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明細書 :セラミックス繊維強化タングステン複合材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-040638 (P2014-040638A)
公開日 平成26年3月6日(2014.3.6)
発明の名称または考案の名称 セラミックス繊維強化タングステン複合材料
国際特許分類 C22C   1/10        (2006.01)
C22C  47/14        (2006.01)
C22C  27/04        (2006.01)
C22C  29/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   3/10        (2006.01)
B22F   3/02        (2006.01)
C04B  41/88        (2006.01)
FI C22C 1/10 J
C22C 47/14
C22C 27/04 101
C22C 29/00 Z
B22F 1/00 P
B22F 3/10 G
B22F 3/02 P
C04B 41/88 U
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2012-183610 (P2012-183610)
出願日 平成24年8月22日(2012.8.22)
発明者または考案者 【氏名】檜木 達也
【氏名】下田 一哉
【氏名】豊島 和沖
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4K018
4K020
Fターム 4K018AA20
4K018AB01
4K018AB02
4K018AB03
4K018AB07
4K018AC01
4K018AD01
4K018AD09
4K018AD10
4K018BA09
4K018BB02
4K018CA02
4K018DA01
4K018DA21
4K018DA33
4K020AA04
4K020AA06
4K020AA08
4K020AC07
4K020BB08
要約 【課題】タングステン又はタングステン合金をマトリックスとする材料において、中性子照射環境下や再結晶温度を超えるような温度域においても高い破壊靭性を有する材料を提供する。
【解決手段】タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属と、該マトリックス金属中に配置されたセラミックス繊維を含む複合材料は、タングステン又はタングステン合金単体からなる材料と比較すると、高い破壊強度を有する耐久性に優れた材料となる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属と、該マトリックス金属中に配置されたセラミックス繊維を含む、セラミックス繊維強化タングステン複合材料。
【請求項2】
セラミックス繊維が、炭化ケイ素系繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種の繊維の長繊維である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
セラミックス繊維の含有量が、複合材料全体を基準として、20~80体積%である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属からなる層と、セラミックス繊維からなる層がそれぞれ2層以上積層された構造を有する、請求項1~3のいずれかに記載の複合材料。
【請求項5】
粉末状のタングステン又はタングステン合金を分散媒中に分散させてスラリーとし、これをセラミックス繊維の繊維構造物に塗布して混合体とした後、該混合体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
【請求項6】
粉末状のタングステン又はタングステン合金を分散媒中に分散させてスラリーとし、該スラリー中に束状のセラミックス繊維を配置して混合体とした後、該混合体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
【請求項7】
粉末状のタングステン又はタングステン合金を含むスラリーを乾燥させてシート状に成形し、これをセラミックス繊維からなる繊維構造物又は束状のセラミックス繊維を配列させた層との積層体とした後、該積層体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
【請求項8】
箔状のタングステン又はタングステン合金を、セラミックス繊維からなる繊維構造物又は束状のセラミックス繊維を配列させた層との積層体とした後、該積層体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス繊維で強化されたタングステン複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合炉におけるダイバータは、核融合生成物 (α粒子)、反応していない燃料、プラズマ粒子により侵食され剥離した微粒子等を除去するための装置である。ダイバータの熱負荷は10 ~ 20 MW / m2程度であり、プラズマ炉心から発生する総発熱量の15%程度を除去する必要があるため、核融合炉の中でも最も過酷な熱負荷を受ける部分である。また、高速のプラズマ粒子と接することによる劣化も懸念される。
【0003】
タングステンは、融点が約3380℃の高融点材料であって、耐スパッタリング損耗特性に優れているため、ダイバータ構成材料の最有力候補として検討されている。また、核融合炉における第一壁材料としても期待されている。
【0004】
しかしながら、タングステンは、基本的に脆性特性を有し、中性子照射環境下での更なる脆化が課題となっており、構造材料としての信頼性が低いことが実用化への最大の障壁となっている。更に、タングステンは、融点が非常に高いにもかかわらず、1000℃程度の再結晶温度以上で靱性が劣化してしまうため、実質的な使用上限は1000℃程度に抑えられ、設計で求められる十分な性能を発揮することができない。
【0005】
