1.64% W/V%) 4.0ml、Biotin 0.1mlを蒸留水1lに溶解し、NaOHまたはKOHでpHを6.8に調整)、トリプチケースソイ培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)等を挙げることができる。また、培養条件としては、培養温度が20~30度、好ましくは25~28度とすることができ、培地pHは6.8が望ましい。

【0020】
本発明に係るバチルス属窒素固定細菌の胞子を植物生育促進剤として利用する場合、使用可能な胞子形成用培地としては、上記の培地で良く、寒天プレート及び液体培地を25℃に1週間程度静置することで得られる。液体培地で静置する場合は、胞子が団粒化する傾向があるので、適切な界面活性剤の一定量を加えることでそれが防ぐことが可能である。胞子状態での接種は、胞子の生残性が数ヶ月維持され、接種効果の安定性が増加する。

【0021】
以上のように培養された本発明に係るバチルス属窒素固定細菌(栄養細胞及び/又は胞子)を植物生育促進剤とする場合、本発明に係るバチルス属窒素固定細菌(栄養細胞及び/又は胞子)を単独で使用しても良いが、当該バチルス属窒素固定細菌と他の任意成分とを配合して特定の製剤としてもよい。製剤の形態としては、例えば、液剤、粉剤、粒剤、乳剤、油剤、懸濁剤、水和剤、水溶剤、粒剤、ペースト剤、カプセル剤、煙霧剤(エアゾール剤)等を挙げることができる。

【0022】
他の任意配合としては、例えば、液体担体や固体担体等のバチルス属窒素固定細菌を担持するための担体、界面活性剤(乳化剤、分散剤、消泡剤等)、補助剤等が挙げられる。液体担体としては、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。固体担体としては、カオリン、粘土、タルク、ベントナイト、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ホワイトカーボン、珪藻土等の天然鉱物粉末、ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩等の合成鉱物粉末、結晶性セルロース、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の高分子性天然物が挙げられる。また、固体担体としては、例えば、バーミキュライト、ケイ砂、雲母、軽石、石こう、炭酸カルシウム、ドロマイト、マグネシウム、消石灰、リン石灰、ゼオライト、硫安などの無機物質を使用しても良い。また、固体担体としては、例えば、大豆粉、タバコ粉、クルミ粉、小麦粉、木粉、でんぷん、結晶セルロースなどの植物性有機物質を使用しても良い。さらに、固体担体としては、クマロン樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアルキレングリコール、ケトン樹脂、エステルガム、コーパルガム、ダンマルガムなどの合成または天然の高分子化合物や、カルナバロウ、蜜ロウなどのワックス類及び尿素類等を使用しても良い。

【0023】
乳化剤または分散剤としては、通常、界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性および両イオン性のものが使用されるが、通常は非イオン性および/または陰イオン性のものが好適に使用される。適当な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールにエチレンオキシドを重合付加させたもの;イソオクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノールにエチレンオキシドを重合付加させたもの;ブチルナフトール、オクチルナフトールなどのアルキルナフトールにエチレンオキシドを重合付加させたもの;バルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸にエチレンオキシドを重合付加させたもの;ステアリンりん酸、ジラウリルりん酸などのモノもしくはジアルキルりん酸にエチレンオキシドを重合付加させたもの;ドデシルアミン、ステアリン酸アミドなどのアミンにエチレンオキシドを重合付加させたもの;ソルビタンなどの多価アルコールの高級脂肪酸エステルおよびそれにエチレンオキシドを重合付加させたもの;エチレンオキシドとプロピレンオキシドを重合付加させたもの;ジオクチルサクシネートなどの多価脂肪酸とアルコールとのエステルなどが挙げられる。適当な陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイルアルコール硫酸エステルアミン塩などのアルキル硫酸エステル塩;スルホこはく酸ジオクチルエステルナトリウム、2-エチルヘキセンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、メチレンビスナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアリールスルホン酸塩;トリポリリン酸ソーダなどのリン酸塩などが挙げられる。

【0024】
