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明細書 :微生物培養装置ならびにそれを利用した微生物分散培養方法および細胞外多糖類抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6108526号 (P6108526)
公開番号 特開2014-150784 (P2014-150784A)
登録日 平成29年3月17日(2017.3.17)
発行日 平成29年4月5日(2017.4.5)
公開日 平成26年8月25日(2014.8.25)
発明の名称または考案の名称 微生物培養装置ならびにそれを利用した微生物分散培養方法および細胞外多糖類抑制方法
国際特許分類 C12M   1/04        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
C02F   3/00        (2006.01)
FI C12M 1/04
C12N 1/00 C
C02F 3/00 G
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2013-025720 (P2013-025720)
出願日 平成25年2月13日(2013.2.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 国際微生物生態学会第14回大会講演要旨集(平成24年8月19日)国際微生物生態学会発行第20ページ(417B)に発表
特許法第30条第2項適用 平成24年8月21日ベラ センター(コペンハーゲン)において開催された国際微生物生態学会第14回大会で発表
特許法第30条第2項適用 日本微生物生態学会誌第27巻第2号(平成24年9月1日)日本微生物生態学会発行第72-74ページに発表
特許法第30条第2項適用 第28回日本微生物生態学会大会プログラム・講演要旨集(平成24年9月19日)第28回日本微生物生態学会大会委員会発行第97(S09-2)ページに発表
特許法第30条第2項適用 平成24年9月20日豊橋技術科学大学において開催された第28回日本生物生態学会大会で発表
特許法第30条第2項適用 第49回環境工学研究フォーラム講演集(平成24年11月28日)公益社団法人土木学会発行第46-47(N-16)ページに発表
特許法第30条第2項適用 平成24年11月29日京都大学百周年時計台記念館において開催された第49回環境工学研究フォーラムで発表
審査請求日 平成28年1月25日(2016.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 司
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】森井 文緒
参考文献・文献 特開平08-089232(JP,A)
特表2010-523789(JP,A)
特開2009-078223(JP,A)
伊藤司ほか, 「埋立地メタンを利用した温室効果ガス変換型の浸出水処理システムの開発K2137、K22100 平成22年度循環型社会形成推進科学研究費補助金総合研究報告書」, 2011年3月
調査した分野 C12M 1/00-3/00
C12N 1/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
微生物を液体培養するための培養槽と、
前記培養槽内に設置された、1つ以上の貫通孔を有する振動板と、
前記振動板に接続され、前記培養槽に該振動板を通じて気体を供給するための装置と、
前記振動板を振動させるための発振機と、
前記振動板を収容するための容器と、
を具備する微生物培養装置であって、
前記振動板は、培養槽内部側に突出する突部を有し、
前記貫通孔の培養槽内部側の孔径は、8~10μmであり、その孔数は126~1200個であることを特徴とする、
気体を微細気泡として通気しながら微生物を液体培養するための微生物培養装置。
【請求項2】
前記振動板が有する貫通孔は、培養槽内部側に向かって径が小さくなっている、請求項1に記載の微生物培養装置。
【請求項3】
前記振動板における1つ以上の貫通孔は、前記突部にのみ存在する、請求項1または2に記載の微生物培養装置。
【請求項4】
微生物を、請求項1~のいずれか1項に記載の微生物培養装置により培養することを特徴とする、微生物培養方法。
【請求項5】
微生物を、請求項1~のいずれか1項に記載の微生物培養装置により細胞が分散した状態で培養することを特徴とする、微生物分散培養方法。
【請求項6】
微生物を、請求項1~のいずれか1項に記載の微生物培養装置により細胞外多糖類の生成を抑制した状態で培養することを特徴とする、微生物の細胞外多糖類抑制方法。
【請求項7】
前記振動板を通じて培養槽内に供給される気体の流量は、0.5~3.0ml/分である、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記振動板から培養槽内に供給された微細気泡の気泡径は、100μm以下である、請求
のいずれか1項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物培養装置ならびにそれを利用した微生物の分散培養方法および微生物の細胞外多糖類抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物の液体や気体中での存在形態には、浮遊状態と付着状態があり、浮遊状態の中でも微生物同士が接着して集塊を形成した状態と、微生物細胞が単独で存在する分散状態がある。付着状態や浮遊して集塊を形成した状態は、多数の微生物の集合体であり、バイオフィルムともよばれる。
【0003】
微生物が環境ストレス等に晒されると、これに対して抵抗性を高めるために、細胞外の多糖類(細胞外マトリックスや細胞外ポリマーともいう)が分泌される。この多糖類が細胞同士を接着させ、集合体を形成させていると考えられている。この集合体を形成した状態は、単独で分散して存在する微生物細胞に比べて、薬剤や外的環境要因(ストレス)に対して抵抗性が高い状態であることが知られている。