タングステンの強度特性を改善することを目的として、タングステン繊維で強化したタングステンマトリックス材料が開発されている。更に、タングステン繊維で強化した複合材料に、銅等で繊維被覆して靭性を向上させる試みもなされている(下記非特許文献1参照)。しかしながら、これらの材料は、同一素材からなる複合材料であり、高温域での靭性の劣化を十分に改善することもできず、タングステンの本質的な弱点を克服することができない。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】J. Du, T. Hoschen, M. Rasinski and J.H. You, “Interfacial fracture behavior of tungsten wire/tungsten matrix composites with copper-coated interfaces,” MATERIALS SCIENCE AND ENGINEERING A-STRUCTURAL MATERIALS PROPERTIES, 527[6] (2010) 1623-1629.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、タングステンをマトリックスとする材料において、中性子照射環境下や再結晶温度を超えるような温度域においても高い破壊靭性を有する材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、タングステンとセラミックス繊維とを加圧下で焼結して複合化した材料によれば、微細な亀裂が生じた場合であっても、セラミックス繊維とタングステンの界面において亀裂が偏向し、更に、界面において摩擦力によって荷重を担うことができ、これによって中性子照射環境下や再結晶温度以上の高温環境下等における破壊靭性値が大きく向上し、これらの環境下において優れた破壊強度を有するタングステン複合材料が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記のセラミックス繊維強化タングステン複合材料及びその製造方法を提供するものである。
項1. タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属と、該マトリックス金属中に配置されたセラミックス繊維を含む、セラミックス繊維強化タングステン複合材料。
項2. セラミックス繊維が、炭化ケイ素系繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種の繊維の長繊維である、項1に記載の複合材料。
項3. セラミックス繊維の含有量が、複合材料全体を基準として、20~80体積%である、項1又は2に記載の複合材料。
項4. タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属からなる層と、セラミックス繊維からなる層がそれぞれ2層以上積層された構造を有する、項1~3のいずれかに記載の複合材料。
項5. 粉末状のタングステン又はタングステン合金を分散媒中に分散させてスラリーとし、これをセラミックス繊維の繊維構造物に塗布して混合体とした後、該混合体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
項6. 粉末状のタングステン又はタングステン合金を分散媒中に分散させてスラリーとし、該スラリー中に束状のセラミックス繊維を配置して混合体とした後、該混合体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
項7. 粉末状のタングステン又はタングステン合金を含むスラリーを乾燥させてシート状に成形し、これをセラミックス繊維からなる繊維構造物又は束状のセラミックス繊維を配列させた層との積層体とした後、該積層体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
項8. 箔状のタングステン又はタングステン合金を、セラミックス繊維からなる繊維構造物又は束状のセラミックス繊維を配列させた層との積層体とした後、該積層体を加圧下で焼結させることを特徴とする、セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法。
【0010】
本発明のセラミックス繊維強化タングステン複合材料は、タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属と、該マトリックス金属中に配置されたセラミックス繊維を含む複合材料である。
【0011】
以下、本発明のセラミックス繊維強化タングステン複合材料及びその製造方法について具体的に説明する。
【0012】
(1)マトリックス金属
本発明の複合材料は、タングステン又はタングステン合金をマトリックス(母材)金属とするものである。
【0013】
マトリックス金属として用いるタングステンについては、特に限定はなく、後述する通り、粉末状の純タングステン、箔状の純タングステンなどを原料として用いることができる。
【0014】
タングステン合金についても特に限定はなく、目的とする用途に応じて、公知のタングステン合金から適宜選択すればよい。例えば、Reを5~30重量%程度含むタングステンレニウム合金;Cuを10~40重量%程度含むタングステン銅合金;La、Th、CeO等を1~5重量%程度まで含む粒子強化型タングステン合金;カリウムをドープしたドープタングステン合金などを用いることができる。
【0015】
(2)セラミックス繊維
本発明では、セラミックス繊維としては、後述する焼結時の加熱温度において変質を生じないものであれば、特に限定なく使用できる。この様なセラミックス繊維の具体例としては、炭化ケイ素系繊維、炭素繊維、アルミナ系酸化物繊維等を挙げることができる。更に、セラミックス繊維としては、表面を炭素や窒化ホウ素等で被覆した繊維も用いることができる。
【0016】
これらの内で、Tyranno SA(宇部興産製)、Hi-Nicalon -S(日本カーボン製)等の商標名で市販されている高結晶性炭化ケイ素繊維は、中性子照射下において非常に優れた特性を示し、強度劣化を生じることがなく、特に、Tyranno SAは、2000℃程度の高温においても強度低下が殆ど生じない点において、特に好ましい材料である。また、炭素繊維についても、高温において強度低下が少なく、特に、安価な点において有利な材料である。
【0017】
従って、本発明では、セラミックス繊維としては、炭化ケイ素系繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種の繊維を用いることが好ましく、特に、炭化ケイ素系繊維を用いることが好ましい。
【0018】
