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明細書 :電気化学システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6226261号 (P6226261)
公開番号 特開2014-126532 (P2014-126532A)
登録日 平成29年10月20日(2017.10.20)
発行日 平成29年11月8日(2017.11.8)
公開日 平成26年7月7日(2014.7.7)
発明の名称または考案の名称 電気化学システム
国際特許分類 G01R  27/02        (2006.01)
H01M  10/48        (2006.01)
H02J   7/00        (2006.01)
FI G01R 27/02 A
H01M 10/48 P
H02J 7/00 Q
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2012-285550 (P2012-285550)
出願日 平成24年12月27日(2012.12.27)
審査請求日 平成27年10月2日(2015.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】逢坂 哲彌
【氏名】門間 聰之
【氏名】横島 時彦
【氏名】向山 大吉
【氏名】奈良 洋希
個別代理人の代理人 【識別番号】100076233、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 進
【識別番号】100101661、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 靖
【識別番号】100135932、【弁理士】、【氏名又は名称】篠浦 治
審査官 【審査官】山崎 仁之
参考文献・文献 特開2005-180927(JP,A)
特開2010-156702(JP,A)
特開2003-090869(JP,A)
特開2012-015932(JP,A)
特開平08-125441(JP,A)
調査した分野 G01R 27/02
H01M 10/48
H02J 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の電極と電解質とを含む二次電池と、
電流がゼロとならない第1の周波数の矩形波信号を発生し前記二次電池に連続して印加するパワーコントローラーと、
前記矩形波信号に対する前記二次電池の応答信号をフーリエ変換して、前記第1の周波数の整数倍の複数の第2の周波数の成分を含む周波数特性を算出するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部が算出する前記周波数特性をもとに前記二次電池の前記第1の周波数および前記複数の第2の周波数におけるインピーダンス特性を算出し、前記インピーダンス特性から前記二次電池の特性変化を検出する算出部と、を具備することを特徴とする電気化学システム。
【請求項2】
前記複数の第2の周波数が、前記第1の周波数の奇数倍の周波数であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項3】
前記パワーコントローラーが、複数の前記第1の周波数の矩形波信号により構成された、前記第1の周波数よりも低い第3の周波数の信号を前記二次電池に印加し、
前記フーリエ変換部が、前記第3の周波数の成分を含む周波数特性を算出することを特徴とする請求項2に記載の電気化学システム。
【請求項4】
前記パワーコントローラーが、複数の周波数の矩形波信号を順に前記二次電池に印加し、
前記フーリエ変換部が、前記複数の周波数のそれぞれの整数倍の複数の周波数の成分を含む周波数特性を算出することを特徴とする請求項2に記載の電気化学システム。
【請求項5】
前記複数の矩形波信号の周波数が、その奇数倍の周波数が異なるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の電気化学システム。
【請求項6】
前記パワーコントローラーが、互いに接続された複数の二次電池からなる電池ユニットに対して前記矩形波信号を印加し、前記算出部が、前記電池ユニットの特性変化を検出することを特徴とする請求項に記載の電気化学システム。
【請求項7】
前記二次電池の内部抵抗が10mΩ以下であることを特徴とする請求項に記載の電気化学システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の電極と電解質とを含む電気化学セルの特性を測定する電気化学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電極と電解質とを含む電気化学セルのインピーダンス測定は、電気化学反応のメカニズム解明等のために広く使用されている。インピーダンス測定法として、測定対象の電気化学セルに、印加する正弦波信号の周波数を走査する交流インピーダンス法が知られている。
【0003】
交流インピーダンス法では、周波数特性分析器(FRA:Frequency Response Analyzer)とポテンショスタットとが用いられる。FRAは、電気化学セルに所定の周波数の正弦波信号を印加するための周波数応答信号を出力する。ポテンショスタットは電気化学セルに印加する電圧(電流)をFRAからの周波数信号に基づき制御する。
【0004】
正弦波信号の周波数を走査することで、複数の周波数におけるインピーダンス、すなわちインピーダンスの周波数特性が取得される。インピーダンスの周波数特性を、Z’(実数インピーダンス)軸を抵抗成分、Z”(虚数インピーダンス)軸をリアクタンス成分(通常は容量性)とする複素平面図に表したインピーダンスの軌跡が、ナイキストプロット(コールコールプロット)である。
【0005】
