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明細書 :放電発生状況評価装置及び評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6041213号 (P6041213)
公開番号 特開2014-215076 (P2014-215076A)
登録日 平成28年11月18日(2016.11.18)
発行日 平成28年12月7日(2016.12.7)
公開日 平成26年11月17日(2014.11.17)
発明の名称または考案の名称 放電発生状況評価装置及び評価方法
国際特許分類 G01R  31/30        (2006.01)
G01R  31/00        (2006.01)
FI G01R 31/30
G01R 31/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2013-090307 (P2013-090307)
出願日 平成25年4月23日(2013.4.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 2012年12月14日に岐阜大学医学部で開催された、一般社団法人電子情報通信学会主催の、環境電磁工学研究会(EMCJ)において、文書をもって発表した。
審査請求日 平成28年3月3日(2016.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】大塚 信也
【氏名】坪井 浩太郎
【氏名】岩井 将
個別代理人の代理人 【識別番号】100108660、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 譲
審査官 【審査官】永井 皓喜
参考文献・文献 特開2004-264147(JP,A)
特開平8-233887(JP,A)
特開2013-137222(JP,A)
岩井将, 坪井浩太郎, 大塚信也,ESDガンを用いたプリント配線板上パターン導体間のフラッシオーバ現象の発生タイミング,電気学会全国大会講演論文集,日本,2013年 3月 5日,Vol. 2013, No. 1,Page. 82
岩井将, 坪井浩太郎, 大塚信也, 稲見純, 平林勝次,プリント配線板上パターン導体間のESDサージに対するフラッシオーバ電圧のギャップ長依存性,電気学会電磁環境研究会資料,日本,2012年 6月22日,Vol.EMC-12, No.6-17,Page. 41-44
調査した分野 G01R 31/30
G01R 31/00
G01R 29/08
G01R 29/00
特許請求の範囲 【請求項1】
静電気放電試験器より試験サンプルにインパルス電圧又は電流を印加することにより発生した放電又は絶縁破壊状況を評価する放電発生状況評価装置において、
静電気放電試験器駆動時および放電又は絶縁破壊発生時にそれぞれ前記静電気放電試験器と試験サンプルより発生する放射電磁波信号を計測する電磁波アンテナと、
前記静電気放電試験器駆動時に発生した放射電磁波信号より求めた印加電圧発生時刻と、放電又は絶縁破壊発生時に発生した放射電磁波信号から求めた放電発生時刻との時間差から求めた電圧印加後の絶縁破壊発生タイミングTFO、及びその時刻に基づき推定された絶縁破壊電圧VFOを取得し、かつ表示する評価部本体と、
を備えることから成る放電発生状況評価装置。
【請求項2】
さらに、放電又は絶縁破壊発生時に発生した発光信号を取得する光センサを備えた請求項1に記載の放電発生状況評価装置。
【請求項3】
前記光センサを少なくとも2つ備え、かつ、前記光センサにそれぞれ長さの異なる複数本の光ファイバを取り付けて構成した光センサシステムの少なくとも2つを、異なる方向に配置して、前記光ファイバの受光端部側を測定対象の各分割部位に対向配置したことと複数本の光ファイバの長さの相違に基づき、さらに、前記放射電磁波信号に基づいて、複数箇所での発生場所とその発生タイミングを共に特定する請求項2に記載の放電発生状況評価装置。
【請求項4】
前記静電気放電試験器に入力した試験条件と試験回路の電気回路的条件を前記評価部本体に送って、試験サンプルに印加されるインパルス電圧波形を推定するシミュレーションを行ない、かつ、このインパルス電圧波形のピーク値の前の波頭で絶縁破壊が発生した場合は瞬時値を、また、ピーク値の後の波尾で発生した場合はピーク値を、それぞれ前記絶縁破壊電圧VFOとして取得する請求項1に記載の放電発生状況評価装置。
【請求項5】
前記評価部本体は、推定されたインパルス電圧波形に重乗して、前記絶縁破壊発生タイミングTFO、及び前記絶縁破壊電圧VFOを表示する請求項4に記載の放電発生状況評価装置。
【請求項6】
さらに、試験サンプル上の発光画像を撮影する画像カメラを備え、かつ、前記評価部本体は、この取得した発光画像を表示する請求項1に記載の放電発生状況評価装置。
【請求項7】
静電気放電試験器より試験サンプルにインパルス電圧を印加することにより発生した放電又は絶縁破壊状況を評価する放電発生状況評価方法において、
静電気放電試験器に対して、試験条件を入力し、
前記試験条件に基づき前記静電気放電試験器より、試験サンプルに対して、絶縁破壊を発生させるインパルス電圧を印加し、
静電気放電試験器駆動時および放電又は絶縁破壊発生時にそれぞれ発生する放射電磁波信号を取得し、
前記静電気放電試験器駆動時に発生した放射電磁波信号より求めた印加電圧発生時刻と、放電又は絶縁破壊発生時に発生した放射電磁波信号から求めた放電発生時刻との時間差から求めた電圧印加後の絶縁破壊発生タイミングTFO、及び絶縁破壊電圧VFOを取得して、表示することから成る放電発生状況評価方法。
【請求項8】
前記放射電磁波信号の取得と同時に、放電又は絶縁破壊発生時に発生する発光信号を光センサで取得する請求項7に記載の放電発生状況評価方法。
【請求項9】
前記光センサを少なくとも2つ備え、かつ、前記光センサにそれぞれ長さの異なる複数本の光ファイバを取り付けて構成した光センサシステムを、少なくとも2つ異なる方向に配置して、前記光ファイバの発光信号検出端側を測定対象の各分割部位に対向配置したことと複数本の光ファイバの長さの相違に基づき、さらに、前記放射電磁波信号に基づいて、複数箇所での発生場所とその発生タイミングを共に特定する請求項8に記載の放電発生状況評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気放電試験器より試験サンプルにインパルス電圧又は電流を印加することにより発生した放電又は絶縁破壊状況を評価する放電発生状況評価装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の静電気放電試験装置には、気中放電の発生を知らせる機能がついている。例えば、非特許文献1には、気中放電時の放電が確認できる「放電検出機能」を有する静電気試験器についての記述がある。しかし、この放電検出機能だけでは、いつどのタイミングで放電が発生したかはわからず、放電発生時の瞬時電圧は不明であり、放電抑制の対策技術を考えるための十分な情報が得られなかった。
