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明細書 :後発酵茶由来の血圧上昇抑制作用を有する剤並びにそれを含む飲食品及び医薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-043406 (P2014-043406A)
公開日 平成26年3月13日(2014.3.13)
発明の名称または考案の名称 後発酵茶由来の血圧上昇抑制作用を有する剤並びにそれを含む飲食品及び医薬
国際特許分類 A61K  36/18        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61K  36/00        (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P   9/04        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A23L   2/52        (2006.01)
FI A61K 35/78 C
A61P 9/12
A61K 35/78 Y
A61P 13/12
A61P 9/10
A61P 9/04
A61P 9/10 103
A23L 1/30 B
A23L 2/00 F
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2012-185874 (P2012-185874)
出願日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発明者または考案者 【氏名】中村 彰男
【氏名】吉山 伸司
【氏名】田中 夏女
【氏名】河原田 律子
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査請求 未請求
テーマコード 4B017
4B018
4C088
Fターム 4B017LC03
4B017LG14
4B017LK08
4B017LP05
4B018MD09
4B018MD59
4B018ME04
4B018MF01
4B018MF13
4C088AB45
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA05
4C088CA09
4C088CA25
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZA37
4C088ZA40
4C088ZA42
4C088ZA81
要約 【課題】本発明は、アンギオテンシン変換酵素の作用を阻害して血管平滑筋を間接的に弛緩させ、かつ、血管平滑筋に直接作用して血管平滑筋を弛緩させることにより血圧上昇を抑制する作用を有し、安全であり毎日に服用も可能であって血圧上昇を継続的に抑制することが可能な剤を提供することを目的とする。
【解決手段】後発酵茶を熱水で抽出したものの酢酸エチル抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
後発酵茶を熱水抽出したものの酢酸エチル抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤。
【請求項2】
前記後発酵茶が碁石茶またはプーアル茶であることを特徴とする、請求項1に記載の血圧上昇抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の血圧上昇抑制剤を含有する飲食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の血圧上昇抑制剤を含有する医薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧上昇抑制作用を有する剤並びに当該剤を含有する飲食品及び医薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国は深刻な高齢化社会を迎えており、また、食生活の欧米化などによる高血圧性疾患を伴う生活習慣病患者が増加する傾向にある。高血圧患者は、また治療を開始していない人を含めると、およそ4000万人に上ると推定されている(高血圧治療ガイドライン2009、日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編、日本高血圧学会発行)。
現在、高血圧の治療薬として、利尿剤、カルシウム拮抗剤、交感神経抑制剤、血管拡張剤及びアンギオテンシン変換酵素阻害剤といった降圧剤が広く用いられているが、腎機能悪化、血管浮腫、糖・脂質代謝への悪影響及び心臓への負担といった副作用を起こすことが少なからず報告されている。
一方、健康志向、そして安全志向の高まりとともに、健康によい影響を与えるとされる食品や特定保健用食品(いわゆる「特保」)が、注目を集めるようになってきた。古くから飲用されるお茶には、さまざまな有効成分が含まれているとされ、血管内皮由来の血管弛緩因子(NO及びEDHF等)を活性化することにより血管平滑筋を弛緩させて血圧を低下させる杜仲茶配糖体、血圧上昇に関わるアンギオテンシン変換酵素を阻害するペプチド類、及び血圧低下作用を示すアミノ酪酸(GABA)といったお茶由来の成分が血圧の低下に効果的であることが認められている。また、お茶はこの他にも体脂肪低下や動脈硬化予防など多様な効果・効能を持つことも知られている。
例えば、発酵した茶の利用として、特許文献1には、茶を好気的発酵した後に嫌気的発酵して得られたものの水系溶媒抽出物を有効成分とする酸化抑制及びコレステロール抑制組成物が開示されている。
また、特許文献2には、発酵茶を水性液体で抽出し、得られた抽出物をさらに有機溶媒で抽出して得た発酵茶抽出残渣を有効成分とする糖尿病用組成物が開示されている。
しかしながら、後発酵茶を熱水で抽出したものの有機溶媒抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制のための剤及び当該剤を含有する飲食品や医薬については知られていなかった。

