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明細書 :脳機能計測装置及び計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6089568号 (P6089568)
公開番号 特開2014-079387 (P2014-079387A)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
公開日 平成26年5月8日(2014.5.8)
発明の名称または考案の名称 脳機能計測装置及び計測方法
国際特許分類 A61B   5/0476      (2006.01)
A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
A61B   5/0492      (2006.01)
A61B  10/00        (2006.01)
FI A61B 5/04 320B
A61B 5/04 300J
A61B 10/00 E
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2012-229419 (P2012-229419)
出願日 平成24年10月17日(2012.10.17)
審査請求日 平成27年9月11日(2015.9.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】徳田 崇
【氏名】太田 淳
【氏名】笹川 清隆
【氏名】野田 俊彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】右▲高▼ 孝幸
参考文献・文献 国際公開第2010/038393(WO,A1)
米国特許出願公開第2004/0006264(US,A1)
特表2007-524463(JP,A)
調査した分野 A61B 5/04-5/053
特許請求の範囲 【請求項1】
各種の実験動物やヒトを含む被検体の脳機能に関連した情報を収集するための脳機能計測装置であって、
a)被検体の頭蓋骨又は該頭蓋骨の一部に代えて被検体に装着される人工頭蓋骨に穿孔された貫通孔に挿設され、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出してなる複数の電極と、
b)前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に着脱可能に固定されるユニットであり、該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記複数の電極の基部の位置に対応してそれぞれ設けられ、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに前記複数の電極の基部とそれぞれ接触する複数のコンタクト部と、該コンタクト部を介して前記電極から得られた電気信号又は該コンタクト部を介して該電極へ与える電気信号を、無線で当該被検体の頭皮の外側に送信する又は外側から受信する信号中継部と、を含む頭蓋上ユニットと、
c)当該被検体の頭皮の外側に設けられ、前記頭蓋上ユニットの信号中継部から無線で送出される信号を受信する又は該信号中継部に無線で信号を送信する体外ユニットと、
を備えることを特徴とする脳機能計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脳機能計測装置であって、
検体の頭蓋骨又は人工頭蓋骨に穿孔された貫通孔に挿設され、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出してなる複数の導光体、をさらに備え、
前記頭蓋上ユニットは、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記導光体の基部と光学的に結合され光学結合部と、該光学結合部及び前記導光体を通して脳に光信号を与える発光部と、前記導光体及び前記光学結合部を経て得られた光信号を受光して電気信号に変換する受光部と、をさらに含むことを特徴とする脳機能計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脳機能計測装置であって、
前記頭蓋上ユニットのコンタクト部及び/又は光学結合部は、当該ユニットの筐体の一面に2次元的に配置されてなることを特徴とする脳機能計測装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の脳機能計測装置であって、
前記頭蓋上ユニットは、被検体の頭蓋骨又は該被検体に装着される人工頭蓋骨の外側に形成された凹部に嵌着されることを特徴とする脳機能測装置。
【請求項5】
各種の実験動物である被検体の脳機能に関連した情報を収集する脳機能計測方法であって、
a)被検体の頭蓋骨又は該頭蓋骨の一部に代えて被検体に装着される人工頭蓋骨に複数の貫通孔を穿孔し、各貫通孔にそれぞれ、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出するように複数の電極を挿設し、
b)さらに、前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記複数の電極の基部の位置に対応してそれぞれ設けられ、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記複数の電極の基部とそれぞれ接触するコンタクト部と、該コンタクト部を介して前記電極から得られた電気信号又は該コンタクト部を介して該電極へ与える電気信号を、無線で当該被検体の頭皮の外側に送信する又は外側から受信する信号中継部と、を含む頭蓋上ユニットを、前記コンタクト部が前記複数の電極の基部とそれぞれ接触するように、前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に着脱可能に固定した上で、
被検体の脳又は脳を被覆する膜に前記先端部がそれぞれ接触した前記電極で得られる電気信号を、該電極の基部に接触した前記コンタクト部を介して前記頭蓋上ユニットの信号中継部へと送り、該信号中継部において無線で送出される信号を被検体の体外に設けられた体外ユニットにより受信することにより脳機能関連情報を取得するようにしたことを特徴とする脳機能計測方法。
【請求項6】
請求項5に記載の脳機能計測方法であって、
検体の頭蓋骨又は人工頭蓋骨に穿孔された貫通孔に、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出するように複数の導光体を挿設し、
前記コンタクト部及び前記信号中継部に加えて、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記導光体の基部と光学的に結合され光学結合部と、該光学結合部及び前記導光体を通して脳に光信号を与える発光部と、前記導光体及び前記光学結合部を経て得られた光信号を受光して電気信号に変換する受光部と、をさらに含む前記頭蓋上ユニットにより、脳に対する光信号の刺激を与える、及び/又は、脳から光学情報を収集するようにしたことを特徴とする脳機能計測方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の脳機能計測方法であって、
被検体の頭蓋骨又は該被検体に装着される人工頭蓋骨の外側に、前記頭蓋上ユニットの筐体外形形状に応じた凹部を形成し、該凹部に前記頭蓋上ユニットを嵌着するようにしたことを特徴とする脳機能計測方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の脳機能計測方法であって、
被検体の頭蓋骨又は該被検体に装着される人工頭蓋骨の外側に前記頭蓋上ユニットを複数固定することで、脳機能関連情報を収集可能な範囲を拡大するようにしたことを特徴とする脳機能計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の実験動物や人間(ヒト)などの被検体の様々な脳活動や脳機能を反映した脳機能関連情報を収集するための脳機能計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の脳科学や医療用計測技術の進展は目覚ましく、脳機能関連情報を収集するための各種のセンシングデバイスや新しい脳機能イメージング技術が実現されている。脳機能関連情報計測用のデバイスは、大別して侵襲型と非侵襲型とに区分される。侵襲型とは電極などを直接的に脳に接触させるために、被検体の頭皮や頭蓋骨の切開など、何らかの外科的手術をも伴うものである。これに対し、非侵襲型とは被検体の頭部の外側から間接的に(つまり頭皮や頭蓋骨などを通して)脳にアクセスし、何らかの脳機能関連情報を取得するものである。
【0003】
非侵襲型脳機能計測としては、f-MRI(functional magnetic resonance imaging) や光トポグラフィなどの優れた計測技術が開発され、診断や研究の分野で大きな成果を挙げている。しかしながら、こうした計測はあくまでも間接的な計測であるという制約があるために、分解能や感度などの性能を高めるのが難しい。また、医療施設に備えられた非可搬型である大型の装置により計測を行うので、通常の活動を行っている状態の被検体に対し長時間に亘り計測を行うことはできない。そのため、高精度、高分解能の脳機能関連情報を得るため、或いは、通常の活動を行っている状態の被検体の脳機能関連情報を或る程度長期間に亘り取得するためには、少なくとも装置の一部を被検体の頭部に装着した侵襲型脳計測が必要である。
【0004】
従来の侵襲型脳機能計測デバイスとしては、大別して、脳表型計測を行うものと脳刺入型計測を行うものとがある。後者の脳刺入型のデバイスは文字通り、針状電極を脳内に刺入して脳内の比較的深い部分の電気信号を取得可能としたものであり、例えば米国ミシガン大学で開発されたいわゆるミシガン電極や、米国ユタ大学で開発されたいわゆるユタ電極(非特許文献1参照)といったものが古くから報告されている。こうした電極は、針状電極を高密度で配置した剣山状の構造をとることで、或る程度の広い範囲に亘る脳内の情報を収集することができる。しかしながら、脳刺入型は脳を傷付けるために脳に対するダメージが大きい。また、脳の免疫反応等により電極性能の経時劣化があるため、長期間に亘り安定的な計測を行うことは難しい。
【0005】
一方、前者の脳表型デバイスとしてはいわゆるECoG電極と呼ばれるものが知られている。例えば、我が国において、てんかんなどの臨床治療用として認可されているユニークメディカル社の頭蓋内電極がある(非特許文献2参照)。また、ECoG電極を利用した長期間の計測技術としては非特許文献3に記載のものがある。こうした脳表型デバイスは脳刺入型と比べると空間分解能は劣るものの、脳に与えるダメージが少なく性能の経時劣化も小さくて済む。また、広範囲の計測にも向いている。こうしたことから、被検体の自由な活動を阻害せずに、比較的長期間に亘り安定した脳機能関連情報を取得するには、脳表型計測が有利である。
【0006】
上述したように被検体の自由な活動を阻害することなく比較的長期間計測を継続するには、被検体の体内と外部との接続は無線方式があることが望ましい。こうした観点から、本願発明者らは特許文献1において、脳内に刺入される電極が一体化された体内装着部で得られた電気信号を体外計測部に無線で送信する脳内情報計測装置を提案している。該文献では、故障が起こりにくく低コストな構成として体内装着部に能動的回路を有さないパッシブ型も提案しているが、高度な計測を行うためには、CMOS集積回路などの電気回路を体内装着部に内蔵したアクティブ型の構成とすることが必要になる。しかしながら、そうすると、故障が起こり易くなるし、また機能向上のためにCMOS集積回路などを交換する必要性が生じることもある。
【0007】
特許文献1に記載の構成において、故障したり機能が古くなったりした体内装着部を交換する必要が生じた場合、頭蓋骨を切開する必要はないものの、頭蓋骨の貫通孔に挿通され脳内に刺入されている電極を抜かなければならない。そうなると、やはり被検体に対して大きな負担を与えることになり、感染症などのリスクも高くなる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開WO2010/038393号
【0009】

