TOP > 国内特許検索 > 硫黄がドープされた蓄電デバイス用活性炭及びその製造方法 > 明細書

明細書 :硫黄がドープされた蓄電デバイス用活性炭及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6006624号 (P6006624)
公開番号 特開2014-105119 (P2014-105119A)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月12日(2016.10.12)
公開日 平成26年6月9日(2014.6.9)
発明の名称または考案の名称 硫黄がドープされた蓄電デバイス用活性炭及びその製造方法
国際特許分類 C01B  31/08        (2006.01)
FI C01B 31/08 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2012-257398 (P2012-257398)
出願日 平成24年11月26日(2012.11.26)
審査請求日 平成27年10月5日(2015.10.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
発明者または考案者 【氏名】白石 壮志
【氏名】奈良 将法
【氏名】坂田 健介
【氏名】清雲 博史
【氏名】登之内 敬
個別代理人の代理人 【識別番号】100085372、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 正義
審査官 【審査官】塩谷 領大
参考文献・文献 特開平08-225682(JP,A)
特開平08-081210(JP,A)
特開2012-121796(JP,A)
特表2011-502096(JP,A)
特開2007-091511(JP,A)
特開2011-051828(JP,A)
特開2001-089119(JP,A)
特開平11-222732(JP,A)
特開昭49-131992(JP,A)
Marta Sevilla,Highly porous S-doped carbons,Microporous and Mesoporous Materials,2012年 2月28日,158(2012),318-323
調査した分野 C01B 31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
硫黄がドープされた活性炭において、比表面積が1500~1700m/gの範囲にあり、ミクロ孔容積が0.6~0.8ml/gの範囲にあり、平均ミクロ孔幅が0.95~1.15nmの範囲にあり、炭素に対する硫黄の原子比が0.05~0.06の範囲にある、蓄電デバイス用活性炭。
【請求項2】
請求項1記載の活性炭を電極として用いた電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
生ゴムを加硫することにより製造した硫黄含有量が20~40質量%の範囲のエボナイト粉末を大気圧雰囲気下、室温から200~300℃の範囲まで昇温し、大気圧雰囲気下、前記昇温した温度で1~3時間保持することにより不融化を行う工程と、
前記不融化したエボナイト粉末を、不活性ガス雰囲気下、700~900℃の範囲まで昇温し、不活性ガス雰囲気下、前記昇温した温度で0.5~2時間保持することにより前記不融化エボナイト粉末を炭素化処理して炭素化エボナイトを得る工程と、前記炭素化エボナイトを不活性ガス雰囲気下、800~950℃の範囲まで昇温し、賦活収率が45~55%の範囲になるように二酸化炭素流通下、前記昇温した温度で保持することにより前記炭素化物を賦活処理して、炭素に対する硫黄の原子比が0.05~0.06の範囲にある活性炭を得る工程とを含むことを特徴とする蓄電デバイス用活性炭の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスの電極に用いられる活性炭及びその活性炭を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し使える電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor)は、活性炭などの多孔質炭素電極内の細孔に形成されるイオンの吸着層、即ち電気二重層に電荷を蓄えるコンデンサである。この電気二重層キャパシタは長寿命で高出力であるため、コンピュータのメモリのバックアップ用電源として普及しており、最近では、鉄道車両に搭載した電力貯蔵システムやハイブリッド車の補助電源として急激に注目されている。