他方、静電気放電ESDは、立ち上がり時間が1ns以下であり、電圧も数100V~30kV程度と高く、このような急峻な高電圧波形をオシロスコープで測定するための分圧器などのプローブは、市販されておらず、現状では測定できない問題があった。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】ノイズ研究所HP 1366678922080_0.php?content_id=189
【非特許文献2】原 雅則, 「気体放電論」, p.127 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電気放電試験器から出力される静電気放電ESD電圧波形は、立ち上がり時間が1ns以下で非常に急峻であることが知られている。このような急峻で数10kVの電圧波形を計測するための分圧器などのプローブは市販されておらず、現状では波形観測ができない。そのため、静電気放電ESD波形のどの時刻で放電や絶縁破壊が発生したかを知ることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、静電気放電(ESD)試験装置を用いた試験において、基板などの試験サンプルで放電が発生したタイミング及び絶縁破壊電圧を明らかにすることを目的としている。これにより、静電気放電ESDのような急峻な印加電圧において、どのタイミングで、試験サンプルで放電などの電気的異常現象が発生したかを知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放電発生状況評価装置及び評価方法は、静電気放電試験器より試験サンプルにインパルス電圧又は電流を印加することにより発生した放電又は絶縁破壊状況を評価する。電磁波アンテナは、静電気放電試験器駆動時および放電又は絶縁破壊発生時にそれぞれ静電気放電試験器と試験サンプルより発生する放射電磁波信号を計測する。評価部本体は、静電気放電試験器駆動時に発生した放射電磁波信号より求めた印加電圧発生時刻と、放電又は絶縁破壊発生時に発生した放射電磁波信号から求めた放電発生時刻との時間差から求めた電圧印加後の絶縁破壊発生タイミングTFO、及びその時刻に基づき推定された絶縁破壊電圧VFOを取得し、かつ表示する。
【0007】
さらに、放電又は絶縁破壊発生時に発生した発光信号を取得する光センサを備える。また、この光センサを少なくとも2つ備え、かつ、光センサにそれぞれ長さの異なる複数本の光ファイバを取り付けて構成した光センサシステムの少なくとも2つを、異なる方向に配置して、光ファイバの発光信号検出端側を測定対象の各分割部位に対向配置したことと複数本の光ファイバの長さの相違に基づき、さらに、放射電磁波信号に基づいて、複数箇所での発生場所とその発生タイミングを共に特定することができる。
【0008】
静電気放電試験器に入力した試験条件と試験回路の電気回路的条件を評価部本体に送って、試験サンプルに印加されるインパルス電圧波形を推定するシミュレーションを行ない、かつ、このインパルス電圧波形のピーク値の前の波頭で絶縁破壊が発生した場合はその瞬時値を、また、ピーク値の後の波尾で発生した場合はピーク値を、それぞれ絶縁破壊電圧VFOとして取得することができる。評価部本体は、推定されたインパルス電圧波形に重乗して、絶縁破壊発生タイミングTFO、及び絶縁破壊電圧VFOを表示する。さらに、試験サンプル上の発光画像を撮影する画像カメラを備え、かつ、評価部本体は、この取得した発光画像を表示することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、静電気放電試験器を用いた静電気試験において、絶縁破壊が発生したタイミング(電圧印加後の発生時刻)及び絶縁破壊電圧を知ることができる。それにより、従来の絶縁破壊発生の有無だけでなく、放電発生の状態や破壊電圧値を知ることができるようになる。この結果、印加電圧波形が既知であれば、放電電圧を定義できる(波頭であればその瞬時値、波尾であればピーク値が放電発生の電圧となる定義がある)。
【0010】
この電圧を知ることができると、静電気放電ESDのような急峻な電圧波形印加時の放電現象を理解するための放電物理の研究が進展するとともに、製品開発や製品検査における放電発生状況のより詳細な把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を具体化する放電発生状況評価装置の概略構成図である。
【図2】図1に例示の評価部本体をさらに詳細に説明する図である。
【図3】インパルス状電圧波形における絶縁破壊電圧を説明する図である。
【図4】図1に例示した放電発生状況評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】光センサシステムの配置を説明する図であり、(A)は特定部位を対象にして1箇所の絶縁破壊FOを評価する場合を、また(B)は、複数の箇所を評価する場合を例示している。
【図6】2セットの光センサシステムを用いて複数箇所での絶縁破壊の特定を説明する図である。
【図7】同一箇所で発生した2発の絶縁破壊の特定を説明する図である。
【図8】実験で使用した回路構成を示す図である。
【図9】充電電圧Vcを変化させて絶縁破壊FO試験を行ったときの電磁波の観測波形電圧VANTを示す図である。
【図10】光信号と電磁波信号の同期計測における発光信号と放射電磁波信号の関係を示すグラフであり、(B)は(A)を拡大して示す図である。
【図11】プリント基板配線の円盤対円盤電極(ギャップ長g)における絶縁破壊タイミングTFOの充電電圧Vc依存性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化する放電発生状況評価装置の概略構成図である。試験条件として充電電圧Vcを静電気放電ESD試験器に入力する。この充電電圧Vcと共に、例えば静電気放電ESD試験器のCR回路条件(抵抗RとコンデンサC)や試験基板の回路条件(配線の形状や長さ、ギャップ条件、配置素子など)などの電気回路を構成する諸条件も、試験条件として評価部本体にも送られる。静電気放電ESD試験器では、この試験条件に基づいたインパルス状波形の電圧を発生させ、また、評価部本体では、この試験条件と試験回路の電気回路的条件に基づいて、試験サンプルに印加されるインパルス電圧波形のシミュレーションを行う。静電気放電ESD試験器は、例えば、IEC 61000-4-2規格に準拠したそれ自体周知のものであり、静電気放電ESDのような、立ち上がり時間が1ns以下の非常に急峻な高電圧(数10kV)のインパルス電圧波形を印加可能のものである。