【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2007-314508号公報
【特許文献2】特開2012-31078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、高血圧治療に広く用いられている降圧剤には、腎機能悪化、血管浮腫、血糖・代謝脂質への悪影響及び心臓への負担といった副作用の報告が少なからずされていることから、副作用を引き起こすことのない安全な、血圧上昇抑制作用を有する組成物が求められている。
【0005】
すなわち、本発明の課題は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)作用阻害のような、血管内皮細胞又はそれに由来する他の因子を介した間接的な血管平滑筋の弛緩作用に加え、血管平滑筋に直接働きかけて血管平滑筋を弛緩させる作用を有し、副作用を引き起こす
ことのない安全な、血圧上昇抑制作用を有する剤並びに当該剤を含む飲食品及び医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく上記特性を有する物質を探索したところ、後発酵茶を熱水で抽出したものの酢酸エチル抽出物が上記特性を示すことを見出した。後発酵茶とは、茶(Camellia sinensis)を殺青し、微生物を用いた後発酵工程を経て得られた茶
のことを言い、例えば、生の茶葉を炒るあるいは蒸した後に好気的に発酵させたプーアル茶や、生の茶を蒸した後に好気的に発酵させ、その後さらに嫌気的に発酵させた碁石茶などが挙げられる。
他にも日本古来の好気発酵のバタバタ茶(富山)、碁石茶と同じ製法の天狗黒茶(愛媛)、嫌気発酵のみの阿波番茶(徳島)などが伝承されて残っている。
【0007】
すなわち、本発明の血圧上昇抑制のための剤は、後発酵茶を熱水により抽出したものの酢酸エチル抽出物を有効成分とする。
【0008】
抽出に用いる有機溶媒として、酢酸エチルを用いることにより、有効成分をより多く抽出することができ、血圧上昇抑制効果がより高くなる。
【0009】
また、本発明の飲食品及び医薬は、上記血圧上昇抑制剤を含有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剤は、蒸した後に、好気的に発酵させた茶、又は、好気的に発酵させたのちに嫌気的に発酵させた茶の抽出物であるため、安全性に優れ、毎日の摂取も可能である。その上、ACEの作用を阻害して間接的に血管平滑筋を弛緩させるだけではなく、血管平滑筋に直接的に作用して血管平滑筋を弛緩させることができるため、優れた血圧上昇抑制効果を示し、脳卒中や脳梗塞といった脳血管障害、心不全や心筋梗塞といった心臓疾患、及び、腎硬化症や腎不全といった腎臓疾患などの予防、進行抑制及び治療などに有効である。従って、本発明の剤、飲食品及び医薬は、近年の健康志向に適合するものとして極めて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】張力測定実験のチャート模式図を示す。
【図2】ラット大腿動脈の内皮除去血管平滑筋における、プーアル茶及び碁石茶の各有機溶媒抽出物の血管平滑筋弛緩作用を測定した結果を示す。
【図3】ラット大腿動脈の内皮除去血管平滑筋標本における、プーアル茶及び碁石茶の酢酸エチル分画エキス、及びGABA含有緑茶を添加した張力測定実験の代表チャートを示す。
【図4】ラット大腿動脈の内皮除去血管平滑筋標本における、塩酸ヒドララジン、GABA含有緑茶及び碁石茶の酢酸エチル分画エキスの血管平滑筋弛緩作用を比較した結果を示す。
【図5】非観血式血圧測定による雄性高血圧自然発症ラット(SHR)に対する、プーアル茶及び碁石茶の酢酸エチル分画エキスの連続投与による血圧降下作用を示す。
【図6】非観血式血圧測定による雄性高血圧自然発症ラット(SHR)に対する、プーアル茶及び碁石茶の酢酸エチル分画エキスの単回投与による経時的な血圧降下作用を示す。
【図7】観血式血圧測定による正常ウィスターラットに対する、碁石茶酢酸エチル分画エキスの血圧降下作用を示す。
【図8】ラット大腿動脈の内皮除去血管平滑筋標本における、様々な後発酵茶酢酸エチル分画エキスの血管平滑筋弛緩作用を比較した結果を示す。
【図9】様々な後発酵茶酢酸エチル分画エキスのACE作用阻害能を比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の血圧上昇抑制剤は、後発酵茶を熱水で抽出したものの酢酸エチル抽出物を有効成分とする。
以下、本発明の剤の製造方法について説明する。