【0003】
図7に示すように、電気二重層キャパシタ10は、電解液11に浸漬した二枚の活性炭電極12,13間に電源14を繋いで電圧を印加することで充電される。充電時は電解質イオンが電極表面に吸着する。具体的には、正極12では正孔(h)に電解液11中の陰イオン(-)が、負極13では電子(e)に電解液11中の陽イオン(+)がそれぞれ引きつけられ、正孔(h)と陰イオン(-)とは、また電子(e)と陽イオン(+)とはおよそ数Åという極小の距離をおいて配向し電気二重層を形成する。この状態は電源が外されても維持され、化学反応を利用することなく蓄電状態を維持する。放電時には吸着していた陽イオン並びに陰イオンがそれぞれの電極から脱離する。具体的には、電子(e)が正極12に戻り、それにつれて正孔(h)がなくなっていき、これに伴い、陽イオン、陰イオンが電解液中に再び拡散する。このように、充放電の全過程にわたって、キャパシタ材料には何の変化も伴わないため、化学反応による発熱や劣化がなく、長寿命を保つことができる。
【0004】
電気二重層キャパシタは、一般的に二次電池に比べて(1)高速での充放電が可能、(2)充放電サイクルの可逆性が高い、(3)サイクル寿命が長い、(4)電極や電解質に重金属を用いていないので環境に優しい、といった特徴を有する。これらの特徴は、電気二重層キャパシタが重金属を用いておらず、またイオンの物理的吸脱離によって作動し、化学種の電子移動反応を伴わないことに由来する。
【0005】
電気二重層キャパシタに蓄電されるエネルギー(E)は、充電電圧(V)の二乗と電気二重層容量(C)の積に比例するため(E=CV/2)、エネルギー密度の改善には容量並びに充電電圧の向上が有効である。電気二重層キャパシタの充電電圧は通常、2.5V程度に抑えられている。これは、3V以上の電圧で充電すると電極並びに電解液の電気分解が始まることで容量が低下し、電気二重層キャパシタが劣化してしまうからであると説明されている。
【0006】
上記課題を解決するための研究として、炭素に異種元素がドープされた電極材料のEDLC特性が注目されている。例えば、非特許文献1では、炭素ナノ細孔体に窒素をドープすることによりEDLCの容積を向上させることが報告されている。窒素ドープによりEDLCの容積が向上する理由として、(1)細孔表面の濡れ性が向上する、(2)ドープされた窒素が表面官能基となり疑似容量(酸化還元容量)を発揮して容量が上乗せされる、(3)ドープされた窒素が炭素中のキャリア濃度を増加させることで空間電荷層容量が増加する、などの機構が提唱されている。また、特許文献1には、活性炭に窒素をドープすると高電圧充電に対する耐久性が改善できることが記載されている。これは、窒素ドープによって電極上での電気分解反応が抑制されるためと考えられる。
【0007】
EDLCの容積を向上させるために、窒素以外の元素をドープした活性炭については充分に研究が行われていない。非特許文献2には、ポリチオフェンをKOH賦活(アルカリ賦活)することで硫黄ドープ活性炭が調製されることが報告されている。この文献では、活性炭中の硫黄原子はXPS S2p3/2スペクトルで164eV及び169eVの結合エネルギーを示す結合状態であり、それぞれ、C-S-C(サルファイド)結合及びC-SO-C(スルフォン)結合に相当する。ただし、この硫黄ドープ活性炭については、EDLC特性など応用面での評価はされていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2008-141116号公報(要約及び明細書段落[0009])
【0009】

【非特許文献1】山田能正、棚池修、白石壮志,「PTFEの脱フッ素化による多孔質炭素の調製と電気二重層キャパシタへの応用」,炭素材料学会,2004,No.215,P.285-294
