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明細書 :ガイド器具設置誤差検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6123061号 (P6123061)
公開番号 特開2014-036700 (P2014-036700A)
登録日 平成29年4月14日(2017.4.14)
発行日 平成29年5月10日(2017.5.10)
公開日 平成26年2月27日(2014.2.27)
発明の名称または考案の名称 ガイド器具設置誤差検出装置
国際特許分類 A61B  34/20        (2016.01)
A61B   6/03        (2006.01)
A61B   5/055       (2006.01)
A61F   2/46        (2006.01)
FI A61B 34/20
A61B 6/03 377
A61B 6/03 360G
A61B 5/05 390
A61F 2/46
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2012-178914 (P2012-178914)
出願日 平成24年8月10日(2012.8.10)
審査請求日 平成27年8月8日(2015.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】510183475
【氏名又は名称】アルスロデザイン株式会社
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
【識別番号】591267855
【氏名又は名称】埼玉県
発明者または考案者 【氏名】若山 俊隆
【氏名】鬼頭 縁
【氏名】清徳 則雄
【氏名】半田 隆志
【氏名】吉澤 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100090413、【弁理士】、【氏名又は名称】梶原 康稔
審査官 【審査官】中村 一雄
参考文献・文献 特開2007-209531(JP,A)
特開2012-029769(JP,A)
特開2002-345839(JP,A)
調査した分野 A61B 34/20
A61B 5/055
A61B 6/03
A61F 2/46
特許請求の範囲 【請求項1】
関節置換術を行う際に手術器具の位置案内を行うガイド器具の設置位置の誤差を、手術支援装置で検出するガイド器具設置誤差検出装置であって、
前記ガイド器具は、
患者の臼蓋の外縁に設置されるアンカービットと、このアンカービットに対して角度を任意に調整可能なガイドポールを備えており、ガイド器具自体を骨盤に対して固定支持する固定支持部,
前記臼蓋の形状、及び、前記アンカービットの位置を計測するためのレーザ光を出力する形状測定器具もしくは手術を施す手術器具を取り付ける操作部,
前記形状測定器具からのレーザ光の前記臼蓋及び前記アンカービットによる反射光を検出する撮像部,
前記固定支持部に対する前記操作部及び前記撮像部の位置を調整するための位置調整アーム部,
前記固定支持部のガイドポールに取り付けられる第一の角度センサ,
前記形状測定器具に取り付けられる姿勢検出センサ,
を備えており、
前記手術支援装置は、
術前においては、患者の画像データに基づいて、術対象の関節部位の仮想の3次元骨形状を演算するとともに、該仮想の3次元骨形状に基づいて、前記ガイド器具の理想的な設置位置を演算し、
術中においては、実際に設置したガイド器具における前記第一の角度センサ,前記姿勢検出センサ,及び前記撮像部による検出信号に基づいて、術対象の臼蓋の実際の3次元骨形状及び前記アンカービットの実際の設置位置を取得し、
前記仮想の3次元骨形状,前記ガイド器具の理想的な設置位置,前記実際の3次元骨形状,前記アンカービットの実際の設置位置を比較し、前記ガイド器具の実際の設置位置と理想的な設置位置との誤差を検出する
ことを特徴とするガイド器具設置誤差検出装置。
【請求項2】
前記手術支援装置は、演算で得た患者の臼蓋の形状と、実際に計測した患者の臼蓋の形状とが一致するとの前提を利用し、前記仮想の3次元骨形状と前記実際の3次元骨形状の画像の回転・移動を行うことで両者を一致させて、前記ガイド器具の実際の設置位置と理想的な設置位置との誤差を検出することを特徴とする請求項1記載のガイド器具設置誤差検出装置。
【請求項3】
前記操作部に、前記形状測定器具に代わって取り付ける手術器具に第二の角度センサを設けるとともに、
前記手術支援装置は、
前記誤差に基づく前記ガイド器具の位置調整後における前記第一の角度センサの出力を基準としたときの前記第二の角度センサの出力との差をモニタリングすることを特徴とする請求項1又は2記載のガイド器具設置誤差検出装置。
