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明細書 :透明導電体及び透明導電体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6099260号 (P6099260)
公開番号 特開2014-162033 (P2014-162033A)
登録日 平成29年3月3日(2017.3.3)
発行日 平成29年3月22日(2017.3.22)
公開日 平成26年9月8日(2014.9.8)
発明の名称または考案の名称 透明導電体及び透明導電体の製造方法
国際特許分類 B32B   5/14        (2006.01)
H01B   5/14        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
C23C  16/27        (2006.01)
FI B32B 5/14
H01B 5/14 A
H01B 13/00 503B
C23C 16/27
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2013-033096 (P2013-033096)
出願日 平成25年2月22日(2013.2.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成24年11月28日 http://www.mrs.org/f12-program-ee/
審査請求日 平成27年12月24日(2015.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】川原田 洋
【氏名】長谷川 雅考
個別代理人の代理人 【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100148253、【弁理士】、【氏名又は名称】今枝 弘充
【識別番号】100148079、【弁理士】、【氏名又は名称】梅村 裕明
審査官 【審査官】福井 弘子
参考文献・文献 米国特許出願公開第2003/0170906(US,A1)
特開平08-288068(JP,A)
特開平11-185964(JP,A)
米国特許第06198218(US,B1)
特表2008-529285(JP,A)
Xianfen WANG,Surface Functional Nanocrystalline Diamond for Biosensor and Transparent Electrode,早稲田大学 博士論文,日本,2012年 7月,第96頁-第113頁
調査した分野 B32B 1/00-43/00
C23C 16/27
H01B 5/14
H01B 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ダイヤモンド薄膜を備える透明導電体であって、
前記ダイヤモンド薄膜は、
600℃以上の成膜温度で表面に形成され、ホウ素濃度が1×1021cm-3以上の高濃度領域と、
前記高濃度領域の深さ方向に形成され、ホウ素濃度が前記高濃度領域より1桁以上低い低濃度領域と、
前記高濃度領域と前記低濃度領域の間に形成され、深さ方向にホウ素の濃度勾配を有する領域と
を備えることを特徴とする透明導電体。
【請求項2】
前記高濃度領域の結晶粒の平均粒径が50nm以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電体。
【請求項3】
移動度が2cm-1・sec-1以上、シート抵抗が350Ω/Sq以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明導電体。
【請求項4】
ホウ素濃度が1×1021cm-3以上の高濃度領域を有するダイヤモンド薄膜を備える透明導電体を製造する製造方法であって、ホウ素濃度が前記高濃度領域より1桁以上低い低濃度領域上に、前記高濃度領域を600℃以上の成膜温度で形成する工程を備えることを特徴とする透明導電体の製造方法。
【請求項5】
移動度が2cm-1・sec-1以上、シート抵抗が350Ω/Sq以下であることを特徴とする請求項4記載の透明導電体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電体及び透明導電体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電体は、光透過性と導電性とを有し、液晶パネルやプラズマディスプレイ(PDP;Plasma Display Panel),有機ELパネル(OELD;Organic Electroluminescence Display)などのフラットパネル・ディスプレイ(FPD;Flat Panel Display)に多く用いられる。さらに透明導電体は、抵抗膜方式のタッチ・パネル,太陽電池,青色発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)の電極などにも用いられる。
【0003】
現在、実用化されている透明導電体として、スズを添加した酸化インジウム(ITO;Indium Tin Oxide)が知られている。ITOは、主にスパッタリング法により形成される。ところが、ITOは主成分であるインジウムが希少な天然資源であると共に、製造工程において原料であるインジウムのターゲット材に多量の廃材が生じる、という問題がある。
【0004】
これに対し、カーボン等の一般的な物質を用いたITOに代わる透明導電体が開発されている(例えば特許文献1)。特許文献1には、グラフェン膜による結晶性炭素膜を用いた透明導電体が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-162442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に開示されたグラフェン膜による透明導電体は、p型及びn型のいずれも形成し得るものの、いずれか一方の極性を安定的に形成することが困難である、という問題があった。また、ITOはn型化合物半導体である。したがって従来は、p型の透明導電体を安定して得ることが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、安定的に形成することができるp型の透明導電体及び透明導電体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る透明導電体は、ダイヤモンド薄膜を備える透明導電体であって、前記ダイヤモンド薄膜は、600℃以上の成膜温度で表面に形成され、ホウ素濃度が1×1021cm-3以上の高濃度領域と、前記高濃度領域の深さ方向に形成され、ホウ素濃度が前記高濃度領域より1桁以上低い低濃度領域と、前記高濃度領域と前記低濃度領域の間に形成され、深さ方向にホウ素の濃度勾配を有する領域とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る透明導電体の製造方法は、CVD法によりホウ素濃度が1×1021cm-3以上の高濃度領域を有するダイヤモンド薄膜を備える透明導電体を製造する製造方法であって、ホウ素濃度が前記高濃度領域より1桁以上低い低濃度領域上に、前記高濃度領域を600℃以上の成膜温度で形成する工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホウ素の濃度が低濃度である低濃度領域上に、ホウ素の濃度が高濃度である高濃度領域を備えることにより、高い光透過性を有すると共に優れた電気的特性を得ることができる。したがって、安定的にp型の透明導電体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る透明導電体の二次イオン質量分析による深さ測定の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例に係る透明導電体の移動度に対するキャリア密度特性を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例に係る透明導電体の画像であり、本図(a)は透明導電体の外観写真、本図(b)は成膜時間を10分間とした透明導電体のSEM画像、本図(c)は成膜時間を15分間とした透明導電体のSEM画像である。
【図4】本発明の実施例に係る透明導電体の光透過スペクトル測定の結果を示すグラフであり、本図(A)は成膜時間が10分間、本図(B)は成膜時間が15分間の場合の結果である。
【図5】本発明の実施例に係る透明導電体の光学透過率に対する電気的特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

