TOP > 国内特許検索 > マルチプレックス遺伝子解析によるエビ類の健康診断法 > 明細書

明細書 :マルチプレックス遺伝子解析によるエビ類の健康診断法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-143949 (P2014-143949A)
公開日 平成26年8月14日(2014.8.14)
発明の名称または考案の名称 マルチプレックス遺伝子解析によるエビ類の健康診断法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 39
出願番号 特願2013-014265 (P2013-014265)
出願日 平成25年1月29日(2013.1.29)
発明者または考案者 【氏名】伊丹 利明
【氏名】木原 啓輔
【氏名】稲田 真理
【氏名】酒井 正博
【氏名】河野 智哉
出願人 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B063
Fターム 4B024AA11
4B024CA04
4B024CA09
4B024CA12
4B024HA12
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
要約 【課題】エビ類の健康状態を多検体について同時にかつ迅速に診断する手段を提供すること。
【解決手段】エビ類から採取した被検試料における生体防御関連遺伝子群(Toll経路およびIMD経路、JAK/STAT経路、アポトーシス関連経路、RNA干渉経路、フリーラジカル生成経路、および抗菌ペプチド生成経路の遺伝子、ならびにサイトカイン関連遺伝子)の発現量を測定する工程と、測定された前記生体防御関連遺伝子の発現量に基づいて、エビ類の健康状態を診断する工程を含むエビ類の健康診断方法、ならびに該方法に使用するプライマーセット。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の工程を含む、エビ類の健康状態の診断方法。
(1) エビ類から採取した被検試料における、Toll(配列番号1)、Toll2(配列番号2)、Tollip(配列番号3)、IMD(配列番号4)、Relish(配列番号5)、STAT(配列番号6)、Socs(配列番号7)、Croquemort(配列番号8)、ASK1(配列番号9)、JNK(配列番号10)、p38(配列番号11)、p53(配列番号12)、IAP(配列番号13)、Caspase3(配列番号14)、Wengen(配列番号15)、Argonaute1(配列番号16)、Argonaute2(配列番号17)、Dicer1(配列番号18)、Dicer2(配列番号19)、NOS(配列番号20)、Nox(配列番号21)、Duox(配列番号22)、Aox(配列番号23)、ALF2(配列番号24)、Crustin(配列番号25)、Lysozyme(配列番号26)、Astakine(配列番号27)、Cyclophilin-A(配列番号28)、HDGF(配列番号29)、 MIF(配列番号30)、PD-ECGF(配列番号31)、VEGF(配列番号32)、VEGF2(配列番号33)、VEGF-Rcp(配列番号34)、BMP(配列番号35)、及びMyostatin(配列番号36)から成る群から選択される少なくとも1種の生体防御関連遺伝子の発現量を測定する工程
(2) 測定された前記生体防御関連遺伝子の発現量に基づいて、エビ類の健康状態を診断する工程
【請求項2】
前記生体防御関連遺伝子の発現量が、該遺伝子より転写されるmRNA量から測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記mRNA量の発現量が、RT-PCR法またはリアルタイムRT-PCR法により測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RT-PCRがマルチプレックスRT-PCRである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
以下の(p1)~(p37)に記載のプライマーセットから成る群から選択される少なくとも1種のプライマーセットを用いて遺伝子を増幅する、請求項4に記載の方法。
(p1)配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll遺伝子増幅用プライマーセット
(p2)配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll2遺伝子増幅用プライマーセット
(p3)配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるTollip遺伝子増幅用プライマーセット
(p4)配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIMD遺伝子増幅用プライマーセット
(p5)配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるRelish遺伝子増幅用プライマーセット
(p6)配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSTAT遺伝子増幅用プライマーセット
(p7)配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSocs遺伝子増幅用プライマーセット
(p8)配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCroquemort遺伝子増幅用プライマーセット
(p9)配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるASK1遺伝子増幅用プライマーセット
(p10)配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるJNK遺伝子増幅用プライマーセット
(p11)配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp38遺伝子増幅用プライマーセット
(p12)配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp53遺伝子増幅用プライマーセット
(p13)配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIAP遺伝子増幅用プライマーセット
(p14)配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCaspase3遺伝子増幅用プライマーセット
(p15)配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるWengen遺伝子増幅用プライマーセット
(p16)配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号69に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute1遺伝子増幅用プライマーセット
(p17)配列番号70に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号71に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute2遺伝子増幅用プライマーセット
(p18)配列番号72に示す塩基配列からなるプライマーと配列番73に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer1遺伝子増幅用プライマーセット
(p19)配列番号74に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号75に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer2遺伝子増幅用プライマーセット
(p20)配列番号76に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号77に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNOS遺伝子増幅用プライマーセット
(p21)配列番号78に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号79に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNox遺伝子増幅用プライマーセット
(p22)配列番号80に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号81に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDuox遺伝子増幅用プライマーセット
(p23)配列番号82に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号83に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAox遺伝子増幅用プライマーセット
(p24)配列番号84に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号85に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるALF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p25)配列番号86に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号87に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCrustin遺伝子増幅用プライマーセット
(p26)配列番号88に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号89に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるLysozyme遺伝子増幅用プライマーセット
(p27)配列番号90に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号91に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAstakine遺伝子増幅用プライマーセット
(p28)配列番号92に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号93に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCyclophilin-A遺伝子増幅用プライマーセット
(p29)配列番号94に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号95に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるHDGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p30)配列番号96に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号97に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMIF遺伝子増幅用プライマーセット
(p31)配列番号98に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号99に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるPD-ECGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p32)配列番号100に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号101に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p33)配列番号102に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号103に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p34)配列番号104に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号105に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp遺伝子増幅用プライマーセット
(p35)配列番号106に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号107に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp-STYKc遺伝子増幅用プライマーセット
(p36)配列番号108に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号109に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるBMP遺伝子増幅用プライマーセット
(p37)配列番号110に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号111に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMyostatin遺伝子増幅用プライマーセット
【請求項6】
前記工程(2)において、被検試料における遺伝子発現量と対照試料における遺伝子発現量とを比較することにより遺伝子の発現量を解析し、それによりエビ類の健康状態を診断する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
以下の(p1)~(p37)のエビ類の健康状態診断用プライマーセット。
(p1)配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll遺伝子増幅用プライマーセット
(p2)配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll2遺伝子増幅用プライマーセット
(p3)配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるTollip遺伝子増幅用プライマーセット
(p4)配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIMD遺伝子増幅用プライマーセット
(p5)配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるRelish遺伝子増幅用プライマーセット
(p6)配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSTAT遺伝子増幅用プライマーセット
(p7)配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSocs遺伝子増幅用プライマーセット
(p8)配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCroquemort遺伝子増幅用プライマーセット
(p9)配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるASK1遺伝子増幅用プライマーセット
(p10)配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるJNK遺伝子増幅用プライマーセット
(p11)配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp38遺伝子増幅用プライマーセット
(p12)配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp53遺伝子増幅用プライマーセット
(p13)配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIAP遺伝子増幅用プライマーセット
(p14)配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCaspase3遺伝子増幅用プライマーセット
(p15)配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるWengen遺伝子増幅用プライマーセット
(p16)配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号69に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute1遺伝子増幅用プライマーセット
(p17)配列番号70に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号71に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute2遺伝子増幅用プライマーセット
(p18)配列番号72に示す塩基配列からなるプライマーと配列番73に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer1遺伝子増幅用プライマーセット
(p19)配列番号74に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号75に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer2遺伝子増幅用プライマーセット
(p20)配列番号76に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号77に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNOS遺伝子増幅用プライマーセット
(p21)配列番号78に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号79に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNox遺伝子増幅用プライマーセット
(p22)配列番号80に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号81に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDuox遺伝子増幅用プライマーセット
(p23)配列番号82に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号83に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAox遺伝子増幅用プライマーセット
(p24)配列番号84に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号85に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるALF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p25)配列番号86に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号87に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCrustin遺伝子増幅用プライマーセット
(p26)配列番号88に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号89に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるLysozyme遺伝子増幅用プライマーセット
(p27)配列番号90に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号91に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAstakine遺伝子増幅用プライマーセット
(p28)配列番号92に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号93に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCyclophilin-A遺伝子増幅用プライマーセット
(p29)配列番号94に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号95に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるHDGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p30)配列番号96に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号97に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMIF遺伝子増幅用プライマーセット
(p31)配列番号98に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号99に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるPD-ECGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p32)配列番号100に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号101に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p33)配列番号102に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号103に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p34)配列番号104に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号105に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp遺伝子増幅用プライマーセット
(p35)配列番号106に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号107に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp-STYKc遺伝子増幅用プライマーセット
(p36)配列番号108に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号109に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるBMP遺伝子増幅用プライマーセット
(p37)配列番号110に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号111に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMyostatin遺伝子増幅用プライマーセット
【請求項8】
配列番号1~36のいずれかに示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有するエビ類の健康状態診断用プローブ。
【請求項9】
請求項7に記載のプライマーセットを少なくとも含む、エビ類の健康状態診断用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプレックス遺伝子解析によるエビ類の健康状態の診断方法、および当該方法を実施するために用いるプライマーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
クルマエビをはじめとするエビ類の養殖産業は東南アジアや中南米をはじめ世界各地で盛んである。その一方、エビ類養殖では生産効率を上げるために、高密度で飼育する集約養殖が主流であり、抗生物質や栄養剤など様々な化学薬品が投与されているため、養殖池の環境が悪化している。また、1980年代頃から、東南アジアの主要エビ生産国で、ウイルス病の流行が繰り返されている。なかでも、クルマエビ急性ウイルス血症[PAV:penaeid acute viremia、ホワイトスポット病(WSS:white spot syndrome)]は、日本をはじめとするアジア諸国、さらに中南米の養殖クルマエビに発生し、甚大な被害をもたらしている。特に、7月~9月の高水温期では、台風等の集中豪雨によるpHや塩分濃度の低下、底質への残渣、残餌、糞及び脱皮殻等の堆積と腐泥化が原因となって、水質と底質が悪化し、これによってエビ類の免疫力が低下し、海水中に常在するビブリオ菌などによってエビ類が日和見感染をおこし、さらに被害が深刻化する。
【0003】
このようなウイルス病や細菌病、および養殖場の環境悪化は、エビ養殖の生産量を減少させることになるのでその対応策が必要である。ウイルス病による被害は、死亡エビを発見した時点では、すでに養殖池全体に感染が広がっている場合が多い。これは、エビ類の共食いの習性によるもので、死亡エビを摂食することで健康エビに感染が急激に拡大していく。ウイルス病に対しては、現在は積極的な対処法がなく、ウイルスに感染した稚エビを養殖池に入れないことが重要な対応策となっている。しかし、多くのエビ養殖池は露地池(素掘りの池)で海岸近くに位置するため、天然海域でウイルスに感染したカニやエビが養殖池に侵入して、継続的にウイルス感染を起こす。また、日和見感染による細菌性疾病は、ウイルス感染のように一度に多くの死亡エビは発生しないが、長期間にわたって死亡が続き、収穫時点で初めてその被害の大きさに気付くことも少なくない。しかしながら、このような細菌病に対して水産用医薬品として認可された薬剤がないため、抗生剤等の投薬もできず、積極的な対応策がないのが現状である。また、積極的な対応策ではないが、免疫力を高め病気に対する抵抗力の増強を目的として、天然物由来の免疫賦活剤投与が行なわれているものの、免疫賦活剤の投与だけでは、疾病の完全な制御は難しい。
【0004】
以上のように、現状でのエビ養殖では、ウイルス病および細菌病の発生を抑制できる有効な手段がない。そのため、適切なエビ養殖を持続的に発展させるためには、エビの健康状態の把握と疾病の早期発見が不可欠である。
【0005】
エビ類をはじめとする無脊椎動物では獲得免疫が欠除しているため、自然免疫を主とした免疫反応を介して生体防御を行っており、病原体の排除を目的として、様々な免疫応答システムが存在している。ショウジョウバエを例にすると真菌を注入した際にToll経路というシグナル伝達経路が活性化されて、ドロソマイシンという真菌に作用する抗菌ペプチドが産生される。このLysozyme、ALF2などの抗菌ペプチドはクルマエビなどのエビ類を初めとする全ての動物から一部の植物まで使われている生体防御因子で、微生物の侵入によって産生が誘導され、免疫反応の後期で最も大きな役割を果たすと考えられている。また細胞がウイルスに感染時においては、アポトーシス関連因子により自らプログラムを起動し、他に被害を及ぼさないように自殺して自己犠牲を行うことによってウイルスを体内から排除している。その他の生体防御機構として、Nox、NOSなどのフリーラジカル関連因子がある。これらは病原体の侵入やストレス、紫外線を起因に酸素や窒素を殺菌・殺ウイルス能をもつ活性窒素種(RNS)活性酸素種(ROS)に変える働きをもつものである。
