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明細書 :抗菌剤、及び抗菌活性増強剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-148495 (P2014-148495A)
公開日 平成26年8月21日(2014.8.21)
発明の名称または考案の名称 抗菌剤、及び抗菌活性増強剤
国際特許分類 A61K  31/4375      (2006.01)
A01N  43/90        (2006.01)
A01N  65/08        (2009.01)
A01P   3/00        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  36/18        (2006.01)
FI A61K 31/4375
A01N 43/90 103
A01N 65/08
A01P 3/00
A61P 31/04
A61K 45/00
A61K 35/78 C
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2013-060107 (P2013-060107)
出願日 平成25年3月22日(2013.3.22)
優先権出願番号 2013003241
優先日 平成25年1月11日(2013.1.11)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】黒田 照夫
【氏名】波多野 力
【氏名】土屋 友房
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4C086
4C088
4H011
Fターム 4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB352
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB27
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C088AB39
4C088AC05
4C088AC11
4C088CA04
4C088NA14
4C088ZB35
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB10
4H011BB22
4H011DF05
要約 【課題】新規の抗菌薬、特に薬剤耐性菌に対しても有効な抗菌薬を有効成分とする抗菌剤を提供すること。
【解決手段】セスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する抗菌剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):
【化1】
JP2014148495A_000016t.gif
[式中、Rは水酸基を示し、Rは水素又は水酸基を示す]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド、及び/又は一般式(2):
【化2】
JP2014148495A_000017t.gif
[式中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示す。但し、RとRは、水素を示すことはない]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する抗菌剤。
【請求項2】
一般式(1)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有し、且つ前記R2が水酸基である、請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド及び/又は前記一般式(2)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有するコウホネ属植物抽出物を含有する、請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
ブドウ球菌属菌及び/又は腸球菌用である、請求項1~3のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項5】
薬剤耐性菌用である請求項1~4のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項6】
薬剤耐性菌がメチシリン耐性菌及び/又はバンコマイシン耐性菌である請求項5に記載の抗菌剤。
【請求項7】
さらにβラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬を含有する請求項1~6のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項8】
一般式(1):
【化3】
JP2014148495A_000018t.gif
[式中、Rは水酸基を示し、Rは水素又は水酸基を示す]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド、及び/又は一般式(2):
【化4】
JP2014148495A_000019t.gif
[式中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示す。但し、RとRは、水素を示すことはない]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する、βラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性増強剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤耐性菌に対しても有効な抗菌剤、及び該抗菌剤を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、既存の抗生物質の抗菌活性増強剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染症に対しては、通常、抗菌薬の作用により原因菌(黄色ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌、病原性大腸菌等)を静菌又は殺菌するという治療方法が採られる。ところが、抗菌薬を用いることによって、その抗菌薬に対する薬剤耐性菌が出現することとなる。例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、抗菌薬が頻用される病院において出現し、集団感染の起因菌となることが知られている。
【0003】
薬剤耐性菌の出現を抑制するためには、複数の抗菌薬を併用するという治療方法が有効である。しかしながら、同一の抗菌薬の組み合わせを採用し続けることにより、抗菌薬の組み合わせに対する耐性菌の出現が想定される。このため、併用する抗菌薬の候補を拡大することは極めて重要である。また、MRSAに対する第1選択薬としてはバンコマイシンが知られているが、バンコマイシンに対する耐性菌(バンコマイシン中程度耐性黄色ブドウ球菌(VISA))の出現も報告されている。したがって、新たな抗菌薬、特にVISAのような薬剤耐性菌に対しても有効な抗菌薬の開発が求められている。
【0004】
一方、スイレン科コウホネ属植物に含まれるセスキテルペン二量体チオアルカロイドは、発毛作用(特許文献1)、癌細胞浸潤抑制作用(特許文献2)、マラリア原虫増殖抑制作用(特許文献3)等の作用を有することが報告されているが、抗菌活性を有することについて、特に薬剤耐性菌に対しても抗菌活性を有することについては未だ知られていない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-47146号公報
【特許文献2】特開2003-252779号公報
【特許文献3】特開2007-204450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規の抗菌薬、特に薬剤耐性菌に対しても有効な抗菌薬を有効成分とする抗菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意研究した結果、スイレン科コウホネ属植物に含まれるセスキテルペンン二量体チオアルカロイドが、薬剤耐性菌であるMRSAやVISAに対して優れた抗菌活性を発揮することを見出した。さらに、驚くべきことに、セスキテルペン二量体チオアルカロイドが、既存の他の抗菌薬の抗菌活性を増強させることをも見出した。これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1.
一般式(1):
【0010】
【化1】
JP2014148495A_000002t.gif