【請求項4】
前記仮想の3次元骨形状を、患者のCT画像データもしくはMRI画像データに基づいて演算することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガイド器具設置誤差検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド器具を用いて人工股関節コンポーネントを設置する際にコンピュータによる支援ないしナビゲーションを行う際に好適なガイド器具設置誤差検出装置に関する。

【背景技術】
【0002】
膝や股の人工関節置換を行うに当たって、人工関節のコンポーネント(部品)の設置を精度よく行うため、コンピュータによる支援ないしナビゲーションが利用されており、大きく分けて以下のような手法がある(下記非特許文献1参照)。
(1)CT(コンピュータ断層撮影)などによる関節部位の画像情報を利用せず、関節を動かすことで得られる運動情報等を利用してナビゲーションを行う方法。
(2)CTなどによる画像情報を利用して3D(3次元)骨形状モデルを作製し、術中の骨形状との位置合わせを行って、ナビゲーションを行う方法。
【0003】
これらのうち、前記(1)の方法は、術前における画像取得のための処理を必要としないものの、ナビゲーションの正確さにおいて満足し得るものとはいえない。一方、前記(2)の方法は、CTやMRI(磁気共鳴画像)などによって精度の高い3D骨形状モデルを作製することができ、ナビゲーションの精度の向上を図ることができる。
【0004】
例えば、下記特許文献1の「手術支援装置、方法及びプログラム」は、術前に撮影した患者のMRI画像に基づいて3Dモデルを予め生成しておき、術中においては、患者の表面をレーザ光で走査し反射したレーザ光を検出することで、表面の各個所の3D座標を測定し、表面の各個所の術前MRI画像との対応付けを行うようにしている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-209531号公報
【0006】

【非特許文献1】「人工膝関節置換術[TKA]のすべて-安全・確実な手術のために」(株式会社メディカルビュー社,176-183頁,2007年2月5日刊行,中村卓司著)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のナビゲーション手法には、次のような課題がある。
(1)患者に外部からレーザ光、キセノン光、あるいは赤外線を当ててその表面形状を測定するため、装置構成が大がかりで高価となってしまう。
(2)手術器具の位置を取得するためのマーカを骨に設置するなど、手術侵襲の恐れが高く、患者の負担が大きい。
(3)操作に高度な熟練が必要であり、手術時間も長くなって、術者側の負担も大きい。
【0008】
本発明は、以上のような点に着目したもので、その目的は、装置構成の小型化、簡略化を図り、価格の低減を図ることである。他の目的は、患者及び術者の負担を軽減して、良好に人工関節置換を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガイド器具設置誤差検出装置は、関節置換術を行う際に手術器具の位置案内を行うガイド器具の設置位置の誤差を、手術支援装置で検出するガイド器具設置誤差検出装置であって、前記ガイド器具は、患者の臼蓋の外縁に設置されるアンカービットと、このアンカービットに対して角度を任意に調整可能なガイドポールを備えており、ガイド器具自体を骨盤に対して固定支持する固定支持部,前記臼蓋の形状、及び、前記アンカービットの位置(具体的には、アンカービットの固定位置及びガイドポールの傾き)を計測するためのレーザ光を出力する形状測定器具もしくは手術を施す手術器具を取り付ける操作部,前記形状測定器具からのレーザ光の前記臼蓋及び前記アンカービットによる反射光を検出する撮像部,前記固定支持部に対する前記操作部及び前記撮像部の位置を調整するための位置調整アーム部,前記固定支持部のガイドポールに取り付けられる第一の角度センサ,前記形状測定器具に取り付けられる姿勢検出センサ,を備えており、前記手術支援装置は、術前においては、患者の画像データに基づいて、術対象の関節部位の仮想の3次元骨形状を演算するとともに、該仮想の3次元骨形状に基づいて、前記ガイド器具の理想的な設置位置を演算し、術中においては、実際に設置したガイド器具における前記第一の角度センサ,前記姿勢検出センサ,及び前記撮像部による検出信号に基づいて、術対象の臼蓋の実際の3次元骨形状及び前記アンカービットの実際の設置位置を取得し、前記仮想の3次元骨形状,前記ガイド器具の理想的な設置位置,前記実際の3次元骨形状,前記アンカービットの実際の設置位置を比較し、前記ガイド器具の実際の設置位置と理想的な設置位置との誤差を検出することを特徴とする。