セラミックス繊維の形状については特に限定はなく、例えば、セラミックス繊維の続線繊維である長繊維や、これを切断した短繊維などを用いることができる。特に、本発明の目的とする破壊靭性を向上させるためには、セラミックス繊維の長繊維を用いることが好ましい。ここで、長繊維とは連続した繊維であればよく、繊維長については特に限定はない。例えば、最終的に目的とする複合材料の長さと同程度の長さの繊維を用いればよいが、十分な強度を付与できるのであれば、目的とする複合材料より短い長繊維であっても使用することができる。短繊維とは、長繊維を切断したものであり、例えば、1~10mm程度の長さの繊維である。
【0019】
セラミックス繊維の直径については特に限定はないが、例えば、直径5~200μm程度の繊維を用いることができる。
【0020】
セラミックス繊維は、通常は、500~2000本程度の繊維の束(バンドル)、又はこれを用いた編物、織物などの繊維構造物として供給される。本発明では、目的とする複合体の形状などに応じて、この様な束状のセラミックス繊維、セラミックス繊維の繊維構造物等を用いることができる。
【0021】
(3)セラミックス繊維強化タングステン複合材料の製造方法
本発明のセラミックス繊維強化タングステン複合材料は、マトリックス金属となるタングステン又はタングステン合金とセラミックス繊維を所定の状態に配置して混合体とした後、これを加圧下で焼結させることによって得ることができる。セラミックス繊維を配置する方法については特に限定はなく、目的とする複合材料の形状に応じて、十分な強度を付与できるように配置すればよい。
【0022】
例えば、粉末状のタングステン又はタングステン合金を原料として用いる場合には、粉末状原料をそのまま用いるか、或いは、分散媒中に分散させてスラリーとし、これを所定の状態に配置したセラミックス繊維と混合することによって、焼結に用いる混合体を得ることができる。
【0023】
粉末状の金属原料を含むスラリーは、分散媒として、水や、アルコール(エタノール、イソプロパノールなど)等の有機溶媒用いて、該分散媒中に粉末状金属原料を均一に分散させることによって得ることができる。スラリー中の粉末状金属原料の濃度については特に限定はなく、処理が容易な濃度とすればよく、例えば、固形分量として、40~80重量%程度とすることが好ましい。タングステン又はタングステン合金からなる粉末状金属原料の粒径については特に限定はなく、例えば、平均粒径が0.5~20μm程度のものを用いることができる。特に、焼結過程においてセラミックス繊維と過度に反応することを避けるためには、平均粒径が1~20μm程度のものを用いることが好ましい。
【0024】
粉末状金属原料とセラミックス繊維との混合体を作製するための具体的な方法としては、例えば、セラミックス繊維を編物、織物などの繊維構造物として用い、粉末状のタングステン又はタングステン合金をそのまま用いる場合には、粉末状の金属原料を層状に敷き詰め、この上にセラミックス繊維の繊維構造物を重ねるか、或いは、セラミックス繊維の繊維構造物上に粉末状金属原料を散布すればよい。また、セラミックス繊維を編物、織物などの繊維構造物として用い、粉末状のタングステン又はタングステン合金をスラリーとして用いる場合には、このスラリーをセラミックス繊維の繊維構造物に塗布すればよい。
【0025】
また、束状のセラミックス繊維を用いる場合には、粉末状のタングステン又はタングステン合金をそのまま、或いはスラリーとして型に入れ、その中に束状のセラミックス繊維を任意の形状に配置すればよい。この場合、束状のセラミックス繊維は一方向に配置することに限定されず、交差する二方向に配置してもよく、それ以外の任意の方向に配置してもよい。
【0026】
また、粉末状のタングステン又はタングステン合金を含むスラリーを乾燥させてシート状に成形し、これをセラミックス繊維からなる繊維構造物との積層体として、焼結に用いる混合体としてもよい。また、束状のセラミックス繊維を用いる場合には、目的とする複合材料中のセラミックス繊維の存在状態に対応するように束状のセラミックス繊維を配列させ、配列させた状態の束状のセラミックス繊維の層と、シート状に成形したタングステン又はタングステン合金とを積層して、焼結に用いる混合体としてもよい。
【0027】
マトリックス金属となるタングステン又はタングステン合金は、箔状の金属として用いてもよい。箔状金属の厚さについては特に限定はないが、例えば、10~100μm程度とすることができる。タングステン又はタングステン合金を箔状の金属として用いる場合には、取り扱いが容易であり、製造工程が簡略化される。
【0028】
箔状のタングステン又はタングステン合金を用いる場合には、箔状のタングステン又はタングステン合金を、セラミックス繊維からなる繊維構造物との積層体、又は束状のセラミックス繊維を配列させた層との積層体とすることによって、焼結に用いる混合体とすることができる。箔状のタングステン又はタングステン合金を原料とする場合には、目的とする複合材料におけるセラミックス繊維の体積割合に応じて、セラミックス繊維構造物又は束状のセラミックス繊維を配列させた層に対する箔状のタングステン又はタングステン合金の枚数を適宜調整すればよい。
【0029】
尚、上記した粉末状のタングステン又はタングステン合金を原料とする場合及び箔状のタングステン又はタングステン合金を原料とする場合のいずれの場合についても、目的とする複合材料の厚さに応じて、タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属層とセラミックス繊維からなる層をそれぞれ2層以上積層してもよい。この場合には、セラミックス繊維の配向する方向は、層毎に異なる方向としてもよく、これにより、強度をより向上させることも可能である。
【0030】
また、箔状のタングステン又はタングステン合金を用いる場合には、セラミックス繊維との接着性を向上させるために、粉末状のタングステン又はタングステン合金をそのまま、又はスラリー状として、セラミックス繊維からなる繊維構造物又は束状のセラミックス繊維を配列させた層に塗布し、これを箔状のタングステン又はタングステン合金と積層してもよい。
【0031】
図1は、本発明の複合材料の製造方法を模式的に示す図面である。この図面では、先ず、セラミックス繊維からなる繊維構造物と、シート状のマトリックス金属を積層し、更に、セラミックス繊維の配向を変化させてセラミックス繊維とマトリックス金属を積層し、この積層体を焼結させることによって、セラミックス繊維とマトリックス金属が積層した状態の複合材料を得ている。
【0032】
セラミックス繊維の使用量については、特に限定的ではないが、目的とする十分な破壊強度を付与でき、且つ、マトリックスとなるタングステン又はタングステン合金の特性を阻害しない範囲とすればよく、複合材料全体を基準として、セラミックス繊維の体積割合を20~80%程度とすることが好ましく、30~50%程度とすることがより好ましい。
