TOP > 国内特許検索 > 果実の鮮度保持剤 > 明細書

明細書 :果実の鮮度保持剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-138562 (P2014-138562A)
公開日 平成26年7月31日(2014.7.31)
発明の名称または考案の名称 果実の鮮度保持剤
国際特許分類 A23B   7/14        (2006.01)
A01N   3/00        (2006.01)
A01N  43/38        (2006.01)
A01N  37/36        (2006.01)
FI A23B 7/14
A01N 3/00
A01N 43/38
A01N 37/36
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2013-008344 (P2013-008344)
出願日 平成25年1月21日(2013.1.21)
発明者または考案者 【氏名】立木 美保
【氏名】中嶋 直子
【氏名】嶋田 幸久
【氏名】山崎 千秋
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100180862、【弁理士】、【氏名又は名称】花井 秀俊
審査請求 未請求
テーマコード 4B069
4H011
Fターム 4B069AA04
4B069HA11
4B069KB01
4B069KC21
4H011BB06
4H011BB09
4H011BC03
4H011CA04
4H011CB10
4H011CD03
要約 【課題】公知の鮮度保持剤と比較して優れた特性を備える果実の鮮度保持剤を提供する。
【解決手段】本発明は、式(I)で表される化合物又はその塩を有効成分として含む果実の鮮度保持剤に関する。
JP2014138562A_000019t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP2014138562A_000018t.gif
[式中、
nは、0又は1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のアリール縮合シクロアルキル又は置換若しくは非置換のアリール縮合ヘテロシクロアルキルであり、
Aは、単結合、-O-CH2-、-O-、ビニレン又はカルボニルであり、
Bは、単結合又はメチレンであり、
R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアルキルであり、
R3は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアシルアミノ又は-X-NR6R7であるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合する炭素原子と一緒になってカルボニルを形成するか、或いは
R2及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってエポキシ又はビニレンを形成するか、或いは
R3及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンを形成し、
Xは、-O-、-NH-又は-CH2-であり、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアシルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンアミノ又は置換若しくは非置換の環状イミドを形成し、
R5は、ヒドロキシル、カルボン酸、ホスホン酸、カルボン酸ヒドラジド、置換若しくは非置換のアルキル若しくはN-ヒドロキシ環状イミドとのカルボン酸エステル、又は置換若しくは非置換のアルキルとのホスホン酸エステルであるか、或いは
R3及びR5は、それらが結合する炭素原子と一緒になってオキサゾール-5(4H)-オン環を形成する。]
で表される化合物又はその塩を有効成分として含む果実の鮮度保持剤。
【請求項2】
前記果実がモモである、請求項1に記載の果実の鮮度保持剤。
【請求項3】
請求項1に記載の果実の鮮度保持剤で果実を処理することを含む、該果実の鮮度を保持する方法。
【請求項4】
前記果実がモモである、請求項3に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の鮮度保持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
モモ(Prunus persica)は、日本で栽培されている代表的な果樹作物の一つである。現在、日本で栽培されているモモ品種のほとんどは、溶質とよばれるタイプに属する。溶質のモモは、収穫後に果肉硬度が急速に低下する。この結果、モモ特有のとろりとした軟らかな肉質となる。しかしながら、溶質のモモは、前記の特性に起因して日持ち性が極めて低い。
【0003】
モモは、クライマクテリック型とよばれるタイプの果実であり、植物ホルモンであるエチレンによって果実成熟が制御されている。モモは、果実の成熟期に達すると、果実においてエチレンが生成される。このエチレンの作用によって、果実の成熟が促進される。しかしながら、収穫後のモモにおいても、エチレンが大量に生成されるため、収穫後のモモは、軟化が急激に進行する。それ故、収穫後のモモの鮮度を保持し、且つ貯蔵性を向上するために、エチレンの作用を抑制する技術開発が望まれている。
【0004】
エチレンの作用阻害剤として知られる1-メチルシクロプロペン(1-MCP)は、エチレン受容体に結合してエチレンの作用を阻害する。前記の作用機序に基づき、1-MCPは、リンゴ等の果実に対して、極めて高い鮮度保持効果を示すことが知られている。1-MCPは、日本において、2010年にリンゴ、ニホンナシ及びカキを対象として、鮮度保持剤として農薬登録された。しかしながら、1-MCPは、モモに対する鮮度保持効果は低い。このため、1-MCPは、モモに対する鮮度保持剤としての実用的な利用は期待できない(非特許文献1)。
【0005】
モモ品種の中には、前記のような溶質のモモだけでなく、硬肉のモモも存在する。硬肉のモモは、成熟に伴って溶質のモモと同様の果皮色の変化及び糖度の上昇等が認められるものの、エチレン生成の上昇及び果肉の軟化は観察されない。このように、硬肉のモモが軟化しないのは、エチレン生合成経路の鍵酵素である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素遺伝子ファミリーの一つである、PpACS1遺伝子の発現が、果実の成熟期に特異的に抑制されていることに起因する(非特許文献2)。溶質のモモ及び硬肉のモモを用いてDNAマイクロアレイ解析を行うと、PpACS1遺伝子の発現様式は、オーキシンによって発現が誘導される各種遺伝子のホモログ(Aux/IAA、ILR及びSAUR等)の発現様式とよく一致する。すなわち、これらの遺伝子の発現は、溶質のモモでは果実の成熟期に増加するが、硬肉のモモでは抑制されている。また、溶質のモモでは、果実の成熟期に果肉中で内性オーキシン量が増加するのに対し、硬肉のモモでは、果実の成熟期においても、果肉中にオーキシンは検出されない(非特許文献3)。
【0006】
オーキシンは、植物の発生、成長、分化及び様々な環境応答に関与することが知られている植物ホルモンである。天然オーキシンとしては、インドール-3-酢酸(IAA)が最も普遍的に分布していることが知られている。オーキシンは、大別すると、芳香族アミノ酸であるL-トリプトファンを経由する経路と経由しない経路(非トリプトファン経路)との2つの経路によって生合成されることが知られている。例えば、公知の除草剤であるグリホサートは、芳香族アミノ酸の生合成に関与する酵素である5-エノールピルビル-3-ホスホシキミ酸シンターゼ(EPSPS)を阻害する。このため、グリホサートは、EPSPSの下流に位置する芳香族アミノ酸及び/又は他の二次代謝産物のような、標的とする化合物以外の代謝産物の生合成にも悪影響を与える可能性がある。このため、オーキシンの生合成経路のうち、特定の経路を特異的に阻害する化合物の開発が行われた。例えば、特許文献1は、L-α-(2-アミノエトキシビニル)グリシン(AVG)、L-アミノオキシフェニルプロピオン酸(L-AOPP)、アミノオキシ酢酸(AOA)及び2-アミノオキシイソ酪酸(AOIBA)のようなオーキシン生合成阻害剤を記載する。特許文献2は、L-AOPPのフェニル基、カルボキシル基及びアミノオキシ基を修飾した新規オーキシン生合成阻害剤を記載する。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開2008/150031号パンフレット
【特許文献2】国際公開2012/118216号パンフレット
【0008】