【0013】
本発明の組成物の原料となる茶の種類等は特に制限されず、一般的なものを使用することができる。例えば、茶としては主に低木のもの(学名:Camellia sinensis)と高木の
もの(学名:C. sinensis var. assamica)があるが、何れを使用してもよい。中でも、
日本で一般的な低木の茶を特に制限なく用いることができる。

【0014】
本発明では、茶を蒸した(蒸煮)後に一段階又は二段階で発酵する。蒸煮は、葉のみで行ってもよいが枝ごとに行ってもよい。蒸煮後には葉を枝からとり易くなるため、採取直後に分離するよりも手間がかからないためである。

【0015】
蒸煮は一般的な条件に従って行えばよく、茶の層へ水蒸気又は湯気を通じればよい。例えば、蒸し器など、底面から水蒸気を通じることができる容器に茶葉あるいは茶葉と枝を密に詰め、その下方で水を沸騰させ、当該容器へ水蒸気又は湯気を通じることにより行われる。蒸煮の時間は、続いてそのまま発酵させることができる程度とすればよいが、例えば、水が沸騰してから1~4時間とすることができ、好ましくは2~3時間とする。実際には、茶葉の状態や蒸汁の色等を確認しつつ、時間を調節する。

【0016】
なお、蒸煮した場合には、その蒸汁にも有効成分が含まれていると考えられるため、これを発酵工程で必要な水分として用いてもよい。

【0017】
上記前処理を行った茶は、続いて発酵処理を行う。
一段階目の発酵処理としては好気的発酵を行う。具体的には、茶葉を高湿下で静置することにより行われる。例えば、茶葉を容器に入れ、湿度を保つために水や蒸汁を散布した上でカバーをかけ、常温で5~10日間程度静置することにより行われる。その間、適度な温度や湿度を保つことが必要であり、茶葉の状態等を確認しつつ、発酵条件を適宜調節する。また、好気的発酵を行う際に、手で押さえたり、又は、足で踏むなどして適度な圧力をかけてもよい。さらに、好気的発酵に適する好気的細菌又は真菌を添加してもよいが、これらを添加しない場合においても、茶葉自身の酸化酵素や自然に存在する細菌等により発酵は進行する。

【0018】
このように、茶葉を一段階の好気的発酵を行うことで製造される後発酵茶としては、プーアル茶を挙げることができる。

【0019】
続いて、必要に応じて二段階目の発酵処理として嫌気的発酵を行う。嫌気的発酵の条件も特に制限されず、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、伝統的には、好気的発酵させた茶葉を、圧力をかけながら容器へ密に詰めていき、最終的には容器に蓋をした上でさらに圧力をかけ、外気との接触を遮断することにより嫌気的発酵を行う。このとき、上記蒸汁を散布したり、または茶葉が浸かる程度に添加してしてもよい。さらに、嫌気的発酵を行うための細菌等を添加してもよいが、添加せずに自然に嫌気的発酵を進行させてもよい。