【0004】
微生物が集合体を形成することにより、種々の問題が生じる。たとえば、微生物を液体中で培養する場合は、分散状態の微生物の方が、集合体を形成した状態の微生物よりも高い生産性や機能を得られることが知られており、よって、微生物が集合体を形成すると、微生物が生産する有用な物質の生産性が低下したり、微生物による汚濁物質等の分解の速度が低下したりする。また、病原菌の毒素には、微生物が集合体を形成した細胞密度が高い状態で生産されるものが多い。さらに、微生物が生成する多糖類様の物質は、水処理用の膜のファウリングを引き起こし膜の透過性能を低下させ、膜処理の運転コストや交換コストを押し上げている。
【0005】
また、微生物の制御や抑制を必要とする分野における微生物の存在形態の多くは、ストレスに対して抵抗性が高いことが知られた付着状態、集合体またはバイオフィルムであるため、微生物細胞の制御や抑制を難しくしている。微生物細胞表面の細胞外多糖類が少ない状態や微生物細胞が分散している状態を作り出すことにより、ストレス等の外的環境要因や薬剤に対する感受性が高まるため、薬剤等による殺菌が容易となる。
【0006】
特許文献1には、微生物を活性化して培養する方法として、微細気泡発生機を使用して発生させた微細気泡で微生物を処理する工程を含む微生物活性化工程が記載されている。しかし、従来は、微細気泡を発生させるには、旋回流で気体と液体を高速に混合させて発生させる方法(高速旋回流方式)や、気体を高速回転するプロペラ等でせん断して微細気泡化する方法(気液せん断方式)が主流であったため、これらの方法では、液体が微生物培養液の場合には微生物細胞に損傷を与えてしまうと考えられる。この他、微細気泡を発生させる方法には、気体を加圧して液体に溶解させたあとで圧力を解放する方法(圧力開放方式)や、液体中に超音波を与えてキャビテーションにより発生させる方法(超音波方式)があるが、これらの方法でも、液体が微生物培養液の場合には、微生物細胞に損傷を与えてしまうと考えられる。また、いずれの方法も液体そのものに高速流やせん断や圧力などの負荷を与える方法である。
【0007】
特許文献2には、旋回流やせん断力等によらない微細気泡発生装置が記載されており、当該微細気泡発生装置に使用される多数の貫通孔を有するノズルの孔形状、孔径を種々選択することによって、発生させる微細気泡の粒径を調整することが可能である旨の記載が
ある。しかし、当該形状等に関する具体的な記載はなく、特に、微生物培養に適する貫通孔を有する振動板の形状については記載されていない。そもそも特許文献2に記載の装置は、薬剤の調合や液体燃料への微細な粒径の空気の供給等に使用可能なものであって、微生物培養に適用することは想定されていない。すなわち、薬剤や燃料等の液体中に微細気泡発生が可能であっても、微生物培養液のように液体が水の場合には、水の表面張力が大きいために気泡が粗大化しやすく、装置を工夫しなければ微細気泡を発生させることができない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2007-075786号公報
【特許文献2】特開2009-078223号公報
【特許文献3】国際公開第2007/026872号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、微生物の細胞外多糖類を抑制すること、および微生物の細胞外多糖類を抑制することにより微生物の分散状態を維持して培養することにある。より具体的には、本発明の課題は、培養する微生物の細胞の全てまたは一部に対して微細な気泡を供給する際に、超音波や撹拌によるせん断力などの微生物の活性低下や殺菌につながるストレスを与えることなく微細な気泡を発生させ続けることにより、培養する微生物すべてを対数増殖期から定常期および死滅期に至るまで、細胞外多糖類の生成を抑制し、分散状態を維持したまま培養するための手段を提供することにある。また、本発明の課題は、空気、酸素、窒素、水素、メタン、二酸化炭素等のガスやそれらの混合ガスを極低流量で連続供給できる微生物培養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、微生物にストレスを与えずに培養でき、また、微生物培養用の液体中に空気等の気体を長期間効率的に連続供給できる微生物培養装置の研究を行った結果、従来は液体を噴霧する用途(医療用ネブライザーや加湿器等)に利用されていた振動板(特許文献3など)を、液体の噴霧化ではなく気体の微細化に用いるという、これまでの微細気泡発生方法とは全く異なる原理による、微生物培養装置を開発した。
【0011】
一般には小さい気泡は小さい孔から発生させられると考えられるが、ミクロンサイズの孔から水中に発生させられる気泡サイズの小ささはせいぜいミリメートルサイズの気泡までである。つまり、孔が小さいだけでは実際には表面張力のために、数十ミクロンの微細気泡を発生させることはできない。微細気泡を発生させるには、気体をちぎって放つ必要がある。本発明は、コンプレッサーあるいはガスボンベ等の装置からの気体を多孔板に通すときに、この多孔板を振動させることによって、気体を細かくちぎり、培養槽内に微細気泡化して送りだすことに成功したものである。さらに、培養液中に微細気泡を発生させるために適したものとなるように多孔板の構造を工夫して突部を有するものとし、また、周波数及び空気流量を最適化し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)微生物を液体培養するための培養槽と、
前記培養槽内に設置された、1つ以上の貫通孔を有する振動板と、
前記振動板に接続され、前記培養槽に該振動板を通じて気体を供給するための装置と、
前記振動板を振動させるための発振機と、を具備する微生物培養装置であって、
前記振動板は、培養槽内部側に突出する突部を有することを特徴とする、
気体を微細気泡として通気しながら微生物を液体培養するための微生物培養装置。