【0011】
[式中、Rは水酸基を示し、Rは水素又は水酸基を示す]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド、及び/又は一般式(2):
【0012】
【化2】
JP2014148495A_000003t.gif

【0013】
[式中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示す。但し、RとRは、水素を示すことはない]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する抗菌剤。
【0014】
項2.
一般式(1)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有し、且つ前記R2が水酸基である、請求項1に記載の抗菌剤。
【0015】
項3.
前記一般式(1)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド及び/又は前記一般式(2)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有するコウホネ属植物抽出物を含有する、請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【0016】
項4.
ブドウ球菌属菌及び/又は腸球菌用である、請求項1~3のいずれかに記載の抗菌剤。
【0017】
項5.
薬剤耐性菌用である請求項1~4のいずれかに記載の抗菌剤。
【0018】
項6.
薬剤耐性菌がメチシリン耐性菌及び/又はバンコマイシン耐性菌である請求項5に記載の抗菌剤。
【0019】
項7.
さらにβラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬を含有する請求項1~6のいずれかに記載の抗菌剤。
【0020】
項8.
一般式(1):
【0021】
【化3】
JP2014148495A_000004t.gif

【0022】
[式中、Rは水酸基を示し、Rは水素又は水酸基を示す]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド、及び/又は一般式(2):
【0023】
【化4】
JP2014148495A_000005t.gif

【0024】
[式中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示す。但し、RとRは、水素を示すことはない]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する、βラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性増強剤。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、新規の抗菌薬であるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを有効成分とする抗菌剤を提供することができる。セスキテルペン二量体チオアルカロイドは、細菌が普遍的に有するDNAトポイソメラーゼIVに対する阻害活性を有するため、本発明の抗菌剤は、多様な細菌に対して抗菌作用を発揮することができる。
【0026】
また、セスキテルペン二量体チオアルカロイドは、MRSAに対して、現在のMRSAに対する第1選択薬であるバンコマイシンと同程度の抗菌活性を発揮する。さらに、バンコマイシンに対する耐性菌に対して高い抗菌活性を発揮する。このように、本発明の抗菌剤は、薬剤耐性菌に対しても優れた抗菌活性を発揮することができる。
【0027】
また、セスキテルペン二量体チオアルカロイドは、βラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性を増強することができる。したがって、本発明によれば、これらの抗菌薬を組み合わせて含有する、抗菌活性が増強された抗菌剤を提供することができる。また、このように抗菌薬を組み合わせて用いることにより、新たな薬剤耐性菌の出現を抑制することもできる。
【0028】
さらに、本発明によれば、βラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性増強剤をも提供することができる。この増強剤により、これらの抗菌薬を通常の濃度以下(例えばMIC以下)で使用しても、抗菌活性を発揮することができる。アミノグリコシド系抗菌薬の一種であるアルベカシン等は、使用濃度が高い場合には重篤な副作用が発現する。本発明の増強剤によれば、抗菌薬の抗菌活性を維持しながらその使用濃度を下げることができるため、アルベカシン等の抗菌薬をより安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 Nuphar japonicumからセスキテルペン二量体チオアルカロイドを抽出するフローチャートを示す。
【図2】セスキテルペン二量体チオアルカロイドの抗菌(静菌)活性を示す。
【図3】セスキテルペン二量体チオアルカロイドのTopo IV阻害活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.抗菌剤
本発明の抗菌剤は、一般式(1):

【0031】
【化5】
JP2014148495A_000006t.gif

【0032】
[式中、Rは水酸基を示し、Rは水素又は水酸基を示す]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド、及び/又は一般式(2):

【0033】
【化6】
JP2014148495A_000007t.gif

【0034】
[式中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示すが、共に水素を示すことはない]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する抗菌剤である。

【0035】
一般式(1)中、Rは水酸基を示す。

【0036】
一般式(1)中、Rは水素又は水酸基を示す。Rは好ましくは例えば水酸基である。

【0037】
一般式(2)中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示す。但し、RとRは、水素を示すことはない。

【0038】
本発明の抗菌剤に含有される一般式(1)又は(2)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド(以下、単に「セスキテルペン二量体チオアルカロイド」と示すこともある)として、好ましくは一般式(1)で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドが挙げられる。