【0013】
(1)全体構成
本実施形態に係る透明導電体は、基板上に形成されたダイヤモンド薄膜で構成されており、ホウ素濃度が低い低濃度領域を含む第1層と、当該第1層上に形成されホウ素濃度が高い高濃度領域を含む第2層と、第1層と第2層の間に形成され深さ方向にホウ素の濃度勾配を有する領域とを備える。基板は特に限定されないが、例えばSiO基板を用いることができる。第1層に含まれる低濃度領域は、ホウ素濃度が4×1020cm-3以下であることが好ましい。第1層の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば、190nm程度とすることができる。ホウ素濃度は、二次イオン質量分析(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer:SIMS)により測定したピーク濃度をいう。

【0014】
第2層に含まれる高濃度領域は、ホウ素濃度が1×1021cm-3以上であることが好ましい。第2層を形成する結晶粒は、平均粒径が50nm以下であることが好ましい。平均粒径が50nmを超えると、透明導電体の透過率が60%以下に低下する。第2層の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば、40nm以上とすることができる。

【0015】
このように構成された透明導電体は、移動度が2cm-1・sec-1以上、キャリア密度が1~5×1021cm-3である。なお、透明導電体は、ダイヤモンドで形成された第2層にホウ素がドープされているので、p型である。

【0016】
(2)透明導電体の製造方法
次に本実施形態に係る透明導電体の製造方法について説明する。透明導電体は、基板上に第1層、第2層を順に積層することにより形成することができる。第1層及び第2層は、マイクロ波プラズマCVD法により形成することができる。

【0017】
第1層は、原料ガスとして例えばメタンおよび炭素酸化物(COまたはCO)を用いることができる。成膜中の基板温度は、100℃~500℃、雰囲気圧力は0.1Pa~1000Paとすることができる。

【0018】
第2層は、原料ガスとしては、少なくとも炭素化合物及びホウ素化合物を含み、水素を含む混合ガスを用いることができる。炭素化合物としては、メタン、エタン、プロパン、エタノール等、炭素を含む種々の材料を用いることができる。ホウ素化合物としては、ジボラン(B)、トリメチルホウ素(B(CH)、酸化ホウ素(B)、ホウ酸(メタホウ酸、オルトホウ酸、四ホウ酸等)、固体ホウ素(B)等、ホウ素を含む種々の材料を用いることができる。原料ガスのホウ素と炭素の原子数の比(B/C比)は、たとえば1000ppmから20000ppm、好ましくは5000ppmから10000ppmのものとすることができる。

【0019】
成膜中の基板温度は、600℃~900℃、好ましくは700℃前後、雰囲気圧力は100Pa~100000Pa、とすることができる。上記の条件で成膜することにより、SiO基板上に、第1層及び第2層が積層された透明導電体を作製することができる。なお、第2層成膜における温度測定には赤外放射温度計を適用した。

【0020】
(3)透明導電体の特性
上記の方法によって作製されたホウ素の濃度が低い低濃度領域を有する第1層と、ホウ素の濃度が高い高濃度領域を有する第2層とを積層して形成された透明導電体は、以下のような特性を有する。以下で用いた透明導電体は、いずれもSiO基板上に形成した。また、第1層は、米国特許8007909、日本特許4538587、日本特許4793662、日本特許5158525、特願2011-105166、特願2012-033873、に開示される装置および手法を用いて作製され、さらに開示される物質であり、具体的には、成膜中の基板温度370℃、雰囲気圧力20Paで合成し、膜厚を190nmとした。第2層は、原料ガスとしてメタンとトリメチルホウ素(B(CH)を用い、雰囲気圧力を10000Pa、原料ガスのB/C比は、6000ppmとした。本実施例に係る第2層は、成膜温度を740~820℃、成膜時間を10分から15分間として、膜厚が40nm、45nm、55nm、75nm、83nmの5種類からなる透明導電体を用意した(表1)。

【0021】
【表1】
JP0006099260B2_000002t.gif

【0022】
(3-1)SIMSによる深さ測定
作製した透明導電体についてSIMSにて測定を行ったところ、図1に示すような測定結果が得られた。本図は横軸に膜厚を示し、縦軸にホウ素濃度を示しており、線が測定結果である。