【0006】
エビ類の生体防御機構においても、このような宿主による病原体認識から、シグナル伝達およびそれらの間のクロストークを経て、アポトーシス誘導や抗菌ペプチド等の抗菌分子の産生に至る一連の動的関連性が存在している。よって、そのようなエビ類の生体防御機構の解明および制御は、疾病の根本的防除を目的とした薬剤を開発する上で不可欠である。
【0007】
本発明者らは、クルマエビを対象として上記のような生体防御関連遺伝子(Toll, NOS, Nox, Duox, Croquemort, ALF2など)のクローニングおよび同定を行なうとともに(非特許文献1~3)、それらの生体防御関連遺伝子を網羅的に解析するために、複数の遺伝子の発現定量解析を同時に行なうことのできるマルチプレックス遺伝子発現定量解析法の開発とそれに用いるプライマーデザインの設計を進めてきた。しかしながら、エビ類の健康状態を正確に反映する遺伝子群を多検体について同時にかつ迅速に定量解析できるシステムを構築するには至っていない。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Identification of cDNA encoding Toll receptor, MjToll gene from kuruma shrimp, Marsupenaeus japonicus, Fish & Shellfish Immunology (2008) 24, 122-133
【非特許文献2】Molecular cloning and characterization of the NADPH oxidase from the kuruma shrimp, Marsupenaeus japonicus: Early gene up-regulation. Molecular and Cellular Probes (2012) 26 29-41
【非特許文献3】Deciphering of the Dual oxidase (Nox family) gene from kuruma shrimp, Marsupenaeus japonicus: full-length cDNA cloning and characterization, Fish & Shellfish Immunology, DOI: 10.1016/j.fsi.2012.11.26.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題はエビ類の健康状態を多検体について同時にかつ迅速に診断する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、エビ類においてウイルスや細菌感染、およびストレス負荷に連動して複数の生体防御関連遺伝子群の発現パターンが異なることを見出すとともに、これらの複数の生体防御関連遺伝子群の動態をワンアッセイで定量解析できるシステムを確立し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は以下の発明を包含する。
[1] 下記の工程を含む、エビ類の健康状態の診断方法。
(1) エビ類から採取した被検試料における、Toll(配列番号1)、Toll2(配列番号2)、Tollip(配列番号3)、IMD(配列番号4)、Relish(配列番号5)、STAT(配列番号6)、Socs(配列番号7)、Croquemort(配列番号8)、ASK1(配列番号9)、JNK(配列番号10)、p38(配列番号11)、p53(配列番号12)、IAP(配列番号13)、Caspase3(配列番号14)、Wengen(配列番号15)、Argonaute1(配列番号16)、Argonaute2(配列番号17)、Dicer1(配列番号18)、Dicer2(配列番号19)、NOS(配列番号20)、Nox(配列番号21)、Duox(配列番号22)、Aox(配列番号23)、ALF2(配列番号24)、Crustin(配列番号25)、Lysozyme(配列番号26)、Astakine(配列番号27)、Cyclophilin-A(配列番号28)、HDGF(配列番号29)、 MIF(配列番号30)、PD-ECGF(配列番号31)、VEGF(配列番号32)、VEGF2(配列番号33)、VEGF-Rcp(配列番号34)、BMP(配列番号35)、及びMyostatin(配列番号36)から成る群から選択される少なくとも1種の生体防御関連遺伝子の発現量を測定する工程
(2) 測定された前記生体防御関連遺伝子の発現量に基づいて、エビ類の健康状態を診断する工程
[2] 前記生体防御関連遺伝子の発現量が、該遺伝子より転写されるmRNA量から測定される、[1]に記載の方法。
[3] 前記mRNA量の発現量が、RT-PCR法またはリアルタイムRT-PCR法により測定される、[2]に記載の方法。
[4] 前記RT-PCRがマルチプレックスRT-PCRである、[3]に記載の方法。
【0012】
[5] 以下の(p1)~(p37)に記載のプライマーセットから成る群から選択される少なくとも1種のプライマーセットを用いて遺伝子を増幅する、[4]に記載の方法。
(p1)配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll遺伝子増幅用プライマーセット
(p2)配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll2遺伝子増幅用プライマーセット
(p3)配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるTollip遺伝子増幅用プライマーセット
(p4)配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIMD遺伝子増幅用プライマーセット
(p5)配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるRelish遺伝子増幅用プライマーセット
(p6)配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSTAT遺伝子増幅用プライマーセット
(p7)配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSocs遺伝子増幅用プライマーセット
(p8)配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCroquemort遺伝子増幅用プライマーセット
(p9)配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるASK1遺伝子増幅用プライマーセット
(p10)配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるJNK遺伝子増幅用プライマーセット
(p11)配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp38遺伝子増幅用プライマーセット
(p12)配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp53遺伝子増幅用プライマーセット
(p13)配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIAP遺伝子増幅用プライマーセット
(p14)配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCaspase3遺伝子増幅用プライマーセット
(p15)配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるWengen遺伝子増幅用プライマーセット
(p16)配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号69に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute1遺伝子増幅用プライマーセット
(p17)配列番号70に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号71に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute2遺伝子増幅用プライマーセット
(p18)配列番号72に示す塩基配列からなるプライマーと配列番73に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer1遺伝子増幅用プライマーセット
(p19)配列番号74に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号75に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer2遺伝子増幅用プライマーセット
(p20)配列番号76に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号77に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNOS遺伝子増幅用プライマーセット
(p21)配列番号78に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号79に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNox遺伝子増幅用プライマーセット
(p22)配列番号80に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号81に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDuox遺伝子増幅用プライマーセット
(p23)配列番号82に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号83に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAox遺伝子増幅用プライマーセット
(p24)配列番号84に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号85に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるALF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p25)配列番号86に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号87に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCrustin遺伝子増幅用プライマーセット
(p26)配列番号88に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号89に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるLysozyme遺伝子増幅用プライマーセット
(p27)配列番号90に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号91に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAstakine遺伝子増幅用プライマーセット
(p28)配列番号92に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号93に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCyclophilin-A遺伝子増幅用プライマーセット
(p29)配列番号94に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号95に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるHDGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p30)配列番号96に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号97に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMIF遺伝子増幅用プライマーセット
(p31)配列番号98に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号99に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるPD-ECGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p32)配列番号100に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号101に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p33)配列番号102に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号103に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p34)配列番号104に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号105に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp遺伝子増幅用プライマーセット
(p35)配列番号106に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号107に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp-STYKc遺伝子増幅用プライマーセット
(p36)配列番号108に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号109に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるBMP遺伝子増幅用プライマーセット
(p37)配列番号110に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号111に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMyostatin遺伝子増幅用プライマーセット
[6] 前記工程(2)において、被検試料における遺伝子発現量と対照試料における遺伝子発現量とを比較することにより遺伝子の発現量を解析し、それによりエビ類の健康状態を診断する、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
【0013】
[7] 以下の(p1)~(p37)のエビ類の健康状態診断用プライマーセット。
(p1)配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll遺伝子増幅用プライマーセット
(p2)配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるToll2遺伝子増幅用プライマーセット
(p3)配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるTollip遺伝子増幅用プライマーセット
(p4)配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIMD遺伝子増幅用プライマーセット
(p5)配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるRelish遺伝子増幅用プライマーセット
(p6)配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSTAT遺伝子増幅用プライマーセット
(p7)配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるSocs遺伝子増幅用プライマーセット
(p8)配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCroquemort遺伝子増幅用プライマーセット
(p9)配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるASK1遺伝子増幅用プライマーセット
(p10)配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるJNK遺伝子増幅用プライマーセット
(p11)配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp38遺伝子増幅用プライマーセット
(p12)配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるp53遺伝子増幅用プライマーセット
(p13)配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるIAP遺伝子増幅用プライマーセット
(p14)配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCaspase3遺伝子増幅用プライマーセット
(p15)配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるWengen遺伝子増幅用プライマーセット
(p16)配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号69に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute1遺伝子増幅用プライマーセット
(p17)配列番号70に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号71に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるArgonaute2遺伝子増幅用プライマーセット
(p18)配列番号72に示す塩基配列からなるプライマーと配列番73に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer1遺伝子増幅用プライマーセット
(p19)配列番号74に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号75に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDicer2遺伝子増幅用プライマーセット
(p20)配列番号76に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号77に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNOS遺伝子増幅用プライマーセット
(p21)配列番号78に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号79に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるNox遺伝子増幅用プライマーセット
(p22)配列番号80に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号81に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるDuox遺伝子増幅用プライマーセット
(p23)配列番号82に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号83に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAox遺伝子増幅用プライマーセット
(p24)配列番号84に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号85に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるALF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p25)配列番号86に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号87に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCrustin遺伝子増幅用プライマーセット
(p26)配列番号88に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号89に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるLysozyme遺伝子増幅用プライマーセット
(p27)配列番号90に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号91に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるAstakine遺伝子増幅用プライマーセット
(p28)配列番号92に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号93に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるCyclophilin-A遺伝子増幅用プライマーセット
(p29)配列番号94に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号95に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるHDGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p30)配列番号96に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号97に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMIF遺伝子増幅用プライマーセット
(p31)配列番号98に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号99に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるPD-ECGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p32)配列番号100に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号101に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF遺伝子増幅用プライマーセット
(p33)配列番号102に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号103に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF2遺伝子増幅用プライマーセット
(p34)配列番号104に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号105に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp遺伝子増幅用プライマーセット
(p35)配列番号106に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号107に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるVEGF-Rcp-STYKc遺伝子増幅用プライマーセット
(p36)配列番号108に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号109に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるBMP遺伝子増幅用プライマーセット
(p37)配列番号110に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号111に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるMyostatin遺伝子増幅用プライマーセット
[8] 配列番号1~36のいずれかに示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有するエビ類の健康状態診断用プローブ。
[9] [7]に記載のプライマーセットを少なくとも含む、エビ類の健康状態診断用キット。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、複数の生体防御関連遺伝子の発現パターンを解析することにより、エビ類の健康状態の把握や、健康状態に影響を及ぼしている原因や疾病発生の予測を多検体について同時にかつ迅速に行うことができる。本発明の方法によれば、複数の生体防御関連遺伝子の発現量の定量測定値のパターン化によって感染因子や原因因子の特定が可能となる。具体的には、Dicer 2、Argonaute2とSocs遺伝子等の発現の増加はウイルス、特にWSSVの感染を示唆する。TollやToll2遺伝子および抗菌ペプチド関連遺伝子等の発現増加は細菌感染を示唆する。水温変化や空気暴露に起因するストレスによる健康状態の悪化はアポトーシス関連遺伝子等の上昇によって判定できる。すなわち、本発明の方法は、従来のように各ウイルスや細菌の遺伝子を直接個々に検出するものではなく、微弱なウイルス・細菌感染に対してエビ類が生体防御反応を起動することによって生じる「増幅された生体反応」を遺伝子レベルで検出することができる。したがって、従来のPCRによるウイルス検出や細菌検出に比べてより高感度に原因因子を特定できる。さらに、ストレスなどの環境負荷に起因する生体反応も検出できることから、ストレスに起因する日和見感染も各生体防御関連遺伝子のパターン化(ストレス反応パターン+細菌感染反応パターン)によってその原因が特定できる。よって、本発明の方法は、養殖エビ類におけるウイルス病や細菌病の感染やストレス負荷を極めて早期に検出でき、予防対策を講じることによって感染拡大の未然防止に役立つほか、養殖エビ類を対象とした医薬品(抗菌剤、ワクチン、免疫賦活剤)の有効性の評価にも利用でき、養殖エビ類の生産性の向上と食品としての安全・安心が担保される上で非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、エビ類から摘出した被検試料における複数の生体防御関連遺伝子の発現量を指標としてエビ類の健康状態の診断する方法を提供する。