【0010】
主要な形態の一つによれば、前記手術支援装置は、演算で得た患者の臼蓋の形状と、実際に計測した患者の臼蓋の形状とが一致するとの前提を利用し、前記仮想の3次元骨形状と前記実際の3次元骨形状の画像の回転・移動を行うことで両者を一致させて、前記ガイド器具の実際の設置位置と理想的な設置位置との誤差を検出することを特徴とする。
他の形態によれば、前記操作部に、前記形状測定器具に代わって取り付ける手術器具に第二の角度センサを設けるとともに、前記手術支援装置は、前記誤差に基づく前記ガイド器具の位置調整後における前記第一の角度センサの出力を基準としたときの前記第二の角度センサの出力との差をモニタリングすることを特徴とする。
更に他の形態によれば、前記仮想の3次元骨形状を、患者のCT画像データもしくはMRI画像データに基づいて演算することを特徴とする。
本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、患者及び術者双方の負担を軽減し、術前計画に沿ったガイド器具の設置を行って人工関節置換術を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例で使用するガイド器具を示す斜視図である。
【図2】前記ガイド器具を矢印F2方向から見た側面図である。
【図3】前記ガイド器具の固定支持部PAの部分を拡大して示す図である。
【図4】前記ガイド器具の臼蓋に対する設置例を示す斜視図である。
【図5】本発明の手術支援装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例における術前作業の主要手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例における術中作業の主要手順を示すフローチャートである。
【図8】仮想3D術部モデルと実測3D術部モデルとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。概略は、次のとおりである。本発明は、各種の人工関節置換術に適用可能であるが、以下、骨盤臼蓋の場合を例として説明する。全体の動作の概要を示すと、次のようになる。
(1)骨盤付近のCTないしMRT画像を術前に取得し、骨盤部分の3Dモデルをコンピュータ上で作成する。
(2)前記仮想3D骨モデルを利用して、ガイド器具の設置位置などを計画し、ガイド器具を含めた仮想3D術部モデルを構築する。
(3)術中において、ガイド器具を設置し、術部の3D画像を取得して、ガイド器具を含めた実測3D術部モデルを取得する。
(4)仮想3D術部モデルと、実測3D術部モデルを対比し、理想的なガイド器具の設置位置と、実際のガイド器具の設置位置の誤差を検出する。
(5)検出したガイド器具の設置位置誤差が小さくなるように術者を誘導する。
【実施例1】
【0014】
次に、本発明の実施例1について説明する。最初に、本実施例で使用する人工関節置換術用ガイド器具(以下単に「ガイド器具」という)について、図1~図4を参照しながら説明する。なお、図1~図4は、特願2012-36256として出願されたものである。図1には、ガイド器具10の斜視図が示されており、その矢印F2方向から見た側面が図2に示されている。これらの図において、ガイド器具10は、大きく分けて、
a,器具自体を骨盤に対して固定支持する固定支持部PA,
b,形状測定器具やドリルを取り付ける操作部PB,
c,形状測定器具からの信号を検出する撮像部PC,
d,前記固定支持部PAに対する前記操作部PB,撮像部PCの位置を調整するための位置調整アーム部PD
によって構成されている。
【実施例1】
【0015】
<固定支持部PA> これらのうち、固定支持部PAは、ガイドポール19の先端にチャックホルダ19Aを介してボールチャック19Bが保持されている。ボールチャック19Bの先端には、アンカービット20が取り付けられている。ボールチャック19Bを緩めることで、アンカービット20が変位可能となり、ガイドポール19とアンカービット20との角度が調整可能となっている。アンカービット20は、骨盤の臼蓋外縁部上方に固定されるネジである。すなわち、ボールチャック19Bを緩めたり締め付けたりすることで、アンカービット20に対するガイドポール19,更にはガイド器具10の角度を任意に調整して固定できるようになっている。
【実施例1】
【0016】