【非特許文献2】Marta Sevilla, Antonio B. Fuertes, Highly porous S-doped carbons, Microporous and Mesoporous Materials, 158, 318-323 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献2では、C-S-C(サルファイド)結合が存在すると報告されているが、サルファイド結合では、中心の硫黄原子と隣接する片方の炭素原子から見れば両者間は単結合であり、賦活時の高温(600~800℃)でサルファイド結合は分解してしまい、活性炭の状態ではサルファイド結合は存在しないと考えられる。また、非特許文献2で活性炭の原料として用いられるポリチオフェンは高価であり、より廉価な原料が求められている。例えば、ポリチオフェンに比べて廉価なエボナイトを原料として用いた活性炭についての報告はなされていない。更に、本発明者らの検討によると、エボナイト又はエボナイト炭素化物をKOH賦活しても硫黄は活性炭にドープされないことが判明しており、他の製造方法が求められている。
【0011】
本発明の目的は、3V以上の高電圧充電に対する耐久性が優れた電気二重層キャパシタに好適な蓄電デバイスの電極用活性炭及びこの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点は、硫黄がドープされた活性炭において、比表面積が1500~1700m/gの範囲にあり、ミクロ孔容積が0.6~0.8ml/gの範囲にあり、平均ミクロ孔幅が0.95~1.15nmの範囲にあり、炭素に対する硫黄の原子比が0.05~0.06の範囲にある蓄電デバイス用活性炭である。
【0013】
本発明の第2の観点は、第1の観点の活性炭を電極として用いた電気二重層キャパシタである。
【0014】
本発明の第3の観点は、生ゴムを加硫することにより製造した硫黄含有量が20~40質量%の範囲のエボナイト粉末を大気圧雰囲気下、室温から200~300℃の範囲まで昇温し、大気圧雰囲気下、前記昇温した温度で1~3時間保持することにより不融化を行う工程と、前記不融化したエボナイト粉末を、不活性ガス雰囲気下、700~900℃の範囲まで昇温し、不活性ガス雰囲気下、前記昇温した温度で0.5~2時間保持することにより前記不融化エボナイト粉末を炭素化処理して炭素化エボナイトを得る工程と、前記炭素化エボナイトを不活性ガス雰囲気下、800~950℃の範囲まで昇温し、賦活収率が45~55%の範囲になるように二酸化炭素流通下、前記昇温した温度で保持することにより前記炭素化物を賦活処理して、炭素に対する硫黄の原子比が0.05~0.06の範囲にある活性炭を得る工程とを含むことを特徴とする蓄電デバイス用活性炭の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓄電デバイス用活性炭は、硫黄がドープされた活性炭において、比表面積が1500~1700m/gの範囲にあり、ミクロ孔容積が0.6~0.8ml/gの範囲にあり、平均ミクロ孔幅が0.95~1.15nmの範囲にあり、炭素に対する硫黄の原子比が0.05~0.06の範囲にあることを特徴とする。上記活性炭を用いることで、ドープされた硫黄は電極上での電気分解の抑制効果があるため、3V以上の高電圧充電に対する耐久性が優れた電気二重層キャパシタを製造することができる。また、3V以上の高電圧充電に対する耐久性が向上することにより、電気二重層キャパシタの安全性が高まるだけでなく、エネルギー密度も改善され、電気二重層キャパシタの普及が加速されるという効果も期待される。
【0016】
更に、本発明の蓄電デバイス用活性炭では、親銅元素である硫黄原子が活性炭の細孔側壁に組み込まれているので、銅イオン、水銀イオン、銅イオン等の特定のカチオンに対して強い吸着性を示すことが予想される。そのため、水処理用の活性炭として使用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の蓄電デバイスの電極用活性炭の製造方法を示す図である。
【図2】実施例で使用した電気二重層キャパシタ評価用の二極式セルの構造を示す図である。