【0016】
本発明のエビ類の健康状態の診断方法は、具体的には、エビ類から摘出した被検試料における生体防御関連遺伝子の発現量を測定する工程と、測定された前記生体防御関連遺伝子の発現量に基づいてエビ類の健康状態を診断する工程を含む。

【0017】
上記の生体防御関連遺伝子は、Toll経路およびIMD経路(異物認識機構)、JAK/STAT(サイトカイン受容体)経路、アポトーシス関連経路、RNA干渉経路、フリーラジカル生成経路、および抗菌ペプチド生成経路の遺伝子、ならびにサイトカイン関連遺伝子から選択される遺伝子を含み、具体的には、Toll(配列番号1:AB333779.1)、Toll2(配列番号2:AB385869.1)、Tollip(配列番号3:AB596880.1)、IMD(配列番号4:AB478859.1)、Relish(配列番号5)、STAT(配列番号6:AB501344.1)、Socs(配列番号7:AB516427.1)、Croquemort(配列番号8:AB540123.1)、ASK1(配列番号9)、JNK(配列番号10:AB523402.1)、p38(配列番号11:AB618970.1)、p53(配列番号12:AB559569.1)、IAP(配列番号13)、Caspase3(配列番号14)、Wengen(配列番号15)、Argonaute1(配列番号16:GU265732.1)、Argonaute2(配列番号17:AB665954.1)、Dicer1(配列番号18:GU265733.1)、Dicer2(配列番号19)、NOS(配列番号20:AB485762.1)、Nox(配列番号21:AB594770.1)、Duox(配列番号22)、Aox(配列番号23)、ALF2(配列番号24:AB453738.1)、Crustin(配列番号25:AB121740.1)、およびLysozyme(配列番号26:AB080238.1)、Astakine(配列番号27:AB561905.1)、Cyclophilin-A(配列番号28:AB755628)、HDGF(配列番号29)、MIF(配列番号30:AB755627)、PD-ECGF(配列番号31)、VEGF(配列番号32:AB755625)、VEGF2(配列番号33:AB755626)、VEGF-Rcp(配列番号34)、BMP(配列番号35)、及びMyostatin(配列番号36)から成る群から選択される少なくとも1種の遺伝子をいう。

【0018】
本発明におけるエビ類の健康状態の診断は、上記生体防御関連遺伝子のうち、少なくとも1種以上、好ましくは少なくとも2種以上の生体防御関連遺伝子の発現量を測定することにより行う。少なくとも2種以上の生体防御関連遺伝子の発現量を測定する場合、限定はされないが、例えば、5種、10種、15種、20種、25種、30種、36種の生体防御関連遺伝子を診断対象とするエビ種や診断目的に応じて適宜選択すればよい。また、診断の精度を向上させる上で、数が多いほうが好ましく、例えば、好ましくは20種以上、より好ましくは25種以上、さらに好ましくは30種以上、最も好ましくは36種の遺伝子を用いればよい。

【0019】
また、本発明において、生体防御関連遺伝子は、配列番号1~36に示された塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号1~36に示された塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子をも包含する。実質的に同一とは、例えば、配列番号1~36に示された塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を意味する。ここで、同一性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。

【0020】
本発明において、エビ類の健康状態の診断とは、病原微生物(ウイルス・細菌)感染の有無や感染後の経過時間の判定、病原微生物(ウイルス・細菌)の保有状態であるか否かの判定、環境によるストレス負荷があるか否かの判定を行うこという。

【0021】
本発明において診断対象となるエビ類としては、通常生食用や加工食品用に用いられているものであれば特に限定はされない。具体的には、クルマエビ、ウシエビ(ブラックタイガー)、バナメイエビ、イセエビ、タイショウエビ(コウライエビ)、ロブスター、バナナエビ、シバエビ、ホッコクアカエビ(甘エビ)、サルエビ、トラエビ、ヨシエビ、モエビ、オニテナガエビ等が挙げられる。

【0022】
本発明において用いられる被検試料としては、エビ類より摘出した体液、組織または器官であれば特に限定はされず、エビ種によって異なるが、例えば、血リンパ、鰓、胃、心臓、頭腎、脾臓、胸腺、リンパ様器官、造血器、脚、腸管などが挙げられる。また、本発明において用いられる対照試料としては、健常であることが確認されたエビ類由来の上記と同様の組織や体液など挙げられる。これらの試料は分離、抽出、濃縮、精製などの前処理を行ってもよい。

【0023】
遺伝子の発現量とは、遺伝子の転写産物であるmRNA量をいう。本発明において、被検試料および対照試料における遺伝子の発現量は、当業者に公知の任意の方法により測定することができ、また、測定は、各方法の常法に従って実施すればよい。各方法について様々なプロトコルが報告されており、当業者であれば公知のプロトコルに従い、又は公知のプロトコルを適宜修正や変更を行い実施することができる。

【0024】
mRNA量を測定する場合、エビ類からのRNAの抽出は、当該技術分野において通常用いられる手法、例えば、グアニジンチオシアネート-トリフルオロ酢酸セシウム法、グアニジン/塩化セシウム法などに従って行うことができる。また、RNA抽出に際しては、RNeasy等の市販のRNA抽出用キットに添付される抽出プロトコルを改良した独自のプロトコルに従って行うことが好ましい。mRNAの調製は、得られた全RNA画分をオリゴdT-セルロースやポリU-セファロース等を用いたアフィニティーカラム法、あるいはバッチ法により処理することによって行う。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりポリ(A)+RNAをさらに分画してもよい。

【0025】
mRNA量の測定は、所望のmRNA量を測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、上記の生体防御関連遺伝子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとした遺伝子増幅法、または、上記の生体防御関連遺伝子にハイブリダイズするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドをプローブとしたハイブリダイゼーション法を利用することができる。具体的には、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、マイクロアレイ法、ノーザンブロット法、ドットブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法などが挙げられる。上記の方法に用いるプライマーやプローブは、標識し、当該標識のシグナル強度を調べることによりmRNA量を測定することができる。なかでも、リアルタイムRT-PCR法はRNAを直接サンプルに使用でき、遺伝子増幅過程を光学的に測定することで増幅に必要な温度サイクルの回数から遺伝子定量が可能である上で好ましい。また、複数の生体防御関連遺伝子を同時にかつ迅速に定量できる点で、複数のプライマーセットを同一反応系で用いるマルチプレックスRT-PCR法やマルチプレックスリアルタイムRT-PCR法がさらに好ましい。