(2)前記振動板が有する貫通孔は、培養槽内部側に向かって径が小さくなっている、(1)に記載の微生物培養装置。
(3)前記振動板における1つ以上の貫通孔は、前記突部にのみ存在する、(1)または(2)に記載の微生物培養装置。
(4)前記振動板における貫通孔の培養槽内部側の孔径は、4~10μmである、(1)~(3)のいずれかに記載の微生物培養装置。
(5)前記振動板は複数の貫通孔を有し、その孔数は1~1200個である、(1)~(4)のいずれかに記載の微生物培養装置。
(6)微生物を、(1)~(5)のいずれかに記載の微生物培養装置により培養することを特徴とする、微生物培養方法。
(7)微生物を、(1)~(5)のいずれかに記載の微生物培養装置により細胞が分散した状態で培養することを特徴とする、微生物分散培養方法。
(8)微生物を、(1)~(5)のいずれかに記載の微生物培養装置により細胞外多糖類の生成を抑制した状態で培養することを特徴とする、微生物の細胞外多糖類抑制方法。
(9)前記振動板を通じて培養槽内に供給される気体の流量は、0.5~3 ml/分である、(6)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記振動板から培養槽内に供給された微細気泡の気泡径は、100μm以下である、(6)~(9)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明による振動板を用いた微生物培養装置を用いて、振動する振動板に気体を低流量で通気させると、直径100μm以下の微細な気泡が水中に静かに放出される。よって、従来のような撹拌によるせん断や超音波などのストレスを与えずに、微生物の分散状態を維持しながら培養することができる。このようにして培養された微生物は、細胞外の多糖類の分泌が少ないため、微生物が細胞外多糖類により接着して形成した集合体であるバイオフィルムの形成が抑制される。また、例えば、本発明の振動板を用いた微生物培養装置は、汚染物質の効率的分解、膜ファウリングの抑制、抗生物質などの有用物質の効率的な生産、より少ない薬剤での消毒や殺菌、ストレス耐性微生物の出現の抑制に利用することができるので極めて有用である。さらに、全ての細胞が分散状態になる微生物培養系は、化合物の効果や毒性を評価するためのシステムとして極めて有用である。さらにまた、バイオフィルムを理解し、制御するための対象系として極めて有用である。
【0014】
また、本発明に係る微生物培養装置によれば超純水中に平均径が50μmかそれ以下の微細気泡を発生させることができる。これは、水槽に使うような散気球が発する気泡の100分の1と小さい。本発明に係る微生物培養装置による平均径が50μmかそれ以下の微細気泡は液体中に長く滞留することができる。たとえば、図1のような円筒形の培養槽の下部から発生させた気泡には、培養槽の下部に留まる気泡と、ゆっくりと上昇する気泡がある。気泡の上昇に伴い上昇水流が形成され、同時に下降流も形成されるため、その下降流にのって、水面近くまで上昇した小さい気泡は再び培養槽深部まで戻ってくることができる。このため、酸素等の水に難溶解性の気体を水中に長く滞留させることができ、効率的に溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の微生物培養装置の一実施態様を示す図である。当該微生物培養装置は、微生物を液体培養するための培養槽1と、貫通孔を有する振動板2と、気体を供給するためのコンプレッサー3と、超音波振動を与えるための発振機4とを具備することが示されている。
【図2】本発明における振動板の一実施態様を示す。図2Aは、振動板の断面図(垂直方向)である。図中上部が培養槽へと開口している。図2Bは、振動板の上面図である。図2Cは、振動板に存在する貫通孔の断面図(垂直方向)である。
【図3】本発明の微生物培養装置における溶存酸素(DO)の制御性と送気流量を、散気球と比較したグラフである。
【図4】酸素移動効率および送気流量について、本発明の微生物培養装置を用いた培養、及び散気球による培養を比較したグラフである。
【図5】本発明の微生物培養装置により微細化された空気の気泡をシャーレにとり撮影した顕微鏡写真である。
【図6】振動板を通じて微細化され噴射された気泡の到達距離の増減について、凸部の孔の数が異なる振動板を、凸部の孔の数が350個の振動板と比較したグラフである。
【図7】本発明の微生物培養装置による大腸菌培養の最大濁度を、振とう培養と比較したグラフである。
【図8】本発明の微生物培養装置により大腸菌を培養した場合における、培養液中の残留有機物濃度を、振とう培養と比較したグラフである。
【図9】本発明の微生物培養装置による大腸菌培養における細胞外多糖類を生成している細胞の存在割合を、蛍光レクチン染色により、振とう培養、及び旋回流式微細気泡発生装置による培養と比較したグラフである。振とう培養、及び旋回流式微細気泡発生装置による培養では、分散した細胞における蛍光レクチン染色された細胞の存在割合を表す。
【図10】本発明の微生物培養装置による大腸菌培養における細胞外多糖類の生成を、蛍光染色により、振とう培養と比較した写真である。DAPI染色は細胞の核酸を染色しており、細胞が存在することを示す。レクチン染色は蛍光レクチンが細胞表面の細胞外多糖に結合することにより細胞外多糖類を分泌している細胞の存在を示す。
【図11】振とう培養により大腸菌を培養した場合に認められた細胞集塊の顕微鏡写真である。
【図12】本発明の微生物培養装置による大腸菌培養における細胞集塊の存在割合を、顕微鏡観察により、旋回流式微細気泡発生装置による培養、及び散気球による培養と比較したグラフである。
【図13】旋回流式微細気泡発生装置により大腸菌を培養した場合に認められた細胞集塊の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2は、本発明の一実施態様である。これらの図を説明することにより、本実施態様に係る微細気泡発生装置を説明する。
図1は、本発明の構成要素である振動板2を、培養槽1内の下端に設けた培養装置100の例の概略図である。