【非特許文献1】Hayama, H.ら, Postharvest Biology and Technology, 2008年, 第50巻, pp. 228-230
【非特許文献2】Tatsuki, M.ら, J Exp Bot, 2006年, 第57巻, pp. 1281-1289
【非特許文献3】立木美保, 2010年度研究実績報告書, [online], 科学研究費助成事業データベース, インターネット(URL:http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22580044.ja.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、収穫した農作物は、低温貯蔵することによって鮮度を保持する。しかしながら、モモの場合、低温貯蔵することによって、果肉の粉質化のような貯蔵障害が起こり得る。このため、モモにおいては、冷蔵による長期貯蔵が困難である。加えて、モモは、1-MCPのような公知の鮮度保持剤による鮮度保持効果が低い。
【0010】
前記のように、モモに適用し得る有効な鮮度保持手段は存在しない。それ故、モモのような果樹作物にも適用し得る、新たな鮮度保持手段の開発が必要とされていた。
【0011】
それ故、本発明は、公知の鮮度保持剤と比較して優れた特性を備える果実の鮮度保持剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、オーキシン生合成阻害活性を有する特定の化合物を用いることにより、モモのような果樹作物において果実の成熟を抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 式(I):
【化1】
JP2014138562A_000002t.gif
[式中、
nは、0又は1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のアリール縮合シクロアルキル又は置換若しくは非置換のアリール縮合ヘテロシクロアルキルであり、
Aは、単結合、-O-CH2-、-O-、ビニレン又はカルボニルであり、
Bは、単結合又はメチレンであり、
R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアルキルであり、
R3は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアシルアミノ又は-X-NR6R7であるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合する炭素原子と一緒になってカルボニルを形成するか、或いは
R2及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってエポキシ又はビニレンを形成するか、或いは
R3及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンを形成し、
Xは、-O-、-NH-又は-CH2-であり、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアシルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンアミノ又は置換若しくは非置換の環状イミドを形成し、
R5は、ヒドロキシル、カルボン酸、ホスホン酸、カルボン酸ヒドラジド、置換若しくは非置換のアルキル若しくはN-ヒドロキシ環状イミドとのカルボン酸エステル、又は置換若しくは非置換のアルキルとのホスホン酸エステルであるか、或いは
R3及びR5は、それらが結合する炭素原子と一緒になってオキサゾール-5(4H)-オン環を形成する。]
で表される化合物又はその塩を有効成分として含む果実の鮮度保持剤。
【0014】
(2) 前記果実がモモである、前記(1)に記載の果実の鮮度保持剤。
(3) 前記(1)に記載の果実の鮮度保持剤で果実を処理することを含む、該果実の鮮度を保持する方法。
(4) 前記果実がモモである、前記(3)に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、公知の鮮度保持剤と比較して優れた特性を備える果実の鮮度保持剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、収穫後4日目における各試験区及び対照区の果実の果肉硬度を示す図である。図中、異なる文字が付された平均値間には、互いに5%水準で有意差があることを示す。
【図2】図2は、収穫後1~4日目における各試験区及び対照区の果実からのエチレン生成量を示す図である。
【図3】図3は、試験区及び対照区の果肉ディスクにおける1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素遺伝子(PpACS1)の発現レベルを示す図である。
【図4】図4は、試験区及び対照区の果肉ディスクにおける内性インドール-3-酢酸(IAA)量を示す図である。
【図5】図5は、シロイヌナズナの内性インドール-3-酢酸(IAA)量の定量結果を示す図である。縦軸は、対照区の幼植物体の内性IAA量に基づく相対値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、式(I):
【化2】
JP2014138562A_000003t.gif
で表される化合物又はその塩を有効成分として含む果実の鮮度保持剤に関する。

【0018】
本明細書において、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C1~C5アルキル」は、少なくとも1個且つ多くても5個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。好適なアルキルは、限定するものではないが、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル及びn-ペンチル等を挙げることができる。

【0019】
本明細書において、「アルケニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なアルケニルは、限定するものではないが、例えばビニル、1-プロペニル、アリル、1-メチルエテニル(イソプロペニル)、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル及び1-ペンテニル等を挙げることができる。

【0020】
本明細書において、「アルキニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なアルキニルは、限定するものではないが、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル及び1-ペンチニル等を挙げることができる。

【0021】
本明細書において、「アルキリデン」は、前記アルキルの結合末端に位置するC-C単結合が二重結合に置換された二価の基を意味する。好適なアルキリデンは、限定するものではないが、例えばビニリデン及びプロパン-2-イリデン等を挙げることができる。

【0022】
本明細書において、「アルキリデンアミノ」は、アミノ基の2個の水素原子が前記アルキリデンに置換された基を意味する。好適なアルキリデンアミノは、限定するものではないが、例えばビニリデンアミノ及びプロパン-2-イリデンアミノ等を挙げることができる。

【0023】
本明細書において、「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、脂環式アルキルを意味する。例えば、「C3~C6シクロアルキル」は、少なくとも3個且つ多くても6個の炭素原子を含む、環式の炭化水素基を意味する。好適なシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等を挙げることができる。

【0024】
本明細書において、「シクロアルケニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルケニルは、限定するものではないが、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニル等を挙げることができる。

【0025】
本明細書において、「シクロアルキニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルキニルは、限定するものではないが、例えばシクロブチニル、シクロペンチニル及びシクロヘキシニル等を挙げることができる。

【0026】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」は、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素(N)、硫黄(S)及び酸素(O)から選択されるヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル等を挙げることができる。

【0027】
本明細書において、「アリール」は、6~15の炭素原子数を有する芳香環基を意味する。好適なアリールは、限定するものではないが、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル及びアントリル(アントラセニル)等を挙げることができる。

【0028】
本明細書において、「アリールアルキル」は、前記アルキルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル等を挙げることができる。

【0029】
本明細書において、「アリールアルケニル」は、前記アルケニルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールアルケニルは、限定するものではないが、例えばスチリル等を挙げることができる。

【0030】
本明細書において、「ヘテロアリール」は、前記アリールの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素(N)、硫黄(S)及び酸素(O)から選択されるヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリールは、限定するものではないが、例えばフラニル、チエニル(チオフェンイル)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル及びインドリル等を挙げることができる。

【0031】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」は、前記アルキルの水素原子の1個が前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。

【0032】
本明細書において、「アリール縮合シクロアルキル」は、前記アリールとシクロアルキルとが縮合することによって形成される縮合環基を意味する。好適なアリール縮合シクロアルキルは、限定するものではないが、例えばベンゾシクロブテニル、インダニル及びテトラヒドロナフチル等を挙げることができる。

【0033】
本明細書において、「アリール縮合ヘテロシクロアルキル」は、前記アリールとヘテロシクロアルキルとが縮合することによって形成される縮合環基を意味する。好適なアリール縮合シクロアルキルは、限定するものではないが、例えば2,3-ジヒドロインドリル及び1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル等を挙げることができる。