【0026】
遺伝子発現量の測定は、データの再現性の観点から、同一の被検試料の各遺伝子に対して複数のデータを得ることが好ましい。その場合、これらのデータの平均値を各遺伝子の発現量とすることができる。また、これらのデータの分散あるいは標準偏差の値から、再現性を検証することができる。

【0027】
次に、上記生体防御関連遺伝子の発現量の測定結果に基づいてエビ類の健康状態を診断する。診断は、例えば、上記の各生体防御関連遺伝子について、対照試料における遺伝子発現量に対する被検試料における遺伝子発現量(相対的発現量)を算出することにより行う。ここで、対照試料としては、例えば、健常エビ類やエビ養殖場の清浄環境な池にいるエビ類より摘出した上記と同様の組織や体液(ネガティブコントロール)、ウイルス病や細菌病に罹患したエビ類より摘出した上記と同様の組織や体液(ポジティブコントロール)のいずれであってもよい。また、発現量が一定のEF-1αなどのハウスキーピング遺伝子を内部標準遺伝子として被検試料および対照試料においてその発現量を測定し、試料間のRNA量の補正を行なうことが好ましい。

【0028】
上記の生体防御関連遺伝子とエビ類におけるウイルス(WSSV)感染、細菌(Vibrio penaeicida)感染、ストレス負荷に連動する発現パターンは以下のとおりである。
(A) WSSVウイルス感染時
発現が亢進する遺伝子:Dicer2、Nox、Argonaute2、p38、Socs、Aox、Tollip、VEGF(132h)
発現が減少する遺伝子:p53、IAP、Wengen、Caspase3、Lysozyme、NOS、STAT、Toll、ASK1、VEGF(72h)

【0029】
(B)細菌(Vibrio penaeicida)感染時
発現が亢進する遺伝子:Toll、Toll2、Croquemort、ASK1、Duox、ALF2、Crustin、Lysozyme、Caspase3、NOS、Cyclophilin A、HDGF、MIF(24h)、PD-ECGF
発現が減少する遺伝子:Tollip、IMD、JNK、MIF(108h)、VEGF

【0030】
(C)ストレス負荷時
(C-1) 汚泥ストレス負荷時
発現が増加する遺伝子:p38、ALF2
発現が減少する遺伝子:JNK、Argonaute2
(C-2) -8℃水温低下ストレス負荷時
発現が増加する遺伝子:NOS
発現が減少する遺伝子:Caspase3、Nox
(C-3)24時間空気暴露ストレス:
発現が亢進する遺伝子:Toll、IMD、ASK1、JNK、p38、IAP、Dicer1、ALF2、Lysozyme
発現が減少する遺伝子:Caspase3

【0031】
従って、上記生体防御関連遺伝子の発現量の測定の結果、被検試料における生体防御関連遺伝子の発現パターンが、(A)と近似した発現パターンであれば、該被検試料を採取したエビ類がWSSVウイルスに感染している可能性が高く、上記の(B)と近似した発現パターンであれば、該被検試料を採取したエビ類がVibrio 細菌に感染している可能性が高く、また上記の(C)と近似した発現パターンであれば、ストレス負荷がかかり、疾病を発症するリスクが高いと判定できる。また、例えば、対照試料(ネガティブコントロール)における生体防御関連遺伝子の発現パターンと比較する場合、被検試料における生体防御関連遺伝子の発現パターンが、対照試料における生体防御関連遺伝子の発現パターンに近似していないほど、ウイルスや細菌感染の可能性が高く、健康状態が悪いと判定でき、対照試料における生体防御関連遺伝子の発現パターンに近似しているほど、ウイルスや細菌感染の可能性が低く、健康状態がよいと判定できる。

【0032】
また、上記生体防御関連遺伝子の発現量のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、被検試料における生体防御関連遺伝子の発現量とカットオフ値とを比較することによって診断を行うこともできる。例えば、WSSVウイルス感染により発現量が亢進する遺伝子を指標として用いる場合は、被検試料における生体防御関連遺伝子の発現量が設定したカットオフ値以上である場合に、WSSVウイルスに感染している可能性が相対的に高いと診断できる。

【0033】
遺伝子発現量の定量をRT-PCR法で行う場合、用いられるプライマー(セット)は、前記の生体防御関連遺伝子の各塩基配列に基づき設計し、合成・精製の各工程を経て調製することができる。プライマーのサイズ(塩基数)は、鋳型DNAとの間の特異的なアニーリングが可能とするために、20~40塩基である。プライマーの設計は、センス鎖(5'末端側)とアンチセンス鎖(3'末端側)からなる1組あるいは1対(2本)のプライマーが互いにアニールしないよう、両プライマー間の相補的配列を避けると共に、プライマー内のヘアピン構造の形成を防止するため自己相補配列をも避けるようにする。さらに、鋳型DNAとの安定な結合を確保するため、GC含量を約50%にし、プライマー内においてGC-richあるいはAT-richが偏在しないようにする。アニーリング温度はTm(melting temperature)に依存するので、特異性の高いPCR産物を得るため、Tm値が55~65℃で互いに近似したプライマーを選定する。また、PCRにおけるプライマー使用の最終濃度が約0.1~1μMになるよう調整する等を留意することも必要である。また、プライマー設計用の市販のソフトウェア、例えばOligoTM[National Bioscience Inc.(米国)製]、GENETYX[ソフトウェア開発(株)(日本)製]等を用いることもできる。

【0034】
本発明における上記の各生体防御関連遺伝子を増幅できるプライマーセットとして、具体的には下記のプライマーセットが例示できる。マルチプレックスPCRの場合は、下記のプライマーセットを複数用いることによって、同時に複数の生体防御関連遺伝子を同一反応液中で増幅することができる。

【0035】
p1) Toll遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CTGTTCCCCAAGCATTCAGT(配列番号38)
Rv: ACGAGTGGGTTCTCCCCTAT(配列番号39)
p2) Toll2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TTCACCTTTTTGCAAGTCCC(配列番号40)
Rv: GACAATAACCATGGGTTGCC(配列番号41)
p3) Tollip 遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CCTGAGTGGAAAGCTTGGAG(配列番号42)
Rv: GTGAGCAGGTGGCAAGGTAT(配列番号43)

【0036】
p4) IMD遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CAGCTGGAGAACATGACAGC(配列番号44)
Rv: TTTGAGTGAGTCTGGCAACG(配列番号45)
p5) Relish遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: GAGAGGTGACAGAGGTGGGA(配列番号46)
Rv: ATATGGGCGGTTGTAAGCAG(配列番号47)

【0037】
p6) STAT遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CCACTGGAAGGGGACTAACA(配列番号48)
Rv: GCAAAGAACCACTCCCAAAA(配列番号49)
p7) Socs遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: GGAGAGCGGCTGGTACTATG(配列番号50)
Rv: GTCTAACCTGAATTTGCCGC(配列番号51)

【0038】
P8) Croquemort遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TCACCCTCAATACAGTGCCA(配列番号52)
Rv: CGACAGCTTTTTCGTTGACA(配列番号53)
P9) ASK1遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGACAAAGGCCCACATGAAG(配列番号54)
Rv: AGGACAACATCACCCGAAAG(配列番号55)
p10) JNK遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TGCATAATGGGGGAGATGAT(配列番号56)
Rv: GTCGGCTGTAACCTCGACAT(配列番号57)
p11) p38遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: ATACCTGGCTCAGTATGCCG(配列番号58)
Rv: TTCTTTCCACTTCTCGGTGG(配列番号59)
p12) p53遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGAAGAGCAGGACTCCCACA(配列番号60)
Rv: AAGATTTCACTTCGGCCTCA(配列番号61)
p13) IAP遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TGTACACCAAGTCCCAGCAG(配列番号62)
Rv: TGATGCTTGCTCCAACAGTC(配列番号63)
p14) Caspase 3遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TATGTGGGCTTCCTACCCAG(配列番号64)
Rv: ACCTTGAGAAGGATGGAGGC(配列番号65)
p15) Wengen遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TGTACACGCTGTCATGGTCC(配列番号66)
Rv: ATGACCACGTTCCTCTTTCG(配列番号67)

【0039】
p16) Argonaute1遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: GAAGGACGTGACAGGGTGTT(配列番号68)
Rv: ATGTCATGGATGGCAGATGA(配列番号69)
p17) Argonaute2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: ACCTGAAGAACCCAAAGCCT(配列番号70)
Rv: CCTATCATCTGCTGGTGGGT(配列番号71)
p18) Dicer1遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CATCGGAGTATGGCCAAGAT(配列番号72)
Rv: AGCCCTGGGATCTTCCTTTA(配列番号73)
p19) Dicer2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AAAGGCCTCACAGGGAAAAT(配列番号74)
Rv: CGGAATCTGATGCCAAAAAT(配列番号75)

【0040】
p20) NOS遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: ATGTATGCCAAGAAGCTGGG(配列番号76)
Rv: AGACGTGACCACCAACACAA(配列番号77)
p21) Nox遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TGCACATGACAAGACAAGCA(配列番号78)
Rv: ATGAACCAGACTAGGTGCCG(配列番号79)
p22) Duox遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGATCGCGAAAACAAACACC(配列番号80)
Rv: TCGTAGGTGAGCGACTCCTT(配列番号81)
P23) Aox遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AAGGAGCATCCTGAACGCTA(配列番号82)
Rv: GACCAACTCCGAGGTGAAGA(配列番号83)

【0041】
p24) ALF2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: GCACTCGGATGAAGTGGAGT(配列番号84)
Rv: AAGGTTTCTTTGCAGGGCTT(配列番号85)
p25) Crustin遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: GCGGTGTAGGAGGTGTTCAT(配列番号86)
Rv: CGACCCACTACCACCTAAGC(配列番号87)
p26) Lysozyme遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CGATCTCATGTCCGACGATA(配列番号88)
Rv: AAGCCACCCATGCTGTGTAT(配列番号89)