【0033】
更に、上記した焼結前の混合体には、必要に応じて、焼結助剤として、Ni、Pd等を添加してもよい。焼結助剤は、例えば、粉末状金属を含むスラリーに添加すればよい。焼結助剤の添加量は、例えば、原料とするタングステン又はタングステン合金100重量部に対して、0.1~0.5重量部程度とすればよい。焼結助剤を添加することによって、焼結温度が低い場合であっても、十分な破壊強度を付与することが可能となる。
【0034】
上記した方法でタングステン又はタングステン合金とセラミックス繊維とからなる混合体を作製した後、この混合体を加圧下で焼結させることによって、目的とするセラミックス繊維強化タングステン複合材料を得ることができる。
【0035】
焼結温度は、通常、1000℃程度以上とすればよいが、十分な破壊強度を付与するためには、1200℃程度以上とすることが好ましい。特に、粉末状金属を原料とする場合には、1300℃程度以上とすることが好ましい。焼結助剤を添加した場合には、例えば、1200℃程度の焼結温度であっても、十分な破壊強度を付与することができる。焼結温度の上限については特に限定はなく、使用するセラミックス繊維の種類に応じて、セラミックス繊維の変質が生じない温度とすればよく、通常、2000℃程度までとすればよい。
【0036】
焼結時の圧力については、特に限定的ではなく、圧力が高い程、短時間で十分な強度を付与できる。通常、5MPa程度以上の圧力とすればよく、特に、5~20MPa程度の圧力とすることが好ましい。
【0037】
焼結時の雰囲気については、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
【0038】
焼結時間は、通常、30分~2時間程度とすればよい。
【0039】
(4)セラミックス繊維強化タングステン複合材料
上記した方法によって、本発明のセラミックス繊維強化タングステン複合材料を得ることができる。該複合材料は、タングステン又はタングステン合金をマトリックス金属として、該マトリックス金属中に、セラミックス繊維が配置されたものである。該複合材料の構造は、マトリックス金属原料として、粉末状金属を用い、セラミックス繊維として、編物、織物などの繊維構造物を用いた場合には、タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属からなる層と繊維構造物が積層した状態となり、タングステン又はタングステン合金の一部が、セラミックス繊維間に浸透した状態となる。また、マトリックス金属原料として、粉末状金属を用い、セラミックス繊維として、束状のセラミックス繊維を用いた場合には、タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属中にセラミックス繊維の束が埋め込まれた状態となる。また、箔状のタングステン又はタングステン合金を用いた場合には、タングステン又はタングステン合金とセラミックス繊維とが積層した状態となる。
【0040】
尚、本発明の複合材料は、セラミックス繊維の配置状態に応じて、マトリックス金属部にセラミックス繊維が配置された強度を強化した部分の他に、セラミックス繊維が配置されていない非強化部分が存在してもよい。
【0041】
セラミックス繊維の含有量は、複合材料全体を基準として、20~80体積%程度であり、十分な破壊靭性を付与する点では、30~50体積%程度であることが好ましい。
【0042】
本発明の複合材料は、上記した通り、タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属中にセラミックス繊維が配置されたものである。図2の右図は、この様な構造の複合材料について、亀裂の進行状態を模式的に示す図面である。この様な構造を有する複合材料では、該複合材料に微小な亀裂が生じた場合には、セラミックス繊維に達した亀裂は、セラミックス繊維とマトリックス金属間の相対的に弱い界面において亀裂が偏向し、更に、剥離した界面においてセラミックス繊維とマトリックス金属との間の摩擦力により荷重を担うことができる。その結果、図2の左図に示すように、脆性破壊挙動ではなく、延性に類似した特性、いわゆる擬延性を示して、高い破壊靭性値を有するものとなる。このため、本発明の複合材料は、中性子照射環境下や再結晶温度を超えるような過酷な条件下においてマトリックスのタングステン自身が脆化した状態でも、高い破壊強度を有する耐久性に優れた材料となる。
【0043】
更に、セラミックス繊維を含むタングステン複合材料は、セラミックス繊維の熱膨張係数がタングステンに近いためには、熱負荷時に界面に生じる応力が非常に小さく、しかもセラミックス繊維自体が高温強度特性に優れていることにより、高い高温強度を有するものとなる。また、セラミックス繊維は、タングステンと比較して低放射化特性に優れ、軽量であるため、タングステン単体からなる材料と比較すると、放射能の低減及び軽量化の点においても有利である。レアメタルであるタングステンの削減にも寄与することができる。
【発明の効果】
【0044】
以上の通り、本発明の複合材料は、タングステン又はタングステン合金からなるマトリックス金属中にセラミックス繊維を配置した構造を有するものであり、タングステン又はタングステン合金単体からなる材料と比較すると、タングステン又はタングステン合金が劣化する高温や中性子照射環境下においても、繊維の引き抜けにより高い破壊強度を有する耐久性に優れた材料である。
【0045】
このため、本発明の複合材料は、タングステンの有する高融点、耐スパッタリング特性などの優れた特性を有効に利用して、核融合炉におけるダイバータ、第一壁材料等を含む各種の用途において、信頼性の高い材料として有効に利用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の複合材料の製造方法を模式的に示す図面。
【図2】右図は本発明複合材料の亀裂の進行状態を模式的に示す図面、左図は本発明複合材料のひずみ・応力曲線の例を示すグラフ。
【図3】実施例1で得られた複合材料の断面の走査型電子顕微鏡写真。
【図4】実施例1で得られた複合材料の引張応力 - ひずみ曲線。
【図5】実施例1で得られた複合材料の引張試験後の破断面の状態を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図6】実施例2で得られた複合材料の引張応力 - ひずみ曲線。
【図7】実施例3で得られた複合材料の引張応力 - ひずみ曲線。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。