【0013】
試験サンプルは、例えば、電子電気機器の製品や開発品あるいはそれらに用いられるプリント基板などの電子回路基板である。静電気放電(ESD)試験において、試験サンプルに対して、静電気放電ESD試験器より電圧を印加して、絶縁破壊(フラッシオーバFO)を発生させる。センサとして、放射電磁波を感度よく指向性を有して計測する電磁波アンテナ、光信号を取得する光センサ、及び試験サンプル上の発光画像を撮影する画像カメラを備える。電磁波アンテナとしては、たとえば、GHz帯の周波数感度を持ち指向性を有するホーンアンテナを用いる。光センサとしては、光電子増倍管(PMT)のような光強度を増幅して検出する受光素子を用いるが、基板近くに光電子増倍管PMTを配置すると試験器からの電磁ノイズの影響を強く受けて計測ができない場合がある。そのため、光電子増倍管PMTは試験サンプルから十分離して電磁シールドの機能を有する暗箱内に配置し、その間は、必要波長を透過させる減衰の少ない光ファイバを用いる。

【0014】
電磁波アンテナは、静電気放電ESD試験器駆動時および放電又は絶縁破壊発生時にそれぞれ静電気放電試験器と試験サンプルより発生する放射電磁波信号を計測する。試験器駆動時および放電又は絶縁破壊発生時の時間差が、評価部本体で評価される。絶縁破壊の発生評価の信頼性をより確保したい試験の場合は、電磁波測定と同時に、発光信号を光センサで取得する。なお、光センサの信号は、光ファイバを通して測定する場合は、そのファイバ長さとセンサから測定本体までのケーブル長さに基づく伝搬時間を考慮しておく必要がある。同様に、電磁波信号は、電磁波アンテナと測定本体までの高周波同軸ケーブル長さを考慮する。