【0039】
セスキテルペン二量体チオアルカロイドは、公知の物質であり、その製造方法も知られているが(特許文献1~3)、その抗菌活性は、本発明者が新たに見出した性質である。セスキテルペン二量体チオアルカロイドは、例えば、コウホネ属植物から公知の手法に従って抽出することができる。したがって、本発明の抗菌剤には、このようにして抽出された、セスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有するコウホネ属植物抽出物を含有する抗菌剤も包含される。コウホネ属植物としては、例えばコウホネ(Nuphar japonicum DC.)、ネムロコウホネ(Nuphar pumilum (TIMM.) DC.)のほか、Nuphar luteum、ベニコウホネ(N. japonicum DC. froma fubrotinctum (CASP.) Kitam)、ヒメコウホネ(N. subintegerrimum Makino)、オコゼコウホネ(N. pumilum DC. var. ozeense (MIKI) Hara)、オグラコウホネ(N. oguraense Miki)等が挙げられる。

【0040】
本発明の抗菌剤は、DNAトポイソメラーゼIVを有する細菌であれば、適用対象の細菌の種類を問わず、広くグラム陽性菌用又はグラム陰性菌用として用いることができる。適用対象のグラム陽性菌としては、例えば、ブドウ球菌属菌(例えば黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)、腸球菌(例えばエンテロコッカス属菌)、レンサ球菌属菌(例えば双球菌、4連、8連球菌等、肺炎球菌、溶血連鎖球菌)、バシラス属菌(例えば炭疽菌、枯草菌)、クロストリジウム属菌(例えば破傷風菌、ボツリヌス菌)、コリネバクテリウム属菌(例えばジフテリア菌)、リステリア属菌、ラクトバシラス属菌、ビフィドバクテリウム属菌、プロピオニバクテリウム属菌(例えばニキビの原因となるアクネ菌)、及び放線菌が挙げられる。適用対象のグラム陰性菌としては、例えば、大腸菌、サルモネラ属菌、シュードモナス属菌(例えば緑膿菌)、ヘリコバクター属菌、インフルエンザ菌、ナイセリア属菌(例えば淋菌、髄膜炎菌)が挙げられる。これらの中でも、本発明の抗菌剤は、好ましくはブドウ球菌属菌及び/又は腸球菌用に対して、より好ましくはブドウ球菌属菌に対して用いることができる。

【0041】
本発明の抗菌剤は、薬剤耐性菌に対しても優れた抗菌活性を発揮するので、薬剤耐性菌用として用いることができる。適用対象の薬剤耐性菌としては、特に限定されるものではないが、例えばペニシリン耐性菌、メチシリン耐性菌、又はバンコマイシン耐性菌等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメチシリン耐性菌、又はバンコマイシン耐性菌が挙げられる。より具体的には、メチシリン耐性ブドウ球菌属菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等)、バンコマイシン耐性ブドウ球菌属菌(バンコマイシン中程度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)等)、又はバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)等が挙げられる。

【0042】
本発明の抗菌剤は、有効成分として、セスキテルペン二量体チオアルカロイドのみを含有してもよく、或いは本発明の抗菌剤は、セスキテルペン二量体チオアルカロイドの抗菌活性を損なわない限りにおいて、さらにセスキテルペン二量体チオアルカロイド以外の抗菌薬(本願明細書中、単に「他の抗菌薬」と称する場合がある)を含有してもよい。他の抗菌薬としては、例えば、β-ラクタム系抗菌薬(オキサシリン、ペニシリン、アンピシリン、メチシリン、セファゾリン、イミペネム・シラスタチン、アズトレオナム、ファロペネム等)、アミノグリコシド系抗菌薬(アルベカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン等)、テトラサイクリン系抗菌薬(テトラサイクリン、ドキシサイクリン等)、リンコマイシン系抗菌薬(リンコマイシン、クリンダマイシン等)、クロラムフェニコール系抗菌薬(クロラムフェニコール等)、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、アジスロマイシン、ジョサマイシン等)、ケトライド系抗菌薬(テリスロマイシン等)、ポリペプチド系抗菌薬(コリスチン、バシトラシン等)、グリコペプチド系抗菌薬(バンコマイシン、テイコプラニン等)、キノロン系抗菌薬(ナリジクス酸、ピロミド酸等)、ニューキノロン系抗菌薬(ノルフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、シタフロキサシン等)、オキサゾリジノン系抗菌薬(リネゾリド等)、又はサルファ剤系抗菌薬(ST合剤等)等が挙げられる。これらの中でも、セスキテルペン二量体チオアルカロイドによって抗菌活性が増強されるという観点から、好ましくはβ-ラクタム系抗菌薬又はアミノグリコシド系抗菌薬、より好ましくはオキサリシン、クロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、スルベニシリン、ピペラシリン、アルベカシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ジベカシン、ベカナマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン、リボスタマイシン、さらに好ましくはオキサシリン又はアルベカシン、よりさらに好ましくはアルベカシンが挙げられる。他の抗菌薬は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0043】
本発明の抗菌剤の使用用途及び態様は、細菌に対する抗菌を目的とするものであれば特に限定されない。例えば、抗菌剤としてそのまま用いてもよいし、各種組成物(医薬組成物、化粧料組成物、食品組成物、医療用洗浄用組成物、食器用殺菌洗浄用組成物、口腔用組成物、表面抗菌用組成物等)に配合して使用してもよい。