【0017】
本実施態様に係る微生物培養装置100は、微生物を液体培養するための培養槽1と、前記培養槽内の下端に突部を上(培養槽内部側)にして設置された、突部に1つ以上の貫通孔を有する振動板2と、前記振動板2の下側に接続され、前記培養槽1に該振動板2の貫通孔を通じて所定の気体を供給するためのコンプレッサー3と、前記振動板2に超音波振動を与えるための発振機4とを具備する。

【0018】
まず、図1について説明する。微生物培養に必要な所定の気体が、コンプレッサー3から、振動板2の貫通孔を通して培養槽1に供給される。このとき、所定の周波数振動が、発振機4から高周波電圧を印加された圧電振動素子から振動板2に与えられる。

【0019】
図2Aは、振動板2の断面図であり、ドーム状の突部8に複数の貫通孔6を有する。そして、培養槽1内の下端に、突部が上(培養槽内部)側に来るように設置される。そして図中下部はコンプレッサー3に繋がっている。

【0020】
図2Bは、振動板2を上方から見た上面図であり、当該図においてドーナツ状に見えるのは、発振機からの高周波電圧を受けて超音波振動を振動板に伝える圧電振動素子5であ
り、振動板の突部8は、ドーナツ状の中央部に位置する。このドーナツ状の圧電振動素子5が、発振機4からの高周波電圧の印加により振動すると、ドーナツ状圧電振動素子5の中央部に位置する振動板突部8も同様に振動する。そして、振動板に振動を与えることにより、コンプレッサー3から供給された気体は、振動板突部8の貫通孔6を通るときに細かくちぎられ、微細気泡7となって培養槽1に放出される。この微細気泡7が発生した培養槽1内で、微生物が培養される。

【0021】
振動板に超音波振動を伝える圧電振動素子としては、例えば、特許文献3に記載の圧電セラミックスを好適に使用できるが、発振機からの超音波を振動板に伝えることができるものであれば制限なく使用できる。

【0022】
本実施態様における上記微細気泡とは、平均径100μm以下のものであることが微生物の細胞外多糖類生成抑制の観点などから好ましく、平均径50μm以下であることがより好ましい。微細気泡の平均径の下限は、通常10μmである。

【0023】
微細気泡の大きさは、振動板の形状、及び振動板が有する貫通孔の形状、孔径及びピッチ間隔等を変更することにより、調整することが可能である。
振動板は、1枚で使用しても、2枚重ねて使用してもよく、2枚の振動板の間にスペーサーメッシュを挟んでもよい。2枚重ねの場合は、2枚とも突部を有しても、培養槽に近い側の振動板だけが突部を有するものでもよい。

【0024】
振動板に存在する貫通孔は、1つだけでもよいが複数であることが好ましい。複数の場合、振動板全体に存在しても、突部にのみ存在してもよく、また、貫通孔の配置は、振動板状に1列に存在しても、千鳥配置であってもよいが、突部のみに千鳥配置とするのが好ましい。