【非特許文献1】クレイグ(Craig T. Nordhausen)ほか2名、「オプティマイジング・レコーディング・ケイパビリティーズ・オブ・ザ・ユタ・イントラコーティカル・エレクトロード・アレイ(Optimaizing recordiong capabilities of the Utah Intracortical Electrode Array)」、
【非特許文献2】「頭蓋内電極」、[online]、株式会社ユニークメディカル、[平成24年9月24日検索]、インターネット<URL http://www.mmjp.or.jp/unique-medical/newuzncatNo1018b.pdf>
【非特許文献3】「長期安定性を誇るブレインマシンインターフェイス(BMI)技術を確立」、独立行政法人理化学研究所、2010年4月6日、[平成24年9月24日検索]、インターネット<URL: http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2010/100406/image/100406.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その主な目的は、装着に大掛かりな外科的手術を必要とせず、長期間使用する場合でも被検体への負担や感染症のリスクの少ない簡単な手術で装置のメンテナンスが可能であり、被検体の自由な活動を妨げず長期間に亘り安定的な脳機能関連情報を収集することができる脳機能計測装置及び計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために成された本発明は、各種の実験動物やヒトを含む被検体の脳機能に関連した情報を収集するための脳機能計測装置であって、
a)被検体の頭蓋骨又は該頭蓋骨の一部に代えて被検体に装着される人工頭蓋骨に穿孔された貫通孔に挿設され、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出してなる複数の電極と、
b)前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に着脱可能に固定されるユニットであり、該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記複数の電極の基部の位置に対応してそれぞれ設けられ、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに前記複数の電極の基部とそれぞれ接触する複数のコンタクト部と、該コンタクト部を介して前記電極から得られた電気信号又は該コンタクト部を介して該電極へ与える電気信号を、無線で当該被検体の頭皮の外側に送信する又は外側から受信する信号中継部と、を含む頭蓋上ユニットと、
c)当該被検体の頭皮の外側に設けられ、前記頭蓋上ユニットの信号中継部から無線で送出される信号を受信する又は該信号中継部に無線で信号を送信する体外ユニットと、
を備えることを特徴としている。