【0034】
本明細書において、「環状イミド」は、イミド基を含む環式基を意味する。好適な環状イミドは、限定するものではないが、例えばフタル酸イミド、コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等を挙げることができる。

【0035】
本明細書において、「アシル」は、前記で説明した基から選択される1価基とカルボニルとが連結した基を意味する。好適なアシルは、限定するものではないが、例えばホルミル、アセチル及びプロピオニル等のC1~C5脂肪族アシル、並びにベンゾイル等のC7~C16芳香族アシルを挙げることができる。

【0036】
前記で説明した基は、それぞれ独立して、非置換であるか、或いは1個若しくは複数のハロゲン、OH、NH2、NO2、C(O)Z(Zは水素、ヒドロキシル、NH2若しくは前記で説明した基から選択される1価基である)、又は前記で説明した基から選択される1価基によってさらに置換することもできる。

【0037】
なお、本明細書において、「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。

【0038】
本発明者らは、溶質のモモ及び硬肉のモモを用いたDNAマイクロアレイ解析及び内性IAA量の比較から、果実における内性オーキシン量の上昇によってエチレン生合成が促進されることにより、果肉の軟化が引き起こされていると予測した。実際に、オーキシン生合成阻害活性を有する化合物で収穫後のモモを処理したところ、非処理のモモと比較して果肉の軟化が顕著に抑制された(図1)。前記の結果に基づき、本発明者らは、高いオーキシン生合成阻害活性を有する式(I)で表される化合物が、果実の鮮度保持剤の有効成分として使用し得ることを見出した。式(I)で表される化合物は、本発明者らが開発したオーキシン生合成阻害剤の有効成分である(特許文献2及び特願2012-277116)。

【0039】
式(I)で表される化合物において、n、Ar、A、B、X、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、以下の定義を満たすことが必要である。
nは、0又は1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のアリール縮合シクロアルキル又は置換若しくは非置換のアリール縮合ヘテロシクロアルキルであり、
Aは、単結合、-O-CH2-、-O-、ビニレン又はカルボニルであり、
Bは、単結合又はメチレンであり、
R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアルキルであり、
R3は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアシルアミノ又は-X-NR6R7であるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合する炭素原子と一緒になってカルボニルを形成するか、或いは
R2及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってエポキシ又はビニレンを形成するか、或いは
R3及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンを形成し、
Xは、-O-、-NH-又は-CH2-であり、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアシルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンアミノ又は置換若しくは非置換の環状イミドを形成し、
R5は、ヒドロキシル、カルボン酸、ホスホン酸、カルボン酸ヒドラジド、置換若しくは非置換のアルキル若しくはN-ヒドロキシ環状イミドとのカルボン酸エステル、又は置換若しくは非置換のアルキルとのホスホン酸エステルであるか、或いは
R3及びR5は、それらが結合する炭素原子と一緒になってオキサゾール-5(4H)-オン環を形成する。

【0040】
式(I)において、Aが-O-CH2-の場合、AはOを介してArと結合していることが好ましい。

【0041】
Arは、非置換又はハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル、アルコキシ若しくはアリールで置換されたアリール、ヘテロアリール或いはヘテロシクロアルキルであることが好ましく、非置換又はハロゲン、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、C1~C5アルコキシ若しくはアリールで置換されたアリール、ヘテロアリール或いはヘテロシクロアルキルであることがより好ましく、1若しくは複数のハロゲン、メチル、メトキシ、フェノキシ若しくはフェニルで置換されたフェニル、ビフェニル、チエニル、ピペラジニル又はナフチルであることが特に好ましい。

【0042】
R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルであることが好ましく、水素又はメチルであることがより好ましい。

【0043】
R3は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルアミノ又は-X-NR6R7であることが好ましく、アセチルアミノ又は-X-NR6R7であることがより好ましい。

【0044】
R3及びR4が、それらが結合する炭素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンを形成する場合、R3及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってビニリデンを形成することが好ましい。
Xは、-O-であることが好ましい。

【0045】
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のC1~C5アシルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になって置換若しくは非置換のC1~C5アルキリデンアミノ又は置換若しくは非置換のC5~C10環状イミドを形成することが好ましく、水素又はベンゾイルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になってフタル酸イミドを形成することがより好ましい。

【0046】
R5は、ヒドロキシル、カルボン酸、ホスホン酸、カルボン酸ヒドラジド、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル若しくはN-ヒドロキシ環状イミドとのカルボン酸エステル、又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルとのホスホン酸エステルであることが好ましく、ヒドロキシル、カルボン酸、ホスホン酸、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸のメチル若しくはエチルエステル、N-ヒドロキシフタル酸イミドとのカルボン酸エステル、又はホスホン酸のメチル若しくはエチルエステルであることがより好ましい。

【0047】
一態様において、式(I)で表される化合物は、n、Ar、A、B、X、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が、以下の[a]~[h]のいずれかを満たすことが好ましい。
[a]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
A及びBは、単結合であり、
R1及びR2は、水素であり、
R3は、ヒドロキシルであり、
R4は、水素又は置換若しくは非置換のアルキルであり、
R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸エステルである。
[b]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
Aは、-O-CH2-又は-O-であり、
Bは、単結合又は-CH2-であり、
R1及びR3は、水素であり、
R2及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってビニレンを形成し、
R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸エステルである。
[c]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
Aは、単結合、ビニレン又はカルボニルであり、
Bは、単結合であり、
R1及びR3は、水素であり、
R2及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってエポキシ又はビニレンを形成し、
R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸エステルである。
[d]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
Aは、単結合又は-O-CH2-であり、
Bは、単結合であり、
R1及びR2は、水素であるか、又はそれらが結合する炭素原子と一緒になってカルボニルを形成し、
R3及びR4は、水素であるか、又はそれらが結合する炭素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンを形成し、
R5は、カルボン酸若しくはホスホン酸、又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸若しくはホスホン酸エステルである。
[e]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
Aは、単結合又は-O-CH2-であり、
Bは、単結合であり、
R1は、水素であり、
R2及びR4は、それらが結合する炭素原子と一緒になってビニレンを形成し、
R3は、置換若しくは非置換のアシルアミノであり、
R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸エステルであるか、或いは
R3及びR5は、それらが結合する炭素原子と一緒になってオキサゾール-5(4H)-オン環を形成する。
[f]
nは、0であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
Aは、単結合又は-O-であり、
Bは、単結合であり、
R1及びR2は、水素であり、
R5は、カルボン酸、置換若しくは非置換のN-ヒドロキシ環状イミドとのカルボン酸エステル又はカルボン酸ヒドラジドである。
[g]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロアリールであり、
Aは、単結合であり、
Bは、単結合又はメチレンであり、
R1及びR2は、水素であり、
R3は、水素又はヒドロキシルであり、
R4は、水素であり、
R5は、ヒドロキシルである。
[h]
nは、1であり、
Arは、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のアリール縮合シクロアルキル又は置換若しくは非置換のアリール縮合ヘテロシクロアルキルであり、
A及びBは、単結合であり、
R1は、水素又は置換若しくは非置換のアルキルであり、
R2及びR4は、水素であり、
R3は、-X-NR6R7であり、
Xは、-O-、-NH-又は-CH2-であり、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のアシルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になって置換若しくは非置換のアルキリデンアミノ又は置換若しくは非置換の環状イミドを形成し、
R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸エステルである。

【0048】
式(I)で表される化合物が前記[a]を満たす場合、Arは、前記の基から選択されることが好ましい。R4は、水素又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルであることが好ましく、水素又はメチルであることがより好ましい。R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルとのカルボン酸エステルであることが好ましく、カルボン酸又はカルボン酸のメチルエステルであることがより好ましい。

【0049】
式(I)で表される化合物が前記[b]又は[c]を満たす場合、Arは、前記の基から選択されることが好ましい。R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルとのカルボン酸エステルであることが好ましく、カルボン酸又はカルボン酸のメチルエステルであることがより好ましい。

【0050】
式(I)で表される化合物が前記[d]を満たす場合、Arは、前記の基から選択されることが好ましい。R3及びR4は、水素であるか、又はそれらが結合する炭素原子と一緒になってビニリデンを形成することが好ましい。R5は、カルボン酸若しくはホスホン酸、又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルとのカルボン酸若しくはホスホン酸エステルであることが好ましく、カルボン酸若しくはホスホン酸、又はカルボン酸若しくはホスホン酸のメチル若しくはエチルエステルであることがより好ましい。

【0051】
式(I)で表される化合物が前記[e]を満たす場合、Arは、前記の基から選択されることが好ましい。R3は、置換若しくは非置換のC1~C5アシルアミノであることが好ましく、アセチルアミノであることがより好ましい。R5が、カルボン酸又は置換若しくは非置換のアルキルとのカルボン酸エステルである場合、該カルボン酸エステルは、置換若しくは非置換のC1~C5アルキルとのカルボン酸エステルであることが好ましく、カルボン酸のメチルエステルであることがより好ましい。

【0052】
式(I)で表される化合物が前記[f]を満たす場合、Arは、前記の基から選択されることが好ましい。Aが、単結合である場合、R5は、N-ヒドロキシフタル酸イミドとのカルボン酸エステル又はカルボン酸ヒドラジドであることが好ましい。Aが、-O-である場合、R5は、カルボン酸であることが好ましい。

【0053】
式(I)で表される化合物が前記[h]を満たす場合、Arは、前記の基から選択されることが好ましい。R1は、水素であることが好ましい。R5は、カルボン酸又は置換若しくは非置換のC1~C5アルキルとのカルボン酸エステルであることが好ましく、カルボン酸又はカルボン酸のメチルエステルであることがより好ましい。Xは、-O-であることが好ましい。R6及びR7は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは非置換のC1~C5アシルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になって置換若しくは非置換のC1~C5アルキリデンアミノ又は置換若しくは非置換のC5~C10環状イミドを形成することが好ましく、水素又はベンゾイルであるか、或いはそれらが結合する窒素原子と一緒になってフタル酸イミドを形成することがより好ましい。

【0054】
特に好ましい式(I)で表される化合物は、下記の化合物からなる群より選択される。
【化3】
JP2014138562A_000004t.gif

【0055】
なお、本明細書において、式(I)で表される化合物のうち、前記[a]を満たす化合物群を「乳酸型化合物」、前記[b]を満たす化合物群を「ビニルエーテル型化合物」、前記[c]を満たす化合物群を「アクリル酸型化合物」、前記[h]を満たす化合物群を「アミノオキシ型化合物」、前記[d]~[f]を満たす化合物群を「その他の型の化合物」とそれぞれ総称する場合がある。式(I)で表される化合物のうち、アミノオキシ型化合物は、特許文献2において、乳酸型化合物、ビニルエーテル型化合物、アクリル酸型化合物及びその他の型の化合物は、特願2012-277116の明細書において、オーキシン生合成阻害剤の有効成分として、それぞれ開示されている。

【0056】
本発明において、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。式(I)で表される化合物の塩の対イオンとしては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン若しくはマグネシウムイオンのようなカチオン、又は塩化物イオン、臭化物イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、安息香酸イオン、アスコルビン酸イオン、パモ酸イオン、コハク酸イオン、ビスメチレンサリチル酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンジスルホン酸イオン、プロピオン酸イオン、酒石酸イオン、サリチル酸イオン、クエン酸イオン、グルコン酸イオン、アスパラギン酸イオン、ステアリン酸イオン、パルミチン酸イオン、イタコン酸イオン、グリコール酸イオン、p-アミノ安息香酸イオン、グルタミン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、シクロヘキシルスルファミン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、イセチオン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン又は過塩素酸イオンのようなアニオンが好ましい。式(I)で表される化合物が前記の対イオンとの塩の形態である場合、果実の鮮度保持効果を実質的に低下させることなく該化合物を使用することができる。

【0057】
本発明において、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その溶媒和物も包含する。式(I)で表される化合物と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン若しくは酢酸エチルのような有機溶媒、又は水が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、果実の鮮度保持効果を実質的に低下させることなく該化合物を使用することができる。

【0058】
また、式(I)で表される化合物が1又は複数の立体中心(キラル中心)を有する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。

【0059】
前記特徴を有することにより、式(I)で表される化合物は、果実の鮮度保持効果を発現することができる。

【0060】
本発明の果実の鮮度保持剤は、有効成分である式(I)で表される化合物に加えて、場合により1種以上のさらなる活性成分、1種以上の農業上許容される担体及び1種以上の農業上許容される補助剤を含んでもよい。この場合、本発明の果実の鮮度保持剤は、有効成分である式(I)で表される化合物、並びに場合により1種以上のさらなる活性成分、1種以上の農業上許容される担体及び1種以上の農業上許容される補助剤の少なくともいずれかを含む農業化学組成物として提供される。

【0061】
さらなる活性成分としては、1-メチルシクロプロペン(1-MCP)、L-α-(2-アミノエトキシビニル)グリシン(AVG)及びアミノオキシ酢酸(AOA)のようなオーキシン及び/若しくはエチレンの作用阻害剤又は生合成阻害剤、パラクロロフェノキシイソ酪酸(PCIB)及びα-(フェニルエチル-2-オン)-インドール 3-酢酸(PEO-IAA)のようなオーキシン受容阻害剤、並びに1-N-ナフチルフタラミン酸(NPA)及び2,3,5-トリヨード安息香酸(TIBA)のようなオーキシン極性輸送阻害剤等を挙げることができる。

【0062】
農業上許容される担体としては、水、ケロセン若しくはディーゼル油のような鉱油画分、植物若しくは動物由来の油、環状若しくは芳香族炭化水素(例えばパラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン類若しくはそれらの誘導体、又はアルキル化ベンゼン類若しくはそれらの誘導体)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はシクロヘキサノール)、ケトン(例えばシクロヘキサノン)、アミン(例えばN-メチルピロリドン)、ジメチルスルホキシド又はこれらの混合物のような農業上許容される液体担体が好ましい。