図1に示したナイキストプロットは、電解質抵抗R、電荷移動抵抗及び被膜抵抗などから成る界面抵抗Rintと、それらに付随する電気二重層などの容量Cと、及び電荷キャリアの拡散Zwと、を考慮した単純なモデルの場合である。すなわち、参照極を用いた電気化学セルでの単純な系の電気化学反応は、電解質中のイオンの移動、電極界面での電荷移動反応、それに伴うイオンの拡散から構成される。なお、参照極を用いない電気化学セルでは,2つの電極(正極、負極)のインピーダンスが含まれるので、半円の軌跡は少なくとも2つの半円が重なった軌跡となる。軌跡を適当な等価回路モデルを用いて解析することで、電気化学セルを構成する複数の電極、及び電解質等の構成要素毎の特性を把握できる。
【0006】
例えば、界面抵抗Rintを示す半円の径が大きくなった場合には、セルが劣化したことを示している。すなわち、電気化学セルが二次電池の場合では、結晶構造の変化など活物質自身の劣化や、電解質中のリチウムイオン電解質成分や有機溶媒が分解し、電解質分解生成物として負極及び正極の表面に有機物や無機物の形で堆積し、リチウムイオンの挿入脱離が阻害されるため、抵抗が上昇すると推察される。
【0007】
近年、普及促進が図られている、電気自動車等は、電気化学セルである二次電池を動力源としている。しかし、交流インピーダンス法にて特性を評価するために、それぞれの自動車に周波数特性分析器及びポテンショスタットを搭載することはコスト高となるため現実的ではない。
【0008】
また、低炭素社会の実現に向けて、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が進められている。再生可能エネルギーを用いて安定した電力供給を行うためには、大規模蓄電システムが不可欠である。
【0009】
大規模蓄電システムは、大容量の二次電池を主要構成要素としている。大容量の二次電池は内部抵抗が非常に低い。このため、交流インピーダンス法にて評価するためには、非常に高価な大容量のポテンショスタットが必要である。例えば、二次電池の内部抵抗が10mΩの場合、電圧を3Vに制御すると電流は300Aとなり、内部抵抗が1mΩの場合では電流は3000Aとなってしまう。また、電圧コントロールも容易ではない。
【0010】
なお、特開2003-090869号公報には、複数の周波数の正弦波を重畳した信号を電池に印加し、応答信号をフーリエ変換することで、複数の周波数におけるインピーダンスを取得する測定装置が開示されている。
【0011】
また、特開2012-185167号公報には、複数の電池を有する蓄電装置において、一の電池から他の電池に擬似正弦波信号を印加することで、インピーダンスを測定することが開示されている
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2003-090869号公報
【特許文献2】特開2012-185167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施形態は、電気化学セルのインピーダンス特性が取得できる簡単な構成の電気化学システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態の電気化学システムは、複数の電極と電解質とを含む二次電池と、電流がゼロとならない第1の周波数の矩形波信号を発生し前記二次電池に連続して印加するパワーコントローラーと、前記矩形波信号に対する前記二次電池の応答信号をフーリエ変換して、前記第1の周波数の整数倍の複数の第2の周波数の成分を含む周波数特性を算出するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部が算出する前記周波数特性をもとに前記二次電池の前記第1の周波数および前記複数の第2の周波数におけるインピーダンス特性を算出し、前記インピーダンス特性から前記二次電池の特性変化を検出する算出部と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、電気化学セルのインピーダンス特性が取得できる簡単な構成の電気化学システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ナイキストプロットの一例を示す図である。
【図2】第1実施形態の電気化学システムの構成図である。
【図3】第1実施形態の電気化学システムのパワーコントローラーが発生する矩形波信号を示す図である。
【図4】第1実施形態の電気化学システムの電気化学セルの応答信号(電圧)を示す図である。
【図5】第1実施形態の電気化学システムの電気化学セルの応答信号(電流)を示す図である。
【図6】第1実施形態の電気化学システムの電気化学セルの応答信号(電圧)をフーリエ変換したスペクトル(パワースペクトル表記)を示す図である。
【図7】第1実施形態の電気化学システムの電気化学セルの応答信号(電流)をフーリエ変換したスペクトル(パワースペクトル表記)を示す図である。
【図8A】フーリエ変換部により算出された入出力スペクトルからインピーダンスを算出する方法を説明する図である。
【図8B】フーリエ変換部により算出された入出力スペクトルからインピーダンスを算出する方法を説明する図である。
【図9】第1実施形態の電気化学システムのナイキストプロットを示す図である。
【図10】第1実施形態の変形例1の電気化学システムの矩形波信号を示す図である。
【図11】第1実施形態の変形例1の電気化学システムの矩形波信号を示す図である。
【図12】第1実施形態の変形例2の電気化学システムのナイキストプロットを示す図である。
【図13】第2実施形態の電気化学システムの構成図である。
【図14】第2実施形態の電気化学システムのナイキストプロットを示す図である。
【図15】第2実施形態の電気化学システムのナイキストプロットを示す図である。
【図16A】実施形態の電気化学システムの電池ユニットを示す図である。
【図16B】実施形態の電気化学システムの電池ユニットを示す図である。
【図16C】実施形態の電気化学システムの電池ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図2に示すように、第1実施形態の電気化学システム1は、電気化学セル10と、パワーコントローラー20と、フーリエ変換部30と、算出部40と、を具備する。

