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明細書 :歩行支援装置および歩行支援方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-128464 (P2014-128464A)
公開日 平成26年7月10日(2014.7.10)
発明の名称または考案の名称 歩行支援装置および歩行支援方法
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
A61H   1/02        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
A61H 1/02 R
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2012-288597 (P2012-288597)
出願日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発明者または考案者 【氏名】三宅 美博
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
【識別番号】100109047、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 雄祐
【識別番号】100109081、【弁理士】、【氏名又は名称】三木 友由
【識別番号】100133215、【弁理士】、【氏名又は名称】真家 大樹
審査請求 未請求
要約 【課題】従来の歩行支援方法の問題点の少なくともひとつを改善可能な歩行支援装置を提供する。
【解決手段】歩行支援装置2は、歩行者4の歩行運動を支援する。歩行者4は、高齢者や障害者、傷病者、アスリートや学習者などであり得る。測定部10は、歩行者4の歩行情報を測定し、その歩行情報を示すデータS2を生成する。装着具20は、測定部10により測定された歩行情報データS2に応じて、歩行者4の腕に作用することにより、歩行時の腕運動に介在し、それにより歩行運動を改善させる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
歩行者の歩行情報を測定する測定部と、
前記測定部により測定された前記歩行情報に応じて、前記歩行者の腕に作用する装着具と、
を備えることを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
前記装着具は、前記測定部による測定結果に応じて前記歩行者の肘関節の状態を調節可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項3】
前記装着具は、前記測定部による測定結果に応じて前記歩行者の肘関節の角度を調節可能に、および/または前記肘関節の可動範囲を制約可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の歩行支援装置。
【請求項4】
前記装着具は、歩行運動と同調して肘関節の曲げ角を制御可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の歩行支援装置。
【請求項5】
前記装着具は、前記測定部による測定結果に応じて前記歩行者の肩関節の状態を調節可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項6】
前記装着具は、前記測定部による測定結果に応じて前記歩行者の肩関節の角度を調節可能に、および/または前記肩関節の可動範囲を制約可能に構成されることを特徴とする請求項5に記載の歩行支援装置。
【請求項7】
前記装着具は、歩行運動と同調して肩関節の曲げ角を制御可能に構成されることを特徴とする請求項6に記載の歩行支援装置。
【請求項8】
前記測定部は、前記歩行者の腰部または腹部に装着されたセンサを含み、
前記歩行情報は、腰部または腹部の軌道を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の歩行支援装置。
【請求項9】
歩行者の歩行情報を測定するステップと、
歩行者の腕に、装着具を装着するステップと、
測定された前記歩行情報に応じて、前記装着具を制御するステップと、
を備えることを特徴とする歩行支援方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の歩行運動を支援し、改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行運動に障害を有する高齢者や障害者、傷病者の歩行運動を支援し、あるいはリハビリテーションにより改善させるために、歩行支援装置が用いられる。従来、歩行を支援、改善する方法としては、脚運動を直接支援する方法があった。具体的には、義足やパワーアシストロボット(アクチュエータ)などにより、脚運動に直接、力学的に介在する方法が提案されている。歩行を支援、改善する別の方法としては、歩行のリズムを計測し、歩行に同調制御されたリズム刺激を歩行者に与えることにより、間接的に脚運動を支援する方法なども提案されている(たとえば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-264320号公報
【特許文献2】特開2006-102156号公報
【特許文献3】特開2005-227909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脚運動に直接介在する方法では、脚部に外部から力学的に作用して歩行運動を促すため、トラブル発生時に転倒を誘発するなど、安全性に課題がある。また、歩行に障害や問題をかかえる歩行者の脚を強制的に動かすため、歩行者に苦痛を与える場合もありえる。さらに、歩行者が、歩行支援装置によりアシストされた状態に慣れると、脚部の運動能力が退化し、むしろ歩行支援装置なしでは歩行できなくなる恐れもあり、学習効果の観点からも課題を有している。
【0005】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、従来の歩行支援方法の問題点の少なくともひとつを改善可能な歩行支援装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は歩行支援装置に関する。歩行支援装置は、歩行者の歩行情報を測定する測定部と、測定部により測定された歩行情報に応じて、歩行者の腕に作用する装着具と、を備える。
【0007】
本発明者は、歩行運動に際して、脚運動と腕運動とは、脳を介して相互に密接に関連していることを認識した。この態様によれば、脚運動ではなく、脳に関連する腕運動に介在することにより、歩行運動を内面から改善することができる。これにより、脚運動に直接介在する場合に比べて、安全性の改善、歩行者に与える苦痛の低減、運動能力の低下の抑制、学習効果の少なくともひとつを実現することができる。
「歩行情報」とは、歩行に関する情報であり、(i)腕や脚、胸部、腰部、腹部、首、頭、重心など各部位の軌跡を示す情報、(ii)歩行時の姿勢を示す情報、(iii)腕振り運動の周波数、脚の運動の周波数、それらの位相関係などの歩行のリズムに関連する情報、を含みうる。また本明細書において「腕」は、肩から指先までの部位を意味する。
【0008】
装着具は、測定部による測定結果に応じて歩行者の肘関節の曲げ角を調節可能に構成されてもよい。装着具は、測定部による測定結果に応じて歩行者の肘関節の可動範囲を制約可能に構成されてもよい。
肘関節の曲げ角を変化させることにより、腕の慣性モーメントを変化させることができ、歩行運動の姿勢を制御することができる。
【0009】
装着具は、測定部による測定結果に応じて歩行者の肩関節の角度を調節可能に構成されてもよい。装着具は、測定部による測定結果に応じて歩行者の肩関節の可動範囲を制約可能に構成されてもよい。
【0010】
装着具は、歩行運動と同調して肘関節の曲げ角を制御可能に構成されてもよい。装着具は、歩行運動と同調して肩関節の曲げ角を制御可能に構成されてもよい。
【0011】
測定部は、歩行者の腰部または腹部に装着されたセンサを含んでもよい。歩行情報は、腰部または腹部の軌道を含んでもよい。
【0012】
装着具は、軌道が左右対称となるように調節されてもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、安全性の改善、歩行者に与える苦痛の低減、運動能力の低下の抑制、学習効果の少なくともひとつを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る歩行支援装置を示す図である。
【図2】測定部により測定される、歩行者の腰部の軌道を示す図である。
【図3】図3(a)、(b)は、装着具を示す図である。
【図4】図4(a)、(b)は、装着具による拘束無しの状態、右肘のみを装着具で拘束した状態、それぞれの腰部の揺動軌道を示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は、装着具による拘束無しの状態、両肘を装着具で拘束した状態、それぞれの腰部の揺動軌道を示す図である。
【図6】図6(a)は、被験者の右膝関節が固定される様子を、図6(b)は、装着具により右膝関節が固定される様子を示す図である。
【図7】図7(a)~(c)は、擬似的な片麻痺歩行運動が歩行支援装置により改善される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。