【図3】実施例及び比較例の活性炭の77Kでの窒素吸脱着等温線を示す図である。
【図4】実施例の活性炭及びエボナイト炭素化物のX線光電子分光法による分析結果を示す図である。
【図5】実施例及び比較例の活性炭の電気二重層キャパシタの耐久試験前の充放電曲線を示す図である。
【図6】実施例及び比較例の活性炭の電気二重層キャパシタの耐久試験後の充放電曲線を示す図である。
【図7】一般的な電気二重層キャパシタの充放電を示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。

【0019】
図1に示すように、本発明の蓄電デバイスの電極用活性炭の製造方法は、エボナイト粉末を大気圧雰囲気下、室温から200~300℃の範囲まで昇温し、大気圧雰囲気下、前記昇温した温度で1~3時間保持することにより不融化を行う工程と、前記不融化したエボナイト粉末を、不活性ガス雰囲気下、700~900℃の範囲まで昇温し、不活性ガス雰囲気下、前記昇温した温度で0.5~2時間保持することにより前記不融化エボナイト粉末を炭素化処理して炭素化エボナイトを得る工程と、前記炭素化エボナイトを不活性ガス雰囲気下、800~950℃の範囲まで昇温し、賦活収率が45~55%の範囲になるように二酸化炭素流通下、前記昇温した温度で保持することにより前記炭素化物を賦活処理する工程とを有することを特徴とする。

【0020】
本発明の製造に用いられるエボナイトは、生ゴムを長時間加硫して架橋したもので、ボーリングの玉や万年筆の軸などに使われている。エボナイトの構造はポリイソプレンの高分子鎖に硫黄原子を架橋した構造であると考えられ、硫黄含有量は20~40質量%の範囲である。エボナイトの推定構造を次に示す。

【0021】
【化1】
JP0006006624B2_000002t.gif

【0022】
(a)不融化処理
本製造方法の原材料であって、活性炭電極の前駆体であるエボナイトは、株式会社日興エボナイト製造所製のエボナイト粉末を用いる。まず、エボナイト粉末を熱処理炉に入れる。熱処理炉には横型管状電気炉を使用する。炉内を大気圧雰囲気とした熱処理炉を加熱、室温から200~300℃、好ましくは240~260℃の範囲まで昇温速度5℃/分で昇温し、大気圧雰囲気下、前記昇温した温度で1~3時間、好ましくは2時間保持することにより不融化を行う。熱処理後、電気炉を室温まで徐冷する。上記条件の熱処理を施すことにより、不融化したエボナイト粉末を得る。不融化するために昇温する温度を上記範囲に規定したのは、下限値未満では不融化不十分で炭素化収率が低下するという不具合があり、上限を超えると酸化が進みすぎて不融化収率が低下するという不具合があるからである。

【0023】
(b)炭素化処理
次に、上記不融化したエボナイト粉末を熱処理炉に入れた状態で、炉内を不活性ガス雰囲気とした熱処理炉を加熱し、室温から700~900℃、好ましくは750~850℃の範囲まで昇温速度5℃/分で昇温し、不活性ガス雰囲気下、前記昇温した温度で0.5~2時間保持し熱処理する。熱処理後、電気炉を室温まで徐冷する。上記条件の熱処理を施すことにより、前記不融化したエボナイト粉末を炭素化処理してエボナイト炭素化物を得る。不活性ガスには、窒素、アルゴン、ヘリウム等のガスを用いる。炭素化処理するために昇温する温度を上記範囲に規定したのは、下限値未満では炭素化が不十分である不具合があり、上限値を超えると次工程の賦活がされにくい不具合があるからである。

【0024】
(c)賦活化処理
更に、上記炭素化物を熱処理炉に入れた状態で不活性ガス雰囲気下、熱処理炉を室温から800~950℃、好ましくは850~900℃の範囲まで、昇温速度10℃/分で昇温する。次に、不活性ガスの導入を止め、二酸化炭素ガスを導入する。次に、賦活収率が45~55%の範囲、好ましく47~53%になるように、二酸化炭素ガス流通下、前記昇温した温度で保持する。なお、二酸化炭素以外に水蒸気でも同等の賦活が行える。

【0025】
ここで、賦活収率は下記の式で表される、賦活処理による試料質量の変化率である。

【0026】
賦活収率(%)= (賦活後の試料の質量/賦活前の試料の質量) × 100%