本発明に係る植物成長促進剤のバチルス属窒素固定細菌の含有量は、特に限定されないが、107~108cfu/mlとすることができる。

【0025】
一方、上述のように構成された植物生育促進剤は、各種植物の根圏に供給されることで植物の生育を促進する。対象となる植物としては、特に限定されないが、例えば、双子葉植物、単子葉植物、例えばアブラナ科、イネ科、ナス科、マメ科、ヤナギ科等に属する植物(下記参照)が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。
アブラナ科:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica rapa、Brassica napus、Brassica campestris)、キャベツ(Brassica oleracea var. capitata)、ハクサイ(Brassica rapa var. pekinensis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var. chinensis)、カブ(Brassica rapa var. rapa)、ノザワナ(Brassica rapa var. hakabura)、ミズナ(Brassica rapa var. lancinifolia)、コマツナ(Brassica rapa var. peruviridis)、パクチョイ(Brassica rapa var. chinensis)、ダイコン(Raphanus sativus)、ワサビ(Wasabia japonica)など。
ナス科:タバコ(Nicotiana tabacum)、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solaneum tuberosum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、トウガラシ(Capsicum annuum)、ペチュニア(Petunia)など。
マメ科:ダイズ(Glycine max)、エンドウ(Pisum sativum)、ソラマメ(Vicia faba)、フジ(Wisteria floribunda)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ミヤコグサ(Lotus corniculatus var. japonicus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、アズキ(Vigna angularis)、アカシア(Acacia)など。
キク科:キク(Chrysanthemum morifolium)、ヒマワリ(Helianthus annuus)など。
ヤシ科:アブラヤシ(Elaeis guineensis、Elaeis oleifera)、ココヤシ(Cocos nucifera)、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)、ロウヤシ(Copernicia)など。
ウルシ科:ハゼノキ(Rhus succedanea)、カシューナットノキ(Anacardium occidentale)、ウルシ(Toxicodendron vernicifluum)、マンゴー(Mangifera indica)、ピスタチオ(Pistacia vera)など。
ウリ科:カボチャ(Cucurbita maxima、Cucurbita moschata、Cucurbita pepo)、キュウリ(Cucumis sativus)、カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)、ヒョウタン(Lagenaria siceraria var. gourda)など。
バラ科:アーモンド(Amygdalus communis)、バラ(Rosa)、イチゴ(Fragaria)、サクラ(Prunus)、リンゴ(Malus pumila var. domestica)など。
ナデシコ科:カーネーション(Dianthus caryophyllus)など。
ヤナギ科:ポプラ(Populus trichocarpa、Populus nigra、Populus tremula) など。
イネ科:トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、コムギ(Triticum aestivum)、タケ(Phyllostachys)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ネピアグラス(Pennisetum pupureum)、エリアンサス(Erianthus ravenae)、ミスキャンタス(ススキ)(Miscanthus virgatum)、ソルガム(Sorghum)スイッチグラス(Panicum)など。
ユリ科:チューリップ(Tulipa)、ユリ(Lilium)など。

【0026】