ガイドポール19の他端側は、位置調整アーム部PDにスライド可能に挟まれており、その先にはレール保持部18を介してハンドル19Cが設けられている。レール保持部18は、撮像部PCのレール14Aをスライド可能に保持しており、これにより、固定支持部PAに対して撮像部PCをスライド可能に保持している。前記レール保持部18には、ガイドピンホール18Aが一対形成されており、前記チャックホルダ19Aには、ガイドピンホール19Hが一対形成されている。これらのガイドピンホール18A,19Hは、軸方向が一致しており、位置調整アーム部PDを挟むように、それぞれガイドピン(図示せず)が挿通されている。これらガイドピンにより、アンカービット側に対するハンドル側の捩じれが防止されている。
【実施例1】
【0017】
図3には、前記アンカービット20を骨盤PVに固定した状態が示されている。アンカービット20は、フランジ20Bの上側がボール20A、下側がネジ20Cとなっており、ネジ20Cを骨盤PVにおける臼蓋外縁の上端付近にねじ込むことで、骨盤PVに固定される。そして、その後ボール20Aにボールチャック19Bを取り付ける。そのときのボールチャック19Bの取付角度によって、ガイドポール19の角度を調整することができる。

【実施例1】
【0018】
<操作部PB> 次に、操作部PBは、治具ホルダ12を中心に構成されている。治具ホルダ12は、大径円筒状の基部12A内を移動可能な小径円筒状の移動部12Bを備えている。すなわち、治具ホルダ12は、基部12Aの円筒と移動部12Bの円筒によって、二重の筒構造を構成している。基部12Aの一部が延長形成されており、移動部12Bの移動をガイドするための延長ガイド12Dとして機能する。また、移動部12Bも一部が延長形成されており、形状測定器具11ないしドリル(図示せず)の移動をガイドずるための延長ガイド12Eとして機能する。移動部12Bの先端には、リング状の当接部12Cが形成されている。リング状当接部12Cは、臼蓋開口面から臼蓋底部まで移動可能となっている。
【実施例1】
【0019】
前記移動部12Bの円筒部分には、形状測定器具11や、ドリル(図示せず)などの施術具が挿入可能,着脱可能となっており、更に前記延長ガイド12Eに沿ってリング状当接部12Cの方向に移動可能となっている。一方、基部12Aは、位置調整アーム部PDに接合しており、これによって固定支持部PAのガイドポール19の軸方向と、形状測定器具11等との角度が調整可能となっている。
【実施例1】
【0020】
次に、形状測定器具11は、
a,患者の臼蓋の形状,
b,ガイド器具10の位置(具体的には、アンカービット20の固定位置及びガイドポール19の傾き)
を計測するためのレーザ光を使用するセンサであり、例えば、特開2007-285891号公報に開示された内面形状測定装置を利用することができる。他に、特開昭63-055441,特開2006-064690,特開2004-101190,特開2005-233925,特開2005-195936,特開平5-107037,なども、同様に適用可能である。円筒状の形状測定器具11の先端側には、半導体レーザ素子による第1レーザ発振部11A,円錐形状のミラーで形成された第1反射部11B,第2レーザ発振部11C,第2反射部11Dが、円筒の長手方向に沿って同軸上に設けられている。
【実施例1】
【0021】
第1レーザ発振部11Aから発振・出力されたレーザ光は、第1反射部11Bで反射される。これにより、レーザ光は、形状測定器具11の軸方向と直交する平面の全周方向に広がる円盤状のレーザ光C1として射出される。一方、第2レーザ発振部11Cから発振・出力されたレーザ光は、第2反射部11Dで反射される。これにより、レーザ光は、形状測定器具11の軸方向と直交する平面の全周方向に広がる円盤状のレーザ光C2として射出される。
【実施例1】
【0022】
前記レーザ光C1,C2は、一部が延長ガイド12D,12Eで遮られるため、円盤状ではなく扇形状となる。延長ガイド12D,12E内壁面によるレーザ光の反射による悪影響を避けるため、レーザ光を吸収するような壁面とするとよい。また、前記第2反射部11Dとの間に十字形のスリットを設けるか、あるいは第2反射部11Dのプリズム形状により、前記レーザ光C2を、円錐形状ではなく、十字形状に広がるレーザ光としてもよい。
【実施例1】
【0023】
計測時は、形状測定器具11を、移動部12Bによって基部12A側からリング状当接部12C側に移動する。そして、そのときに得られるレーザ光C1,C2の臼蓋及びアンカービット20による反射光を撮像部PCで検出することで、臼蓋の3D(立体)形状やアンカービット20の位置が計測されるようになっている。
【実施例1】
【0024】