【0012】
また、本発明に係る脳機能計測方法は、上述の脳機能計測装置を用い、各種の実験動物である被検体の脳機能に関連した情報を収集する脳機能計測方法であって、
a)被検体の頭蓋骨又は該頭蓋骨の一部に代えて被検体に装着される人工頭蓋骨に複数の貫通孔を穿孔し、各貫通孔にそれぞれ、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出するように複数の電極を挿設し、
b)さらに、前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記複数の電極の基部の位置に対応してそれぞれ設けられ、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記複数の電極の基部とそれぞれ接触するコンタクト部と、該コンタクト部を介して前記電極から得られた電気信号又は該コンタクト部を介して該電極へ与える電気信号を、無線で当該被検体の頭皮の外側に送信する又は外側から受信する信号中継部と、を含む頭蓋上ユニットを、前記コンタクト部が前記複数の電極の基部とそれぞれ接触するように、前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に着脱可能に固定した上で、
被検体の脳又は脳を被覆する膜に前記先端部がそれぞれ接触した前記電極で得られる電気信号を、該電極の基部に接触した前記コンタクト部を介して前記頭蓋上ユニットの信号中継部へと送り、該信号中継部において無線で送出される信号を被検体の体外に設けられた体外ユニットにより受信することにより脳機能関連情報を取得するようにしたことを特徴としている。

【0013】
本発明に係る脳機能計測装置及び計測方法では、その先端部が脳硬膜及びくも膜を貫通して脳に直接的に接触する(ただし、脳表面に張り付いている脳軟膜は貫通しない場合、脳軟膜を貫通して脳本体に刺入される場合、も含む)又は脳硬膜を貫通せずに脳に間接的に接触する導電性の電極と、該電極で得られた電気信号を無線で当該被検体の頭皮の外側に送信したり逆に外側から到来した制御信号などを受信したりする機能を有する頭蓋上ユニットとを、完全に別体とし、頭蓋上ユニットが備えるコンタクト部と、各電極の基部との間で、それぞれの電気的接触を確保する。
【0014】
複数の電極は、典型的には能動的な機能を持たない略細長形状の金属等の導電体からなる単一部材、又は導電体を基体とし、先端部や基部など周囲との間の導電性が要求される部位以外については基体の周囲を絶縁体で被覆した単一部材であり、頭蓋骨又は人工頭蓋骨にほぼ半永久的に固着される。電極の導電体は耐腐食性を有する安定的な金属が好ましく、例えばプラチナなどが好適である。また、頭蓋骨又は人工頭蓋骨に設けられた貫通孔は電極が挿通された状態で液封される、つまりは、貫通孔の内壁面と電極の外周面との間隙を通した液体の流通が充分に阻止されることが望ましい。他方、能動的機能を実現する電気回路等を含む頭蓋上ユニットは、頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に配置され、頭蓋骨又は人工頭蓋骨に対し着脱可能で、且つ電極とも単に接しているだけであるので、取り外しが容易である。
【0015】
頭蓋上ユニットは電気回路等を内蔵しているため、比較的故障が起き易く、またバッテリを内蔵している場合にはバッテリ交換(又は本体自体の交換)も必要になるが、上述した構成であるために、被検体の頭皮さえ切開すれば簡単に取り外したり交換したりすることができる。一方、電極はほぼ半永久的に使用可能であるので、長期間に亘り脳機能関連情報を計測する場合でも、その期間中に被検体の頭皮を切開する外科的手術さえ行えばよく、被検体に大きな負担となり感染症等のリスクも高い頭蓋骨を切開したり穿孔したりする外科的手術を回避することができる。なお、上述したように電極の液封を充分にしておくことで、仮に頭蓋上ユニットが故障して有害な液状物質が該ユニットから漏出したとしても、そうした液状物質が頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側の脳にまで到達することを防止することができる。
【0016】
また本発明に係る脳機能計測装置及び計測方法では、脳波などの電気的計測のみならず、光トポグラフィ(NIRS計測)、IOS計測、蛍光イメージング計測などの光学的計測を行えるようにすることが好ましい。
【0017】
そこで、本発明に係る脳機能計測装置は、好ましくは、前記複数の電極と同様に、被検体の頭蓋骨又は人工頭蓋骨に穿孔された貫通孔に挿設され、先端部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の内側に露出して脳又は脳を被覆する膜に接触する一方、基部が前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出してなる複数の導光体、をさらに備え、
前記頭蓋上ユニットは、当該ユニットが前記頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に装着されたときに該頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側に露出している前記導光体の基部と光学的に結合され光学結合部と、該光学結合部及び前記導光体を通して脳に光信号を与える発光部と、前記導光体及び前記光学結合部を経て得られた光信号を受光して電気信号に変換する受光部と、をさらに含む構成とするとよい。