【0020】
嫌気的発酵の後は、茶葉は圧力のために一塊になっているため、適度な大きさに切断することが好ましい。続いて行う茶葉の乾燥が円滑に進むからである。

【0021】
茶葉の乾燥は機械的に行ってもよいが、天日干しでも行うこともできる。また、乾燥の程度も特に制限されるものではないが、少なくとも保管時に腐敗等しない程度には乾燥させる必要がある。

【0022】
このように、好気的発酵を行った後に嫌気的発酵を行うことで製造される後発酵茶としては、高知県で伝統的に製造されている碁石茶を挙げることができる。碁石茶については、これまでにその抗酸化活性が研究されており、その他の機能性の解明や健康増進作用についてさらなる研究が行われている。

【0023】
本発明の組成物の一態様では、上記のとおり発酵した茶葉を熱水により抽出し、得られた熱水抽出物をさらに酢酸エチルで抽出したものを有効成分とする。

【0024】
熱水による抽出方法としては、例えば、500mLのDDWに対して発酵工程を経た茶葉を50g加え、100~120℃の熱水で1分間~1時間程度抽出する。かかる抽出中、混合物は撹拌しても静置してもよく、また、継続的に加熱したり、加熱還流してもよい。

【0025】
酢酸エチルによる抽出方法も特に限定されず、常法により行うことができる。例えば、上記熱水抽出により得られた抽出物に酢酸エチルを加えて撹拌しながら酢酸エチル相と水相に分離して酢酸エチル抽出物を得る。なお、酢酸エチル抽出を行う前に、熱水抽出物についてヘキサン処理を行い、ヘキサン抽出画分を除去してから酢酸エチル抽出を行ってもよい。

【0026】
得られた酢酸エチル抽出物については、酢酸エチルを除去する操作を行うことが望ましい。そして、血圧上昇抑制作用を損なわない限り、さらなる抽出・精製を行ってもよい。

【0027】
また、抽出物は、そのまま服用してもよいが、凍結乾燥等した後に服用してもよい。

【0028】
本発明の剤は、血圧上昇抑制作用を示すことから、高血圧、並びに、高血圧に起因して引き起こされる合併症、例えば、脳卒中や脳梗塞といった脳血管障害、心不全や心筋梗塞といった心臓疾患、及び、腎硬化症や腎不全といった腎臓疾患などの予防、進行抑制及び治療などに有効である。

【0029】
本発明の剤は、飲食品(健康食品及び機能性食品など)に配合することもできる。本発明の剤は、茶を一段発酵又は二段発酵したものから得られる抽出物を含有するものであり、安全で副作用もないと考えられるため、毎日の摂取も可能だからである。飲食品として使用する場合には、通常の飲食品(茶、ジュース、ヨーグルトなど)に、抽出物を添加してもよい。さらに、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤(安定化剤)、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料、栄養補助剤(ビタミン類、カルシウム類、プロテイン、キトサン及びレシチンなど)及び甘味料などを添加してもよい。

【0030】
また、飲食品に含有させる酢酸エチル抽出物の量は、0.001~5重量%であることが好ましく、0.01~1重量%であることがより好ましい。

【0031】
また、本発明の剤は、血圧上昇を抑制するための医薬として使用することもできる。医薬として使用する場合には、上記酢酸エチル抽出物をそのまま用いてもよいが、製剤学的に許容される製剤担体と組み合わせて用いてもよい。製剤学的に許容される製剤担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、本発明の剤
と、血圧上昇を抑制するための他の剤等とを併用してもよい。

【0032】
医薬として使用する場合、投与量は血圧上昇の抑制に有効な量である限り特に制限されず、過剰の摂取や体質的な問題等から異常が生じない程度の量とすればよいが、具体的な投与量としては、茶葉1gより得られた酢酸エチル抽出物の量を1として、0.00001~1/kg体重/日であることが好ましく、0.0001~0.5/kg体重/日であることがより好ましく、0.001~0.1/kg体重/日であることが特に好ましい。1日1回又は複数回に分けて摂取することができる。