【0023】
図中、1は第1層のみの場合、2は第2層の膜厚が40nmの場合(S1)、3は第2層の膜厚が55nmの場合(S3)、4は第2層の膜厚が75nmの場合(S4)の測定結果である。本図から明らかなように、第2層の表面側に濃度が6×1021cm-3を超えるホウ素が均一にドープされていることが確認できた。

【0024】
なお、1020cm-3の濃度のホウ素がドープされたダイヤモンド薄膜は、金属導電性があることが知られているので、本実施例に係る透明導電体が電気伝導性を有することが予測できる。

【0025】
(3-2)移動度とキャリア密度の関係
次に移動度に対するキャリア密度特性を調べた。その結果を表2及び図2に示す。本図は横軸にキャリア密度を示し、縦軸に移動度を示しており、各点が測定結果である。キャリア密度が略1021cm-3を超えると、移動度が2cm-1・sec-1以上の高移動度領域が存在することが確認できた。

【0026】
【表2】
JP0006099260B2_000003t.gif

【0027】
因みにホウ素濃度は最大で6×1021cm-3に達したが、ホール効果により推定されるキャリア密度は1.1~2.2×1021cm-3であり、第2層にドープされたホウ素の電気的な活性化率は15~35%である。

【0028】
(3-3)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)観察
1×1cmのSiO基板上に第1層を形成し、当該第1層上に780℃で成膜時間を10分間とした第2層11(図3(a)、膜厚40nm、S1)と、成膜時間を15分間とした第2層12(図3(a)、膜厚75nm、S4)とをそれぞれ形成した。作製した透明導電体についてSEM観察を行った。その結果を本図(b)(c)に示す。

【0029】
成膜時間を10分間とした場合の第2層の膜厚は40nm、結晶粒の平均粒径は20nm(本図(b))であるのに対し、成膜時間を15分間とした場合の第2層の膜厚は75nm、結晶粒の平均粒径は45nm(本図(c))に増加した。膜厚が厚く平均粒径が大きくなると、透明導電体の透明度が下がる。
因みに、結晶粒の粒径が50nm以上では透過率が低下することが知られている。

【0030】
(3-4)光透過スペクトル測定
次に成膜温度が異なる3種類の第2層の光透過スペクトルを測定した。その結果を図4に示す。本図は横軸に波長を示し、縦軸に透過率を示しており、一点鎖線が成膜温度780℃、破線が成膜温度820℃、点線が成膜温度740℃の測定結果である。図4(A)は成膜時間が10分間、図4(B)は成膜時間が15分間である場合の測定結果である。膜厚は図中に記載した。なお、測定結果は、基板と第1層のみからなる基準サンプルのスペクトルを、基板と透明導電体とを有する試料のスペクトルから差し引いた値を用いた。

【0031】
本図から第2層の光透過スペクトルは、光の波長に対応して屈折率が変化しており、ホウ素ドープダイヤモンドディスプレイに見られる典型的な波長依存性を有する振動スペクトルを示すことが確認できた。第2層は、優れた光透過性を有し、成膜条件を最適化することにより90%の透過率が得られた。

【0032】
(3-5)透過率とシート抵抗の関係
次にホール効果を測定することにより、第2層のシート抵抗を測定した。その結果を図5に示す。本図は横軸にシート抵抗を示し、縦軸に透過率を示しており、■が第2層、○が比較例としてグラフェン膜の測定結果である。第2層は、成膜温度を700℃~800℃、成膜時間を10分~15分として形成し、膜厚を40nm~83nmとした。グラフェン膜は1000℃を超える成膜温度で形成した。本図から、本実施例に係る第2層はグラフェン膜と同等の高い透過率、及び低いシート抵抗を得られることが確認できた。本実施例によれば、グラフェン膜に比べ低温度で、グラフェン膜と遜色ない特性を有する第2層を形成することができる。なおホール効果はAC(交流)測定による結果である。

【0033】
(4)効果
本実施形態に係る透明導電体は、ホウ素の濃度が低い低濃度領域を有する第1層上に、ホウ素の濃度が高い高濃度領域を有する第2層を積層して形成したことにより、高い移動度と低いシート抵抗を得ることができる。したがって透明導電体は、高い光透過性を有すると共に優れた電気的特性を得ることができる。また本実施形態によれば、安定的にp型の透明導電体を形成することができる。

【0034】
(5)透明導電体の用途
上記のように構成される透明導電体は、当該透明導電体が有する優れた光透過性と電気的特性を基に、p型透明電極、太陽電池、エレクトロルミネッセンス、耐環境性に優れたディスプレイなどに利用することができる。

【0035】
(6)変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。

【0036】
上記実施形態では、透明導電体は第1層上に第2層を成膜することにより形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ホウ素を加えずに純度の高いダイヤモンド層を形成しながら連続的に、ホウ素濃度を徐々に高くして成膜することにより形成してもよい。この場合透明導電体は1層で構成される。

【0037】
また上記実施形態では、透明導電体をマイクロ波プラズマCVD法により作製する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、2000℃以上に加熱したホットフィラメントを用いた高密度プラズマCVD法により形成することとしてもよい。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4