【0042】
p27) Astakine遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TCAGATTTCCGTAAGGGACG(配列番号90)
Rv: TCTTCGGAGACCGAGTTGTC(配列番号91)
p28) Cyclophilin-A遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CGTGATCCCCAACTTCATGT(配列番号92)
Rv: AACTGTGACCCGTTGGTGTT(配列番号93)
p29) HDGF遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: ATGAAACGGCTTTGCTGAAG(配列番号94)
Rv: CAGAGACTTTCTGCCAGGCT(配列番号95)
p30) MIF遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: ACCATTGGGAAACCAGAACA(配列番号96)
Rv: CACCTAATTTGCCAAGGCTC(配列番号97)
p31) PD-ECGF遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CACACTCGACAAGCTGGAGA(配列番号98)
Rv: GCCTTCTTGCTGATGATGGA(配列番号99)
p32) VEGF遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CATTCAGCTGGACCAGGAAT(配列番号100)
Rv: CCTGCACTCAAACTCCATCA(配列番号101)
p33) VEGF2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: CTGTCCGTGGAAAAGAGGAA(配列番号102)
Rv: TTTTTGGCATCCACAACTCA(配列番号103)
p34) VEGF-Rcp遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: GCGAGACAAAGTTCTCCTGG(配列番号104)
Rv: CTGGCCTCGATGGTGTAGTT(配列番号105)
p35) VEGF-Rcp-STYKc遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TCAAGATGATGAAGTCGCGT(配列番号106)
Rv: GTAGTCGAGGATGTTGCCGT(配列番号107)
p36) BMP遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TCGTCCAGGACCAATACCTC(配列番号108)
Rv: TCCTCACTTGGGATGTTCGT(配列番号109)
p37) Myostatin遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: TCATTGCAAATGACTCCGAA(配列番号110)
Rv: ACTGGAATTCCGTCTGTTGC(配列番号111)

【0043】
また、上記プライマーセットを構成する配列番号38~111の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、配列番号38~111の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する範囲で、その塩基配列に改変を加えたオリゴヌクレオチドであってもよい。そのような改変オリゴヌクレオチドとしては、配列番号38~111の塩基配列に対して95%以上、好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、対応する各生体防御関連遺伝子増幅用プライマーとして機能しうるオリゴヌクレオチドが挙げられる。改変には、欠失、置換、挿入、又は付加が含まれ、改変させる塩基の数は、3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個である。また、塩基の付加は、3'側でも5'側でもよい。

【0044】
上記のプライマーセットの各オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA/RNA自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製Model 394など)を利用して合成することが可能である。

【0045】
試料から抽出したRNAより合成したcDNAを鋳型として、上記のプライマーセットを用いてPCR増幅を行う。PCR増幅は上記のプライマーセットを用いる以外は特に制限はなく、常法に従って行えばよい。具体的には、鋳型DNAの変性、プライマーへの鋳型へのアニーリング、および耐熱性酵素(TaqポリメラーゼやThermus themophilis由来のTth DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼ)を用いたプライマーの伸長反応を含むサイクルを繰り返すことにより、目的とする各生体防御関連遺伝子の特定の遺伝子配列を含む断片を増幅させる。PCR反応液の組成、PCR反応条件(温度サイクル、サイクルの回数等)は、上記のプライマーセットを用いたPCRにおいて高感度でPCR増幅産物が得られるような条件を予備実験等により当業者であれば適切に選択および設定することができる。プライマーのTmに基づいて適当なPCR反応条件を選択する方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、最初に94℃で5分間の変性反応、次に94℃で50秒間(変性)、55℃で50秒間(アニーリング)、72℃で1分間(伸長)を1サイクルとして30サイクル、最後に72℃で1分間の伸長反応により実施することができる。但し、ここに示した条件は一例に過ぎず、用いる酵素、反応温度、反応時間、サイクル数などは適宜変更することも可能である。このようなPCRの一連の操作は、市販のPCRキットやPCR装置を利用して、その操作説明書に従って行うことができる。PCR装置は、例えば、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)、GeneAmp PCR System 9600(Applied Biosystems社製)などが使用できるが、本発明方法においては、RNAをcDNA に変換しPCRを行う(RT-PCR)反応を、1本のチューブ内で連続的に実施することのできる、Takara One Step RT-PCR Kit AMV(TAKARA社製)が好適に使用できる。

【0046】
PCR増幅産物の検出は、アガロースゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動などの慣用の電気泳動、DNAハイブリダイゼーションやリアルタイムPCR等の方法を用いて行う。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いて当該PCRを行い、増幅産物を検出することもできる。また、DNAハイブリダイゼーションでは、マイクロアレイなどの固定化担体にPCR増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応等によりPCR増幅産物を確認する。検出用の固定化担体は、検出すべき生体防御関連遺伝子とハイブリダイズしうる配列を有するDNA断片が固定化されている支持体である。支持体としては、例えば、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、ガラス、シリコンチップなどを用いることができる。

【0047】
また、プローブとしては、各生体防御関連遺伝子の塩基配列の連続する部分配列からなるポリ(オリゴ)ヌクレオチド、あるいは、各生体防御関連遺伝子の塩基配列に対する相補配列の連続する部分配列からなるポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片が用いられる。プローブの長さは特に限定されないが、例えば15塩基以上、好ましくは20塩基以上であれば目的とする遺伝子の間で特異的なハイブリッドを形成できる。上記ヌクレオチド断片は、例えば、各塩基配列を有するポリヌクレオチド(cDNA)を適当な制限酵素で切断するか、あるいは、周知の化学合成技術により、において合成することができる。また、前記の生体防御関連遺伝子を特異的に増幅させるプライマーとして利用可能なオリゴヌクレオチドは、当該遺伝子を特異的に検出するためのプローブとしても使用可能であることは当業者にとって周知であるため、この知見を元にプローブとして利用可能なオリゴヌクレオチドを設計すればよい。

【0048】
上記ヌクレオチド断片をプローブとして使用する場合、標識物質により標識化する。標識物質は、特に限定はされないが、例えば、蛍光物質、放射性同位体、酵素、アビジン若しくはビオチンなどを用いることができる。蛍光物質としては、フルオレッセンスイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRIC)、シアニン色素(例えば、Cy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、アセチルアミノフルオレン(AFF)などが挙げられ、酵素としては、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが挙げられ、放射性同位体としては、125IやHなどが挙げられる。

【0049】
上記のプローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片は、前記生体防御関連遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることを特徴とする。ここで、ストリンジェントな条件とは、前記生体防御関連遺伝子とポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片との選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他公知の条件によって定義される。ストリンジェンシーは、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによって増加する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、NaCl約750 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約75mM以下、より好ましくはNaCl約500 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約50 mM以下、最も好ましくはNaCl約250 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約25 mM以下である。ストリンジェントな有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、好ましくは約50%以上である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上、好ましくは約37℃以上、より好ましくは約42℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、及びキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。

【0050】
また、プローブはマイクロアレイなどの固定化担体に固定化して用いてもよい。マイクロアレイの形成方法は特に限定されず、当業者が利用可能ないかなる方法を用いてもよく、例えば、固相担体表面で直接プローブを合成する方法(オン・チップ法)、又は予め調製したプローブを固相担体表面に結合する方法などがある。固相担体表面で直接プローブを合成する場合には、光照射で選択的に除去される保護基を用い、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術を組み合わせて所定の微少なマトリックス領域でのオリゴヌクレオチドの選択的な合成を行う方法が一般的である。一方、予めプローブを調製して固相担体表面に結合する方法では、プローブ核酸の種類や固相担体の種類に応じて、スポッタ装置によりポリ陽イオン化合物やアミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤などで表面処理した固相担体の表面に点着する方法、反応活性基を導入したプローブ核酸を合成し、予め反応性基を形成させるように表面処理した固相担体表面に該プローブ核酸を点着して該プローブ核酸を固相担体表面に共有結合により結合固定させる方法などが利用できる。