【0048】
実施例1
セラミックス繊維として、1バンドル当たり1600本の直径約7.5μmの炭化ケイ素連続繊維(商標名:Tyranno-SA繊維、宇部興産製)を一方向に束ねてシート状にしたものを用い、黒鉛モールドの中に平均粒子径5μmのタングステン粉末を敷き詰めた上に、このシート状炭化ケイ素連続繊維を重ねて入れ、この方法でタングステン粉末とシート状炭化ケイ素連続繊維層が5層になるように積層した。この積層体に20MPaの圧力を付与し、高純度アルゴン雰囲気下で焼結温度1500℃で1時間加熱して、セラミックス繊維強化タングステン複合材料を作製した。この複合材料では炭化ケイ素繊維の体積率は約40%であった。

【0049】
得られた複合材料の断面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図3から該複合材料は、タングステン粉末が繊維束への浸透が少なく、タングステンとシート状炭化ケイ素繊維が積層した構造であることが確認できる。

【0050】
この複合材料について、長さ22 mm、幅4 mm、厚さ2 mmの直方体形状に加工して、引張試験により強度評価を行った。試験片サイズは2 × 4 × 40 mm、ゲージ長さ20 mmの直線形状面負荷型試験片を用いてクロスヘッド速度0.5 mm / min、室温で実施した。