【0018】
即ち、頭蓋骨又は人工頭蓋骨を貫通するように設けられた導光体は、頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側と内側との間の光学窓の機能を果たし、例えば脳に照射した近赤外光に対し、脳表面近くで反射、散乱又は通過した光を効率的に捉えることができる。また、頭蓋上ユニットに内蔵したLEDなどの発光部からごく短距離の導光体を通して脳に光を照射することができるので、脳に対する強い光刺激を与えることができる。
【0019】
こうした構成によれば、電気的情報のみならず、光学的情報も脳から取り出すことができる。さらにまた、逆に電極を利用して脳に電気的刺激を加えたり、導光体を通して脳に光学的刺激を加えたりすることができる。これを組み合わせることにより、光学的刺激を加えたときの脳波の変化などを電気的情報として取得したり、反対に、電気的刺激を加えたときの血流の変化などを光学的情報として取得したりすることもできる。
【0020】
また本発明に係る脳機能計測装置及び計測方法においては、脳の所定範囲に対する計測を行う場合に、適宜の密度で以て頭蓋骨又は人工頭蓋骨に電極や導光体を配置する必要があるが、頭蓋上ユニットのコンタクト部及び/又は光学結合部も当該ユニットの筐体の一面に2次元的に配置するようにし、1個の頭蓋上ユニットで適宜の2次元範囲内の電極や導光体との結合を行うようにするとよい。
【0021】
また、頭蓋骨又は人工頭蓋骨への頭蓋上ユニットの固定方法は脱着可能であれば特に問わないが、該ユニット自体をネジなどの固定用部材を用いて取り付けるのは煩わしく、また固定用部材の取付忘れや脱落などのおそれもある。そこで、本発明に係る脳機能計測装置及び計測方法では、被検体の頭蓋骨又は該被検体に装着される人工頭蓋骨の外側に、前記頭蓋上ユニットの筐体外形形状に応じた凹部を形成し、該凹部に頭蓋上ユニットを嵌着するとよい。
【0022】
具体的には、頭蓋骨又は人工頭蓋骨の外側の一部をその強度に問題がない程度に切削することで頭蓋上ユニットの筐体外形形状に応じた凹部を形成するとよい。或いは、被検体の頭蓋骨又は該被検体に装着される人工頭蓋骨の外側に、頭蓋上ユニットの筐体外形形状に応じた凹部を形成できるような枠部材を固定してもよい。いずれにしても、凹部に頭蓋上ユニットを嵌め込むことで該ユニットを取り付けることができ、逆に、凹部に嵌合されている頭蓋上ユニットを引き剥がすことで該ユニットを取り外すことができる。したがって、頭蓋上ユニットの交換や修理は容易である。
【0023】
なお、本発明に係る脳機能計測方法において、脳の広い2次元範囲に亘る計測を行いたい場合には、被検体の頭蓋骨又は該被検体に装着される人工頭蓋骨の外側に頭蓋上ユニットを複数固定するとよい。特に、頭蓋骨又は人工頭蓋骨に取り付ける複数の電極や導光体の配置やピッチを予め規格化し、それに合わせて頭蓋上ユニットの形状やサイズも規格化しておくことで、使用する頭蓋上ユニットの数を増やして計測対象の範囲の拡大に対応することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る脳機能計測装置及び計測方法によれば、次のような効果を達成することができる。
(1)長期間の使用の途中で交換や修理が必要となる可能性のある頭蓋上ユニットは被検体の頭蓋骨又は被検体に装着された人工頭蓋骨の外側に配置されており、しかも頭蓋骨や人工頭蓋骨を貫通している電極とは別体であるので、簡単な外科的手術によって頭蓋上ユニットを交換したり取り出したりすることができる。また、計測のために電極や導光体を被検体の頭蓋骨に装着する際にも、細長形状の電極や導光体が貫通可能な程度の細径の孔を頭蓋骨に穿設すればよいので、頭蓋骨を大きく切開するのに比べれば比較的簡単な外科的手術で済む。こうしたことから、長期に亘る計測の期間中にも、被検体に与える負担を軽減することができる。それにより、装着時における被検体の生体活動の円滑さを損ないにくく、計測の安定性、正確性が向上する。
【0025】
(2)被検体の頭蓋骨の内側には、電気配線や電気回路などのハイリスク因子が存在せず、そうしたリスク因子は頭蓋骨の外側に配設される。また、頭蓋骨や人工頭蓋骨を貫通する電極や導光体の液封を充分に行うことで、仮に頭蓋上ユニットに故障や破損が生じた場合でも、脳への直接的な影響を回避することができ、頭蓋上ユニットを交換するだけで計測を継続させることが可能となる。
【0026】
(3)頭蓋上ユニットと体外ユニットとの間では無線による信号伝送が行われるため、被検体の行動の自由度が高く、そうした自由な行動の下での有意義な計測が可能となる。
(4)脳の計測範囲を広げたい場合には、頭蓋骨又は人工頭蓋骨に取り付ける電極や導光体を増やすともに外側に設ける頭蓋上ユニットを増やせばよいので、拡張性、柔軟性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例である脳機能計測装置の基本構成を示す外観平面図。
【図2】本実施例の脳機能計測装置を実験動物等の被検体に装着した状態を示す概略断面図。
【図3】本実施例の脳機能計測装置における電極体の構造例を示す外観斜視図。
【図4】本実施例の脳機能計測装置における頭蓋上ユニット装着時の概略斜視図。
【図5】本実施例の脳機能計測装置における頭蓋上ユニットの回路ブロック構成図。
【図6】本実施例の脳機能計測装置における体外ユニットの回路ブロック構成図。
【図7】頭蓋骨への頭蓋上ユニットの取付構造の他の例を示す概略断面図。
【図8】頭蓋骨へ複数の頭蓋上ユニットを取り付ける場合の構造例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る脳機能測装置及び計測方法の一実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施例の脳機能計測装置の基本構成要素を示す外観斜視図、図2は本実施例の脳機能計測装置を実験動物等の被検体に装着した状態を示す概略断面図、図3は図1中の電極体の構造例を示す外観斜視図、図4は図1中の頭蓋上ユニット装着時の概略斜視図である。