【0017】
図1は、実施の形態に係る歩行支援装置2を示す図である。歩行支援装置2は、歩行者(被験者)4の歩行を支援する。歩行支援装置2は、高齢者や障害者、傷病者などの、自由な歩行がままならない歩行者4を対象とする。

【0018】
歩行支援装置2は、主として、測定部10および装着具20を備える。測定部10は、歩行者4の歩行情報を測定する。測定部10は、たとえば特許文献1に記載の歩容評価システムを利用することができる。測定部10は、加速度センサ12およびコンピュータ(制御部ともいう)14を含む。加速度センサ12は、歩行者4の腰部あるいは腹部に装着され、歩行者の左右方向(x軸)、鉛直方向(y軸)、進行方向(前後方向、z軸)それぞれに対する加速度を示すデータS1を出力する。コンピュータ14は、加速度センサ12からのデータS1を信号処理し、歩行情報を示すデータ(以下、歩行情報データという)S2を生成する。本実施の形態では、歩行情報データS2は、歩行者4の3次元の腰あるいは腹部の運動の軌道を示すデータである。

【0019】
図2は、測定部10により測定される、歩行者4の腰部の軌道を示す図である。図2の4aは、右脚の踵が接地した状態を、4bは次に左脚の踵が接地した状態、4cは次に右脚の踵が接地した状態を示す。人間の歩行動作は、右脚の踵が接地してから左足の踵が接地するまでの第1期間T1(4a~4b)と、左脚の踵が接地してから右足の踵が接地するまでの第2期間T2(4b~4c)との繰り返しと把握される。