更に、形状測定器具11は、その姿勢角度を検出して姿勢検出信号を出力する姿勢検出センサ11Eと、撮像部PCで得た画像信号や前記姿勢検出信号を、後述する手術支援装置に送信するための送信部11Fを備えている。姿勢検出センサ11Eは、例えば、ジャイロセンサ及び3軸加速度センサによって構成される。送信部11Fとしては、例えば無線LANなどの近距離無線通信の規格が利用される。なお、駆動用の電池も、形状測定器具11に内蔵されている。

【実施例1】
【0025】
<撮像部PC> 次に、撮像部PCについて説明すると、上述したレーザ光C1,C2の臼蓋等による反射光が入射する撮像素子15は、位置調整アーム部PDに沿ってスライド可能なスライダ14に、前記レーザ光C1,C2の照射方向を向いて取り付けられている。スライダ14からは、位置調整アーム部PDの接線方向に向かって1対のレール14Aが延長形成されており、このレール14Aに沿って、前記固定支持部PAのレール保持部18がスライド可能となっている。
【実施例1】
【0026】
前記スライダ14には、前記位置調整アーム部PDの外側に鉤保持部16が設けられており、この鉤保持部16によって、抑え鉤17が保持されている。抑え鉤17は、前記位置調整アーム部PDの円弧の中心に向かう方向(円弧と直交する方向)に設けられており、先端に湾曲部17Aが形成されている(図4参照)。このような抑え鉤17を、手術時に開創部から臼蓋周縁に挿入することで、患部の視野を確保して、撮像素子15による撮像を良好に行えるようにしている。前記スライダ14と鉤保持部16との間隔は、支持ロッド16Aによって調整可能となっている。また、抑え鉤17の軸方向は、ガイドポール19の軸方向と同一となっている。
【実施例1】
【0027】
<位置調整アーム部PD> 次に、位置調整アーム部PDは、上述した操作部PBにおける基部12Aの延長ガイド12Dの先端を中心とする円弧となっており(図2参照)、並行して円弧状に設けられた1対の円弧アーム13を備えている。円弧アーム13の一方の端部は、前記操作部PBの治具ホルダ12に接続固定されている。円弧アーム13の側面には、円弧状のスリット13Aが形成されている。このスリット13Aには、上述した撮像部PCのスライダ14の側面から突出したピン16Bが入り込んでおり(図2参照)、このピン16Bがスリット13Aに当接してスライドすることで、スライダ14が円弧アーム13に沿ってスライド可能に保持されている。
【実施例1】
【0028】
以上の点をまとめると、次のようになる。
a,固定支持部PAは、撮像部PCに対して、レール14Aに沿って平行移動可能となっている。
b,撮像部PCは、位置調整アーム部PDに沿って円弧状に移動可能となっている。これにより、撮像部PCは、いずれの位置であっても、操作部PBの先端部分を撮像可能となっている。
c,固定支持部PAは、先端のアンカービット20に対して角度を変更可能である。これにより、アンカービット20を中心に考えると、ガイド器具10の全体の傾きを調整することができる。
【実施例1】
【0029】
また、各部の位置を固定するため、必要に応じて、以下のようなネジなどによる固定具が設けられる。
a,円弧アーム13に対するスライダ14の位置を固定する。
b,スライダ14と抑え鉤17との間隔を固定する。
c,レール14Aに対するレール保持部18の位置を固定する。
【実施例1】
【0030】
上述した図2に示す状態は、略半球形状に窪んだ臼蓋の開口平面をOPとしたときの各部の位置関係の一例を示している。固定支持部PAのアンカービット20は開口平面OPの位置となり、操作部PB先端のリング状の当接部12Cは、開口平面OPより下の臼蓋内に位置する。また、撮像部PCの撮像素子15は、形状測定器具11の先端部分を視野に入れており、抑え鉤17の湾曲部17Aの先端は開口平面OPの位置となって、撮像素子15の視野を確保している。図4には、骨盤PVに対してガイド器具10を設置した様子が示されている。
【実施例1】
【0031】
手術支援装置> 次に、図5のブロック図を参照しながら、上述したガイド器具を使用する手術支援装置100について説明する。図5において、手術支援装置100は、パソコンなどのコンピュータ装置110を中心に構成されている。それらのうち、特に本発明に関係するものとして、
a,演算装置としてのCPU112,
b,該CPU112で実行されるプログラムが格納されたプログラムメモリ120,
c,外部から取得したデータや演算後のデータを格納するデータメモリ130,
を図示している。プログラムメモリ120やデータメモリ130としては、例えばハードディスクなどが利用される。また、コンピュータ装置110には、
d,キーボードやマウスなどの入力装置150,
e,画像やデータを表示するモニタ152,
f,術時にアラームを出力するスピーカ154,