【0029】
本実施例による脳機能計測装置は、図1(a)に示すように、細長い略円柱形状の軸部11の一端に先端部12、他端に基部13が設けられた複数本の電極体1と、導電性である複数のコンタクト部21が扁平形状の筐体の一面に配設され、後述する電気回路部22が内蔵された頭蓋上ユニット2Aと、任意の形状の体外ユニット3と、を基本構成要素とする。図1(b)に示すように、電極体1に類似した形状の、軸部41、先端部42、基部43を有する導光体4が使用される場合もあり、そのときには、複数のコンタクト部21の一部が光学結合部23に置き換えられた頭蓋上ユニット2Bが使用される。

【0030】
上記の基本構成要素のうち、電極体1及び導光体4は被検体100の頭蓋骨102(又は被検体100の頭蓋骨の一部に置換される人工頭蓋骨:なお、以下の説明では「頭蓋骨102」が明らかに人工頭蓋骨を含むことができる場合には、特に「人工頭蓋骨」と記載しない)を貫通するように設けられ、頭蓋上ユニット2A、2Bは被検体100の頭蓋骨102と頭皮101との間に配置され、体外ユニット3は被検体100の外部、つまり頭皮101のさらに外側、に配置される。

【0031】
電極体1は基本的にはその全体が金属等の導電体、好ましくは、腐食しにくく且つ長期間に亘り安定的である金属、例えばプラチナなどから成る。そして、図3(a)に示すように、先端部12は後述するように軸部11よりやや径が大きい程度の孔に挿通される際(つまりは外側から荷重を受けている際)には内方に窪み、該孔から出て外側からの荷重がない状態では外側に拡がるばね性を有した構造を有する。ただし、外側に露出している部分で導電性が必要であるのは、先端部12の下部及び基部13の上部だけであるので、図3(b)に示すように、こうした導電性が必要である部分を除いて導電体の周囲を絶縁性被膜14で被覆した構造としてもよい。このような構造によれば、脳において目的とする部位以外の信号を拾いにくくなり、信号のSN比向上に有利である。