【0044】
本発明の抗菌剤は、セスキテルペン二量体チオアルカロイド及び所望に含有する他の抗菌薬が有効量、又はその濃度がMIC以上になる態様で使用可能な量でこれらを含有する。但し、他の抗菌薬としてβ-ラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬を含有する場合、β-ラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性はセスキテルペン二量体チオアルカロイドにより増強されるので、これらの抗菌薬は、最小生育阻止濃度(MIC)よりも低い濃度で使用されても、その抗菌活性が発揮される。

【0045】
上記のような使用用途及び態様に応じて、本発明の抗菌剤は、添加剤を含有する組成物であることができる。添加剤としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤、防錆剤、金属防食剤、消泡剤、防錆剤、極圧添加剤、金属防食剤、消泡剤、染料等が挙げられる。使用目的に応じて、これらの添加剤のうち、薬学的に許容される成分、香粧品学的に許容される成分を選択して使用することが好ましい。本発明の抗菌剤は、使用目的に応じて、慣用の方法により適切な形態(錠剤、丸剤、散剤、液剤、注射剤、懸濁剤、乳剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等)に調製して使用することができる。

【0046】
本発明の抗菌剤中の、セスキテルペン二量体チオアルカロイドの含有量は、抗菌作用が発揮される限りにおいて特に限定されるものではない。例えば、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005~1重量%、より好ましくは0.001~0.1重量%であることができる。

【0047】
本発明の抗菌剤中の、他の抗菌薬の含有量は特に限定されない。例えば、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005~1重量%、より好ましくは0.001~0.1重量%が挙げられる。

【0048】
本発明の抗菌剤を医薬目的で使用する場合、又は医薬組成物に配合して使用する場合、投与方法や投与量等は、含有するセスキテルペン二量体チオアルカロイドの含有量、他の抗菌薬の含有量、剤形、投与対象の年齢・体重などにより適宜選択される。

【0049】
2.抗菌活性増強剤
本発明の抗菌活性増強剤は、一般式(1):

【0050】
【化7】
JP2014148495A_000008t.gif

【0051】
[式中、Rは水酸基を示し、Rは水素又は水酸基を示す]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイド、及び/又は一般式(2):

【0052】
【化8】
JP2014148495A_000009t.gif

【0053】
[式中、R及びRは独立して水素又は水酸基を示す。但し、RとRは、水素を示すことはない]
で表されるセスキテルペン二量体チオアルカロイドを含有する、βラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性増強剤である。

【0054】
セスキテルペン二量体チオアルカロイドの好ましい態様は、上記と同様である。

【0055】
抗菌活性を増強させる対象抗菌薬は、好ましくはアミノグリコシド系抗菌薬である。

【0056】
β-ラクタム系抗菌薬としては、特に限定されない。例えば、オキサシリン、クロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、スルベニシリン、ピペラシリン、ペニシリン、メチシリン、セファゾリン、イミペネム・シラスタチン、アズトレオナム、ファロペネム等、好ましくはオキサシリン、クロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、スルベニシリン、ピペラシリン、より好ましくはオキサシリンが挙げられる。

【0057】
アミノグリコシド系抗菌薬としては特に限定されない。例えば、アルベカシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ジベカシン、ベカナマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン、リボスタマイシン、ネオマイシン等、好ましくはアルベカシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、ジベカシン、ベカナマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン、リボスタマイシン、より好ましくはアルベカシンが挙げられる。