【0025】
貫通孔は、孔が振動板を貫通していればよく、その形状に特段の制限はないが、図2Cに示すように、図中上部の培養槽側に開口する面の径aが図中下部の気体を供給する装置であるコンプレッサー接続側の面の径bよりも小さくなっていることが好ましく、例えば、ホーン形状、円錐台形状、テーパード形状などが例示される。ただし、貫通孔の培養槽内部側に面する部分の径aと気体を供給する装置に接続する側に面する部分の径bがa<bの関係にあれば、それらをつなぐ両横はどのような形状であっても、良好な微細気泡を発生し得る。仮に、径aと径bがa>bの関係にあれば、培養槽の液体が気体を供給する装置の側に向けて噴霧され続けることになり、送気に支障を生ずる。

【0026】
微細気泡を平均径100μm以下とするには、貫通孔の培養槽内部側の孔径は4~10μmが好ましく、また、貫通孔を複数設ける場合の貫通孔の孔数は1200個までが好ましく、126~350個がより好ましい。

【0027】
発振機、コンプレッサー等の気体を供給するための装置、及びその他のものについては、特許文献2等に記載の既存のものを使用することができる。

【0028】
また、本発明は、微生物培養方法、微生物の分散培養方法、及び微生物の細胞外多糖類抑制方法を提供するものである。

【0029】
本発明に係る微生物培養方法、微生物の分散培養方法、及び、細胞外多糖類抑制方法は、上記の微生物培養装置における微細気泡が発生した培養槽において、微生物を培養することにより達成される。

【0030】
本実施態様に係る微生物培養装置によれば、従来の振とう培養等による激しい水流によ
るストレスを与えることなく、微細気泡により穏やかに空気等の気体が供給されるため、細胞はエアレーションのせん断力によるストレスにさらされることなく培養される。また、細胞と同じミクロンレベルのサイズの微細気泡が培養槽内に長く滞留し、微生物細胞周辺の酸素濃度環境を良好にするため、細胞は低酸素によるストレスにさらされることなく培養される。そしてそれらの結果として、細胞はストレスに抵抗するための形態であるバイオフィルム等の形成へと誘導されないと考えられる。微生物がバイオフィルムを形成しないのは、通常微生物が分泌する細胞外多糖類の量が本実施態様に係る微生物培養装置によれば激減することに起因していることを、後述する実施例において説明する。

【0031】
本方法により培養される微生物は、細菌や藻類等の液体培養が可能なものであれば特段に制限されることはなく、送気を必要とする微生物には特に好適に適用できる。

【0032】
本実施態様に係る微生物培養装置においては、気体を供給するための装置として、コンプレッサーの他に、空気、酸素、水素、メタン、二酸化炭素、またはそれらの混合ガスなどの気体を供給することができる、ポンプ、またはガスボンベなども利用できる。そのため、本発明に係る微生物培養方法、微生物の分散培養方法及び細胞外多糖類抑制方法においては、ガス供給装置からの気体の種類及び流量を、培養する微生物に合わせて適宜設定し得るが、流量は0.5~3.0ml/分が好ましい。

【0033】
また、発振機が発する周波数は、90~130kHzにある共振周波数の±5kHzの範囲が好ましく、振動板が共振する共振周波数がより好ましい。この周波数による振動が振動板に伝わると、培養液中において100μm以下、平均50μmの微細気泡が発生しやすい。