なかでも、本発明に係る植物生育促進剤は、イネ(Oryza sativa)に代表されるイネ科植物を対象とすることが好ましい。特に、本発明に係る植物生育促進剤は水稲栽培において有効に利用される。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕<Bacillus pumilus TUAT-1株の単離>
東京都府中市東京農工大学畑圃場の土壌からNFb無窒素反流動培地を用いて単離し、流動培地表面から約5mm下に菌体の塊を形成する特徴を有し、希釈平板法で単コロニー化し、イネへの発根促進効果を確認した。
【実施例】
【0028】
以上のように単離した窒素固定能を有する微生物についてDNAを抽出し16s-rRNA遺伝子領域をPCR法で増幅し、DNAアナライザーを用いてDNA塩基配列を決定し、公的なDNA情報保存機関が有している塩基配列と比較し分類を試みた。16s-rRNA遺伝子領域の塩基配列を配列番号1に示した。配列番号1の塩基配列について、日本DNAデータバンク(DDBJ)でのBlast検索の結果、Bacillus pumilusに分類されることが明らかとなった。
【実施例】
【0029】
本実施例で単離したBacillus pumilusは、窒素固定能、インドール酢酸生産能、及び特に水稲を中心にイネ科作物に強い発根促進を有している点で公知のBacillus pumilus(例えば、Bacillus pumiluis SYBC-W株(laccase生産株)、Bacillus pumilus AUCAB16株(珊瑚に生息している株))とは異なっており、公知株とは異なる新規株である判定した。本実施例で単離したBacillus pumilusは、Bacillus pumiluis TUAT1株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE特許微生物寄託センター:〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2012年5月10日付けで受託番号NITE BP-1356として国際寄託した。
【実施例】
【0030】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1で単離・同定したBacillus pumiluis TUAT1株(受託番号NITE BP-1356)における窒素固定能及びこれに基づく植物生育促進作用を検証した。
【実施例】
【0031】
<試験方法>
<供試菌株および接種剤の調整>
Bacillus pumilus TUAT-1株を1g/Lの塩化アンモニウムを含む5LのNFb液体培地で一週間、25℃で振とう培養し、4℃、6000rpm、30分の遠心分離で集菌した。次に、2mmのふるいを通過させた東京農工大学付属農場の黒ボク土壌1kgを121℃、40分のオートクレーブで滅菌し、100mLの滅菌蒸留水に上記集菌菌体を混和し、28℃、最大圃場容水量下で1週間静置し、熟成させた。また、接種材の菌密度は希釈平板法により測定し、107~108CFU/gに調整した。
【実施例】
【0032】
<接種法>
TUAT-1株の「リーフスター」等への接種は、ポット試験での場合、苗移植時に上記接種剤200gで苗の根部を包むようにして接種した。また圃場試験においては、接種材100gをバット上で水に懸濁させ懸濁液とし、そこに移植苗の根を1時間浸すことで接種した。
【実施例】
【0033】
接種法の検討で、イネの場合は、播種時に上記接種剤を接種し、その後複数回同様な接種を行うと、安定的な効果が得られることが分かった。また、移植時の接種は、移植苗をオバーナイトで接種剤に浸漬することで安定的な接種は確立される。
【実施例】
【0034】
なお、「リーフスター」は、大川らが新規に長桿でバイオマス生産量が高く、稲わら中のデンプン含量が高い品種として育種されたものである(Biomass production and lodging resistance in 'Leaf Star', a new long-culm rice forage cultivar, Ookawa, T., K. Yasuda, M. Seto, K. Sunaga, H. Kato, M. Sakai, T. Motobayashi, S. Tojo and T. Hirasawa, Plant Production Sceince, 13(1):56-64 2010)。
【実施例】
【0035】
<ポット試験>
1/5000aの磁製ポットに篩別した東京農工大学農学部付属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センターFM本町水田の灰色低地土に肥料を混和して充填し、20日育苗したリーフスター苗を移植した。ポットは3つの施肥段階を設けた。すなわち、慣行区(5kg/10a)、慣行の60%の窒素減肥をした減肥区(2kg/10a)、無施肥区(0kg/10a)である。さらにそれぞれの菌接種区・非接種区を設け、計6処理区とした。リン酸およびカリウムについては慣行区および減肥区で5kg/10aとなるように施用し、無施肥区にはどちらも与えなかった。ポットは東京農工大学農学部ガラス室内にて、各処理区3連で室内に無作為に配置し、自然光下で栽培した。栽培を開始して106日後に植物体を根ごと採取し、穂、茎葉部および根部の部位別に分けた。通風乾燥機内で48時間、70℃で乾燥後、乾物重を測定した。また化学分析項目として、乾燥植物体を以下に記すように植物体養分分析、15N自然存在比の測定に供した。