【0063】
農業上許容される補助剤としては、例えば、固体担体、不活性補助剤、界面活性剤(例えば、分散剤、保護コロイド、乳化剤及び湿展剤)、有機若しくは無機の増粘剤、殺菌剤、不凍剤、消泡剤又は着色剤が好ましい。

【0064】
式(I)で表される化合物は、高い果実の鮮度保持効果を有する。それ故、本発明はまた、本発明の果実の鮮度保持剤で果実を処理することを含む、該該果実の鮮度を保持する方法に関する。本発明の方法において、果実の鮮度保持剤で処理する果実は、下記で挙げた植物の果実であることが好ましい。

【0065】
本発明の果実の鮮度保持剤で果実を処理する場合、該果実は、収穫直後の果実であることが好ましく、収穫当日~収穫後3日目の果実であることがより好ましく、収穫当日~収穫後1日目の果実であることが特に好ましい。前記の期間に収穫された果実を本発明の果実の鮮度保持剤で処理することにより、果肉の軟化をより効果的に抑制することができる。

【0066】
本明細書において、「果実の鮮度保持」は、果実の軟化を実質的に抑制することを意味する。果実の軟化は、例えば、果実硬度計を用いて果肉硬度を測定することにより、評価することができる。

【0067】
本明細書において、「オーキシンの生合成阻害」及び「オーキシン生合成阻害活性」は、植物体においてオーキシンの生合成に関与する酵素反応の少なくとも1個を阻害すること、又はそのような活性を意味する。また、本明細書において、「エチレンの生合成阻害」及び「エチレン生合成阻害活性」は、植物体においてエチレンの生合成に関与する酵素反応の少なくとも1個を阻害すること、又はそのような活性を意味する。

【0068】
本発明の果実の鮮度保持剤によって果肉の軟化が抑制される機構は、下記のように説明することができる。なお、本発明の作用効果は、下記の機構に限定されるものではない。すでに説明したように、果実における果肉の軟化は、エチレン生合成経路の鍵酵素である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素(ACS)遺伝子の発現が誘導されることによって、エチレンの生成量が急速に増加することに起因すると考えられる。収穫後の果実を式(I)で表される化合物で処理すると、内性オーキシンとして最も主要な化合物であるインドール3-酢酸(IAA)の果実における含有量の上昇を顕著に抑えられるだけでなく、ACS遺伝子の発現が抑制される。このため、式(I)で表される化合物は、そのオーキシン生合成阻害活性により、果実における内性IAA量を低下させる作用を介して、エチレンの生合成を阻害して、結果として果肉の軟化を抑制することができる。それ故、式(I)で表される化合物を有効成分として含む果実の鮮度保持剤は、エチレン受容体に結合する1-メチルシクロプロペン(1-MCP)のような公知の鮮度保持剤に対する感受性の低い植物の果実においても、果肉の軟化を抑制して、該果実の鮮度を保持することができる。

【0069】
オーキシン及びエチレンは、植物に普遍的に存在することが知られている。また、エチレンは、果実、特にクライマクテリック型果実の成熟を制御する最も重要な因子であることが知られている。それ故、本発明の果実の鮮度保持剤は、様々な植物の果実に対して適用することができる。本発明の果実の鮮度保持剤を適用し得る果実としては、限定するものではないが、例えば、モモ、リンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシ、カキ、メロン、スモモ及びアンズのような植物の果実を挙げることができる。前記果実は、モモであることが好ましい。前記で挙げた植物の果実は、クライマクテリック型果実に分類される。前記のような植物の果実に本発明の果実の鮮度保持剤を適用することにより、果肉の軟化を抑制して、該果実の鮮度を保持することが可能となる。

【0070】
式(I)で表される化合物は、果実におけるACS遺伝子の発現を顕著に抑制することができる。それ故、本発明はまた、式(I)で表される化合物又はその塩を有効成分として含むエチレン生合成阻害剤に関する。さらに、本発明は、本発明のエチレン生合成阻害剤で植物を処理することを含む、該植物におけるエチレンの生合成を阻害する方法に関する。本発明の方法において、エチレン生合成阻害剤で処理する植物は、前記で挙げたクライマクテリック型果実を結実し得る植物(果樹作物)であることが好ましい。前記のような植物に本発明のエチレン生合成阻害剤を適用することにより、植物体におけるエチレン生合成を阻害することが可能となる。

【0071】
なお、エチレンの生合成阻害は、例えば、生成されたエチレンを、ガスクロマトグラフィー又はガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定するか、或いはACS遺伝子のようなエチレン生合成酵素遺伝子の発現レベルを、定量的RT-PCR等の手段を用いて測定することにより、評価することができる。

【0072】
本発明の果実の鮮度保持剤で植物を処理する場合、当該技術分野で通常使用される農薬の剤形及び施用方法を用いることができる。好適な剤形としては、例えば、乳剤、水和剤、液剤、水溶剤、粉剤、粉末剤、ペースト剤及び粒剤等を挙げることができる。好適な施用方法としては、例えば、散布、散粉、噴霧、浸漬及び塗布等を挙げることができる。