g,上述したガイド器具10やドリル等の手術器具200から送信された信号を受信する受信部156,
h,CT(MRI)装置160,
が適宜のインターフェースを介して接続されている。必要があれば、プリンタ,ディスクドライブなどが接続される。

【実施例1】
【0032】
ガイド器具10のガイドポール19及びドリルなどの手術器具200には、手術時に角度センサ19P,200Pがそれぞれ取り付けられ、検出信号が送信部19Q,200Qを介して前記受信部156で受信されるようになっている。
【実施例1】
【0033】
次に、プログラムメモリ120に格納されているプログラム及びデータメモリ130に格納されているデータについて説明する。
a,CT画像データ131は、CT装置160によって撮像された患者のCT画像データであり、CT装置160における座標系,いわばCT座標系で表示されたデータである。MRI画像でもよい。
b,仮想3D骨モデル構築プログラム121は、前記CT画像データ131に基づいて、患者の臼蓋を中心とする骨盤部分の3D形状を演算して仮想的に構築するプログラムである。演算後の3D形状データは、仮想3D骨モデルデータ132としてデータメモリ130に保存される。
c,設置シミュレーションプログラム122は、前記仮想3D骨モデルデータ132に基づいて、前記ガイド器具10の設置位置,具体的には、固定支持部PAのアンカービット20の理想的な設置位置とガイドポール19の方向を決定するプログラムである。決定されたアンカービット20の理想位置及びガイドポール19の方向のデータは、仮想3D骨モデルデータ132に付加され、仮想3D術部データ133として、データメモリ130に保存される。
d,実測3D術部データ134は、実際の手術時に、ガイド器具10の形状測定器具11を利用して撮像素子15により撮像した骨形状及び設置したガイドポール19及びアンカービット20の3D画像データである。
e,器具設置誤差検出プログラム124は、コンピュータ上で得た仮想3D術部データ133と、前記手術時に得た実測3D術部データ134とを比較し、ガイド器具10の設置誤差、すなわちガイドポール19の傾きとアンカービット20の位置ずれを検出するプログラムであり、角度及び距離の誤差データ135として、データメモリ130に格納される。
f,実測角度データ136は、手術時にガイドポール19に設置される角度センサ19Pと、ドリルなどの手術器具200に設置される角度センサ200Pの検出結果を示すデータである。
g,角度差モニタリングプログラム125は、前記実測角度データ136を参照し、比較結果をアラーム出力するプログラムである。
【実施例1】
【0034】
次に、上述したガイド器具10の形状測定器具11には、姿勢検出センサ11Eが設けられており、これによって検出される姿勢変化情報は、前記撮像素子15の撮像信号とともに、送信部11Fから送信され、受信部156を介してコンピュータ装置110で受信されるようになっている。また、ガイドポール19と、ドリルなどの手術器具200には、手術時に、それぞれ角度センサ19P,200Pが設けられ、それらの検知信号は送信部19Q,200Qによって前記受信部156に送信され、コンピュータ装置110に取り込まれるようになっている。
【実施例1】
【0035】
<術前動作> 次に、上記実施例の動作のうち、術前に行われる動作について、図6も参照しながら説明する。最初に、CT装置160によって患者の骨盤付近のCT画像を取得し、コンピュータ装置110のデータメモリ130にCT画像データ131として保存する(ステップS10)。次に、コンピュータ装置110では、仮想3D骨モデル構築プログラム121がCPU112で実行され、前記CT画像データ131に基づいてコンピュータ上に仮想的に3Dの骨モデルを構築する(ステップS12)。仮想3D骨モデルを表す座標系は、コンピュータ上に設定した3D位置座標系である。構築した仮想3D骨モデルデータ132は、データメモリ130に格納される。
【実施例1】
【0036】
次に、CPU112では、設置シミュレーションプログラム122が実行され、前記仮想3D骨モデルを参照しながら、人工関節の設置シミュレーションを行い、ガイド器具10の最適な設置位置が決定される。この決定の手順は、次の通りである。
a,まず、仮想3D骨モデルデータ132を利用して、人工関節の設置シミュレーションを行い、人工関節の理想的な3D設置位置を決定する(ステップS14)。この操作は、仮想空間上で、施術者(医師)がモニタ152を参照しながら行う。
b,次に、3D手術計画を術中で遂行し、前記決定された人工関節の理想的な3D設置位置を手術時に再現できるように、ガイド器具10を設置するシミュレーションを行う(ステップS16)。