【0051】
図4に本試験片についての引張応力 - ひずみ曲線を示す。引張試験は25 MPa、50 MPa、75 MPaにおいて応力の除負荷 - 再負荷を行う繰り返し除負荷試験で評価した。

【0052】
図4の引張応力 - ひずみ曲線から、実施例1で得られた複合材料は、脆性破壊挙動ではなく、延性に類似した特性(擬延性)を示すことが確認できる。

【0053】
図5は、実施例1で得た複合材料について、引張試験後の破断面の状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。図5から、破断面において、マトリックスからの亀裂が直線的に繊維を断裂することなく繊維表面で向きを変え、繊維が引き抜かれた状態であることが確認できる。この結果からも、亀裂がマトリックス金属と繊維の界面に沿って進行することによって、擬延性による破壊挙動が生じたことと判断できる。

【0054】
実施例2
マトリックス金属の原料として、平均粒径0.6μmのタングステン粉末を用い、セラミックス繊維として、炭素による厚さ約500nmの表面被覆を有する1バンドル当たり1600本の直径約7.5μmの炭化ケイ素連続繊維(商標名:Tyranno-SA繊維、宇部興産製)を一方向に束ねてシート状にしたものを用い、焼結温度を1300℃又は1700℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法でセラミックス繊維強化タングステン複合材料を作製した。この複合材料についても、炭化ケイ素繊維の体積率は約40%であった。

【0055】
得られた複合材料について、実施例1と同様の方法であるが、応力の除負荷 - 再負荷を行う繰り返し除負荷試験ではなく単一引張試験で測定した引張応力・ひずみ曲線を図6に示す。図6の(a)は、焼結温度を1300℃として得られたセラミックス繊維強化タングステン複合材料についての結果を示すグラフであり、図6の(b)は、焼結温度を1700℃として得られたセラミックス繊維強化タングステン複合材料についての結果を示すグラフである。図6から、実施例2で得られた複合材料についても、脆性破壊挙動ではなく、延性に類似した特性(擬延性)を示すことが確認できる。

【0056】
この複合材料については、特に、炭化ケイ素繊維の表面に炭素被覆が施されているために、界面相において亀裂に分岐・偏向が生じ易く、これが、擬延性挙動に寄与しているものと考えられる。

【0057】
実施例3
マトリックス金属の原料として、純度99.95%の厚さ50μmのタングステン箔を用いて、以下の方法でセラミックス繊維強化タングステン複合材料を作製した。

【0058】
セラミックス繊維としては、1バンドル当たり1600本の直径約7.5μmの炭化ケイ素連続繊維(商標名:Tyranno-SA繊維、宇部興産製)を一方向に束ねてシート状にしたものを用いた。このシート状炭化ケイ素連続繊維には、タングステン箔との接着性を増すために、40重量%の固形分量となるように平均粒径5μmのタングステン粉末を分散媒中(エタノール)に分散させてスラリーとしたものを塗布した。

【0059】
黒鉛モールドの中に、このシート状炭化ケイ素連続繊維とタングステン箔を重ねて入れ、この方法でタングステン箔とシート状炭化ケイ素連続繊維層が6層になるように積層した。この積層体に20MPaの圧力を付与し、高純度アルゴン雰囲気下で焼結温度1500℃で1時間加熱して、セラミックス繊維強化タングステン複合材料を作製した。この複合材料では炭化ケイ素繊維の体積率は約30%であった。得られた複合材料について、実施例2と同様の方法で測定した引張応力・ひずみ曲線を図7に示す。図7から、実施例3で得られた複合材料についても、脆性破壊挙動ではなく、延性に類似した特性(擬延性)を示すことが確認でき、タングステン粉末を用いた実施例1及び2と同等かそれ以上の強度を得ることが確認できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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