【0018】
電気化学システム1は、ヘキサシアノ鉄の酸化還元反応を解析するためのシステムである。電気化学セル10は、グラッシーカーボンからなる作用極(WE)11と、白金線からなる対極(CE)12と、銀/塩化銀と3M-NaClとからなる参照極(RE)13と、電解質14と、を含む。電解質14は、5mMのK[Fe(CN)]と5mMのK[Fe(CN)]と0.5MのKNOとからなる水溶液である。

【0019】
パワーコントローラー20は、第1の周波数f1の電圧の矩形波信号を参照極(RE)13を基準に発生し、電気化学セル10の作用極(WE)11と対極(CE)12とに印加する。電圧に替えて電流を基準とする信号を用いてもよい。また、参照極(RE)13を使用せず対極(CE)を基準に矩形波信号を発生し、電気化学セル10の作用極(WE)11と対極(CE)12とに印加してもよい。パワーコントローラー20は、電流の矩形波を印可しても良い。単純な矩形波信号を出力するパワーコントローラー20は、例えば、直流電源に所定の周期で動作するON/OFFスイッチを組み合わせただけの構成であってもよい。

【0020】
フーリエ変換部30はパワーコントローラー20が印加した矩形波信号に対する電気化学セル10の応答信号をフーリエ変換し、第1の周波数(f1)の奇数倍の第2の周波数(3f1、5f1、7f1、、)の成分を含む周波数特性(入力信号と出力信号のスペクトル)を算出する演算回路である。算出部40は、フーリエ変換部30が算出した入出力スペクトルをもとに電気化学セル10の複数の周波数におけるインピーダンスと位相差からなるインピーダンス特性を算出する演算回路である。フーリエ変換部30と算出部40とは、一体の回路、例えば、電気化学システム1の全体の制御も行う中央演算回路(CPU:Central Processing Unit)であってもよい。

【0021】
図3は、パワーコントローラー20が出力する第1の周波数(f1=50Hz)の矩形波信号を示している。中点電位は信号を印加しないときの作用極(WE)11と参照極(RE)13との間の電位(浸漬電位)の、0.221V vs.Ag/AgClである。電圧振幅は10mVである。