【0015】
試験サンプル上の絶縁破壊の発生を撮影した画像カメラデータは、評価部本体に入力される。電磁波アンテナ及び光センサの出力は、それぞれA/D変換器を介してA/D変換した後に、評価部本体に入力される。

【0016】
図2は、図1に例示の評価部本体をさらに詳細に説明する図である。例示の評価部本体は、入力部と、解析部と、評価部と、表示部を有している。入力部には、充電電圧、回路モデルなどの試験条件を入力する。解析部は、入力された試験条件に基づき、FDTD法(Finite-difference time-domain method;電磁場解析の一手法)などを用いたシミュレーションにより、絶縁破壊が発生する場所に発生するギャップ間発生電圧波形Va(t)を推定する。

【0017】
評価部は、静電気試験器を動作させた後に観測された放射電磁波から求めた印加電圧発生時刻と放電発生時刻から、その時間差を評価することで、試験サンプルにおける絶縁破壊(フラッシオーバ)発生の電圧印加後の発生タイミングTFOを得る。電磁波信号計測による評価が基本であるが、絶縁破壊の発生評価の信頼性をより確保したい試験の場合は、電磁波測定と同時に、発光信号を光センサで取得することでも行う。

【0018】
また、評価部においては、発生タイミングTFOの時刻に基づき絶縁破壊電圧VFOの推定を行う。図3は、インパルス状電圧波形における絶縁破壊電圧を説明する図である(非特許文献2参照)。図3において、異なるピーク値を有する2つの発生電圧波形Va(t)を例示している。VFO1、VFO2はそれぞれ絶縁破壊電圧を示し、また、TFO1、TFO2はそれぞれ絶縁破壊発生タイミングを示している。絶縁破壊電圧VFOは、インパルス状の発生電圧波形Va(t)において、絶縁破壊が波頭で発生した場合はその瞬時値VFO1を、波尾で発生した場合はピーク値VFO2を記録することとする。波頭又は波尾の判断は、絶縁破壊発生タイミングがピーク値が発生する時間の前か後かで行う。

【0019】
また、評価部は、必要に応じての絶縁破壊発生の確認(電磁波アンテナと光センサ信号が同時に発生しているか)、及びその発生場所と個数および複数発生の場合は各発生のタイミングと場所およびそのときの各発生電圧の確認を行う。

【0020】
表示部は、絶縁破壊の発生箇所、絶縁破壊(フラッシオーバ)電圧VFOに加えて、発生電圧波形Va(t)グラフに重乗して絶縁破壊電圧VFO及び発生タイミングTFOを画像表示する。画像表示によって、波形観測ができない状況において、静電気放電ESD波形のどの時刻で放電や絶縁破壊が発生したかを知ることが容易となる。さらに、画像カメラで撮影した基板上の発光画像を表示する。絶縁破壊が複数発生する場合は、その発生全てに対して、発生箇所、絶縁破壊電圧VFOに加えて、発生電圧波形Va(t)グラフに重乗して絶縁破壊電圧VFO及び発生タイミングTFOを画像表示する。なお、発生箇所は、光ファイバシステムの配置により決まる画像カメラで撮影した基板上の各分割領域に対応する領域の番地(例えば、図6(B)に例示するように、6分割の場合は番地P1から番地P9の領域に分割する)を表示する。