【0073】
以上のように、本発明の果実の鮮度保持剤は、果肉の軟化を特異的に抑制することができる。それ故、本発明の本発明の果実の鮮度保持剤で植物を処理することにより、例えばモモのように、公知の鮮度保持剤に対する感受性の低い果樹作物においても、鮮度を保持することが可能となる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
<I:化合物の合成>
[I-1:KOK3017の合成]
【化4】
JP2014138562A_000005t.gif
【実施例】
【0076】
2-ヒドロキシ-3-(6-メトキシナフタレン-2-イル)プロパン酸メチル(100 mg, 0.384 mmol)をメタノール(2 ml)に溶解させた。得られた溶液に2 N水酸化ナトリウム水溶液(1 ml)を加え、該混合物を室温で4時間撹拌した。前記反応液に2 N塩酸を加えてpH 1にし、該反応液を減圧下で濃縮した。得られた固体を水に懸濁させ、濾取した。濾取された残渣を減圧下で乾燥し、表題化合物(白色結晶87 mg,92%)を得た。
【実施例】
【0077】
1H-NMR (DMSO, 270 MHz) δppm: 2.89 (1H, dd, J = 13.8, 8.2 Hz), 3.10 (1H, dd, J = 13.8, 4.5 Hz), 3.85 (3H, s), 4.19 (1H, dd, J = 8.2, 4.5 Hz), 7.09-7.38 (3H, m), 7.64 (1H, s), 7.72 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.74 (1H, d, J = 8.6 Hz).
【実施例】
【0078】
[I-2:KOK3016の合成]
【化5】
JP2014138562A_000006t.gif
【実施例】
【0079】
2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(ナフタレン-2-イル)プロピオン酸メチル(100 mg,0.409 mmol)をメタノールに溶解させた。得られた溶液に2 N水酸化ナトリウム水溶液(1 ml)を加え、該混合物を室温で4時間撹拌した。反応液を、減圧下で濃縮し、2 N塩酸を用いてpH 1に調整した。析出した固体を濾取した。濾取された残渣を減圧下で乾燥し、表題化合物(白色結晶68 mg,72%)を得た。
【実施例】
【0080】
1H-NMR (DMSO, 270 MHz) δppm: 1.28 (3H, s), 3.00 (1H, d, J = 13.4 Hz), 3.10 (1H, d, J = 13.4 Hz) 7.40-7.50 (3H, m), 7.70 (1H, s), 7.77-7.87 (3H, m).
【実施例】
【0081】
[I-3:KOK3096の合成]
【化6】
JP2014138562A_000007t.gif
【実施例】
【0082】
3-(4-ブロモフェニル)-2-ヒドロキシプロピオン酸メチル(500 mg,1.93 mmol)、3,5-ジクロロフェニルボロン酸(442 mg,2.32 mmol)、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II), ジクロロメタン付加体 (79 mg)、炭酸カリウム(400 mg,2.90 mmol)及びジオキサン(10 ml)を、窒素雰囲気下、150℃で3時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製した。これにより、表題化合物(黄色油状物441 mg,70%)を得た。
【実施例】
【0083】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 2.76 (1H, d, J = 5.8 Hz), 3.01 (1H, dd, J = 14.0, 6.9 Hz), 3.19 (1H, dd, J = 14.0, 4.3 Hz), 3.80 (3H, s), 4.45-4.53 (1H, m), 7.27-7.34 (3H, m), 7.43-7.50 (4H, m).
【実施例】
【0084】
[I-4:KOK3098の合成]
【化7】
JP2014138562A_000008t.gif
【実施例】
【0085】
水素化ナトリウム(60%)(255 mg,6.38 mmol)に、テトラヒドロフラン(5 ml)を加え撹拌した。得られた混合物に、5-フェニルチオフェン-2-カルボアルデヒド(1.00 g,5.31 mmol)、クロロ酢酸メチル(692 mg,6.38 mmol)及びテトラヒドロフラン(10 ml)の混合液を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応液を氷冷し、1 M硫酸で中和後、ジクロロメタンで3回抽出した。得られた抽出物のジクロロメタン溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。前記溶液を濾過して、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、表題化合物(茶色結晶462 mg,33%)を得た。
【実施例】
【0086】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 3.91 (3H, s), 6.38 (1H, d, J = 1.7 Hz), 6.81 (1H, d, J = 1.7 Hz), 7.22-7.31 (3H, m), 7.33-7.42 (2H, m), 7.60-7.66 (2H, m).
【実施例】
【0087】
[I-5:KOK3099の合成]
【化8】
JP2014138562A_000009t.gif
【実施例】
【0088】
文献(Organic Letters, 2003年, 第5巻, 第24号, p. 4665-4668)に記載の方法にしたがって、表題化合物を合成した。
【実施例】
【0089】
前記反応で得られたKOK3098(434 mg,1.67 mmol)及びPd0-EnCat(登録商標)(0.4 mmol/g)(208 mg)を、酢酸エチル(10 ml)に溶解させた。得られた溶液に、トリエチルアミン(0.92 ml,6.67 mmol)、蟻酸(0.25 ml,6.67 mmol)を加えた。得られた反応液を、アルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌後、該反応液を濾過した。得られた濾液を、減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、表題化合物(黄色結晶178 mg,41%)を得た。
【実施例】
【0090】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 3.05-3.35 (3H, m), 3.76 (3H, s), 4.45 (1H, dd, J = 5.8, 4.3 Hz), 6.81 (1H, dt, J = 3.5, 0.8 Hz), 7.11 (1H, d, J = 3.5 Hz), 7.18-7.26 (1H, m), 7.28-7.37 (2H, m), 7.50-7.56 (2H, m).
【実施例】
【0091】
[I-6:KOK3083の合成]
【化9】
JP2014138562A_000010t.gif
【実施例】
【0092】
水素化ナトリウム(60%)(105 mg,2.63 mmol)及びTHF(6 ml)の溶液に、3-(ナフタレン-2-イル)アクリルアルデヒド(400 mg, 2.120 mmol)、クロロ酢酸メチル(286 mg, 2.63 mmol)及びTHF(4 ml)の溶液を滴下した。得られた溶液を、室温で1日間撹拌した。得られた溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機相を、水で3回洗浄後、飽和食塩水で1回洗浄して、該有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、表題化合物(黄色結晶190 mg,46%)を得た。
【実施例】
【0093】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 3.54 (1H, d, J = 1.8 Hz), 3.82 (4H, m), 5.98 (1H, dd, J = 16.0, 8.0 Hz), 6.99 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.42-7.55 (4H, m), 7.72-7.84 (3H, m).
【実施例】
【0094】
[I-7:KOK2174の合成]
【化10】
JP2014138562A_000011t.gif
炭酸カリウム(959 mg,6.94 mmol)及び1-ナフトール(1.00 g, 6.94 mmol)を、アセトン(20 ml)に懸濁させた。得られた懸濁液を、0℃で15分間撹拌した。前記懸濁液を0℃で撹拌したまま、該懸濁液に、アセトン(20 ml)に溶解した4-ブロモクロトン酸メチル(85%)(1.46 g,6.94 mmol)を滴下し、2時間撹拌した。その後、前記懸濁液を、室温に戻して4時間撹拌した。得られた反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣にジエチルエーテルを加え、2 N水酸化ナトリウム水溶液及び水で洗浄して、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、表題化合物(黄色油状物 1.257 g,75%)を得た。