【0032】
一方、導光体4は、石英ガラス等、長期間に亘り安定的に高い透明性が得られる材料からなる。また、導光体4は光ファイババンドルなどを用いてよい。また、先端部2や基部3をレンズ作用を有する構成とすることで、光の収集効率や集束性を高めるようにしてもよい。


【0033】
図2に示すように、電極体1はその軸部11が、被検体100の頭蓋骨(又は人工頭蓋骨)102を貫通して設けられた軸部11の外径よりも若干径が大きい程度の貫通孔に挿通され、先端部12は頭蓋骨(又は人工頭蓋骨)102の内側、基部13は頭蓋骨(又は人工頭蓋骨)102の外側に露出するように取り付けられる。図2の例では、先端部12は頭蓋骨102の内側に張り付いている脳硬膜103を貫通し、大脳皮質(厳密には脳軟膜)105を被覆しているくも膜104の表面に接しているが、先端部12は脳硬膜103を貫通することなく脳硬膜103の表面に接するようにしてもよい。或いは、先端部12がくも膜104及び脳軟膜を貫通し、大脳皮質105に刺入されるようにしてもよい。導光体4についても電極体1と同様である。また、上記のような電極体1及び導光体4を取り付ける際に、必要に応じて、人工硬膜や他の動物から採取した硬膜を利用してもよい。

【0034】
なお、図1~図3では、電極体1や導光体4の軸部11、41を直線形状としており、それによって頭蓋骨102上に露出している先端部13、43の直下が計測対象又は刺激対象の部位となっているが、軸部11、41は適宜屈曲した形状であってもよい。つまり、頭蓋骨102に穿設する貫通孔の形状を屈曲形状とし、その形状に沿って電極体1や導光体4を挿通するようにしてもよい。この場合、頭蓋骨102上に露出している先端部13、43の直下が計測対象又は刺激対象の部位とはならないから、逆に、頭蓋上ユニット2A、2Bを装着することが困難である頭蓋骨102上の部位の直下の計測や刺激を行いたい場合に有用である。

【0035】
また、被検体100が有する頭蓋骨102に電極体1や導光体4が取り付けられるのではなく、被検体100の頭蓋骨102の一部を置換するように該被検体100の頭部に装着される人工頭蓋骨に電極体1や導光体4が取り付けられるようにしてもよい。この場合、予め、つまりは人工頭蓋骨を被検体100の頭部に装着する前に、人工頭蓋骨に複数の電極体1や導光体4を取り付け、電極体1や導光体4が取り付けられた状態の人工頭蓋骨を外科的手術により被検体100の頭部に装着するようにしてもよいし、外科的手術により人工頭蓋骨を被検体100の頭部に装着したあとに該人工頭蓋骨に複数の電極体1や導光体4を取り付けるようにしてもよい。

【0036】
また、頭蓋骨102に穿設された貫通孔に電極体1や導光体4を挿設した状態で、電極体1や導光体4の外周面と貫通孔の内周面との間が液密状態であることが好ましい。そこで、例えば電極体1や導光体4を挿通する際に間に無害なシール材を充填する等の方法によって、液密性を確保するとよい。これにより、例えば後述するように頭蓋上ユニット2A、2Bが故障して有害な液体が該ユニット2A、2Bから漏出した場合でも、貫通孔と電極体1や導光体4との間の間隙を通して有害な液体な頭蓋骨102内側に浸入することを防止することができる。

【0037】
頭蓋上ユニット2A、2Bのコンタクト部21は、頭蓋骨102の外側に露出している複数の電極体1の基部13の位置に対応して2次元的に設けられ、また頭蓋上ユニット2Bの光学結合部23は、頭蓋骨102の外側に露出している複数の導光体4の基部43の位置に対応して2次元的に設けられている。したがって、図4に示すように、複数の電極体1が取り付けられている頭蓋骨102の外側の所定位置に頭蓋上ユニット2Aが取り付けられると、該頭蓋上ユニット2Aの各コンタクト部21は各電極体1の基部13にそれぞれ接触し、両者の間の電気的導通が確保される。また、複数の電極体1及び導光体4が取り付けられている頭蓋骨102の外側の所定位置に頭蓋上ユニット2Bが取り付けられると、該頭蓋上ユニット2Bの各コンタクト部21は各電極体1の基部13にそれぞれ接触して両者の間の電気的導通が確保されるとともに、各光学結合部23は各導光体4の基部43にそれぞれ密着し、両者の間の光学的結合、つまり光の相互伝搬が確保される。

【0038】
図2の例では、ネジ25で頭蓋骨102外側に保持部材24が固定され、この保持部材24により形成された保持空間に頭蓋上ユニット2A、2Bを嵌め込むことで該ユニット2A、2Bは脱着容易に固定されている。もちろん、頭蓋骨102への頭蓋上ユニット2A、2Bの取付方法はこれに限らない。

【0039】
例えば取り付けるべき頭蓋上ユニット2A、2Bの数が少ない場合には、図7(a)に示すように、該ユニット2A、2Bの筐体に一体に形成されたフランジ26のネジ孔に挿入したネジ27を頭蓋骨102に螺入することで、該ユニット2A、2Bを固定するようにしてもよい。