【0021】
図4は、図1に例示した放電発生状況評価装置の動作を示すフローチャートである。ステップStep1において、静電気放電ESD試験器と評価部本体に対して、試験条件を入力する。ステップStep2の静電気試験実施において、試験サンプルに対して、静電気放電ESD試験器より電圧を印加して静電気試験を行う。ステップStep3において、電圧印加毎に静電気放電ESD試験器駆動時に発生する放射電磁波信号S1と共にその発生後の放電又は絶縁破壊発生時に発生する放射電磁波信号S2が検出されるかを計測する。また、電磁波測定と同時に、必要に応じて発光信号SLightを光センサで取得する。放射電磁波信号S2と発光信号SLightのいずれの信号も検出されない場合、ステップStep4において、絶縁破壊なしと判断して、その結果をステップStep8で表示する。ステップStep3において信号が検出された場合、ステップStep5において、信号検出は単数箇所か複数箇所かの判断がなされる。単数箇所の信号が検出された場合、ステップStep6において、絶縁破壊発生(絶縁破壊発生タイミングTFO、及び絶縁破壊電圧VFO)の評価を行う。複数箇所の信号が検出された場合、ステップStep7において、全ての絶縁破壊発生(絶縁破壊発生タイミングTFO、及び絶縁破壊電圧VFO)と共に、全ての発生場所の評価を行う。

【0022】
ステップStep8において、結果の表示を行う。即ち、絶縁破壊の発生有無、発生場所、ギャップ間発生電圧波形Va(t)波形、絶縁破壊発生タイミングTFO時間、発光画像、絶縁破壊電圧VFOの推定結果などを表示する。ステップStep9において、静電気試験を継続する場合は、以上の操作を繰り返し、継続しない場合は、ステップStep10において試験を終了する。一般的には、印加電圧を上昇して規定の電圧値まで以上の操作を繰り返すことになる。

【0023】
図5は、光センサシステムの配置を説明する図であり、(A)は特定部位を対象にして1箇所の絶縁破壊FOを評価する場合を、また(B)は、複数(N)の箇所を評価する場合を例示している。図5(A)に示すように、電子回路基板状の特定ギャップ(試験サンプル)の絶縁破壊FOに対して、あるいは、特定部位での絶縁破壊FOの評価に対しては、光センサシステムは一つでよい。電磁波信号の検出に加えて、光信号を検出することにより、絶縁破壊の発生評価の信頼性をより確保することができる。静電気放電ESD試験装置の近くでは電磁ノイズの影響が大きく、光センサ(光電子増倍管PMT)を直接試験サンプル上(電子回路基板)の近くにおくことはできない。そのため、光ファイバを用いて光センサの位置を試験サンプルから離す。光センサは電磁シールドの機能を有する暗箱中にいれることが望ましい。

【0024】
図5(B)に示すように、絶縁破壊FO1、FO2、FO3、・・・FONの発生場所が複数ある場合は、少なくとも光ファイバを複数準備する。光センサシステムは、主に、発光の強度波形を計測する光センサ(光電子増倍管PMTやフォトダイオードなど)と、光センサを試験基板から遠ざけた位置に配置できるように(静電気放電ESD試験装置からの電磁ノイズ対策の観点から)光ファイバからなる。基本は、光センサと光ファイバは、1対1対応が望ましい(一つの光センサに光ファイバからの入力は一つ)が、複数の絶縁破壊発生場所とその発生タイミングを評価するには、少なくとも長さの異なる複数の光ファイバが必要になる。複数の光ファイバの長さを異ならせることにより、光センサ(光電子増倍管PMTやフォトダイオードなど)は1つにすることができる。