【0034】
培地、培養温度、又は培養時間等の培養条件は、微生物の種類に適した従来の条件を採用すればよい。本発明の微細気泡の供給により、水流によるせん断力が極めて小さい培養環境が提供される。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
(1)実施例1:溶存酸素制御性と酸素移動効率の評価
a)装置概要
培養槽、コンプレッサー、発振機及び振動板を備える微細気泡発生装置により、溶存酸素制御性と酸素移動効率を評価した。
上記振動板は、培養槽側に突出する突部を有し、該振動板が有する孔は、該突部にのみ開いており、図2Cのようなホーン形状であって、孔径aは10μm、孔数が350個、ピッチ間隔は150μmであるものを使用した。振動板に超音波振動を伝えるものとしては、特許文献3に記載の圧電セラミックスを使用した。培養槽0.5Lは内径4cm、高さ50cmの円筒形のものをアクリル材で製作し、コンプレッサーはエアテックス製のAPC-002、発振機はTEXIO製の FG-274を使用した。
発振機が発する周波数は110kHzであり、振動板を通じて培養槽内に供給される気体の流量は1~2ml/分であった。
【実施例】
【0036】
b)評価方法
溶存酸素(DO)の制御性は、DO計(ASR社)とDOコントローラ(ASR社)を用いて行った。微細気泡と散気球による粗大気泡を比較し、溶存酸素濃度(DO)をモニタリングし、DOの変動幅からDO制御性を評価した。また、その時の流量を測定した。
酸素移動効率(以降E)は、上記微生物培養装置により微細気泡を発生させ、DOの時間変化と流量を飽和溶存酸素濃度に達するまで測定し、総括酸素移動容量係数(K
)を算出し、このKaをもとに求めた。対照として振動を与えず気泡を発生させたもの、散気球で気泡を発生させたもののEを算出した。
【実施例】
【0037】
c)結果
溶存酸素濃度(DO)制御実験の結果を図3に示す。散気球ではDOの変動幅が約1~2mg/Lであったのに対し、本発明による微生物培養装置では約0.1~0.5mg/Lであった。また、本発明による微生物培養装置は、空気流量が1~2ml/分と極めて低流量でありながら、平均50μm程度の多数の微細気泡を発生させることができたため、より精密にDO制御できたが、散気球では、連続的に気泡を発生させるためには流量20~30ml/分を必要とし、かつ5mm程度の大きな気泡であるため、DOの変動幅が大きくなった。このようにDOの変動幅が小さく、DOの制御性が良いことは、本発明による微生物培養装置が、酸素の溶解効率が高い微細気泡を低流量で多数発生させることができたためであるといえる。
【実施例】
【0038】
図4に酸素移動効率(E)を算出した結果を示す。本発明による微生物培養装置で得られたEは70%であり、散気球の5~9倍高かった。振動板による微細気泡は、比表面積が大きいこと、気泡径が小さく気泡上昇速度も小さくなること、滞留する気泡も多数存在することから、難溶解性の気体である酸素の溶解効率が高まり、EやDOの制御性を向上させたと考えられる。したがって、本発明による微生物培養装置は、微生物に酸素を供給する際の気泡の上昇流や撹拌により生じるせん断力が極めて小さい状態で培養できる装置であるといえる。
【実施例】
【0039】
(2)実施例2:振動板の貫通孔の孔径の評価
a)装置概要
貫通孔の孔径が異なる振動板と発振機により、孔径の違いによる噴霧の高さを評価した。また、図1に示す培養槽、コンプレッサー、発振機及び振動板を備える微細気泡発生装置により、微細気泡の発生を評価した。
上記振動板は、噴霧の方向に突出する突部を有し、該振動板が有する孔は、該突部を含む振動板全面に開いており、図2Cのようなホーン形状であって、孔径aは4μm、4.5μm、5μm、6μm、8μm、10μm、孔数が1200個、ピッチ間隔は150μmであるものを使用した。また、該振動板が有する孔が、該突部のみに開いており、図2Cのようなホーン形状であって、孔径aは10μm、孔数が350個、ピッチ間隔は150μmであるものも使用した。振動板に超音波振動を伝えるものとしては、特許文献3に記載の圧電セラミックスを使用した。発振機はTEXIO製の FG-274を使用した。
【実施例】
【0040】
b)評価方法
噴霧の高さは、蒸留水を満たしたシャーレの水面に振動板の凹部を接触させ、発振機から共振周波数で高周波電圧を印加させて上向きに噴霧させたときの噴霧の到達高さを測定することにより評価した。微細気泡の発生は、蒸留水中に発生した微細気泡の1分当たりの体積を示したものである。発振機が発する周波数は80~130kHzの間を1kHzずつ変化させた。発振機からの電圧は15Vに調節して用いた。
【実施例】
【0041】
c)結果
孔径の異なる振動板の噴霧高さの評価の結果を表1に示す。貫通孔が振動板全面に開いている振動板では、孔径が4μmと4.5μmの振動板の噴霧高さは10~15cm、孔径が6μmの振動板の噴霧高さは15~20cmであり、孔径が10μmの振動板の噴霧高さは30~35cmであった。孔径が大きいほど噴霧の勢いが強い傾向にあったため、凸部にのみ孔径10μmの貫通孔が開いている振動板を用いて噴霧高さを評価したところ、30~35cmの噴霧高さが得られた。噴霧高さの評価は、全面に孔径10μmの貫通
孔が開いている振動板と凸部にのみ孔径10μmの貫通孔が開いている振動板と同程度であった。凸部にのみ孔径10μmの貫通孔が開いている振動板の方が、少し噴霧高さが高いようであったが、この評価方法ではその違いを明確に評価することはできないと考えられた。
噴霧の高さが高いほど、振動板がよく振動して噴射力が強いことを意味する。そのため、微細気泡を発生させるときに、気体が貫通孔を通過する際に、気体をちぎって放つ効果が高く、表面張力の高い培養液中に微細気泡を発生させる効率を高めることができる。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP0006108526B2_000002t.gif