【0058】
本発明の抗菌活性増強剤中の、セスキテルペン二量体チオアルカロイドの含有量は、βラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬の抗菌活性を増強できる限り特に限定されない。例えば、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005~1重量%、より好ましくは0.001~0.1重量%が上げられる。また、抗菌活性の増強作用は、セスキテルペン二量体チオアルカロイドの濃度がMIC以下、例えば0.00001~0.005重量%、好ましくは0.0001~0.002重量%、より好ましくは0.0002~0.001重量%であっても発揮することができる。

【0059】
また、本発明の抗菌活性増強剤を適用する患部に存在するβラクタム系抗菌薬1重量部に対する、本発明の抗菌活性増強剤中のセスキテルペン二量体チオアルカロイドの重量部は、例えば0.0002~5重量部、好ましくは0.001~4重量部、より好ましくは0.002~3重量部が挙げられる。本発明の抗菌活性増強剤を適用する患部に存在するアミノグリコシド系抗菌薬1重量部に対する、本発明の抗菌活性増強剤中のセスキテルペン二量体チオアルカロイドの重量部は、例えば0.1~20重量部、好ましくは0.5~15重量部、より好ましくは0.8~10重量部が挙げられる。

【0060】
本発明の抗菌活性増強剤は、必要に応じて、上記「1.抗菌剤」と同様に、他の添加剤を含有させ、適切な形態(錠剤、丸剤、散剤、液剤、注射剤、懸濁剤、乳剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等)に調製して使用することができる。