【0022】
図4及び図5は、矩形波信号に対する電気化学セル10の応答信号を示している。そして、図6及び図7は、フーリエ変換部30が応答信号から算出した入出力スペクトル(パワースペクトル表記)を示している。

【0023】
図6及び図7に示すように、フーリエ変換部30が算出したパワースペクトル(V:電圧、i:電流)には、第1の周波数(f1=50Hz)のピークに加えて、第1の周波数(f1)の奇数倍の第2の周波数(3f1=150Hz~23f1=1150Hz)のピークが含まれていた。すなわち、第1の周波数(f1)の矩形波信号を印加することで、第1の周波数(f1)よりも高い複数の第2の周波数(f2)の成分が取得される。

【0024】
図8Aは、電流矩形波を用いたときの算出部40の、周波数におけるインピーダンス(Z’、Z”)を算出するフローチャートである。作成した矩形波信号をパワーコントローラーを用いて電気化学セルに印可し、入力信号電流及び出力信号電圧をサンプリングし、得られたデータをフーリエ変換により入力スペクトルIと出力スペクトルEを得る。またそのときのスペクトルの相互相関関数及び自己相関関数から、相互相関関数/自己相関関数により、それぞれの周波数におけるインピーダンス(Z’、Z”)を算出する。

【0025】
図8Bは、電圧矩形波を用いたときの算出部40の、周波数におけるインピーダンス(Z’、Z”)を算出するフローチャートである。作成した矩形波信号をパワーコントローラーを用いて電気化学セルに印可し、入力信号電圧及び出力信号電流をサンプリングし、得られたデータをフーリエ変換により入力スペクトルEと出力スペクトルIを得る。またそのときのスペクトルの相互相関関数及び自己相関関数から、自己相関関数/相互相関関数により、それぞれの周波数におけるインピーダンス(Z’、Z”)を算出する。

【0026】
図9は、電気化学セル10のナイキストプロットである。白丸は、フーリエ変換部30が算出した入出力スペクトルの第1の周波数(f1=50Hz)、及び、11種類の第2の周波数f2(3f1=150Hz~23f1=1150Hz)をもとにしたインピーダンスを示しており、黒丸は通常の交流インピーダンス法により取得されたインピーダンスを示している。なお、通常の交流インピーダンス法では、周波数特性分析器及びポテンショスタットを用いて、正弦波(電圧振幅:10mV)の周波数を100kHzから1Hzまで走査した。

【0027】
図9に示すように、実施形態の電気化学システム1により得られたナイキストプロットと、通常の交流インピーダンス法で得られたナイキストプロットとは非常に良く一致している。

【0028】
以上の結果から明らかなように、電気化学システム1は、周波数特性分析器及びポテンショスタットを有しない簡単な構成でありながら、交流インピーダンス法と同様の、電気化学セル10のインピーダンス特性が取得できる。取得されたインピーダンス特性を等価回路モデルを用いて解析することで、電気化学セル10を構成する電極及び電解質等の構成要素毎の特性等を把握できる。

【0029】
なお、フーリエ変換部30が算出する入出力スペクトルにおける、n倍の第2の周波数の強度は、第1の周波数の強度の1/nとなる。このため、ノイズ成分が多い系では高周波成分の取得は困難となる。例えば、図7に示したパワースペクトルでは、周波数23f1よりも高い周波数の成分は、ばらつきが大きく信頼性に欠けるため等価回路モデルを用いた解析に用いることはできなかった。

【0030】
少なくとも1つの第1の周波数(f1)の3倍の第2の周波数(3f1)の成分が取得されただけ、すなわち、2点のデータからなるナイキストプロットであっても、解析は不可能ではない。フーリエ変換部30が算出する入出力スペクトルには、複数の第2の周波数(f2)の成分が含まれていることが好ましく、3以上の第2の周波数(f2)の成分が含まれていることが特に好ましい。