c,次に、前記コンピュータ上の仮想空間に構築した3D骨モデル上の前記ステップで得た位置,すなわち3D手術計画を反映した理想的な骨とガイド器具10(アンカービット20とガイドポール19)の3Dモデルを構築する(ステップS18)。
【実施例1】
【0037】
このようにして決定されたアンカービット20の理想位置及びガイドポール19の理想方向のデータは、仮想3D骨モデルデータ132に付加され、仮想3D術部データ133として、データメモリ130に保存される。以上の仮想3D骨モデル構築プログラム121,設置シミュレーションプログラム122としては、例えばレキシー社製のソフトウェア「HipKnee(ヒップ・ニー)」を用いることができる

【実施例1】
【0038】
<術中動作> 次に、実際の置換術における術中動作について説明する。図7には、その手順が示されている。手術を担当する医師は、患部を開き、上述した手術計画とシミュレーションに基づいた設置位置に、完全滅菌したガイド器具10のアンカービット20とガイドポール19を設置する(ステップS30)。
【実施例1】
【0039】
図4には、その様子が示されている。なお、同図は骨盤PVの部分を広く示しているが、実際の手術ではわずかな切開部分から臼蓋周辺を見ることができるのみである。ガイド器具10の固定支持部PAのガイドポール19の先端に設けられたアンカービット20は、術前計画に基づいて、臼蓋ACの外縁上方に固定される。このとき、理想的には術前計画で決めた位置に固定されればよいが、実際上の設置位置は誤差を含んでいる。
【実施例1】
【0040】
次に、形状測定器具11からレーザ光C1,C2を出力し、臼蓋ACの部分を撮像し、3D画像を得る(ステップS32)。詳述すると、まず、臼蓋AC部分の3D画像を良好に得るために、形状測定器具11の先端側のリング状の当接部12Cが臼蓋ACの中心に位置するように、操作部PBの位置調整を行う。次に、第1レーザ発振部11A及び第1反射部11Bによる円盤状に広がるレーザ光C1と、第2レーザ発振部11C及び第2反射部11Dによる円錐形状(ないし十字形)に広がるレーザ光C2とを時分割で交互に射出する。具体的には、撮像素子15における連続撮影可能速度に合わせて、例えば0.1[秒]間隔で射出し、取得した撮影画像データを、姿勢検出センサ11Eで検出する姿勢信号と合わせて、送信部11Fによりコンピュータ装置110に連続して送信する。これら前記形状測定器具11による画像信号と前記姿勢検出センサ11Eによる姿勢信号は、実測3D術部データ134として、データメモリ130に格納される。形状測定器具11を用いて実測3D術部データ134を得るための具体的な手法としては、例えば特開2007-285891号公報に開示された「内面形状の測定方法とこの方法による測定装置」が好適である。
【実施例1】
【0041】
コンピュータ装置110では、設置誤差検出プログラム124がCPU112で実行され、前記仮想3D術部データ133と、実測3D術部データ134とのデータマッチングが行われる(ステップS34)。そして、理想的なガイド器具10の設置位置と、実際に設置したガイド器具10の設置位置との差が認識され(ステップS36)、パラメータ表示される(ステップS38)。
【実施例1】
【0042】
図8には、その様子が示されている。同図(A)は、仮想3D骨モデル上における術前計画で設定されたガイド器具10の固定支持部PA(アンカービット20とガイドポール19)の位置を示している。同図(B)は、術中における実際の固定支持部PAの位置を示している。臼蓋ACの形状は、仮想3D術部データ133と実測3D術部データ134とで一致するはずであるから、両者が一致するように画像を回転・移動してゆく。同図(C)は、臼蓋ACを一致させた状態を示しており、固定支持部PAの仮想上の設置位置と実際の設置位置との間に、アンカーボルト20の距離にしてΔL,ガイドポール19の角度にしてΔRがそれぞれある。これらの距離差ΔL,角度差ΔRは、誤差データ135として、データメモリ130に格納される。

【実施例1】
【0043】
次に、術者が、パーソナルコンピュータから発信される聴覚情報による位置誘導音を参考にガイド器具10の固定支持部PA(アンカービット20とガイドポール19)の位置を調整する。具体的には、ガイド器具10のスライダ14に対するガイドロッド保持スライダ18の位置、円弧アーム13に対するスライダ14の位置、第1ロッド保持部16に対する第1のロッド17の位置、およびスライダ14に対する第1のロット保持部16の位置を調整し、術前計画通りの位置になるように調整する。この状態において、ガイドポール19に取り付けた角度センサ19Pの信号出力が、ガイド器具10の臼蓋ACに対する位置基準を表すこととなる(ステップS44)。