【0040】
或いは、図7(b)に示すように、頭蓋骨102の外面の一部を切削加工して形成した凹部(又は保持空間)110に頭蓋上ユニット2A、2Bを嵌め込むことで固定するようにしてもよい。もちろん、頭蓋骨や人工頭蓋骨を切削加工する際には、その強度を大きく損なうことがないようにする必要がある。特に、頭蓋骨又は人工頭蓋骨自体を固定方法によれば、ネジなどの別部材を用いる必要がないので、取付け・取外しが容易なだけでなく、ネジが被検体の体内で脱落して例えば頭皮などを損傷したり、或いはネジを被検体の体内に置き忘れる等の作業ミスが発生したりすることを防止できる。
いずれにしても、頭蓋上ユニット2A、2Bが頭蓋骨又は人工頭蓋骨上で安定的に保持されつつ、必要な場合には簡単に交換や取外しが容易であるような取付方法を採用することが好ましい。

【0041】
頭蓋上ユニット2A、2Bの筐体の平面形状が略六角形状で、図7(b)に示したように頭蓋骨102に形成された凹部110に頭蓋上ユニット2A、2Bを嵌め込んで取り付ける構成において、複数の頭蓋上ユニット2A、2Bを取り付けたい場合には、図8に示すように、略蜂の巣形状に凹部110を形成し、各凹部110にそれぞれ頭蓋上ユニット2A、2Bを嵌め込むようにするとよい。

【0042】
図5は頭蓋上ユニット2Bに内蔵されている電気回路部22の概略ブロック構成図、図6は体外ユニット3に内蔵されている電気回路部の概略ブロック構成図である。
頭蓋上ユニット2Bの電気回路部22は、内蔵されたアンテナ220と、アンテナ駆動部221と、変調部222と、復調部223と、電力供給部224と、制御部225と、信号処理部226と、ID記憶部227と、LED228と、光センサ229と、を含む。複数の頭蓋上ユニット2Bはそれぞれ固有の識別情報(ID)を有しており、その識別情報がID記憶部227に予め格納されている。

【0043】
なお、脳との間で光学的な刺激や情報のやり取りを行わない頭蓋上ユニット2Aの場合には、LED228、光センサ229を備えず、制御部225や信号処理部226がLED228の駆動制御や受光信号の処理などの機能を有さない点が異なるだけであり、それ以外の点は頭蓋上ユニット2Bと共通である。したがって、以下の説明の多くは、頭蓋上ユニット2Aにも適用可能である。

【0044】
また、体外ユニット3は、アンテナ31と、アンテナ駆動部32と、変調部33と、復調部34と、電力供給部35と、制御部36と、信号処理部37と、を備える。

【0045】
図2に示すように、電極体1、導光体4、及び頭蓋上ユニット2A、2Bが被検体100の内部に設置され、被検体100の外部で頭蓋上ユニット2A、2Bと通信可能な範囲に体外ユニット3が設置されている状態で、これら構成要素から成る脳機能計測装置は以下のような動作により、被検体100の脳の活動等を反映した脳機能関連情報を収集する。

【0046】
体外ユニット3において電力供給部35は、所定周波数の電磁波をアンテナ31から放射するように、アンテナ駆動部32を介してアンテナ31を駆動する。頭蓋上ユニット2A、2Bにおいて電力供給部224はアンテナ220を介して上記電磁波を受けて電力を生成し、これを回路各部に供給する。即ち、この例において頭蓋上ユニット2A、2Bはバッテリなどの電源を内蔵せず、外部からアンテナ220を介して受ける電磁波に基づいて必要な電力を生成する、いわゆるパッシブ型ICタグと同様の回路を有している。もちろん、頭蓋上ユニット2Bにバッテリを内蔵する構成としてもよい。

【0047】
体外ユニット3において、制御部36は例えば外部から与えられた指示に基づき、脳機能計測のための各種制御信号を生成する。この制御信号は変調部33で所定形式(アンテナ31、220を通した電波伝送に適した周波数帯域など)に変調され、アンテナ駆動部32を介してアンテナ31から送出される。頭蓋上ユニット2では、アンテナ220を介して上記信号を受信し、復調部223で復調を施すことで元の制御信号を抽出し、制御部225はこの制御信号に基づいて信号処理部226やID記憶部227などの動作を制御する。基本的には、ID記憶部227から読み出されたIDが変調部222により所定形式に変調され、アンテナ駆動部221を介してアンテナ220から送出される。

【0048】
上述したように被検体100の脳表面に接触する電極体1を通して脳に電気的刺激を与える場合には、制御部225から出力された刺激用の電流信号がコンタクト部21を経て電極体1に送られ、該電極体1の先端部12から脳に対して電流信号が流される。また、被検体100の脳表面に接触する導光体4を通して脳に光学的刺激を与える場合には、制御部225から出力された刺激用信号に応じてLED228が発光し、例えば近赤外光である発光光が光学結合部23を経て導光体4に送られ、該導光体4の先端部42から脳に対し近赤外光が照射される。