【0061】
本発明の抗菌活性増強剤の使用態様は、本発明の抗菌活性増強剤とβ-ラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬とが共存状態になる限り、特に限定されない。例えば、本発明の抗菌活性増強剤を患部(例えば皮膚)に適用(例えば塗布)した後、上記抗菌薬を適用してもよいし、本発明の抗菌活性増強剤と上記抗菌薬を混合してから患部に適用してもよい。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
実施例1:コウホネ抽出物の抗菌活性の測定、及び活性成分の同定
図1のフローチャートに従って、Nuphar japonicum(和名:コウホネ)の根茎を乾燥させた生薬であるセンコツ(高砂薬業(株))から抽出液を得て、該抽出液を分画した。さらに各画分の抗菌活性を測定した。図1のフローチャートの各ステップ(A、B、C)の詳細については下記のとおりである。
【実施例】
【0064】
実施例1-1:ステップA(アルカロイド画分の取得)
センコツ4.0 kgをミキサーで粉砕し、該粉砕物に1 kgにつき約20 Lの100% メタノールを添加し、室温で2時間静置することにより抽出を行った。得られた抽出液を減圧ろ過し、ろ液から溶媒を留去し、323 gの乾燥物(メタノール抽出液乾燥物)を得た。100% メタノール抽出物102 gをミキサーにより粉砕後、該粉砕物を約1 Lの1 M 塩酸に懸濁し、該懸濁液を分液ロートに移した。分液ロートにさらに約1 Lのクロロホルムを加え、撹拌して静置した後、クロロホルム層を除去した(クロロホルム層の着色が薄くなることを目安として、この操作を2回行った)。クロロホルム層が除去された後に残った水層をビーカーに移し、ここにアンモニア水を適量加えることによりpHを約10に調整した後、分液ロートに移した。分液ロートにさらに水層とほぼ同量の酢酸エチルを加え、撹拌して静置した後、酢酸エチル層を除去した(酢酸エチル層の着色が薄くなることを目安として、この操作を計8回行った)。なお、水層と酢酸エチル層のどちらにも移行しない不溶物を別途回収した。得られた各種有機溶媒層及び水層、及び不溶物を、それぞれエバポレーターによって溶媒留去し、乾燥させた。不溶物はデシケーターを用いて乾燥させた。その結果、クロロホルム層から10.1 gの乾燥物(クロロホルム画分乾燥物)、酢酸エチル層から9.0 gの乾燥物(酢酸エチル画分乾燥物)、水層から113 gの乾燥物(水画分乾燥物)、不溶物から64.3 gの乾燥物(不溶画分乾燥物)が得られた。
【実施例】
【0065】
各乾燥物のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に対する最小生育阻止濃度(MIC)を、微量液体希釈法により測定した。具体的には次のように行った。それぞれの乾燥物を培地(Mueller Hinton(MH)培地(Difco):肉抽出エキス2.0 g/L, カゼイン酸消化物 17.5 g/L, 可溶性デンプン1.5 g/L)で2倍ずつ希釈した希釈系列を作成し、各培地100μLに約104 CFU/wellとなるように被検菌を植菌した。植菌後、37℃で24時間静置した後、培地の懸濁の有無を評価した。培地の懸濁が無い(菌の生育が認められない)最小の濃度を最小生育阻止濃度(MIC)とした。結果を表1に示す。
【実施例】
【0066】
【表1】
JP2014148495A_000010t.gif
【実施例】
【0067】
表1より、酢酸エチル画分乾燥物に、抗菌活性が認められた。センコツから抽出された酢酸エチル画分は、互いに構造が非常によく類似したセスキテルペン二量体チオアルカロイド(6-ヒドロキシチオビヌファリジン、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジン、6-ヒドロキシチオヌフルチンB、及び6'-ヒドロキシチオヌフルチンB)を多量に含むことが知られている。このことから、これらのセスキテルペン二量体チオアルカロイドが抗菌活性を有することが示唆された。
【実施例】
【0068】
実施例1-2:ステップB(アルカロイド画分の精製)
酢酸エチル画分乾燥物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。具体的には次のように行った。クロロホルムで膨潤させたシリカゲル (70-230 mesh, 60Å, SIGMA-ALDRICH Co.)約400 mlを、内径40 mmのオープンカラムに充填した。酢酸エチル画分乾燥物8.17 gを少量の混合溶媒1(クロロホルム:酢酸エチル:ジエチルアミン=20:1:1(v/v))に溶解し、該溶解液をシリカゲルが充填されたカラムに通液することにより、酢酸エチル画分乾燥物の成分をシリカゲルカラムに保持させた。その後、溶出液として、混合溶媒1を1200 ml通液し、次いで混合溶媒2(メタノール:ジエチルアミン=10:1(v/v))を1200 ml通液した。カラムから溶出された液を800 mlずつ3つに分けて回収し、溶出された順にfr. 1、fr. 2、fr. 3とした。各画分から、減圧下で溶媒を留去した。その結果、fr. 1から5.56 gの乾燥物(fr. 1乾燥物)、fr. 2から1.27 gの乾燥物(fr. 2乾燥物)、fr. 3から1.30gの乾燥物(fr. 3乾燥物)が得られた。
【実施例】
【0069】
各乾燥物のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に対する最小生育阻止濃度(MIC)を、実施例1-1と同様に測定した。結果を表2に示す。表2より、fr. 1乾燥物に最も強い抗菌活性が認められた。
【実施例】
【0070】
【表2】
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【実施例】
【0071】
実施例1-3:ステップC(アルカロイド画分の精製)