【0051】
本発明の方法に用いる上記生体防御関連遺伝子の発現量を測定するための試薬を予め組み合わせてキット化することもできる。例えば、キットには、前記のプライマーセット、プローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチドを少なくとも含んでいればよい。また、該キットには、必要に応じて、RNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、染色剤や電気泳動用ゲル等の検出用試薬、固定化担体、標識物質、標識の検出に用いられる基質化合物、陽性や陰性の標準試料、キットの使用方法を記載した指示書等を含めることもできる。なお、キット中の試薬は溶液でも凍結乾燥物でもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1)多検体遺伝子発現解析システムの構築
1.方法
(1)供試クルマエビ
宮崎県のクルマエビ養殖場より平均体重12.0gのクルマエビを購入し実験に供した。
【実施例】
【0053】
(2)マルチプレックスのデザイン
(2-1) 遺伝子選択
本発明のエビ類診断のための遺伝子発現解析システムの構築において、これまで同定されてきたクルマエビにおける数多くの生体防御関連伝子群の中から特に重要とされる36遺伝子(表1)を選択することにし、その中で最適化の検討を行った。また、EF-1αは、内部標準遺伝子として用いた。
【実施例】
【0054】
【表1】
JP2014143949A_000002t.gif
JP2014143949A_000003t.gif
【実施例】
【0055】
(2-2) 遺伝子特異的プライマーの設計
GenomeLabTM GeXP eXpress Profiler software(Beckman Coulter,USA)を用いて行った。まず、上記の選択した遺伝子の全長配列を登録した。次に、PCR産物間の最小間隔を3bp、PCR産物の最小サイズを100bp、最大サイズを350bpになるように設定し、その範囲内で下記に示す各遺伝子プライマーの設計を行った。ただし、VEGF-Receptor遺伝子については、2つの領域(VEGF-Rcp,VEGF-Rcp-STYKc)をターゲットとし、それぞれプライマーを設計した。なお、設計されたプライマーには、それぞれの遺伝子における特異的配列に加えて、ユニバーサル配列部分として、フォワードプライマーにはAGGTGACACTATAGAATA(配列番号114)、リバースプライマーにはGTACGACTCACTATAGGGA(配列番号115)が、共に5’末端側に組み込まれている。
【実施例】
【0056】
[Toll遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CTGTTCCCCAAGCATTCAGT(配列番号38)
Rv: ACGAGTGGGTTCTCCCCTAT(配列番号39)
[Toll2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TTCACCTTTTTGCAAGTCCC(配列番号40)
Rv: GACAATAACCATGGGTTGCC(配列番号41)
[Tollip 遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CCTGAGTGGAAAGCTTGGAG(配列番号42)
Rv: GTGAGCAGGTGGCAAGGTAT(配列番号43)
[IMD遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CAGCTGGAGAACATGACAGC(配列番号44)
Rv: TTTGAGTGAGTCTGGCAACG(配列番号45)
[Relish遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GAGAGGTGACAGAGGTGGGA(配列番号46)
Rv: ATATGGGCGGTTGTAAGCAG(配列番号47)
[STAT遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CCACTGGAAGGGGACTAACA(配列番号48)
Rv: GCAAAGAACCACTCCCAAAA(配列番号49)
[Socs遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GGAGAGCGGCTGGTACTATG(配列番号50)
Rv: GTCTAACCTGAATTTGCCGC(配列番号51)
[Croquemort遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TCACCCTCAATACAGTGCCA(配列番号52)
Rv: CGACAGCTTTTTCGTTGACA(配列番号53)
[ASK1遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGACAAAGGCCCACATGAAG(配列番号54)
Rv: AGGACAACATCACCCGAAAG(配列番号55)
[JNK遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TGCATAATGGGGGAGATGAT(配列番号56)
Rv: GTCGGCTGTAACCTCGACAT(配列番号57)
[p38遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: ATACCTGGCTCAGTATGCCG(配列番号58)
Rv: TTCTTTCCACTTCTCGGTGG(配列番号59)
[p53遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGAAGAGCAGGACTCCCACA(配列番号60)
Rv: AAGATTTCACTTCGGCCTCA(配列番号61)
[IAP遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TGTACACCAAGTCCCAGCAG(配列番号62)
Rv: TGATGCTTGCTCCAACAGTC(配列番号63)
[Caspase 3遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TATGTGGGCTTCCTACCCAG(配列番号64)
Rv: ACCTTGAGAAGGATGGAGGC(配列番号65)
[Wengen遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TGTACACGCTGTCATGGTCC(配列番号66)
Rv: ATGACCACGTTCCTCTTTCG(配列番号67)
[Argonaute1遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GAAGGACGTGACAGGGTGTT(配列番号68)
Rv: ATGTCATGGATGGCAGATGA(配列番号69)
[Argonaute2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: ACCTGAAGAACCCAAAGCCT(配列番号70)
Rv: CCTATCATCTGCTGGTGGGT(配列番号71)
[Dicer1遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CATCGGAGTATGGCCAAGAT(配列番号72)
Rv: AGCCCTGGGATCTTCCTTTA(配列番号73)
[Dicer2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AAAGGCCTCACAGGGAAAAT(配列番号74)
Rv: CGGAATCTGATGCCAAAAAT(配列番号75)
[NOS遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: ATGTATGCCAAGAAGCTGGG(配列番号76)
Rv: AGACGTGACCACCAACACAA(配列番号77)
[Nox遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TGCACATGACAAGACAAGCA(配列番号78)
Rv: ATGAACCAGACTAGGTGCCG(配列番号79)
[Duox遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGATCGCGAAAACAAACACC(配列番号80)
Rv: TCGTAGGTGAGCGACTCCTT(配列番号81)
[Aox遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AAGGAGCATCCTGAACGCTA(配列番号82)
Rv: GACCAACTCCGAGGTGAAGA(配列番号83)
[ALF2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GCACTCGGATGAAGTGGAGT(配列番号84)
Rv: AAGGTTTCTTTGCAGGGCTT(配列番号85)
[Crustin遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GCGGTGTAGGAGGTGTTCAT(配列番号86)
Rv: CGACCCACTACCACCTAAGC(配列番号87)
[Lysozyme遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CGATCTCATGTCCGACGATA(配列番号88)
Rv: AAGCCACCCATGCTGTGTAT(配列番号89)
[Astakine遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TCAGATTTCCGTAAGGGACG(配列番号90)
Rv: TCTTCGGAGACCGAGTTGTC(配列番号91)
[Cyclophilin-A遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CGTGATCCCCAACTTCATGT(配列番号92)
Rv: AACTGTGACCCGTTGGTGTT(配列番号93)
[HDGF遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: ATGAAACGGCTTTGCTGAAG(配列番号94)
Rv: CAGAGACTTTCTGCCAGGCT(配列番号95)
[MIF遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: ACCATTGGGAAACCAGAACA(配列番号96)
Rv: CACCTAATTTGCCAAGGCTC(配列番号97)
[PD-ECGF遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CACACTCGACAAGCTGGAGA(配列番号98)
Rv: GCCTTCTTGCTGATGATGGA(配列番号99)
[VEGF遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CATTCAGCTGGACCAGGAAT(配列番号100)
Rv: CCTGCACTCAAACTCCATCA(配列番号101)
[VEGF2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: CTGTCCGTGGAAAAGAGGAA(配列番号102)
Rv: TTTTTGGCATCCACAACTCA(配列番号103)
[VEGF-Rcp遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GCGAGACAAAGTTCTCCTGG(配列番号104)
Rv: CTGGCCTCGATGGTGTAGTT(配列番号105)
[VEGF-Rcp-STYKc遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TCAAGATGATGAAGTCGCGT(配列番号106)
Rv: GTAGTCGAGGATGTTGCCGT(配列番号107)
[BMP遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TCGTCCAGGACCAATACCTC(配列番号108)
Rv: TCCTCACTTGGGATGTTCGT(配列番号109)
[Myostatin遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: TCATTGCAAATGACTCCGAA(配列番号110)
Rv: ACTGGAATTCCGTCTGTTGC(配列番号111)
[EF-1α遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: GACATTGCCCTGTGGAAGTT(配列番号112)
Rv: CCTCAGAGTACTTGGGCTCG(配列番号113)
【実施例】
【0057】
(3) 使用RNAのサンプル作製
マルチプレックスプライマーの最適化において、各遺伝子が一定量の発現をしているRNAサンプルが必要である。本試験においては、リアルタイムPCRの結果を参考に、健康クルマエビの各臓器(試料1)、Vibrio penaeicida死菌刺激後6時間のクルマエビの鰓(試料2)、およびWSSV感染後40時間のクルマエビの血リンパ(試料3)をRNAサンプリングの材料として用いた。
【実施例】
【0058】
試料1:健康クルマエビの各臓器の採取
健康クルマエビより、胃、リンパ様器官、中腸線、鰓、腸管、筋肉、脳、心臓、血球および腹部神経のサンプリングを行った。