【0031】
なお、電気化学システム1においては、第1の周波数(f1)が、5~50Hzでは、第2の周波数f2として、第1の周波数f1の23倍の周波数(23f3)まで取得可能であった。すなわち、合計12種類の周波数におけるインピーダンスが取得できた。これに対して、f1=250Hzでは、第2の周波数f2は7f1まで取得可能であり、f1=500Hzでは第2の周波数f2は3f1しか取得できなかった。

【0032】
第2の周波数f2をもとにしたインピーダンス応答を安定して得るためには、高いサンプリングレートでの測定が好ましい。サンプリングレートが高いほど、高周波数のf2の測定が容易である。サンプリングレートは第1周波数f1の100倍以上あることがより好ましい。

【0033】
高い周波数でのf1では、パワーコントローラー20での電流の正負が反転する部分にてノイズが発生しやすい。ノイズが発生した場合には電位もしくは電流値をオフセットして電流の正負が反転しないようにすることが好ましい。

【0034】
パワーコントローラー20での電流値が0付近では、十分な電流値が得られる領域とは異なる電流波形を示すことがある。このような場合には電圧もしくは電流値をオフセットして電流が0にならないようにすることが好ましい。

【0035】
また、フーリエ変換部30が算出する入出力スペクトルには、第1の周波数(f1)の奇数倍の周波数(3f1等)の成分だけが含まれていた。これに対して、第1の周波数(f1)がより高くなると、セル10の応答速度の影響から、第1の周波数(f1)の整数倍の周波数(2f1、4f1,、)が含まれてくる場合もある。

【0036】
すなわち、フーリエ変換部30が算出する入出力スペクトルには、第1の周波数(f1)の整数倍の周波数の成分が含まれていてもよい。

【0037】
パワーコントローラー20が出力する矩形波信号は、立ち上がりが非常に急峻な波形に限られるものではない。パワーコントローラー20が出力する矩形波信号も、周波数を上げていくと、ある傾きで変化する、いわゆる鋸波と見なされる。また、パワーコントローラー20が出力する矩形波信号は、立ち上がり立ち下がりが非常に急峻な波形に限られるものではない。パワーコントローラー20が出力する矩形波信号も、周波数を上げていくと、ある傾きで変化する、いわゆる三角波と見なされる。すなわち、本実施形態における矩形波とは、鋸波や三角波も含む概念である。

【0038】
更には、パワーコントローラー20が出力する矩形波信号を、LC回路等の遅延回路を用いて、積極的に鋸波信号としてもよい。

【0039】
鋸波や三角波などでは、フーリエ変換部30が算出する入出力スペクトルには、第1の周波数(f1)の整数倍の周波数の成分が含まれる。

【0040】
<第1実施形態の変形例1>
本変形例の電気化学システム1Aでは、パワーコントローラー20が、第1の周波数(f1)の矩形波信号により構成された、第1の周波数(f1)よりも低い第3の周波数(f3)の信号を印加し、フーリエ変換部が、第3の周波数(f3)の成分を含む入出力スペクトルを算出する。

【0041】
フーリエ変換部30が矩形波信号の第1の周波数(f1)の成分、第1の周波数(f1)よりも高い奇数倍の周波数(3f1、5f1、7f1、、、)の成分、及び、第1の周波数(f1)よりも低い第3の周波数(f3)の成分を含む入出力スペクトルを算出する。更に第3の周波数(f3)の奇数倍の周波数の成分も入出力スペクトルには含まれている。

【0042】
例えば、図10に示すように、パワーコントローラー20は、第1の周波数(f1)の矩形波信号により構成された、第1の周波数(f1)よりも低い第3の周波数(f3)の擬似正弦波信号を生成する。

【0043】
本変形例の電気化学システム1Aは、電気化学システム1が有する効果に加えて、第3の周波数(f3)にもとづく周波数成分も検出できるため、よりインピーダンス解析の精度が高くなる。