fr. 1乾燥物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。具体的には次のように行った。混合溶媒3(ノルマルヘキサン:酢酸エチル:アンモニア水=75:25:1(v/v)))で膨潤させたシリカゲル(70-230 mesh, 60 Å,SIGMA-ALDRICH Co.) 約350 mLを、内径44mmのオープンカラムに充填した。fr. 1乾燥物 0.92 gを約2 mLの混合溶媒3に溶解し、該溶解液をシリカゲルが充填されたカラムに通液することにより、fr. 1乾燥物の成分をシリカゲルカラムに保持させた。その後、溶出液として、混合溶媒3を1000 ml通液し、次いで混合溶媒4(メタノール:アンモニア水=100:1(v/v))を700 ml通液した。カラムから溶出された液を、順次、順相薄層クロマトグラフィーで展開し、スポットのパターンによって10個の画分に分けた(fr. 1-I~fr. 1-X)。各画分から、減圧下で溶媒を留去した。その結果、fr. 1-Iから34.9 mgの乾燥物(fr. 1-I乾燥物)、fr. 1-IIから51.9 mgの乾燥物(fr. 1-II乾燥物)、fr. 1-IIIから91.8 mgの乾燥物(fr. 1-III乾燥物)、fr. 1-IVから36.4 mgの乾燥物(fr. 1-IV乾燥物)、fr. 1-Vから50.6 mgの乾燥物(fr. 1-V乾燥物)、fr. 1-VIから73.7 mgの乾燥物(fr. 1-VI乾燥物)、fr. 1-VIIから14.5 mgの乾燥物(fr. 1-VII乾燥物)、fr. 1-VIIIから159.9 mgの乾燥物(fr. 1-VIII乾燥物)、fr. 1-IXから167.5 mgの乾燥物(fr. 1-IX乾燥物)、fr. 1-Xから1276.3 mgの乾燥物(fr. 1-X乾燥物)が得られた。
【実施例】
【0072】
各乾燥物のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する最小生育阻止濃度(MIC)を、実施例1-1と同様に測定した。結果を表3に示す。表3より、fr. 1-VIII乾燥物に最も強い抗菌活性が認められた。
【実施例】
【0073】
【表3】
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【実施例】
【0074】
実施例1-4:活性成分の同定
薄層クロマトグラフィーの結果から、fr.1-VIIIは単一の化合物であると考えられたため、1H-NMR解析により構造を決定した。その結果、表4に示すケミカルシフト値が得られた。この値は、セスキテルペン二量体チオアルカロイドの一種である6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジン(6,6’-dihydroxythiobinupharidine)のものとほぼ一致した。また比旋光度も一致した。なお、表4中、6,6’-dihydroxythiobinupharidineのケミカルシフト値等は、Yoshikawa M. et al., HETEROCYCLES, 1997, Vol. 45, No. 9, pp1815-1824より抜粋した。以下の実験では、fr. 1-VIII乾燥物を6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンとして用いた。
【実施例】
【0075】
【表4】
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【実施例】
【0076】
互いに構造が非常によく類似したセスキテルペン二量体チオアルカロイドを多量に含む画分に強い抗菌活性が認められたこと(実施例1-1)、及び現に該アルカロイドの一種である6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンに抗菌活性が見出されたこと(実施例1-3、及び1-4)から、コウホネに含まれるセスキテルペン二量体チオアルカロイドは抗菌活性を有することが強く示唆された。
【実施例】
【0077】
実施例2:セスキテルペン二量体チオアルカロイドの抗菌活性の解析
セスキテルペン二量体チオアルカロイドの、各種菌株(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、及びバンコマイシン中程度耐性黄色ブドウ球菌(VISA))に対する抗菌活性を測定した。具体的には、セスキテルペン二量体チオアルカロイドである6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンの最小生育阻止濃度(MIC)と、比較対照としてβラクタム系抗菌薬であるオキサシリン及びグリコペプチド系抗菌薬であるバンコマイシンのMICを、実施例1-1と同様に測定した。結果を表5に示す。
【実施例】
【0078】
【表5】
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【実施例】
【0079】
表5より、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンは薬剤耐性菌であるMRSAに対して、MRSAに対する第1選択薬であるバンコマイシンと同程度の抗菌活性を発揮することが示された。さらに、バンコマイシンは耐性菌であるVISAに対しては抗菌活性が低いのに対して、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンはVISAに対しても強い抗菌活性を発揮することが示された。
【実施例】
【0080】
実施例3:セスキテルペン二量体チオアルカロイドによる抗菌活性増強作用の解析
セスキテルペン二量体チオアルカロイドによる、既存の抗生物質の抗菌活性増強作用を調べた。具体的には、βラクタム系抗菌薬であるオキサシリン、グリコペプチド系抗菌薬であるバンコマイシン、及びアミノグリコシド系抗菌薬であるアルベカシンの最小生育阻止濃度(MIC)を、セスキテルペン二量体チオアルカロイドである6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンを単独では抗菌活性を示さない濃度(0.5 μg/mL)で加えた場合(+)、及び全く加えない場合(-)それぞれの場合について、実施例1-1と同様に測定した。この測定の結果、既存の抗生物質のMICが、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジン(-)の場合に比べて、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジン(+)の場合により低ければ、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンが該抗生物質の抗菌活性を増強したことを示す。結果を表6に示す。