【実施例】
【0059】
試料2:in vivo条件下でのV. penaeicida死菌刺激クルマエビの鰓の採取
まず、マリンアガーで培養したV. penaeicidaをPBSに溶解し、106cells/ml濃度に調整をした。75℃で30分間熱処理をし、3尾のクルマエビ第二腹筋に100 μlづつ注射をした。その後、6時間後に鰓のサンプリングを行った。
【実施例】
【0060】
試料3:in vivo条件下でのWSSV感染クルマエビの鰓の採取
104copies/ml濃度に調整をしたWSSVを3尾のクルマエビ第二腹筋に100 μlづつ注射をした。その後、40時間後に血リンパのサンプリングを行った。
【実施例】
【0061】
(4) フォワード・リバースシングレット
各遺伝子のプライマーペア単独でRT-PCR反応を実施し、設計したプライマーの確認を行った。
(4-1) Total RNA抽出
(3)で採取したサンプルを1.5mlチューブに移し200μlのRNAiso Plus (TaKaRa, Japan) を加え、よくホモジナイズし、再び800μlのRNAiso Plus (TaKaRa, Japan)を加え1.0mlシリンジ (20G針付)で20回程度攪拌し、22℃で5分間静置した。次にクロロホルム (Wako, Japan) 200μlを加え、激しく撹拌した後、室温で3分静置し、12,000G、4℃で15分間遠心分離を行った。その上清を新しい1.5mlエッペンドルフチューブに移し、イソプロピルアルコール (Wako, Japan) 500μlを加え、静かに混濁転倒し、室温で10分間静置後、12,000G、4℃で10分間遠心分離を行った。上清を除去し、75%エタノール (Wako, Japan) 1mlを加え、緩やかに混和した後、8,000G、4℃で5分間遠心分離を行った。上清を除去し、10分間風乾させ、ペレット (Total RNA) を10μlのNucleas Free Water (Wako, Japan) に溶解して、RNA溶液とした。
【実施例】
【0062】
(4-2) cDNAの作成
上記において抽出したTotal RNAをまず、DNase I(Invitrogen, Japan) を用いてDNase処理用反応溶液 (表2) を作製し、タッピングにより混和し、室温で20分間静置した。25mM EDTA (pH:8.0) を0.75μl加えて、サーマルサイクラー(BIO RAD,Mycycler) を用いて、65℃で10分間の反応を行い、DNase処理を行った。
【実施例】
【0063】
【表2】
JP2014143949A_000004t.gif
【実施例】
【0064】
次いでGenemeLab GeXP Start Kit (BECKMAN COULTER,USA)を用いて逆転写反応を行った。cDNA合成用反応溶液(表3)を作成し、サーマルサイクラー (BIO RAD, Mycycler) を用いて、48℃で1分間、37℃で5分間、42℃で60分間、95℃で5分間、4℃で5分間の逆転写反応を行った。
【実施例】
【0065】
【表3】
JP2014143949A_000005t.gif
【実施例】
【0066】
(4-3) PCR反応
作製したcDNAをテンプレートとし、表4に示す組成のPCR用反応溶液を用いてPCRを行い、各遺伝子の増幅を行った。PCRは、95℃で10分間のプレヒート後94℃で30秒間の熱変性、55℃で30秒間のアニーリング、68℃で1分の伸長反応を45サイクル、サーマルサイクラー(BIO RAD,Mycycler) を用いて行った。
【実施例】
【0067】
【表4】
JP2014143949A_000006t.gif
【実施例】
【0068】
(4-4) キャピラリー電気泳動
(4-3)において増幅されたPCR産物をTris-HCl 10mM(pH8.0)で10倍希釈した。SLSに溶解したサンプル全量(表5)をサンプルプレートに移し、バッファープレートには専用のセパレーションバッファー (BECKMAN COULTER,USA) を、サンプルを入れたポジションと同じところに8~9滴入れ、CEQ8000へサンプルプレートをセットしてメソッドをスタートさせた。
【実施例】
【0069】
【表5】
JP2014143949A_000007t.gif
【実施例】
【0070】
(4-5)データ解析
各遺伝子それぞれ1遺伝子ずつにおいて、(4-1)から(4-4)のRT-PCR反応を実施し、ターゲット遺伝子とKanrのピークのみが検出され、ターゲット遺伝子由来のピークが、設計したサイズで検出されるかどうかの確認を行った。本来は、必要に応じてプライマーの再設計を行い、再度(4-1)から(4-4)のRT-PCR反応を実施し、適正なプライマーの構築行うが、今回再設計は行わず、使用可能なプライマーペア遺伝子のみで次の手順へ進んだ。
【実施例】
【0071】
(5) フォワードプレックス・リバースプレックス
(5-1) 基礎となる5遺伝子の検討
(4-1)から(4-4)と同様の方法で基礎となる5遺伝子の検討を行った。ただし、cDNAの作成時のリバースプライマーおよびPCR反応時のフォワードプライマーはともに各遺伝子をミックスしたもので行った。さまざまな遺伝子の組み合わせを検討し、ターゲット遺伝子とKanrのピークのみが検出され、ターゲット遺伝子由来のピークが、設計したサイズで検出されるかどうかの確認を行った。また、非特異的ピークが検出された状況でも、ターゲット遺伝子から3bp以上離れている場合は、結果に影響がないと判断した。その中で、最適な5遺伝子の組合せを選択した。
【実施例】
【0072】
(5-2) 5遺伝子を基礎とした遺伝子の追加
(5-1)において選択した5遺伝子を基礎とし、1遺伝子ずつ追加していき、(4-1)から(4-4)と同様の方法で追加した遺伝子の検討を行った。ただし、cDNAの作成時のリバースプライマーおよびPCR反応時のフォワードプライマーはともに各遺伝子をミックスしたもので行った。さまざまな遺伝子の追加を検討し、ターゲット遺伝子とKanrのピークのみが検出され、ターゲット遺伝子由来のピークが、設計したサイズで検出されるかどうかの確認を行った。また、非特異的ピークが検出された状況でも、ターゲット遺伝子から3bp以上離れている場合は、結果に影響がないと判断した。上記の方法で、5遺伝子の組合せに1遺伝子ずつ段階的に追加を行い、目標の遺伝子となるよう試みた。
【実施例】
【0073】
(6) フォワードシングレット・リバースプレックス
(4-1)から(4-4)と同様の方法を用いて、(5-2)で選択された目標の遺伝子の組合せのプライマーの検討を行った。ただし、cDNAの作成時のリバースプライマーは各遺伝子をミックスしたもので行い、PCR反応時のフォワードプライマーは各遺伝子それぞれを1遺伝子ずつで行った。選択した遺伝子の組み合わせにおいて、ターゲット遺伝子とKanrのピークのみが検出され、ターゲット遺伝子由来のピークが、設計したサイズで検出されるかどうかの確認を行った。また、非特異的ピークが検出された状況でも、ターゲット遺伝子から3bp以上離れている場合は、結果に影響がないと判断した。ただし、3bp以上離れていない場合は、再度、(5-1)を行い目標の遺伝子数における別の最適な組合せの探索を実施後、フォワードシングレット・リバースプレックスを行い、組合せが適正かどうかの確認を行った。
【実施例】
【0074】
(7) シグナルバランスの調整
(7-1) PCR産物の希釈率の決定
サンプルの泳動を行い、各シグナルが発現変動の測定に最適な検出範囲内に収まり、バックグラウンドノイズまたはベースラインが最小限に抑えられるように希釈率を決定した。
【実施例】
【0075】
(7-2) リバースプライマー濃度の最適化
PCR産物のみで最適化が行えない場合は、(4-1)から(4-4)と同様の方法を行い、各ピークのバランスを合わせる為リバースプライマー濃度の最適化の検討を行った。ただし、cDNAの作成時のcDNA合成用反応溶液は、(4-1)から(4-4)の方法は異なっており、リバースプライマー濃度の最適化時の反応溶液組成を表6に示す。
【実施例】
【0076】
【表6】
JP2014143949A_000008t.gif
【実施例】
【0077】
2.結果
上記の一連の操作により、選択した36遺伝子の中の複数の遺伝子を組み合わせた下記の4つのパッケージ(表7-1~4)を構築した。
【実施例】
【0078】
【表7-1】
JP2014143949A_000009t.gif
【実施例】
【0079】
【表7-2】
JP2014143949A_000010t.gif
【実施例】
【0080】
【表7-3】
JP2014143949A_000011t.gif
【実施例】
【0081】
【表7-4】
JP2014143949A_000012t.gif
【実施例】
【0082】
(実施例2)ストレス負荷によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の動態解析
1.方法
(1) 供試クルマエビ
九州のクルマエビ養殖場より平均体重12.0gのクルマエビを購入し実験に供試した。
【実施例】
【0083】
(2) ストレス負荷によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の動態解析
(2-1) ストレス負荷試験およびRNAの抽出
汚泥飼育水区は、クルマエビ養殖場において、養殖池の中でも比較的水質の汚れが大きいポイントより採取したクルマエビを用い、3尾より200μlの血リンパをサンプリングした。サンプリングした血リンパは、1.5 mlチューブに移し800 μlのRNAiso plusを加え、実施例1の(4-1)と同様にtotal RNAの抽出を行った。
【実施例】
【0084】
-8℃水温低下(18℃低水温)区は、クルマエビ養殖場において、出荷時の選別作業を行う水温18℃の出荷用プールのクルマエビを用い、3尾より200μlの血リンパをサンプリングした。サンプリングした血リンパは、1.5 mlチューブに移し800 μlのRNAiso plusを加え、実施例1の(4-1)と同様にtotal RNAの抽出を行った。
【実施例】
【0085】
24時間空気暴露区は、クルマエビ養殖場において、養殖池から水揚げ後、24時間おがくずの中で空気暴露したクルマエビを用い、3尾より200μlの血リンパをサンプリングした。サンプリングした血リンパは、1.5 mlチューブに移し800 μlのRNAiso plusを加え、実施例1の(4-1)と同様にtotal RNAの抽出を行った。
【実施例】
【0086】
(2-2) cDNAの作成
上記において抽出したTotal RNAをまず、DNase I(Invitrogen, Japan) を用いてDNase処理用反応溶液(前記表2と同じ)を作製し、タッピングにより混和し、室温で20分間静置した。25mM EDTA (pH:8.0) を0.75μl加えて、サーマルサイクラー(BIO RAD,Mycycler) を用いて、65℃で10分間の反応を行い、DNase処理を行った。
【実施例】
【0087】
次いでGenemeLab GeXP Start Kit (BECKMAN COULTER,USA)を用いて逆転写反応を行った。cDNA合成用反応溶液(前記表6と同じ)を作成し、サーマルサイクラー (BIO RAD, Mycycler) を用いて、48℃で1分間、37℃で5分間、42℃で60分間、95℃で5分間、4℃で5分間の逆転写反応を行った。
【実施例】
【0088】
(2-3) PCR反応
作製したcDNAをテンプレートとし、実施例1で構築したパッケージ1~4をそれぞれ用い、各パッケージの遺伝子のFwプライマーを混合したFwプライマー混合液と、同遺伝子のRvプライマーを混合したRvプライマー混合液(実施例1(6-2)で濃度を最適化したプライマー混合液)をそれぞれ調製し、これらの各混合液をFwプライマーおよびRvプライマーとしてPCR反応を行ない(PCR用反応溶液の組成は前記表4のとおり)、各遺伝子の増幅を行った。PCRは、95℃で10分間のプレヒート後94℃で30秒間の熱変性、55℃で30秒間のアニーリング、68℃で1分の伸長反応を45サイクル、サーマルサイクラー (BIO RAD,Mycycler)を用いて行った。
【実施例】
【0089】
(2-4) キャピラリー電気泳動
(2-3)において増幅されたPCR産物をTris-HCl 10mM(pH8.0)で10倍希釈した。SLSに溶解したサンプル全量(前記表5と同じ)をサンプルプレートに移し、バッファープレートには専用のセパレーションバッファー (BECKMAN COULTER,USA) を、サンプルを入れたポジションと同じところに8~9滴入れ、CEQ8000へサンプルプレートをセットしてメソッドをスタートさせた。
【実施例】
【0090】
(2-5) 各遺伝子の発現定量解析
(2-4)より得られたデータを基に、GeXP Profiler softwareおよびGeXP Quant Tool software (BECKMAN COULTER,USA)を用いて解析を行い、ヒートマップにして、発現量をまとめた。
【実施例】
【0091】
2.結果
ストレス負荷によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の発現定量解析結果を下記表8に示す。
【実施例】
【0092】
【表8】
JP2014143949A_000013t.gif
【実施例】
【0093】
汚泥池においては、p38(2.38倍)、ALF2(2.07倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、JNK(0.11倍)、Argonaute2(0.36倍)の各遺伝子の発現が顕著に減少した。
-8℃の水温低下ストレスにおいては、NOS(2.50倍)遺伝子の発現が顕著に増加した。
【実施例】
【0094】