前記炭素化物を賦活処理するために昇温する温度を上記範囲に規定したのは、下限値未満では賦活化が十分に行われず、上限値を超えると収率の極度の低下の不具合があるからである。賦活収率を上記範囲に規定したのは、下限値未満では生産性が低すぎるからであり、上限値を超えると十分な比表面積の活性炭が得られず初期容量及び耐久性が劣るからである。賦活処理を二酸化炭素ガス並びに水蒸気雰囲気下で行うのは、ミクロ孔が発達しやすいからである。

【0027】
(e)電極用活性炭の特性と用途
本発明のガス賦活方法により得られた蓄電デバイスの電極用活性炭は、比表面積が1500~1700m/gの範囲にあり、ミクロ孔容積が0.6~0.8ml/gの範囲にあり、平均ミクロ孔幅が0.95~1.15nmの範囲にある。電極用活性炭の比表面積を上記範囲に規定したのは、下限値未満では十分な容量を確保できないからであり、上限値を超えると電極かさ密度が低下し、体積比容量が低下する不具合があるからである。ミクロ孔容積を上記範囲に規定したのは、下限値未満では十分な容量を確保出来ないからであり、上限値を超えると電極かさ密度が低下し、体積比容量が低下する不具合があるからである。平均ミクロ孔幅を上記範囲に規定したのは、下限値未満では電解質イオンがミクロ孔内に吸着できない不具合があるからであり、上限値を超えると電極かさ密度が低下し、体積比容量が低下する不具合があるからである。本発明により得られた蓄電デバイスの電極用活性炭は、電気二重層キャパシタに好適に用いられる。本発明により、3V以上の高電圧充電に対する耐久性が優れた電気二重層キャパシタに好適な蓄電デバイスの電極用活性炭を製造することができる。また、本発明のガス賦活方法により得られた蓄電デバイスの電極用活性炭は、好ましくは、比表面積が1550~1650m/gの範囲にあり、ミクロ孔容積が0.65~0.75ml/gの範囲にあり、平均ミクロ孔幅が1.0~1.1nmの範囲にある。上記活性炭により、体積比容量に優れているだけでなく、高い容量維持率を示し、3.2Vという高電圧での充電に対して極めて優れた耐久性を有する電気二重層キャパシタを製造することができる。
【実施例】
【0028】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例>
まず、硫黄含有量が25質量%のエボナイト粉末(株式会社日興エボナイト製造所製)を熱処理炉に入れ、炉内を大気圧雰囲気下、昇温速度5℃/分で室温から250℃まで昇温し、大気圧雰囲気下2時間保持してエボナイト粉末を不融化した。次に、この不融化したエボナイト粉末を窒素雰囲気下昇温速度5℃/分で室温から800℃まで昇温した後、窒素雰囲気下1時間保持してエボナイト炭素化物(EC)を調製した。次に、このエボナイト炭素化物を窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から850℃まで昇温した後、二酸化炭素ガスに切り替え、二酸化炭素ガスを流通させて850℃で12時間保持することにより賦活処理を行って硫黄ドープ活性炭(EC-12h)を得た。
【実施例】
【0029】
<比較例1>
4時間保持することにより賦活処理した以外、実施例と同じエボナイト粉末を用い、実施例と同様にして硫黄ドープ活性炭(EC-4h)を得た。
【実施例】
【0030】
<比較例2>
8時間保持することにより賦活処理した以外、実施例と同じエボナイト粉末を用い、実施例と同様にして、硫黄ドープ活性炭(EC-8h)を得た。
【実施例】
【0031】
<比較例3>
フェノール樹脂繊維を炭素化し、これを水蒸気賦活して調製した活性炭素繊維(AC)を用意し、メノウ乳鉢で粉砕した。
【実施例】
【0032】
<比較試験1及び評価>
実施例及び比較例1~3で得られた活性炭の物性を測定した。その結果を以下の図3及び表1に示す。
【実施例】
【0033】
・ 窒素吸脱着測定
実施例及び比較例1~3で得られた活性炭について、比表面積/細孔分布測定装置(商品名:BELSORP28SA、日本ベル株式会社製)を用いて、77Kにおける窒素吸脱着測定をそれぞれ行った。測定の前処理は、真空下、200℃で2時間20分熱処理することで行った
【実施例】
【0034】