【0020】
たとえば測定部10は、図2に示される腰部の運動をXY平面に投影した軌道(以下、揺動軌道という)を、歩行情報データS2として取得してもよい。あるいは、XYZ空間上の軌道を歩行情報データS2として取得してもよいし、時間軸を含めた4次元空間上の軌道を歩行情報データS2として取得しても良いし、XY平面に投影した座標と時間軸を含む3次元空間上の軌道を歩行情報データS2として取得してもよい。

【0021】
図1に戻る。コンピュータ14は、歩行者4の腰あるいは腹部の揺動軌道が、理想的な歩行状態におけるそれ(目標軌道という)に近づくように、装着具20を制御するための制御情報S3を生成する。制御情報S3は、装着具20が右腕、左腕のいずれに作用すべきか、どのように作用すべきか、どの程度作用すべきか、いつ作用すべきか、などの情報を含みうる。

【0022】
装着具20は、歩行者4の腕6に装着され、測定部10による測定結果に応じて、歩行者4の腕6に作用する。本発明者が検討したところ、腕運動は、脚運動と密接に関連しており、腕運動に作用すると、作用した腕運動のみでなく、歩行運動全体に影響が及ぶ。したがって装着具20は、歩行情報、より具体的には測定部10によって測定されるデータS1に、何らかの影響を及ぼすように構成されればよく、腕6に与える作用については特に限定されない。

【0023】
腕6とは、肩から指先の部分までをいい、「腕6に作用する」とは、具体的には、腕の関節、すなわち、肩関節、肘関節、手首の関節、指関節のいずれか、あるいは任意の組み合わせに作用することを含む。また、関節に作用するとは、その関節の曲げ角を所定値に制御すること、関節の可動範囲を所定範囲に制約すること、関節運動に対して、抵抗(負荷)を与えること、などを含む。

【0024】
本実施の形態では、装着具20は、歩行者4の肘関節に作用する。図3(a)、(b)は、装着具20を示す図である。本実施の形態において装着具20は、肘関節の曲げ角θに作用するものとする。

【0025】
たとえば装着具20は、上腕に固定される第1部分22と、前腕に固定される第2部分24と、第1部分22と第2部分24の距離Lを変化させる調節部材26を備えてもよい。調節部材26は、電動アクチュエータを用いて構成されてもよく、さらには、コンピュータ14により生成された制御情報S3にもとづいて、自動的に、曲げ角θを制御可能となっていてもよい。

【0026】
あるいは調節部材26は、手動によってその長さLが調節可能であってもよい。この場合、歩行者4自身が、あるいは介助者が、コンピュータ14により生成された制御情報S3にもとづいて手動で曲げ角θを変化させてもよい。

【0027】
なお装着具20の具体的な構成は特に限定されず、肘関節の角度θを調節できればよい。

【0028】
また装着具20は、必要に応じて、具体的にはコンピュータ14により生成された制御情報S3にもとづいて、歩行者4の右腕のみ、左腕のみ、あるいは両腕に装着される。両腕に装着される場合、それぞれの肘関節の角度θl、θrが異なることもあり得る。

【0029】
以上が実施の形態に係る歩行支援装置2の構成である。

【0030】
本発明者は、歩行支援装置2の有効性を検証するために、以下の実験を行った。
実験では、健常者を対象として、装着具20による拘束無しの状態、右肘のみを装着具20で拘束した状態、両肘とも装着具20により拘束した状態、それぞれについて、腰部の揺動軌道を測定した。

【0031】
図4(a)、(b)は、装着具20による拘束無しの状態、右肘のみを装着具20で拘束した状態、それぞれの腰部の揺動軌道を示す図である。軌道に示される丸印は、接地点における腰部の座標を示す。

【0032】
図4(a)と(b)の軌道を比較すると、右肘の角度θrを固定することにより、左右方向の振幅が小さくなり、また、右側最下点(右脚接地点)の高さが高くなり、左右脚の運動に非対称性が発生することがわかる。