24時間空気暴露ストレスにおいては、p38(5.23倍)、Toll(4.58倍)、IAP(4.32倍)、ALF2(3.74倍)、Dicer1(3.55倍)、JNK(3.47倍)、ASK1(2.74倍)、Lysozyme(2.26倍)、IMD(2.08倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、Caspase3(0.14倍)遺伝子の発現が顕著に減少した。
【実施例】
【0095】
汚泥池において顕著な発現がみられたのは、p38、ALF2であった。p38は、内因性のアポトーシス機構におけるストレス応答MAPキナーゼファミリーの一つで、水質の悪化でアポトーシス機構の一部が活性化されていると考えられる。ALF2は、殺菌・抗菌作用をもつタンパク質である抗菌ペプチドの一種で、水質の悪化による日和見感染が原因で活性化したと示唆される。
【実施例】
【0096】
-8℃の水温低下ストレスにおいて顕著な発現がみられたのは、NOSであった。NOSは、一酸化窒素合成酵素である。水温低下ストレスでNOS遺伝子が活性化された理由は不明である。
【実施例】
【0097】
24時間空気暴露ストレスにおいて顕著な発現がみられたのは、Toll、IMD、ASK1、JNK、p38、IAP、Dicer1、ALF2、Lysozymeであった。本個体群は、生存はしているものの衰弱がみられており、それによる日和見感染が起こりやすい状況であった為、多くの遺伝子の発現上昇が見られたのではないかと考えられる。TollおよびIMDは、それぞれ細菌感染で活性化し、抗菌ペプチドの発現を誘導するToll経路およびIMD経路の上流に位置する因子であり、日和見感染により活性化したと考えられる。ASK1、JNK、p38、IAPは、様々のストレスを受けると、シグナルが核内に伝わりアポトーシスが誘導されるアポトーシス機構の因子であり、空気中に長時間さらされたストレスによって活性化したと思われる。
Dicer1は内因性由来のRNAに対して働くことが知られており、衰弱による一部細胞の機能低下で生成された内因性のRNAの細胞外への漏出によって活性化したと考えられる。
ALF2、Lysozymeは、殺菌・抗菌作用をもつタンパク質である抗菌ペプチドの一種で、長時間の空気との接触による日和見感染が原因で活性化したのではないかと考えられる。
【実施例】
【0098】
(実施例3)WSSV感染によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の動態解析
1.方法
(1) 感染試験用WSSV液の調製
-80℃で保存していたWSSV感染クルマエビから心臓、リンパ様器官を摘出し、あらかじめ1尾あたり200μlのPBS(表9)を分注しておいた1.5 mlチューブに入れ、ペッスルでホモジナイズした。その後8,000 × rpm,4℃で15分間遠心し、上清を新しい1.5 mlチューブに移し、磨砕液に対し10倍希釈となるようにPBSを加え、0.45 μmメンブレンフィルターに通し、タンパク質の除去を行ったものを、感染試験用WSSV液(感染液A)として使用した。
【実施例】
【0099】
【表9】
JP2014143949A_000014t.gif
【実施例】
【0100】
また、感染液AからQuick-gDNATM MiniPrep(ZYMO,USA)を用いDNAを抽出し、テンプレートを作製し、あらかじめ作成しておいたWSSVの構成タンパク質であるvp28遺伝子を導入したプラスミドの希釈系列(1.0×101~109)と同時に、表10に示す組成でリアルタイムPCRを行い、ウイルス量の定量を行ったところ感染液Aのウイルス数は、2.0×106 copies/mlであった。
【実施例】
【0101】
【表10】
JP2014143949A_000015t.gif
【実施例】
【0102】
冷凍保存した個体を用いたウイルス精製では、ウイルス活性が比較的低いことから、この感染液Aをクルマエビ1尾当たりに100 μl(1.0×104 copies)ずつ筋肉中に注射し、3日後に感染液Aの調製方法と同様の方法で、感染試験用WSSV液(感染液B)を調製した。また、感染液Bのウイルス数は、4.0×106copies/mlであった。
【実施例】
【0103】
(2) WSSV感染試験およびRNAの抽出
WSSV感染区は、クルマエビ1尾当たりに、(1)で調製した感染液Bを100 μl(5.0×102 copies)筋肉中に注射した。WSSV接種後6, 12, 24, 48, 72, 120および144時間(サイトカイン関連遺伝子については6, 12, 24, 48, 72, 108および132時間)後において、各区3尾ずつ200μlの血リンパをサンプリングした。サンプリングした血リンパは、1.5 mlチューブに移し800 μlのRNAiso plusを加え、実施例1の(4-1)と同様にtotal RNAの抽出を行った。
【実施例】
【0104】
(3) 各遺伝子の発現定量解析
上記において抽出したTotal RNAを用いて、実施例2の(2-2)から(2-5)と同様の作業を行い、各遺伝子の発現定量解析を行った。
【実施例】
【0105】
2.結果
WSSV感染によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の発現定量解析結果を下記表11、12に示す。
【実施例】
【0106】
【表11】
JP2014143949A_000016t.gif
【実施例】
【0107】
WSSV感染初期(~24時間)においては、Dicer2 (6.27倍)、Nox(5.82倍)、Argonaute2(3.77倍)、Aox(3.41倍)、STAT(3.19倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、p53(0.18倍)、IAP(0.21倍)、Wengen (0.21倍)、Caspase3(0.27倍)、Lysozyme (0.40倍)の各遺伝子の発現が顕著に減少した。
【実施例】
【0108】
WSSV感染中期(48~72時間)においては、Dicer2(9.63倍)、Nox(7.49倍)、p38(5.84倍)、Socs(3.40倍)、Tollip(3.34倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、NOS(0.16倍)遺伝子の発現が顕著に減少した。
【実施例】
【0109】
WSSV感染後期(120~144時間)においては、Argonaute2(9.31倍)、p38(5.79倍)、Socs(4.51倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、p53(0.13倍)、STAT(0.13倍)、Toll(0.14倍)、ASK1(0.16倍)、IAP(0.11倍)、Caspase3(0.15倍)の発現が顕著に減少した。
【実施例】
【0110】
WSSV感染により、特に顕著な発現の上昇がみられたのは、Socs、p38、Argonaute2、Dicer2、Noxであった。Socsは、JAK/STAT経路のSTAT抑制因子とされており、WSSV感染によりSTATが抑制されていると考えられる。p38は、内因性のアポトーシス機構におけるストレス応答MAPキナーゼファミリーの一つで、WSSV感染でアポトーシス機構の一部が活性化されていると考えられる。しかし、他のアポトーシス関連遺伝子の発現の上昇がみられないため、p38より下流へのシグナル伝達が阻害されていることおよび、他の生体防御システムとのクロストークが生じていることが考えられる。
【実施例】
【0111】
Argonaute2およびDicer2は、塩基配列特異的なRNA分解あるいは翻訳抑制による遺伝子の発現制御機構であるRNA干渉に関する因子である。特にArgonaute2およびDicer2は、ウイルス等の外因性由来のRNAに対して働くことが知られており、WSSV感染による外因性由来のRNAの侵入によって活性化したと考えられる。Noxは、酵素の働きにより強力な殺菌・殺ウイルス能をもつNADPH酸化酵素である。本酵素によってスーパーオキシドが生成される。また、WSSV感染時の特徴として、細菌感染で顕著な発現がみられた遺伝子のほとんどが抑制されていることもあげられる。
【実施例】
【0112】
【表12】
JP2014143949A_000017t.gif
【実施例】
【0113】
WSSV感染108時間以降においてVEGFの発現が顕著に増加、その他の遺伝子は感染後6時間以降において減少傾向にあった。
【実施例】
【0114】
(実施例4)Vibrio penaeicida感染によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の動態解析
1.方法
(1) 感染試験用V. penaeicida菌液の調製
25℃でマリンブロス寒天培地(Becton Dickinson, USA)で培養していたV. penaeicidaをPBSで溶解し、V. penaeicidaが懸濁している菌液を作製した。作製した菌液を菌液の生菌数濃度を濁度から推測するマクファーランド比濁法を用いて細菌数の定量を行い、菌液中の細菌数が6.0×108 CFU/mlとなるよう菌液を調製した(菌液A)。
【実施例】
【0115】
マリンブロス寒天培地上で培養した細菌を用いた菌液では、細菌活性が比較的低いことから、菌液Aをクルマエビ1尾当たりに100 μl(5.0×103 CFU/ml)ずつ筋肉中に注射し、3日後に菌液Aの調製方法と同様の方法で、6.0×108 CFU/mlの感染試験用菌液(菌液B)を調製した。
【実施例】
【0116】
(2) V. penaeicida感染試験およびRNAの抽出
V. penaeicida感染区は、クルマエビ1尾当たりに、(1)で調製した菌液Bを100 μl(5.0×104 CFU/ml)筋肉中に注射した。V. penaeicida接種後6, 12, 24, 48, 72, 120および144時間後(サイトカイン関連遺伝子については6, 12, 24, 48, 72, 108および132時間後)において、各区3尾ずつ200μlの血リンパをサンプリングした。サンプリングした血リンパは、1.5 mlチューブに移し800 μlのRNAiso plusを加え、実施例1の(4-1)と同様にtotal RNAの抽出を行った。
【実施例】
【0117】
(3)各遺伝子の発現定量解析
上記において抽出したTotal RNAを用いて、実施例2の(2-2)から(2-5)と同様の作業を行い、各遺伝子の発現定量解析を行った。
【実施例】
【0118】
2.結果
V. penaeicida感染によるクルマエビ生体防御関連遺伝子群の発現定量解析結果を下記表13、14に示す。
【実施例】
【0119】
【表13】
JP2014143949A_000018t.gif
【実施例】
【0120】
ビブリオ感染初期(~24時間)においては、Toll(7.63倍)、Croquemort(6.70倍)、ASK1(5.87倍)、Lysozyme(7.51倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、Toll2(0.10倍)、Tollip(0.13倍)、IMD(0.17倍)の各遺伝子の発現が顕著に減少した。
ビブリオ感染中期(48~72時間)においては、Toll2(5.77倍)、Caspase3(4.28倍)、ALF2(4.22倍)、Crustin(6.70倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加した。
ビブリオ感染後期(120~144時間)においては、Toll(6.83倍)、Croquemort(7.10倍)、NOS(4.50倍)、Duox(6.63倍)の各遺伝子の発現が顕著に増加し、JNK(0.04倍)遺伝子の発現が顕著に減少した。
【実施例】
【0121】
Vibrio penaeicida感染により、特に顕著な発現の上昇がみられたのは、Toll、Toll2、Croquemort、ASK1、Duox、ALF2、Crustin、Lysozymeであった。TollおよびToll2は、細菌の感染で活性化し、抗菌ペプチドの発現を活性化するToll経路関連因子であり、共に本経路の受容体として機能していると考えられている。細菌感染を認識し、活性化が起きたことが考えられる。Croquemortは、死細胞の認識受容体でアポトーシス関連因子である。細菌に対する貪食作用で生じた死細胞によって活性化されていると考えられる。
【実施例】
【0122】
ASK1は、内因性のアポトーシス機構におけるストレス応答MAP3キナーゼファミリーの一つで、細菌感染でアポトーシス機構の一部が活性化されていると考えられる。Duoxは、酵素の働きにより強力な殺菌・殺ウイルス能をもつ過酸化水素生成酵素である。貪食細胞は感染が起こると病原体や異物を貧食し、内部で生成された過酸化水素が殺菌/破壊する為、細菌感染によって活性化されたと考えられる。ALF2、Crustin、Lysozymeは、殺菌・抗菌作用をもつタンパク質である抗菌ペプチドの一種で、様々なシグナルの活性化の最終生産物として活性化したと示唆される。
【実施例】
【0123】
全体的にみて、発現が上昇傾向の遺伝子が多く見られた。そのような中で、発現動向があまり見られなかったものに、IMD、JNKおよびRNA干渉関連遺伝子が挙げられる。
【実施例】
【0124】
【表14】
JP2014143949A_000019t.gif
【実施例】
【0125】
Vibrio penaeicida感染後6-24時間において、Cyclophilin A、HDGF、MIFおよびPD-ECGFの発現が増加傾向であり、感染後48時間以降においてMIFおよびVEGFは減少傾向であった。BMP、Myostatinは血リンパにおいては発現量が低く、測定不能であった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、エビ類の増養殖分野、エビ類用医薬品の研究および製造開発分野において利用できる。