【実施例1】
【0044】
次に、上述した形状測定器具11の代わりに、ドリル,リーマー,骨切除ガイド,人工関節打ち込み器などの手術器具200(図5参照)を、角度センサ200P及び送信部200Qとともにガイド器具10の治具ホルダ12に取り付ける。なお、形状測定器具11に取り付けた姿勢検出センサ11Eや送信部11Fを利用してもよい。一方、コンピュータ装置110では、受信部156で受信されたガイドポール19の角度センサ19Pの出力と、手術器具200の角度センサ200Pの出力とが、実測角度データ136としてデータメモリ130に格納される。CPU112では、角度差モニタリングプログラム125が実行されており、角度センサ出力が比較されて、両者の角度差がモニタリングされる(ステップS46)。手術器具200が術前計画の目標角度となるように、スピーカ154から誘導音が出力され、この誘導音に沿って骨掘削,切除,人工関節設置などの処理を行うことで、術前計画に沿った人工関節置換術が行われる。二つの角度センサ出力を利用する位置認識の具体的な手法としては、例えば特開2008-295527「身体傾斜角計測器および身体ねじれ角計測器」の発明を適用することができる。
【実施例1】
【0045】
以上説明したように、本実施例によれば、次のような効果がある。
(1)患者に外部からレーザ光を当てるなどの大がかりな装置を必要とせず、装置構成の小型化を図ることができる。
(2)手術器具の位置を取得するためのマーカを骨に設置するといった必要もなく、低侵襲で患者の負担軽減を図ることができる。
(3)器具の操作に当たって高度な熟練は不要で、術者の負担も軽減して、良好に人工関節置換を行うことができる。

【実施例1】
【0046】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例は、本発明を股関節における人工関節置換術に適用した場合を示したが、他の関節部位における人工関節置換術にも同様に適用することができる。
(2)前記実施例では、角度センサを利用することとしたが、ジャイロセンサや加速度センサなど、姿勢を検知する各種のセンサを利用することができる。例えば、股関節手術において、加速度センサを用いることができる。
(3)前記実施例では、CTやMRI画像からコンピュータ上の仮想空間に3D骨モデルを構築したが、実物大の骨盤部分の骨モデルを、例えばアクリル系光硬化樹脂やABS樹脂、石膏パウダー等により作製し、これを用いて術前計画を行うようにしてもよい。
(4)前記実施例では、各センサとコンピュータとの間の信号授受を無線で行うこととしたが、有線で行うことを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、装置構成の小型化,簡略化,低価格化を図ることができ、患者及び術者の負担を軽減することができるので、各種の人工関節置換術に好適である。

【符号の説明】
【0048】
10:ガイド器具
11:形状測定器具
11A:レーザ発振部
11B:反射部
11C:レーザ発振部
11D:反射部
11E:姿勢検出センサ
11F:送信部
12:治具ホルダ
12A:基部
12B:移動部
12C:リング状当接部
12D,12E:延長ガイド
13:円弧アーム
13A:スリット
14:スライダ
14A:レール
15:撮像素子
16:鉤保持部
16A:支持ロッド
16B:ピン
17:抑え鉤
17A:湾曲部
18:レール保持部
18A,19H:ガイドピンホール
19:ガイドポール
19A:チャックホルダ
19B:ボールチャック
19C:ハンドル
19H:ガイドピンホール
19P:角度センサ
19Q:送信部
20:アンカービット
20A:ボール
20B:フランジ
20C:ネジ
42:ステップ
100:手術支援装置
110:コンピュータ装置
112:CPU
120:プログラムメモリ
121:仮想骨モデル構築プログラム
122:設置シミュレーションプログラム
124:器具設置誤差検出プログラム
125:角度差モニタリングプログラム
130:データメモリ
131:CT画像データ
132:仮想3D骨モデルデータ
133:仮想3D術部データ
134:実測3D術部データ
135:誤差データ
136:実測角度データ
150:入力装置
152:モニタ
154:スピーカ
156:受信部
160:CT装置
200:手術器具
200P:角度センサ
200Q:送信部
AC:臼蓋
C1,C2:レーザ光
PA:固定支持部
PB:操作部
PC:撮像部
PD:位置調整アーム部
PV:骨盤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7