【実施例】
【0036】
<圃場試験>
圃場における接種試験は、東京農工大学農学部付属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センターFM本町水田(多摩川沖積土壌)及び秋田県大潟村において行った。東京農工大学圃場では3つの施肥段階、すなわち慣行区(10kg/10a)、慣行の30%の窒素減肥をした減肥区(7kg/10a)、無施肥区(0kg/10a)とし、ポット試験と同様にそれぞれ菌接種区・非接種区を設け、計6処理区とした。リン酸およびカリウムについては慣行区および減肥区で10kg/10aとなるように施用し、無施肥区にはどちらも与えなかった。20日間育苗した水稲「リーフスター」苗を、栽植密度が22.2株/m2となるように、一株当たり3本で移植した。調査項目は1)生育調査項目として、各処理区の群落内から連続する5つの株を生育調査株として選び、1週間ごとに、草丈、茎数、葉色(SPAD値)の測定を行った。葉色の測定には、SPADメーター(MINOLTA, SPAD-502)を使用した。2)成長解析項目として、登熟期である移植後127日目に各処理区から2条8株(計16株)の地上部を採取し、地上部新鮮重を測定した。その内平均的な新鮮重をもつ4株を、穂、葉身(葉とする)、茎及び葉鞘及び枯死部(茎とする)の部位別に分け、乾物重を測定した。また3)また化学分析項目として、乾物を以下に記す植物体養分分析、15N自然存在比の測定に供した。
【実施例】
【0037】
大潟村では、機械移植前に苗箱を接種剤を懸濁した溶液に浸漬し、その後移植機で移植した。測定項目は、草丈、茎数、葉色(SPAD)、及び収量構成要素とした。
【実施例】
【0038】
<植物体養分分析>
植物体の窒素、リン酸、カリウムの吸収について評価するために、植物体中のそれぞれの濃度、および集積量を求めた。まずポット試験及び圃場試験において得られた乾燥植物体を粉砕機で粉砕し、その植物粉を濃硫酸-過酸化水素法により湿式分解した。その後分解液中の窒素濃度をインドフェノール法、リン濃度をバナドモリブデン酸法によって比色し、分光光度計(Shimadzu,UV-160)を用いて定量した。またカリウム濃度は試料溶液を5倍または10倍に希釈し、炎光光度計(英弘精機産業,FLA型)を用いて測定した。これらから、植物体に含まれる窒素、リン、カリウムの濃度を求め、さらに乾物重の値を乗ずることにより、植物体中のこれらの要素の集積量を計算した。
【実施例】
【0039】
15N自然存在比の測定>
接種菌が固定した窒素がリーフスターへと移行しているかを確かめるために、ポット試験及び圃場試験において得られた上記乾燥植物体粉末のさらに一部を超微細粉砕機によって処理し、15N自然存在比の測定に供した。測定はカリフォルニア大学デービス校安定同位体施設に依頼分析した。
【実施例】
【0040】
<結果>
<1/5000aポット試験>
<乾物重>
出穂期におけるリーフスターの部位別乾物重の測定値を表1に示した。
【実施例】
【0041】
【表1】
JP0006024963B2_000002t.gif
【実施例】
【0042】
表1に示すように、根部では、慣行区の無接種区を指数表示で100とすると接種区は205となり、接種により根量の乾物重が約2倍に増加していた。また、減肥区でも、慣行無接種区に比べて137の指数を示し、根乾物重が増加する傾向がみられ、TUAT1株の接種は根部の生育を促進することが分かった。また無施肥区では根部への影響は見られず、施肥段階と菌接種との間に危険率5%で交互作用の効果が認められたことから、根の生育に関して、施肥量により菌接種の効果がより発現することが示された。全乾物重の値は窒素の施肥量及び菌接種により有意な増加を示し(P=0.01)、コントロール区との比較では減肥区および慣行区で有意な乾物蓄積の増加が認められた。また減肥菌接種区の全乾物重の値は慣行非接種区のそれと類似し、減肥した窒素分を菌接種により補償できる可能性が示唆された。さらに図1に施肥段階と乾物重の相関を示した。図1に示すように、施肥段階と乾物重との間に高い相関が認められ、菌接種によって乾物蓄積量が上積みされるように増加することが明らかとなった。
【実施例】
【0043】
<養分分析>
1ポットあたりのリーフスターへの窒素集積量に関して、分散分析の結果、施肥の段階および菌接種それぞれの効果において有意な差が認められ(P=0.05、P=0.01)、施肥および菌接種によって窒素吸収が促進されていることが示された(表1)。
【実施例】
【0044】
また、リンおよびカリウム集積量に関しては窒素と同様に、施肥の段階および菌接種それぞれの効果において有意な差が認められ(表1)、施肥および菌接種によってリンおよびカリウムの吸収が促進されていることが示された。
【実施例】
【0045】
<δ15N値に基づく蓄積窒素の由来>