【0044】
なお、図11に示すように、例えば、第1の周波数(f1)が、第3の周波数(f3)よりも十分に高い場合には、擬似正弦波は、正弦波と見なすことができる。すなわち、低周波のインピーダンスを取得する場合には、パワーコントローラー20を正弦波発生装置して使用することもできる。

【0045】
パワーコントローラー20のバイポーラー機能によっては、擬似波形が交流波形の場合に、正電圧から負電圧に切り替えるとき、及び負電圧から正電圧に切り替えるときに、ノイズが発生することがある。また、パワーコントローラー20のバイポーラー機能によっては、擬似波形が交流波形の場合に、正電流から負電流に切り替えるとき、及び負電流から正電流に切り替えるときに、ノイズが発生することがある。ノイズを発生させたくない場合には電圧もしくは電流値をオフセットして電圧もしくは電流の正負が反転しないようにすることが好ましい。

【0046】
<第1実施形態の変形例2>
本変形例の電気化学システム1Bでは、パワーコントローラー20が、複数の第1の周波数f1A、f1B、の矩形波信号を印加し、フーリエ変換部30が、複数の第1の周波数のそれぞれの奇数倍の第3の周波数の成分を含む入出力スペクトルを算出する。

【0047】
図12には、パワーコントローラー20が、f1A=5Hz、f1B=50Hz、f1C=250Hz、f1D=500Hzの4種類の第1の周波数の矩形波信号を順に出力したときに、フーリエ変換部30が算出した入出力スペクトルから取得されたデータを白丸でプロットした電気化学セル10のナイキストプロットである。黒丸は図9に示したのと同じ、通常の交流インピーダンス法により取得されたデータである。

【0048】
すなわち、入出力スペクトルから、f1A=5Hz、3f1A=15Hz、5f1A=25Hz、7f1A=35Hz、9f1A=45Hz、f1B=50Hz、3f1B=150Hz、5f1B=250Hz、7f1B=350Hz、9f1B=450Hz、f1C=250Hz、3f1C=750Hz、5f1C=1250Hz、7f1C=1750Hz、f1D=500Hz、3f1D=1500Hzの合計16種類の周波数におけるインピーダンスZ’、Z”が取得された。

【0049】
本変形例の電気化学システム1Bは、電気化学システム1が有する効果に加えて、より多くの周波数における精度の高いインピーダンスが取得可能である。

【0050】
なおパワーコントローラー20が出力する複数の矩形波信号の周波数は、その奇数倍の周波数が同じにならないように設定することが好ましい。すなわち、複数の矩形波信号の周波数の奇数倍の周波数が同じになった場合に、その周波数で取得される成分の誤差からインピーダンス解析が不安定になることがある。更に、周波数が同じにならないように設定することにより、より多くの周波数におけるインピーダンスが取得可能である。

【0051】
<第2実施形態>
図13に示すように、第2実施形態の電気化学システム1Cは、第1実施形態の電気化学システム1と、基本構成は類似している。このため、同じ機能の構成要素の説明は省略する。

【0052】
電気化学システム1Cでは、電気化学セル10Aが大容量二次電池(以下、「電池」という)10Cであり、パワーコントローラー20Cは、当業者にはインバーターと呼ばれている。電池10Cは、例えば、リチウムコバルト酸化物等を含有する正極11Cと、炭素材料等を含有する負極12Cと、LiPFを環状及び鎖状カーボネートに溶解した電解質14Cと、を含むリチウムイオン電池である。なお、電気化学セル10Aは、電気を一時的に蓄えることのできる蓄電部であってもよい。

【0053】
そして、電気化学システム1Cは、電力システム100の大規模蓄電システムである。電力システム100では、風力発電部、太陽光発電部等の発電部50からの発電電力量が、工場、家庭等の負荷部60の電力消費量では不足したときに、電気化学システム1Cの電池10Cから負荷部60に電力が供給される。これに対して、発電電力量が電力消費量を上回ったときには、電池10Cが充電される。