【0049】
一方、被検体100の脳表面に接触する1本の電極体1は、その接触部位付近の皮質フィールドポテンシャルや神経組織のアクションポテンシャルなどによる微弱な信号を拾う。この電気信号はコンタクト部21を経て頭蓋上ユニット2Bに入力される。また、被検体100の脳表面に接触する1本の導光体4は、例えば別の導光体4から上述したように照射された近赤外光に応じて脳表面や脳溝などで反射した光、散乱した光、或いは励起されることで放出された光を収集する。この光は導光体4中を案内され光学結合部23を経て、光センサ229に到達し、該光センサ229で光電変換されて受光強度に応じた電気信号が生成される。これら電気信号はいずれも信号処理部226で増幅され、必要に応じて周波数多重、時分割多重などの多重化が行われる。そして、変調部222により所定形式に変調され、アンテナ駆動部221を介してアンテナ220から送出される。

【0050】
体外ユニット3では、上記のように頭蓋上ユニット2のアンテナ220から送出され、被検体100の頭皮101を通過して到来する電波をアンテナ31で受信する。そして、この受信信号を復調部34で復調した後に信号処理部37で処理して、頭蓋上ユニット2B固有のIDや、各電極体1でそれぞれ得られた電気信号や各導光体4で収集された光信号に由来する電気信号を分離して取り出す。2次元的に配置された多数の電極体1でそれぞれ得られた電気信号は、脳の活動に関する重要な情報を含む。また、例えば、上述したように脳表面に照射された近赤外光に応じて、2次元的に配置された多数の導光体4でそれぞれ得られた反射光や散乱光は、脳内の血流などに関する重要な情報を含む。したがって、本実施例の脳機能計測装置によれば、脳の2次元的な所定範囲に亘る脳波等の電気的情報の収集と光トポグラフィなどの光学的情報の収集とを並行してリアルタイムで行うことができる。もちろん、光学的計測を行うことなく、電気的計測のみを行うようにしてもよい。

【0051】
以上のように、本実施例の脳機能計測装置では、被検体100の外部の体外ユニットと無線で信号のやり取りを行う頭蓋上ユニット2A、2Bは頭蓋骨102の外側に着脱容易に取り付けられ、この頭蓋上ユニット2A、2Bと少なくとも一部が脳に接触する電極体1や導光体4とは単に接触等により電気信号や光信号のやり取りが行われる構成となっている。上述したように頭蓋上ユニット2A、2Bには複雑な電気回路部22が内蔵されており、故障が起こったり、或いは機能が古くなって更新が必要になったりすることがよくある。こうした場合に、被検体100の頭皮101を切開しさえすれば、頭蓋上ユニット2A、2Bを容易に交換したり取り外したりすることができる。一方、頭蓋骨102や人工頭蓋骨に埋め込まれた電極体1や導光体4は殆ど半永久的に使用可能であるから、頭蓋骨102を切開するような外科的手術は基本的に必要なく、被検者に与える負担を最小限に抑えるとともに感染症のリスクを抑えて、長期間に亘り安定的な計測が可能である。

【0052】
なお、ここでは、頭蓋上ユニット2A、2Bと体外ユニット3とを一対一で設けていたが、1個の体外ユニット3が複数の頭蓋上ユニット2A、2Bと相互通信を行って、制御信号や計測データのやり取りを行う構成としてもよい。即ち、多点の計測を行う場合でも、体外ユニット3は少なくとも一つあればよい。

【0053】
また、複数の頭蓋上ユニット2A、2B同士で相互に通信が可能な構成としておき、複数の頭蓋上ユニット2A、2Bが連携した計測を行えるようにしてもよい。例えば、全ての頭蓋上ユニット2A、2Bで同時に計測を行うほか、脳全体をカバーするように配置した多数の頭蓋上ユニット2A、2Bを所定のパターンで時間をずらして計測を行うようなことも可能である。このように複数の頭蓋上ユニット2A、2Bをネットワーク化した計測を行うことにより、従来のデバイスでは達成し得ない複雑で高度な計測が可能となる。

【0054】
また、上記実施例は本発明の単なる一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、又は追加を行っても、本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1…電極体
11…軸部
12…先端部
13…基部
14…絶縁性被膜
100…被検体
101…頭皮
102…頭蓋骨
103…脳硬膜
104…くも膜
105…大脳皮質
110…凹部
2A、2B…頭蓋上ユニット
21…コンタクト部
22…電気回路部
220…アンテナ
221…アンテナ駆動部
222…変調部
223…復調部
224…電力供給部
225…制御部
226…信号処理部
227…ID記憶部
228…LED
229…光センサ
23…光学結合部
24…保持部材
25、27…ネジ
26…フランジ
3…体外ユニット
31…アンテナ
32…アンテナ駆動部
33…変調部
34…復調部
35…電力供給部
36…制御部
37…信号処理部
4…導光体
41…軸部
42…先端部
43…基部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7