【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲内で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれる。
【実施例】
【0034】
[製造例1]本発明の抽出物の製造
抽出物原料である後発酵茶の酢酸エチルエキスは、以下の通り製造した。
50gの碁石茶茶葉を500mLのDDWに加え、120℃で20分間加熱し、茶葉をろ過して抽出液を得た。得られた抽出液に等量のヘキサンを加え、室温で3時間撹拌した。分液ロートを用いてヘキサン相と水相を分離し、水相に等量の酢酸エチルを加えて室温で12時間撹拌した。分液ロートを用いて酢酸エチル相と水相を分離し、酢酸エチル相をエバポレーターで完全に乾燥させた。酢酸エチル相の乾燥重量を測定後、10mg/mlとなるようにDDWに溶解して酢酸エチルエキスとした。
また、プーアル茶茶葉についても同様の条件及び工程で酢酸エチルエキスを得た。
【実施例】
【0035】
[試験例1]プーアル茶及び碁石茶の各溶媒分画エキスの血管平滑筋弛緩作用の測定
ラット大腿動脈の内皮細胞を除去した血管平滑筋標本を用いて、血管平滑筋の微細張力を測定する飯塚らの方法(Iizuka et al., InsP3, but not novel Ca2+ releasers, contributes to agonist-initiated contraction in rabbit airway smooth muscle, J. Physiol., 1998 Sep 15; 511(Pt 3): 915-33)により、プーアル茶(一段発酵茶)及び碁石茶(二段発酵茶)の各溶媒分画エキスの血管平滑筋弛緩作用の測定を行った。
まず、血管平滑筋組織としてラット大腿動脈平滑筋を使用した。摘出した大腿動脈を短冊状に切り出し、血管内皮細胞と結合組織を取り除き張力測定装置にセットした。血管平滑筋組織の弛緩には正常細胞外液(NES)を用いた。また、収縮には155mMのカリウムを含む高カリウム細胞外液(KES)を用いた。以下の手順で血管平滑筋組織を弛緩・収縮させ、図1に示すチャートの1~4の各時点における張力を測定した。
(1)平滑筋組織の張力を安定させるために、細胞外液をKESに交換し3分間収縮させ、その後NESに交換し弛緩させた。この操作を3回繰り返して完全に弛緩させた。この時点の張力を「1.基準」とする。
(2)細胞外液をKESに交換し、平滑筋の持続性の収縮が安定したら、細胞外液に各溶媒分画エキス(10mg/ml)を4μL又は12μL添加して張力の変化を観察した。持続性の収縮が安定した時点の張力を「2.前収縮」とし、各溶媒分画エキス添加後の張力を「3.弛緩」とする。
(3)細胞外液を各溶媒分画エキスが添加されていない別のKESに交換し、張力の変化を観察した。この時点での張力を「4.後収縮」とする。
(4)各溶媒分画エキスについて(2)及び(3)を行い、張力の変化を観察した。
平滑筋組織の張力変化を表すT値は以下の計算式に基づき計算した。