表2にポット試験の根と茎葉部の接種及び非接種区のδ15N値を示した。
【実施例】
【0046】
【表2】
JP0006024963B2_000003t.gif
【実施例】
【0047】
表2に示すように、化学肥料の接種が増えると、無施肥区に比べて非接種区ではδ15N値が減少し、窒素の原子量が軽くなっていることが分かった。これは、化学窒素肥料がδ15N値に直接的に影響していることを示している。一方、接種区では、無接種区に比べて、その値は若干増加する傾向を示していた。この結果から、TUAT1株を接種したイネは、発根により化学窒素肥料と共に、土壌中の窒素を、非接種区に比べて多く吸収していることが分かった。
【実施例】
【0048】
<圃場試験1(農工大水田圃場)>
<乾物重>
登熟期におけるリーフスターの地上部部位別乾物重の測定値を表3に示した。
【実施例】
【0049】
【表3】
JP0006024963B2_000004t.gif
【実施例】
【0050】
表3に示す分散分析の結果、地上部の全乾物重では施肥および菌接種それぞれの因子について有意差が認められた(P=0.01)。各施肥段階での比較では、慣行区および減肥区において、菌接種区がコントロール区を有意に上回り、接種効果が認められた。また無施肥区では菌接種の効果は認められなかった。また全体として施肥レベルと菌接種の両因子間に交互作用が認められ(P=0.05)、施肥段階が上がるにつれ接種効果が表れることが示唆された。地上部部位別にみると、慣行区ではすべての部位で、減肥区では葉と茎で乾物重の有意な増加が認められた。
【実施例】
【0051】
6処理区のすべての間の多重比較では、減肥菌接種区と慣行非接種区との間に有意差は認められなかったことから、ポット試験と同様に窒素肥料の減肥が菌接種により保証できる可能性が示唆された。
【実施例】
【0052】
<養分分析>
また、表3には、登熟期のリーフスターの窒素、リンおよびカリウムの集積量の値を示している。この値から判るように、各栄養素において、施肥および菌接種両因子の有意な効果が、地上部全体および部位別で認められた(P<0.05)。さらに地上部全体では乾物重の値と同様に両因子間の交互作用が認められた。
【実施例】
【0053】
すべての施肥段階において、菌接種により地上部の窒素集積量が増加することが示され、その増加量は無施肥区では17%、減肥区では34%、慣行区では37%であった。ポット試験では、植物体中の窒素濃度に菌接種の影響は表れていなかったが、圃場試験では、窒素濃度に関して菌接種の明瞭な影響が認められ、さらに窒素濃度と施肥の段階には極めて高い相関(R2>0.99)がみられた。すなわち、ポット試験の結果とは異なり、圃場試験での菌接種による植物体中への窒素の集積の促進は、施肥の量にさらに上積みをする形で、植物体中の窒素濃度を高めることによって起こっていた。
【実施例】
【0054】
また、リンおよびカリウムの集積に関して、窒素と同様に施肥量および菌接種により有意な効果が認められ、植物体全体では、リンでは減肥区と慣行区、カリウムでは慣行区において菌接種による有意な集積量の増加が認められた(表3)。植物体中のリンおよびカリウム濃度は窒素の施肥量と相関する傾向があり、窒素施肥量に伴ってリンやカリウムの吸収も促進されていた。
【実施例】
【0055】
<圃場試験2(秋田県大潟村水田圃場)>
秋田県大潟村で実施されている大規模な機械化水稲栽培に対して、TUAT1株の接種が適応可能か検証した。表4に、農家圃場における、生育状況を示した。
【実施例】
【0056】
【表4】
JP0006024963B2_000005t.gif
【実施例】
【0057】
表4に示すように、草丈に関しては、F及びT圃場の水稲に関して、非接種と接種に大きな違いは無かった。葉のSPAD値に関しては、T圃場が、F圃場より若干高めに推移し、T圃場の土壌中の窒素供給力がF圃場のそれより高いことを示していた。茎数に関しては、両圃場のイネ共、最高分けつ期(7月23日)に於いては、接種区の茎数が非接種区を上回り、8月14日の出穂期以降に於いても、茎数は接種区が非接種区を上回った。他の圃場試験でも(データは示さない)、同様な効果が示されていた。
【実施例】
【0058】
また、秋田県大潟村農家圃場におけるTUAT1株の接種が水稲品種「こまち」の収量および収量構成要素へ与えた効果を記載した。
【実施例】
【0059】
【表5】
JP0006024963B2_000006t.gif
【実施例】
【0060】
表5に示すように、F圃場では、TUAT1無接種及び接種間で、千粒重、登熟歩合に大きな違いは無く、一穂粒数はむしろ低下した。しかし、接種区の穂数が無接種区のそれより22,4%増加し、その結果、接種区の収量も32.8%増加した。また、T圃場では、千粒重、登熟歩合、一穂粒数は、無接種区と接種区間で大きな違いは無かったが、接種区の穂数が無接種区のそれに比べて14.6%増加し、その結果、接種区の収量が無接種区のそれに比べて17.9%増加した。
【実施例】
【0061】
このように、慣行施肥区にTUAT1株を接種すると、穂数の増加に伴い、水稲の子実収量も増加することが分かった。
図面
【図1】
0