【0025】
図6は、2セットの光センサシステムを用いて複数箇所での絶縁破壊の特定を説明する図である。用いる光センサシステムの数に応じてA/D変換器の数(例えば、オシロスコープの入力チャンネル数)が多くなるために、2つが効果的であるが、最大でも4つが望ましい。等価的に複数の光センサシステムを用いているように、1つの光センサに、長さの異なる複数の光ファイバを取付け、一つの光センサに多数の入力発光信号を導入する。事前に知っている光ファイバ長と、絶縁破壊の発生タイミングとして別途測定している電磁波信号により、どの光ファイバからの信号かは特定できる。従って、この異なる長さの複数の光ファイバと一つの光センサからなる光センサシステムの少なくとも2セットを異なる方向(例えば、x軸、y軸方向)に配置することと、電磁波アンテナを用いることで、複数箇所での発生場所とその発生タイミングを評価することがきる。

【0026】
図6(A)に示すように、光センサシステムを少なくとも2セット準備し、例えば2セットの場合、x軸、y軸に直交してセットして、その直交軸での評価を行うことで、絶縁破壊の発生場所(領域)が発生タイミングと共に特定できる。図6(A)は、2セットの光センサシステムをx軸、y軸に直交配置し、かつ、一つのセンサシステムの光ファイバを3本とした場合を例示している。図6(B)は、分割領域の番地例を示している。これによって、測定対象(電子回路基板)を3×3の9分割にでき、測定対象の各分割部位に、光ファイバ検出端x1、x2、x3、及びy1、y2、y3を対向させているので、どの部位(分割領域の番地P1からP9)で、かつどのタイミングで絶縁破壊が発生したかを評価することができる。

【0027】
2つの絶縁破壊FO1とFO2が、図6(A)に例示した場所で、かつ、図6(C)に示す時間関係で発生したとする。図6(D)に示すように、電磁波信号EMWは、ESDガンの駆動信号S1の後、TF01の時間遅れでFO1の信号S2_1が検出され、かつ、TF02の時間遅れでFO2の信号S2_2が検出される。このS1の後の二つの電磁波信号S2_1とS2_2によって、2発の絶縁破壊の発生があることが分かる。2つの絶縁破壊FO1とFO2が同一場所で発生したものか否かは、発光像の画像データ及び光センサ信号の時間差から分かる。図6(E)を参照して、異なる場所で発生した場合を以下に説明し、また同一場所で発生した場合を図7(D)を参照して後述する。

【0028】
図6(A)に示すように、2つの光センサPMT1、PMT2は、それぞれ異なる長さの3本の光ファイバを用いてその各受光端部はx1、x2、x3、及びy1、y2、y3の位置に配置されているので、電磁波信号と光信号の時間差Δtの大きさでどの分割領域で絶縁破壊が発生したかを特定できる。図6(E)に示すように、x軸のΔtx或いはy軸のΔtyのそれぞれの大きさに応じて、どの受光端部で検出されたものであるのかを特定することができる。

【0029】
なお、複数の場所で発生する場合は、2発目以降が発生した電圧を正確に推測することは困難になる。破壊により電圧降下が大きくなり、それ以降の電圧波形を予測しにくいので、2発目以降は、主に発生タイミングと発生場所の評価を行うことになる。1発目が発生する電圧が重要なので、1発目の電圧が評価できることが重要である。その結果を、基板上方から撮影している画像データと比較することで、結果の妥当性を確認できる。