【実施例】
【0095】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 3.76 (3H, s), 4.83 (2H, dd, J = 4.0, 2.1 Hz), 6.33 (1H, dt, J = 15.7, 2.1 Hz), 6.74 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.18 (1H, dt, J = 15.8, 4.0 Hz), 7.33 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.47-7.50 (3H, m), 7.77-7.81 (1H, m), 8.28-8.31 (1H, m).
【実施例】
【0096】
[I-8:KOK3024の合成]
【化11】
JP2014138562A_000012t.gif
【実施例】
【0097】
KOK2174(900 mg,3.72 mmol)及び炭酸カリウム(1.027 g,7.43 mmol)にアセトン(20 ml)を加えた。得られた混合物を、8時間還流した。反応液を、減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、表題化合物(cis:無色油状物274 mg,30%,trans:黄色油状物27 mg,3%)を得た。
【実施例】
【0098】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm(cis): 3.43 (2H, dd, J = 7.1, 1.7 Hz), 3.73 (3H, s), 5.16 (1H, dt, J = 7.1, 6.1 Hz), 6.69 (1H, dt, J = 6.1, 1.7 Hz), 6.97 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.37 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.48-7.56 (3H, m), 7.79-7.85 (1H, m), 8.21-8.25 (1H, m).
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm(trans): 3.11 (2H, dd, J = 7.8, 1.2 Hz), 3.72 (3H, s), 5.58 (1H, dt, J = 12.2, 7.8 Hz), 6.69 (1H, dt, J = 12.2, 1.2 Hz), 6.97 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.37 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.45-7.58 (3H, m), 7.76-7.85 (1H, m), 8.18-8.26 (1H, m).
【実施例】
【0099】
[I-9:KOK2098の合成]
【化12】
JP2014138562A_000013t.gif
【実施例】
【0100】
窒素雰囲気下、(2-(ナフタレン-2-イル)-2-オキソエチル)ホスホン酸ジメチル(163 mg,0.586 mmol)をジクロロメタン(6 ml)に加えた。得られた混合物に、ブロモトリメチルシラン(0.61 ml,4.69 mmol)を滴下した。その後、前記混合物を、室温で21時間撹拌した。得られた反応液に窒素ガスを吹き付けることにより、該反応液を濃縮した。前記濃縮物に、水及びジクロロメタンを加えた。前記処理によって析出した結晶を濾取した。濾取された結晶を、エタノールに溶解させた。得られた溶液に含まれる不溶物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。これにより、表題化合物(白色結晶97 mg,66%)を得た。
【実施例】
【0101】
1H-NMR (DMSO, 270 MHz) δppm: 3.62 (1H, s), 3.70 (1H, s), 7.59-7.71 (2H, m), 7.98-8.12 (4H, m), 8.71 (1H, s).
【実施例】
【0102】
[I-10:KOK2068の合成]
【化13】
JP2014138562A_000014t.gif
【実施例】
【0103】
2-ナフタレン酢酸(300 mg,1.61 mmol)及びN-ヒドロキシフタルイミド(263 mg,1.61 mmol)を、ジオキサン(10 ml)中で撹拌した。得られた混合物に、ジオキサン(10 ml)に懸濁させたWSCI(309 mg,1.61 mmol)を滴下した。その後、前記混合物を、2時間撹拌した。反応液を、減圧下で濃縮した。得られた残渣に、酢酸エチルを加え、水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、表題化合物(白色結晶173 mg,32%)を得た。
【実施例】
【0104】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 4.14 (2H, s), 7.43-7.50 (3H, m), 7.68-7.80 (2H, m), 7.82-7.87 (6H, m).
【実施例】
【0105】
[I-11:KOK3007の合成]
【化14】
JP2014138562A_000015t.gif
【実施例】
【0106】
インドール(400 mg,3.41 mmol)及び水酸化カリウム(211 mg,3.76 mmol)を、ジメチルスルホキシド(5 ml)中で氷冷下撹拌した。得られた混合物に、2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(672 mg,3.76 mmol)を滴下した。滴下後、前記混合物を、室温に戻して4日間撹拌した。得られた反応液に、酢酸エチルを加え、水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、表題化合物(無色油状,20%)を得た。
【実施例】
【0107】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 3.80 (3H, s), 4.98 (2H, s), 5.15 (1H, s), 6.23 (1H, s), 6.54 (1H, d, J = 3.1 Hz), 7.08-7.27 (4H, m), 7.63 (1H, d, J =7.5 Hz).
【実施例】
【0108】
[I-12:KOK1128の合成]
【化15】
JP2014138562A_000016t.gif
【実施例】
【0109】
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシド(345 mg,3.07 mmol)にジクロロメタン(10 ml)を加えた。得られた混合物を-70℃で撹拌しながら、該混合物に、2-(アセチルアミノ)-ジメチルホスホノ酢酸メチル(735 mg,3.07 mmol)のジクロロメタン(10 ml)溶液を滴下した。その後、前記混合物を、-70℃のまま45分間撹拌した。得られた混合物に、2-(ナフタレン-1-イルオキシ)アセトアルデヒド(345 mg,3.07 mmol)のジクロロメタン(10 ml)溶液を滴下した。その後、前記混合物を、-70℃で2時間撹拌し、室温に戻した後、さらに5日間撹拌した。得られた反応液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。前記抽出物の酢酸エチル溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。得られた結晶を、ジクロロメタンで懸濁させながら洗浄した。その後、洗浄された結晶を濾取し、表題化合物(白色結晶673 mg,73%)を得た。
【実施例】
【0110】
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δppm: 2.19 (3H, s), 4.83 (3H, s), 4.87 (2H, d, J = 5.6 Hz), 6.80 (1H, d, J = 7.6 Hz), 6.92 (1H, t, J = 5.6 Hz), 7.20-7.53 (4H, m), 7.75-7.83 (1H, m), 8.22-8.31 (1H, m).
【実施例】
【0111】
[I-13:他の化合物の合成]
【化16】
JP2014138562A_000017t.gif
【実施例】
【0112】
化合物KOK1165、KOK1168、KOK1174、KOK1175及びKOK2011は、特許文献2に記載の方法に従って合成した。
【実施例】
【0113】
<II:使用例>
[II-1:試験化合物]
以下の使用例では、下記の試験化合物を使用した。
(1)乳酸型化合物:化合物KOK3096、KOK2099;