【0033】
図5(a)、(b)は、装着具20による拘束無しの状態、両肘を装着具20で拘束した状態、それぞれの腰部の揺動軌道を示す図である。図5(a)と(b)の軌道を比較すると、両肘の曲げ角θl、θrそれぞれを固定することにより、左右方向の振幅が、図4(b)の右肘のみ固定した場合に比べてさらに小さくなることが分かる。

【0034】
このように、肘を拘束することにより、さらには、左右のいずれの肘を拘束するかによって、歩行運動に影響を与え、腰部の軌道を変化させることができることが分かる。

【0035】
続いて、健常者である被験者の右膝関節の角度を固定し、擬似的な片麻痺歩行を模擬し、歩行支援装置2の有効性を検証した。図6(a)は、被験者の右膝関節が固定される様子を、図6(b)は、装着具20により右膝関節が固定される様子を示す図である。肘関節の角度θは約90度である。

【0036】
図7(a)~(c)は、擬似的な片麻痺歩行運動が歩行支援装置2により改善される様子を示す図である。一般的には、揺動軌道は左右対称であることが望ましく、したがって装着具20は、軌道が左右対称となるように調節すればよい。
図7(a)は、両肘が拘束無しの状態を、図7(b)は、右肘関節が拘束された状態を、図7(c)は左肘関節が拘束された状態を示す。

【0037】
図7(a)に示すように、片麻痺歩行を模擬した状態では、腰部の揺動軌跡が左右非対称となる。具体的には、左最上点の座標が、右最上点の座標よりも高くなっており、左方向の振幅が、右方向の振幅よりも大きくなっている。また、上下方向の振幅、左右方向の振幅が、図5(a)に示す健常者のそれによりも大きくなっている。

【0038】
図7(b)に示すように、麻痺した脚と同じ右側の肘を拘束することにより、図7(a)と比べて左最上点の座標と右最上点の座標の差が減少し、腰の上下方向の揺れが減少していることがわかる。それと同時に、左右方向の振幅も減少しており、左右の揺れが減少している。これは、右肘の拘束により、右腕の慣性モーメントが変化し、右腕の振動数が大きくなり、それにともなって右側の歩行リズムの振動数が上昇し、右脚の運動が促進され、左右のバランスが改善したことが原因として考えられる。

【0039】
これとは反対に、図7(c)に示すように麻痺した脚と反対の左側の肘を拘束した場合、図7(a)と比べて左最上点の座標と右最上点の座標の差がさらに大きくなり、腰の上下方向の揺れも拡大していることがわかる。それと同時に、左右方向の振幅も大きくなり左右の揺れが拡大している。これは、左肘の拘束により、左腕の慣性モーメントが変化し、左腕の振動数が大きくなり、それにともなって左側の歩行リズムの振動数が上昇し、もともと麻痺によって歩行リズムの振動数が小さな右側との差が大きくなり、左右のアンバランスが拡大したことが原因として考えられる。

【0040】
このように、実施の形態に係る歩行支援装置2によれば片側麻痺を擬似的に再現した被験者の歩行を改善することができるという実験結果が得られた。

【0041】
続いて、実際の高齢者や障害者等の歩行を支援するときの歩行支援装置2の動作を説明する。
測定部10によって歩行状態すなわち軌道が観測される。コンピュータ14は、観測された軌道と目標軌道が一致するように、フィードバックによって制御情報S3を生成し、装着具20を制御してもよい。あるいは、コンピュータ14は、装着具20の状態と、それが軌道に及ぼす影響の関係をあらかじめ学習しておき、観測された軌道にもとづいて、オープンループによって制御情報S3を生成し、装着具20を制御してもよい。

【0042】
これにより、実際の麻痺患者や障害者、高齢者に対しても、擬似的な麻痺患者に対してと同様に、歩行を改善する効果が得られる。

【0043】
まとめると、従来の歩行支援技術は、脚運動に直接介入することで歩行を改善することを目指すものであった。これに対して、実施の形態に係る歩行支援装置2は、脚運動ではなく、脳の関連する腕運動に介在することにより、歩行運動を内面から改善することができる。これにより、脚運動に直接介在する場合に比べて、安全性の改善、歩行者に与える苦痛の低減、運動能力の低下の抑制、学習効果の少なくともひとつを実現することができる。

【0044】
また、腕の慣性モーメントは、肘関節の角度θによって変化する。したがって、肘関節の角度θを最適化することにより、軌道をより柔軟に変化させ、目標軌道に近づけることができる。