【0030】
図7は、同一箇所で発生した2発の絶縁破壊の特定を説明する図である。2つの光センサシステムを、図6と同様に配置する。図7(C)に示す電磁波信号EMWによって、図6と同様に、2発の絶縁破壊の発生があることが分かる一方、2つの絶縁破壊FO1とFO2は、図7(D)に示すように、電磁波信号と光信号の時間差Δtx及びΔtyの大きさがそれぞれ互いに同一であることから同一場所で発生していることが分かる。
【実施例】
【0031】
試験サンプルとしてプリント配線板を用い、ESDガンを用いた静電気放電(ESD:Electro static discharge)サージ電圧に対するプリント配線板上パターンギャップ間の絶縁破壊現象を測定した。
【実施例】
【0032】
図8は、実験で使用した回路構成を示す図である。図8に示すように、試験基板は、ギャップ長gの異なる円盤状の対向電極を用いた。気中放電が支配的となるg=0.1~2.0mmを対象とした。課電電極および接地電極は、厚さ18μmの銅箔によって形成され、厚さ1.6mmのプリント配線板(FR-4)上にパターニングされている。同図に(I)で示される電極左端に、ESDテスターに接続したESDガン(NoiseKen /TCl815R)の接触用放電チップ (放電電極)の尖端を接触させた。(II)で示される電極右端にアースピンを取り付け、試験台上の水平結合板に接続した。ホーンアンテナは、ESDガンのチップ先端から2mの位置に、ESDガンに向けて配置し、20dBのアッテネ-タを介してデジタルオシロスコープ(Tektronix /DPO4104;1GHz)に接続した。このオシロスコープには同軸ケーブルを介して光電子増倍管PMT(浜松ホトニクス/H6780)を接続した。光電子増倍管PMTと結合されている光ファイバ受光端部は、電極間のギャップ間中心に、プリント配線板表面から2cmの高さに固定した。光電子増倍管PMTは暗箱仕様の電磁シールドボックス内に配置し、ESDガンや放電による放射電磁波が、光電子増倍管PMT出力に影響しないようにした。
【実施例】
【0033】
実験は、ESDガンを充電電圧Vcまで充電して、放電させた。この時発生する放射電磁波を、オシロスコープで観測した。一例として、図9(a)-(d)にg=1.0mm の試験基板で、充電電圧Vcを変化させて絶縁破壊FO試験を行ったときの電磁波の観測波形電圧VANTを示す。同図(a)に示されるように、絶縁破壊FOの発生がない場合では、信号は1つ観測された(Sl)。このように、絶縁破壊がない場合の電磁波信号は、静電気放電ESD試験装置の駆動時の信号S1のみとなる。
【実施例】
【0034】
充電電圧Vcを上昇させ、絶縁破壊FO が発生すると、図9(b) (c)に示すように、信号は2つ(Sl、S2)観測された。Slは ESDガン駆動時の試験装置からの放射電磁波で、S2は絶縁破壊FOに起因する電磁波である。このように、絶縁破壊がある場合の電磁波信号は、静電気放電ESD試験装置の駆動時の信号S1と、絶縁破壊時の信号S2の二つ生じる。この2つの信号の時間差ΔTは、充電電圧Vcの増加と共に低下し、充電電圧Vc ≧10kVでは、図9(d)に示すように、S2は観測されなくなった。これは、Slの波尾に、S2が重畳するようになったためであるが、時間レンジを拡大すると2つの信号を確認することができる。Slおよび S2の最大振幅値 VppS1、VppS2は共に、充電電圧Vcの増加と共に増大した。
【実施例】
【0035】
図10(A)(B)は、光信号と電磁波信号の同期計測における発光信号と放射電磁波信号の関係を示すグラフであり、(B)は(A)を拡大して示す図である。一例として、ギャップ長g=1.0mmの試験基板で、充電電圧Vc =7.OkVとしたときのオシロスコープでの発光の計測信号VPMTを図中の上側に、かつ放射電磁波信号VANTの観測電圧波形を図中の下側に示している。図示のように、放射電磁波信号S2は発光信号 SLightとほぼ同時刻であるが、S2はSLightよりもわずかにΔTL早く観測され、その値は 12.5nsであった。この時間差は、オシロスコープまでの放射電磁波信号と発光信号のアンテナや光センサの配置およびケーブル長や光ファイバ長に基づく伝搬時間差に起因するものである。よって、放射電磁波信号S2と発光信号 SLightは同時に発生していることから、S2は絶縁破壊による信号であることが確認できる。
【実施例】
【0036】
図11は、プリント基板配線の円盤対円盤電極(ギャップ長g)における絶縁破壊タイミングTFOの充電電圧Vc依存性の測定結果を示す図である。同図に示されるように、今回実験を行った充電電圧Vcの範囲では、絶縁破壊タイミングTFOは数10ns~数100μsであった。試験基板のギャップ長gによらず、絶縁破壊電圧VFO が発生できる最低の電圧値付近の充電電圧Vcでは、TFOは数10~数100μsであった。充電電圧Vcが増加するとTFOは低下し、200ns以下となることもあった。
【実施例】
【0037】
ギャップ長が広くなると、絶縁破壊電圧は高くなるが、一つのギャップ長に着目すると、印加電圧が高くなるほど絶縁破壊が発生するまでの時間TFOは短くなることが示されている。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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