【実施例】
【0081】
【表6】
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【実施例】
【0082】
表6より、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンは、グリコペプチド系抗菌薬であるバンコマイシンに対しては抗菌活性増強作用を発揮しないが、βラクタム系抗菌薬であるオキサシリン、及びアミノグリコシド系抗菌薬であるアルベカシンに対しては強い抗菌活性増強作用を発揮することが示された。特に、アルベカシンに対しては、ほぼ全ての菌株に対するMICを1/4~1/8程度に低下させる、極めて強い抗菌活性増強作用を発揮した。
【実施例】
【0083】
実施例4:セスキテルペン二量体チオアルカロイドの作用機序の解析1
セスキテルペン二量体チオアルカロイドの抗菌作用が、殺菌作用によるものなのか、静菌作用によるものなのかを明らかにする目的で、セスキテルペン二量体チオアルカロイド存在下での生存率を評価した。具体的には次のように行った。培地(乾燥ブイヨン「ニッスイ」培地:肉エキス 5.0 g/L, ペプトン 15.0 g/L, 塩化ナトリウム 5.0 g/L, リン酸1水素カリウム 5.0 g/L)中に、セスキテルペン二量体チオアルカロイドである6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンを各種濃度になるように加え、そこへMRSAのN315株を約109 CFU/mLとなるように植菌した。37℃で振盪培養し、3時間後、6時間後、12時間後、及び24時間後の生菌数を測定した。生菌数は、各時点での菌液を滅菌生理食塩水を用いて適切な倍率で希釈後、乾燥ブイヨン「ニッスイ」培地上に撒き、37℃で一晩培養し、出現したコロニー数を計測することでCFUとして測定した。結果を図2に示す。図2中、縦軸の単位はlog10(CFU/mL)である。
【実施例】
【0084】
図2より、N315株に対するMIC(2 μg/ml)の4倍の濃度になるように6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジン加えた場合(図2中の◆)でも、生菌数はほぼ減少しなかった。このことから、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンの抗菌作用は、静菌作用によるものであることが示唆された。
【実施例】
【0085】
実施例5:セスキテルペン二量体チオアルカロイドの作用機序の解析2
セスキテルペン二量体チオアルカロイドの、DNAトポイソメラーゼによるデカテネーション能(連環状DNA(kinetoplast DNA:kDNA)を切断・再結合して環状DNA(minicircular DNA:mcDNA)にする活性)に与える影響を調べた。具体的には、S.aureus Topoisomerase IV decatenation kit(Inspiralis社)を用いて、該キットに添付のプロトコールに従って、次のように行った。キットに含まれているアッセイ溶液(50 mM Tris-HCl pH7.5, 5 mM MgCl2, 5 mM Dithiothreitol, 1.5 mM ATP, 350 mM potassium glutamate, 0.05 mg/ml albumin)に、200 ngのkDNA、及び1 Uの黄色ブドウ球菌DNAトポイソメラーゼIVを加え、さらに溶液中の濃度が各種濃度(0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、4μM、10μM、15μM、20μM、又は30μM、)になるように6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンを加えて反応溶液を調製した。また、比較対照として、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンに替えて、黄色ブドウ球菌トポイソメラーゼIVを阻害することが知られているciprofloxacinを加えた反応溶液も調製した。これらの反応溶液を37℃で30分間加温した。反応後のサンプルを、1% アガロースゲルにて電気泳動を行った。このアガロースゲルを1 μg/ml エチジウムブロマイド溶液で染色し、UV照射によりDNAを検出した。検出はImage Quant LAS4000で行い、Image Quant TLによりゲル中に泳動されたバンドの濃さを数値化した。kDNAは見かけの分子量が大きくほとんど電気泳動されないが、DNAトポイソメラーゼIVの働きにより連環状態が解消されると、見かけの分子量が小さくなったmcDNA(minicircle DNA)となり、電気泳動されるようになる。したがって、ゲル中に泳動されたバンドの濃さを測定することにより、DNAトポイソメラーゼ阻害活性を測定することができる。結果を図3に示す。
【実施例】
【0086】
図3より、6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンは濃度依存的に、DNAトポイソメラーゼIVを阻害した。また、ゲル中のバンドの濃さから6,6'-ジヒドロキシチオビヌファリジンはciprofloxacinとほぼ同等の阻害活性を有することが分かった。以上より、セスキテルペン二量体チオアルカロイドの抗菌活性は、DNAトポイソメラーゼIV阻害活性によるものであることが示唆された。なお、DNAトポイソメラーゼIVは、細菌に普遍的に存在する酵素であるため、この酵素の阻害活性を有するセスキテルペン二量体チオアルカロイドは、どの細菌に対しても抗菌作用を発揮することが示唆された。また、DNAトポイソメラーゼIVの阻害活性を有するフルオロキノロン系抗菌薬の抗菌スペクトルが広いことからも、この酵素の阻害活性を有するセスキテルペン二量体チオアルカロイドはどの細菌に対しても抗菌作用を発揮することが示唆された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2