【実施例】
【0043】
孔径の異なる振動板の微細気泡発生の結果を表1に示す。貫通孔の孔径が4μmの振動板では微細気泡は発生したが、0.1ml/分以下の少ない発生量であった。貫通孔の孔径が6μmの振動板から発生した微細気泡は、貫通孔の孔径が4μmの振動板の3~5倍程度で0.3ml/分程度の発生量であった。貫通孔の孔径が10μmの振動板は、振動板の全面に貫通孔がある振動板と凸部にのみ貫通孔がある振動板ともに、気泡径50μm程度の多くの微細気泡を発生させた(図5)。微細気泡の発生量は、周波数および印加電圧を変化させることにより0.5~3ml/分の間で調整することができた。
【実施例】
【0044】
(1)実施例3:振動板の貫通孔の孔数の評価
a)装置概要
貫通孔の孔数が異なる振動板を備える微細気泡発生装置、発振機、水槽、コンプレッサーにより、微細気泡を横向きに噴出させたときの勢いを気泡到達距離として評価した。
上記振動板は、気泡を発生する方向に突出する突部を有し、該振動板が有する孔は、該突部のみに開いており、図2Cのようなホーン形状であって、孔径aは10μm、孔数が6
0~350個の間で異なる33種類の振動板を使用した。発振機、圧電セラミックス、コンプレッサーは実施例1と同じである。水槽は横幅35cm、奥行き21cm,高さ32cmのものを使用した。
【実施例】
【0045】
b)評価方法
水槽に蒸留水を高さ25cmまで入れ、振動板を備える微細気泡発生装置を横向きに設置し、発振機から高周波電圧を印加させて横向きに微細気泡を発生させたときに噴射の勢いにより気泡が到達したところまでの距離を測定することにより評価した。発振機が発する周波数は80~130kHzの間を1kHzずつ変化させた。発振機からの電圧は30Vに調節して用いた。
【実施例】
【0046】
c)結果
孔数の異なる振動板の気泡の到達距離の評価の結果を図6に示す。実施例2に示した凸部のみに孔径10μmの貫通孔がある振動板の孔数は350個であり、図6はこの振動板を用いて気泡を横向きに噴射させたときの到達距離を基準として、孔数の違いにより気泡到達距離、つまり噴射の勢いがどの程度増減したのかを表している。孔数が少なくなるほど気泡の噴射の勢いが増加する傾向にあったが、孔数が125個以下では減少した。125個以下では結果にばらつきがあったため、この範囲における気泡の噴射の勢いを高くするために最適な孔数の条件が存在する可能性もある。実験結果からは、孔数126個から基準として用いた孔数350個の範囲が、噴射の勢いが強い孔数として適していた。気泡噴射の勢いが強いことは、微細気泡を発生させるときに、気体が貫通孔を通過する際に、気体をちぎって放つ効果が高く、表面張力の高い培養液中に微細気泡を発生させる効率を高めることができる。なお、実施例2により全面に孔径10μmの貫通孔がある振動板が微細気泡を発生させることが示されている。全面に孔径10μmの貫通孔がある振動板の孔数は1200個である。
【実施例】
【0047】
(2)実施例4:大腸菌培養効率の評価と細胞外多糖類の生成抑制
a)培養方法及び測定方法
実施例1で使用した微生物培養装置(本発明装置)を用いて大腸菌K-12株の回分培養を行い、培養中の濁度と溶解性の残留有機物を測定した。培地はM9液体培地0.5Lを用いた。M9液体培地のグルコース濃度は0.4%である。対照系としてインキュベータ内での振とう培養および散気球による5mm程度の粗大な気泡による培養を行った。培養は30℃及び37℃で120時間行った。
培養中の大腸菌を採取し、顕微鏡により細胞の状態(細胞集塊の存在や細胞形態など)を観察し、一方で蛍光レクチンRCA120により細胞外多糖類を染色し、蛍光顕微鏡により観察と撮影を行った。20個以上の細胞が密集して集合した状態を細胞集塊とした。
【実施例】
【0048】
b)結果
本発明装置を使用した培養と振とう培養で大腸菌の最大増殖時における濁度を比較した結果を図7に示す。振とう培養では増殖定常時の濁度(OD600)は約1.1であった。本発明装置による培養では約1.6と、振とう培養より1.5倍高かった。
次に、細胞外への代謝物生成について、培養液中の溶解性の残留有機物と、細胞表面の細胞外多糖類の蛍光レクチン染色とを指標として、本発明装置による培養と振とう培養とを比較した。本発明による培養では、微生物が基質の消費とともに細胞外へ生成する溶解性の残留有機物の生成量が振とう培養の約25%であった(図8)。また、増殖定常時の細胞に対して蛍光レクチン染色を行った結果、本発明装置による30℃における培養では約5%の細胞に細胞外多糖類の生成が認められ、37℃における培養では約8%の細胞に細胞外多糖類の生成が認められたが、30℃における振とう培養では分散した細胞のうちの50%の細胞に細胞外多糖類の生成が認められた(図9、図10)。振とう培養では細胞の集塊が認められ(図11)、集塊を形成した細胞には細胞外多糖類が顕著に認められ
た。
【実施例】
【0049】