【0054】
なお、電気化学システム1Cが電気自動車の蓄電システムの場合には、モーターが発電部50及び負荷部60となる。すなわち、電力が供給されるとモーターは駆動され、モーターの回転を利用して発電も行われる。

【0055】
図14及び図15は、電気化学システム1Cにより取得された電池10Cのインピーダンス特性を白丸で、通常の交流インピーダンス法で取得されたインピーダンス特性を黒丸で表示しているナイキストプロットであり、電池10Cの充電率(SOC:State Of Charge)が90%~10%の場合の5種類のナイキストプロットを示している。そして、図14は、新品の電池10のナイキストプロットであり、図15は充放電試験を200サイクル行った後(劣化電池)のナイキストプロットである。

【0056】
なお、電気化学システム1Cでは、パワーコントローラー20Cが、50Hzの矩形波信号(オフセット電流=0.5A、振幅±0.5A)の信号を、電池10に印加した。通常の交流インピーダンス法では、周波数特性分析器及び大容量ポテンショスタットを用いて、正弦波(オフセット電流=0.5A、振幅±0.5A)の周波数を100kHzから1Hzまで走査した。ただし、電池10Cは、内部抵抗が10mΩと極めて低いため、通常の交流インピーダンス法での測定は容易ではなかった。

【0057】
図14及び図15から、電気化学システム1Cにより取得された電池10Cのインピーダンス特性は、通常の交流インピーダンス法で取得されたインピーダンス特性と良く一致している。すなわち、電気化学セルが電池10の電気化学システム1Cにも、第1実施形態の電気化学システム1と同様の効果が得られる。更に、電池10Cは、内部抵抗が10mΩと極めて低いが、電気化学システム1Cではインピーダンス特性の取得は容易であった。

【0058】
そして、図15では半円の径(Rint)が図14よりも増加しており、内部抵抗が増加したことを示している。すなわち、算出部40はインピーダンス特性から更に電池10Cの劣化を定量的に検出できる。また、算出部40は、等価回路を用いて解析することで、正極11C、負極12C、及び電解質の劣化度を分離して検出することもできる。更に、算出部40は、電池10Cの劣化が変化しない状態では、電池10Cの充電率を検出することもできる。

【0059】
電気化学システム1Cは、電池の内部抵抗が10mΩ以下であってもインピーダンス特性の取得が容易である。更に、通常の交流インピーダンス法では測定を行うことが極めて困難な内部抵抗が1mΩ以下の電池であってもインピーダンス特性の取得が容易である。

【0060】
また、説明を簡単にするため、電気化学システム1Cは電気化学セルとして、1個の電池10Cを有していた。しかし、電気化学セルが、図16Aに示す複数の電池10Cが直列接続された電池ユニット10D、図16Bに示す複数の電池10Cが並列接続された電池ユニット10E、又は図16Cに示す複数の電池10Cが直列及び並列に接続された電池ユニット10Fであっても、電気化学セルに信号を印加することで、複数の電池10Cからなる電池ユニット10Eの全体としての特性変化を検出することもできる。

【0061】
特に、電池を並列接続した電池ユニット10E、10Fの内部抵抗は、それぞれの電池10Cの内部抵抗よりも低くなるが、電気化学システム1Cによれば、インピーダンス特性の取得が容易である

【0062】
更に、電気化学セルとしては、電気を蓄電できる蓄電デバイスであれば、リチウム二次電池に限られるものではなく、電気化学キャパシタを用いることもできる。

【0063】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変、例えば、実施形態の構成要素の組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、1A~1C…電気化学システム
10…電気化学セル
10C…二次電池
10D~10F…電池ユニット
11C…正極
12C…負極
14…電解質
20…パワーコントローラー
30…フーリエ変換部
40…算出部
50…発電部
60…負荷部
100…電力システム
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8A】
7
【図8B】
8
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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