【0045】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。

【0046】
(変形例1)
実施の形態では、歩行運動の途中で、装着具20の状態は固定されていた。これに対して変形例1では、装着具20は、歩行運動と同調して肘関節の曲げ角θを制御可能に構成されてもよい。これにより歩行運動と同調して慣性モーメント、すなわち腕の振り運動の振動数を1サイクル内で動的に変化させることができ、これにより、歩行者4の歩行情報を目標とするそれに近づけることができる。

【0047】
(変形例2)
実施の形態では、装着具20が肘関節の角度を制御する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。変形例2において、装着具20は、肘関節、肩関節、手首の関節、指関節のいずれか、あるいは任意の組み合わせを制御してもよい。肘関節のみでなく、その他の関節の状態も、歩行運動に影響を与えることができる。この場合に、肘関節以外の関節を、歩行運動と同調して変化させてもよい。

【0048】
(変形例3)
また、装着具20による腕運動への介在に加えて、歩行運動と同調した聴覚的、視覚的、触覚的なリズム刺激を、歩行者に与えてもよい。これにより、歩行者4の歩行運動をより効果的に改善することができる。

【0049】
(変形例4)
実施の形態では、測定部10により測定されたXY平面上の軌道が、目標軌道に一致するように、測定部10を制御する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。
たとえば歩行運動の改善の初歩段階では、X座標(つまり横方向の運動)のみ、あるいはY座標(つまり縦方向の運動)のみに着目し、測定されたX座標(あるいはY座標)の軌道が、その目標軌道と一致するように、装着具20を制御してもよい。あるいは、軌道の一部(たとえば右半分のみ、左半分のみ、上側のみ、下側のみ、あるいは斜めの部分のみ)に着目し、着目した部分の軌道が、目標軌道と一致するように装着具20を制御してもよい。
あるいは、Z座標(前後方向)のみに着目し、測定されたZ座標の軌道が、その目標軌道と一致するように、装着具20を制御してもよい。
あるいは、XY平面上の軌道に加えて、X方向の速度、Y方向の速度、あるいは両方が、目標と一致するように、装着具20を制御してもよい。あるいは、XY平面上の軌道に加えて、X方向の加速度、Y方向の加速度、あるいはそれら両方が目標と一致するように、装着具20を制御してもよい。
実施の形態では、XY平面上の軌道に着目したが、XYZ空間における3次元の軌道が、その目標軌道と一致するように、装着具20を制御してもよい。さらには時間軸も含めた4次元的な軌道が、目標軌道と一致するように、装着具20を制御してもよい。

【0050】
(変形例5)
実施の形態では、加速度センサ12を用いて歩行情報を測定する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。加速度センサ12に代えて、ジャイロセンサや速度センサを利用してもよい。あるいは3次元モデリングに利用されるように、マーカとカメラの組み合わせによって歩行情報データS2を生成してもよい。あるいは複数のカメラによって歩行者4の歩行運動を記録し、画像処理によって歩行情報データS2を生成してもよい。あるいは、足底部に圧力センサを装着し、あるいは床に圧力センサを配置することにより、(i)歩行のリズム、(ii)足底部の圧力分布、荷重、荷重移動、(iii)歩幅、などを測定し、歩行情報データS2を生成してもよい。

【0051】
(変形例6)
実施の形態では、腰部のみに着目したが、その他の部位、たとえば、頭部、顎、首、肩、上腕、肘、前腕、大腿、膝、踵、くるぶし、の動きを測定し、歩行情報データS2を取得してもよい。

【0052】
(変形例7)
実施の形態では、高齢者や障害者、傷病者の歩行運動を改善する場合を説明したが、歩行支援装置2の用途はそれには限定されない。歩行支援装置2は、歩行フォームの改善を望むファッションモデルや一般人、アスリートを対象とすることもでき、健常者の歩行フォームの矯正などにも適用することができる。あるいは、歩行支援装置2は、舞踊などの歩行運動を伴う伝統芸能の伝承にも利用することが期待される。

【0053】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0054】
2…歩行支援装置、4…歩行者、10…測定部、12…加速度センサ、14…コンピュータ、20…装着具、30…制御部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図6】
6