培養液を顕微鏡観察すると、振とう培養や散気球による培養では、細胞集塊が観察され、増殖定常時にさらに細胞集塊が大きくなる傾向が見られたが、一方の本発明による培養では、細胞は対数増殖期から最大濁度到達時を経て死滅期に至るまで全ての細胞が分散状態にあり、細胞集塊は認められなかった。分散状態については、散気による培養方法では4~6%の細胞が集塊を形成していたのに対し、本発明装置では0.1%未満であった(図12)。また、大腸菌に対するストレス環境下で見られる細胞の伸長も、本発明による培養では認められなかった。
【実施例】
【0050】
(3)考察
以上の結果を総合して考察すると、本発明による培養と振とう培養では、細胞のエネルギーの使い方に違いがあると考えられた。大腸菌は、本発明の培養のときは、振とう培養のときに比べて、より多くのエネルギーを細胞増殖に使い、細胞外多糖類の生成に回るエネルギーは少なかったと思われる。細胞外多糖類は、細胞の界面への付着や、細胞同士の接着による集合体形成の際に重要な物質であると考えられている。これは増殖のためではなく、環境ストレスに対して抵抗性を高めるためである。その細胞外多糖類が、本発明の培養では少なく、かつ、増殖量が大きく、さらに細胞集塊が生じなかったということで、本発明の培養では、ストレス等の活性へのマイナス影響が極めて少なく、増殖に適した環境で培養されたと考えられた。
【実施例】
【0051】
比較例:高速旋回流方式のマイクロバブル発生装置を用いた分散状態の評価と細胞外多糖類の生成抑制
a)培養方法及び測定方法
幅90 cmの大型水槽に100Lの培地を入れて大腸菌K-12株の回分培養を行った。マイクロバブルの発生には旋回流方式のマイクロバブル発生装置を用いた。培地はM9液体培地を用いた。M9液体培地のグルコース濃度は0.4%である。旋回流方式のマイクロバブル発生装置は空気と液体を旋回させてマイクロバブルを発生させるため、水槽中の培養液がポンプを通じて循環される。ポンプの流量は約15L/分であった。M9培地中の微細気泡の気泡径は100μm程度であった。顕微鏡により細胞の状態(細胞集塊の存在や細胞形態など)を観察し、一方で蛍光レクチンにより細胞外多糖類を染色し、蛍光顕微鏡により観察を行った。培養は38℃で120時間行った。
【実施例】
【0052】
b)結果
大腸菌細胞は、増殖期はほぼ分散状態で存在し1~2%の細胞は集塊を形成したが、増殖定常期は細胞の集塊が急激に増加し、10%の細胞が、十数個から数百の細胞の集塊として存在した。その後、死滅期にむかい、細胞集塊の割合は1%まで減少した。増殖期、最大増殖期、増殖定常期、死滅期の細胞集塊の存在割合を平均すると約6%であった(図12)。このように細胞集塊は常に存在し(図13)、分散状態は維持されなかった。
細胞外多糖類は集塊を形成した細胞には顕著に認められた。分散状態の細胞では約50%程度の細胞に細胞外多糖類が認められた(図9)。
【実施例】
【0053】
c)考察
旋回流方式のマイクロバブル発生装置は、培養液を装置内に供給して空気と旋回混合されることにより微細気泡化されるため、増殖した細胞が装置内を通過することになる。その際に細胞が強いせん断力を受け、ストレス抵抗として細胞同士を接着させるための細胞外多糖類を生成し、徐々に細胞集塊が増加したと考えられる。それでも基質としてグルコースが存在する間は、微細気泡による効率的な酸素供給を受けて増殖して99%の細胞が分散状態にあり、微細気泡が一定の効果を発揮していた可能性もある。しかしながら、基質が枯渇すると、基質の枯渇によるストレスやせん断ストレスが細胞外多糖類の生成を促
進する結果となったと考えられる。定常期では、細胞に代謝活性がある状態のため、細胞の集塊化が進行していることと、細胞集塊の強度が強い(細胞外多糖類による細胞同士の結合が強い)こととで、細胞集塊がより多く観察されたと考えられるが、死滅期では、マイクロバブル発生装置内の旋回流によるせん断力が上回り、細胞集塊が破壊されることにより減少したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、微生物細胞外多糖類抑制、微生物活性化、微生物制御、微生物分散化、バイオフィルム制御、及び微生物培養に使用できる。
また、微生物を積極的に利用する発酵食品の製造、酵素やアミノ酸や抗生物質などの有用な有機化合物の製造に使用でき、増殖させた有用微生物を用いた汚水処理、廃棄物処理などに使用することもできる。
さらに、本発明により培養すると、微生物が分散されて薬剤への感受性が高くなることから、感染制御、飲料水や環境水の殺菌等に使用できる。また、バイオフィルム形成が抑制されるため、膜ファウリングの抑制に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 微生物培養装置
1 培養槽
2 振動板
3 コンプレッサー
4 発振機
5 圧電振動素子
6 貫通孔
7 微細気泡
8 突部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12