図3に、各試料の吸脱着等温線を示す。黒色あるいは灰色塗りのマーカーは吸着等温線、白抜きのマーカーは脱着等温線を表す。実施例中に記載されたエボナイト炭素化物、並びに比較例1、3については典型的なI型吸着等温線を示し、ミクロ孔主体の多孔質炭素であることが判明した。実施例及び比較例2は等温線にヒステリシスが確認されたが、その程度は小さく、基本的にはI型等温線を示したため、ミクロ孔主体の細孔構造を有すると言える。
【実施例】
【0035】
・ BET比表面積
実施例及び比較例1~3で得られた活性炭について、吸着等温線の相対圧0~0.05の領域でのBETプロットからBET比表面積を算出した。
【実施例】
【0036】
・ メソ孔容積、ミクロ孔容積及び平均ミクロ孔幅
実施例及び比較例1~3で得られた活性炭について、DH法からメソ孔容積、DR法からミクロ孔容積及び平均ミクロ孔幅を求めた。なお、ここでいうミクロ孔とは2nm未満、メソ孔とは2~50nmの範囲をいう。
【実施例】
【0037】
・ エネルギー分散X線分析(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDS)
実施例及び比較例1~3で得られた活性炭について、EDS検出器を装備した走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下、SEMという。)(商品名:JSM-6510A、日本電子株式会社製)により、硫黄含有量(硫黄/炭素原子比)を評価した。
【実施例】
【0038】
・ X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)
エボナイト炭素化物及び実施例で得られた活性炭について、X線光電子分光分析装置(商品名:AXIS-NOVA、株式会社島津製作所製)を用いてXPS分析を行い、硫黄の化学結合状態を調べた。線源として、モノクロ化したAlKα線を用いた。
【実施例】
【0039】
表1に、窒素吸脱着測定により求めた細孔構造パラメーターを示す。表から明らかなように、エボナイト炭素化物のCO賦活により、賦活時間の増加とともに賦活収率が減少し、細孔構造が発達することが分かる。賦活処理を12時間行った実施例の活性炭は比表面積が1600m/gを超えており、高度にミクロ孔が発達した活性炭であると言える。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP0006006624B2_000003t.gif
【実施例】
【0041】
エボナイト炭素化物及び実施例のS2pスペクトルを図4に示す。165eV及び164eV付近にピークが観察された。これらのピークは、文献(G.DoMazetis, M.Raoarum, B.D.James, J.Liesegang, P.J.Pigram, N.Brack, and R.Glaisher, Energy & Fuels, 20, 1556-1564 (2006))を参考にすると、それぞれS2p1/2,S2p3/2のチオフェン型硫黄に帰属する。従って、エボナイト炭素化物及び賦活物中にはチオフェン類似の構造を有する硫黄原子が存在し、それ以外の結合状態の硫黄原子は存在しないと推定される。チオフェンの分子構造を次に示す。
【実施例】
【0042】
【化2】
JP0006006624B2_000004t.gif
【実施例】
【0043】
<比較試験2及び評価>
(電気二重層キャパシタ用電極の作製)
実施例及び比較例1~3で得られた活性炭とともに、導電性補助剤としてアセチレンブラックを、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系粘結材をそれぞれ用意した。30mgの上記活性炭にアセチレンブラック及びPTFE系粘結材を添加し混合した。混合割合は炭素材料が85質量%、アセチレンブラックが10質量%、PTFE系粘結材が5質量%となるように配合を調整した。この混合物をIR錠剤成型器を用いて、プレス機で約6MPaで20分加圧して直径13mm、厚さ約0.5mmのディスク状に成形することにより、ディスク状活性炭を得た。
【実施例】
【0044】