T値=([3.弛緩]-[1.基準値])/{([2.前収縮]+[4.後収縮])/2-[1.基準値]}

T値が1以上の場合には収縮効果があることを意味し、1以下の場合には弛緩効果があることを意味する。
結果を図2に示す。
【実施例】
【0036】
図2から明らかなように、本発明の抽出物は、他の茶葉又は他の溶媒を用いて得た抽出物に比して優れた血管平滑筋弛緩作用を有していることが明らかとなった。特に、抽出溶媒として酢酸エチルを用いて得た抽出物(酢酸エチル分画エキス)は、他の溶媒を用いて得た抽出物に比して特に優れた血管平滑筋弛緩作用を有していることが明らかとなった。
【実施例】
【0037】
[試験例2]プーアル茶及び碁石茶の酢酸エチル分画エキスの血管平滑筋弛緩作用の測定
ラット大腿動脈の内皮除去血管平滑筋を用いて、プーアル茶の酢酸エチル分画エキス、碁石茶の酢酸エチル分画エキス及びGABA含有緑茶(製品名:ナチュラルケア、大正製薬)を累積的に添加した場合の血管平滑筋弛緩作用を飯塚らの方法により測定した具体的には、血管内皮を除去したラットの大腿動脈の血管平滑筋に、プーアル茶と碁石茶の酢酸エチル分画エキス(10mg/ml)をそれぞれ4μlずつ5分おきに累積添加した。一方で、GABA含有緑茶(ナチュラルケア)を4μlずつ加算投与した。結果を図3に示す。
【実施例】
【0038】
図3から明らかなように、プーアル茶と碁石茶の酢酸エチル分画エキスを投与した場合には、それぞれ濃度依存的に血管平滑筋は弛緩するが、GABA含有緑茶を投与した場合には血管平滑筋の弛緩は見られなかった。この結果から、プーアル茶と碁石茶の酢酸エチル分画エキスは、血管平滑筋に直接作用してその弛緩作用を示すと考えられる。
【実施例】
【0039】
[試験例3]塩酸ヒドララジンとの血管平滑筋弛緩作用の比較
末梢血管に直接作用する降圧剤である塩酸ヒドララジンと碁石茶の酢酸エチル分画エキスの血管平滑筋弛緩作用を試験例1と同様の手順で測定し、比較を行った。塩酸ヒドララジンは、作用機序は不明であるが、臨床において動脈の平滑筋を弛緩することにより、末梢の血管を拡張させ、血圧を下げる降圧剤として知られている。
【実施例】
【0040】
図4から明らかなように、本発明の碁石茶の酢酸エチル分画エキスは、塩酸ヒドララジン及びGABA含有緑茶(製品名:ナチュラルケア、大正製薬)に比して優れた血管平滑筋弛緩作用を有していることが明らかとなった。
【実施例】
【0041】
[試験例4]連続投与試験による非観血式血圧測定
動物における血圧上昇抑制作用を検証するために、雄性高血圧自然発症ラット(SHR)を用いた連続投与試験による非観血式血圧測定を行った。具体的には、試料として、プーアル茶(一段発酵茶)及び碁石茶(二段発酵茶)の酢酸エチル分画エキス、GABA含有緑茶(製品名:ナチュラルケア、大正製薬)を用い、コントロールとしてDDWを用いて、以下の方法により行った。それぞれ一群につき6匹のSHRに対し、6週齢目より胃ゾンデを用いて熱水抽出物エキス(10mg)を経口投与し、さらに13週齢目よりプーアル茶と碁石茶それぞれの酢酸エチル分画エキス、GABA含有緑茶及びDDWをそれぞれ1mgずつ経口投与した。血圧測定は、午前中に非観血式自動血圧測定装置BP-98A(株式会社Softron製)を用いて、保定温度38℃でtail-cuff法にて収縮期及び拡張期血圧を各群1匹につき3回ずつ測定した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0042】
図5から明らかなように、13週齢目よりプーアル茶又は碁石茶の酢酸エチル分画エキスを投与した群において、収縮期血圧がコントロール及びGABA含有緑茶に対して有意に減少した。
【実施例】
【0043】
[試験例5]単回投与試験による非観血式血圧測定
動物における血圧上昇抑制作用を検証するために、雄性高血圧自然発症ラット(SHR)を用いた単回投与試験による非観血式血圧測定を行った。具体的には、試料として、プーアル茶(一段発酵茶)及び碁石茶(二段発酵茶)の酢酸エチル分画エキスを用いて、以下の方法により行った。それぞれ一群につき4匹の21週齢SHRにおいて、試料投与前の収縮期及び拡張期血圧をBP-98A血圧計(株式会社Softron製)にて各6回測定し