(2)アミノオキシ型化合物:化合物KOK1165、KOK1168、KOK1174、KOK1175及びKOK2011。
【実施例】
【0114】
[II-2:オーキシン生合成阻害剤によるモモ果実の成熟抑制]
福島県から購入したモモ(品種名:川中島白桃)の収穫翌日の果実を供試した。試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させて、200 mMのストック溶液を調製した。前記ストック溶液をミリQ水で希釈し、Tween 20(商標)を加えて、最終濃度1 mMの試験化合物水溶液(0.1重量%のTween 20(商標)を含む)を調製した。前記試験化合物水溶液を、それぞれ12個の果実の表面全面にスプレー処理した。スプレー処理された各試験区の果実及び非処理区(対照区)の果実を、28℃にて貯蔵した。貯蔵開始後3日目(収穫後4日目に対応する)に、各試験区及び対照区の果実から、果実赤道面の向かい合う2カ所の果皮を100円玉大(直径約2 cm)にそぎ取った。得られた試料の硬度を、果実硬度計(FT011;Italtest社製;直径8 mmのプランジャー)を用いて測定した。各試験区及び対照区の試料の測定値から、それぞれの平均値及び標準誤差を算出した。また、Tukeyの多重検定により、各試験区及び対照区の試料の平均値の有意差を評価した。収穫後4日目における各試験区及び対照区の果実の果肉硬度を図1に示す。図中、異なる文字が付された平均値間には、互いに5%水準で有意差があることを示す。
【実施例】
【0115】
収穫後1日目の果実について、前記と同様の手順で硬度を測定したところ、3.70±0.34 kgであった。図1に示すように、対照区の果実は、収穫後4日目に0.47±0.03 kgまで果肉硬度が低下した。これに対し、試験区の果実は、収穫後4日目における果肉硬度の平均値が0.53~0.69 kgの範囲であり、果肉硬度の低下が有意に抑制された。
【実施例】
【0116】
[II-3:オーキシン生合成阻害剤処理によるモモ果実のエチレン生成の抑制]
使用例II-2と同様の手順で、試験化合物水溶液でスプレー処理されたモモの果実を28℃にて貯蔵した。貯蔵開始後0、1、2及び3日目(収穫後1、2、3及び4日目にそれぞれ対応する)に、各試験区及び対照区の果実を、それぞれ1.25 Lのガラス製密閉容器に入れて密閉し、25℃で1時間静置した。その後、シリンジを用いて、密閉容器内のヘッドスペースのガスを1 mlずつ採取した。採取されたガスに含まれるエチレン量を、ガスクロマトグラフィー(GC2014;島津製作所製)を用いて測定した。カラムは活性化アルミナ (3 mm×1 m;信和化工社製)を用い、キャリアガスは窒素(60 mL/分の流量)を用い、検出はFID検出器を用いた。カラム温度は、80℃とし、注入口及び検出器温度は、120℃とした。収穫後1、2、3及び4日目における各試験区及び対照区の果実からのエチレン生成量を図2に示す。
【実施例】
【0117】
図2に示すように、試験区の果実からのエチレン生成は、対照区の果実からのエチレン生成と比較して顕著に抑制された。
【実施例】
【0118】
[II-4:オーキシン生合成阻害剤処理によるモモ果実におけるエチレン生合成酵素遺伝子の発現抑制]
(独)農研機構果樹研究所(茨城県つくば市)圃場で栽培されたモモ(品種名:あかつき)の収穫当日の果実を供試した。使用例II-3と同様の手順で、前記果実からのエチレン生成量を測定したところ、0.5~0.8 nL/g果実新鮮重量/時間であった。果実赤道面部位を、果皮側から直径9 mmのコルクボーラーでくり抜いた。くり抜かれた切片から果皮を除き、果皮側から5 mmの位置で切り取ることにより、果肉ディスクを作成した。大型シャーレ(直径145 mm)に濾紙を敷き、使用例II-2と同様の手順で調製された最終濃度1 mMの試験化合物水溶液を用いて該濾紙を湿潤させた。前記濾紙の表面に、果肉ディスクを並べた。果肉ディスクの上面及び側面に、試験化合物水溶液をスプレー処理した。対照区として、試験化合物を含まないDMSO溶液を用いて調製された水溶液を用いて、前記と同様の手順で果肉ディスクの上面及び側面にスプレー処理した。試験区及び対照区の果肉ディスクを含む大型シャーレの蓋を閉じて、該大型シャーレを28℃で18時間静置した。その後、試験区及び対照区の果肉ディスクを大型シャーレから取り出し、液体窒素を用いて凍結させた。
【実施例】
【0119】
試験区及び対照区の果肉ディスクにおける、エチレン生合成酵素遺伝子である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素遺伝子(PpACS1)の発現レベルを、以下の手順で測定した。凍結させた試験区及び対照区の果肉ディスクから、Hot-Borate法によって全RNAを抽出して、DNase処理後、cDNAを合成した。定量的RT-PCRは、SYBR Premix Ex Taqキット(TaKaRa社製)を用いて、7300 Real-Time PCRシステム (Applied Biosystems社製)によって解析した。アクチンの発現量を、内在標準として用いた。結果を図3に示す。
【実施例】
【0120】
図3に示すように、各試験区の果肉ディスクにおけるPpACS1 mRNAの発現レベルは、対照区の果肉ディスクにおける発現レベルと比較して顕著に低下した。
【実施例】
【0121】
[II-5:オーキシン生合成阻害剤処理によるモモ果実における内性オーキシン量の低下]
使用例II-4と同様の手順で、凍結させた試験区及び対照区の果肉ディスクを調製した。前記果肉ディスクをそれぞれ粉砕した。粉砕された果肉ディスクに、1%(体積/体積)酢酸を含む80%メタノールを加えた。得られた懸濁液を、4℃で2時間振とうさせた。この際、前記懸濁液に、内部標準として[13C6]-IAAを添加した。遠心分離により、前記懸濁液から上清を分離した。真空乾燥により、得られた上清を濃縮した。得られた残渣を、0.01 N塩酸に溶解させた。得られた塩酸溶液を、イオン交換樹脂(Amberlite XAD-7HP;オルガノ社製)に添加した。1%(体積/体積)酢酸を用いて前記イオン交換樹脂を洗浄した。次いで、ジクロロメタンを用いて、イオン交換樹脂に吸着されたIAAを溶出させた。IAAを含む溶出画分を、真空乾燥により濃縮した。得られた残渣に含まれるIAAを、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを用いてトリメチルシリル化した。ガスクロマトグラフ質量分析計(JMS-Q1000GCMK II;JEOL社製)を用いて、トリメチルシリル化されたIAA量を測定した。カラムはDB-5 (0.25 mm×30 m、0.25μm膜厚;J&W Scientific社製)を用い、キャリアガスはヘリウム(1 mL/分の流量)を用い、イオン化方法はEIとした。イオン源及びインターフェイスの温度は250℃とし、カラム温度は、80℃から245℃まで30℃/分、245℃から280℃まで5℃/分の昇温条件とした。結果を図4に示す。
【実施例】
【0122】
図4に示すように、各試験区の果肉ディスクにおける内性IAA量は、対照区の果肉ディスクにおける内性IAA量と比較して顕著に低下した。
【実施例】
【0123】
<III:参考使用例>
[III-1:試験化合物]
以下の参考使用例では、下記の試験化合物を使用した。
(1)乳酸型化合物:化合物KOK3017、KOK3016、KOK3096、KOK3099、KOK2052BP、KOK2099、KOK2166、KOK3026、KOK3035、KOK3045及びKOK3033;
(2)ビニルエーテル型化合物:化合物KOK2174、KOK3024cis及びKOK3024trans;
(3)アクリル酸型化合物:化合物KOK3083、KOK2052BP2、KOK2103、KOK2169BP、KOK2073、KOK3012及びKOK3025;
(4)その他の型の化合物:化合物KOK3007、KOK2068、KOK2071、KOK2194、KOK3041、KOK2202及びKOK2140。
【実施例】
【0124】
[III-2:内性IAA量の定量試験]
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana L., Col-0)の種子を、培養プレートに調製した固体培地(0.8%寒天で固化させた1/2 MS培地、1.0%スクロースを含む)上に播種した。前記培養プレートを平置きで静置し、シロイヌナズナを連続白色光下、22℃で6日間栽培した。得られた幼植物体を、遠心チューブに調製した液体培地(1/2 MS培地、1.0%スクロースを含む)中で、連続白色光下、22℃で24時間振盪培養した。次いで、試験化合物(各30μM)を前記液体培地に添加し、連続白色光下、22℃で3時間振盪培養した。その後、幼植物体を回収し、該幼植物体中の内性IAA量を定量した。内性IAA量の定量は、添野らの文献(Plant Cell Physiol., 2010年, 第51巻, p. 524-536)に記載の方法に従い、LC-MS/MSを用いて行った。結果を図5に示す。
【実施例】
【0125】
図5に示すように、試験化合物のうち、乳酸型の化合物は、いずれもシロイヌナズナの内性IAA量を低下させた。同様の傾向は、ビニルエーテル型、アクリル酸型及びその他の型の化合物の化合物でも確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4