次に、集電体としてメッシュ状アルミニウムを用意し、このメッシュ状アルミニウムに実施例及び比較例1~3で得られたディスク状の活性炭を重ね圧着することにより、活性炭と集電体とを一体化させて、電極をそれぞれ作成した。
【実施例】
【0045】
具体的には、メッシュ状アルミニウムとしてのアルミニウムラス(日金加工株式会社製、LW:SW:W=2:1:0.2)に実施例及び比較例1~3で得られたディスク状活性炭の電極を重ね、プレス機を用いて約2MPaにて10分加圧して圧着した。
【実施例】
【0046】
(電気二重層キャパシタ用二極式セルの作製)
電気二重層キャパシタの容量測定及び耐久試験を行うために、図2に示す構造を有するアルミニウム製密閉式二極式セルを用いた。この二極式セルは、電気配線を有する正極側アルミニウム製ボディ21上に、正極側集電体22-正極側電極23-セパレータ24-テフロン(登録商標)ガイド25-負極側電極26-負極側集電体27の順に重ね、両電極間に電解液28を含浸させる。そして、重ね合わせた負極側集電体27上にスプリング29を備えた電極押さえ31、電気配線を有する負極側アルミニウム製ボディ32を載せ、正極側アルミニウム製ボディ21と負極側アルミニウム製ボディ32とで挟み込んだ構造を有する。電気二重層キャパシタの電解液には、1.0M濃度のトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート((C)CHNBF)を電解質塩として含むプロピレンカーボネート溶液を用いた。この電解液は、電気二重層キャパシタの有機系電解液として一般的である。
【実施例】
【0047】
また、電解液の含浸は、活性炭電極を熱真空乾燥器で200℃において2時間乾燥後、アルゴングローブボックス内に移し、30分間電解液を保持することにより行った。
【実施例】
【0048】
(耐久試験)
電気二重層キャパシタの耐久性評価のための容量測定は、40℃において定電流法(電流密度:80mA/g;測定電圧範囲:0~2.5V)により行った。まず、5サイクル目の容量を初期容量とした。次に、容量測定後、70℃においてセルに3.2Vの電圧を100時間印加することにより耐久試験を行った。続いて、耐久試験後、再び40℃に戻し、容量を定電流法(電流密度:80mA/g:測定電圧範囲:0~2.5V)により求めた。なお、5サイクル目の容量を終止容量とした。そして耐久試験前後の容量の比(終止容量と初期容量の比)を容量維持率とした。図5に実施例及び比較例1~3の活性炭を用いた電気二重層キャパシタの耐久試験前の充放電曲線を、図6に耐久試験後の充放電曲線を、それぞれ示す。また、表2に、初期容量及び容量維持率を示す。
【実施例】
【0049】
図5,6から明らかなように、実施例も比較例1~3もともに、耐久試験前には、キャパシタに特有な直線的な充放電曲線が示された。しかし、耐久試験後には、比較例1の場合には耐久試験後の充放電曲線の変化は大きく、放電に要する時間が減少した。これは、耐久試験によって容量が低下したことを意味する。
【実施例】
【0050】
表2から、実施例では、体積比容量に優れているだけでなく、高い容量維持率を示し、3.2Vという高電圧での充電に対して極めて優れた耐久性を有することが明らかになった。
【実施例】
【0051】
【表2】
JP0006006624B2_000005t.gif

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の方法により製造された硫黄がドープされた蓄電デバイスの電極用活性炭は、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスの電極に用いられる。
【符号の説明】
【0053】
10 電気二重層キャパシタ
11 電解液
12 正極
13 負極
14 電源
21 正極側アルミニウム製ボディ
22 正極側集電体
23 正極側電極
24 セパレータ
25 テフロン(登録商標)ガイド
26 負極側電極
27 負極側集電体
28 電解液
29 スプリング
31 電極押さえ
32 負極側アルミニウム製ボディ
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図2】
6