た。続いて、胃ゾンデによりプーアル茶と碁石茶の酢酸エチル分画エキスをそれぞれ1mgずつ経口投与し、投与後4、8、24及び28時間目の収縮期血圧を測定した。結果を図6に示す。
【実施例】
【0044】
図6から明らかなように、プーアル茶の酢酸エチル分画エキスを投与した場合には、4時間後に投与前に比べて約10mmHg血圧が低下し、さらにその後約8時間にわたり血圧低下作用が持続した。また、碁石茶の酢酸エチル分画エキスを投与した場合には、8時間後に投与前に比べて約30mmHg近く血圧が低下し、さらにその後20時間以上にわたり血圧低下作用が持続した。
【実施例】
【0045】
[試験例6]正常ウィスターラットを用いた観血式血圧測定
正常ウィスターラットを用いた観血式血圧測定を行った。具体的には、24週齢の正常ウィスターラットをウレタン麻酔し、気道確保後、頸動脈に留置したカニューレを動物用ディスポ血圧トランスジューサに接続し、Quad Bridgeアンプを介することで、血圧変化
を電圧変化に変換した。血圧の測定及び記録はADINSTRUMENTS社のPowerLabシステムを使
用した。変換された電圧はADコンバーターPowerLab 4/25により1/100秒間隔でデジ
タルデータとしてコンピューターに記録した。記録されたデータは、水銀血圧計を用いて測定した圧力の実測値を基準としてmmHgに校正した。碁石茶の酢酸エチル分画エキス(10mg/ml)を生理食塩水にて1/1000倍希釈、1/100倍希釈、1/10倍希釈したもの、及び原液をそれぞれ30分おきに0.1 ml大腿静脈に投与し、投与
後、10分の収縮期及び拡張期血圧を測定した。測定したチャートとデータを図7に示す。
【実施例】
【0046】
図7から明らかなように、最も薄い濃度の1/1000倍希釈のエキスを投与した場合には、投与後10分で収縮期血圧が約12mmHg低下し、1/100倍希釈のエキスでは約16mmHg、1/10倍希釈のエキスでは約18mmHg低下し、エキスの濃度が高くなるに従い血圧は低下した。なお、原液を投与した場合には、1/10倍希釈のエキスを投与した場合に比してさらなる血圧の低下は観察されなかった。これは、エキスの濃度が1/100~1/10程度で血圧低下作用が頭打ちになるためであると考えられる。
【実施例】
【0047】
[試験例7]後発酵茶の平滑筋弛緩作用の比較
碁石茶(高知県)、天狗黒茶(愛媛県)、阿波番茶(徳島県)、バタバタ茶(富山県)及びプーアル茶の酢酸エチル分画エキスを製造例1と同様の方法で調製し、それぞれの血管平滑筋弛緩作用を試験例1と同様の手順で測定し、比較を行った。
【実施例】
【0048】
図8から明らかなように、碁石茶やプーアル茶以外の後発酵茶の酢酸エチル分画エキスも、碁石茶やプーアル茶と同様に血管平滑筋に直接作用して血管を弛緩させる作用を有していることが明らかとなった。
【実施例】
【0049】
[試験例8]後発酵茶のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害能の比較
碁石茶、プーアル茶、阿波番茶、バタバタ茶及び天狗黒茶のそれぞれの酢酸エチル分画エキスについて、ACE kit-WST(同仁化学)を用いてACE阻害活性測定を行った。ポジ
ティブコントロールとしては臨床で使用されているAlaceprilを用い、同時に測定した。
【実施例】
【0050】
図9から明らかなように、後発酵茶の酢酸エチル分画エキスにはACEに対する阻害活
性がある事がわかった。特にプーアル茶、バタバタ茶及び天狗黒茶の酢酸エチル分画エキスには比較的強いACE阻害効果があることがわかった。
【実施例】
【0051】
以上の結果の通り、本発明の抽出物の投与により血圧上昇を抑制することができる。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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